タイトル: | 特許公報(B2)_バチルス属細菌の芽胞形成方法 |
出願番号: | 2006063414 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C12N 1/20,C12R 1/07 |
前田 光紀 JP 4968816 特許公報(B2) 20120413 2006063414 20060308 バチルス属細菌の芽胞形成方法 日本曹達株式会社 000004307 廣田 雅紀 100107984 小澤 誠次 100102255 大▲高▼ とし子 100123168 ▲高▼津 一也 100120086 堀内 真 100131093 前田 光紀 20120704 C12N 1/20 20060101AFI20120614BHJP C12R 1/07 20060101ALN20120614BHJP JPC12N1/20 AC12N1/20 AC12R1:07 C12N 1/20 CAplus/BIOSIS/MEDLINE(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed WPI 特開平04−234981(JP,A) Biotechnol.Prog.,2005,21(4),p.1026-31 J.Ferment.Bioeng.,1997,84(1),p.53-8 12 IPOD FERM BP-10244 2007236286 20070920 46 20090109 名和 大輔 本発明は、バチルス属細菌の芽胞を形成する方法に関する。 バチルス属細菌は、植物病虫害防除や動物への整腸作用,成長促進作用や感染症予防治療効果等を有することが報告されている。このため、バチルス属細菌を農園芸用殺虫及び殺菌剤として用いたり、家畜や家禽、魚介類用の飼料に整腸剤として配合する試みがなされている。このとき、農薬製剤や飼料等の製品中のバチルス属細菌の菌数が多いほど、より高い効果が得られることになるが、製品への加工工程や、製品の流通時、店頭での陳列時において、製品中のバチルス属細菌の生菌数がかなり減少してしまうという問題があった。 バチルス属細菌の生菌数を維持するためには、耐熱性や耐乾燥性などの環境変化に耐性を持つ芽胞を形成させ安定化を図ることが望ましい。バチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、芽胞を含有する生物農薬や飼料に関しては、数種の報告がある。 生物農薬について、例えば、特許文献1には、植物病原菌と拮抗するバチルス ズブチリスNCIB12376株菌およびNCIB12616株菌から選ばれるいずれか1種又は2種の細菌の培養物から胞子を乾燥重量で50重量%以上含むように調製された胞子画分を含有する農園芸用殺菌剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、植物病原菌と拮抗するバチルス ズブチリスに属する細菌の胞子及び保湿剤を含有する農園芸用殺菌剤組成物が開示されている。さらに、クワの炭疽病や白紋羽病の防除微生物として、バチルス アミロリクエファシエンスが知られている(例えば特許文献3、非特許文献1、非特許文献2参照)。飼料に関して、例えば、特許文献4には、バチルス セレウスの芽胞を有効成分とする動物用下痢治療剤が開示されている。また、特許文献5には、1〜5重量%のコーンスティープリカー及び炭素源を含有する培地において、バチルス属細菌を炭素源が消費し尽くされるまで培養し、その後24〜72時間通気することを特徴とするバチルス属細菌の芽胞化方法、並びに得られた芽胞を用いた飼料や添加剤を提供する方法が開示されている。特許第3554592号公報特許弟3527557号公報特開平11−246324号公報特開昭48−75720号公報特開2000−217567号公報植物防疫、植物防疫編集委員会編、第56巻 第8号(2002)Phytopathology、The American Phytopathology Society、Vol.91 No.2,2001 しかしながら、細菌の増殖は、栄養分を多く与えることが必要である一方、芽胞を形成させるには栄養分を不足させたり、生育環境を悪化させることが必要であり、上述の特許文献等に記載された従来の方法では高濃度のバチルス属細菌芽胞を調製することは困難であった。 また、バチルス属細菌の株によっては、上述の特許文献等に記載された従来の方法を用いても芽胞化が不十分なものもある。このため、より広範な種類の株に適用し得る芽胞形成方法の開発が要求されている。従って本発明の目的は、バチルス属細菌の芽胞化を促進させ、芽胞化したバチルス属細菌を高濃度で、かつ効率良く得ることが可能な方法を提供することにある。 本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、各種炭素源や窒素源を含有する培地でバチルス属細菌を培養する過程で、培地中の溶存酸素を一定時間10%以下にまで低下させることにより、バチルス属細菌の芽胞化を促進させ、芽胞化したバチルス属細菌を高濃度で、かつ効率良く得ることが可能となることを見出し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、(1)溶存酸素率が10%以下の培養液でバチルス属細菌を培養する工程(C)と、工程(C)の後に、溶存酸素率が10%より多い培養液でバチルス属細菌を培養する工程(D)とを含むことを特徴とするバチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、(2)溶存酸素率が10%以下の培養液で培養するバチルス属細菌が、対数増殖期(Log Phase)以降のバチルス属細菌であることを特徴とする上記(1)に記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、(3)溶存酸素率が10%以下の培養液で培養するバチルス属細菌が、対数増殖期(Log Phase)及び静止期(Stationary