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タイトル:特許公報(B2)_二光子吸収材料とその用途
出願番号:2006070305
年次:2012
IPC分類:C07C 217/86,C07C 13/547,C07C 211/54


特許情報キャッシュ

戸村 辰也 佐藤 勉 三樹 剛 安部 美樹子 佐々木 正臣 JP 4996115 特許公報(B2) 20120518 2006070305 20060315 二光子吸収材料とその用途 株式会社リコー 000006747 武井 秀彦 100105681 吉村 康男 100119437 戸村 辰也 佐藤 勉 三樹 剛 安部 美樹子 佐々木 正臣 20120808 C07C 217/86 20060101AFI20120719BHJP C07C 13/547 20060101ALI20120719BHJP C07C 211/54 20060101ALI20120719BHJP JPC07C217/86C07C13/547C07C211/54 C07C 217/00 C07C 13/00 C07C 211/00 CA/REGISTRY(STN) 国際公開第2004/022665(WO,A1) 特開2004−168690(JP,A) 特開2006−022025(JP,A) 特開2005−213434(JP,A) 特開2005−132763(JP,A) Spectrum (Bowling Green, OH, United States),2005年,18(3),p.12-17 Chemical Communications (Cambridge, United Kingdom) ,2006年 1月19日,(8),p.915-917 Journal of Physical Chemistry A,2006年,110(1),p.241-251 Journal of Physical Chemistry A,2005年,109(43),p.9767-9774 ChemPhysChem ,2005年,6(5),p.893-896 Journal of Organic Chemistry ,2005年,70(4),p.1134-1146 Chemistry of Materials,2004年,16(14),p.2783-2789 6 2007246422 20070927 27 20090113 前田 憲彦 本発明は二光子吸収材料に関し、高い二光子吸収断面積を有する二光子吸収単分子材料もしくは高分子材料に関し、三次元メモリ材料、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、光化学療法用材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料などの用途に応用される。 二光子吸収材料に関する従来例として、特許文献1〜3開示のものがある。 また、三次元メモリ媒体(材料)に関する従来例として、特許文献4〜6開示のものがある。 また、光制限素子(材料)に関する従来例として特許文献7開示のものがある。 また、光造形技術に関する従来例として、特許文献8開示のものがある。 また、二光子特性を利用した(蛍光)顕微鏡に関する従来例として、特許文献9〜11開示のものがある。また、我々は、別に二光子吸収材料に関する技術を開発し提案(特許文献9の特願2006−066201号明細書等)している。 二光子吸収現象を利用すると、極めて高い空間分解能を特徴とする種々のデバイスへの応用が可能となるが、現時点で利用可能な二光子吸収化合物では二光子吸収能が低いため、二光子吸収を誘起する励起光源として、高価で高出力のレーザーが必要となる。従って安価で小型(低出力)のレーザーを用いて二光子吸収を利用した実用用途を実現するためには、高効率の二光子吸収材料の開発が必須である。 二光子吸収材料を固体として用いる場合、これまでは高分子中に分散させて使用していた。しかしながら長期保存性に関しては、二光子吸収材料の結晶化やマイグレーションによる偏析等による塗膜欠陥が発生するため、品質が変化する不具合があった。(二光子吸収材料を用いた三次元多層光メモリへの応用) 最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映を間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。さらにコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。こうした中、DVD±Rのような従来の二次元光記録媒体は原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。 そのような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、三次元光記録媒体が俄然、注目されてきている。三次元光記録媒体は、三次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の二次元記録媒体の何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。三次元光記録媒体を提供するためには、三次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、二光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とある。二光子吸収材料を用いる三次元光記録媒体では、上記で説明した原理に基づいて何十、何百倍にもわたる、いわゆるビット記録が可能であって、より高密度の記録が可能であり、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。 二光子吸収材料を用いた三次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(レウ"ィッチ、ユージーン、ポリス他、特表2001−524245号公報[特許文献1]、パベル、ユージエン他、特表2000−512061号公報[特許文献2])、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(コロティーフ、ニコライ・アイ他、特表2001−522119号公報[特許文献3]、アルセノフ、ウ"ラディミール他、特表2001−508221号公報[特許文献4])等が提案されているが、いずれも具体的な二光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている二光子吸収化合物の例も二光子吸収効率の極めて小さい二光子吸収化合物を用いている。さらに、これらの特許文献に用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する二光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。 