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タイトル:公開特許公報(A)_有機酸のアルキルエステル化方法及びキット
出願番号:2006101249
年次:2007
IPC分類:C07B 41/12,C11C 3/10,C11C 3/02,C07C 69/24,C07C 69/58,C07C 69/533,C07C 67/03,C07C 67/08,C07B 61/00,G01N 30/06


特許情報キャッシュ

中島 史雄 市原 謙一 堤 浩子 秦 洋二 JP 2007176918 公開特許公報(A) 20070712 2006101249 20060331 有機酸のアルキルエステル化方法及びキット 月桂冠株式会社 000165251 市原 謙一 505447951 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 多田 央子 100118382 中島 史雄 市原 謙一 堤 浩子 秦 洋二 JP 2005350049 20051202 C07B 41/12 20060101AFI20070615BHJP C11C 3/10 20060101ALI20070615BHJP C11C 3/02 20060101ALI20070615BHJP C07C 69/24 20060101ALI20070615BHJP C07C 69/58 20060101ALI20070615BHJP C07C 69/533 20060101ALI20070615BHJP C07C 67/03 20060101ALI20070615BHJP C07C 67/08 20060101ALI20070615BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070615BHJP G01N 30/06 20060101ALN20070615BHJP JPC07B41/12C11C3/10C11C3/02C07C69/24C07C69/58C07C69/533C07C67/03C07C67/08C07B61/00 300G01N30/06 A 11 1 OL 22 特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年6月4日 日本農芸化学会関西支部開催の「日本農芸化学会関西支部第439回講演会」にて文書をもって発表 4H006 4H039 4H059 4H006AA05 4H006AC48 4H006BA02 4H006BA32 4H006BB11 4H006BB17 4H006BC10 4H006KA03 4H006KA06 4H039CA66 4H039CD10 4H039CD30 4H039CD90 4H039CE10 4H059AA03 4H059BA26 4H059BC01 4H059CA36 4H059CA48 4H059EA17 本発明は、生物試料中に含まれる脂質などを構成する有機酸の組成をガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等により分析するに先立って、有機酸をアルキルエステル化する方法、及びこの方法に用いるキットに関する。 細胞、菌体、血液などの生物試料中の脂質などに含まれる脂肪酸のような有機酸の組成の分析は、菌体や細胞の同定や機能評価、特定疾患の診断などに有用である。 有機酸の組成の分析は、通常、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィー等によって行われる。感度が高いために少量の試料で足りる点で、ガスクロマトグラフィーが採用されることが多い。有機酸試料をガスクロマトグラフィーに供するには気化しやすい状態にする必要があるため、ガスクロマトグラフィーによる分析に先立ち、有機酸はメチルエステルなどのアルキルエステルに変換される。 脂肪酸のアルキルエステル化方法として、従来は、生体試料から溶媒を用いて脂質を抽出し、水酸化ナトリウムを用いて90℃程度の加熱下にケン化し、遊離した脂肪酸塩をそのまま、または脂肪酸にしてから三フッ化ホウ素を用いて環流加熱下にアルキルエステル化する方法が行われている。また、脂質をナトリウムメトキシドのメタノール溶液中で還流加熱してエステル型脂肪酸をアルキルエステル化する方法も行われている。また、生体試料から抽出した脂質中に含まれるエステル型又は遊離型の脂肪酸を、低級アルコールを用いて、塩化水素や硫酸触媒の存在下で100℃程度の加熱下にアルキルエステル化する方法も行われている。 しかし、これらのアルキルエステル化方法では、試料を高温に加熱する必要があるため、多価不飽和脂肪酸やシクロプロパン脂肪酸など不安定な脂肪酸の分解、低級脂肪酸アルキルエステルの蒸散消失などにより、定量性が低下する。 また、非特許文献1は、脂質を含む生物試料とプロピオン酸メチルとを混合し、次いでこの混合物に水酸化ナトリウム及びメタノールを添加して37℃で1時間反応させた後、酢酸で中和して反応を終了させる脂肪酸のメチル化方法を開示している。 しかし、この方法では、水酸化ナトリウムを用いるため、ケン化反応によって遊離脂肪酸が生成しやすい。また、エステル化された脂肪酸をメチルエステル化することはできるが、脂質に含まれる遊離脂肪酸や、エステル交換に伴い副生する遊離脂肪酸を十分にメチルエステル化することはできず、その結果、脂肪酸組成の分析精度が悪くなる。さらに、疎水性溶媒として用いたプロピオン酸メチルがステロールエステルと反応して副成するステロールのプロピオン酸エステルが、ガスクロマトグラフ分析を妨害し、またカラムを劣化させる。Ken'ichi Ichihara, Chiaki Yamaguchi, Hiroaki Nishijima, Kazumi Saito (2003) Preparation of fatty acid methyl esters from sterol esters. Journal of The American Oil Chemists' Society 80, 833-834. 本発明は、穏和な温度下で、脂質などの試料に含まれる全有機酸を十分にアルキルエステル化できる有機酸のアルキルエステル化方法、及びキットを提供することを課題とする。 上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ね、有機酸を含む試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させる第1工程と、その反応混合物を、三フッ化ホウ素の存在下で、炭素数1〜4の低級アルコールと反応させる第2工程とを経ることにより、37℃程度の穏和な条件で、脂質などの試料中に含まれるエステル化された有機酸だけでなく、試料中の遊離有機酸やエステル交換反応に伴い生成する遊離有機酸もほぼ完全にアルキルエステル化できることを見出した。 本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の有機酸のアルキルエステル化方法及びキットを提供する。項1. 有機酸を含む試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させることにより、有機酸をアルキルエステル化する第1工程と、 三フッ化ホウ素の存在下で、第1工程の反応混合物と炭素数1〜4の低級アルコールとを反応させることにより、遊離有機酸をアルキルエステル化する第2工程とを含む有機酸のアルキルエステル化方法。項2. 第1工程及び第2工程で使用する炭素数1〜4の低級アルコールがメタノールであり、炭素数1〜4のアルコキシドがメトキシドである項1に記載の方法。項3. 第1工程の反応を、20〜60℃で行う項1又は2に記載の方法。項4. 第1工程における炭素数1〜4のアルコキシドの使用量を、反応液中の最終濃度が0.05〜2Mとなるようにする項1〜3のいずれかに記載の方法。項5. 第2工程の反応を、25〜65℃で行う項1〜4のいずれかに記載の方法。項6. 第2工程における三フッ化ホウ素の使用量を、反応液の全量に対して5〜15重量%とする項1〜5のいずれかに記載の方法 項7. 第1工程において、疎水性有機溶媒の存在下で有機酸を含む試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させるか、又は第1工程に先立ち、有機酸を含む試料を疎水性有機溶媒で溶解する予備工程を含み、予備工程の反応混合物を第1工程における有機酸を含む試料とする項1〜6のいずれかに記載の方法。項8. 疎水性有機溶媒としてプロピオン酸メチル又はトルエンを用いる項1〜7のいずれかに記載の方法。項9. 炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数1〜4のアルコキシド、及び三フッ化ホウ素を備える有機酸のアルキルエステル化用キット。項10. さらに、疎水性有機溶媒を備える項9に記載のキット。項11. 疎水性有機溶媒が、プロピオン酸メチル又はトルエンである項10に記載のキット。 本発明方法及びキットによれば、脂質などの試料に含まれる全有機酸をほぼ完全にアルキルエステル化することができる。従って、この処理により得られる有機酸エステルをガスクロマトグラフィー等に供することにより、試料中の有機酸の組成を精度よく分析することができる。 また、本発明方法及びキットによれば、穏和な温度条件で有機酸をアルキルエステル化できるため、揮発性の短鎖脂肪酸のような有機酸が容器から漏出したり、熱に不安定な多価不飽和脂肪酸やシクロプロパン脂肪酸のような有機酸が分解したりすることが回避される。また、高温に加熱する必要が無いため、安全で低コストにアルキルエステル化を行える。 さらに、有機酸を含む脂質などの試料と試薬とを混合するだけの簡単な操作で済み、環流装置などの複雑な装置を必要としないため、設備の整わない実験室でも行うことができる。 以下、本発明を詳細に説明する。(I)有機酸のアルキルエステル化方法 本発明の有機酸のアルキルエステル化方法は、脂質を含む試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させることにより、試料中に含まれる有機酸をアルキルエステル化する第1工程と、 三フッ化ホウ素の存在下で、第1工程の反応混合物と炭素数1〜4の低級アルコールとを反応させることにより、遊離有機酸をアルキルエステル化する第2工程とを含む方法である。試料 本発明の対象となる試料の種類は特に限定されない。例えば、微生物、細胞、血液、動物や植物の組織、食品及びその原料などが挙げられる。微生物、細胞、動植物の組織は、そのまま本発明方法に供することができ、その全有機酸をアルキルエステル化することができる。このようにして得られた有機酸のアルキルエステルをガスクロマトグラフィー等で分析することにより、微生物や細胞の性質を定めたり、分類したりすることができる。また、血液又は血清は、好ましくは乾固して本発明方法に供することができ、その有機酸組成を分析することにより、健康状態のチェックや疾患の診断を行える。また、食品及びその原料はそのまま、又は液状食品は乾固して本発明方法に供することができる。 有機酸は、殆どが脂質に含まれるが、タンパク質や糖質に含まれる場合もある。第1工程 第1工程では、脂質を含む試料と、炭素数1〜4の低級アルコールと、炭素数1〜4のアルコキシドとを混合することにより、試料と上記アルコールと上記アルコキシドとを反応させて、試料中の脂質などに含まれる有機酸をアルキルエステル化する。この反応により、脂質などに含まれるエステル型の有機酸、及び脂質などに含まれる遊離有機酸がエステル化される。 本発明における有機酸は、代表的には脂肪酸であり、その他、クエン酸、フマル酸のようなカルボキシル基を2個以上有する有機酸、環式構造を持ったカルボン酸なども含まれる。 炭素数1〜4の低級アルコールは、試料中の脂質などを溶解する溶媒となるとともに、アルキル基の供与体となる。この低級アルコールの使用量は、特に限定されず、試料に対して過剰量を添加すればよい。 炭素数1〜4のアルコキシドは、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシドなどのいずれであってもよい。このアルコキシドは、反応液をアルカリ性にして、エステル交換反応を可能とするとともに、アルキル基の供与体となる。 炭素数1〜4のアルコキシドの使用量は、反応液中の最終濃度として、通常0.05〜2M程度とすればよく、0.5〜1.5M程度が好ましく、0.5〜1.2M程度がより好ましい。上記範囲であれば、十分にエステル交換反応を行える。また、アルコキシド濃度を高くすると、第2工程でその分高濃度の三フッ化ホウ素を用いて反応液を酸性にする必要が生じるため、適正な液量とするために上記濃度範囲が好ましい。 反応は、通常、20〜60℃程度の温度で、0.5〜120分間程度行えばよい。中でも、ステロールエステルを分析対象にする場合は、比較的高温の37〜50℃、好ましくは37〜45℃程度で、45〜90分間程度行うことが好ましい。また、ステロールエステルを分析対象とせず、トリアシルグリセロール、グリセロリン脂質などを分析対象とする場合は、比較的低温でもエステル交換反応が進行するため、20〜40℃程度で、好ましくは25〜37℃程度で、1〜4分間程度も行えば十分である。 本発明方法によれば、上記温度及び時間で十分にエステル交換反応が進行する。第2工程 第2工程では、三フッ化ホウ素の存在下で、第1工程の反応生成物と炭素数1〜4の低級アルコールとを反応させることにより、遊離有機酸をアルキルエステル化する。脂質中に最初から含まれる遊離有機酸であって第1工程ではアルキル化されなかったもの、及び第1工程のエステル交換反応で副成した遊離有機酸を、第2工程でアルキルエステル化することができる。 三フッ化ホウ素は、第1工程でアルカリ性となった反応液を酸性にして、遊離脂肪酸のアルキル化を進行させる役割を果たす。三フッ化ホウ素の使用量は、反応液の全量に対して、通常5〜15重量%程度とすればよく、8〜12重量%程度が好ましい。上記範囲であれば、反応液を酸性にして、遊離有機酸のアルキルエステル化反応を十分に進行させることができる。 炭素数1〜4の低級アルコールは、アルキル基の供与体となる。このアルコールの使用量は、過剰量とすればよい。反応は、通常、25〜65℃程度の温度で、2〜60分間程度行えばよい。好ましくは、35〜50℃程度の温度で、5〜30分間程度行えばよい。さらにより好ましくは、35〜45℃程度の温度で、10〜30分間程度行えばよい。上記温度及び時間であれば、十分に遊離有機酸をアルキルエステル化することができる。脂質の溶解 上記第1工程において、又は上記第1工程に先立ち、試料中の脂質を疎水性溶媒を用いて溶解する予備工程を行うことが好ましい。 第1工程では、炭素数1〜4のアルコールを使用することにより、試料中の脂質を溶解させるが、例えばステロールエステルのような疎水性の高い脂質は低級アルコールでは溶解させ難い。従って、脂質にこのような高疎水性脂質が含まれる場合であってこれを分析対象にしたい場合は、疎水性の高い有機溶媒を用いて試料中の脂質の溶解性を高めることが好ましい。 