タイトル: | 公開特許公報(A)_フランジカルボン酸の製造方法 |
出願番号: | 2006088310 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07D 307/56 |
河野 岳信 松久 裕英 三浦 俊成 柿沼 宏和 JP 2007261986 公開特許公報(A) 20071011 2006088310 20060328 フランジカルボン酸の製造方法 キヤノン株式会社 000001007 宮崎 昭夫 100123788 石橋 政幸 100106138 緒方 雅昭 100127454 河野 岳信 松久 裕英 三浦 俊成 柿沼 宏和 C07D 307/56 20060101AFI20070914BHJP JPC07D307/56 9 OL 8 本発明は、穏やかな条件で、効率よく、高収率でフランジカルボン酸を得ることができるフランジカルボン酸の製造方法に関する。 フランジカルボン酸(FDCA)、特に、フラン−2,5−ジカルボン酸は医薬、農薬、殺虫剤、抗菌剤、香料、その他各種の分野の中間体として利用価値が高い。FDCAの合成方法としては、ジホルミルフラン(DFF)を酸化する方法が知られている。 DFFを酸化してFDCAを合成する方法としては、具体的には、DFF0.4gと酸化銀0.9gとを共存させ、90〜95℃で15分程度、攪拌する方法が報告されている(非特許文献1)。また、酸化銅-酸化銀触媒を用いて、水酸化ナトリウム水溶液中でフルフラールを55℃において酸素酸化し、フランカルボン酸を86〜90%の収率で得る方法が報告されている(非特許文献2)。 しかしながら、非特許文献1に記載される製法においては、酸化銀触媒の使用量が多量であり、温度が90℃以上必要であること、FDCAの収率は80%程度であることなどから、工業的製造に適用するにはエネルギー消費量が多く、触媒費用等コスト面でも問題がある。また、非特許文献2に記載される製法は、1官能基を酸化する方法であり、また温度が55℃必要で、エネルギー消費量のより一層の低減を図る必要がある。El−Hajj,T.Bull.Soc.Chim.Fr.1987,855−860第四版実験化学講座23、有機合成V、酸化反応、P415 本発明の課題は、触媒の使用量の減少を図り、穏やかな条件で、エネルギー消費量の低減を図り、DFFから定量的にFDCAを製造することができるFDCAの製造方法を提供し、技術の豊富化を図ることができるFDCAの製造方法を提供することにある。 本発明者らは、穏やかな条件により、DFFを酸化してFDCAを製造する方法について鋭意研究した。その結果、アルカリ存在下で、DFFに、水、金属酸化物触媒、空気または酸素を供給することにより、50℃以下の温度で、触媒の使用量を少量にしてもDFFの酸化反応が進行し、高収率でFDCAを得ることができることを見い出した。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、ジホルミルフランと、水と、金属酸化物触媒と、アルカリと、空気または酸素とを供給して、ジホルミルフランを酸化することを特徴とするフランジカルボン酸の製造方法に関する。 また、本発明は、ジホルミルフラン水溶液に、金属酸化物触媒と、アルカリと、空気または酸素とを供給して、ジホミルフランを酸化することを特徴とするフランジカルボン酸の製造方法に関する。 本発明のフランジカルボン酸の製造方法は、触媒の使用量の減少を図り、穏やかな条件で、エネルギー消費量の低減を図り、DFFから定量的にFDCAを製造することができるFDCAの製造方法を提供し、技術の豊富化を図ることができる。 本発明のフランジカルボン酸の製造方法は、ジホルミルフランと、水と、金属酸化物触媒と、アルカリと、空気または酸素とを供給して、ジホルミルフランを酸化することを特徴とする。 本発明のフランジカルボン酸の製造方法に用いるDFFとしては、2,5−ジホルミルフランが、反応性に優れ、中間体としての利用範囲が広く、好ましい。DFFは、セルロース、澱粉などの六糖類などの多糖類、ショ糖、マルトース、セロビオース、ラクトースなどの少糖類、フルクトース、グルコースなどの単糖類等の糖類の脱水反応によって得られる5−ヒドロキシメチルフルフラールを酸化して得ることができる。DFFは固体の状態で使用することもでき、また、水などの媒体に分散・溶解して使用することもできる。 DFFの原料中の含有量としては、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。ここで原料とは、ジホルミルフランと、水と、金属酸化物触媒と、アルカリとを含むものをいう。DFFの原料中の含有量が0.1質量%以上であれば、得られるFDCA濃度が高く、回収が容易であり、20.0質量%以下であれば、FDCAへの酸化反応が効率よく進行する。 また、DFFは予め水に分散・溶解して用いることができる。この場合、水分散・溶解液のDFFの濃度はDFFが均一に溶解するほどの量を用いることが好ましい。この水の使用量は原料中の水に含まれる。 