生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アディポネクチン上昇剤
出願番号:2006099142
年次:2006
IPC分類:A61K 31/202,A61K 31/232,A61K 31/661,A61P 43/00,A61P 9/12,A61P 3/04,A61P 3/06,A61P 3/10,A23L 1/30


特許情報キャッシュ

柳田 晃良 永尾 晃治 日比野 英彦 大久保 剛 JP 2006306866 公開特許公報(A) 20061109 2006099142 20060331 アディポネクチン上昇剤 国立大学法人佐賀大学 504209655 日本油脂株式会社 000004341 小林 浩 100092783 片山 英二 100095360 大森 規雄 100120134 押鴨 涼子 100124305 柳田 晃良 永尾 晃治 日比野 英彦 大久保 剛 JP 2005101540 20050331 A61K 31/202 20060101AFI20061013BHJP A61K 31/232 20060101ALI20061013BHJP A61K 31/661 20060101ALI20061013BHJP A61P 43/00 20060101ALI20061013BHJP A61P 9/12 20060101ALI20061013BHJP A61P 3/04 20060101ALI20061013BHJP A61P 3/06 20060101ALI20061013BHJP A61P 3/10 20060101ALI20061013BHJP A23L 1/30 20060101ALI20061013BHJP JPA61K31/202A61K31/232A61K31/661A61P43/00 111A61P9/12A61P3/04A61P3/06A61P3/10A23L1/30 Z 4 OL 20 4B018 4C086 4C206 4B018MD10 4B018MD45 4B018ME03 4B018ME04 4C086AA01 4C086AA02 4C086DA40 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA09 4C086MA52 4C086NA09 4C086NA14 4C086ZA42 4C086ZA70 4C086ZC33 4C086ZC35 4C086ZC41 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA05 4C206DB09 4C206DB43 4C206MA01 4C206MA04 4C206MA24 4C206MA72 4C206NA09 4C206NA14 4C206ZA42 4C206ZA70 4C206ZC33 4C206ZC35 4C206ZC41 本発明は、ドコサヘキサエン酸又はその誘導体を有効成分として含むアディポネクチン上昇剤に関する。 近代日本において、食生活の欧米化がもたらした食事中への過剰な脂質の導入は、肥満をはじめとする様々な生活習慣病を惹起させ、今や医学領域のみならず社会経済的にも深刻な問題を引き起こしている。その改善策として食習慣の見直しが計られる中、食事中の脂肪の量だけではなく、質の重要性が再認識されている。かねてより、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、魚油中に多く含まれ、高脂血症の改善・動脈硬化の予防など様々な栄養生理機能を持つ機能性脂質として注目を集めてきた。生活習慣病患者の2〜3割が肥満を起因として病態を発症しているという現状において、肥満モデル動物を用いた食品の機能性評価が有意義であると考えられる。肥満モデルOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF)ラットは、食欲制御ホルモンであるコレシストキニンの受容体変異により過食を生じ、肥満・高脂血症・糖尿病を発症する。 ところで、脂肪細胞は単なるエネルギーを備蓄する細胞ではなく、ある種の内分泌臓器であるという考え方が、最近、一般化しており、必要に応じて「アディポサイトカイン」を遺伝子の転写レベルで調節して産生し放出していることが報告されている。 このアディポサイトカインのうち、アディポネクチンは、脂肪組織に特異的に発現し、しかも高発現している遺伝子の発現物として見出された。その血液中での濃度は脂肪細胞特異的に分泌されるにも関わらず、肥満、すなわち脂肪を蓄積すると低下し、減量すると増加する(非特許文献1)。