第1工程において、疎水性有機溶媒の存在下で、試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させてもよい。また、予備工程で脂質を溶解させる場合は、第1工程では、予備工程における反応混合物を、脂質を含む試料として用いればよい。 このような溶媒としては、プロピオン酸のような有機酸の炭素数1〜4の低級アルコールエステル、トルエンなど芳香族溶媒、tert-ブチルメチルエーテルのようなエーテル類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。中でも、最終的なアルキル化効率を高くする上で、プロピオン酸のような有機酸の炭素数1〜4の低級アルコールエステル、トルエンなど芳香族溶媒、tert-ブチルメチルエーテルのようなエーテル類が好ましい。また、有機酸の炭素数1〜4の低級アルコールエステルを使用する場合は、試料に水が含まれている場合に、このエステルが競合して加水分解され、分析対象となる脂質の加水分解による遊離脂肪酸の生成が抑えられる。 溶媒の使用量は、試料に対して過剰量とすればよい。アルキル基 アルキルエステル化された有機酸を分析に供するには、本発明方法の産物である有機酸エステルのアルキル基の種類を統一する必要がある。 従って、第1工程で使用する低級アルコールと、第1工程で使用するアルコキシドと、第2工程で使用する低級アルコールの炭素数は統一する。炭素数が14以上の比較的長鎖の脂肪酸のような分子量の大きい有機酸を分析対象にする場合は、最も短鎖のアルコールであるメタノール及びメトキシドを用いて、有機酸のアルキルエステルの揮発性を高め、溶出時間を早くするのが好ましい。 一方、炭素数が12より小さい比較的短鎖の脂肪酸のような分子量の小さい有機酸を分析対象にする場合は、エチルエステル化、プロピルエステル化、ブチルエステル化等により揮発性を低くして、試料が蒸散してしまうのを防止するのが好ましい。 さらに、第1工程、又は予備工程で疎水性溶媒として有機酸アルキルエステルを使用する場合は、そのアルキル基の炭素数も、第1工程及び第2工程で供与するアルキル基と同じにする必要がある。例えば、第1工程及び第2工程でメタノール及びメトキシドを使用する場合は、有機酸メチルを使用する必要がある。また、トルエンのような芳香族溶媒を使用する場合は、第1工程及び第2工程で供与するアルキル基と同じアルキル基を有するアルコールを使用する必要がある。有機酸アルキルエステルの抽出 本発明方法では、さらに、第2工程の反応生成物をヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、tert.-ブチルメチルエーテルのようなエーテルなどの有機溶媒で抽出してもよい。さらに、この有機溶媒層を水で洗浄し、再度有機溶媒層を回収してもよい。通常は、このようにして回収された有機溶媒層をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等による分析に供する。(II)有機酸アルキルエステル化用キット 本発明の有機酸アルキルエステル化用キットは、炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数1〜4のアルコキシド、及び三フッ化ホウ素を備える。さらに、疎水性の高い有機溶媒を備えていてもよい。これらの試薬については、前述した通りである。実施例 以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例1(醸造酵母の細胞内有機酸の分析)<試料> 脂質を含む試料として、月桂冠株式会社の保有菌株である、清酒酵母OSI-1103株(きょうかい701号酵母から一倍体株として分離)と、きょうかい701号酵母の変異処理により得たセルレニン耐性変異株である7-C-8株(FERM P-8452)との2株を用いた。7-C-8株は、脂肪酸合成阻害剤であるセルレニンに耐性を獲得した変異株であり、カプロン酸エチルを高生産し、その前駆体であるカプロン酸も親株OSI-1103の約10倍生産する。 上記2株を、それぞれYPD10培地(10% グルコース, 2% ポリペプトン, 1% 酵母エキス)を用いて、30℃で48時間静置培養し、定常期まで培養した。このようにして培養した酵母を、蒸留水で2回洗浄し、一晩凍結乾燥することにより乾燥酵母とした。<メチル化> 凍結乾燥酵母100mgとプロピオン酸メチル0.5mlとを混合し、室温で5分間vortexにて攪拌した。この混合物に1M CH3ONa/メタノール0.5mlを添加して、vortexで 1分間攪拌した後、37℃にて1時間反応させた。この混合物に、30重量%の三フッ化ホウ素/メタノール500μlを添加してvortexにて1分間攪拌した後、37℃にて20分間反応させた。 反応混合物にヘキサン1mlを添加し、vortexにて1分間攪拌した後、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層を分取し、水1mlで洗浄し、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層約1mlを得た。<GC-MS分析> ヘキサン層2mlをシリカカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))に注入し、ヘキサン5mlで洗浄し、酢酸メチル/ヘキサン(容量比1.5/98.5)6mlで溶出させることにより、脂肪酸メチルを精製した。分析条件を以下に示す。GC-MS分析(SCANおよびSIM)機器 :6890 GC/5973i MSD (Agilent)カラム :SP-2380 (30m×0.25mm ID,0.20μm film)カラムオーブン:50℃で2 分間保った後、4℃/分で250℃まで昇温し、250℃で15分間保つ検出 :MSD, 230℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :2.0 μl, Split-less, 250℃ GC-MS分析の結果を図1に示す。7-C-8株では、OSI-1103株では検出されない炭素数6の低級脂肪酸に由来するピークが検出された。7-C-8株は、生成する脂肪酸の鎖長が短くなることにより香気成分の生成量が多くなることが知られているが、このことが本発明方法により実証された。本発明の方法では、37℃という低温で反応させるため、揮発し易い低級脂肪酸をも正確に検出できることが分かる。実施例2(試料量の検討) 脂質を含む試料として、月桂冠株式会社の保有菌株である、清酒酵母OSI-1103株を用いた。この株をYPD10培地を用いて30℃で48時間静置培養し、定常期まで培養した。このようにして培養した酵母を、蒸留水で2回洗浄し、一晩凍結乾燥することにより乾燥酵母とした。<メチル化>凍結乾燥酵母10mg、50mg、100mgとプロピオン酸メチル0.5mlとを混合し、室温で5分間vortexにて攪拌した。この混合物に1M CH3ONa /メタノール0.5mlを添加して、vortexで30秒間攪拌した後、37℃にて1時間反応させた。この混合物に、30重量%の三フッ化ホウ素/メタノール500μlを添加してvortexにて30秒間攪拌した後、37℃にて20分間反応させた。 反応混合物にヘキサン1mlを添加し、vortexにて1分間攪拌した後、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層を分取し、水1mlで洗浄し、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層約1mlを得た。<GC-MS分析> シリカカートリッジによる精製は実施例1と同様にして行った。分析条件は以下の通りである。キャピラリーGC分析機器 :Shimadzu GC-17Aカラム :SP-2380(30m×0.25mm ID,0.20μm film)カラムオーブン:50℃で2分間, 10℃/分間で250℃まで昇温し、250℃で8分間保つ検出 :FID, 260℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :2.0μl, Split-less, 250℃ 酵母菌体の使用量と合計脂肪酸濃度との関係を図2に示す。図2から、本発明方法は、定量性が良好であることが分かる。実施例3(GC-FIDによる測定) 実施例1において、試料として清酒酵母OSI-1103株を用い、凍結乾燥酵母の使用量を50mgとし、GC-MSに代えてGC-FIDを用いた他は、実施例1と同様の操作を行った。 また、標準脂肪酸試料として、直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットEC10A-1KT(SUPELCO)を用いて同様にしてメチル化し、GC-FIDにて脂肪酸組成を測定した。この直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットには、カプロン酸 (C6:0), カプリル酸(オクタン酸)(C8:0), カプリン酸(デカン酸)(C10:0), ラウリン酸(C12:0), ミリスチン酸(C14:0), パルミチン酸(C16:0), ステアリン酸 (C18:0)が含まれている。反応に供した脂肪酸量は、各脂肪酸濃度100ppmの脂肪酸混合液を100μlとした。 結果を図3に示す。図3より、検出感度の低いGC-FIDを用いた場合も、GC-MSを用いる場合と同様に脂肪酸の組成を測定できたことが分かる。実施例4(メチル化反応温度の検討) 実施例3で用いた直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットEC10A-1KT(SUPELCO)を試料として、実施例1と同様の操作で脂肪酸をメチル化した。但し、反応温度は37℃、及び100℃の2通りとした。また、反応に供した脂肪酸量は、各脂肪酸濃度100ppmの脂肪酸混合液を100μlとした。メチル化された試料を以下の条件でGC-MS分析した。GC-MS分析条件(SCANおよびSIM)機器 :6890 GC/5973i MSD (Agilent)カラム :SP-2380 (30m×0.25mm ID,0.20μm film)カラムオーブン:50℃で2 分間保った後、4℃/分で250℃まで昇温し、250℃で15分間保つ検出 :MSD, 230℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :2.0 μl, Split-less, 250℃ 結果を以下の表1に示す。 表1より、37℃でも100℃の場合とほぼ同様のメチル化率が得られたことが分かる。実施例5(大腸菌の脂肪酸組成の測定)<試料大腸菌> 摺り合わせ小試験管φ12.5 mm×165 mm に、大腸菌K-12株の対数増殖期の培養液を取り、遠心分離して沈殿させた大腸菌ペレットを1〜2時間減圧デシケータで乾燥させた。乾燥重量約 20 mgの大腸菌を試料として用いた。<メチル化> メチル化試薬として以下の試薬を準備または調製した。(1)1 M CH3ONa/メタノール(2)プロピオン酸メチル(3)30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール(4)ヘキサン 精製用試薬として以下の試薬を準備または調製した。(5)シリカゲルカラム Silicycle (6)ヘキサン(7)1.5容量% 酢酸メチル/ヘキサン 上記乾燥試料に、プロピオン酸メチル 0.5 ml を加えた。次いで、CH3ONa/メタノール試薬 0.5 ml を加えた。反応液中のCH3ONa濃度は0.5Mである。この混合液を37℃で1時間放置し、グリセロ脂質とステロールエステルの脂肪酸をメチル化した。 次いで、30重量%三フッ化ホウ素/メタノール試薬 0.5 ml を加えた。反応液中の三フッ化ホウ素濃度は8重量%である。この混合液を37℃で 20分間放置して、遊離脂肪酸をメチル化した。 次いで、ヘキサン 1 ml を加えて、ボルテックスで混合し、遠心して2層に分離した後、境界面の白い濁った層が混ざらないように上層のヘキサン層を別の試験管に取った。採取したヘキサン層に水 1 ml を加えて撹拌、洗浄し、ヘキサン層(上層)を別の小試験管に取った。 GC 分析にキャピラリーカラムを使用するため、以下のようにして脂肪酸メチルを精製した。即ち、ヘキサン層をシリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))に注入し、1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン混合液 3 ml で脂肪酸メチルを溶出させた。1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン溶出液を摺り合わせ試験管にとってロータリーエバポレータで濃縮し、GC カラムに注入した。GC分析 このようにして得た試料を少量のヘキサンに溶解し、以下の条件でGC分析を行った。機器:Shimadzu GC-2014カラム:SPELCOWAX 10 (30 m×0.53 mm×1μm)カラム温度:185℃検出器:FIDキャリアガス:窒素、4.8 ml/分注入:1μl, split-less, 260℃ 不安定なシクロプロパン脂肪酸と、熱に安定なパルミチン酸(C16:0)との比率について検討すると、以下の通りであった。シクロプロパン環を持った炭素数17の脂肪酸/パルミチン酸=0.64シクロプロパン環を持った炭素数19の脂肪酸/パルミチン酸=0.15比較例1 実施例5と同様の大腸菌試料を用いて、以下の塩化水素−メタノール法で脂肪酸をメチル化し、実施例5と同様にしてGC分析した。<メチル化> メチル化試薬として以下の試薬を準備または調製した。(1)5重量% 塩化水素/メタノール(2)ヘキサン 精製用試薬として以下の試薬を準備または調製した。(5)シリカゲルカラム Silicycle (6)ヘキサン(7)1.5容量% 酢酸メチル/ヘキサン 乾燥試料を耐圧ネジ口小試験管(φ16.5 mm×105 mm)にとり、5重量%塩化水素/メタノール試薬 1 ml を加え、100℃で1時間加熱し、大腸菌脂質の脂肪酸をメチル化した。次いで、ヘキサン 1 ml を加えて、ボルテックスで混合し、遠心して2層に分離した後、上層のヘキサン層を別の試験管に取った。採取したヘキサン層に水 1 ml を加えて撹拌、洗浄し、ヘキサン層(上層)を別の小試験管に取った。GC 分析にキャピラリーカラムを使用するため、実施例5と同様にして、即ち以下のようにして脂肪酸メチルを精製した。ヘキサン層をシリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))に注入し、1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン混合液 3 ml で脂肪酸メチルを溶出させた。1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン溶出液を摺り合わせ試験管にとってロータリーエバポレータで濃縮し、GC カラムに注入した。 