また、河田聡、川田善正、特開平6−28672号公報[特許文献5]、河田聡、川田善正他、特開平6−118306号公報[特許文献6]には、屈折率変調により三次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、二光子吸収三次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。 上に述べたように、非共鳴二光子吸収により得た励起エネルギーを用いて反応を起こさせ、その結果レーザー焦点(記録)部と非焦点(非記録)部で光を照射した際の発光強度を書き換えできない方式で変調することができれば、三次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で発光強度変調を起こすことができ、究極の高密度記録媒体と考えられる三次元光記録媒体への応用が可能となる。さらに、非破壊読み出しが可能で、かつ不可逆材料であるため良好な保存性も期待でき実用的である。 しかし、現時点で利用可能な二光子吸収化合物では、二光子吸収能が低いため、光源として非常に高出力のレーザーが必要であり、かつ記録時間も長くかかる。特に三次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レート達成のために、高感度にて発光能の違いによる記録を二光子吸収により行うことができる二光子吸収三次元光記録材料の構築が必須である。そのためには、高効率に二光子を吸収し励起状態を生成することができる二光子吸収化合物と、二光子吸収化合物励起状態を用いて何らかの方法にて二光子吸収光記録材料の発光能の違いを効率的に形成できる記録成分を含む材料が有力であるが、そのような材料は今までほとんど開示されておらず、そのような材料の構築が望まれていた。特開2005−213434号公報特開2005−82507号公報特開2004−168690号公報特開2005−100606号公報特表2005−517769号公報特表2004−534849号公報特開平08−320422号公報特開2005−134783号公報特開平09−230246号公報特開平10−142507号公報特開2005−165212号公報特表2001−524245号公報特表2000−512061号公報特表2001−522119号公報特表2001−508221号公報特開平6−28672号公報特開平6−118306号公報 上記従来技術に鑑みて、本発明の目的は、スペクトル、屈折率または偏光状態の変化を、高感度に実現する、効率良く二光子を吸収する有機材料、すなわち二光子吸収断面積の大きな有機材料を提供することにある。 さらに、本発明の目的は、二光子吸収断面積が大きい二光子吸収化合物を少なくとも有し、二光子吸収化合物の二光子吸収を利用して書き換えできない方式で記録を行った後、光を記録材(層)に照射してその光学特性の違いを検出することにより再生することを特徴とする二光子吸収光記録再生方法及びそのような記録再生が可能な二光子吸収光記録材料を提供することにある。 本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構成単位を含有するアリールアミンの単量体もしくは重合体により上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。 即ち、本発明によれば、(1)「下記一般式(I)で表される二光子吸収材料; Ar1はNo.5〜No.8で表されるいずれかの二価基を表し、Ar2はNo.9,No.10、またはNo.13で表される二価基もしくは単結合を表し、mは0または1を表す」(2)下記一般式(III)で表される繰り返し構成単位を有する二光子吸収材料;Ar1はNo.1〜No.4で表されるいずれかの二価基を表し、Ar2はNo.9,No.10、またはNo.13で表される二価基もしくは単結合を表し、mは0または1を表す。」、(3)「前記第(1)項または第(2)項に記載の化合物を含む深さ方向に記録再生可能な三次元メモリ材料」、(4)「前記第(1)項または第(2)項に記載の化合物を含む光制限材料」、(5)「前記第(1)項または第(2)項に記載の化合物を含む光造形用光硬化樹脂の硬化材料」、(6)「前記第(1)項または第(2)項に記載の化合物を含む二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料」によって達成される。即ち、本発明は、二光子吸収材料、これを用いた三次元メモリ材料、光制限材料、及び光造形用光硬化樹脂の硬化材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料に係わる。ここで、上記(1)〜(2)は、本発明の単分子の二光子吸収材料の基本構造を示し、(4)〜(6)は、本発明の二光子吸収材料の重合体構造を示し、(3)〜(6)は、その好適な工業的適用材料例を示す。 以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明により、光子吸収の遷移効率が高い二光子吸収化合物が実現でき、小型で安価なレーザーを使った実用用途(三次元メモリ材料、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、光化学療法用材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料など)が実現可能となる。 また、二光子吸収能を有する部位を連結した二光子吸収重合体とすることで、長期保存でも塗膜欠陥が発生せず、安定した品質が得られるという極めて優れた効果を奏するものである。 以下、本発明ついてより詳細に説明する。 本発明の二光子吸収材料とは、非共鳴領域の波長において分子を励起することが可能な材料で、このとき励起に用いた光子の約2倍のエネルギー準位に、実励起状態が存在する材料のことである。 ところで、二光子吸収現象とは、三次の非線形光学効果の一種であって、分子が二つのフォトンを同時に吸収して、基底状態から励起状態へ遷移する現象であり、古くから知られていたがJean−Luc Bredas等が1998年に分子構造とメカニズムの関係を解明して以来(Science,281,1653 (1998))、近年になって二光子吸収能を有する材料に関する研究が進むようになった。 しかしながらこのような二光子同時吸収の遷移効率は、一光子吸収に較べて極めて低く、極めて大きなパワー密度の光子を必要とするため、通常使用されるレーザー光強度では殆ど無視され、ピーク光強度(最大発光波長における光強度)が高いモード同期レーザーのようなフェムト秒程度の極超短パルスレーザーを用いると、観察されることが確認されている。 二光子吸収の遷移効率は、印加する光電場の二乗に比例する(二光子吸収の二乗特性)。このため、レーザーを照射した場合、レーザースポット中心部、即ち電界強度の高い位置でのみ二光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では二光子の吸収は全く起こらない。三次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ二光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために二光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる一光子の線形吸収に比べて、二光子吸収は、この二乗特性に由来して空間内部の一点のみしか励起が起こらないため、空間分解能が著しく向上する。 