本発明のフランジカルボン酸の製造方法に用いる金属酸化物触媒としては、例えば、酸化銀、酸化銅などの金属酸化物を挙げることができ、これらを組み合わせて使用することが好ましい。金属酸化物触媒として、米国特許3326944(1967)実施例2に準じた方法で調製したものを好ましいものとして挙げることができる。具体的には、硫酸銅と硝酸銀の混合溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加え、析出する酸化銅・酸化銀の混合物を用いることができる。 上記金属酸化物触媒の使用量としては、DFFに対して1.0質量%以上100質量%以下の範囲が好ましい。金属酸化物触媒の使用量がDFFに対して1.0質量%以上であれば、FDCAを効率よく製造することができ、100質量%以下であれば経済的な観点から好ましい。 本発明のフランジカルボン酸の製造方法に用いるアルカリとしては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、またはアルカリ土類金属の水酸化物を挙げることができる。アルカリ金属の水酸化物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等、また、アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等を挙げることができ、これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。 上記アルカリの使用量としては、DFFに対して3.0モル当量以上20.0モル当量以下であることが好ましい。アルカリの使用量がDFFに対して3.0モル当量以上であれば、FDCAを効率よく製造することができ、20.0モル当量以下であれば、経済的な観点から好ましい。 本発明のフランジカルボン酸の製造方法として、上記DFF、水、金属酸化物触媒、アルカリと共に供給する空気または酸素は、バブリングにより供給することができる。空気に含まれる酸素、または酸素ガスにより、アルカリ性水溶媒中で金属酸化物触媒存在下、DFFの酸化反応を容易に進行させることができる。 これらの各原料の供給順番としては、いずれであってもよいが、例えば、金属酸化物触媒とアルカリとを含有した水媒体に空気または酸素のバブリングを行い、これにDFFの水溶液を攪拌しつつ滴下することができる。また、金属酸化物触媒を含有する水媒体に空気または酸素のバブリングを行い、これにDFFとアルカリとを含有する水媒体を滴下することができる。また、DFF、金属酸化物触媒、アルカリを水に同時に添加して混合し、空気または酸素のバブリングを行うこともできる。 かかるDFFの酸化反応は、1℃から50℃で行うことが好ましい。酸化反応温度が1℃以上であれば、FDCAを効率よく製造することができ、50℃以下であれば、DFFが熱により分解されるのを抑制することができる。副生成物のヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFA)の生成を抑制し、効率よくFDCAを製造できることに加え、エネルギー消費量を最小限とすることができるため、室温で行うことが、より好ましい。 このようなフランジカルボン酸の製造方法により製造されるフランジカルボン酸としては、フラン−2,5−ジカルボン酸であることが、中間体として有用性に富むことから好ましい。 以下に、本発明のフランジカルボン酸の製造方法を具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。 [金属酸化物触媒の合成] 攪拌棒、温度計、ジムロート冷却管、玉栓を装着した5Lの四つロフラスコに、CuSO4・5H2O400gとイオン交換水2Lとを仕込み、攪拌しながらマントルヒーターにより70℃に昇温した。1Lの三角フラスコにAgNO380gとイオン交換水500mLとを添加し、スターラーで攪拌し溶解させ、溶解したAgNO3水溶液をできるだけ素早く上記四つ口フラスコに添加した。四つロフラスコの温度が一旦70℃より下がるので、70℃に戻し安定したのを確認した。白色結晶が析出した。別に1L三角フラスコに、水酸化ナトリウム200gとイオン交換水500mLとを添加し、発熱を注意しながら攪拌し溶解した。溶解した水酸化ナトリウム水溶液を温度が下がらないように保温した。100mL滴下ロートを用い、保温している水酸化ナトリウム水溶液を60分間かけて、四つ口フラスコにゆっくり滴下した。四つ口フラスコ内の水溶液は徐々に茶黒色に着色した。水酸化ナトリウム水溶液滴下後70℃で30分間攪拌を継続して行った。室温まで冷却し、ブフナーロートと吸引瓶を用いてアスピレーターで吸引濾過した。イオン交換水で数回掛け洗浄を行い、酸化銀酸化銅触媒を得た。酸化銀酸化銅触媒はウエット状態のままサンプル瓶に保管し、使用した。 [実施例1] 水5.7gに酸化銀酸化銅触媒を0.124g添加し、攪拌しつつ2L/分の量の空気をバブリングした。また2,5−DFF0.124gを、水5.7gに溶解し、2,5−DFFに対して5.2モル当量の水酸化ナトリウムを添加した。