特に内臓脂肪の増加によって血中濃度は減少し、冠動脈疾患患者や糖尿病患者においても低値となる(非特許文献2)。また、血中アディポネクチンの低値が将来の糖尿病発症の最も良い指標である(非特許文献3)。 アディポネクチンはレプチンと共に脂肪組織由来のインスリン感受性因子の候補と考えられている。脂肪萎縮性糖尿病のインスリン抵抗性・脂質代謝異常は生理的なレプチン投与によっても部分的に改善したが、アディポネクチンとレプチンの同時投与によってほぼ完全に改善した。そして、アディポネクチンを補充し、血中濃度を増加させることにより、インスリン抵抗性の原因となる組織内中性脂肪含量を低下できる(非特許文献4)。 また、アディポネクチンが動脈硬化巣に対して直接的に抗動脈硬化作用を示すことが報告されている。その作用機序としては、スカベンジャー受容体の発現制御を介する脂肪蓄積の低減とTNFαなどの炎症に関わる分子の発現制御の作用と考えられている(非特許文献5)。 このように、アディポネクチンは、高血圧、肥満、高脂血症、糖尿病などいわゆる生活習慣病に密接にかかわり、特に、アディポネクチンの遺伝的、後天的欠乏は日本人の生活習慣病の主要な原因である。従って、患者においてその血中量の上昇が望まれ、脂質の摂取を制限することが有効な方法である。 アディポネクチンの血中量を上昇させるには、飲食物として発酵茶抽出物の摂取が有効である(特許文献1)。しかし、エネルギー源である脂質の摂取量を制限することは、生命活動の維持において好ましいものではない。さらに、脂質を摂取制限することはビタミンBの欠乏を引き起こす。また、腸管吸収における脂溶性ビタミンの吸収阻害が生じ、ビタミンAやビタミンKの欠乏により夜盲症や出血傾向を示す。神経梢には極めて不飽和脂肪酸が多く、ビタミンEの不足は、その過酸化脂質を惹起するために神経障害が生じる可能性がある。そして、飲食物として発酵茶抽出物は、それ自体はエネルギー源とはならず、エネルギー源としての脂質を摂取しながら、血中アディポネクチン濃度を上昇させることができれば好都合である。特開2004−315379号公報"Biochem. Biophys. Res. Commun."1999年、257巻、p.79-83"Circulation"1999年、100巻、p.2437-2476下村伊一郎:アディポサイトカインと糖尿病.門脇孝編.糖尿病.東京:南山堂;2004年、p.71-80"Nature Med."2001年、7巻、p.941-946"J. Biol. Chem."2003年、278巻、p.2461-2468 本発明は、通常に脂質を摂取しながらも、高血圧、肥満、高脂血症、糖尿病などいわゆる生活習慣病に密接にかかわる生体因子を正常値に維持できる、ドコサヘキサエン酸又はその誘導体を有効成分として含むアディポネクチン上昇剤を提供する。 本発明者は、上記課題を解決するために、脂質でありながら、血中アディポネクチン濃度を上昇させる物質を鋭意検討した結果、ドコサヘキサエン酸又はその誘導体が血中アディポネクチン濃度を上昇させることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下のとおりである。(1)ドコサヘキサエン酸又はその誘導体を有効成分として含むアディポネクチン上昇剤。(2)ドコサヘキサエン酸又はその誘導体を有効成分として含む、アディポネクチン上昇用食品。 上記ドコサヘキサエン酸の誘導体としては、ドコサヘキサエン酸エチルエステル又はドコサヘキサエン酸結合型リン脂質をあげることができる。 本発明のアディポネクチン上昇剤は、脂質の吸収を妨げることなく、血中のアディポネクチン上昇をさせることができる。さらに、本発明のアディポネクチン上昇剤は、肥満や動脈硬化の悪化の指標となる分子生物学的な血漿のパラメーター、具体的には、インスリン、PAI-1、CRPを低下させることができ、また肝臓脂質のプロフィール、具体的にはトリアシルグリセロール、コレステロールを低下させることができるため、高血圧、肥満、高脂血症、糖尿病などいわゆる生活習慣病に密接にかかわる生体因子を正常値に維持することができる。 以下に本発明を詳細に説明する。 本発明は、ドコサヘキサエン酸又はその誘導体を有効成分として含む、アディポネクチン上昇剤、及びアディポネクチンを上昇させることができる食品に関する。 <ドコサヘキサエン酸> ドコサヘキサエン酸(以下、「DHA」ともいう)は、化学式C22H32O2、分子量が328.50で、4,7,10,13,16,19位にシス二重結合を有する炭素数22、n-3系列の直鎖不飽和脂肪酸である。