Phase)のバチルス属細菌であることを特徴とする上記(1)に記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、(4)工程(C)の前に、溶存酸素率が10%より多い培養液でバチルス属細菌を培養してバチルス属細菌を増殖させる工程(A)、及び/又は、培養液の溶存酸素率を10%以下にする工程(B)を、さらに含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、(5)培養液への通気量及び/又は培養液の撹拌速度を調節することによって、培養液の溶存酸素率を10%以下にすることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、(6)培養液が、酵母エキス、コーンスティープリカー、大豆ペプトン、及び濃縮焼酎かすからなる群から選ばれるいずれか1種以上の成分を含有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、(7)培養液が、酵母エキス、コーンスティープリカー、大豆ペプトン、及び濃縮焼酎かすからなる群から選ばれるいずれか2種以上の成分を含有することを特徴とする上記(6)に記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、(8)培養液が、酵母エキスを0.2〜10.0重量%、コーンスティープリカーを0.5〜20.0重量%、大豆ペプトンを0.2〜10.0重量%、濃縮焼酎かすを0.2〜20.0重量%含有することを特徴とする上記(7)に記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、(9)培養液が、糖類をさらに含有することを特徴とする上記(6)〜(8)のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、(10)培養液が、糖類を0.05〜5.0重量%含有することを特徴とする上記(9)に記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、(11)バチルス属細菌が、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス パミルス(Bacillus pumils)、バチルス レンタス(Bacillus lentus)、バチルス ラテロスポルス(Bacillus laterosporus)、バチルス アルベイ(Bacillus alvei)、バチルス ポピリエ(Bacillus popilliae)、及びバチルス リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)からなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法や、(12)バチルス属細菌が、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)FERM BP−10244又はその変異株であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法に関する。 本発明のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法は、バチルス属細菌の芽胞化を促進させ、芽胞化したバチルス属細菌を高濃度で、かつ効率良く得ることが可能となる。 本発明のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法は、溶存酸素率が10%以下の培養液でバチルス属細菌を培養する工程(C)と、工程(C)の後に、溶存酸素率が10%より多い培養液でバチルス属細菌を培養する工程(D)とを含んでいる限り特に制限はない。バチルス属細菌を培養する過程において工程(C)及び工程(D)を設けると、培養液中の生細胞のバチルス属細菌は自身が生産するプロテアーゼ等により死滅せずに、効率的に芽胞が形成される。本明細書における溶存酸素率とは、例えば、単位体積当たりの培養液に溶存している酸素の量を、培養液と同温度の単位体積当たりの水に1気圧条件下で溶解し得る酸素の量に対する百分率(%)で表した数値(%)をいう。溶液酸素率を産出するために用いる溶存酸素量は、例えば、卓上型培養装置MDL1000型(MDL−6C)(株式会社丸菱バイオエンジ社製)等の機器を用いて測定することができる。 溶存酸素率が10%以下の培養液でバチルス属細菌を培養する工程(C)における培養液の溶存酸素率は、10%以下であれば特に制限されないが、バチルス属細菌の芽胞化をより促進させる観点から、8%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。 工程(C)におけるバチルス属細菌は、遅滞期(Lag Phase)のバチルス属細菌等、対数増殖期(Log Phase)以降のバチルス属細菌でなくてもよいが、芽胞化したバチルス属細菌を高濃度で、かつ効率良く得る観点から、対数増殖期(Log Phase)以降のバチルス属細菌、すなわち、対数増殖期(Log Phase)及び静止期(Stationary Phase)のバチルス属細菌であることが好ましく、対数増殖期(Log Phase)の後半から静止期(Stationary Phase)のバチルス属細菌であることがより好ましい。 本発明のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法は、工程(C)の後に工程(D)を有する。工程(D)を設けないと、バチルス属細菌の胞子形成率は著しく低下する。工程(D)における培養液の溶存酸素率は、10%より多ければ特に制限はされないが、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。 工程(D)におけるバチルス属細菌は、バチルス属細菌の芽胞形成をより促進する観点から、静止期(Stationary Phase)以降のバチルス属細菌であることが好ましい。