タイトル: | 再公表特許(A1)_メソポーラスシリカ厚膜及びその製造方法、吸着装置並びに吸着用膜 |
出願番号: | 2006112505 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C01B 37/02,B01J 20/10,G01N 30/00,G01N 30/88 |
根岸 秀之 遠藤 明 中岩 勝 柳下 宏 JP WO2006112505 20061026 JP2006308336 20060420 メソポーラスシリカ厚膜及びその製造方法、吸着装置並びに吸着用膜 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 根岸 秀之 遠藤 明 中岩 勝 柳下 宏 JP 2005122591 20050420 C01B 37/02 20060101AFI20081114BHJP B01J 20/10 20060101ALI20081114BHJP G01N 30/00 20060101ALI20081114BHJP G01N 30/88 20060101ALI20081114BHJP JPC01B37/02B01J20/10 AG01N30/00 AG01N30/88 101K AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20081211 2007528191 25 4G066 4G073 4G066AA22B 4G066BA03 4G066BA23 4G066BA38 4G066CA43 4G066DA03 4G066FA07 4G066FA33 4G066FA34 4G066FA40 4G073BA63 4G073BB48 4G073BB58 4G073BC02 4G073BD11 4G073BD18 4G073CZ54 4G073FC07 4G073FC25 4G073FC26 4G073FC27 4G073FD22 4G073FD30 4G073FF06 4G073GA03 4G073GA13 4G073GB03 4G073UA06 4G073UB26 本発明は、メソポーラスシリカ厚膜及びその製造方法、吸着装置並びに吸着用膜に関するものである。 多孔質材料は、吸着、分離など様々な分野で利用されている。IUPACによれば、多孔体は、細孔径が2nm以下のマイクロポーラス、2〜50nmのメソポーラス、50nm以上のマクロポーラスに分類される。マイクロポーラスな多孔体は以前から知られ、天然のアルミノケイ酸塩、合成アルミノケイ酸塩等のゼオライト、金属リン酸塩等が知られている。これらは、細孔のサイズを利用した選択的吸着、形状選択的触媒反応、分子サイズの反応容器として利用されている。 メソポーラスとしては、ナノメーターレベルの均一な孔径を有する微細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラスシリカが注目されている。これは、径の揃った蜂の巣状に配列した構造を有するものである。従来のゼオライト等の多孔質材料に比べて細孔容積が大きく、表面積も大きいという特徴を有している。シリカゲルでは、細孔の均一性が低く、このように高い比表面積、大きい細孔容積を持つものは知られていない。 両者ともに、界面活性剤の集合体が鋳型となってシリカの構造制御が行われていると考えられている。これらの物質は、ゼオライトのポアに入らないような嵩高い分子に対する触媒として非常に有用な材料であるだけでなく、細孔内に種々の機能を有するゲスト種を導入することによって、光学材料や電子材料等の機能性材料への応用も考えられている。 メソポーラスシリカは、具体的には、非特許文献1に記載されているように界面活性剤の存在下においてケイ素のアルコキシドを加水分解させて合成されるMCM−41と呼ばれる物質が、非特許文献2に記載されているような、層状ケイ酸の一種であるカネマイトの層間にアルキルアンモニウムをインターカレートさせて合成されるFSM−16と呼ばれる物質として知られている。 有機化合物と無機化合物の自己集積化を利用した均一なメソ細孔を持つ多孔質材料が製造される。この製造方法には、例えば、特許文献1には、シリカゲルと界面活性剤などを密封した耐熱性容器内で水熱合成することにより製造される。また、特許文献3には、層状ケイ酸塩の一種であるカネマイトと界面活性剤とのイオン交換により製造する方法が記載されている。