タイトル: | 公開特許公報(A)_エンドトキシン吸着材の試験方法 |
出願番号: | 2006093105 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 33/579 |
穂苅 直人 JP 2007263917 公開特許公報(A) 20071011 2006093105 20060330 エンドトキシン吸着材の試験方法 東レ株式会社 000003159 穂苅 直人 G01N 33/579 20060101AFI20070914BHJP JPG01N33/579 2 1 OL 7 本発明は、エンドトキシン吸着材の試験方法に関するものであり、詳しくはエンドトキシンとして合成リピドAを用いることを特徴とするエンドトキシン吸着材の試験方法に関するものである。 グラム陰性菌の細胞壁に散在するリポポリサッカライド(以下LPSと略す)は、血液中に混入すると強い発熱作用、補体系や血液凝固系の活性化など多彩な生物活性を持つ内毒素“エンドトキシン”として知られている。そのため注射用薬剤などの医薬品類、医療用具や透析液の品質管理上、重要な管理項目となっている。 近年、これらの医薬品類、医療用具や透析液からのエンドトキシン除去や血液中のエンドトキシン除去を目的としたエンドトキシン吸着材が開発されている(特許文献1)。 この様な目的で用いられるエンドトキシン吸着材の製造工程において、実施される種々の検査の中でエンドトキシン吸着性能試験は、エンドトキシン吸着材の基本性能を調べる重要な試験である。 エンドトキシン吸着性能試験は予め所定量のエンドトキシンが添加された試験溶液を用意し、当該溶液にエンドトキシン吸着材を投入後、任意の時間経過後の当該溶液中のエンドトキシン量を定量し、当該溶液の初期のエンドトキシン量と比較することで、その吸着材のエンドトキシン吸着性能を評価するという方法が用いられてきた。 ここで用いられるエンドトキシン測定方法としては、種々の試験の中でも最も鋭敏、簡便かつ迅速な方法としてカブトガニ血球抽出物由来成分(以下LALと略す)を利用したリムルステストが挙げられる。リムルステストとはLALにエンドトキシンを加えると凝固反応が生じる性質を応用した試験法で、1988年には日本薬局方にエンドトキシン試験法として収載されている。リムルステストには、ゲル化法(ゲル化転倒法)、比濁法(比濁時間分析法)、合成基質法(比色法)の3方式が現在広く実施されている。 ゲル化法はLALと試料を混合し、37℃で60分反応させた後180°転倒させ、ゲル化を判定する半定量法である。比濁法はLALと試料を混合し、37℃において反応中の透過光量変化を観測して割り出されるゲル化時間からエンドトキシンを定量する方法である。合成基質法はLALとエンドトキシンとの反応によって活性化される酵素により分解して色素を遊離する合成基質を用い、遊離色素量からエンドトキシンを定量する方法である。上記のそれぞれの手法に対しては、各種試薬(例えば生化学工業製「エンドスペシー(登録商標)」や和光純薬製「リムルス−ES−Test−Wako」等)が既に市販され、広く一般に使用されている。 従来、これらの試験に用いられるエンドトキシンは細菌を原料として、フェノール抽出法、フェノール・クロロホルム・石油エーテル(PCP)抽出法等の手法により調製されたものが一般的である。 ここで用いられるエンドトキシンは細菌の細胞から抽出されたLPSやそこから精製されたリピドAであり、いずれも親水性部と疎水性部を同一分子内に有する両親媒性物質であるために精製そのものが困難であること、さらにLPSに本来備わっている不均一性と抽出や多糖類の切断の際に生じる副生成物の存在が問題を複雑にしているため、リムルステストにおける活性の不安定性は避けられない。吸着性能評価試験時には、同一重量で調製したエンドトキシン溶液のリムルス活性のバラツキやロット間差がありそれが一定条件の評価系を構築する上で問題であった。特開平10−085330号公報 本発明は前述の従来技術の問題点を直視し、エンドトキシン吸着材性能試験における評価系を安定化することで、安定且つ正確な評価系を提供することである。 本発明は、以下に示す方法によりエンドトキシン吸着材の性能試験において、評価系を安定化することで、安定且つ正確な評価系を提供することにその特徴を有する。