不安定なシクロプロパン脂肪酸と、熱に安定なパルミチン酸(C16:0)との比率について検討すると、以下の通りであった。シクロプロパン環を持った炭素数17の脂肪酸/パルミチン酸=0.19シクロプロパン環を持った炭素数19の脂肪酸/パルミチン酸=0.04 実施例5と比較例1との比較から、本発明方法では、不安定な脂肪酸が分解されることなく、その回収率が高いことが分かる。実施例6(血液の脂肪酸組成の測定)<試料> 実施例5において、大腸菌試料に代えて、ヒト血液 0.04mlを BHT 処理濾紙に着点吸収させ、減圧デシケータで 30分乾燥したものを用いた。 BHT 処理濾紙は、0.05% BHTを含むアセトンに濾紙(ワットマン 3MM)を数分間浸し、別の同組成のアセトンにもう一度浸したのち風乾し、さらに 30分以上減圧乾燥させることにより作製した。濾紙は処理した後 1.5 cm 角に切って用いた。<メチル化> 脂肪酸のメチル化は、実施例5と同様にして行った。<GC分析>このようにして得た試料を少量のヘキサンに溶解し、以下の条件でGC分析を行った。機器:Shimadzu GC-8Aカラム:10% SP-2340 on Chromosorb WAW (2 m×3 mm ガラスカラム)カラム温度:175℃〜240℃、昇温3℃/分検出器:FIDキャリアガス:窒素、30 ml/分注入:1μl, 260℃得られた脂肪酸組成は以下の通りである。脂肪酸 組成(%)C16:0 29.0C18:0 11.7C18:1 24.7C18:2 15.2C18:3 0.7C20:4 5.1C20:5 1.7C22:6 2.7未同定 9.2 GC分析のクロマトグラフィーチャートを図4に示す。比較例2 実施例6と同じヒト血液試料を用い、加熱ケン化−メチル化法で脂肪酸をメチル化し、さらに実施例6と同じ条件でGC分析を行った。<抽出とケン化> 血液1 mlからクロロホルム 1 mlとメタノール2 mlの混合溶媒を用いて脂質を抽出し、水0.5 mlとクロロホルム2 mlを加えて撹拌、静置してクロロホルム層を摺り合わせ試験管に取った。水0.5 mlとメタノール0.5 mlの混合液で洗浄後、濃縮乾固し、血液脂質を調製した。この血液脂質全量に2 M KOH水性エタノール溶液2 mlを加えて2時間還流加熱した。2 M HClで酸性とし、ジエチルエーテル2 mlで脂肪酸を抽出した。水洗後、濃縮乾固した。<メチル化> 得られた脂肪酸に、10重量% 三フッ化ホウ素/メタノール2 ml を加え、60℃で20分加熱し、メチル化した。ジエチルエーテルで抽出後、水洗、濃縮した。ヘキサンに溶解し、GC カラムに注入した。 比較例2の脂肪酸混合物では、分解産物によるピークが本来の脂肪酸メチルのピークと重なるため(図5のチャート参照)、正確な組成は計算できなかった。 GC分析のクロマトグラフィーチャートを図5に示す。 実施例6と比較例2とを比較すると、本発明方法に係る実施例6では、高度不飽和脂肪酸(アラキドン酸C20:4、エイコサペンタエン酸/EPA C20:5、ドコサヘキサエン酸/DHA C22:6)の回収も良好であった。一方、比較例2では、C20:4、C20:5の前後に加熱による分解産物と思われる複数のピークが見られた。実施例7(各鎖長の脂肪酸のメチル化) 実施例3で用いた直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットEC10A-1KIT(SUPELCO)から、カプリル酸(オクタン酸)(C8:0), カプリン酸(デカン酸)(C10:0),ミリスチン酸(C14:0), パルミチン酸(C16:0), ステアリン酸 (C18:0),炭素数20の飽和脂肪酸(C20:0)と、炭素数11の飽和脂肪酸(C11:0),炭素数21の飽和脂肪酸(C21:0)を試料として用いた。反応に供した脂肪酸量は、各脂肪酸最終濃度500ppmの脂肪酸混合液20μlを試料として用いた。 この脂肪酸混合物について、実施例1と同様にしてメチル化を行った。シリカゲルカートリッジ精製は、次のようにして行った。まずシリカゲルカートリッジに前洗浄液としてヘキサンを3ml注入して流し、洗浄した。次にメチル化をしたサンプルの溶液のうち約1mlをシリカゲルカートリッジに注入し、脂肪酸メチルを吸着させた。これにヘキサンを3ml注入して流し、洗浄した。次に溶出液(酢酸メチル/ヘキサン混合液)3mlを注入し、脂肪酸メチルをカートリッジから溶出させてGC/MSに供した。GC/MS分析機器 :6890 GC/5973i MSD (Agilent)カラム :SP-2380(30m×0.25mm×0.20μm)カラムオーブン:50℃で2分間保った後、 10℃/分で250℃まで昇温させ、250℃で8分間保つ検出 :MSD, 230℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :2.0 μl, Split-less, 250℃ 各脂肪酸の回収率を図6に示す。図6から、C8とC10では回収率が40%から50%と低く、C14からC20では回収率が70%前後と、高かったことがわかる。また、図7に示すように、酵母は奇数鎖脂肪酸をほとんど含まないながらも、C15、C17の脂肪酸は多少含んでおり、C11とC21の脂肪酸は全く含んでいないことが分かる。そのため、酵母の脂肪酸組成を分析する場合は、短鎖脂肪酸ではC11、長鎖脂肪酸ではC21をIS(内部標準)として用いて脂肪酸量を計算するのが妥当であると言える。実施例8(シリカゲルカートリッジへの吸着) 試料として、凍結乾燥酵母10mg(OSI-1103株)を用いた。これらの酵母は、YPD10培地にて30℃、48時間、静置培養したものを用いた。 これらの試料を以下のようにしてメチル化し、シリカゲルカートリッジにより精製した。 凍結乾燥酵母10mgとプロピオン酸メチル0.5mlとを混合し、室温で5分間vortexにて攪拌した。この混合物に1M CH3ONa/メタノール0.5mlとを添加して、vortexで 1分間攪拌した後、37℃にて1時間反応させた。この混合物に、30重量%の三フッ化ホウ素/メタノール500μlを添加してvortexにて1分間攪拌した後、37℃にて20分間反応させた。反応混合物にヘキサン1mlを添加し、vortexにて1分間攪拌した後、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層を分取し、水1mlで洗浄し、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層約1mlを得た。 シリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))をヘキサン3mlで洗浄する。洗浄したシリカゲルカートリッジにヘキサン層を注入し、ヘキサン3mlで洗浄し,酢酸メチル/ヘキサン混合液 3 ml で脂肪酸メチルを溶出させた。酢酸メチル/ヘキサン溶出液をGC-MS分析した。 シリカカートリッジに通したメチル化脂肪酸試料を以下の条件でGC分析した。キャピラリーGC分析機器 :Shimadzu GC-17Aカラム :SP-2380(30m×0.25mm×0.20μm)カラムオーブン:50℃で2分間保った後、10℃/分間で250℃まで昇温度し, 250℃で8分間保つ検出 :FID, 260℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :2.0 μl, Split-less, 250℃ シリカカートリッジへの脂肪酸メチルの吸着を表2に示す。 表2より、希釈なしでは吸着率が4.7%と、非常に低かったが、5倍希釈、10倍希釈ではほぼ100%の吸着率となり、問題なくサンプルの脂肪酸メチルがシリカカラムカートリッジに吸着されることが分かった。実施例9(トルエンとメタノールの混合溶媒を用いたステロールエステルとトリアシルグリセロールの脂肪酸メチルエステル化) 標準脂質としてトリアシルグリセロール(ダイズ油)とステロールエステル(コレステリルオレエート)を用いて、メタノールでは溶けにくいこれら疎水性の強い脂質に対するトルエン系の反応溶媒の効果を検討した。 実施例5では、乾燥大腸菌の脂質脂肪酸をCH3ONa/メタノール/プロピオン酸メチルによってメチルエステル化したが、本実施例では、CH3ONa/メタノール/トルエンを用いてステロールエステルとトリアシルグリセロールの脂肪酸メチルエステル化を行った。<脂質試料> 摺り合わせ小試験管φ12.5 mm×165 mm に、ステロールエステルとしてコレステロールオレエート、トリアシルグリセロールとして大豆油をそれぞれ1mg取った。 メチル化試薬として以下の試薬を準備又は調製した。(1)0.5 M CH3ONa/メタノール-トルエン(体積比は後述する)(2)30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール(3)ヘキサン 精製用試薬として以下の試薬を準備又は調製した。(4)シリカゲルカラム Silicycle 200 mg(5)ヘキサン(6)1.5容量% 酢酸メチル/ヘキサン 上記の脂質試料に、0.50 M CH3ONa のメタノール-トルエン溶液 1 ml を加え、37℃で1時間放置し、ステロールエステルとトリアシルグリセロールの脂肪酸をメチル化した。このとき、メタノールとトルエンの割合は600μl:400μl, 700μl:300μl, 800μl:200μl, 900μl:100μl, 950μl:50μl, 990μl:10μlとした。 次いで、30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール 0.5 ml を加えた。反応液中の三フッ化ホウ素濃度は8重量%である。この混合液を37℃で 20分間放置して、副成した可能性のある遊離脂肪酸をメチル化した。 次いで、 ヘキサン 1 ml を加えて、ボルテックスで混合し、遠心して2層に分離した後、境界面の白い濁った層が混ざらないように上層のヘキサン層を別の試験管に取った。採取したヘキサン層に水 1 ml を加えて撹拌・洗浄し、ヘキサン層(上層)を別の小試験管に取った。 そのヘキサン層を濃縮後、薄層クロマトグラフィで反応の進行を調べた。・シリカゲルプレート:シリカゲル60(メルク(ドイツ))・展開溶媒:ヘキサン/tert.-ブチルメチルエーテル/酢酸=85:15:0.5(体積比)・検出:50重量%硫酸噴霧後、135℃、10分加熱発色。 薄層クロマトグラフィの結果を図8に示す。図8中のレーンSは標準品の脂肪酸メチルとトリアシルグリセロールをアプライした結果である。また、図8のFAMEは、脂肪酸メチルエステルを示す。 図8から、トルエン量が多いほどステロールエステルの脂肪酸メチル化率が高くなることが分かる。ただし、メタノールとトルエンの割合が800μl:200μlかそれ以上にトルエンが多くても変化はない。また、トリアシルグリセロールのメチル化率はトルエンの量に影響を受けないことも分かる。 さらに、プロピオン酸メチル系とは違ってステロールエステルが副成物なく反応し、カラム精製でもメチルエステルがはじめに吸着するためにきれいに精製できるということが示された。実施例10(反応液のトルエンが脂肪酸メチルのカラム精製に及ぼす影響の検討) 実施例9で得られた反応液のうちトルエン400μl〜100μlを含んでいた試料を、シリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))にアプライした後、ヘキサン3ml、次いで1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン3mlで溶出した。得られたヘキサン溶出液と1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン溶出液を濃縮後、シリカゲル薄層クロマトグラフィで分析した。シリカゲル薄層クロマトグラフィの分析条件は実施例9と同様である。 図9に結果を示す。図の左半分はトルエン400〜100μl(メタノール量は600〜900μl、NaOCH3は0.5 M)で反応させ、ヘキサンで抽出して得られた生成物をカラムにかけてヘキサンで溶出したものである。トルエンの量にかかわらず脂肪酸メチル(FAME)が溶出されないので、まだカラムに脂肪酸メチルエステルが吸着されていることが分かる。 なお、メチル化反応にプロピオン酸メチルを含んだ反応液を使うとこの段階で脂肪酸メチルが溶出され、吸着されない不純物や未反応のステロールエステル、トリアシルグリセロールが残っているとそれらが混入する。 その後、図の右半分に示されているように、それぞれのカラムに1.5%酢酸メチルを流すとどのトルエン系の反応液をチャージしたカラムでも脂肪酸メチルだけが純粋に溶出されているのが分かる。実施例11(大腸菌の脂肪酸組成の測定-トルエンとメタノールの混合溶媒を用いた脂肪酸のメチルエステル化) 実施例5では、乾燥大腸菌の脂質脂肪酸をCH3ONa/メタノール/プロピオン酸メチルによってメチルエステル化したが、本実施例では、CH3ONa/メタノール/トルエンを用いてメチルエステル化を行った。<試料大腸菌> 摺り合わせ小試験管φ12.5 mm×165 mm に大腸菌K-12株の対数増殖期の培養液を取り、遠心で沈殿させた大腸菌ペレット約 20 mg を1〜2時間減圧デシケータで乾燥させた。 メチル化試薬として以下の試薬を準備又は調製した。(1)0.5 M CH3ONa/メタノール-トルエン(3:1、体積比)(2)30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール(3)ヘキサン 精製用試薬として以下の試薬を準備又は調製した。(4)シリカゲルカラム Silicycle 200 mg(5)ヘキサン(6)1.5容量% 酢酸メチル/ヘキサン 乾燥試料を摺り合わせ小試験管(φ12.5 mm×165 mm)にとり、0.50 M CH3ONa のメタノール-トルエン(3:1、体積比)溶液 1 ml を加え、37℃で1時間放置し、 グリセロ脂質とステロールエステルの脂肪酸をメチル化した。 次いで、30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール 0.5 ml を加えた。反応液中の三フッ化ホウ素濃度は8重量%である。この混合液を37℃で 20分間放置して、遊離脂肪酸をメチル化した。 次いで、 ヘキサン 1 ml を加えて、ボルテックスで混合し、遠心して2層に分離した後、境界面の白い濁った層が混ざらないように上層のヘキサン層を別の試験管に取った。採取したヘキサン層に水 1 ml を加えて撹拌・洗浄し、ヘキサン層(上層)を別の小試験管に取った。 GC 分析にキャピラリーカラムを使用するため、以下のようにして脂肪酸メチルを精製した。即ち、ヘキサン層をシリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))に注入し、脂肪酸メチルを吸着させ、ヘキサン 3 ml で洗浄し、次いで1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン混合液 3 ml で脂肪酸メチルを溶出させた。