ここでいう静止期とは、静止期のすべての期間である必要はなく、静止期の一部の期間をも含む。 本発明に用いるバチルス属細菌は、本発明のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法を適用し得る限り特に制限されないが、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス パミルス(Bacillus pumils)、バチルス レンタス(Bacillus lentus)、バチルス ラテロスポルス(Bacillus laterosporus)、バチルス アルベイ(Bacillus alvei)、バチルス ポピリエ(Bacillus popilliae)、バチルス リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)であることが好ましく、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)等を好ましく例示することができる。 また、本発明により得られたバチルス属細菌の芽胞を農園芸用殺菌や殺虫剤に応用する場合には、特許第3554592号公報や特許弟3527557号公報に開示されているバチルス ズブチリスNCIB12376株、NCIB12616株、FERM P−14647株、FERM P−14646株、及びこれらの変異株; 特開2002−293708号公報、特開2002−291467号公報及び特開2001−149066号公報に開示されているバチルス ポピリエ FERM P−16818株、FERM P−18250株、及びこれらの変異株; 特開平11−246324号公報に開示されているバチルス アミロリクエファシエンスFERM P−16641株、バチルス ズブチルス D747株、及びこれらの変異株; さらには、本発明者が発見したFERM BP−10244株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(宛名:茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成17年2月15日付けで寄託)、FERM ABP−10245株、及びこれらの変異株;などを特に好ましく例示することができる。また、本発明により得られたバチルス属細菌の芽胞を動物等の飼料に応用する場合には、WO98/45402に開示されているバチルス パミルスA−1株、バチルス パミルスA−4株、バチルス レンタスA−2株、バチルス レンタスA−3株、及びこれらの変異株などを特に好ましく例示することができる。本明細書における「変異株」とは、その親株から誘導しうる変異株をいう。 本発明のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法における培養液としては、いずれかのバチルス属細菌が利用できる窒素源と炭素源を含んでいる限り特に制限はされない。 バチルス属細菌が利用できる窒素源として、例えば、酵母エキス;大豆ペプトン等の各種のペプトン;硝酸塩、アンモニウム塩等の無機窒素源;コーンスティープリカー(以下、「CSL」という)、大豆、ポテト,ビート等由来の各種アミノ酸やペプチド;魚肉由来のアミノ酸やペプチド;大豆ホエー;濃縮焼酎かす(焼酎を製造する過程で生じる);などを例示することができる。これらの中でも、バチルス属細菌の生育及び芽胞形成の観点から、酵母エキス、CSL、大豆ペプトン、濃縮焼酎かすからなる群から選ばれるいずれか1種以上を培養液が含有することが好ましく、前述の群から選ばれるいずれか2種以上を培養液が含有することがより好ましく、前述の群から選ばれるいずれか3種以上を培養液が含有することがさらに好ましく、前述の群の4種すべてを培養液が含有することがさらにより好ましい。前述の群の窒素源のいずれか1種、2種、3種又は4種を含有する場合、それぞれの窒素源の含有量は特に制限されないが、酵母エキスは培養液に対して0.2〜10.0重量%であることが好ましく、0.5〜5.0重量%であることがより好ましく、CSLは培養液に対して0.5〜20.0重量%であることが好ましく、1.0〜5.0重量%であることがより好ましく、大豆ペプトンは培養液に対して0.2〜10.0重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましく、濃縮焼酎かすは培養液に対して0.2〜20.0重量%であることが好ましく、1.0〜10.0重量%であることがより好ましい。 バチルス属細菌の生育及び芽胞形成の観点から、より具体的には、酵母エキスとして、SK酵母エキスS−2(日本製紙ケミカル株式会社製)を好ましく挙げることができ、CSLとして、コーンスティープリカー(日本食品化工株式会社)を好ましく挙げることができ、濃縮焼酎かすとして、濃縮焼酎かす液(霧島酒造株式会社製)を好ましく挙げることができ、大豆ペプトンとして、バクテリオンSSP(マルハ株式会社)を好ましく挙げることができる。 なお、バチルス属細菌の芽胞化をより促進させる観点から、CSLや濃縮焼酎かすの中でも、不溶物を除去したCSLや濃縮焼酎かすが好ましい。 CSLや濃縮焼酎かすの不溶物の除去方法としては、CSLや濃縮焼酎かすをアルカリで処理し、遠心分離や膜ろ過後上清を回収する方法や、CSLや濃縮焼酎かすにクエン酸を添加して、その後、CSLや濃縮焼酎かすを微アルカリに戻し、遠心分離や膜ろ過後上清を回収する方法が挙げられる。より具体的には、CSLや濃縮焼酎かすの原液に蒸留水を添加し希釈し、さらにアルカリ剤を添加してpH7.0に調整した後、遠心分離や膜ろ過等により上清を回収する方法や、CSLや濃縮焼酎かすの原液をクエン酸処理、アルカリ処理、加熱処理した後、遠心分離や膜ろ過等をして上清を回収する方法が挙げられる。 