非特許文献4は、アルキルトリメチルアンモニウムからなる界面活性剤の集合体をテンプレート(鋳型)として、沈降性シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、アルコキシシラン等を原料として、水熱合成法により無機材料―界面活性剤の3次元高規則性複合体を沈殿物として形成し、その複合体を固液分離・洗浄した後、焼成してその中に含まれる有機物を除去することにより、無機多孔体を製造する方法を記載している。界面活性剤の濃度は臨界ミセル濃度より高く、液晶相生成濃度より低い濃度、例えば25wt%とされており、溶液のpHは10から13である。また標準的な反応温度は100℃以上、反応時間は2日以上で、オートクレーブを用いて合成される。この水熱合成法により得られた多孔体は、従来の多孔体に比べ著しく均一な細孔径を有し、微細孔が規則的に配列した特徴的な構造を有する。 このような規則的な細孔構造を有するメソポーラス多孔体を、触媒以外の機能性材料分野に応用する場合、これらの材料を基板上に均一に保持することが重要となる。基板上に均一なメソポーラス薄膜を製造する方法としては、例えば、に記載されているようなスピンコートによる方法(非特許文献4)、(非特許文献5)に記載されているようなディップコートによる方法、非特許文献6に、記載されているような固体表面に膜を析出させる方法等が記載されている。基板上に設ける薄膜の厚さは通常数ミクロン程度とされている。 基板上に設けられた高分子化合物膜上に形成されたシリカメソ構造体薄膜であって、該薄膜が直線偏光照射によって表面に構造の異方性が付与された高分子化合物膜の一部分もしくは全部に形成されていることを特徴とするシリカメソ構造体薄膜(特許文献2)、界面活性を含有する水溶液中でpHをアルカリ性に維持し加熱し、界面活性剤を除去する方法(特許文献3)が知られている。スピンコート法によるもの(特許文献4)などが知られている。 この多孔質材料のメソポーラスシリカは、ラメラ、ヘキサゴナル、キュービックなどの規則的配列をしているか、または規則的配列をしていなくても、均一なメソ細孔を持つことが特徴であり、大きな細孔容積を持っており、細孔壁表面には水酸基を多く持つため水の吸着量が多く、水の吸着剤としての用途展開や、分離吸着剤、センサー、触媒担体、燃料電池への応用が検討され、膜を製造する研究が行われてきた。 この膜は、優れたガス吸着特性を有すること、及び各種物質の分離機能も有することが判ってきた。従ってこのような空孔構造を有する多孔体の製造方法が種々の提案されている。 また、その他の製法としても数多くの報告がある。例えば、常温・短時間でメソポーラスシリカを合成する方法として、産業技術総合研究所の遠藤研究員による真空エバポレーター等を用いた合成法が、特許文献5に記載されている。この方法は水熱合成法に比べ、低温で、迅速に合成が可能で、固液分離工程・洗浄工程が不要であるため操作が単純でコスト性に優れるという長所をもっている。更に得られる多孔体は水蒸気耐久性が高いという長所をも兼ね備えている。 以上のべたメソポーラスシリカは、その均一かつ規則的な細孔構造から、水蒸気や有機蒸気の吸着剤として期待されている。例えば水蒸気吸着剤として考えた場合、細孔径に応じて特定の狭い相対湿度範囲において、大きな吸脱着量を示し、吸着が毛管凝縮であることから、再生のための必要エネルギーも小さく、低温再生可能でかつ大きな吸着量をもつ新しい吸着剤(吸湿剤)としての大きな可能性をもっている。この吸着特性は、従来よく用いられているゼオライトやシリカゲルにはない優れた特性である。 吸着材を実際の吸着システム(たとえばデシカント空調)に適用する際には、吸着剤を適当な基材に固定する必要がある。最も一般的なのがハニカムローターで、通常はセラミックペーパーなどが用いられる。このハニカムローターに吸着剤を担持するには、吸着剤とバインダーを溶液に分散し、スラリー化後、ハニカムローター母材を含浸させ、その後乾燥・焼成を行うという行程が必要となる。また、吸着ヒートポンプなどの吸着剤として用いる場合には、金属製のフィン上に吸着剤を固定することが伝熱特性向上の観点から望ましいと考えられる。 具体的には、アルキレンオキサイドブロックコポリマーとオルトケイ酸テトラアルキルとエタノール溶液中に混合して、低pH域に調整しながら加水分解を行ってゾル溶液とし、基板にゾル溶液を滴下し、基板を高速回転させ、溶剤を蒸発させ、ゲル化させることにより基板上に形成した三次元構造を有する有機無機複合SiO2薄膜を得、次いで薄膜を燒結することにより得られた三次元構造を有するメソポーラスSiO2薄膜を製造する方法(特許文献6)などが知られている。 