この特性を利用して、記録媒体の所定の位置に二光子吸収によりスペクトル変化、屈折率変化または偏光変化を生じさせ、ビットデータを記録する三次元メモリの研究が進められている。二光子吸収は、光の強度の二乗に比例して生じるため、二光子吸収を利用したメモリは、一光子吸収を利用したメモリに比べて、スポットサイズを小さくすることができ、超解像記録が可能となる。その他この二乗特性に由来する高い空間分解能の特性から、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料などの用途への開発も進められている。 さらに、二光子吸収を誘起する場合には、化合物の線形吸収帯が存在する波長領域よりも長波長でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが可能である。化合物の線形吸収帯が存在しない、いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、かつ二光子吸収の二乗特性のために試料内部の一点を高い空間分解能で励起できるため、二光子吸収及び二光子発光は生体組織の二光子造影や二光子フォトダイナミックセラピー(PDT)などの光化学療法応用面でも期待されている。また、二光子吸収、二光子発光を用いると、入射した光子のエネルギーよりも高いエネルギーの光子を取り出せるため、波長変換デバイスという観点からアップコンバージョンレージングに関する研究も報告されている。 二光子吸収材料としてはこれまでに多数の無機材料が見出されてきた。ところが無機物においては、所望の二光子吸収特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するためのいわゆる分子設計が困難であることから実用するのは非常に困難であった。一方、有機化合物は分子設計により所望の二光子吸収の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な二光子吸収材料として注目を集めている。 従来の有機系二光子吸収材料としては、ローダミン、クマリンなどの色素化合物、ジチエノチオフェン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体などの化合物が知られている。しかしながら、分子あたりの二光子吸収能を示す二光子吸収断面積が小さく、特にフェムト秒パルスレーザーを用いた場合の二光子吸収断面積は、200(GM:×10−50cm4・s・molecule−1・photon−1)未満のものが殆どで工業的な実用化には至っていない。<二光子吸収材料を用いた三次元多層光メモリへの応用> 本発明の二光子吸収光記録材料は、スピンコーター、ロールコーターまたはバーコーターなどを用いることによって基板上に直接塗布することも、あるいはフィルムとしてキャストしついで通常の方法により基板にラミネートすることもでき、それらにより二光子吸収光記録材料とすることができる。 ここで、「基板」とは、任意の天然又は合成支持体、好適には柔軟性又は剛性フィルム、シートまたは板の形態で存在することができるものを意味する。 基板として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎又は静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。また、この基板にはあらかじめ、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであっても良い。 使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。蒸発除去には加熱や減圧を用いても良い。 さらに、二光子吸収光記録材料の上に、酸素遮断や層間クロストーク防止のための保護層(中間層)を形成してもよい。保護層(中間層)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。また、ガラス板を貼合わせてもよい。また、保護層と感光膜の間および/または、基材と感光膜の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。さらに感光膜間の保護層(中間層)にもあらかじめ、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであっても良い。 上述した三次元多層光記録媒体の任意の層に焦点を合わせ、記録再生を実施することで、本発明の三次元記録媒体として機能する。また、層間を保護層(中間層)で区切っていなくとも、二光子吸収色素特性から深さ方向の三次元記録が可能である。 以下、三次元多層光メモリの好ましい実施形態(具体例)を示すが、本発明はこれらの実施形態により何ら限定されず、三次元記録(平面及び膜厚方向に記録)が可能な構造であれば、他にどのような構造であっても構わない。 三次元多層光メモリの記録/再生のシステム概略図を図1(a)に、記録媒体の概略断面図を図1(b)に示す。 図中(b)の記録媒体においては、平らな支持体(基板(1))に本発明の二光子吸収化合物を用いた記録層と、クロストーク防止用の中間層(保護層)が交互に50層ずつ積層され、各層はスピンコート法により成膜されている。記録層の厚さは0.01〜0.5μ、中間層の厚さは0.1μ〜5μが好ましく、この構造であれば、現在普及しているCD/DVDと同じディスクサイズで、テラバイト級の超高密度光記録が実現できる。更にデータの再生方法(透過/或いは反射型)により、基板(1)と同様の基板(2)(保護層)、或いは高反射率材料からなる反射層が構成される。 記録時は単一ビームが使用され、この場合フェムト秒オーダーの超短パルス光を利用することができる。また再生時は、データ記録に使用するビームとは異なる波長、或いは低出力の同波長の光を用いることもできる。記録及び再生は、ビット単位/ページ単位のいずれにおいても実行可能であり、面光源や二次元検出器等を利用する並行記録/再生は、転送レートの高速化に有効である。 なお、本発明に従い同様に形成される三次元多層光メモリの形態としては、カード状、プレート状、テープ状、ドラム状等が考えられる。<二光子吸収材料を用いた光制限素子への応用> 光通信や光情報処理では、情報等の信号を光で搬送するために変調、スイッチング等の光制御が必要になる。この種の光制御には、電気信号を用いた電気−光制御方法が従来採用されている。しかし電気−光制御方法は、電気回路のようなCR時定数による帯域制限、素子自体の応答速度や電気信号と光信号との間の速度の不釣合いで処理速度が制限されることなどの制約があり、光の利点である広帯域性や高速性を十分に生かすためには、光信号によって光信号を制御する光−光制御技術が非常に重要になってくる。 この要求に応えるものとして本発明の二光子吸収材料を加工して作製した光学素子は、光を照射することで引き起こされる透過率や屈折率、吸収係数などの光学的変化を利用し、電子回路技術を用いずに光の強度や周波数を変調することで、光通信、光交換、光コンピュータ、光インターコネクション等における光スイッチなどに応用することが可能である。 