DHAは、イワシ、アジなど魚類に多く含まれるが、生体内では、脳や網膜に局在している。DHAは、いわゆるn-3系列の不飽和脂肪酸を前駆体として、α-リノレン酸(18:3 n-3)から2回の鎖長伸長と2回の不飽和化反応によりエイコサペンタエン酸(EPA)を経て、さらに鎖長伸長、不飽和化、鎖長短縮の酵素系を経由して工業的に合成することができる。DHAは、抗血栓、抗動脈硬化、抗炎症、抗発ガン作用を有するが、本発明によって、血中アディポネクチン量を上昇させることが示された。 本発明のDHAは遊離の脂肪酸であってもよく、あるいは、ナトリウム、カリウム、カルシウム又はマグネシウムなどの塩の形態であっても有効に作用する。 <DHA誘導体> DHAの誘導体としては、DHAのカルボキシル基の置換から誘導される誘導体、例えば、エステル誘導体(アシル化物としてアシル化アミノ酸、アシル化サッカライド、アルコールエステル、トコフェロールエステルなど)、リン脂質誘導体、アミド誘導体(例えば、セラミド誘導体)、塩(例えばアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)などが挙げられるがこれらに限定されない。本発明において、DHAの誘導体として好ましくは、エステル誘導体及びリン脂質誘導体である。 DHAのエステル誘導体としては、例えばメチルエステル誘導体、エチルエステル誘導体、グリセロールエステル誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 DHAのグリセロールエステルとしては、トリグリセリン型を含有するイワシ油、マグロ油、カツオ油等の魚油、タラやイカ等の肝油、あるいはDHAの遊離脂肪酸から合成される合成トリグリセリド、また、DHAのエチルエステル又はメチルエステルから合成される合成トリグリセリドが挙げられる。前記トリグリセリドを加水分解したり、酵素分解することにより得られるDHAのジグリセリン又はモノグリセリンも用いることができる。前記のDHAの脂肪酸、メチルエステル及びエチルエステルは、前記の魚油や肝油、リン脂質等を加水分解した後、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)やカラムなどを用いて精製及び濃縮したものを用いることができる。 DHAのリン脂質誘導体としては、天然由来のDHAがリン脂質のアシル基として結合したDHA結合フォスファチジルコリン、DHA結合フォスファチジルエタノールアミン、DHA結合フォスファチジルセリン、DHA結合フォスファチジルグリセロール、DHA結合イノシトール、DHA結合プラズマローゲンなどが挙げられる。さらには、グリセロフォスファチジルコリンとDHAの遊離脂肪酸やエチルエステルを用いて合成したリン脂質が用いられる。また、前記のようにして得られたリン脂質をリパーゼ、あるいはフォスフォリパーゼによって加水分解して得られるリゾリン脂質なども利用できる。 また、DHA結合フォスファチジルコリンをフォスフォリパーゼDによって塩基交換したフォスファチジルセリンや一級水酸基を有するリン脂質誘導体も利用できる。また、トコフェロールやアスコルビン酸に代表される抗酸化機能物質の一級水酸基にDHAをエステル結合させた誘導体も利用できる。 一般的なDHA結合リン脂質の構造式を下記式(1)に示す。 (式中、R1及びR2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、ドコサヘキサエン酸残基、あるいは炭素数14〜24の飽和又はモノエン脂肪酸残基より選ばれる基を示し、R1及びR2の少なくとも一方は、ドコサヘキサエン酸残基である。R3は、主にホスホリルコリン基又はエタノールアミン基を示す。) 本発明において、R1及びR2は、すべてドコサヘキサエン酸残基であることが好ましいが、R2がドコサヘキサエン酸残基であり、R1がパルミチン酸残基、オレイン酸残基又はステアリン酸残基のDHA結合リン脂質も好ましく使用できる。 DHA結合リン脂質は、合成化合物としても製造できるが、天然物から抽出することもできる。例えば、工業的な規模で原料入手が可能な大型の魚卵、塩漬けの鮭や鱒の卵である筋子、筋子をバラバラにしたイクラ等から抽出して製造することができる。 本発明におけるDHA結合型リン脂質のDHA含量は20%以上が好ましく、25%以上が好ましい。例えば、これらの魚卵原料からエタノールを溶剤として抽出することにより得られたDHA結合型リン脂質はDHAを20〜35%含み、リン脂質の70%以上はフォスファチジルコリンである。