CSLや濃縮焼酎かすの不溶物の除去量及び処理CSLや濃縮焼酎かすの培養液への添加量は、特に制限されないが、菌の増殖や芽胞化、集菌時の作業性等に影響することもあるため、CSLや濃縮焼酎かす全量に対して好ましくは3〜10重量%、より好ましくは4〜7重量%の不要物(乾物重量において)を除去することができ、また、このCSLや濃縮焼酎かすを培養液全量に対して好ましくは0.5〜20.0重量%添加することができる。上記のアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等、特に制限はされないが、CSL溶液や濃縮焼酎かす溶液のpHをおおよそ6.5〜8.0程度にまで上昇させると、CSLや濃縮焼酎かすの不溶物の除去を効率よく行うことができるため好ましい。 バチルス属細菌が利用できる炭素源は、バチルス属細菌が資化しうるものである限り特に制限されないが、バチルス属細菌の増殖の促進や芽胞化促進等の観点から、グルコース、ラクトース、ガラクトース、マルトース等の糖類であることが好ましく、グルコース及びラクトースであることがより好ましい。培養液中の糖類の含有量は特に制限されないが、培養液に対して0.05〜5.0重量%であることが好ましい。 本発明の工程(C)の培養液のpHは、バチルス属細菌が生育できるpH領域であれば特に限定されない。培養温度もバチルス属細菌が生育できる温度領域であれば特に限定されないが、25℃〜35℃の範囲内に調整することが、培養効果面で好ましい。 工程(C)におけるその他の培養条件は、培養液の溶存酸素率が10%以下である限り、特に制限されず、培養液に通気してもよいし、培養液を撹拌してもよいし、培養液に通気しながら培養液を撹拌してもよいが、培養液全体の溶存酸素量の偏りを減少させる観点から、培養液を撹拌することが好ましい。 工程(C)における培養時間は、培地の組成や濃度並びに培養する菌株により異なるため一概には言えず、またバチルス属細菌の芽胞化を促進させることができる限り特に制限はされないが、30分間から10時間程度、より好ましくは、1〜5時間とすることができる。 工程(D)の培養液は、工程(C)の培養液と同様である。工程(D)における培養時間は、培地の組成や濃度並びに培養する菌株により異なるため一概には言えず、特に制限されないが、適宜調整することができる。 工程(C)における溶存酸素率の低い培養液(例えば10%以下)の調製方法は、特に制限されず、例えば、溶存酸素率の低い水に、窒素源及び炭素源等を添加することにより製造してもよいし、溶存酸素率が10%以上の培養液でバチルス属細菌を培養している途中で、例えば培養液への通気量及び/又は培養液の撹拌速度を調節すること等によって、培養液への酸素の供給量を、培養液中のバチルス属細菌の酸素の消費量より少なくすることにより、溶存酸素率の低い培養液を得てもよいが、溶存酸素率が10%以上の培養液でバチルス属細菌を培養している途中で、例えば培養液への通気量及び/又は培養液の撹拌速度を調節すること等によって、培養液への酸素の供給量を、培養液中のバチルス属細菌の酸素の消費量より少なくすることにより、溶存酸素率の低い培養液を得る方法等が作業効率の観点から好ましい。 工程(D)における、溶存酸素率が10%より多い培養液の調製方法や、工程(D)における培養液の溶存酸素率を10%より多く維持するは特に制限されないが、例えば、培地に通気することや、培地を撹拌すること等により実現することができる。 本発明のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法は、工程(C)と工程(D)とを含んでいる限り特に制限はされないが、工程(C)の前に、溶存酸素率が10%より多い培養液でバチルス属細菌を培養してバチルス属細菌を増殖させる工程(A)、及び/又は、培養液の溶存酸素率を10%以下にする工程(B)をさらに含んでいてもよい。これらの中でも、工程(A)、工程(B)、工程(C)及び工程(D)からなる群から選ばれるいずれか3工程以上の工程の組み合わせであって、かつ工程(C)及び工程(D)を含む組み合わせが好ましく、工程(A)〜工程(D)の4工程を含むことがより好ましい。ここで、工程(A)と工程(B)を含んでいる場合は、この順序でこれらの工程を含んでいることが好ましい。また、工程(A)と工程(B)を含んでいる場合、工程(A)と工程(B)とを個別的に含んでいてもよいし、バチルス属細菌を増殖させながら培養液の溶存酸素率を10%以下に低下させる、すなわち工程(A)と工程(B)とを同時並行的に含んでいてもよい。 工程(A)における培養時間は、培地の組成や濃度並びに培養する菌株により異なるため一概には言えず、特に制限されないが、バチルス属細菌の芽胞を多量に得る観点からは、バチルス属細菌が十分に増殖するのに必要な培養時間であることが好ましく、例えば、対数増殖期(Log Phase)以降に達するまでに必要な時間、すなわち、対数増殖期(Log Phase)、及び静止期(Stationary Phase)のいずれかに達するまでに必要な時間等であることが好ましい。 工程(A)、工程(B)の培養液は、工程(C)の培養液と同様である。工程(A)での培養条件は特に制限されないが、工程(A)はバチルス属細菌を増殖させることを主目的としているため、工程(A)での培養条件はバチルス属細菌の増殖に適した条件であることが好ましく、例えば、培養温度は、25℃〜35℃の範囲内に調整することが好ましい。また、工程(A)の培養液における溶存酸素率は、好気性細菌であるバチルス属細菌が増殖しうる限り特に制限はないが、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。バチルス属細菌を培養液で培養すると、遅滞期(Lag Phase)を過ぎ、対数増殖期(Log Phase)に入った頃から培養液中の溶存酸素率が徐々に低下し始め、その後、急激に溶存酸素率が低下するのが通常である。したがって、工程(A)における培養は、バチルス属細菌が増殖し得る限り通気培養や撹拌培養でなくてもよいが、バチルス属細菌の増殖効率の観点から、通気及び/又は撹拌培養であることが好ましい。 