この種のメソ多孔体は、円筒状シリカが規則的に堆積し、即ち、細孔チャンネルが横方向に向いているため、このようなメソ多孔体を高集積電子回路の絶縁層(low−k材料)に使用する場合、加工工程で細孔チャンネルの側面、即ち、上から応力が加えられることになる。ハニカム構造を有するこの種のメソ多孔体は、細孔チャンネルの側面の機械的強度は弱い。そのため、従来のメソポーラス膜は、上記加工工程で細孔が損傷し易い。また、従来のメソ多孔体を分離膜に用いる場合、細孔内部を通って物質が透過分離されるため、細孔チャンネルが横方向に向いているメソ多孔体では事実上分離膜として利用できない。これは化学センサーとして利用する場合も同様である。更に、メソ多孔体を高密度記録媒体に用いる場合、個々の細孔が記録単位として機能することによって初めて高密度記録媒体としての利用が可能となるため、細孔チャンネルが横方向に向いていると、読み書きが困難であり、記録に関与して有効な表面積が小さく、効果を発揮しにくくなる。以上より、メソ多孔体を効果的に応用するために、上下方向に貫通した細孔を有する細孔チャンネルが規則的に配列形成された材料が求められており、六員環を有するシリケートシートが縦型に配列した構造のポリ珪酸塩などが知られている(特許文献7)。 また(A)アニオン界面活性剤、(B)シリケートモノマーおよび(C)塩基性シランを水またはこれと相溶性のある有機溶媒と水との混合溶媒中で混合して均一な大きさのメソ細孔を有するメソポーラスシリカ複合体を得、このメソポーラスシリカ複合体を酸性水溶液または水と相溶性のある有機溶媒あるいはその水溶液で洗浄して成分(A)のアニオン界面活性剤を除去して該メソポーラスシリカ複合体の構造をテンプレートとするメソポーラスシリカ外殻を得、そしてメソポーラスシリカ複合体またはメソポーラスシリカ外殻を焼成すること(特許文献8)が知られている。 しかしながら、従来知られているメソポーラスシリカ膜は、μmオーダーの薄膜に限られ、厚膜は製造されていない。 メソポーラスシリカの厚膜を得るのであれば、基板上に直接ディップコーティング法などにより膜の厚さを調整できるのではないかと考えられるが、実際には、規則的構造に配列された状態で形成することができず、厚膜を形成することは困難となる。 そして、従来の薄膜と比較して厚膜が得られるならば、メソポーラスシリカは、その均一かつ規則的な細孔構造から、水蒸気や有機蒸気の吸着剤として期待されている。例えば水蒸気吸着剤として考えた場合、細孔径に応じて特定の狭い相対湿度範囲において、大きな吸脱着量を示し、吸着が毛管凝縮であることから、再生のための必要エネルギーも小さく、低温再生可能でかつ大きな吸着量をもつ新しい吸着剤(吸湿剤)としての大きな可能性をもつものであり、この吸着特性により、従来よく用いられているゼオライトやシリカゲルにはない優れた特性を有する空気清浄化システムを可能にする膜が得られることとなる。 このようなことから、メソポーラスシリカ厚膜の開発が切望されている。国際公開第91/11390号明細書特開2002−338229号公報特開2004−27270号公報特開2002−250713号公報特願2003−385662号公報特開20002−250713号公報特開2003−335516号公報特開2004−345895号公報Nature. 第359巻、710頁Journal of Chemical Society Chemical Communications.1993巻、680頁J.Am.Chem.Soc.11410834(1992)Chemical Communications.1996巻、1149頁Nature. 第389巻、364頁Nature. 第379巻、703頁 本発明の課題は、厚膜メソポーラスシリカ及び厚膜メソポーラスシリカの製造方法を提供することである。 前記メソポーラスシリカを溶媒中に分散させる。メソポーラスシリカは均一に分散させることが必要であり、微粉末(粒径40μm以下)の形態とすることが望ましい。この溶媒中にメソポーラスシリカが分散されている中に電極板を設置し、0V以上の有限の値から1000ボルトの電圧を印加する。溶媒中でメソポーラスシリカは正に帯電し、アノード電極に向かって移動し、電極表面に規則的構造に配列された状態として析出させることができる。電着量は、ある特定の時間内では時間の経過に応じて増加する。この時間帯を経過すると、電着量は一定となる。単位当たりに電着量と電着時間の関係も同様の経過をたどる。