生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_メニエール病治療薬
出願番号:2006095701
年次:2008
IPC分類:A61K 47/36,A61K 47/04,A61K 31/7004,A61K 31/702,A61K 9/06,A61P 7/00,A61P 7/10


特許情報キャッシュ

竹田 節子 JP 4105732 特許公報(B2) 20080404 2006095701 20060301 メニエール病治療薬 竹田 節子 505273660 竹田 節子 20080625 A61K 47/36 20060101AFI20080605BHJP A61K 47/04 20060101ALI20080605BHJP A61K 31/7004 20060101ALI20080605BHJP A61K 31/702 20060101ALI20080605BHJP A61K 9/06 20060101ALI20080605BHJP A61P 7/00 20060101ALI20080605BHJP A61P 7/10 20060101ALI20080605BHJP JPA61K47/36A61K47/04A61K31/7004A61K31/702A61K9/06A61P7/00A61P7/10 A61K 9/00 − 9/72 A61K 47/00 − 47/48 REGISTRY(STN) CA(STN) MEDLINE(STN) EMBASE(STN) BIOSIS(STN) JDreamII(JST) 国際公開第2006/001344(WO,A1) 特開平04−235136(JP,A) 特開平10−138219(JP,A) 特開平03−255012(JP,A) 特開2002−087922(JP,A) 特開2002−000626(JP,A) 特開平03−007211(JP,A) 特開平04−024020(JP,A) 特表平11−504950(JP,A) 耳鼻咽喉科臨床,2006年1月1日,第99巻,第1号,第61頁〜第65頁 東京医科大学雑誌,1983年,第41巻,第5号,第621頁〜第633頁 8 2007230990 20070913 13 20070618 北畑 勝彦 本発明は液剤や散剤に比較して容量をコンパクト化することができて携帯と服用を容易にする含水ゲル製剤、及び、単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコールを有効成分とし、携帯と服用を容易、簡便で、かつ衛生的に行えるようにし、同時に、瀉下作用をも解消することで、内リンパ水腫減荷効果を確実・迅速に発現させることを可能としたメニエール病治療薬に関する。 メニエール病の病態が内リンパ水腫であることは広く知られており、この内リンパ水腫の減荷を目的として、浸透圧利尿剤であるグリセロール、マニトールなどの糖アルコールが試されてきたが、経口投与では十分な治療効果が得られず、その殆どが現在臨床では投与されていない。 現在、メニエール病治療薬として、イソソルビトール(1,2:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール、一般名イソソルビド:日研化学(株)製、イソソルビトール含有率70%)が臨床応用されているが、これには1)1回服用量が30ml以上で、1日3回服用する必要があり、服用量が大量であること、さらに2)独特の苦みがあり、その苦味が服用後口腔内に長時間残存することから、服用に困難を感じる患者が多く、服用を中断する例もある。さらに、剤型が液体で、衛生上の問題から500ml、約750g(約11〜16回内服分)入りのボトルを携行する必要があり、必要回数分を携帯することが出来ないという不便があった。 イソソルビトール以外の糖、及び糖アルコールの場合も、一般に、有効量を単味の粉剤として内服する場合、1回投与量の容積は50cm3以上となり、飽和水溶液として投与するなら、約70〜120ml以上の蒸留水を要し、その容積は約80〜140ml、重量は約90〜140gとなる。内服するにも携行するにも、かさばり、かつ重いことが患者の負担になることは明白である。 