酢酸メチル/ヘキサン溶出液を小バイアルに取り、水流アスピレータに接続した減圧デシケータで溶媒を蒸発させ、そのあと少量のヘキサンに溶解して GC 分析した。 なお、パックドカラムを使用する場合は上記の精製操作自体を省略できる。GC分析 GC分析条件は、実施例5と同様とした。得られた脂肪酸組成も実施例5と同様であった。実施例12(血液の脂肪酸組成の測定-トルエンとメタノールの混合溶媒を用いた脂肪酸のメチルエステル化) 試料としてヒト血液0.04をBHT処理濾紙に着点吸収させ、減圧デシケータで30分間乾燥したものを用いた。 BHT 処理濾紙は、0.05% BHTを含むアセトンに、東洋濾紙No.1を数分間浸し、別の0.05% BHTを含むアセトンにもう一度浸したのち風乾し、さらに 30分以上減圧乾燥させた。濾紙は処理した後1.5 cm 角に切って用いた。 乾燥試料を摺り合わせ小試験管(φ12.5 mm×165 mm)にとり、0.50 M CH3ONa のメタノール-トルエン(3:1,体積比)溶液 1 ml を加え、37℃で1時間放置し、 グリセロ脂質とステロールエステルの脂肪酸をメチル化した。 次いで、30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール 0.5 ml を加えた。反応液中の三フッ化ホウ素濃度は8重量%である。この混合液を37℃で 20分間放置して、遊離脂肪酸をメチル化した。 次いで、 ヘキサン 1 ml を加えて、ボルテックスで混合し、遠心して2層に分離した後、境界面の白い濁った層が混ざらないように上層のヘキサン層を別の試験管に取った。採取したヘキサン層に水 1 ml を加えて撹拌・洗浄し、ヘキサン層(上層)を別の小試験管に取った。 GC 分析にキャピラリーカラムを使用するため、以下のようにして脂肪酸メチルを精製した。即ち、ヘキサン層をシリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))に注入し、脂肪酸メチルを吸着させ、ヘキサン 3 ml で洗浄し、次いで1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン混合液 3 ml で脂肪酸メチルを溶出させた。酢酸メチル/ヘキサン溶出液を小バイアルに取り、水流アスピレータに接続した減圧デシケータで溶媒を蒸発させ、そのあと少量のヘキサンに溶解して GC 分析した。 なお、パックドカラムを使用する場合は上記の精製操作自体を省略できる。GC分析 GC分析は、カラム温度が215℃であることを除いて実施例5と同じ条件で行った。そのGC分析の結果を図10に示す。 また、0.50 M CH3ONa/メタノール-トルエン(3:1, 体積比)に替えて,0.50 M CH3ONa/メタノール-プロピオン酸メチル(1:1, 体積比)を用いた以外,実施例12の上記操作と同様にして血液脂質脂肪酸をメチル化、抽出、精製、GC分析した。GC分析の結果を図11に示す。図10よりも全体の溶出時間が若干早まっているが、原因は不明である。 図10、図11から、反応溶媒のメタノール/プロピオン酸メチルをメタノール/トルエンに替えても同じ脂肪酸パターンとピーク形が観測され、また加熱処理をした場合に見られる分解産物のピークも検出されないことが分かる。この結果、カラムの劣化や分析の妨害不純物混入の危険性を排除して、安心して分析できるようになった。実施例13(メチル化率の測定-トルエンを用いた脂肪酸の抽出) 試料として、脂肪酸標準溶液である直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットEC10A-1KIT(SUPELCO)から、カプリン酸(デカン酸)(C10:0),ミリスチン酸(C14:0),パルミチン酸(C16:0), ステアリン酸 (C18:0),炭素数20の飽和脂肪酸(C20:0)と、炭素数11の飽和脂肪酸(C11:0),炭素数21の飽和脂肪酸(C21:0)を試料として用いた。各脂肪酸量が100μgづつになるようにこれらの脂肪酸を混合した。 この脂肪酸混合物と1M CH3ONa/メタノール0.5mlを添加して、vortexで 1分間攪拌した後、50%容量トルエン/50%容量メタノール0.5mlとを混合し、室温で5分間vortexにて攪拌した。この混合物に37℃にて1時間反応させた。この混合物に、30重量%の三フッ化ホウ素/メタノール500μlを添加してvortexにて1分間攪拌した後、37℃にて20分間反応させた。 反応混合物にヘキサン1mlを添加し、vortexにて1分間攪拌した後、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層を分取し、水1mlで洗浄し、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層約1mlを得た。 メチル化した脂肪酸試料をキャピラリーGC分析に供した。分析条件は以下の通りである。GC-FID分析機器 :Shimadzu GC-17Aカラム :SP-2380(30m×0.25mm ID, 0.20μm film)カラムオーブン:50℃で2分間保ち、10℃/分間の速度で250℃まで昇温し、250℃で8分間保つ検出 :FID, 260℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :1.0 μl, Split-less, 250℃ 各脂肪酸のメチル化率を図12に示す。偶数炭素数の脂肪酸と奇数炭素数の脂肪酸とでメチル化率がほぼ同じであった。このことから、一つの内部標準を使用するだけで補正できることが分かる。実施例14(シリカゲルカートリッジへの吸着) 試料として、脂肪酸標準溶液である直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットEC10A-1KIT(SUPELCO)から、カプリン酸(デカン酸)(C10:0),ミリスチン酸(C14:0),パルミチン酸(C16:0), ステアリン酸 (C18:0),炭素数20の飽和脂肪酸(C20:0)と、炭素数11の飽和脂肪酸(C11:0),炭素数21の飽和脂肪酸(C21:0)を試料として用いた。反応に供した脂肪酸量は、各脂肪酸最終濃度500ppmの脂肪酸混合液20μlを試料として用いた。 この脂肪酸混合物について、実施例11と同様にしてメチル化を行った。 シリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))をヘキサン3mlで前洗浄した後、メチル化した反応液をシリカゲルカートリッジにアプライした。 アプライした後にシリカゲルカートリッジを通過した通過液、シリカゲルカートリッジをヘキサン3mlで洗浄してカートリッジを通過した洗浄液、及び1.5容量%酢酸メチル/ヘキサンの組成の溶出液を3mlシリカゲルカートリッジに通液して得られる溶出液を、それぞれGC-FID分析に供した。GC分析条件機器 :Shimadzu GC-17Aカラム :SP-2380(30m×0.25mm ID,0.20μm film) カラムオーブン:50℃で2分間保ち、10℃/分間の速度で 250℃まで昇温し、250℃で8分間保つ検出 :FID, 260℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :1.0 μl, Split-less, 250℃ 通過液及び洗浄液中からは脂肪酸メチルは検出されなかった。一方、溶出液には合計658.2μgの脂肪酸メチルが検出され、これはシリカゲルカートリッジにアプライした反応溶液中に含まれていた脂肪酸メチルの合計量である621.3μgに対して105.9(%)であり、シリカゲルカートリッジに全量が吸着したことが分かる。 また、各脂肪酸メチルの回収率を図13に示す。脂肪酸によってばらつきがあるが、80〜100%の回収率であった。このことから、シリカカートリッジを用いて精製した場合に、どのような長さの脂肪酸であってもほぼ全量が回収できることが分かる。 また、精製による損失が少ないことから、GC-MSのみならずGC-FIDによる分析も行えることが分かる。実施例15(シリカゲルカートリッジへの吸着) 試料として、凍結乾燥酵母1103株の50mgを用いた。この酵母は、YPD培地にて30℃、48時間、静置培養したものを用いた。 この試料50mgを用いて実施例14と同様の検討を行った。 通過液及び洗浄液中からは脂肪酸メチルは検出されなかった。一方、溶出液には合計53.6μgの脂肪酸メチルが検出され、これはシリカゲルカートリッジにアプライした反応溶液中に含まれていた脂肪酸メチルの合計量である54.9μgに対して97.5(%)であり、シリカゲルカートリッジに全量が吸着したことが分かる。 また、各脂肪酸メチルの回収率を図14に示す。脂肪酸によってばらつきがあるが、80〜100%の回収率であった。このことから、シリカゲルカートリッジを用いて精製した場合に、どのような長さの脂肪酸であってもほぼ全量が回収できることが分かる。実施例1で行ったGC-MS分析の結果である。酵母菌体の使用量と合計脂肪酸濃度との関係を示す図である。実施例3で行ったGC-FID分析の結果である。実施例6で行ったGC分析のクロマトグラフィーチャートである。比較例2で行ったGC分析のクロマトグラフィーチャートである。実施例7で行った脂肪酸回収率を示す図である。酵母菌体内の脂肪酸組成を示す図である。大腸菌試料から0.5 M CH3ONa/メタノール/トルエンを用いて脂肪酸をメチル化する場合の、トルエン量とメチル化率との関係を示す図である。血液試料から0.5 M CH3ONa/メタノール/トルエンを用いて脂肪酸をメチル化した場合の、トルエン量と精製カラムへの脂肪酸メチルの吸着との関係を示す図である。血液試料から0.5 M CH3ONa/メタノール/トルエンを用いて調製し、カラム精製した脂肪酸メチルのGC分析のクロマトグラムである。血液試料から0.5 M CH3ONa/メタノール/プロピオン酸メチルを用いて調製し、カラム精製した脂肪酸メチルのGC分析のクロマトグラムである。トルエンを用いて脂肪酸を抽出する場合の、脂肪酸の炭素数とメチル化率との関係を示す図である。トルエンを用いて脂肪酸を抽出する場合の、脂肪酸の炭素数とシリカゲルカートリッジからの脂肪酸メチルの回収率との関係を示す図である。トルエンを用いて脂肪酸を抽出する場合の、脂肪酸の炭素数とシリカゲルカートリッジからの脂肪酸メチルの回収率との関係を示す図である。有機酸を含む試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させることにより、エステル結合した有機酸をアルキルエステル化する第1工程と、 三フッ化ホウ素の存在下で、第1工程の反応混合物と炭素数1〜4の低級アルコールとを反応させることにより、遊離有機酸をアルキルエステル化する第2工程とを含む有機酸のアルキルエステル化方法。第1工程及び第2工程で使用する炭素数1〜4の低級アルコールがメタノールであり、炭素数1〜4のアルコキシドがメトキシドである請求項1に記載の方法。第1工程の反応を、20〜60℃で行う請求項1又は2に記載の方法。第1工程における炭素数1〜4のアルコキシドの使用量を、反応液中の最終濃度が0.05〜2Mとなるようにする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。第2工程の反応を、25〜65℃で行う請求項1〜4のいずれかに記載の方法。第2工程における三フッ化ホウ素の使用量を、反応液の全量に対して5〜15重量%とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法 第1工程において、疎水性有機溶媒の存在下で有機酸を含む試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させるか、又は第1工程に先立ち、有機酸を含む試料を疎水性有機溶媒で溶解する予備工程を含み、予備工程の反応混合物を第1工程における有機酸を含む試料とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。疎水性有機溶媒としてプロピオン酸メチル、又はトルエンを用いる請求項1〜7のいずれかに記載の方法。炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数1〜4のアルコキシド、及び三フッ化ホウ素を備える有機酸のアルキルエステル化用キット。さらに、疎水性有機溶媒を備える請求項9に記載のキット。疎水性有機溶媒が、プロピオン酸メチル又はトルエンである請求項10に記載のキット。 【課題】穏和な温度下で、脂質に含まれる全有機酸を十分にアルキルエステル化できる有機酸のアルキルエステル化方法、及びキットを提供する。【解決手段】試料中の脂質と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させることにより、脂質中に含まれる有機酸をアルキルエステル化する第1工程と、三フッ化ホウ素の存在下で、第1工程の反応混合物と炭素数1〜4の低級アルコールとを反応させることにより、遊離有機酸をアルキルエステル化する第2工程とを含む有機酸のアルキルエステル化方法。炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数1〜4のアルコキシド、及び三フッ化ホウ素を備える有機酸のアルキルエステル化用キット。【選択図】図1


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特許公報(B2)_カルボン酸のアルキルエステル化方法及びキット

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_カルボン酸のアルキルエステル化方法及びキット
出願番号:2006101249
年次:2012
IPC分類:C07B 41/12,C11C 3/10,C11C 3/02,C07C 69/24,C07C 69/58,C07C 69/533,C07C 67/03,C07C 67/08,C07B 61/00,G01N 30/06


特許情報キャッシュ