<アディポネクチン> アディポネクチンとは、脂肪細胞で特異的に合成・分泌される分泌タンパク質であり、また、血清中に豊富に存在するが、ヒトやマウスの様々な肥満形態において調節不能になるため、エネルギー・ホメオスタシスに影響を与える重要な分子として研究が進められている。アディポネクチンはまた、Acrp30(adipocyte complement-related protein of 30kDa)やapM-1、Glatin-binding protein、Adipose most abundunt gene transcript 1 等としても知られており、遺伝子名は、APM1、ACRP30、GBP28として知られている。アディポネクチンは2型糖尿病の原因である、インスリン感受性の低下を改善することにより糖尿病や動脈硬化を抑制するとともに、動脈壁に対する直接的な作用によっても動脈硬化を抑制するほか、肝臓機能保護作用も発揮する。 アディポネクチンは、上記のように脂肪組織に特異的に発現するが、その血液中での濃度は脂肪細胞特異的に分泌されるにもかかわらず、肥満、すなわち脂肪を蓄積すると低下し、減量すると増加する。特に内臓脂肪の増加によって血中濃度は減少し、冠動脈疾患患者や糖尿病患者においても低値となる。つまり、血中のアディポネクチン濃度が上昇すれば、内臓脂肪の蓄積が抑制されるといえる。本発明においては、DHA又はその誘導体は、エネルギー源としての脂質の吸収を妨げることなく血中アディポネクチン濃度を上昇させることができる点で好ましい。 血中のアディポネクチン濃度は、市販のアディポネクチンELISAキットを用いたELISA法で測定することができる。 <アディポネクチン上昇剤> 本発明のアディポネクチン上昇剤は、上記のようにDHA又はその誘導体を有効成分としており、内蔵脂肪の蓄積を抑制するために使用することができる。 本発明のアディポネクチン上昇剤は、内蔵脂肪、例えば、腸間膜、大網、腎周囲、又は副睾丸周囲に付着した脂肪を対象として適用される。 本発明のアディポネクチン上昇剤に含まれるDHA又はその誘導体は単独でも使用できるが、塩を形成していてもよく、候補物質の塩としては、生理学的に許容される酸(例えば、有機酸又は無機酸など)や塩基(例えば、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。 本発明のアディポネクチン上昇剤は、常法にしたがって製剤化することができ、製剤としては固体でも、液体でもよく、例えば錠剤、丸剤、顆粒剤、糖衣剤、カプセル、乳剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物があげられ、医薬的に許容されるキャリアーを含んでもよい。このようなキャリアーは添加物であってもよく、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。 また、製剤化においては、賦形剤を加えることができる。賦形剤としては、目的によって、充填剤、結合剤、凝固剤、滑たく剤、崩壊剤、色素、甘味料、香料、コーティング剤等を単独もしくは、これらを組み合わせて使用することができる。さらに、DHA又はその誘導体を乳化剤によって、乳化し使用することもできる。 本発明のアディポネクチン上昇剤は、DHA又はその誘導体を有効成分として含むものであるが、他の成分を併用してもかまわない。併用される成分には、DHAがn-3脂肪酸であることからEPA、リノレン酸やそれらを含む油脂等が、またDHAが脂質であることから、リン脂質、脂溶性ビタミン、脂溶性生理活性物質等が挙げられる。DHAが摂取後の生体内で酸化を受けやすいことから、脂溶性の抗酸化剤、トコフェロール、α−リポ酸、CoQ10、カロチノイド、ルテイン、アスタキサンチン、プラズマローゲン、セサミンなどや水溶性の抗酸化剤、アスコルビン酸、アントシアニジン、カテキン、グルタチオン、没食子酸等が挙げられる。この場合、DHAの濃度は、5.0重量%から98重量%のものが好ましい。 これらの成分は、本発明のアディポネクチン上昇剤の形態に応じて上記の中から単独で、又は適宜組み合わせて用いることができる。 本発明のアディポネクチン上昇剤の投与形態は、経口、非経口投与のいずれでも可能である。経口投与の場合は、上記したような適当な剤型であるカプセルなどによる投与が可能である。非経口投与の場合は、経肺剤型(例えばネフライザーなどを用いたもの)、経鼻投与剤型、経皮投与剤型(例えば軟膏、クリーム剤)、注射剤型等が挙げられる。