また、グリセロール(3単糖)が、経口投与後約2時間で効果が発現する(非特許文献1)のに対し、従来品のイソソルビド(6単糖)溶液は作用発現まで約6時間を要する(非特許文献2)というように、作用発現はまちまちであるため、投与後早期に、かつ確実な作用を発現するメニエール病治療薬が期待されていた。 メニエール病患者では、急性期に抗利尿ホルモン(Antidiuretic hormone,ADH)であるアルギニンバゾプレシン(arginine vasopressin、以後AVP)の上昇が報告されており(非特許文献3)、このAVP1mu/kgをモルモットの皮下に連続投与した結果、血清AVPが数倍(メニエール病の急性期の血清AVPとほぼ同値)に上昇し、組織学的には内リンパ水腫が生じた(非特許文献4)。したがってメニエール病治療にあたっては、ストレスや脱水などによりAVPが上昇しないよう、特に留意しなくてはならない。 しかしながら、糖又は糖アルコールは元来、浸透圧下剤として用いられてきたことからも推測されるように、糖又は糖アルコールは、一度に大量を経口投与すると消化器官において浸透圧勾配を生じ、下痢など胃腸症状を発現するおそれがある。重篤な下痢の場合には脱水症状が続発し、抗利尿ホルモンのAVPが10〜15倍にも上昇することが報告されている(非特許文献5)。 実際に糖又は糖アルコールを単味で経口投与したところ、重篤な下痢を生じることを、本発明者は、実験によって確認した。上記の通り、AVP上昇は内リンパ水腫を形成することから、糖又は糖アルコールの内リンパ水腫減荷効果は、下痢に随伴する脱水によるAVP上昇のため相殺されることを組織学的に証明した(特願2005−210582)。この事実は、メニエール病治療において、体液バランスを保つことの重要性を示唆しており、したがって、糖又は糖アルコールをメニエール病治療に用いる場合には、下痢などの消化器症状を発現させないよう、細心の注意を払わなくてはならない。 前記のとおり、糖又は糖アルコールの種類によっては作用発現までに長時間を要する場合があり、このことは分子量及び分子構造の違い(非特許文献2)により、生体膜の通過速度が遅いことが一因であると考えられるが、投与後2−3時間に観察される一過性の下痢を考慮する必要性もある。例えば、従来品のイソソルビド溶液(日研化学(株)製)は、投与後2−3時間後に一過性の下痢を観察することから、AVP上昇が減荷作用の発現を遅延させていると考えられる。 そこで確実に迅速に作用を発現させるには、糖又は糖アルコールによる瀉下作用を抑制することも必須条件となる。 Takeda T et al:The rebound phenomenon of glycerol−inducedchanges in the endolymphatic space.Acta Otolaryngol 119:341−4(1999) Kakigi A et al:Time course of dehydratic effects of isosorbideon experimentally induced endolymphatic hydrops in guinea pigs. ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec 66:291−296(2004) Takeda T et el:Antidiuretic hormone(ADH)and endolymphatic hydrops.Acta Otolaryngol Suppl 519:219−22,(1995) Takeda T et al:Endolymphatic hydrops induced by chronic administration of vasopressin.Hear Res.140:1−6,(2000) Safwate A et al:Renin−aldosterone system and arginine vasopressin in diarrhoeic calves.Br Vet J 147:533−7,(1991) 本発明が解決しようとする課題は、糖又は糖アルコールを有効成分とするメニエール病治療薬をはじめとする、一回当りの服用量が嵩高く服用の困難な医薬製剤の容積を減量させることで服用と携行が容易なメニエール病治療薬を提供することにあり、加えて、メニエール病治療薬に頻発する瀉下作用を確実に抑制することで、効果発現までの時間を短縮することにある。 