この2,5−DFFのアルカリ溶液を酸化銀酸化銅触媒分散溶液に30分間滴下した。このとき溶液中の温度は25℃であった。滴下終了後、10分間攪拌を継続した。 反応液の分析を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行った。フラン−2,5−ジカルボン酸の収率は100%であった。結果を表1に示す。 [実施例2] 2,5−DFF0.124gと2,5−DFFに対して5.2モル当量の水酸化ナトリウムと酸化銀酸化銅触媒0.124gを水11.4gに添加し、攪拌しながら2L/分の量の空気をバブリングした。このとき溶液中の温度は25℃であった。バブリングを60分行った。 反応液の分析をHPLCを用いて行った。フラン−2,5−ジカルボン酸の収率は75.9%、5−ヒドロキシメチルフラン−2−カルボン酸の収率は24.1%であった。 その後、バブリングを継続し合計で840分行い、同様にしてHPLCによる分析を行った。フラン−2,5−ジカルボン酸の収率は77.5%、5−ヒドロキシメチルフラン−2−カルボン酸の収率は22.5%であった。結果を表2に示す。 [比較例1] 酸化銀酸化銅触媒を使用しない他は、実施例2と同様に行った。バブリングの開始後40分経過した時点で、反応液の分析をHPLCを用いて行った。2−カルボキシ−5−ホルミルフラン(CFF)と5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)の生成が確認されたが、フラン−2,5−ジカルボン酸は全く確認できなかった。 その後、バブリングを継続し合計で780分行ったが、FDCAの生成は見られなかった。 [比較例2] 2,5−DFF0.124gと2,5−DFFに対して1.3モル当量の水酸化ナトリウムと酸化銀酸化銅触媒0.124gを水11.4gに添加し、攪拌しながら2L/分の量の空気をバブリングした。このとき溶液中の温度は25℃であった。バブリングの開始後40分経過した時点で、反応液の分析をHPLCを用いて行った。フラン−2,5−ジカルボン酸の収率は10.3%、2−カルボキシ−5−ホルミルフラン(CFF)の収率は64.7%、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)の収率は7.6%であった。その後、バブリングを継続し合計で90分行ったが、FDCAの生成率は大きな向上は見られなかった。結果を表4に示す。 ジホルミルフランと、水と、金属酸化物触媒と、アルカリと、空気または酸素とを供給して、ジホルミルフランを酸化することを特徴とするフランジカルボン酸の製造方法。 ジホルミルフラン水溶液に、金属酸化物触媒と、アルカリと、空気または酸素とを供給して、ジホミルフランを酸化することを特徴とするフランジカルボン酸の製造方法。 アルカリとして、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物のいずれか1種または2種以上を用いることを特徴とする請求項1または2記載のフランジカルボン酸の製造方法。 アルカリとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウムから選ばれるいずれか1種または2種以上を用いることを特徴とする請求項1または2記載のフランジカルボン酸の製造方法。 アルカリを、ジホルミルフランの3.0モル当量以上20.0モル当量以下の範囲で使用することを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のフランジカルボン酸の製造方法。 金属酸化物触媒として、酸化銀と酸化銅とを用いることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のフランジカルボン酸の製造方法。 金属酸化物触媒を、ジホルミルフランに対して1.0質量%以上100質量%以下の範囲で使用することを特徴とする請求項1から6のいずれか記載のフランジカルボン酸の製造方法。 ジホルミルフランを、原料全体に対して0.1質量%以上20.0質量%以下の範囲で使用することを特徴とする請求項1から7のいずれか記載のフランジカルボン酸の製造方法。 1℃以上50℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項1から8のいずれか記載のフランジカルボン酸の製造方法。 【課題】触媒の使用量の減少を図り、穏やかな条件で、エネルギー消費量の低減を図りDFFから定量的にFDCAを製造することができるFDCAの製造方法を提供し、技術の豊富化を図ることができるFDCAの製造方法を提供することにある。【解決手段】ジホルミルフランと、水と、金属酸化物触媒と、アルカリと、空気または酸素とを供給して、ジホルミルフランを酸化してフランジカルボン酸を製造する。アルカリとして、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物のいずれか1種または2種以上を用い、金属酸化物触媒として、酸化銀と酸化銅とを用い、1℃以上50℃以下の温度で行うことが好ましい。【選択図】なし