注射剤型の場合は、例えば点滴等の静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身又は局部的に直接的又は間接的に投与することができる。本発明のアディポネクチン上昇剤の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なる。投与方法は、患者の年齢、症状により上記の方法から適宜選択する。 本発明のアディポネクチン上昇剤に含まれるDHA又はその誘導体の含有量は、上記のような剤型等にあわせて適宜選択することができるが、例えば、本実施例で得られた値を用いて、以下の2つの一般則から算定したヒトの適正摂取量をもとに設定することもできる。 一般則(1)は、動物実験での効果確認で1%混餌の場合、動物の体重kg当たり1gに相当し、その量はヒトでの適正摂取量の1gに相当する。ここでは、本発明のアディポネクチン上昇剤に含められうるDHA等の適用量はヒトでは、1.6gとなる。 一般則(2)は、ラットやマウスでの体重1kgの有効量の約1/50がヒトでの適正用量である。200gのラットが1.6%混餌の場合(餌摂取量20g/日と算定)を、60kgのヒトに換算すると適用量は1.86gとなる。この一般則によれば、本発明のアディポネクチン上昇剤中に含まれるDHA等の含有量は、DHA等の1日の摂取量が0.5〜25g、好ましくは0.5〜5g、より好ましくは1〜2gとなるように設定することができる。 本発明において、DHA又はその誘導体のアディポネクチン上昇効果は、肥満モデル動物を用いて確認することができる。例えば、DHA等を肥満モデル動物に投与し、コントロール群としてDHAを含まないコーン油を投与した動物と比較検討することにより、本発明のDHA等投与群がアディポネクチン上昇効果を有することが示される。肥満モデル動物としては、たとえば、食欲制御ホルモン受容体変異により過食を生じ、肥満、高脂血症、糖尿病を発症するモデル動物であるOLETF (Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty)ラットを用いることができる。 なお、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びその誘導体を摂取すると、脂質の吸収を妨げることなく、血中のアディポネクチン上昇をさせることができるため、本発明のアディポネクチン上昇剤等を摂取した動物の生育は、本発明のアディポネクチン上昇剤等を摂取しなかった動物に比べて劣ることはない。動物の生育とは、その動物の初体重、終体重、体重増加量、摂食量及び摂食効率等を測定することによって確認できる。 また、本発明のアディポネクチン上昇剤等は、肥満や動脈硬化の悪化の指標となる分子生物学的な血漿のパラメーターである、インスリン、PAI-1(Plasminogen activator inhibitor type-1)、及びCRP(C-Reactive protein)を低下させ、さらに肝臓脂質のプロフィール、具体的には、トリアシルグリセロール、コレステロールを低下させる。これらの効果は、インシュリン、PAI-1、CRPは、ELISA法を用いて、肝臓トリアシルグリセロールは、Fletcher法により、また、肝臓コレステロールは、コレステロールオキシダーゼ・DAOS法により、それぞれ市販のキットを用いて確認することができる。特に、本発明のアディポネクチン上昇剤等を摂取しても、血漿中の遊離脂肪酸及び血糖値については影響が認められない。 さらに、本発明のアディポネクチン上昇剤等が肝臓に負担のない安全なものである。このことは、血中の肝臓障害指標酵素活性を測定したときにDHA摂取によるGOTとLDHの有意な低下が認められ、また、GPTとALPも低下する傾向を示すことから明らかである。<アディポネクチン上昇用食品> 本発明のDHA又はその誘導体を有効成分とするアディポネクチン上昇剤は、医薬品に限らず、アディポネクチンを上昇させるための食品として加工してもよい。食品は、食品の形態に特に制限はなく、一般の加工食品のほかに、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、飲料及び食品を含む飲食物、又は、これらの添加物とすることができる。具体的には、サプリメント、清涼飲料に配合することができるが、特に限定されるものではない。 