本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、糖又は糖アルコールを有効成分とするメニエール病治療薬など、嵩高い医薬に、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸ナトリウムとそれ以外の多糖類の1種以上と焼石膏を一定範囲量の配合することによって、容量、重量とも粉末製剤の約3分の1以下、飽和水溶液に対しては約4分の1以下となるゼリー状の固形物に加工することが可能であることを見出して本発明を完成した。1回の服用量が減少することに加え、分包出来ることで、必要量だけ携行できるようになった。またアルギン酸ナトリウム及びそれ以外の多糖類を1種以上添加すれば、糖又は糖アルコールを有効成分とする場合に生じる瀉下作用などの消化器症状を確実に消失させることができた。さらに、糖又は糖アルコールがイソソルビトールである場合は、イソソルビトール溶液独特の苦味を軽減することにも成功した。 すなわち、本発明は以下のとおりである。(1)有効成分ならびに有効成分100重量%に対し、0.5〜30重量%のアルギン酸ナトリウム及び0.5〜10重量%の焼石膏を含有する含水ゲル製剤。(2)アルギン酸ナトリウムの含有量が1〜15重量%である、(1)に記載の含水ゲル製剤。(3)焼石膏の含有量が0.5〜7重量%である(1)又は(2)に記載の含水ゲル製剤。(4)さらに、アルギン酸ナトリウム以外の多糖類を含有する(1)〜(3)のいずれか1に記載の含水ゲル製剤。(5)水分量が有効成分100重量%に対し、30〜90重量%である(1)〜(4)のいずれか1に記載の含水ゲル製剤。(6)有効成分が単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコールである、(1)〜(5)のいずれか1に記載の含水ゲル製剤。(7)糖アルコールがイソソルビトールである、(6)に記載の含水ゲル製剤。(8)単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコール、及びアルギン酸ナトリウムを水とともに混和し、ついで、焼石膏の水混和物を加えて練和することからなる(1)〜(7)のいずれか1に記載の含水ゲル製剤の製造方法。(9)(6)または(7)に記載のメニエール病治療のための含水ゲル製剤。 本発明の含水ゲル製剤は、アルギン酸ナトリウムと焼石膏を一定範囲量配合することによって、液剤や粉末製剤に比較して容量、重量を顕著に減量することができる。例えば、メニエール病治療薬である単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコール(以下、「糖アルコール類」という。)に、アルギン酸ナトリウムと焼石膏を一定範囲量配合することによってゼリー状の固形物とした結果、糖アルコール類単味の粉末製剤と比較すると容量、重量とも約3分の1以下、また、糖アルコール類単味の飽和水溶液に対しては約4分の1以下に減量することができ、かつ分包も可能になり、保存・携行・服用が極めて容易である。さらにこのゼリー状の固形物は時間経過後も寒天やゼリーなどをゲル化剤として用いた場合と比べ離水が少ない。また、寒天やゼリーは40〜80℃で、完全に溶解するが、この固形物は80℃でも殆ど溶解しないことから、夏期の携行時にも保冷の必要が無くなり、携行が格段と容易になった。該配合物にはアルギン酸ナトリウム以外の多糖類を1種以上添加することも可能で、アルギン酸ナトリウムの効果と相まって瀉下作用などの消化器症状を消失させ、糖アルコール類の内リンパ水腫減荷効果の発現を確実にし、同時に促進することに成功した。リバウンド現象も認められなかった。さらに、内服時患者に苦痛になる独特の苦味など不快な風味をゲル製剤にすることで軽減することにも成功した。 本発明におけるアルギン酸ナトリウムは寒天の主成分で、食品として用いられており、安全性が高い。