本発明の二光子吸収材料による光学特性変化を利用する光制限素子は、通常の半導体材料により形成される光制限素子や、一光子励起によるものに比べ、応答速度にはるかに優れた素子を提供することができる。また本発明の二光子吸収材料は高感度ゆえに、S/N比の高い信号特性に優れた光制限素子を提供することができる。 図2は、本発明の二光子吸収材料を、二光子励起し得る波長の制御光により二光子励起させることによって、一光子励起し得る波長の信号光を光スイッチングする光制御素子の一例である。保護層で狭持された二光子吸収材料の形態を示すが、この構成が本発明を限定するものではない。 また、本発明における光制限素子の公知文献として特開平8−320422号公報が挙げられる。これによると光照射により屈折率が変化する光屈折率材料に、その屈折率が変化する波長の光を照射してフォーカシングを行い、屈折率分布を形成する光導波路として開示されている。すなわち、本発明の高い二光子吸収能を有した材料、薄膜、もしくは光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光学素子として配置し、ひとつの波長(λ1)の光で励起状態に励起こされ、さらにその状態から他の波長(λ2)の光で他の状態に励起こされることにより波長による屈折率変化分布を利用した光導波路の設計が可能となる。 また、二光子吸収材料はその多くが蛍光を有するものが多く、光デバイスの一方の出射端またはその近傍に蛍光物質を配置し、他方から励起光(λ1)を出射させ、励起光と蛍光(λ2)で屈折率分布を形成することもできる。この場合、通常蛍光の方が励起光より弱いので、感度は蛍光の波長において大きくすることが望ましい。蛍光物質としては、蛍光色素を光硬化性物質に分散させたものなどが例示される。<光造形用材料への応用> 二光子光造形法の装置の概略図を図3に示し、以下に説明する。 近赤外パルスレーザー光源(31)からの光を、ミラースキャナー(34)に通した後、レンズを用いて光硬化性樹脂(39)中に集光させレーザースポットを走査し、二光子吸収を誘起することによって焦点近傍のみにおいて樹脂を硬化させて任意の三次元構造を形成する二光子マイクロ光造形方法である。 パルスレーザー光をレンズで集光して、集光点近傍にフォトンの密度の高い領域を形成する。このときビームの各断面を通過するフォトンの総数は一定なので、焦点面内でビームを二次元的に走査した場合、各断面における光強度の総和は一定である。しかしながら、二光子吸収の発生確率は、光強度の二乗に比例するため、光強度の大きい集光点近傍にのみ、二光子吸収の発生の高い領域が形成される。このように、パルスレーザー光をレンズによって集光させ二光子吸収を誘起することで、集光点近傍に光吸収を限定し、ピンポイントで樹脂を硬化させることが可能となる。集光点はZステージ(36)とガルバノミラーによって光硬化樹脂液内を自由に移動させることができるため、光硬化性樹脂液内において目的とする三次元加工物を自在に形成することができる。 二光子光造形法の特徴としては、以下の項目が挙げられる。1)回折限界を超える加工分解能 二光子吸収の光強度に対する非線形性によって、光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。2)超高速造形 二光子吸収を利用した場合、焦点以外の領域では、光硬化性樹脂が原理的にも硬化しない。このため照射させる光強度を大きくし、ビームのスキャン速度を速くすることができる。またこのため、造形速度を約10倍向上することができる。3)三次元加工 光硬化性樹脂は、二光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来のSIHでは、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になる問題点が、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。4)高い歩留り 従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行うのでこうした問題は解消される。5)大量生産への適用 超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。 二光子光造形用光硬化性樹脂とは、光を照射することにより二光子重合反応を起こし、液体から固体へと変化するという特性を持った樹脂である。主成分はオリゴマーと反応性希釈剤からなる樹脂成分と光重合開始剤(必要に応じ光増感材料を含む)である。オリゴマーは重合度が2〜20程度の重合体であり、末端に多数の反応基を持つ。さらに、粘度、硬化性等を調整するため、反応性希釈剤が加えられている。光を照射すると、重合開始剤または光増感材料がこれを二光子吸収し、重合開始剤から直接または光増感材料を介して反応種が発生し、オリゴマー、反応性希釈剤の反応基に反応し、重合を開始させる。その後これらの間で連鎖的重合反応を起こし三次元架橋が形成され、短時間のうちに三次元網目構造を持つ固体樹脂へと変化する。 光硬化性樹脂は光硬化インキ、光接着剤、積層式立体造形などの分野で使用されており、様々な特性を持つ樹脂が開発されている。特に、積層式立体造形においては (1)反応性が良好であること、 (2)硬化時の堆積収縮が小さいこと、 (3)硬化後の機械特性が優れていること等が重要である。 これらの特性は本手法においても同様に重要であり、そのため、積層式立体造形用に開発された樹脂で二光子吸収特性を有するものは本手法の二光子光造形用光硬化性樹脂としても使用できる。その具体的な例としては、アクリレート系及びエポキシ系の光硬化性樹脂が良く用いられ、特にウレタンアクリレート系の光硬化性樹脂が好ましい。 本発明における光造形に関する公知文献として特開2005−134873号公報が挙げられる。これによると感光性高分子膜の表面に、パルスレーザー光を、マスクを介さずに干渉露光させている。前記パルスレーザー光としては、前記感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域のパルスレーザー光であることが重要である。従って、パルスレーザー光としては、感光性高分子の種類、または、感光性高分子における感光性機能を発揮する基又は部位の種類などに応じて、その波長領域を適宜選択することができる。特に、光源から発光されるパルスレーザー光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、パルスレーザー光の照射に際して、多光子吸収過程を利用することにより、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させることが可能となる。