工程(B)における培養液の溶存酸素率を10%以下にする手段は、特に制限されず、培養液中の酸素等の気体を脱気する等の手段を用いてもよいが、上述のように、バチルス属細菌を増殖する工程で、バチルス属細菌が培養液中の酸素を消費し、培養液中の溶存酸素率が低下することを利用することが、作業効率の観点から好ましい。より具体的にいえば、バチルス属細菌が増殖し、培養液中の溶存酸素率を維持するためには、通気量及び/又は撹拌速度を一定程度上昇させる必要があるような状況下において、通気量及び/又は撹拌速度をそこまでは上昇させない(維持又は低下させることを含む)、すなわち通気量及び/又は撹拌速度を調節することにより、培養液の溶存酸素率を10%以下にすることが好ましい。また、同様の手段によって、工程(C)の培養において、培養液の溶存酸素率を低く(例えば10%以下に)維持することができる。 なお、工程(B)、工程(C)や工程(D)の培養液中のバチルス属細菌が増加する場合、減少する場合、維持される場合のいずれの場合も、工程(B)、工程(C)や工程(D)に含まれる。 また、工程(A)〜工程(D)における培養液は、工程(A)〜工程(D)のいずれか1工程以上の工程の終了後に集菌して、新たな培養液及び/又は新たな培養容器を用いてもよいし、工程(A)〜工程(D)のいずれか1工程以上の工程で同じ培養液及び/又は培養容器をそのまま用いてもよいが、作業効率の観点から、各工程で同じ培養液及び培養容器をそのまま用いることが好ましい。また、いずれの工程においても、培養液を適宜補充してもよい。工程(A)〜工程(D)における培養液の溶存酸素率は、各工程で培養している培養液全体の溶存酸素率を意味しているので、補充後の培養液全体の溶存酸素率が各工程の数値範囲に含まれていさえすれば、後から補充する培養液の溶存酸素率は各工程の溶存酸素率の数値範囲外であってもよい。 本発明のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法は、本発明を損なわない限り、工程(A)、及び工程(B)以外にも、任意の工程を含んでいてもよい。ここでいう任意の工程は、工程(A)〜工程(D)のいずれかと同時に行うような工程であってもよく、バチルス属細菌の芽胞の形成を促進する他の工程(手段)も含まれる。 工程(C)や工程(D)等の後、遠心分離や膜ろ過等により、バチルス属細菌の芽胞を得ることができる。 本発明のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法においては、培養液(液体培地)に代えて、固体培地を用いることもできる。この場合、例えば、固体培地で培養して増殖させたバチルス属細菌を、密閉容器内に移し、この密閉容器中の酸素濃度を酸素吸収剤等を用いて低下させて一定時間培養することにより、本発明の方法における工程(C)と同様の効果が得られる。 バチルス属細菌の芽胞を用いれば、製品の製造時、製品の流通時、製品の保存時におけるバチルス属細菌の生存率が高く、雑菌汚染の可能性が低く、かつ菌体を高濃度に含有する各種製剤を製造することができる。このような製品は、製品としての安定性、保存性、効果の面で優れている。 本発明の方法により得られたバチルス属細菌の芽胞の用途は、特に制限されないが、例えば、農園芸用の殺菌剤、殺虫剤、動物用下痢治療剤等の、植物や動物等の病害防除剤や、家畜、家禽,魚介類用の飼料及び添加剤等に利用することができる。ここでいう病害とは、本発明の方法により芽胞の得られるいずれかのバチルス属細菌によって防除し得る病害である限り特に制限されない。 本発明の植物病害の防除剤におけるバチルス属細菌の菌の濃度は、特に制限されるものではないが、1000〜2000倍に希釈した際に、菌体濃度に換算して、1×1011 〜1×102 cfu/ml、好ましくは1×109〜1×104 cfu/mlの範囲を好適に例示することができる。また、本発明の植物病害の防除剤には、通常使用される担体、界面活性剤、分散剤、補助剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、紫外線吸収剤、耐電防止剤等をさらに配合することができる。 固体の担体としては、例えば、炭酸カルシウムや塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の無機塩類、クエン酸、リンゴ酸、ステアリン酸等の有機酸及びそれらの塩、乳糖、ショ糖等の糖類等、アルミナ粉、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、酸化チタン、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、クレー、珪藻土、ベントナイト、ホワイトカーボン、カオリン、バーミキュライト等を挙げることができる。 界面活性剤および分散剤としては、通常の農薬用製剤に使用できるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、非イオン性界面活性剤としてはソルビタン脂肪酸エステル(C12〜18),POEソルビタン脂肪酸エステル(C12〜18),ショ糖脂肪酸エステルなどの糖エステル型で界面活性剤、POE脂肪酸エステル(C12〜18),POE樹脂酸エステル,POE脂肪酸ジエステル(C12〜18)などの脂肪酸エステル型界面活性剤、POEアルキルエーテル(C12〜18)等のアルコール型界面活性剤、POEアルキル(C8〜12)フェニルエーテル,POEジアルキル(C8〜12)フェニルエーテル,POEアルキル(C8〜12)フェニルエーテルホルマリン縮合物などのアルキルフェノール型界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー,アルキル(C12〜18)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテルなどのポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型界面活性剤、POEアルキルアミン(C12〜18),POE脂肪酸アミド(C12〜18)などのアルキルアミン型界面活性剤、POE脂