有効成分100重量%に対するアルギン酸ナトリウムの配合量は、0.5〜30重量%、好ましくは1〜15重量%であり、1〜10重量%が特に好ましい。 また、焼石膏は中性の食品添加物であり、安全性が高い。焼石膏の配合量は有効成分100重量%に対し0.5〜10重量%、好ましくは1〜7重量%である。 アルギン酸ナトリウム及び/又は焼石膏の配合量が上記範囲を外れると適当な固さの固形物が形成され難い傾向にある。 有効成分としては、如何なるものでもよいが、とくに、一回あたりの服用量が多く液剤や粉末製剤としたときに嵩高くなるものに対して本発明は著効を示す。例えば、メニエール病治療薬である糖アルコール類が例示され、エリスリトール、キシリトール、キシロース、グルコース、ソルビトール、イソソルビトール、マルチトール、ラクチトールなどが挙げられるが、このうち特徴ある針状結晶を呈するイソソルビトールにおいて著明な容積の減少効果を示す。 本発明のメニエール病治療薬には、他にアルギン酸ナトリウム以外の多糖類を含有していてもよく、添加可能な多糖類としてはキサンタンガム、ペクチン、アラビアガム、ゼラチン、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。これらを単独でも数種組み合わせてもよい。 多糖類の配合量は、糖アルコール類に対し0.5〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%とする。 本発明のメニエール病治療薬は、適宜量の精製水を加えることによってゲル製剤とすることができる。 水の量は、成分の種類や配合量によって一律ではないが、概ね糖アルコール類に対し30〜90重量%程度であり、30〜80重量%程度が好ましい。 水の量がこの範囲を超えると、適度の固さを有するゼリー状の固形物としての良好なゲルが生成し難い。 製剤化に際し、必要に応じて、医薬上許容し得る担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、防腐剤、安定剤、香味・着色剤などを配合することができる。 また、本発明の目的を損なわない限り、糖アルコール類以外の他の薬効成分、例えば制酸作用、整腸作用を有する薬物として乾燥水酸化アルミニウムゲル、天然ケイ酸アルミニウム、沈降炭酸カルシウムなど、内耳循環改善作用を有する薬物として交感神経β作動薬、血管拡張薬あるいは脳循環改善薬、迷路水腫の軽減を図る薬物として利尿剤、鎮静ないし制吐を図る薬物として鎮静剤、自律神経調節剤を適宜配合することも可能である。 本発明の含水ゲル製剤は、例えば、予め糖アルコール類などの有効成分とアルギン酸ナトリウムを水とともに湯煎などによって加温した湿潤混合物(I液)と、焼石膏の水混和物(II液)を用意し、I液とII液を混合、攪拌することによって製造できる。 I液調製時に添加する水の量は、糖アルコール類とアルギン酸ナトリウムの混合物に対し約10〜約70重量%、好ましくは約25〜約60重量%であり、II液調製時に添加する水の量は、焼石膏に対し1〜7重量倍、好ましくは1〜5重量倍である。 また必要な場合には事前に調整しておいたゲル化促進剤を加えると、硬化はさらに速まり、確実なものとなる。ゲル化促進剤は各々適量の焼石膏と蒸留水を練和して固めたものを粉砕することで調製する。場合によっては、攪拌の回数を変えることでゲル化を遅延させることも可能である。また、確実にゲル化を遅延させるためには、カルシウムイオンの供給源として、硫酸カルシウム2水塩、炭酸カルシウムなどの難溶性カルシウム塩を焼石膏の5−95重量%添加する他、ゲル化遅延剤として炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなどを添加することも可能である。これにより、ゲル化は数分ないし10時間以上遅延する。 カルシウムイオンの供給源として、塩化カルシウムを用いる(処方例3[比較例2])ことは、その潮解現象により、10時間後にはゲル部分の約30−40体積%の離水が生じ、有効成分である糖アルコール類が大量に溶け出すことから、不適切である。 糖アルコール類の投与量は、病態によるが、成人1日あたり0.5〜3.0g/kg、好ましくは0.8〜1.5g/kgであり、これを1ないし数回に分けて投与する。 