また、電着時間と電着厚膜も同様な経過をたどる。 このような予め測定してある結果に基づいて、電圧、電着時間を制御して1mm程度までの所望の厚さの電着膜を製造することができる。 このようにして、メソポーラスシリカは泳動電着させて、電極板表面に前記メソポーラスを規則的構造に配列された状態として厚膜を形成することができ、さらに、このようにして得られる厚膜を150〜500℃の温度下に、処理すると最終的に1mmオーダーの厚膜を形成固定することができることを見出した。 本発明によれば、以下の発明が提供される。(1)メソポーラスシリカによる層が10μm〜1mmの厚さに形成されていることを特徴とするメソポーラスシリカ厚膜。(2)前記メソポーラスシリカが泳動電着により規則的構造に配列されて10μm〜1mmの厚さに形成されていることを特徴とする(1)記載のメソポーラスシリカ厚膜。(3)前記メソポーラスシリカが泳動電着により規則的構造に配列されて10μm〜1mmの厚さに形成され、引き続き150〜500℃の温度で処理されていることを特徴とする(1)又は(2)記載のメソポーラスシリカ厚膜。(4)前記メソポーラスシリカが1〜10nm範囲で均一な細孔径を有することを特徴とする(1)から(3)のいずれか記載のメソポーラスシリカ厚膜。(5)前記メソポーラスシリカ厚膜が基板の表面に形成されていることを特徴とする(1)から(4)のいずれか記載のメソポーラスシリカ厚膜。(6)メソポーラスシリカを懸濁させた液中に基板を設置し電圧を印加して、前記基板表面にメソポーラスシリカを泳動電着させることにより10μm〜1mmの厚さの膜を形成することを特徴とするメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。(7)前記メソポーラスシリカが泳動電着により規則的構造に配列されて10μm〜1mmの厚さの膜を形成することを特徴とする(6)記載のメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。(8)前記基板表面にメソポーラスシリカを泳動電着させることにより10μm〜1mmの厚さの膜を形成し、引き続き150〜500℃の温度で処理することを特徴とする(6)又は(7)記載のメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。(9)前記メソポーラスシリカが1〜10nmの範囲で均一な細孔径を有することを特徴とする(6)から(8)のいずれか記載のメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。(10)前記メソポーラスシリカ厚膜を基板の表面に形成することを特徴とする(6)から(9)のいずれか記載のメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。(11)前記電圧が、0V以上の有限の値から1000ボルトの範囲であることを特徴とする(6)から(10)のいずれか記載のメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。(12)前記(1)から(5)のいずれか記載の厚膜を備えていることを特徴とする吸着装置。(13)前記(1)から(5)のいずれか記載の厚膜からなることを特徴とする吸着用膜。 本発明では、従来から要望されていた、メソポーラスシリカ厚膜を得ることができる。 この厚膜を利用することにより水蒸気や各種ガスの迅速な吸脱着を可能となる。 このメソポーラスシリカ厚膜の水蒸気や気体の吸脱着特性は、メソポーラスシリカ粉末単体ともしくはそれ以上であり、新たな吸脱着装置の開発が可能となり、これを利用したあらたな清浄化システムや濃縮システムの展開が可能となる。また、従来の膜形成方法と比較して以下のような利点を有するメソポーラスシリカの厚膜の製造が可能となった。a.泳動電着法を用いることで、従来のスラリーを含浸する方法に比べ、格段に迅速かつ均一に種結晶を塗布できる。b.泳動電着法を用いることで、形成する膜厚を電圧や電圧印加時間を制御することで精密に制御することができる。c.泳動電着法を用いることで、様々な形状の母材にメソポーラスシリカ厚膜を形成することが可能になる。d.泳動電着法を用いることで、厚膜中に含まれるバインダーの量を減らす、あるいはバインダーを未使用にすることが可能になる。e.大量生産性、低コスト化に有効である。図1はメソポーラスシリカの構造を示す図である。