また本発明の食品の態様としては、本発明のDHA又はその誘導体の乾燥粉末、抽出物若しくは精製物をそのまま食材に混合したり、又は、液状、ゲル状、粉末状あるいは固形状の食品、例えば、飲料、茶、スープ、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム、シャーベット、フローズンヨーグルト、プリン、ドレッシング、マヨネーズ、ふりかけ、味噌、醤油、焼肉のたれ等の調味料、麺類、ハムやソーセージ等の畜肉魚肉加工食品、ジャム、牛乳、クリーム、バターやチーズ等の粉末状、固形状又は液状の乳製品、マーガリン、パン、菓子類の原材料として加工して用いたりすることが挙げられる。本発明の食品は極めて多種類の形態にわたり、前記の例示に限定されるものではないが、内臓脂肪蓄積抑制の点から油脂類や糖質を多量に含む食品類に添加した形態、前記の栄養補助食品や健康食品の形態が好ましい。また、DHAは酸化に弱いため、カプセル形態なども好ましい。 本発明の食品はDHAの他、食品の形態に応じて他の添加物を含むものであってもよい。このような添加物として、賦形剤、増量剤、結合剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、甘味料、酸味料、食品添加物、調味料等を挙げることができる。食品添加物としてはビタミン類、ミネラル、キチン、キトサン、レシチン、ローヤルゼリーなどが挙げられる。調味料としては、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビットなどの甘味料、アルコール、クエン酸、リンゴ酸、洒石酸などの酸味料、香料、色素などが挙げられ、本発明の食品を好みの味や色に調整するために用いることができる。また、内臓脂肪蓄積の抑制と関連する痩身やダイエットに用いられる公知の素材を併用してもよい。この具体例としては、ガルシニア・カンボジア果皮エキス、ヒドロキシクエン酸及びその塩、ブドウ種子エキス、リンゴ等の果実ポリフェノール、山査子果実エキス、グアバ葉エキス、ギムネマ・シルベスタ葉エキス、イチョウ葉エキス、リパーゼ阻害剤、α−及びβ−アミラーゼ阻害剤、L−カルニチン及びこれを含む畜肉ペプチド、アオサやアオノリ等の緑藻類抽出物、コンブ等の褐藻類エキス、唐辛子末及びそのエキス、ニンニク抽出エキス、スベリヒユ、プーアール茶葉粉末及びそのエキス、杜仲葉末及びそのエキス、ウーロン茶葉粉末及びそのエキス、サイリウム種皮、キサンチン誘導体、シトラス・アウランチウムの抽出エキス、センナ葉又は茎のエキス、陳皮等を挙げることができる。また、本発明の食品は、DHA又はその誘導体を含むものであるが、他の油性成分が含まれてもよい。併用される成分には、EPA、リノレン酸やそれらを含む油脂、リン脂質、脂溶性ビタミン、脂溶性生理活性物質等が挙げられる。脂溶性の抗酸化剤、トコフェロール、α−リポ酸、CoQ10、カロチノイド、ルテイン、アスタキサンチン、プラズマローゲン、セサミンなどや水溶性の抗酸化剤、アスコルビン酸、アントシアニジン、カテキン、グルタチオン、没食子酸等が挙げられる。これらの添加物等は、本発明の食品の形態に応じて上記の中から単独で、又は適宜組み合わせて用いることができる。 本発明の食品は、当業者が通常行う方法により製造することができる。例えば、粉末状の食品を得るには、DHAに、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、マルトースなどの賦形剤を必要に応じて添加して、凍結乾燥、噴霧乾燥などの乾燥方法により粉末とすることにより得ることができる。また、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉又はその加工素材、セルロース末等の賦形剤、ビタミン、ミネラル、動植物や魚介類の油脂、タンパク質、糖質、色素、香料、その他の食用添加剤等と共に、当業者が通常行う方法により、粉末、顆粒、ペレット、丸剤、錠剤等に加工したり、ゼラチン等で被覆して、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセルに成形したり、あるいはドリンク類にして、栄養補助食品や健康食品として利用できる。DHAを水不溶性カプセル中に封入したものを飲料に混ぜることにより飲料とすることもできる。このような形態は、DHAの空気酸化を防ぐことができる面でも好ましい。 本発明の食品は、DHA又はその誘導体の量は、上記食品の種類、形態、利用目的や本発明の食品の種類、摂取態様に応じて適宜設定することができる。 上記した2つの一般則から算定した、本実施例から推測されるヒトの適正摂取量をもとに設定してもよい。 以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実験によって得られたデータは、Student's t-Testを用いて有意差検定を行った。