(1)合成リピドAを使用することを特徴とするエンドドキシン吸着材の吸着性能の試験方法。(2)前記合成リピドAが化学合成されたリピドA誘導体であることを特徴とする(1)に記載のエンドドキシン吸着材の吸着性能の試験方法。 本発明を用いることにより、正確且つ安定にエンドトキシン吸着材の性能を評価することができる。 本発明で言う合成リピドAとは100%化学的に合成されたリピドAまたその誘導体であれば特に限定されるものではなく、市販の化学合成リピドA等が挙げられる。 合成リピドAの具体例としてペプチド研究所製の“LipidA(E.coli.)(Compound 506,LA−15−PP)”や“Lipid IVa(Compound 406,LA−14−PP,Precursor Ia)がある。” エンドトキシン吸着性能試験は予め所定量のエンドトキシンが添加された試験溶液を用意し、当該溶液にエンドトキシン吸着材を投入後、任意の時間経過後の当該溶液中のエンドトキシン量を定量し、当該溶液の初期のエンドトキシン量と比較することで、その吸着材のエンドトキシン吸着性能を評価する。 そのため、外部からのエンドトキシン汚染を防ぐためにエンドトキシンフリーな容器が用いられる。ポリプロピレン製容器や軟質ガラス製容器はエンドトキシンを非特異的に吸着するといわれており、試料と長期にわたって接触させることは避けた方がよく、250℃以上で乾熱処理した「パイレックス(PYREX)」(登録商標)等の硬質ガラスを用いることが好ましい。また、市販のパイロジェンフリーのポリスチレン容器も好適に使用できる。 エンドトキシン吸着材の性能評価は、吸着材や試験容器への非特異的なエンドトキシンの吸着を防ぐために、吸着試験液にタンパク質などの生体由来成分を含む溶液系で行われる。ここでいう生体由来成分とは、哺乳動物の体内から調製された成分のことであり、生体由来の成分、血液由来の成分、血清、血漿、血清タンパク質または乳タンパク質などが好ましい。これらの生体由来成分は一般に試薬として販売されているものを用いることもできる。それらの中でも含有するエンドトキシンが少なく、吸着性能試験時に添加されるエンドトキシン量に比べて無視できるものであれば更に好ましい。 これらの生体由来成分のうち固体粉末として入手可能な血清タンパク質の一種である血清アルブミン、乳製品であるスキムミルク、“ブロックエース”(大日本製薬(株))などをエンドトキシンを含まない水、例えば市販の注射用水や生理食塩水に溶解することで任意の濃度の水溶液を調製することが可能である。また、細胞培養などに使用される動物の血清、血漿などの血液由来の液性成分は容易に入手することができ、すでに血清タンパク質を含んでいるので、前述の固体粉末として入手可能な生体由来成分を溶解することなくそのまま、エンドトキシンを添加して試験液として使用することが可能である。その際の生体由来成分濃度はエンドトキシンの非特異的な吸着を防止して、その結果担体に導入されたリガンドによる選択的かつ特異的なエントドキシン吸着性能を正しく評価できる濃度あればよく、特に限定されない。 ここに化学合成された合成リピドAまたはその誘導体を所定量投入して吸着試験とする。本発明の提供するエンドトキシン吸着材のエンドトキシン吸着性能の検査方法は、たとえば以下のような手順で行われる。 化学合成された合成リピドAもしくはその誘導体を加えて任意の濃度に調製した生体由来成分を含む溶液を入れた容器に、エンドトキシン吸着材を任意の量投入し一定時間浸漬する。この際エンドトキシン吸着材と試験液の接触頻度を高めるために適度な振盪を行うことが望ましい。また、生理的条件下での性能評価とするため、試験系を37℃に温調した恒温槽、インキュベーター内に入れて行う。 こうして任意の時間経過後容器内の該リピドA溶液を採取して、エンドトキシン吸着材投入前の該リピドA溶液とリピドA濃度の比較測定することによりその減少量からエンドトキシン吸着性能評価を検査することができる。 なお、エンドトキシンの定量は市販のリムルス試薬で測定することが可能であるが、生体由来成分を含む溶液に投入された合成リピドAもしくはその誘導体の測定値が、投入後に経時的に変化する現象がしばしば認められる。 