以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されない。 処方例1[比較例1]([表1]のイソソルビトール1) イソソルビトール 21g ペクチン 3g 寒天 1g 蒸留水 30ml 処方例2([表1]のイソソルビトール2) イソソルビトール 21g アルギン酸ナトリウム 0.8g 焼石膏 0.75g 蒸留水 13ml 処方例3[比較例2]([表2]のイソソルビトール3) イソソルビトール 21g アルギン酸ナトリウム 0.8g 塩化カルシウム 0.75g 蒸留水 13ml 処方例4[比較例3]([表2]のイソソルビトール4) イソソルビトール 21g アルギン酸ナトリウム 0.8g 硫酸カルシウム2水塩 0.75g 蒸留水 13ml ゲル化剤として寒天を選んだ場合(処方例1[比較例1])、固形物にするためには大量の水を必要とすることから、1回量が約55g、40mlとなる。必要回数分を分けて携行することは可能となるが、十分な軽量化、体積の減少ともに期待できない。また固まるまでに長時間を要することから成分濃度は場所によって不均一なものであった。ゲル化後は、時間経過とともに離水が生じ、離水した溶液には糖が大量に溶解し、高濃度であるため、その液は極度に濃厚な風味のするものである。また、寒天は一端固形化した後も80℃で完全に溶解し液状になる。80℃以下でも、周囲の温度が高くなるにつれ寒天は軟化することから、夏期には携帯中に軟化、離水が進んで、服用、携帯ともに困難になる。 例えばイソソルビトール溶液の場合には、ゲル製剤周囲の離水した液には特に高濃度のイソソルビトールが溶出しており、独特の苦味が口腔内に拡がり30〜40分の長時間にわたり残留するため、ゲル化したことにより実現した、のど越しよく服用できるというメリットは離水を生じることで消失する。 これに対し、アルギン酸ナトリウムと焼石膏を配合した本発明の処方例2によれば、容積が小さく、離水が生じないこんにゃく様のゲル製剤が得られる。室温で2ヶ月保管しても離水は生じなかった。また、80℃以上で10分加熱しても、溶解は起きず、表層にごく少量の離水が認められるのみで液状には戻らない。イソソルビトールは単味でも比較的瀉下作用の少ない糖アルコールであり、アルギン酸ナトリウム自体が多糖類であることから、止瀉作用を得ることが出来るが、さらに、止瀉剤として他の多糖類を必要量加えることも可能である。 [処方例2のゲル製剤の調製]:イソソルビトールとアルギン酸ナトリウムに蒸留水10mlを混和し、湯煎し、粗熱をとりI液とする。アルギン酸ナトリウムは事前に少量の蒸留水になじませておくと、イソソルビトール溶液との混和が容易になる。焼石膏を蒸留水3mlに混和し(II液)、I液を一気に加え、全体を適切な速度で攪拌すると、平均数秒ないし数分でこんにゃく様のゲル製剤が得られる。短時間でゲル化することから成分濃度は均一なものとなる。また、数時間低温で保存することで、より好ましいゲル製剤が得られる。得られたゲル製剤の体積は、寒天を用いた場合(処方例1)の2分の1以下になり、携帯に極めて好都合である。また、作成後長時間が経過しても離水が認められないが、表層をコーティングすれば独特の味は完全に遮蔽できる。 処方例2において、イソソルビトールを他の糖アルコール類に換えて同様に実施し、ゲル製剤を得た。これら糖アルコール類21gを蒸留水に溶解させ、飽和水溶液にする場合、70〜120mlの蒸留水を要し、飽和水溶液の体積は80〜140mlとなる。得られたゲル製剤は、いずれも飽和水溶液の約4分の1以下、キシリトールでは6分の1以下になった。結果を表1に示す。 処方例3に示すように、カルシウムイオン供給剤として、焼石膏に換えて同重量の塩化カルシウムを用いて、処方例2と同様の方法で調整する。練和後数分で硬化を開始するが、その直後から潮解現象による離水が起こりはじめ、10時間後にはゲル部分の体積14cm3に対し、イソソルビトールの苦い溶液が4ml離水し、従来品のイソソルビド溶液以上に服用は極めて困難となり、本発明の目的に適さない。 処方例4においては、カルシウムイオン供給剤として、焼石膏に換えて同重量の硫酸カルシウム2水塩を用いて、処方例2と同様の方法で調整する。