図2は泳動電着装置泳動電着装置を示す図である。図3はメソポーラスシリカ/アセトン系電着浴からのメソポーラスシリカの電着における電着時間と電着量の関係を示す図である。図4は電着物を示す図である。図5は電着時間と単位面積あたりの電着量の関係を示す図である。図6は電着時間と電着膜厚の関係である。図7は電着物の表面顕微鏡写真を示す図である。図8は電着物の表面3D画像である。図9は電着物の高さ分布測定結果を示す図である。図10は電着膜の窒素吸着特性評価結果を示す図である。図11はメソポーラスシリカ粉末のX線回折パターンを示す図である。図12はステンレス線(φ0.8mm)上に作製したメソポーラスシリカ電着膜を示す図である。図13はアルミニウム板(5mm×50mm)上に薄く作製したメソポーラスシリカ電着膜を示す図である。符号の説明 1 管状ステンレス基板 2 電着浴 3 対極 4 メスシリンダー 5 直流電圧計 本発明のメソポーラスシリカ厚膜は、メソポーラスシリカにより10μm〜1mmの厚さに形成されている膜である。このメソポーラスシリカは、1〜10nmの範囲で均一な細孔径を有するものであれば、図1に示したヘキサゴナル構造をもつものや、キュービック構造をもつものなど何でもよい。 メソポーラスシリカ厚膜は、メソポーラシシリカを泳動電着により規則的構造に配列されて構成しているものである。 このメソポーラスシリカ厚膜は、基板の表面に形成されているメソポ-ラスシリカ厚膜である。 基板は導電性物質により形成されるものであり、電極として用いる事ができるものであれば適宜採用することができる。このような基板には、ステンレス鋼,普通鋼,低合金鋼、Al、Cu等の金属材料やセラミックス,ガラス,陶磁器等の非金属材料がある。導電性のない絶縁材料を基体として使用する場合、泳動電着に先立って、Ni、Cu等を無電解めっきし、或いはITO等の導電性セラミックスをコーティングすることによって導電性を付与することができる。 基板は板状の他,管状、角柱状などでの変形されている種々な形状のものであってよい。厚膜を基板の表面に形成するので、装置に組み込んで使用する場合には装置を構成する部材を基板として用いることができる。管状や角柱状の変形されている場合にはその形状にそって厚膜を形成することができる。 本発明の厚膜の形成に用いるメソポーラスシリカは、1〜10nmの範囲で均一な細孔径を有するものであり、図1に示されている形状やキュービック構造をもつものなど何でもよい。メソポーラスの製造には、例えば以下に示されるスプレードライ法により合成することができる。 この方法によれば、10μm以下の微粉末のメソポーラスシリカを合成することができる。なお、泳動電着には、電着浴にメソポーラスシリカ均一に分散させることが必要であり、そのためには、メソポーラスシリカは微粉末(粒径40μm以下)の形状とすることが望ましい。したがって、スプレードライ法によれば、均一に分散させたメソポーラスシリカ懸濁液を得ることができる。 また、その他の方法として、水熱合成法や溶媒揮発法で合成したメソポーラスシリカを、粉砕あるいは分級などにより粒径40μm以下にしたものを用いてもよい。 スプレードライ法は以下の通りである。 有機溶媒を反応容器に注入し、十分に攪拌する。 これにシリケート化合物を添加し、酸及び界面活性剤の存在下に十分に攪拌処理を行い、加水分解させる。原料物質のシリケート化合物にはアルキルシリケート、アルコキシシリケートなどを用いることができる。酸は特別な酸に限定されない。取り扱いや得やすいことなどから、塩酸水溶液を添加して用いることができる。界面活性剤には、カチオン性またはノニオン性界面活性剤を用いることができる。 処理温度は常温で差しつかえない。このようにしてシリケート化合物の加水分解溶液を得ることができる。この溶液を噴霧乾燥装置(スプレードライヤ)により噴霧し、溶媒を揮発させることにより白色紛体を得る。 得られた白色紛体を焼成して、テンプレート(カチオン性あるいはノニオン性界面活性剤)を除去する。焼成温度は適宜設定する。一般には500〜700℃である。このようにして、1〜10nmの範囲で均一な細孔径を有する三次元規則性を有するメソポーラスシリカを得ることができる。 次に、泳動電着の工程を説明する。 図2は、本発明で用いられる泳動電着の装置を示す図である。 メスシリンダー4の容器中の泳動電着装置内に溶媒を入れ、前記のメソポーラスシリカ製造工程で得られたメソポーラスシリカを分散させる。この溶媒には水や有機溶媒を適宜用いることができる。