そのため、エンドトキシン吸着材のエンドトキシン吸着性能をより正確に評価するために、吸着試験に用いる試験液の一部を分取して、それを吸着試験に使用される試験液と同一温度下に同一時間置いて、それを吸着試験開始前の初期濃度とすることで、経時変化による見かけ上の濃度変化を解消し、より正確な吸着試験が可能となる。 以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本実施例に特に限定されるものではない。(実施例1) 合成リピドA(ペプチド研究所製Compound 506,LA−15−PP)を4ロット用意し、牛胎児血清にそれぞれ溶解して重量濃度10ng/mL溶液を4種類調製した。 これらの牛胎児血清溶液を大塚製薬(株)製注射用水を用いて10倍容に希釈した後、更に70℃で10分間加熱処理した上で、比濁時間法によりリムルス活性を測定した。測定は和光純薬工業(株)製トキシノメーターET−201およびリムルスES−Jテストワコーを用いて実施した。結果を図1に示す。 いずれのロットの合成リピドAを用いて調製した牛胎児血清溶液もリムルス試薬の凝固時間すなわちリムルス活性はほぼ同一であり、異なるロット間においても重量濃度対リムルス活性が一定であり、化学合成された合成リピドAはロット間においても品質が安定していることが確認された。(比較例1) 大腸菌由来のLPS(シグマ社製0111:B4由来)を4ロット用意し、それぞれを牛胎児血清に溶解して重量濃度10ng/mL溶液を4種類調製した。これらの牛胎児血清溶液を大塚製薬(株)製注射用水を用いて10倍容に希釈した後、更に70℃で10分間加熱処理した上で、比濁時間法によりリムルス活性を測定した。測定は和光純薬工業(株)製トキシノメーターET−201およびリムルスES−Jテストワコーを用いて実施した。結果を以下に示す。 同一重量濃度で調製された溶液にも拘わらず、LPSのロット間でリムルス試薬の凝固時間、すなわちリムルス活性が大きく異なり、同一メーカー品であっても重量濃度対リムルス活性の変動が大きく、品質のロット間差が大きいことが確認された。(実施例2)エンドトキシン吸着材を実際に合成し、その吸着材のエンドトキシン吸着性能を評価した。(吸着材の合成) 本実施例で用いるエンドトキシン吸着材は以下に示す方法により合成した。ポリプロピレン(三井東圧(株)製、“ノーブレン”J3H−G)50部を島成分とし、ポリスチレン(旭化成工業(株)製、“スタイロン”679)46部とポリプロピレン(三井東圧(株)製、“ノーブレン”J3H−G)4部の混合物を海成分とする原料を用いて、285℃で溶融紡糸した後、3.1倍に延伸して多芯海島型複合繊維(島数16)を得た。この複合繊維を編地加工したもの(平編)400gを開孔ボビンに巻き取り、直径200mm、高さ300mmのカラムに充填した。 ステンレス鋼製容器にてニトロベンゼン12kg、98%濃硫酸12kg、N−メチロール−α−クロロアセトアミド660g、パラホルムアルデヒド24.7gを混合した反応液を調製した。この反応液をポンプで開孔ボビン芯中空部に供給し、編地に反応液を流した。編地を通過してカラムより流出した反応液は再び循環させた。 10〜20℃で2時間反応後、カラムおよびステンレス鋼製容器より反応液を抜き出した。室温下でニトロベンゼン20kg、精製水20kgの順で用いて、反応と同様の操作でカラム中の編地を洗浄した。残存硫酸は24%水酸化ナトリウム水溶液で中和した。残存するニトロベンゼンをメタノールで抽出除去し、さらに70℃熱水で洗浄して精製α−クロロアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維660gを得た。更にポリミキシンB硫酸塩13.0gを精製水20Lに溶解して固定化反応液を調製し、上記アミドメチル化反応と同様の経路で精製α−クロロアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維からなる編地に供給し循環させた。 0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液を反応液に連続的に滴下して、pH 9.5に制御した。