ゲル製剤の体積は20cm3で、処方2と比較し嵩は高くはならないが、ゲル化の終了には10時間以上を要し、一部にはゲル化が起こっていない部分が残っていて、固さにもムラがあり、完全なゲル製剤を得ることが出来なかった。 さらに、焼石膏に硫酸カルシウム2水塩、及び硬化遅延剤を様々な割合で添加して、処方例2と同様の方法で調整して、ゲル製剤を得た。得られたゲル製剤は、いずれもイソソルビトール21g含有の飽和水溶液の体積が約80mlであることと比較し、その約4分の1以下になった。結果を表2に示す。 焼石膏を加えたイソソルビトール5,6,7はいずれも室温では離水を生じず、80℃で10分加温しても、ごくわずかな離水を認めるだけであって、いずれも服用、携帯が容易である。 従来の製剤との比較 現在我が国で臨床に用いられているイソソルビトール(日研化学(株)製:一般名イソソルビド、イソソルビトール含有率70%)溶液と本剤の効果を比較した。 体重280〜320mgのモルモット50匹の左側のみに内リンパ嚢閉鎖術を施行し、1ヶ月後、表3に示すように10匹ずつ5群に分け、正常な便をしていることを確認した上で、対照群は蒸留水のみを、第2群、第3群にはイソソルビド製剤(以下IB従来品)を投与し、第4群、第5群には、処方例2の方法で調整したゲル製剤(イソソルビトール2.8g/kg)の投与を行なった。消化器症状と、内リンパ減荷効果の観察は、IB従来品の減荷効果が最大となる投与後6時間後(非特許文献2)まで継続して行い、投与後3時間と6時間に灌流固定し、組織を採取、観察した。 いずれの群も、1回の投与量は4ml/kgとなるように調製した。閉鎖術、組織作成などの手順、及び計測は、非特許論文(Takeda T:Hear Res.183:9−18,(2003))と同様の方法で行った。 A)胃腸症状についての検討 便の固さ、形状を観察する際の判定基準を表4、表5に示す。 IB従来品投与群では2時間後に便が軟化し始め、3時間後(第2群)に下痢症状は最悪となり、正常便は10匹中2匹、やや軟便が3匹、軟便3匹、泥状便2匹となった。6時間後(第3群)には、正常便の動物は4匹、やや軟便が3匹、軟便2匹、泥状便1匹となり、下痢症状は投与後3時間と比較するといくらか改善していたが、第2群、第3群間に有意差は認められなかった。形成された便の長さは6時間後60.2±15.8であるが、10匹中8匹は便の間隔はバラバラで、約20〜40cmの間隔が開いている箇所も散見されたことから、かなりの胃腸症状が現れていたものと推測される。6時間後の便の固さと間隔を対照群と比較すると、便の固さ、便の間隔の観察結果ともに、有意差が認められ(各々、P<0.01,P<0.05、Mann−Whitney検定)、瀉下作用が緩やかながらも出現していたことが分かる。この事実は、IB従来品投与後に患者が時折訴える下痢、膨満感、ゴロゴロ感などの消化器症状と符合する。 それに対し、本開発品は3時間後(第4群)の便の固さは、やや軟便がわずかに2匹で、他の8匹は正常便で、便の間隔も不整、バラバラなものはIB従来品と比べ少なかった事から、IB従来品(第2群)と比べ、止瀉作用が有意に優れ(P<0.05)、消化器症状も軽かったことが推測される(P<0.01、Mann−Whitney検定)。6時間後(第5群)には全ての動物が正常な固さの便で、その間隔は6匹が一定であり、消化器症状はIB従来品(第3群)と比べ有意に軽かったことが分かった(便の固さ、間隔、各々P<0.01、P<0.01、Mann−Whitney検定)。 B)内リンパ水腫減荷効果 術側における膜の伸展と面積の増加の関連 各回転毎にライスネル膜の伸展と内リンパ腔の容積変化を計測し、その結果を下記の計算式と同様により積分して、蝸牛毎に膜の伸展率、内リンパ嚢の面積増加率を求め、その容積変化から、内リンパ水腫減荷効果を評価した。 術側における膜の伸展率(IR−L)、面積増加率(IR−S)は平均±標準偏差を表7に示す。 術側においては、閉鎖術による実験的水腫の形成程度は数%から百数十%とバラツキが大きく、膜の伸展率、面積増加率の平均±標準偏差を比較することでは投与薬剤の効果、その経時変化などを検討することには困難がある。 