具体的には、光源から発光されるパルスレーザー光を集光して、集光されたパルスレーザー光を照射すると、多光子の吸収(例えば、二光子の吸収、三光子の吸収、四光子の吸収、五光子の吸収など)が生じ、これにより、光源から発光されるパルスレーザー光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、感光性高分子膜には、実質的に、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域のパルスレーザー光が照射されたことになる。このように、干渉露光するパルスレーザー光は、実質的に、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域となるパルスレーザー光であればよく、照射条件などにより、その波長を適宜選択することができる。たとえば、本発明の高効率二光子吸収材料を光増感材料とし、紫外線硬化樹脂等に分散し、感光物固体としこの感光物固体の二光子吸収能を利用して焦点スポットのみが硬化する特性を利用した超精密三次元造形物を得ることが可能となる。 本発明の二光子吸収材料は、二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料として用いることが出来る。従来の二光子吸収材料(二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料)に比較し、二光子吸収感度が高いため、高速造形が可能で、励起光源としても小型で安価なレーザー光源が使用できるため、大量生産可能な実用用途への展開が可能となる。<二光子吸収材料を用いた二光子蛍光顕微鏡への応用> 二(多)光子励起レーザー走査顕微鏡とは、近赤外パルスレーザーを標本面上に集光し走査させて、そこでの二(多)光子吸収により励起されて発生する蛍光を検出することにより像を得る顕微鏡である。 二光子励起レーザー走査顕微鏡の基本構成の概略図を図4に示す。 近赤外域波長のサブピコ秒の単色コヒーレント光パルスを発するレーザー光源(41)と、レーザー光源からの光束を所望の大きさに変える光束変換光学系(42)と、光束変換光学系で変換された光束を対物レンズの像面に集光し走査させる走査光学系(43)と、集光された上記変換光束を標本面(45)上に投影する対物レンズ系(44)と、光検出器(47)を備えている。 パルスレーザー光を、ダイクロイックミラー(46)を経て、光束変換光学系、対物レンズ系により集光し、標本面で焦点を結ばせることにより、標本内にある二光子吸収蛍光材料に二光子吸収により誘起された蛍光を生じさせる。標本面をレーザービームで走査し、各場所での蛍光強度を光検出器(47)などの光検出装置で検出して、得られた位置情報に基づいて、コンピューターでプロットすることにより、三次元蛍光像が得られる。走査機構としては、例えば、ガルバノミラーなどの可動ミラーを用いてレーザービームを走査しても良く、或いはステージ上に置かれた二光子吸収材料を含む標本を移動させても良い。 このような構成により、二光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。 二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素は、標本を染色、又は標本に分散させることにより使用され、工業用途のみならず、生体系の細胞等の三次元画像マイクロイメージングにも用いることができ、高い二光子吸収断面積を持つ化合物が望まれている。 本発明における光子蛍光顕微鏡の公知文献として特開平9−230246号公報が挙げられる。たとえば走査型蛍光顕微鏡は、所望の大きさに拡大されたコリメート光を発するレーザー照射光学系と、複数の集光素子が形成された基板とを備え、該集光素子の集光位置が対物レンズ系の像位置に一致するように配置され、かつ、前記の集光素子が形成された基板と対物レンズ系との間に、長波長を透過し短波長を反射するビームスプリッタが配置され、標本面で多光子吸収による蛍光を発生させることを特徴とするものである。このような構成により、多光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。このような二光子光学素子は上述の光制御素子と全く同様に本発明の高い二光子吸収能を有した材料、薄膜、もしくは光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光学素子として用いることが可能である。 本発明の二光子吸収材料は二光子励起レーザー走査顕微鏡用の二光子吸収蛍光材料として用いることが出来る。従来の二光子吸収蛍光材料に比較し、大きな二光子吸収断面積を有しているので、低濃度で高い二光子吸収特性を発揮する。従って本発明によれば、高感度な二光子吸収材料が得られるだけでなく、材料に照射する光強度を強くする必要がなくなり、材料の劣化、破壊を抑制することができ、材料中の他成分の特性に対する悪影響も低下させることができる。 本発明の二光子吸収材料は単独もしくは各種の樹脂との混合の薄膜、あるいはバルクで種々のデバイスへの応用が可能である。例えば、光ディスクでは上記薄膜が基板と接しており、その基板材料はポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。また、積層する場合であれば、中間層(仕切層)に該薄膜表面が接している。中間層の具体例としてはポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは種々の光硬化樹脂等が挙げられる。各種光学デバイス、光造形デバイスに応用するにしても、各種樹脂に混合されているか、光硬化樹脂に混合され用いる。 従って、本発明の二光子吸収材料の使用要件としては、該材料が各種樹脂、またはガラスに混合されているか、二光子吸収材料層界面が各種樹脂、またはガラスに接していることである。言い換えれば、本発明の二光子吸収材料はミクロレベル、又はマクロレベルで各種樹脂、又はガラスに接している構成となっている。 以下に本発明のポリマー化合物の製造法について説明する。 一般式(III)で表されるπ共役ポリマーは、パラジウム触媒を用い、アミン存在下銅塩(CuI、CuBr、CuClなど)を用いるクロスカップリング反応(一般に薗頭反応と呼ばれる)により得られる(K.Sonogashira,J.Organomet.Chem.,653,46(2002))。 具体的には、たとえば一般式(V)で示されるジハロゲン化合物と一般式(VI)で示されるエチニル化合物とを反応させることにより本発明の一般式(III)で表されるπ共役ポリマーを得ることができる。(式中Ar1は置換を有しても良い芳香族炭化水素基もしくは複素環基の二価基を、Xは塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子を表す)(式中Ar2は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、複素環基の二価基もしくは単結合を表し、Rは水素原子あるいはトリメチルシリル基を表す。mは0または1の整数を表す) ここでパラジウム触媒として例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、塩化ビス(ベンゾニトリル)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウムなどが挙げられる。