1時間反応させた後、0.1規定塩酸および精製水で洗浄して、ポリミキシンB固定化繊維の編地を得た。 こうして得たポリミキシンB固定化繊維についてエンドトキシン吸着性能を次の方法で評価した。 (吸着性能評価) エンドトキシンとして市販の合成リピドA(ペプチド研究所製Compound 506,LA−15−PP)4ロットをそれぞれ牛胎児血清(GIBCO社製)に溶解・希釈して濃度10ng/mLに調製し、4種類の試験液とし各試験液から一部を分取し氷冷保存した。 乾熱滅菌(250℃で2時間)済みの50mL共栓付き三角フラスコに乾燥重量で約0.5gのポリミキシンB固定化繊維を入れておき、そこに先に調製した合成リピドA添加牛胎児血清を注入後、37℃の振盪機付き恒温槽内で2時間インキュベートした。2時間後に各々の三角フラスコから合成リピドAを採取して、氷冷保存しておいた合成リピドA添加牛胎児血清と共にリムルス活性を測定した。 測定は和光純薬工業(株)製トキシノメーターET−201およびリムルスES−Jテストワコーを用いて比濁時間法により、既知濃度の希釈系列を同時測定して得られた検量線を元に実施した。なお、除去率は {(初期濃度−検体濃度)/初期濃度}×100(%)により算出した。得られた結果を図3に示す。 いずれのロットの合成リピドA添加牛胎児血清を用いた吸着性能評価系においても、ほぼ一定の吸着性能が観察され、安定したエンドトキシン吸着材評価系が構築できた。これは牛胎児血清に添加した合成リピドAの品質がロット間で安定しているためと考えられる。(比較例2) 実施例2で合成したエンドトキシン吸着材を用いて、エンドトキシンとして市販のリポポリサッカライドを用いた吸着試験を実施した。 市販のリポポリサッカライド:LPS(Sigma社製O111:B4由来)4ロットを牛胎児血清(GIBCO BRL CAT No.10099−141)にそれぞれ加えてLPS濃度10ng/mLを調製して4種類の試験液を用意し各試験液から一部を分取し氷冷保存した。 乾熱滅菌(250℃で2時間)済みの50mL共栓付き三角フラスコに乾燥重量で約0.5gのポリミキシンB固定化繊維を入れておき、そこに先に調製したLPS添加牛胎児血清15mLずつ注入後、37℃の振盪機付き恒温槽内で2時間インキュベートした。2時間後に各々の三角フラスコから牛胎児血清を採取して、氷冷保存しておいたLPS添加牛胎児血清と共にリムルス活性を測定した。 エンドトキシン濃度の測定は、検体を注射用水で10倍容に希釈後70℃で10分間加熱処理してから和光純薬工業(株)製トキシノメーターET−201およびリムルスES−Jテストワコーを用いて比濁時間法により、既知濃度の希釈系列(牛胎児血清溶液)を同時測定して得られた検量線を元に実施した。なお、エンドトキシン除去率は {(初期濃度−検体濃度)/初期濃度}×100(%)により算出した。得られた結果を図4に示す。 LPS添加牛胎児血清を用いた吸着性能評価系では、L測定された除去率がPSのロット毎に大きく変動した。これは牛胎児血清に添加したLPSの品質のロット間差に起因しているためと考えられる。これは天然のLPSのためにその精製過程で除去できなかった糖鎖部分や処理過程で生じた副生成物の混入量がロット間で異なり、そのために牛血清中のアルブミンなどの血清タンパク質との結合状態に影響を与え、その結果が吸着材の除去性能の変動として現れたものと推定する。実施例1にて凝固時間(リムルス活性)を測定した結果である。比較例1にて凝固時間(リムルス活性)を測定した結果である。実施例2にてエンドトキシン除去率を測定した結果である。比較例2にてエンドトキシン除去率を測定した結果である。 合成リピドAを使用することを特徴とするエンドドキシン吸着材の吸着性能の試験方法。 前記合成リピドAが化学合成されたリピドAの誘導体であることを特徴とする請求項1のエンドドキシン吸着材の吸着性能の試験方法。 【課題】エンドトキシン吸着材の性能試験において評価系を安定化することで、安定且つ正確な評価系を提供する。【解決手段】 エンドトキシン吸着材の性能試験において、エンドトキシンとして化学合成されたリピドAおよび/または化学合成されたリピドA誘導体を評価系を構築しリムルステストにて測定する。【選択図】図1