なお、有機溶媒としてはアルコール類およびアセトンなどのケトン類、ヘキサンなどを用いることができる。 処理に際してスターラー等による撹拌でも適用できるが、超音波振動を与えることがより好ましい。その理由は、メソポーラスシリカ同士の積み重なりを防ぎ、メソポーラスシリカの配向性を高める効果があると考えられるからである。超音波振動を与える場合、一般に市販されている超音波洗浄器を用いる程度で充分であり、具体的には30W以上、20kHz以上の出力があれば充分である。 メソポーラスシリカ粉末の溶媒中での帯電挙動は、溶媒の種類やメソポーラスシリカ粉末の製造方法によって異なり、正に帯電したり、負に帯電したりする。アセトン中においては、メソポーラスシリカ粉末は負に帯電するので、基板をアノードとし、対極にステンレス網を使用する。これらの電極を設置する。適宜、公知の電極を用いることができる。 電圧を一定時間印加することにより、メソポーラスシリカ粉末を電気泳動させ、管状ステンレス基板1表面にメソポーラスシリカ粒子を塗布することができる。特にメソポーラスシリカ/アセトン系電着浴2の場合には、メソポーラスシリカの良好な厚膜を形成することができる。電圧については、泳動電着装置の能力などによって変化する。直流電圧計5による電圧は、0V以上の有限の値から1000Vの範囲のものが採用される。 「0V以上の有限の値から1000Vの範囲」とは、本発明では泳動電着において電圧を印加することが必須であることを意味するものである。具体的には、その際の電圧の値は0であっては泳動電着を行うことができないから、電圧0を含むものではなく、0を超える値、例えば、0.01であっても、0.1であっても、1であっても、100Vであってもよいことを意味している。結論としては、0を超える電圧であり、1000Vまでの電圧が印加されれば、本発明は可能であることを意味している。 電着量は、ある特定の時間内では時間の経過に応じて増加する。この特定の時間帯を経過すると、電着量の増加はなくなり、やがて一定の値となる(図3)。単位当たりに電着量と電着時間の関係も同様の経過をたどる(図5)。また、電着時間と電着厚膜も同様な経過をたどる(図6)。 このような予め測定してある結果に基づいて所望の電着厚膜、電着量となるまで電圧を印加する。 前記の工程で得られる基板上に形成されたメソポ−ラスシリカ厚膜を取り出し、150〜500℃で処理して付着する溶媒を取り除き、緻密な膜からなるメソポーラスシリカ厚膜を形成することができる。その構造を図7、図8、図9に示した。500℃を超える温度で処理するとその形状が破壊される恐れがある。また150℃未満では場合によっては十分な熱処理ができない場合があり、緻密な膜の形成が妨げられる結果となる。 得られたメソポーラスシリカの厚膜のメソポーラスシリカのX線回折分析(XRAD)を行なうことにより、厚膜中のメソポーラスシリカは高い三次元規則性を有していることを確認することができる。 また、メソポーラスシリカ厚膜について気体の吸着能を有するかどうかの試験を行なうことにより、気体の吸着能を調べることができる。 得られたメソポーラスシリカ厚膜の細孔構造を、窒素吸着測定装置(日本ベル製、Belsorp−mini)を用いて評価を行う。その結果を図10に示す通りである。メソポーラスシリカ粉末、泳動電着(EPD)によりステンレス基板に形成したメソポーラスシリカ厚膜および300℃で熱処理後のメソポーラスシリカ厚膜の窒素吸着等温線は、いずれもメソ孔を有する多孔体に特有なIV型の等温線(IUPACの分類による)を示し、EPD及び熱処理後ももとの高規則性細孔構造を維持していることがわかる。 この結果から、本発明で得られるメソポーラスシリカは、その均一かつ規則的な細孔構造から、水蒸気や有機蒸気の吸着能を有していることがわかる。具体的には水蒸気吸着剤として考えた場合、細孔径に応じて特定の狭い相対湿度範囲において、大きな吸脱着量を示し、吸着が毛管凝縮であることから、再生のための必要エネルギーも小さく、低温再生可能でかつ大きな吸着量をもつ新しい吸着剤(吸湿剤)としての大きな可能性をもつものであり、この吸着特性により、従来よく用いられているゼオライトやシリカゲルにはない優れた特性を有する空気清浄化システムの他各種生産ラインの気体清浄化設備に用いる事ができる。さらに希薄ガスを吸着処理して濃縮する装置への利用も可能である。 以下に本発明の内容を実施例により説明する。本発明はこれに限定されるものではない。 (1)メソポーラスシリカの合成 セチルトリメチルアンモニウムクロリド9.6gと、エタノール69gとを200mlのガラスビーカーに入れ、マグネチックスターラーを使用して攪拌した。溶解したところに、テトラエチルオルトシリケート31.2gと、塩酸水溶液(1×10−3M)27gとを加えて常温で1時間攪拌し、透明な加水分解溶液を得た。 この加水分解溶液を500mlナス型フラスコに移し、ロータリーエバポレーター(38rpm)を使用して25℃の温度および70hPa減圧状態で1時間24分反応させた。 その後の溶液をヤマト科学製(スプレードライヤーGS310)を用い、溶液を噴霧して溶媒を除去することにより、白色紛体を得た。このときの条件は噴霧ノズル径0.7mmφ、送液速度4.4g/min、噴霧入口温度80℃、噴霧圧力0.075Mpa、噴霧風量0.5m3/minであった。 得られた白色紛体を600℃で焼成して,カチオン性あるいはノニオン性界面活性剤を除去した。得られたナノポーラス体のX線回折分析(XRD)(図11)、および窒素ガスによる吸着等温線により多孔構造の構造規則性の評価を行ったところ、得られたメソポーラスシリカは高い三次元規則性を有していた。 (2)メソポーラスシリカ厚膜の作製予備実験として、前記合成法により得られたメソポーラスシリカ粉末を水又は有機溶媒30mlに対して0.1gの割合で添加し超音波を10分間照射したものを電着液とした。予備実験で用いたメソポーラスシリカの電着浴中での粒度は10μm以下であった。但し、粒度は40μm以下であればよい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール等のアルコール類およびアセトンなどのケトン類、およびヘキサンを用いた。電着装置を図2に示す。この装置を用いて、各種溶媒を電着浴とした場合の実験結果を表1に示した。泳動電着を行う上で重要となるメソポーラスシリカの帯電は、表1よりどの溶媒に添加したメソポーラスシリカにおいても正に帯電する傾向が強いことが分かった。この結果から泳動電着法を利用する場合、メソポーラスシリカ粉末はアノードに向かって電気泳動する事が明らかとなった。よって、管状ステンレス基板をアノードとし、対極にステンレス網を使用し、50Vの電圧を3分間印加することでメソポーラスシリカ粉末を電気泳動させ、管状ステンレス基板表面にメソポーラスシリカ粒子を塗布した。特にメソポーラスシリカ/アセトン系電着浴において、メソポーラスシリカの良好な厚膜を形成することができた。 そこで、本実験として、図2に示した実験装置を用い、アセトン140mlにメソポーラスシリカ1.4gを添加し、表面積15.7cm2(おもて)の管状ステンレス管をアノード基板として、50Vで電着実験を行ったところ、メソポーラスシリカの電着量は電着時間と共に増加し、10分で約0.4gがステンレス管上に製膜できた(図3)。そのサンプルの写真を図4に示す。目視上では、均一な厚膜が形成できていることがわかる。基板単位面積あたりの電着量は電着時間10分で約24mg/cm2に達し(図5)、膜厚は約240μmに達する厚膜が形成できていることが明らかとなった(図6)。この電着量は、ある特定の時間内では時間の経過に応じて増加する。この時間帯を経過すると、電着量は一定となる。単位当たりに電着量と電着時間の関係も同様の経過をたどる。また、電着時間と電着厚膜も同様な経過をたどる。 このような予め測定してある結果に基づいて所望の電着厚膜、電着量となるまで電圧を印加する。 (3)メソポーラスシリカ粉末の帯電特性 メソポーラスシリカ/アセトン系電着浴における、メソポーラスシリカ粒子の電気泳動移動度とゼータ電位を、ゼータ電位測定装置(大塚電子ELS−8000)を用いて測定した結果、電気泳動移動度は約−2.4×10−6cm2/Vsを示し、ゼータ電位は約−40V示したことから、メソポーラスシリカが負に帯電し、電場を印加するとアノードに向かって電気泳動することが裏付けられた。 (4)メソポーラスシリカ膜の構造 図2に示した実験装置を用い、アセトン140mlにメソポーラスシリカ1.4gを添加し、表面積15.7cm2(おもて)の管状ステンレス管をアノード基板として、50Vで10分間の電着を行ったサンプル(図4)の表面および断面構造を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。電着したメソポーラスシリカ膜を部分的に剥がした破断面を上方から観察したところ、電着物表面は平滑であった(図7)。また、破断面を斜め方向から観察したところ、均一な厚さのメソポーラスシリカ堆積層が形成されていた(図8)。