肪酸ビスフェニルエーテルなどのビスフェノール型界面活性剤、POAベンジルフェニル(またはフェニルフェニル)エーテル,POAスチリルフェニル(またはフェニルフェニル)エーテルなどの多芳香環型界面活性剤、POEエーテルおよびエステル型シリコンおよびフッ素系界面活性剤などのシリコン系、フッ素系界面活性剤、POEヒマシ油,POE硬化ヒマシ油などの植物油型界面活性剤、アニオン性界面活性剤としてはアルキルサルフェート(C12〜18,Na,NH4,アルカノールアミン),POEアルキルエーテルサルフェート(C12〜18,Na,NH4,アルカノールアミン),POEアルキルフェニルエーテルサルフェート(C12〜18,NH4,アルカノールアミン,Ca),POEベンジル(またはスチリル)フェニル(またはフェニルフェニル)エーテルサルフェート(Na,NH4,アルカノールアミン),ポリオキシエチレン,ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート(Na,NH4,アルカノールアミン)などのサルフェート型界面活性剤、パラフィン(アルカン)スルホネート(C12〜22,Na,Ca,アルカノールアミン),AOS(C14〜16,Na,アルカノールアミン),ジアルキルスルホサクシネート(C8〜12,Na,Ca,Mg),アルキルベンゼンスルホネート(C12,Na,Ca,Mg,NH4 ,アルキルアミン,アルカノール,アミン,シクロヘキシルアミン),モノまたはジアルキル(C3〜6)ナフタレンスルホネート(Na,NH4 ,アルカノールアミン,Ca,Mg),ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物(Na,NH4),アルキル(C8〜12)ジフェニルエーテルジスルホネート(Na,NH4),リグニンスルホネート(Na,Ca),POEアルキル(C8〜12)フェニルエーテルスルホネート(Na),POEアルキル(C12〜18)エーテルスルホコハク酸ハーフエステル(Na)などのスルホネート型界面活性剤、カルボン酸型脂肪酸塩(C12〜18,Na,K,NH4,アルカノールアミン),N-メチル-脂肪酸サルコシネート(C12〜18,Na),樹脂酸塩(Na,K)などPOEアルキル(C12〜18)エーテルホスフェート(Na,アルカノールアミン)、POEモノまたはジアルキル(C8〜12)フェニルエーテルホスフェート(Na,アルカノールアミン),POEベンジル(またはスチリル)化フェニル(またはフェニルフェニル)エーテルホスフェート(Na,アルカノールアミン),ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー(Na,アルカノールアミン),ホスファチジルコリン・ホスファチジルエタノールイミン(レシチン),アルキル(C8〜12)ホスフェートなどのホスフェート型界面活性剤、カチオン性界面活性剤としてはアルキルトリメチルアンモニウムクロライド(C12〜18),メチル・ポリオキシエチレン・アルキルアンモニウムクロライド(C12〜18),アルキル・N-メチルピリジウムブロマイド(C12〜18),モノまたはジアルキル(C12〜18)メチル化アンモニウムクロライド,アルキル(C12〜18)ペンタメチルプロピレンジアミンジクロライドなどのアンモニウム型界面活性剤、アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド(C12〜18),ベンゼトニウムクロライド(オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド)などのベンザルコニウム型界面活性剤、両性界面活性剤としてはジアルキル(C8〜12)ジアミノエチルベタイン、アルキル(C12〜18)ジメチルベンジルベタイン等のベタイン型界面活性剤、ジアルキル(C8〜12)ジアミノエチルグリシン、アルキル(C12〜18)ジメチルベンジルグリシンなどのグリシン型界面活性剤等を例示することができる。これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。 補助剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、澱粉等を挙げることができる。 本発明の植物病害の防除剤は、通常の農薬のとり得る形態、例えば、粉剤、水和剤、乳剤、フロアブル剤、粒剤等の形態を採用することができる。 本発明の植物病害の防除方法は、上記本発明の植物病害防除剤を用いて植物病害を防除する方法であれば、特に制限されるものではなく、本発明の植物病害防除剤を通常の化学農薬と同様、各種農園芸作物等の植物体や土壌に散布処理等する方法を挙げることができる。また、特開2001−302407記載のように、製剤を施設内に送風する送風装置の送風口付近に設置し、送風口から送出される空気とともに農薬を散布することもできる。散布処理に当たっては、本発明の植物病害防除剤を適当量の水等で希釈して使用することができ、散布量としては、バチルス属細菌の菌体濃度に換算して、通常1×1011〜1×102 cfu/ml、好ましくは1×109 〜1×104 cfu/mlの範囲とすることができる。 動物用下痢治療剤等の動物の病害防除剤や、家畜、家禽,魚介類用の飼料等の製造法は、特に制限されないが、例えば、本発明の方法により得られたバチルス属細菌の芽胞を、動物用の試料に混合するなどして製造することができる。本発明の動物の病害の防除剤におけるバチルス属細菌の菌の濃度は、対象とする動物や用いるバチルス属細菌の種類等に左右されるため、特に制限されず、適宜調整することができる。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。 酵母エキス(日本製紙ケミカル株式会社製 商品名:SK酵母エキスS−2)1重量%、CSL(日本食品化工株式会社製)2重量%、グルコース(和光純薬株式会社製)0.2重量%を含む培地5リットル(pH7.0に調整)を10リットル容のジャーファーメンターに入れ、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。