中島 史雄 市原 謙一 堤 浩子 秦 洋二 JP 4942380 特許公報(B2) 20120309 2006101249 20060331 カルボン酸のアルキルエステル化方法及びキット 月桂冠株式会社 000165251 市原 謙一 505447951 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 多田 央子 100118382 中野 睦子 100108084 林 雅仁 100115484 中島 史雄 市原 謙一 堤 浩子 秦 洋二 JP 2005350049 20051202 20120530 C07B 41/12 20060101AFI20120510BHJP C11C 3/10 20060101ALI20120510BHJP C11C 3/02 20060101ALI20120510BHJP C07C 69/24 20060101ALI20120510BHJP C07C 69/58 20060101ALI20120510BHJP C07C 69/533 20060101ALI20120510BHJP C07C 67/03 20060101ALI20120510BHJP C07C 67/08 20060101ALI20120510BHJP C07B 61/00 20060101ALN20120510BHJP G01N 30/06 20060101ALN20120510BHJP JPC07B41/12C11C3/10C11C3/02C07C69/24C07C69/58C07C69/533C07C67/03C07C67/08C07B61/00 300G01N30/06 A C07B 41/12 C07C 67/03 C07C 67/08 C07C 69/24 C07C 69/533 C07C 69/58 CA(STN) CASREACT(STN) REGISTRY(STN) 特開昭57−149400(JP,A) 特開2002−322488(JP,A) Journal of Oleo Science,2003年,Vol.52,p.589−596 社団法人 日本油脂化学協会編,油脂化学便覧,1992年 1月15日,改訂三版,277−290頁 17 2007176918 20070712 23 20081006 特許法第30条第1項適用 平成17年6月4日 日本農芸化学会関西支部開催の「日本農芸化学会関西支部第439回講演会」にて文書をもって発表 野口 勝彦 本発明は、生物試料中に含まれる脂質などを構成する有機酸の組成をガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等により分析するに先立って、有機酸をアルキルエステル化する方法、及びこの方法に用いるキットに関する。 細胞、菌体、血液などの生物試料中の脂質などに含まれる脂肪酸のような有機酸の組成の分析は、菌体や細胞の同定や機能評価、特定疾患の診断などに有用である。 有機酸の組成の分析は、通常、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィー等によって行われる。感度が高いために少量の試料で足りる点で、ガスクロマトグラフィーが採用されることが多い。有機酸試料をガスクロマトグラフィーに供するには気化しやすい状態にする必要があるため、ガスクロマトグラフィーによる分析に先立ち、有機酸はメチルエステルなどのアルキルエステルに変換される。 脂肪酸のアルキルエステル化方法として、従来は、生体試料から溶媒を用いて脂質を抽出し、水酸化ナトリウムを用いて90℃程度の加熱下にケン化し、遊離した脂肪酸塩をそのまま、または脂肪酸にしてから三フッ化ホウ素を用いて環流加熱下にアルキルエステル化する方法が行われている。また、脂質をナトリウムメトキシドのメタノール溶液中で還流加熱してエステル型脂肪酸をアルキルエステル化する方法も行われている。また、生体試料から抽出した脂質中に含まれるエステル型又は遊離型の脂肪酸を、低級アルコールを用いて、塩化水素や硫酸触媒の存在下で100℃程度の加熱下にアルキルエステル化する方法も行われている。 しかし、これらのアルキルエステル化方法では、試料を高温に加熱する必要があるため、多価不飽和脂肪酸やシクロプロパン脂肪酸など不安定な脂肪酸の分解、低級脂肪酸アルキルエステルの蒸散消失などにより、定量性が低下する。 また、非特許文献1は、脂質を含む生物試料とプロピオン酸メチルとを混合し、次いでこの混合物に水酸化ナトリウム及びメタノールを添加して37℃で1時間反応させた後、酢酸で中和して反応を終了させる脂肪酸のメチル化方法を開示している。 しかし、この方法では、水酸化ナトリウムを用いるため、ケン化反応によって遊離脂肪酸が生成しやすい。また、エステル化された脂肪酸をメチルエステル化することはできるが、脂質に含まれる遊離脂肪酸や、エステル交換に伴い副生する遊離脂肪酸を十分にメチルエステル化することはできず、その結果、脂肪酸組成の分析精度が悪くなる。さらに、疎水性溶媒として用いたプロピオン酸メチルがステロールエステルと反応して副成するステロールのプロピオン酸エステルが、ガスクロマトグラフ分析を妨害し、またカラムを劣化させる。Ken'ichi Ichihara, Chiaki Yamaguchi, Hiroaki Nishijima, Kazumi Saito (2003) Preparation of fatty acid methyl esters from sterol esters. Journal of The American Oil Chemists' Society 80, 833-834. 本発明は、穏和な温度下で、脂質などの試料に含まれる全有機酸を十分にアルキルエステル化できる有機酸のアルキルエステル化方法、及びキットを提供することを課題とする。 上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ね、有機酸を含む試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させる第1工程と、その反応混合物を、三フッ化ホウ素の存在下で、炭素数1〜4の低級アルコールと反応させる第2工程とを経ることにより、37℃程度の穏和な条件で、脂質などの試料中に含まれるエステル化された有機酸だけでなく、試料中の遊離有機酸やエステル交換反応に伴い生成する遊離有機酸もほぼ完全にアルキルエステル化できることを見出した。 本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の有機酸のアルキルエステル化方法及びキットを提供する。項1. 有機酸を含む試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させることにより、有機酸をアルキルエステル化する第1工程と、 三フッ化ホウ素の存在下で、第1工程の反応混合物と炭素数1〜4の低級アルコールとを反応させることにより、遊離有機酸をアルキルエステル化する第2工程とを含む有機酸のアルキルエステル化方法。項2. 第1工程及び第2工程で使用する炭素数1〜4の低級アルコールがメタノールであり、炭素数1〜4のアルコキシドがメトキシドである項1に記載の方法。項3. 第1工程の反応を、20〜60℃で行う項1又は2に記載の方法。項4. 第1工程における炭素数1〜4のアルコキシドの使用量を、反応液中の最終濃度が0.05〜2Mとなるようにする項1〜3のいずれかに記載の方法。項5. 第2工程の反応を、25〜65℃で行う項1〜4のいずれかに記載の方法。項6. 第2工程における三フッ化ホウ素の使用量を、反応液の全量に対して5〜15重量%とする項1〜5のいずれかに記載の方法 項7. 第1工程において、疎水性有機溶媒の存在下で有機酸を含む試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させるか、又は第1工程に先立ち、有機酸を含む試料を疎水性有機溶媒で溶解する予備工程を含み、予備工程の反応混合物を第1工程における有機酸を含む試料とする項1〜6のいずれかに記載の方法。項8. 疎水性有機溶媒としてプロピオン酸メチル又はトルエンを用いる項1〜7のいずれかに記載の方法。項9. 炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数1〜4のアルコキシド、及び三フッ化ホウ素を備える有機酸のアルキルエステル化用キット。項10. さらに、疎水性有機溶媒を備える項9に記載のキット。項11. 疎水性有機溶媒が、プロピオン酸メチル又はトルエンである項10に記載のキット。 本発明方法及びキットによれば、脂質などの試料に含まれる全有機酸をほぼ完全にアルキルエステル化することができる。従って、この処理により得られる有機酸エステルをガスクロマトグラフィー等に供することにより、試料中の有機酸の組成を精度よく分析することができる。 また、本発明方法及びキットによれば、穏和な温度条件で有機酸をアルキルエステル化できるため、揮発性の短鎖脂肪酸のような有機酸が容器から漏出したり、熱に不安定な多価不飽和脂肪酸やシクロプロパン脂肪酸のような有機酸が分解したりすることが回避される。また、高温に加熱する必要が無いため、安全で低コストにアルキルエステル化を行える。 さらに、有機酸を含む脂質などの試料と試薬とを混合するだけの簡単な操作で済み、環流装置などの複雑な装置を必要としないため、設備の整わない実験室でも行うことができる。 以下、本発明を詳細に説明する。(I)有機酸のアルキルエステル化方法 本発明の有機酸のアルキルエステル化方法は、脂質を含む試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させることにより、試料中に含まれる有機酸をアルキルエステル化する第1工程と、 三フッ化ホウ素の存在下で、第1工程の反応混合物と炭素数1〜4の低級アルコールとを反応させることにより、遊離有機酸をアルキルエステル化する第2工程とを含む方法である。試料 本発明の対象となる試料の種類は特に限定されない。例えば、微生物、細胞、血液、動物や植物の組織、食品及びその原料などが挙げられる。微生物、細胞、動植物の組織は、そのまま本発明方法に供することができ、その全有機酸をアルキルエステル化することができる。このようにして得られた有機酸のアルキルエステルをガスクロマトグラフィー等で分析することにより、微生物や細胞の性質を定めたり、分類したりすることができる。また、血液又は血清は、好ましくは乾固して本発明方法に供することができ、その有機酸組成を分析することにより、健康状態のチェックや疾患の診断を行える。また、食品及びその原料はそのまま、又は液状食品は乾固して本発明方法に供することができる。 有機酸は、殆どが脂質に含まれるが、タンパク質や糖質に含まれる場合もある。第1工程 第1工程では、脂質を含む試料と、炭素数1〜4の低級アルコールと、炭素数1〜4のアルコキシドとを混合することにより、試料と上記アルコールと上記アルコキシドとを反応させて、試料中の脂質などに含まれるエステル型の有機酸を上記アルコールと上記アルコキシドに相当するアルキルエステルに変換する。 本発明における有機酸は、代表的には脂肪酸であり、その他、クエン酸、フマル酸のようなカルボキシル基を2個以上有する有機酸、環式構造を持ったカルボン酸なども含まれる。 炭素数1〜4の低級アルコールは、試料中の脂質などを溶解する溶媒となるとともに、アルキル基の供与体となる。この低級アルコールの使用量は、特に限定されず、試料に対して過剰量を添加すればよい。 炭素数1〜4のアルコキシドは、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシドなどのいずれであってもよい。このアルコキシドは、反応液をアルカリ性にして、エステル交換反応を可能とするとともに、アルキル基の供与体となる。 炭素数1〜4のアルコキシドの使用量は、反応液中の最終濃度として、通常0.05〜2M程度とすればよく、0.5〜1.5M程度が好ましく、0.5〜1.2M程度がより好ましい。上記範囲であれば、十分にエステル交換反応を行える。また、アルコキシド濃度を高くすると、第2工程でその分高濃度の三フッ化ホウ素を用いて反応液を酸性にする必要が生じるため、適正な液量とするために上記濃度範囲が好ましい。 反応は、通常、20〜60℃程度の温度で、0.5〜120分間程度行えばよい。中でも、ステロールエステルを分析対象にする場合は、比較的高温の37〜50℃、好ましくは37〜45℃程度で、45〜90分間程度行うことが好ましい。また、ステロールエステルを分析対象とせず、トリアシルグリセロール、グリセロリン脂質などを分析対象とする場合は、比較的低温でもエステル交換反応が進行するため、20〜40℃程度で、好ましくは25〜37℃程度で、1〜4分間程度も行えば十分である。 本発明方法によれば、上記温度及び時間で十分にエステル交換反応が進行する。第2工程 第2工程では、三フッ化ホウ素の存在下で、第1工程の反応生成物と炭素数1〜4の低級アルコールとを反応させることにより、遊離有機酸をアルキルエステル化する。脂質中に最初から含まれる遊離有機酸であって第1工程ではアルキル化されなかったもの、及び第1工程のエステル交換反応で副成した遊離有機酸を、第2工程でアルキルエステル化することができる。 三フッ化ホウ素は、第1工程でアルカリ性となった反応液を酸性にして、遊離脂肪酸のアルキル化を進行させる役割を果たす。三フッ化ホウ素の使用量は、反応液の全量に対して、通常5〜15重量%程度とすればよく、8〜12重量%程度が好ましい。上記範囲であれば、反応液を酸性にして、遊離有機酸のアルキルエステル化反応を十分に進行させることができる。 炭素数1〜4の低級アルコールは、アルキル基の供与体となる。このアルコールの使用量は、過剰量とすればよい。反応は、通常、25〜65℃程度の温度で、2〜60分間程度行えばよい。好ましくは、35〜50℃程度の温度で、5〜30分間程度行えばよい。さらにより好ましくは、35〜45℃程度の温度で、10〜30分間程度行えばよい。上記温度及び時間であれば、十分に遊離有機酸をアルキルエステル化することができる。脂質の溶解 上記第1工程において、又は上記第1工程に先立ち、試料中の脂質を疎水性溶媒を用いて溶解する予備工程を行うことが好ましい。 第1工程では、炭素数1〜4のアルコールを使用することにより、試料中の脂質を溶解させるが、例えばステロールエステルのような疎水性の高い脂質は低級アルコールでは溶解させ難い。従って、脂質にこのような高疎水性脂質が含まれる場合であってこれを分析対象にしたい場合は、疎水性の高い有機溶媒を用いて試料中の脂質の溶解性を高めることが好ましい。 第1工程において、疎水性有機溶媒の存在下で、試料と炭素数1〜4の低級アルコールと炭素数1〜4のアルコキシドとを反応させてもよい。また、予備工程で脂質を溶解させる場合は、第1工程では、予備工程における反応混合物を、脂質を含む試料として用いればよい。 このような溶媒としては、プロピオン酸のような有機酸の炭素数1〜4の低級アルコールエステル、トルエンなど芳香族溶媒、tert-ブチルメチルエーテルのようなエーテル類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。中でも、最終的なアルキル化効率を高くする上で、プロピオン酸のような有機酸の炭素数1〜4の低級アルコールエステル、トルエンなど芳香族溶媒、tert-ブチルメチルエーテルのようなエーテル類が好ましい。また、有機酸の炭素数1〜4の低級アルコールエステルを使用する場合は、試料に水が含まれている場合に、このエステルが競合して加水分解され、分析対象となる脂質の加水分解による遊離脂肪酸の生成が抑えられる。 溶媒の使用量は、試料に対して過剰量とすればよい。アルキル基 アルキルエステル化された有機酸を分析に供するには、本発明方法の産物である有機酸エステルのアルキル基の種類を統一する必要がある。 従って、第1工程で使用する低級アルコールと、第1工程で使用するアルコキシドと、第2工程で使用する低級アルコールの炭素数は統一する。炭素数が14以上の比較的長鎖の脂肪酸のような分子量の大きい有機酸を分析対象にする場合は、最も短鎖のアルコールであるメタノール及びメトキシドを用いて、有機酸のアルキルエステルの揮発性を高め、溶出時間を早くするのが好ましい。 