ホスフィン配位子も反応に著しい影響を与えることが明らかになっており、例えば、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリ(オルトトリル)ホスフィン等も用いることができる。 アミンとしては例えば、n-BuNH2、Et2NH、Et3Nまたはピペリジンなどが用いられる。 なお、反応の際の雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。 前記一般式(V)で示されるジハロゲン化合物の反応性はハロゲン原子がよう素>臭素>塩素の順であり、用いるジハロゲン化合物の反応性に応じて反応温度、反応時間および反応濃度等が設定される。 本クロスカップリング反応では、前記一般式(VI)で示されるエチニル化合物においてRが水素である場合が一般的であるが、Rがトリメチルシリル基である場合も反応の活性化剤として酸化銀を用いることで、一般式(III)で表されるπ共役ポリマーを得ることができる(A.Mori et al.Chmistry Letters 286(2001))。 また、以上の重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤または、末端修飾基として重合体の末端を封止するための封止剤を反応途中または反応後に添加することも可能であり、反応開始時に添加しておくことも可能である。従って、本発明におけるπ共役ポリマーの末端には停止剤に基づく置換基が結合してもよい。 本発明の重合体の好ましい分子量はポリスチレン換算数平均分子量で1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜500000である。分子量が小さすぎる場合にはクラックの発生等成膜性が悪化し実用性に乏しくなる。また分子量が大きすぎる場合には、一般の有機溶媒への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用性上問題になる。 以上のようにして得られたπ共役ポリマーは、重合に使用した触媒、未反応モノマー、末端停止剤、又、重合時に副生するアンモニウム塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作は再沈澱、カラムクロマト法、吸着法、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析、触媒を除くためのスカベンジャーの使用等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。 上記製造方法により得られた本発明の重合体は、スピンコート法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等の公知の成膜方法により、クラックのない強度、靭性、耐久性等に優れた良好な薄膜を作製することが可能である。 このようにして得られる一般式(III)((I))で表されるπ共役ポリマー(モノマー)の具体例を以下に示す。 前記一般式(III)((I))中、Ar1およびAr2が置換または無置換の芳香族炭素水素基あるいは複素環基の2価基を表す場合、以下のものを挙げることができる。 ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル、ピレン、フルオレン、9,9−ジメチルフルオレン、アズレン、アントラセン、トリフェニレン、クリセン、9−ベンジリデンフルオレン、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン、[2,2]−パラシクロファン、トリフェニルアミン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジチエニルベンゼン、フラン、ベンゾフラン、カルバゾール、等の2価基が挙げられ、これらは置換もしくは無置換のアルキル基およびアルコキシ基、を置換基として有していてもよい。置換もしくは無置換のアルキル基としては、炭素数が1〜25の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子もしくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。 また置換もしくは無置換のアルコキシ基である場合は、上記アルキル基の結合位に酸素原子を挿入してアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。 本発明のポリマーは、アルキル基やアルコキシ基、アルキルチオ基の存在により、溶媒への溶解性が向上する。これらの材質において溶解性を向上させることは、種々デバイス製造の際、湿式成膜過程の製造許容範囲が大きくなることから重要である。例えば塗工溶媒の選択肢の拡大、溶液調製時の温度範囲の拡大、溶媒の乾燥時の温度及び圧力範囲の拡大となり、これらプロセッシビリティーの高さにより高純度で均一性の高い高品質な薄膜が得られる。 以下に反応前駆体例を示す。 上記前駆体例示化合物のうちNo.1〜4はビスヨウ素置換体でNo.5〜8モノヨウ素置換体であるNo.1〜4で選ばれる群とNo.9〜13で選ばれる群の前駆体を作用させ、既知の精製法を用いることにより本発明の請求項4〜6のポリマー化合物が得られる。一方、No.5〜8で選ばれる群とNo.9〜13で選ばれる群の前駆体を作用させ、既知の精製法を用いることにより本発明の請求項1〜3のモノマー化合物(低分子化合物)が得られる。 本発明の(I)、(II)等で示される(低分子系)モノマー化合物に比べると本発明の(III)、(IV)等で示される(高分子系)ポリマー化合物では塗膜欠陥(結晶化、マイグレーション)がより発生し難い傾向にある。 さらに、モノマー化合物(低分子化合物)もポリマー化合物(高分子化合物、樹脂)もデバイスとして用いる形態としては、基本的に膜(フィルム)であり、従って、その形成方法としては通常の有機材料の溶剤塗工法(すなわち、スピンコート、浸漬塗布、ロールコート、スプレーコート、バーコート等)が使用可能である。低分子化合物(単分子化合物)はそれ自体に被膜形成能があれば、単独でも、高分子材料等の決着材との混合でも用いることが可能であるが、低分子化合物(単分子化合物)単独では被膜形成能が無い場合、高分子材料等の決着材との混合でも用いることになる。いずれの(低分子、高分子)構造においても用途によっては樹脂との混合等の形態で成形によってデバイス化することも可能である。 以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例によって制限されるものではない。(合成例1) 前駆体例No.9で示される2,5−ジ−n−ヘキシル−1,4−ジエチニルベンゼン0.92g(3.1mmol)、前駆体例No.1で示される4−(2−エチルヘキシルオキシ)−4‘、4“−ジヨードトリフェニルアミン1.95g(3.1mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム33mg(0.03mmol)、ヨウ化銅12mg(0.06mmol)にトルエン20mlとトリエチルアミン2.8mlを加え、アルゴン気流下で60℃で4.5時間加熱攪拌した。