図1は横軸に膜の伸展率、縦軸に面積増加率をとり、各動物群毎に術側の2変数の散布図と回帰直線を示したものである。内リンパ水腫が生ずると、内リンパ腔の体積が増加し、ライスネル膜が伸展する。図1から、蒸留水を投与した第1群(対照群)では、この両者の間に統計学的に1次相関が存在すると推計される。薬剤投与により水腫の減荷が起こると、膜が伸展しているにもかかわらず、内リンパ腔の面積増加が少なくなり、回帰直線が下方に移動することになる。 図1において、第2群(IB従来品3時間後)、第3群(IB従来品6時間後)の回帰直線は、第1群(対照群)の回帰直線と比較すると、下方に移動し、有意差が存在した(各々P<0.01、P<0.001、ANCOVA)。 第4群(本開発品3時間後)、第5群(本開発品6時間後)の回帰直線は、さらに下方に移動し、第1群(対照群)と比較すると有意差が存在した(各々P<0.001、P<0.001、ANCOVA)ことから、減荷効果がより大きいものであると分かった。本開発品と従来品の効果を比較すると、投与後3時間(第4群)の減荷効果はIB従来品(第2群)と比較して、有意に大きく(P<0.01、ANCOVA)、一方、投与後6時間が経過した第5群では、IB従来品(第3群)と比較すると有意差が存在しなかった(ANCOVA)。 これらの事実から、本開発品の減荷効果は、投与後3時間で確実に出現し(P<0.001)、6時間が経過しても効果は持続していた(P<0.001)。従来品と比較しても投与後3時間での効果が従来品より有意に大きく(P<0.01)、作用の発現が迅速であることが分かった。 6時間後では有意差はないが、従来品と比べ回帰直線は下方に移動しており、便の性状から瀉下作用を含め、胃腸症状の改善に成功したことが明らかであるので、より少ない量で消化器官に負担をかけることなく、十分な治療効果が期待できることが予想される。 以上から、本開発品は携行、内服が容易、簡便で、内リンパ水腫減荷効果に優れたメニエール病治療薬である。 実施例2:本開発品と従来品の術側における減荷効果の差を見るため、膜の伸展率と面積変化率の関連を示した。第2群(IB従来品投与後3時間)、第3群(6時間後)とも回帰直前は下方に移動するが、3時間後は有意差が小さい(3時間後:P<0.01、6時間後:P<0.001、ANCOVA)。本開発品では、3時間後(第4群)、6時間後(第5群)とも大きく下方に移動しており、明らかな有意差が存在した(各々P<0.001、P<0.001、ANCOVA)。3時間後の効果を比較すると第4群は第2群に比して、下方にあり、有意差が存在した(P<0.01、ANCOVA)。IR−L、×:第3群(IB従来品6時間後)のIR−S vs IR−L、●:第4群(本開発品3時有効成分ならびに有効成分100重量%に対し、0.5〜30重量%のアルギン酸ナトリウム及び0.5〜10重量%の焼石膏及び30〜90重量%の水を含有する経口医薬用の含水ゲル製剤。アルギン酸ナトリウムの含有量が1〜15重量%である、請求項1に記載の経口医薬用の含水ゲル製剤。焼石膏の含有量が0.5〜7重量%である請求項1又は2に記載の経口医薬用の含水ゲル製剤。さらに、アルギン酸ナトリウム以外の多糖類を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の経口医薬用の含水ゲル製剤。有効成分が単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の経口医薬用の含水ゲル製剤。糖アルコールがイソソルビトールである、請求項5に記載の経口医薬用の含水ゲル製剤。単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコール、及びアルギン酸ナトリウムを水とともに混和し、ついで、焼石膏の水混和物を加えて練和することからなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の経口医薬用の含水ゲル製剤の製造方法。請求項5または6に記載のメニエール病治療のための経口医薬用の含水ゲル製剤。


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