一方、炭素数が12より小さい比較的短鎖の脂肪酸のような分子量の小さい有機酸を分析対象にする場合は、エチルエステル化、プロピルエステル化、ブチルエステル化等により揮発性を低くして、試料が蒸散してしまうのを防止するのが好ましい。 さらに、第1工程、又は予備工程で疎水性溶媒として有機酸アルキルエステルを使用する場合は、そのアルキル基の炭素数も、第1工程及び第2工程で供与するアルキル基と同じにする必要がある。例えば、第1工程及び第2工程でメタノール及びメトキシドを使用する場合は、有機酸メチルを使用する必要がある。また、トルエンのような芳香族溶媒を使用する場合は、第1工程及び第2工程で供与するアルキル基と同じアルキル基を有するアルコールを使用する必要がある。有機酸アルキルエステルの抽出 本発明方法では、さらに、第2工程の反応生成物をヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、tert.-ブチルメチルエーテルのようなエーテルなどの有機溶媒で抽出してもよい。さらに、この有機溶媒層を水で洗浄し、再度有機溶媒層を回収してもよい。通常は、このようにして回収された有機溶媒層をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等による分析に供する。(II)有機酸アルキルエステル化用キット 本発明の有機酸アルキルエステル化用キットは、炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数1〜4のアルコキシド、及び三フッ化ホウ素を備える。さらに、疎水性の高い有機溶媒を備えていてもよい。これらの試薬については、前述した通りである。実施例 以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例1(醸造酵母の細胞内有機酸の分析)<試料> 脂質を含む試料として、月桂冠株式会社の保有菌株である、清酒酵母OSI-1103株(きょうかい701号酵母から一倍体株として分離)と、きょうかい701号酵母の変異処理により得たセルレニン耐性変異株である7-C-8株(FERM P-8452)との2株を用いた。7-C-8株は、脂肪酸合成阻害剤であるセルレニンに耐性を獲得した変異株であり、カプロン酸エチルを高生産し、その前駆体であるカプロン酸も親株OSI-1103の約10倍生産する。 上記2株を、それぞれYPD10培地(10% グルコース, 2% ポリペプトン, 1% 酵母エキス)を用いて、30℃で48時間静置培養し、定常期まで培養した。このようにして培養した酵母を、蒸留水で2回洗浄し、一晩凍結乾燥することにより乾燥酵母とした。<メチル化> 凍結乾燥酵母100mgとプロピオン酸メチル0.5mlとを混合し、室温で5分間vortexにて攪拌した。この混合物に1M CH3ONa/メタノール0.5mlを添加して、vortexで 1分間攪拌した後、37℃にて1時間反応させた。この混合物に、30重量%の三フッ化ホウ素/メタノール500μlを添加してvortexにて1分間攪拌した後、37℃にて20分間反応させた。 反応混合物にヘキサン1mlを添加し、vortexにて1分間攪拌した後、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層を分取し、水1mlで洗浄し、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層約1mlを得た。<GC-MS分析> ヘキサン層2mlをシリカカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))に注入し、ヘキサン5mlで洗浄し、酢酸メチル/ヘキサン(容量比1.5/98.5)6mlで溶出させることにより、脂肪酸メチルを精製した。分析条件を以下に示す。GC-MS分析(SCANおよびSIM)機器 :6890 GC/5973i MSD (Agilent)カラム :SP-2380 (30m×0.25mm ID,0.20μm film)カラムオーブン:50℃で2 分間保った後、4℃/分で250℃まで昇温し、250℃で15分間保つ検出 :MSD, 230℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :2.0 μl, Split-less, 250℃ GC-MS分析の結果を図1に示す。7-C-8株では、OSI-1103株では検出されない炭素数6の低級脂肪酸に由来するピークが検出された。7-C-8株は、生成する脂肪酸の鎖長が短くなることにより香気成分の生成量が多くなることが知られているが、このことが本発明方法により実証された。本発明の方法では、37℃という低温で反応させるため、揮発し易い低級脂肪酸をも正確に検出できることが分かる。実施例2(試料量の検討) 脂質を含む試料として、月桂冠株式会社の保有菌株である、清酒酵母OSI-1103株を用いた。この株をYPD10培地を用いて30℃で48時間静置培養し、定常期まで培養した。このようにして培養した酵母を、蒸留水で2回洗浄し、一晩凍結乾燥することにより乾燥酵母とした。<メチル化>凍結乾燥酵母10mg、50mg、100mgとプロピオン酸メチル0.5mlとを混合し、室温で5分間vortexにて攪拌した。この混合物に1M CH3ONa /メタノール0.5mlを添加して、vortexで30秒間攪拌した後、37℃にて1時間反応させた。この混合物に、30重量%の三フッ化ホウ素/メタノール500μlを添加してvortexにて30秒間攪拌した後、37℃にて20分間反応させた。 反応混合物にヘキサン1mlを添加し、vortexにて1分間攪拌した後、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層を分取し、水1mlで洗浄し、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層約1mlを得た。<GC-MS分析> シリカカートリッジによる精製は実施例1と同様にして行った。分析条件は以下の通りである。キャピラリーGC分析機器 :Shimadzu GC-17Aカラム :SP-2380(30m×0.25mm ID,0.20μm film)カラムオーブン:50℃で2分間, 10℃/分間で250℃まで昇温し、250℃で8分間保つ検出 :FID, 260℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :2.0μl, Split-less, 250℃ 酵母菌体の使用量と合計脂肪酸濃度との関係を図2に示す。図2から、本発明方法は、定量性が良好であることが分かる。実施例3(GC-FIDによる測定) 実施例1において、試料として清酒酵母OSI-1103株を用い、凍結乾燥酵母の使用量を50mgとし、GC-MSに代えてGC-FIDを用いた他は、実施例1と同様の操作を行った。 また、標準脂肪酸試料として、直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットEC10A-1KT(SUPELCO)を用いて同様にしてメチル化し、GC-FIDにて脂肪酸組成を測定した。この直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットには、カプロン酸 (C6:0), カプリル酸(オクタン酸)(C8:0), カプリン酸(デカン酸)(C10:0), ラウリン酸(C12:0), ミリスチン酸(C14:0), パルミチン酸(C16:0), ステアリン酸 (C18:0)が含まれている。反応に供した脂肪酸量は、各脂肪酸濃度100ppmの脂肪酸混合液を100μlとした。 結果を図3に示す。図3より、検出感度の低いGC-FIDを用いた場合も、GC-MSを用いる場合と同様に脂肪酸の組成を測定できたことが分かる。実施例4(メチル化反応温度の検討) 実施例3で用いた直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットEC10A-1KT(SUPELCO)を試料として、実施例1と同様の操作で脂肪酸をメチル化した。但し、反応温度は37℃、及び100℃の2通りとした。また、反応に供した脂肪酸量は、各脂肪酸濃度100ppmの脂肪酸混合液を100μlとした。メチル化された試料を以下の条件でGC-MS分析した。GC-MS分析条件(SCANおよびSIM)機器 :6890 GC/5973i MSD (Agilent)カラム :SP-2380 (30m×0.25mm ID,0.20μm film)カラムオーブン:50℃で2 分間保った後、4℃/分で250℃まで昇温し、250℃で15分間保つ検出 :MSD, 230℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :2.0 μl, Split-less, 250℃ 結果を以下の表1に示す。 表1より、37℃でも100℃の場合とほぼ同様のメチル化率が得られたことが分かる。実施例5(大腸菌の脂肪酸組成の測定)<試料大腸菌> 摺り合わせ小試験管φ12.5 mm×165 mm に、大腸菌K-12株の対数増殖期の培養液を取り、遠心分離して沈殿させた大腸菌ペレットを1〜2時間減圧デシケータで乾燥させた。乾燥重量約 20 mgの大腸菌を試料として用いた。<メチル化> メチル化試薬として以下の試薬を準備または調製した。(1)1 M CH3ONa/メタノール(2)プロピオン酸メチル(3)30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール(4)ヘキサン 精製用試薬として以下の試薬を準備または調製した。(5)シリカゲルカラム Silicycle (6)ヘキサン(7)1.5容量% 酢酸メチル/ヘキサン 上記乾燥試料に、プロピオン酸メチル 0.5 ml を加えた。次いで、CH3ONa/メタノール試薬 0.5 ml を加えた。反応液中のCH3ONa濃度は0.5Mである。この混合液を37℃で1時間放置し、グリセロ脂質とステロールエステルの脂肪酸をメチル化した。 次いで、30重量%三フッ化ホウ素/メタノール試薬 0.5 ml を加えた。反応液中の三フッ化ホウ素濃度は8重量%である。この混合液を37℃で 20分間放置して、遊離脂肪酸をメチル化した。 次いで、ヘキサン 1 ml を加えて、ボルテックスで混合し、遠心して2層に分離した後、境界面の白い濁った層が混ざらないように上層のヘキサン層を別の試験管に取った。採取したヘキサン層に水 1 ml を加えて撹拌、洗浄し、ヘキサン層(上層)を別の小試験管に取った。 GC 分析にキャピラリーカラムを使用するため、以下のようにして脂肪酸メチルを精製した。即ち、ヘキサン層をシリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))に注入し、1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン混合液 3 ml で脂肪酸メチルを溶出させた。1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン溶出液を摺り合わせ試験管にとってロータリーエバポレータで濃縮し、GC カラムに注入した。GC分析 このようにして得た試料を少量のヘキサンに溶解し、以下の条件でGC分析を行った。機器:Shimadzu GC-2014カラム:SPELCOWAX 10 (30 m×0.53 mm×1μm)カラム温度:185℃検出器:FIDキャリアガス:窒素、4.8 ml/分注入:1μl, split-less, 260℃ 不安定なシクロプロパン脂肪酸と、熱に安定なパルミチン酸(C16:0)との比率について検討すると、以下の通りであった。シクロプロパン環を持った炭素数17の脂肪酸/パルミチン酸=0.64シクロプロパン環を持った炭素数19の脂肪酸/パルミチン酸=0.15比較例1 実施例5と同様の大腸菌試料を用いて、以下の塩化水素−メタノール法で脂肪酸をメチル化し、実施例5と同様にしてGC分析した。<メチル化> メチル化試薬として以下の試薬を準備または調製した。(1)5重量% 塩化水素/メタノール(2)ヘキサン 精製用試薬として以下の試薬を準備または調製した。(5)シリカゲルカラム Silicycle (6)ヘキサン(7)1.5容量% 酢酸メチル/ヘキサン 乾燥試料を耐圧ネジ口小試験管(φ16.5 mm×105 mm)にとり、5重量%塩化水素/メタノール試薬 1 ml を加え、100℃で1時間加熱し、大腸菌脂質の脂肪酸をメチル化した。次いで、ヘキサン 1 ml を加えて、ボルテックスで混合し、遠心して2層に分離した後、上層のヘキサン層を別の試験管に取った。採取したヘキサン層に水 1 ml を加えて撹拌、洗浄し、ヘキサン層(上層)を別の小試験管に取った。GC 分析にキャピラリーカラムを使用するため、実施例5と同様にして、即ち以下のようにして脂肪酸メチルを精製した。ヘキサン層をシリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))に注入し、1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン混合液 3 ml で脂肪酸メチルを溶出させた。1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン溶出液を摺り合わせ試験管にとってロータリーエバポレータで濃縮し、GC カラムに注入した。 不安定なシクロプロパン脂肪酸と、熱に安定なパルミチン酸(C16:0)との比率について検討すると、以下の通りであった。シクロプロパン環を持った炭素数17の脂肪酸/パルミチン酸=0.19シクロプロパン環を持った炭素数19の脂肪酸/パルミチン酸=0.04 実施例5と比較例1との比較から、本発明方法では、不安定な脂肪酸が分解されることなく、その回収率が高いことが分かる。実施例6(血液の脂肪酸組成の測定)<試料> 実施例5において、大腸菌試料に代えて、ヒト血液 0.04mlを BHT 処理濾紙に着点吸収させ、減圧デシケータで 30分乾燥したものを用いた。 BHT 処理濾紙は、0.05% BHTを含むアセトンに濾紙(ワットマン 3MM)を数分間浸し、別の同組成のアセトンにもう一度浸したのち風乾し、さらに 30分以上減圧乾燥させることにより作製した。濾紙は処理した後 1.5 cm 角に切って用いた。<メチル化> 脂肪酸のメチル化は、実施例5と同様にして行った。<GC分析>このようにして得た試料を少量のヘキサンに溶解し、以下の条件でGC分析を行った。機器:Shimadzu GC-8Aカラム:10% SP-2340 on Chromosorb WAW (2 m×3 mm ガラスカラム)カラム温度:175℃〜240℃、昇温3℃/分検出器:FIDキャリアガス:窒素、30 ml/分注入:1μl, 260℃得られた脂肪酸組成は以下の通りである。脂肪酸 組成(%)C16:0 29.0C18:0 11.7C18:1 24.7C18:2 15.2C18:3 0.7C20:4 5.1C20:5 1.7C22:6 2.7未同定 9.2 GC分析のクロマトグラフィーチャートを図4に示す。