DHAエチルエステルの体重、摂食量、食効率及び臓器重量への影響 食餌組成及び飼育方法は以下の方法によって行った。OLETFラットは、慢性病たる肥満のモデルラットであり、株式会社ホクドーより入手した。4週齢の雄性OLETFラットを2群に分け(1群6匹)、対照群(Con群)として、AIN-76組成に準じた食餌を摂取させ、他の一群をDHA群として、DHAエチルエステル(精製度97%)を1.6%添加した食餌を摂食させた。食餌組成は表1に示す。 以上の2群を2週間飼育し、9時間絶食後、エーテル麻酔下で腹部大動脈採血により屠殺し、肝臓及び脂肪組織を摘出し、血液から血漿を得た。生育状態を表2に示す。 その結果、2週間の飼育において、初体重、終体重、体重増加量、摂食量及び摂食効率に群間で差は見られなかった(表2)。臓器重量については、脂肪組織重量にDHA摂食による減少傾向が認められた。血漿パラメーターの測定 血漿脂質濃度は酵素法により測定した。即ち、血漿トリグリセリド濃度は、トリグリセライドE-テストワコー(GPO・DAOS法、和光純薬)、血漿リン脂質濃度は、リン脂質E-テストワコー(コリンオキシダーゼ・DAOS法、和光純薬)、血漿コレステロール濃度は、コレステロールC-E-テストワコー(コレステロールオキシダーゼ・DAOS法、和光純薬)、血漿遊離脂肪酸濃度は、NEFA C-テストワコー(ACS・ACOD法、和光純薬)を用いて測定した。 血糖値は、グルコースCII-テストワコー(和光純薬)を用いてムタロターゼ・GOD法により測定した。 肝機能障害マーカーとしては、グルタミン酸オキザロ酢酸アミノ機転移酵素(GOT)及びグルタミン酸ピルビン酸アミノ機転移酵素(GPT)(トランスアミナーゼCII-テストワコー、POP・TOOS法、和光純薬)、乳酸脱水素酵素(ラクテートデヒドロゲナーゼCII-テストワコー、乳酸基質・テトラゾリウム塩法、和光純薬)、アルカリ性ポスファターゼ(アルカリ性ポスファK-テストワコー、フェニルリン酸基質法、和光純薬)を測定した。 その結果、血漿のトリグリセリド、コレステロール及びリン脂質濃度において、DHA摂取による有意な低下が認められた(表3)。 血漿中の遊離脂肪酸及び血糖値については、DHA摂取の影響は認められなかった。血中の肝臓障害指標酵素活性は、GOTとLDHでDHA摂取による有意な低下が認められ(図1)、GPTとALPもDHA摂取で低下する傾向を示した。 また、血漿のアディポネクチン濃度は、DHA摂取により有意に増加することが示された(図2)。 次に、血漿のインスリン(レビス・ラットインスリンキット、シバヤギ)、レプチン(Rat Leptin ELISA kit、矢内原研究所)、アディポネクチン(マウス/ラットアディポネクチンELISAキット)、PAI-1(IMUCLONE RatPAI-1 ELISA kit、American Diagnostica Inc.)及びCRP(Rat CRP ELISA kit、Alpha Diagnostic Inc.)をELISA法により測定した。 結果を表4に示す。 インスリン、PAI-1及びCRP濃度においても、DHA摂取により低下傾向を示した。レプチン濃度は群間で差は見られなかった。さらに、本発明の組成物は、アディポネクチン上昇剤は、肥満や動脈硬化の悪化の指標となる分子生物学的な血漿のパラメーター、具体的には、インスリン、PAI-1、DRPを低下させ、さらに肝臓脂質のプロフィール、具体的には、トリアシルグリセロール、コレステロールを低下させることがわかる。肝臓脂質濃度の測定 肝臓総脂質はFolchらの方法により抽出・濃縮し、肝臓TG濃度はFletcher法、肝臓リン脂質濃度はBartlettらの方法で定量した。肝臓総コレステロール濃度は、コレステロールE-テストワコー(和光純薬)を用いてコレステロールオキシダーゼ・DAOS法により測定した。 その結果、肝臓のトリグリセリド濃度は、DHA摂取により有意に低下した(表5)。また、コレステロール及びリン脂質濃度に、DHA摂取の影響は認められなかった。脂肪酸組成の分析 血漿の脂質はBligh and Dyer法により抽出後、薄層クロマトグラフィーにより分画した。脂肪酸組成の分析は、ガスクロマトグラフィーにより行った。 その結果、DHA摂取により、血漿及び肝臓の脂肪酸Δ6不飽和化が有意に抑制されていることが示された(表6及び7)。従って、血漿及び肝臓の脂肪酸Δ6不飽和化により、例えば、糖尿病患者において問題となるアラキドン酸の産出過剰を抑制できることが示された。