これは、図7のラインA−Bにおける高さ分布測定からも電着物が基板に対して約240ミクロンの厚さで平滑に堆積していることが分かる(図9) (5) 細孔構造評価の評価 得られた膜の細孔構造を窒素吸着測定装置(日本ベル製、Belsorp−mini)を用いて評価した。その結果を図10に示す。メソポーラスシリカ粉末、EPDによりステンレス基板に形成したメソポーラスシリカ厚膜および300℃で熱処理後のメソポーラスシリカ厚膜の窒素吸着等温線は、いずれもメソ孔を有する多孔体に特有なIV型の等温線(IUPACの分類による)を示し、EPD及び熱処理後も、もとの高規則性細孔構造を維持していることがわかった。 (6) ステンレス線上に製膜した例図2に示した実験装置を用い、アセトン30mlにメソポーラスシリカ0.1gを添加し、直径0.8mmのステンレス線をアノード基板として、50Vで3分間の電着を行った。その結果、ステンレス線上に均一な厚さの電着膜がコーティングできた(図12)。 (7) アルミニウム板上に製膜した例図2に示した実験装置を用い、アセトン70mlにメソポーラスシリカ0.23gを添加し、幅5mm、長さ50mmのアルミニウム板をアノード基板として、50Vで10分間の電着を行った。その結果、アルミニウム板上に均一な厚さの電着膜がコーティングできた(図13)。 メソポーラスシリカによる層が10μm〜1mmの厚さに形成されていることを特徴とするメソポーラスシリカ厚膜。 前記メソポーラスシリカが泳動電着により規則的構造に配列されて10μm〜1mmの厚さに形成されていることを特徴とする請求項1記載のメソポーラスシリカ厚膜。 前記メソポーラスシリカが泳動電着により規則的構造に配列されて10μm〜1mmの厚さに形成され、引き続き150〜500℃の温度で処理されていることを特徴とする請求項1又は2記載のメソポーラスシリカ厚膜。 前記メソポーラスシリカが1〜10nmの範囲で均一な細孔径を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のメソポーラスシリカ厚膜。 前記メソポーラスシリカ厚膜が基板の表面に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のメソポーラスシリカ厚膜。 メソポーラスシリカを懸濁させた液中に基板を設置し電圧を印加して、前記基板表面にメソポーラスシリカを泳動電着させることにより10μm〜1mmの厚さの膜を形成することを特徴とするメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。 前記メソポーラスシリカが泳動電着により規則的構造に配列されて10μm〜1mmの厚さの膜を形成することを特徴とする請求項6記載のメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。 前記基板表面にメソポーラスシリカを泳動電着させることにより10μm〜1mmの厚さの膜を形成し、引き続き150〜500℃の温度で処理することを特徴とする請求項6又は7記載のメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。 前記メソポーラスシリカが1〜10nmの範囲で均一な細孔径を有することを特徴とする請求項6から8のいずれか記載のメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。 前記メソポーラスシリカ厚膜を基板の表面に形成することを特徴とする請求項6から9のいずれか記載のメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。 前記電圧が、0V以上の有限の値から1000ボルトの範囲であることを特徴とする請求項6から10のいずれか記載のメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。 前記請求項1から5のいずれか記載の厚膜を備えていることを特徴とする吸着装置。 前記請求項1から5のいずれか記載の厚膜からなることを特徴とする吸着用膜。 メソポーラスシリカによる層が10μm〜1mmの厚さに形成されていることを特徴とするメソポーラスシリカ厚膜、およびメソポーラスシリカを懸濁させた液中に基板を設置し電圧を印加して、前記基板表面にメソポーラスシリカを泳動電着させることにより10μm〜1mmの厚さの膜を形成することを特徴とするメソポーラスシリカ厚膜の製造方法。