比較例2 実施例6と同じヒト血液試料を用い、加熱ケン化−メチル化法で脂肪酸をメチル化し、さらに実施例6と同じ条件でGC分析を行った。<抽出とケン化> 血液1 mlからクロロホルム 1 mlとメタノール2 mlの混合溶媒を用いて脂質を抽出し、水0.5 mlとクロロホルム2 mlを加えて撹拌、静置してクロロホルム層を摺り合わせ試験管に取った。水0.5 mlとメタノール0.5 mlの混合液で洗浄後、濃縮乾固し、血液脂質を調製した。この血液脂質全量に2 M KOH水性エタノール溶液2 mlを加えて2時間還流加熱した。2 M HClで酸性とし、ジエチルエーテル2 mlで脂肪酸を抽出した。水洗後、濃縮乾固した。<メチル化> 得られた脂肪酸に、10重量% 三フッ化ホウ素/メタノール2 ml を加え、60℃で20分加熱し、メチル化した。ジエチルエーテルで抽出後、水洗、濃縮した。ヘキサンに溶解し、GC カラムに注入した。 比較例2の脂肪酸混合物では、分解産物によるピークが本来の脂肪酸メチルのピークと重なるため(図5のチャート参照)、正確な組成は計算できなかった。 GC分析のクロマトグラフィーチャートを図5に示す。 実施例6と比較例2とを比較すると、本発明方法に係る実施例6では、高度不飽和脂肪酸(アラキドン酸C20:4、エイコサペンタエン酸/EPA C20:5、ドコサヘキサエン酸/DHA C22:6)の回収も良好であった。一方、比較例2では、C20:4、C20:5の前後に加熱による分解産物と思われる複数のピークが見られた。実施例7(各鎖長の脂肪酸のメチル化) 実施例3で用いた直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットEC10A-1KIT(SUPELCO)から、カプリル酸(オクタン酸)(C8:0), カプリン酸(デカン酸)(C10:0),ミリスチン酸(C14:0), パルミチン酸(C16:0), ステアリン酸 (C18:0),炭素数20の飽和脂肪酸(C20:0)と、炭素数11の飽和脂肪酸(C11:0),炭素数21の飽和脂肪酸(C21:0)を試料として用いた。反応に供した脂肪酸量は、各脂肪酸最終濃度500ppmの脂肪酸混合液20μlを試料として用いた。 この脂肪酸混合物について、実施例1と同様にしてメチル化を行った。シリカゲルカートリッジ精製は、次のようにして行った。まずシリカゲルカートリッジに前洗浄液としてヘキサンを3ml注入して流し、洗浄した。次にメチル化をしたサンプルの溶液のうち約1mlをシリカゲルカートリッジに注入し、脂肪酸メチルを吸着させた。これにヘキサンを3ml注入して流し、洗浄した。次に溶出液(酢酸メチル/ヘキサン混合液)3mlを注入し、脂肪酸メチルをカートリッジから溶出させてGC/MSに供した。GC/MS分析機器 :6890 GC/5973i MSD (Agilent)カラム :SP-2380(30m×0.25mm×0.20μm)カラムオーブン:50℃で2分間保った後、 10℃/分で250℃まで昇温させ、250℃で8分間保つ検出 :MSD, 230℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :2.0 μl, Split-less, 250℃ 各脂肪酸の回収率を図6に示す。図6から、C8とC10では回収率が40%から50%と低く、C14からC20では回収率が70%前後と、高かったことがわかる。また、図7に示すように、酵母は奇数鎖脂肪酸をほとんど含まないながらも、C15、C17の脂肪酸は多少含んでおり、C11とC21の脂肪酸は全く含んでいないことが分かる。そのため、酵母の脂肪酸組成を分析する場合は、短鎖脂肪酸ではC11、長鎖脂肪酸ではC21をIS(内部標準)として用いて脂肪酸量を計算するのが妥当であると言える。実施例8(シリカゲルカートリッジへの吸着) 試料として、凍結乾燥酵母10mg(OSI-1103株)を用いた。これらの酵母は、YPD10培地にて30℃、48時間、静置培養したものを用いた。 これらの試料を以下のようにしてメチル化し、シリカゲルカートリッジにより精製した。 凍結乾燥酵母10mgとプロピオン酸メチル0.5mlとを混合し、室温で5分間vortexにて攪拌した。この混合物に1M CH3ONa/メタノール0.5mlとを添加して、vortexで 1分間攪拌した後、37℃にて1時間反応させた。この混合物に、30重量%の三フッ化ホウ素/メタノール500μlを添加してvortexにて1分間攪拌した後、37℃にて20分間反応させた。反応混合物にヘキサン1mlを添加し、vortexにて1分間攪拌した後、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層を分取し、水1mlで洗浄し、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層約1mlを得た。 シリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))をヘキサン3mlで洗浄する。洗浄したシリカゲルカートリッジにヘキサン層を注入し、ヘキサン3mlで洗浄し,酢酸メチル/ヘキサン混合液 3 ml で脂肪酸メチルを溶出させた。酢酸メチル/ヘキサン溶出液をGC-MS分析した。 シリカカートリッジに通したメチル化脂肪酸試料を以下の条件でGC分析した。キャピラリーGC分析機器 :Shimadzu GC-17Aカラム :SP-2380(30m×0.25mm×0.20μm)カラムオーブン:50℃で2分間保った後、10℃/分間で250℃まで昇温度し, 250℃で8分間保つ検出 :FID, 260℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :2.0 μl, Split-less, 250℃ シリカカートリッジへの脂肪酸メチルの吸着を表2に示す。 表2より、希釈なしでは吸着率が4.7%と、非常に低かったが、5倍希釈、10倍希釈ではほぼ100%の吸着率となり、問題なくサンプルの脂肪酸メチルがシリカカラムカートリッジに吸着されることが分かった。実施例9(トルエンとメタノールの混合溶媒を用いたステロールエステルとトリアシルグリセロールの脂肪酸メチルエステル化) 標準脂質としてトリアシルグリセロール(ダイズ油)とステロールエステル(コレステリルオレエート)を用いて、メタノールでは溶けにくいこれら疎水性の強い脂質に対するトルエン系の反応溶媒の効果を検討した。 実施例5では、乾燥大腸菌の脂質脂肪酸をCH3ONa/メタノール/プロピオン酸メチルによってメチルエステル化したが、本実施例では、CH3ONa/メタノール/トルエンを用いてステロールエステルとトリアシルグリセロールの脂肪酸メチルエステル化を行った。<脂質試料> 摺り合わせ小試験管φ12.5 mm×165 mm に、ステロールエステルとしてコレステロールオレエート、トリアシルグリセロールとして大豆油をそれぞれ1mg取った。 メチル化試薬として以下の試薬を準備又は調製した。(1)0.5 M CH3ONa/メタノール-トルエン(体積比は後述する)(2)30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール(3)ヘキサン 精製用試薬として以下の試薬を準備又は調製した。(4)シリカゲルカラム Silicycle 200 mg(5)ヘキサン(6)1.5容量% 酢酸メチル/ヘキサン 上記の脂質試料に、0.50 M CH3ONa のメタノール-トルエン溶液 1 ml を加え、37℃で1時間放置し、ステロールエステルとトリアシルグリセロールの脂肪酸をメチル化した。このとき、メタノールとトルエンの割合は600μl:400μl, 700μl:300μl, 800μl:200μl, 900μl:100μl, 950μl:50μl, 990μl:10μlとした。 次いで、30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール 0.5 ml を加えた。反応液中の三フッ化ホウ素濃度は8重量%である。この混合液を37℃で 20分間放置して、副成した可能性のある遊離脂肪酸をメチル化した。 次いで、 ヘキサン 1 ml を加えて、ボルテックスで混合し、遠心して2層に分離した後、境界面の白い濁った層が混ざらないように上層のヘキサン層を別の試験管に取った。採取したヘキサン層に水 1 ml を加えて撹拌・洗浄し、ヘキサン層(上層)を別の小試験管に取った。 そのヘキサン層を濃縮後、薄層クロマトグラフィで反応の進行を調べた。・シリカゲルプレート:シリカゲル60(メルク(ドイツ))・展開溶媒:ヘキサン/tert.-ブチルメチルエーテル/酢酸=85:15:0.5(体積比)・検出:50重量%硫酸噴霧後、135℃、10分加熱発色。 薄層クロマトグラフィの結果を図8に示す。図8中のレーンSは標準品の脂肪酸メチルとトリアシルグリセロールをアプライした結果である。また、図8のFAMEは、脂肪酸メチルエステルを示す。 図8から、トルエン量が多いほどステロールエステルの脂肪酸メチル化率が高くなることが分かる。ただし、メタノールとトルエンの割合が800μl:200μlかそれ以上にトルエンが多くても変化はない。また、トリアシルグリセロールのメチル化率はトルエンの量に影響を受けないことも分かる。 さらに、プロピオン酸メチル系とは違ってステロールエステルが副成物なく反応し、カラム精製でもメチルエステルがはじめに吸着するためにきれいに精製できるということが示された。実施例10(反応液のトルエンが脂肪酸メチルのカラム精製に及ぼす影響の検討) 実施例9で得られた反応液のうちトルエン400μl〜100μlを含んでいた試料を、シリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))にアプライした後、ヘキサン3ml、次いで1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン3mlで溶出した。得られたヘキサン溶出液と1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン溶出液を濃縮後、シリカゲル薄層クロマトグラフィで分析した。シリカゲル薄層クロマトグラフィの分析条件は実施例9と同様である。 図9に結果を示す。図の左半分はトルエン400〜100μl(メタノール量は600〜900μl、NaOCH3は0.5 M)で反応させ、ヘキサンで抽出して得られた生成物をカラムにかけてヘキサンで溶出したものである。トルエンの量にかかわらず脂肪酸メチル(FAME)が溶出されないので、まだカラムに脂肪酸メチルエステルが吸着されていることが分かる。 なお、メチル化反応にプロピオン酸メチルを含んだ反応液を使うとこの段階で脂肪酸メチルが溶出され、吸着されない不純物や未反応のステロールエステル、トリアシルグリセロールが残っているとそれらが混入する。 その後、図の右半分に示されているように、それぞれのカラムに1.5%酢酸メチルを流すとどのトルエン系の反応液をチャージしたカラムでも脂肪酸メチルだけが純粋に溶出されているのが分かる。実施例11(大腸菌の脂肪酸組成の測定-トルエンとメタノールの混合溶媒を用いた脂肪酸のメチルエステル化) 実施例5では、乾燥大腸菌の脂質脂肪酸をCH3ONa/メタノール/プロピオン酸メチルによってメチルエステル化したが、本実施例では、CH3ONa/メタノール/トルエンを用いてメチルエステル化を行った。<試料大腸菌> 摺り合わせ小試験管φ12.5 mm×165 mm に大腸菌K-12株の対数増殖期の培養液を取り、遠心で沈殿させた大腸菌ペレット約 20 mg を1〜2時間減圧デシケータで乾燥させた。 メチル化試薬として以下の試薬を準備又は調製した。(1)0.5 M CH3ONa/メタノール-トルエン(3:1、体積比)(2)30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール(3)ヘキサン 精製用試薬として以下の試薬を準備又は調製した。(4)シリカゲルカラム Silicycle 200 mg(5)ヘキサン(6)1.5容量% 酢酸メチル/ヘキサン 乾燥試料を摺り合わせ小試験管(φ12.5 mm×165 mm)にとり、0.50 M CH3ONa のメタノール-トルエン(3:1、体積比)溶液 1 ml を加え、37℃で1時間放置し、 グリセロ脂質とステロールエステルの脂肪酸をメチル化した。 次いで、30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール 0.5 ml を加えた。反応液中の三フッ化ホウ素濃度は8重量%である。この混合液を37℃で 20分間放置して、遊離脂肪酸をメチル化した。 次いで、 ヘキサン 1 ml を加えて、ボルテックスで混合し、遠心して2層に分離した後、境界面の白い濁った層が混ざらないように上層のヘキサン層を別の試験管に取った。採取したヘキサン層に水 1 ml を加えて撹拌・洗浄し、ヘキサン層(上層)を別の小試験管に取った。 GC 分析にキャピラリーカラムを使用するため、以下のようにして脂肪酸メチルを精製した。即ち、ヘキサン層をシリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))に注入し、脂肪酸メチルを吸着させ、ヘキサン 3 ml で洗浄し、次いで1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン混合液 3 ml で脂肪酸メチルを溶出させた。酢酸メチル/ヘキサン溶出液を小バイアルに取り、水流アスピレータに接続した減圧デシケータで溶媒を蒸発させ、そのあと少量のヘキサンに溶解して GC 分析した。 なお、パックドカラムを使用する場合は上記の精製操作自体を省略できる。GC分析 GC分析条件は、実施例5と同様とした。得られた脂肪酸組成も実施例5と同様であった。実施例12(血液の脂肪酸組成の測定-トルエンとメタノールの混合溶媒を用いた脂肪酸のメチルエステル化) 試料としてヒト血液0.04をBHT処理濾紙に着点吸収させ、減圧デシケータで30分間乾燥したものを用いた。 BHT 処理濾紙は、0.05% BHTを含むアセトンに、東洋濾紙No.1を数分間浸し、別の0.05% BHTを含むアセトンにもう一度浸したのち風乾し、さらに 30分以上減圧乾燥させた。濾紙は処理した後1.5 cm 角に切って用いた。 乾燥試料を摺り合わせ小試験管(φ12.5 mm×165 mm)にとり、0.50 M CH3ONa のメタノール-トルエン(3:1,体積比)溶液 1 ml を加え、37℃で1時間放置し、 グリセロ脂質とステロールエステルの脂肪酸をメチル化した。 次いで、30重量% 三フッ化ホウ素/メタノール 0.5 ml を加えた。反応液中の三フッ化ホウ素濃度は8重量%である。この混合液を37℃で 20分間放置して、遊離脂肪酸をメチル化した。 次いで、 ヘキサン 1 ml を加えて、ボルテックスで混合し、遠心して2層に分離した後、境界面の白い濁った層が混ざらないように上層のヘキサン層を別の試験管に取った。採取したヘキサン層に水 1 ml を加えて撹拌・洗浄し、ヘキサン層(上層)を別の小試験管に取った。 GC 分析にキャピラリーカラムを使用するため、以下のようにして脂肪酸メチルを精製した。