DHA結合型リン脂質の体重、摂食量、食効率及び臓器重量への影響 食餌組成及び飼育方法は以下の方法によって行った。4週齢の雄性OLETFラットを1週間予備飼育し、2群に分け(1群6匹)、対照群(Con群)として、5週齢からAIN-76組成に準じた食餌を摂取させ、他の一群をDHA群としてDHA結合型リン脂質を2%添加した食餌を摂食させた。食餌組成は表8に示す。 今回使用したDHA結合型リン脂質は、イクラから抽出したDHA結合型リン脂質(日本油脂株式会社製 サンオメガPC−DHA−N)100gを、−80℃で冷却した1Lのアセトン中に滴下し、不溶成分として沈殿したリン脂質画分を濾過して溶媒を留去して再抽出したものを使用した。組成に関しては表9及び表10に示す。 表9の脂質組成は、薄層クロマトグラフィーに脂質をスポットし、展開溶媒をクロロホルム−メタノール−水(65:25:4(v/v))で分離した。終了後、50%硫酸で検出を行い、デンシトメーターのシグナル比で定量した。なお、表10の脂肪酸組成分析はガスクロマトグラフィーにより行った。 以上の2群を以降、4週間飼育し、9時間絶食後、エーテル麻酔下で腹部大動脈採血により屠殺し、肝臓及び脂肪組織を摘出し、血液から血清を得た。ラットの生育状態を表11に示す。 その結果、4週間の飼育において、初体重、終体重、体重増加量、摂食量及び摂食効率に群間で差は見られなかった(表11)。血清パラメーターの測定 血清脂質濃度は酵素法により測定した。即ち、血清トリグリセリド濃度は、トリグリセライドE-テストワコー(GPO・DAOS法、和光純薬)、血清リン脂質濃度は、リン脂質E-テストワコー(コリンオキシダーゼ・DAOS法、和光純薬)、血清コレステロール濃度は、コレステロールC-E-テストワコー(コレステロールオキシダーゼ・DAOS法、和光純薬)、血清遊離脂肪酸濃度は、NEFA C-テストワコー(ACS・ACOD法、和光純薬)を用いて測定した。 血糖値は、グルコースCII-テストワコー(和光純薬)を用いてムタロターゼ・GOD法により測定した。 肝機能障害マーカーとしては、グルタミン酸オキザロ酢酸アミノ機転移酵素(GOT)及びグルタミン酸ピルビン酸アミノ機転移酵素(GPT)(トランスアミナーゼCII-テストワコー、POP・TOOS法、和光純薬)を測定した。 その結果、血清のコレステロール及びリン脂質濃度において、DHA結合型リン脂質摂取による有意な低下が認められた(表12)。 次に、血清のインスリン(レビス・ラットインスリンキット、シバヤギ)、レプチン(Rat Leptin ELISA kit、矢内原研究所)、アディポネクチン(マウス/ラットアディポネクチンELISAキット)をELISA法により測定した。 結果を表13に示す。 また、血清のアディポネクチン濃度は、DHA摂取により有意に増加することが示された(表13、図3)。肝臓脂質濃度の測定 肝臓総脂質はFolchらの方法により抽出・濃縮し、肝臓TG濃度はFletcher法、肝臓リン脂質濃度はBartlettらの方法で定量した。肝臓総コレステロール濃度は、コレステロールE-テストワコー(和光純薬)を用いてコレステロールオキシダーゼ・DAOS法により測定した。 その結果、肝臓のトリグリセリド濃度は、DHA結合型リン脂質により有意に低下した(表14)。DHA含有食の2週間摂取により血中の肝臓障害性マーカー酵素活性の上昇が改善されたことを示す図である。DHA含有食の2週間摂取により血中アディポネクチン濃度が上昇することを示す図である。DHA結合型リン脂質含有食の4週間摂取により血中アディポネクチン濃度が上昇することを示す図である。 ドコサヘキサエン酸又はその誘導体を有効成分として含むアディポネクチン上昇剤。 ドコサヘキサエン酸又はその誘導体を有効成分として含む、アディポネクチンの上昇用食品。 ドコサヘキサエン酸の誘導体がドコサヘキサエン酸エチルエステル又はドコサヘキサエン酸結合型リン脂質である、請求項1記載のアディポネクチン上昇剤。 ドコサヘキサエン酸の誘導体がドコサヘキサエン酸エチルエステル又はドコサヘキサエン酸結合型リン脂質である、請求項2記載の食品。 【課題】通常に脂質を摂取しながらも、高血圧、肥満、高脂血症、糖尿病などいわゆる生活習慣病に密接にかかわる生体因子を正常値に維持できる、アディポネクチン上昇剤の提供。【解決手段】ドコサヘキサエン酸又はその誘導体を有効成分として含むアディポネクチン上昇剤。【選択図】なし


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