その後、バチルス ズブチリス FERM BP−10244菌株を前培養した菌懸濁液10mlを、前述のオートクレーブ滅菌した培地に植菌し、通気量5.0SL/ml、攪拌速度350rpm、培養温度30℃で、本培養を行った。培養開始23.5時間後に、攪拌速度を250rpmに変更した。 表1に、実施例1の培養過程の培養液(培養1日後及び2日後)のpH及び生菌数、並びに培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥物としたものの重量及び生菌数を示す。 培養1日後の生菌数は1.4×109cfu/ml、pHは8.9であった。培養2日後には、生菌数が1.2×109cfu/ml、pHが9.1となった。培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥することにより得られた凍結乾燥物は、5.3g、生菌数は、7.1×1011cfu/gであった。胞子形成は、培養1日後には3割程度、培養2日後には7割程度に観察された。胞子形成は、Dorner染色法により確認した。すなわち、(1)数滴の蒸留水を入れた試験管に菌体を懸濁して濃厚な液を作り、(2)この菌液にほぼ同量のZiehlの石炭酸フクシン液を加えてよく混和し、沸騰している湯浴中に試験管を入れ、10分間以上加熱し、(3)加熱染色した1滴をスライドグラスにとり、1白金耳のニグロシン溶液とよく混和し、速やかにできるだけ薄く広げ、(4)そのまま風乾して検鏡した。 生細胞は白く抜けて見え、胞子は赤く染まるため、この方法により胞子形成を確認することができる。 また、この培養の培養期間中の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート図を図1〜3に示す。図1に示されているように、培養開始5時間後から溶存酸素率が徐々に低下し始め、7時間後から急激に低下した。9時間後から12時間後まで、溶存酸素率は0%となった後、12時間45分後から、急激に上昇した。[比較例1] 培養開始後の攪拌速度を400rpmとしたこと(培養開始23.5時間後に攪拌速度を250rpmに変更したことは実施例1と同様)以外は、実施例1と同条件で培養を行った。 表2に、比較例1の培養過程の培養液(培養1日後及び2日後)のpH及び生菌数、並びに培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥物としたものの重量及び生菌数を示す。 培養1日後の生菌数は1.0×109cfu/ml、pHは8.9であった。培養2日後になると生菌数は1.0×109cfu/ml、pHは9.0となり、実施例1の場合(培養開始時の撹拌速度が350rpm)と比較し、若干低い生菌数を示した。凍結乾燥物は、5.25gであり、実施例1とほとんど変わらなかったが、生菌数は、4.8×1011cfu/gとなり、実施例1の場合に比べて約30%程度少なくなった。胞子形成は、培養1日後には1割程度、培養2日後には6割程度に観察された。 また、この培養の培養期間中の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート図を図4〜7に示す。図4に示されているように、培養開始5時間30分後から溶存酸素率が徐々に低下し始め、7時間後から急激に低下した。9時間後から11時間後まで、最低の溶存酸素率を示したが、30%程度を示していた。[比較例2] 培養開始後の攪拌速度を450rpmとしたこと(培養開始23.5時間後に攪拌速度を250rpmに変更したことは実施例1と同様)以外は、実施例1と同条件で培養を行った。 表3に、比較例2の培養過程の培養液(培養1日後及び2日後)のpH及び生菌数、並びに培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥物としたものの重量及び生菌数を示す。 培養1日後の生菌数は1.1×109cfu/ml、pHは8.3であった。培養2日後になると生菌数は7.5×108cfu/ml、pHは8.6となり、実施例1の場合(培養開始時の撹拌速度が350rpm)と比較し、特に2日後は生菌数の低下が目立った。凍結乾燥物は、5.65gと350rpmの場合より多くなったが、生菌数は、2.5×1011cfu/gと約65%程度少なくなった。胞子形成は、培養1日後には1割程度、培養2日後には3割程度に観察された。 また、この培養の培養期間中の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート図を図8〜11に示す。図8に示されているように、培養開始5時間30分後から溶存酸素率が低下し始め、8.5時間後から12時間後まで、最低の溶存酸素率を示したが、50%程度を示していた。[比較例3] 培養開始後の攪拌速度を550rpmとしたこと、及び培養開始23.5時間後の攪拌速度を200rpmとしたこと以外は、実施例1と同条件で培養を行った。ただし、機器操作上、培養開始4時間後まで攪拌速度が350rpmとなった。また、溶存酸素率も実測地より若干高い値を示した。 表4に、比較例3の培養過程の培養液(培養1日後及び2日後)のpH及び生菌数、並びに培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥物としたものの重量及び生菌数を示す。 培養1日後の生菌数は1.3×109cfu/ml、pHは8.9であった。培養2日になると生菌数は6.6×108cfu/ml、pHは9.0となり、実施例1の場合(培養開始時の撹拌速度が350rpm、培養開始23.5時間後の攪拌速度が250rpm)の場合と比較し、特に2日後は生菌数の低下が目立った。凍結乾燥物は、4.0g、生菌数は、4.3×1010cfu/gと約94%程度少なくなった。胞子形成は、培養1日後には全く認められず、培養1.5日後には2割程度観察されたが、2日後には染色状態が良くなく、明らかでなかった。 