即ち、ヘキサン層をシリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))に注入し、脂肪酸メチルを吸着させ、ヘキサン 3 ml で洗浄し、次いで1.5容量%酢酸メチル/ヘキサン混合液 3 ml で脂肪酸メチルを溶出させた。酢酸メチル/ヘキサン溶出液を小バイアルに取り、水流アスピレータに接続した減圧デシケータで溶媒を蒸発させ、そのあと少量のヘキサンに溶解して GC 分析した。 なお、パックドカラムを使用する場合は上記の精製操作自体を省略できる。GC分析 GC分析は、カラム温度が215℃であることを除いて実施例5と同じ条件で行った。そのGC分析の結果を図10に示す。 また、0.50 M CH3ONa/メタノール-トルエン(3:1, 体積比)に替えて,0.50 M CH3ONa/メタノール-プロピオン酸メチル(1:1, 体積比)を用いた以外,実施例12の上記操作と同様にして血液脂質脂肪酸をメチル化、抽出、精製、GC分析した。GC分析の結果を図11に示す。図10よりも全体の溶出時間が若干早まっているが、原因は不明である。 図10、図11から、反応溶媒のメタノール/プロピオン酸メチルをメタノール/トルエンに替えても同じ脂肪酸パターンとピーク形が観測され、また加熱処理をした場合に見られる分解産物のピークも検出されないことが分かる。この結果、カラムの劣化や分析の妨害不純物混入の危険性を排除して、安心して分析できるようになった。実施例13(メチル化率の測定-トルエンを用いた脂肪酸の抽出) 試料として、脂肪酸標準溶液である直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットEC10A-1KIT(SUPELCO)から、カプリン酸(デカン酸)(C10:0),ミリスチン酸(C14:0),パルミチン酸(C16:0), ステアリン酸 (C18:0),炭素数20の飽和脂肪酸(C20:0)と、炭素数11の飽和脂肪酸(C11:0),炭素数21の飽和脂肪酸(C21:0)を試料として用いた。各脂肪酸量が100μgづつになるようにこれらの脂肪酸を混合した。 この脂肪酸混合物と1M CH3ONa/メタノール0.5mlを添加して、vortexで 1分間攪拌した後、50%容量トルエン/50%容量メタノール0.5mlとを混合し、室温で5分間vortexにて攪拌した。この混合物に37℃にて1時間反応させた。この混合物に、30重量%の三フッ化ホウ素/メタノール500μlを添加してvortexにて1分間攪拌した後、37℃にて20分間反応させた。 反応混合物にヘキサン1mlを添加し、vortexにて1分間攪拌した後、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層を分取し、水1mlで洗浄し、3000rpmで3分間遠心分離してヘキサン層約1mlを得た。 メチル化した脂肪酸試料をキャピラリーGC分析に供した。分析条件は以下の通りである。GC-FID分析機器 :Shimadzu GC-17Aカラム :SP-2380(30m×0.25mm ID, 0.20μm film)カラムオーブン:50℃で2分間保ち、10℃/分間の速度で250℃まで昇温し、250℃で8分間保つ検出 :FID, 260℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :1.0 μl, Split-less, 250℃ 各脂肪酸のメチル化率を図12に示す。偶数炭素数の脂肪酸と奇数炭素数の脂肪酸とでメチル化率がほぼ同じであった。このことから、一つの内部標準を使用するだけで補正できることが分かる。実施例14(シリカゲルカートリッジへの吸着) 試料として、脂肪酸標準溶液である直鎖偶数炭素鎖脂肪酸キットEC10A-1KIT(SUPELCO)から、カプリン酸(デカン酸)(C10:0),ミリスチン酸(C14:0),パルミチン酸(C16:0), ステアリン酸 (C18:0),炭素数20の飽和脂肪酸(C20:0)と、炭素数11の飽和脂肪酸(C11:0),炭素数21の飽和脂肪酸(C21:0)を試料として用いた。反応に供した脂肪酸量は、各脂肪酸最終濃度500ppmの脂肪酸混合液20μlを試料として用いた。 この脂肪酸混合物について、実施例11と同様にしてメチル化を行った。 シリカゲルカートリッジ(Cartridges for SPE, Silica Gel, 3 ml, 200 mg; SILYCYCLE社(カナダ))をヘキサン3mlで前洗浄した後、メチル化した反応液をシリカゲルカートリッジにアプライした。 アプライした後にシリカゲルカートリッジを通過した通過液、シリカゲルカートリッジをヘキサン3mlで洗浄してカートリッジを通過した洗浄液、及び1.5容量%酢酸メチル/ヘキサンの組成の溶出液を3mlシリカゲルカートリッジに通液して得られる溶出液を、それぞれGC-FID分析に供した。GC分析条件機器 :Shimadzu GC-17Aカラム :SP-2380(30m×0.25mm ID,0.20μm film) カラムオーブン:50℃で2分間保ち、10℃/分間の速度で 250℃まで昇温し、250℃で8分間保つ検出 :FID, 260℃キャリアガス :He, 1.0 ml/分注入 :1.0 μl, Split-less, 250℃ 通過液及び洗浄液中からは脂肪酸メチルは検出されなかった。一方、溶出液には合計658.2μgの脂肪酸メチルが検出され、これはシリカゲルカートリッジにアプライした反応溶液中に含まれていた脂肪酸メチルの合計量である621.3μgに対して105.9(%)であり、シリカゲルカートリッジに全量が吸着したことが分かる。 また、各脂肪酸メチルの回収率を図13に示す。脂肪酸によってばらつきがあるが、80〜100%の回収率であった。このことから、シリカカートリッジを用いて精製した場合に、どのような長さの脂肪酸であってもほぼ全量が回収できることが分かる。 また、精製による損失が少ないことから、GC-MSのみならずGC-FIDによる分析も行えることが分かる。実施例15(シリカゲルカートリッジへの吸着) 試料として、凍結乾燥酵母1103株の50mgを用いた。この酵母は、YPD培地にて30℃、48時間、静置培養したものを用いた。 この試料50mgを用いて実施例14と同様の検討を行った。 通過液及び洗浄液中からは脂肪酸メチルは検出されなかった。一方、溶出液には合計53.6μgの脂肪酸メチルが検出され、これはシリカゲルカートリッジにアプライした反応溶液中に含まれていた脂肪酸メチルの合計量である54.9μgに対して97.5(%)であり、シリカゲルカートリッジに全量が吸着したことが分かる。 また、各脂肪酸メチルの回収率を図14に示す。脂肪酸によってばらつきがあるが、80〜100%の回収率であった。このことから、シリカゲルカートリッジを用いて精製した場合に、どのような長さの脂肪酸であってもほぼ全量が回収できることが分かる。実施例1で行ったGC-MS分析の結果である。酵母菌体の使用量と合計脂肪酸濃度との関係を示す図である。実施例3で行ったGC-FID分析の結果である。実施例6で行ったGC分析のクロマトグラフィーチャートである。比較例2で行ったGC分析のクロマトグラフィーチャートである。実施例7で行った脂肪酸回収率を示す図である。酵母菌体内の脂肪酸組成を示す図である。大腸菌試料から0.5 M CH3ONa/メタノール/トルエンを用いて脂肪酸をメチル化する場合の、トルエン量とメチル化率との関係を示す図である。血液試料から0.5 M CH3ONa/メタノール/トルエンを用いて脂肪酸をメチル化した場合の、トルエン量と精製カラムへの脂肪酸メチルの吸着との関係を示す図である。血液試料から0.5 M CH3ONa/メタノール/トルエンを用いて調製し、カラム精製した脂肪酸メチルのGC分析のクロマトグラムである。血液試料から0.5 M CH3ONa/メタノール/プロピオン酸メチルを用いて調製し、カラム精製した脂肪酸メチルのGC分析のクロマトグラムである。トルエンを用いて脂肪酸を抽出する場合の、脂肪酸の炭素数とメチル化率との関係を示す図である。トルエンを用いて脂肪酸を抽出する場合の、脂肪酸の炭素数とシリカゲルカートリッジからの脂肪酸メチルの回収率との関係を示す図である。トルエンを用いて脂肪酸を抽出する場合の、脂肪酸の炭素数とシリカゲルカートリッジからの脂肪酸メチルの回収率との関係を示す図である。脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを含む試料とメタノールとナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシドとを反応させることにより、脂肪酸エステルを脂肪酸メチルにする第1工程と、 三フッ化ホウ素の存在下で、第1工程の反応混合物とメタノールとを反応させることにより、遊離脂肪酸をメチル化する第2工程とを含む脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルのメチル化方法。カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルを含む試料とメタノールとナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシドとを反応させることにより、カルボン酸エステルをカルボン酸メチルにする第1工程と、 三フッ化ホウ素の存在下で、第1工程の反応混合物とメタノールとを反応させることにより、遊離カルボン酸をメチル化する第2工程とを含むカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルのメチル化方法。炭素数が12より小さい脂肪酸及び/又は炭素数が12より小さい脂肪酸エステルを含む試料と炭素数2〜4の低級アルコールと炭素数2〜4のナトリウムアルコキシド又はカリウムアルコキシドとを反応させることにより、炭素数が12より小さい脂肪酸エステルを炭素数2〜4の低級アルコールとのエステルに変換する第1工程と、 三フッ化ホウ素の存在下で、第1工程の反応混合物と炭素数2〜4の低級アルコールとを反応させることにより、遊離した炭素数が12より小さい脂肪酸を炭素数2〜4の低級アルコールとのエステルにする第2工程とを含む炭素数が12より小さい脂肪酸及び/又は炭素数が12より小さい脂肪酸エステルの炭素数2〜4の低級アルコールとのエステル交換及び/又はエステル化方法。第1工程の反応液中におけるナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシドの最終濃度が0.05〜2Mである請求項1又は2に記載の方法。第1工程の反応液中における炭素数2〜4のナトリウムアルコキシド又はカリウムアルコキシドの最終濃度が0.05〜2Mである請求項3に記載の方法。第1工程の反応を、20〜60℃で行う請求項1〜5のいずれかに記載の方法。第2工程の反応を、25〜65℃で行う請求項1〜6のいずれかに記載の方法。第2工程における三フッ化ホウ素の使用量を、反応液の全量に対して5〜15重量%とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法 第1工程において、疎水性有機溶媒の存在下で脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを含む試料とメタノールとナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシドとを反応させるか、又は第1工程に先立ち、脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを含む試料を疎水性有機溶媒で溶解する予備工程を含み、予備工程の反応混合物を第1工程における脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを含む試料とし、該疎水性有機溶媒がプロピオン酸の炭素数1〜4の低級アルコールエステル、トルエン、又はtert-ブチルメチルエーテルである、請求項1に記載の方法。第1工程において、疎水性有機溶媒の存在下でカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルを含む試料とメタノールとナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシドとを反応させるか、又は第1工程に先立ち、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルを含む試料を疎水性有機溶媒で溶解する予備工程を含み、予備工程の反応混合物を第1工程におけるカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルを含む試料とし、該疎水性有機溶媒がプロピオン酸の炭素数1〜4の低級アルコールエステル、トルエン、又はtert-ブチルメチルエーテルである、請求項2に記載の方法。第1工程において、疎水性有機溶媒の存在下で炭素数が12より小さい脂肪酸及び/又は炭素数が12より小さい脂肪酸エステルを含む試料と炭素数2〜4の低級アルコールと炭素数2〜4のナトリウムアルコキシド又はカリウムアルコキシドとを反応させるか、又は第1工程に先立ち、炭素数が12より小さい脂肪酸及び/又は炭素数が12より小さい脂肪酸エステルを含む試料を疎水性有機溶媒で溶解する予備工程を含み、予備工程の反応混合物を第1工程における炭素数が12より小さい脂肪酸及び/又は炭素数が12より小さい脂肪酸エステルを含む試料とし、該疎水性有機溶媒がプロピオン酸の炭素数1〜4の低級アルコールエステル、トルエン、又はtert-ブチルメチルエーテルである、請求項3に記載の方法。疎水性有機溶媒としてプロピオン酸メチル、又はトルエンを用いる請求項9〜11のいずれかに記載の方法。メタノール、ナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシド、及び三フッ化ホウ素を備える脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルのメチルエステル化用キット。メタノール、ナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシド、及び三フッ化ホウ素を備えるカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルのメチルエステル化用キット。炭素数2〜4の低級アルコール、炭素数2〜4のナトリウムアルコキシド又はカリウムアルコキシド、及び三フッ化ホウ素を備える炭素数が12より小さい脂肪酸及び/又は炭素数が12より小さい脂肪酸エステルのエステル交換及び/又はエステル化用キット。さらに、疎水性有機溶媒を備え、該疎水性有機溶媒がプロピオン酸の炭素数1〜4の低級アルコールエステル、トルエン、又はtert-ブチルメチルエーテルである、請求項13〜15のいずれかに記載のキット。疎水性有機溶媒が、プロピオン酸メチル又はトルエンである請求項16に記載のキット。


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