その後フェニルアセチレン数滴を加え60℃で1時間、さらにヨードベンゼン数滴を加え60℃で1時間加熱攪拌した。 室温まで放冷した後内容物を90%メタノール水溶液に滴下し淡褐色のポリマーを得た。これを塩化メチレンに溶解し、5%塩酸水溶液で洗浄後水洗し、メタノール中に滴下してポリマーをろ取した。これを塩化メチレンを用いショートカラム処理(シリカゲルと少量のフロリジル)した後、メタノール中に滴下して下記式で表されるポリマー(1):1.13gを得た。 元素分析値(計算値);C:86.40%(86.81%)、H:8.33%(8.67%)、N:2.29%(2.11%)。 赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)では、2207cm−1に炭素−炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。 ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量 数平均分子量 8704、重量平均分子量 21845(合成例2) 前駆体例No.10で示されるプソイド−p−ジエチニル[2,2]−パラシクロファン0.769g(3mmol)、前駆体例No.1で示されるジヨード化合物1.816g(3mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム33mg(0.03mmol)、ヨウ化銅12mg(0.06mmol)にトルエン20mlとトリエチルアミン2.8mlを加え窒素気流下で60℃で3時間加熱攪拌した。その後ヨードベンゼン数滴を加え60℃で1時間、さらにフェニルアセチレン数滴を加え60℃で1時間加熱攪拌した。室温まで放冷した後内容物をメタノールに滴下し淡褐色のポリマーを得た。これを塩化メチレンに溶解し、5%塩酸水溶液で振とう器を用いて洗浄した。ついでイオン交換水で洗浄液の伝導度がイオン交換水の値と同等になるまで水洗を繰り返した後、メタノール中に滴下してポリマーをろ取した。これを塩化メチレンを用いショートカラム処理(シリカゲルと少量のフロリジル)した後、メタノール中に滴下して下記式で表されるポリマー(2): 1.0gを得た。 元素分析値(計算値);C:88.28 %(88.27%)、H:6.65%(6.94%)、N:2.46%(2.24 %)。 赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)では、2201cm−1に炭素−炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。 ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量 数平均分子量 20464、重量平均分子量 67790(合成例3) 前駆体例No.11で示される1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジイン0.402g(2.07mmol)および前駆体例No.1で示されるジヨード化合物1.293g(2.07mmol)を脱水テトラヒドロフラン(THF)16mlに溶解し、これに酸化銀0.92g(4.0mmol)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.232g(0.2mmol)を加え窒素気流下で60℃で4時間加熱攪拌した。その後ヨードベンゼン数滴を加え60℃で1時間、さらにフェニルアセチレン数滴を加え60℃で1時間加熱攪拌した。 室温まで放冷した後内容物をTHFで希釈し、セライトを用いてろ過し、メタノールに滴下し暗褐色のポリマーを得た。これを塩化メチレンに溶解し、5%アンモニア水溶液で洗浄後、5%塩酸水溶液で振とう器を用いて洗浄した。ついでイオン交換水で洗浄液の伝導度がイオン交換水の値と同等になるまで水洗を繰り返した後、メタノール中に滴下して下記式で表されるポリマー(3): 0.50gを得た。 元素分析値(計算値);C:85.79%(85.87%)、H:7.06%(6.98%)、N:3.20%(3.34%)。 赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)では、2201cm−1に炭素−炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。 ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量 数平均分子量 11709、重量平均分子量 45317(合成例4) 前駆体例No.12で示されるビス(トリメチルシリル)アセチレン0.187g(1.1mmol)および前駆体例No.1で示されるジヨード化合物0.688g(1.1mmol)を脱水テトラヒドロフラン(THF)5mlに溶解し、これに酸化銀0.51g(2.2mmol)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.130g(0.11mmol)を加え窒素気流下で60℃で4時間加熱還流した。その後ヨードベンゼン数滴を加え1時間、さらにフェニルアセチレン数滴を加え1時間加熱還流した。 室温まで放冷した後内容物をTHFで希釈し、セライトを用いてろ過し、ろ液を濃縮後、トルエンに溶解しパラジウムスカベンジャー(3-メルカプトプロピル基で修飾されたシリカゲル)で処理した。これを5%塩酸水溶液で振とう器を用いて洗浄し、ついでイオン交換水で洗浄液の伝導度がイオン交換水の値と同等になるまで水洗を繰り返した後、メタノール中に滴下して下記式で表されるポリマー(4): 0.30gを得た。 元素分析値(計算値);C:84.11%(85.01%)、H:7.21%(7.40%)、N:3.22%(3.54%)。 赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)では、2211cm−1に炭素−炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。 ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量 数平均分子量 6454、重量平均分子量 15819(合成例5) 前駆体例No.10で示されるプソイド−p−ジエチニル[2,2]−パラシクロファン0.513g(2.0mmol)および前駆体例No.2で示される2,5−ジヨード−3−ヘキシルチオフェン0.841g(2.0mmol)をトルエン15mlに採り、60℃で加熱溶解した後50℃まで冷却し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム22mg(0.02mmol)、ヨウ化銅8mg(0.04mmol)およびトリエチルアミン1.9mlを加え窒素気流下で60℃で4時間加熱攪拌した。その後フェニルアセチレン数滴を加え60℃で1時間、さらにヨードベンゼン数滴を加え60℃で1時間加熱攪拌した。 室温まで放冷した後トルエンで希釈し、セライトでろ過した後、5%塩酸水溶液で洗浄後水洗した。これを濃縮し、ショートカラム処理(シリカゲル)した後、イオン交換水で洗浄液の伝導度がイオン交換水の値と同等になるまで水洗を繰り返した後、エタノール中に滴下して下記式で表されるポリマー(5): 0.52gを得た。 元素分析値(計算値);C:84.94%(85.66%)、H:6.33%(6.72%)、S:7.32%(7.62%)。 赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)では、2193cm−1に炭素−炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。 ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量 数平均分子量 11185、重量平均分子量 101577(合成例6) 前駆体例No.10で示されるプソイド−p−ジエチニル[2,2]−パラシクロファン0.513g(2.0mmol)および前駆体例No.3で示される2,7−ジヨード―9,9−ジオクチルフルオレン1.285g(2.0mmol)をトルエン15mlに採り、60℃で加熱溶解した後50℃まで冷却し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム22mg(0.02mmol)、ヨウ化銅8mg(0.04mmol)およびトリエチルアミン1.9mlを加え窒素気流下で60℃で4時間加熱攪拌した。その後フェニルアセチレン数滴を加え60℃で1時間、さらにヨードベンゼン数滴を加え60℃で1時間加熱攪拌した。 室温まで放冷した後トルエンで希釈し、セライトでろ過した後、5%塩酸水溶液で洗浄後水洗した。これをトルエンに溶解しパラジウムスカベンジャー(3-メルカプトプロピル基で修飾されたシリカゲル)で処理した後濃縮し、ショートカラム処理(シリカゲル)した。つづいてイオン交換水で洗浄液の伝導度がイオン交換水の値と同等になるまで水洗を繰り返した後、エタノール中に滴下して下記式で表されるポリマー(6): 0.84gを得た。 元素分析値(計算値);C:90.64%(91.52%)、H:8.54%(8.48%) 赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)では、2199cm−1に炭素−炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。 ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量 数平均分子量 17777、重量平均分子量 53488 また、上記の合成例と同様の方法で以下の化合物(7)〜(19)を得た。 上記化合物の(1)〜(10)はポリマーであり、(11)〜(19)はモノマーである。 (実施例1〜5) 上記の化合物例(11)、(12)、(13)、(15)、(18)で示したモノマーを用い、それぞれの濃度が0.01(mol/l)となるようにテトラヒドロフラン溶液を作成し、下記の二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。(実施例6〜10) 上記の化合物例(1)、(3)、(4)、(5)、(6)で示したポリマーにおいて、その繰り返し単位を分子量と換算し、濃度0.01(mol/l)テトラヒドロフラン溶液を作成し、下記の二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。(比較例1) 以下の化合物(20)で示した化合物を用い、その濃度が0.01(mol/l) となるようにテトラヒドロフラン溶液を作成し、下記の二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。[二光子吸収断面積の評価方法] 測定システム概略図を図5に示す。 測定光源:フェムト秒チタンサファイアレーザ 波長 :800nm パルス幅:100fs 繰り返し:80MHz 光パワー:800mW 測定方法:Zスキャン法 光源波長 :800nm キュベット内径:10mm 測定光パワー :約500mW 繰り返し周波数:80MHz 集光レンズ :f=75mm 集光径 :40〜50μm 集光されている光路部分に試料溶液を充填した石英セルを置き、その位置を光路に沿って移動させることによりZ−scan測定を実施した。 透過率を測定し、その結果から理論式(I)により非線形吸収係数を求めた。(上記式中、Tは透過率(%)、I0は励起光密度[GW/cm2]、L0は試料セル長[cm]、βは非線形吸収係数[cm/GW]を示す。) この非線形吸収係数から、下記式(II)により二光子吸収断面積δを求めた。(δの単位は1GM=1×10−50cm4・s・molecule−1・photon−1である。)(上記式中、hはプランク定数[J・s]、νは入射レーザ光の振動数[s−1]、NAはアボガドロ数、Cは溶液濃度[mol/L]を示す。)(評価結果) 表3より本発明の二光子吸収材料は従来知られている二光子吸収能を発現する化合物の二光子吸収断面積と比較すると1桁以上の特性改善効果が認められ、高出力レーザーを用いない、安価なレーザーでの種々の応用すなわち、三次元メモリ、光制限素子、光造形用材料、二光子蛍光顕微鏡用色素材料等の応用が期待できる材料であることが明確となった。(a)は三次元多層光メモリの記録/再生のシステム概略図であり、(b)は記録媒体の概略断面図である。本発明の二光子吸収材料を、二光子励起し得る波長の制御光により二光子励起させることによって、一光子励起し得る波長の信号光を光スイッチングする光制御素子の一例を示した図である。二光子光造形法の装置の概略図である。二光子励起レーザー走査顕微鏡の基本構成の概略図である。本発明で用いられる測定システム概略図である。符号の説明30 光造形物31 光硬化樹脂液に対して透明性を有する近赤外パルスレーザー光の光源32 過光量を時間的にコントロールするシャッター33 NDフィルター34 ミラースキャナー35 集光手段としてのレンズ36 Zステージ37 モニター38 コンピューター39 光硬化性樹脂液41 レーザ光源42 光束変換光学系43 走査光学系44 対物レンズ系45 標本面46 ダイクロイックミラー47 光検出器 下記一般式(I)で表される二光子吸収材料。 Ar1はNo.5〜No.8で表されるいずれかの二価基を表し、Ar2はNo.9,10、またはNo.13で表される二価基もしくは単結合を表し、mは0または1を表す。 下記一般式(III)で表される構成単位を有する二光子吸収材料。Ar1はNo.1〜No.4で表されるいずれかの二価基を表し、Ar2はNo.9,10、またはNo.13で表される二価基もしくは単結合を表し、mは0または1を表す。 請求項1または2に記載の化合物を含む深さ方向に記録再生可能な三次元メモリ材料。 請求項1または2に記載の化合物を含む光制限材料。 請求項1または2に記載の化合物を含む光造形用光硬化樹脂の硬化材料。 請求項1または2に記載の化合物を含む二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料。


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