また、この培養の培養期間中の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート図を図12〜14に示す。図12に示されているように、培養開始5時間後から溶存酸素率が低下し始め、その後80%程度が3時間程度継続した。 上記の実施例1、比較例1〜3の培養における溶存酸素率と培養時間の関係、2日後の培養液中の生菌数、その培養液から得られた胞子の重量、胞子の生菌数、胞子形成率を表5に示す。 表5等の結果から分かるように、培養液の攪拌速度を上げ、対数増殖期(Log Phase)後半から静止期(Stationary Phase)等の増殖期後半から終了期における溶存酸素率を低下させるにつれて、芽胞形成率が上昇することが示され、また、対数増殖期(Log Phase)後半から静止期(Stationary Phase)等の増殖期後半から終了期の一定時間に溶存酸素率を10%以下とすることにより、培養液中の生菌数を低下させることなく、効率良く芽胞を形成させ、高濃度で芽胞菌体を採取できることが明らかとなった。 培養開始9時間後から3時間のみ溶存酸素率が0%となるように撹拌速度を適宜変更し、その他は撹拌速度を450rpmとしたこと以外は、実施例1と同条件で培養を行った。 表6に、実施例2の培養過程の培養液(培養1日後及び2日後)のpH及び生菌数、並びに培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥物としたものの重量及び生菌数を示す。 培養1日後の生菌数は1.1×109cfu/ml、pHは8.3であった。培養2日後になると生菌数は1.1×109cfu/ml、pHは8.7となった。凍結乾燥物は、6.8g、生菌数は、4.5×1011cfu/gであった。 また、この培養の培養期間中の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート図を図15〜18に示す。[比較例4] 培養開始8.5時間後から36.5時間後までのみ溶存酸素率が0%となるように撹拌速度を適宜変更し、その他は撹拌速度を450rpmとしたこと以外は、実施例1と同条件で培養を行った。 表7に、比較例4の培養過程の培養液(培養1日後及び2日後)のpH及び生菌数、並びに培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥物としたものの重量及び生菌数を示す。 培養1日後の生菌数は2.2×108cfu/ml、pHは7.6と実施例2に比べて低かった。培養2日後になると生菌数は2.5×108cfu/ml、pHは8.7と低いままであった。凍結乾燥物は、10.2gと多かったが、生菌数は、1.3×1011cfu/gと少なかった。 また、培養期間中の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート図を図19〜22に示す。 上記の実施例2及び比較例4の培養における溶存酸素率と培養時間の関係、2日後の培養液中の生菌数、その培養液から得られた胞子の重量、胞子の生菌数、全胞子量を表8に示す。 表8等の結果から分かるように、あくまでも、「対数増殖期(Log Phase)後半から静止期(Stationary Phase)等の増殖期後半から終了期の一定時間」について溶存酸素濃度を10%以下とすることは、芽胞の形成に好ましいが、対数増殖期後半から静止期以降の培養についても、溶存酸素を0%としたままとするのは、菌体の死滅を促進させ、かつ芽胞の形成にとって好ましくないことが示された。 工業的なスケールでも本発明の効果が得られることを確かめるため、以下の実験を行った。 酵母エキス(日本製紙ケミカル株式会社製 商品名:SK酵母エキスS−2)4重量%、グルコース(和光純薬株式会社製)0.2重量%を含む培地65リットル(pH7.0に調整)を100リットル容のジャーファーメンターに入れ、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。その後、実施例1と同じ菌株の前培養液300mlを前述のオートクレーブした培地に植菌し、培養を開始した。培養開始後経時的に菌濃度(A660)を測定し、菌体の増殖を確認した。培養開始4時間後当たりから急速に菌体の増殖が確認されたため、培養開始6時間後から15時間後まで、溶存酸素濃度が100分の数ppmとなるように攪拌速度を保った。この培養における培養液の温度、撹拌速度(AGI)、溶存酸素濃度(ppm)、pH、通気量、菌体量(O.D.660)の経時的な推移を表9に示す。[比較例5] 溶存酸素濃度が100分の数ppmとなるように保った時間を、培養開始6時間後から培養最終の87時間後までとしたこと以外は、実施例3と同条件で培養を行った。この培養における培養液の温度、撹拌速度(AGI)、溶存酸素濃度(DO:ppm)、pH、通気量、菌体量(O.D.660)の経時的な推移を表10に示す。 また、上記の実施例3及び比較例5の培養における溶存酸濃度と培養時間の関係、その培養液から得られた胞子の重量、胞子の生菌数、全胞子量を表11に示す。 表9及び表11の結果から分かるように、実施例3の培養では、培養中の菌体量は、A660が26.1になるまで増殖し、最終的(87時間培養時点)にはA660は20.6であった。採取された凍結乾燥物は、205g/65リットル培地、生菌数は、1.2×1012cfu/gであった。 表10及び表11の結果から分かるように、比較例5の培養では、培養開始14時間後にはA660が19.3になるまで増殖したが、その後菌体量は減少し、最終的にはA660は8.65にまで減少した。採取された凍結乾燥物は、133g/65リットル培地、生菌数は、3.0×1011cfu/gであり、凍結乾燥物の量、生菌数共に実施例3より少なかった。 実施例3及び比較例5の培養結果から分かるように、培養スケールや培地組成を変更しても、実施例1、実施例2や比較例4と同様のことがいえることが明らかとなった。 酵母エキス(日本製紙ケミカル株式会社製 商品名:SK酵母エキスS−2)0.5重量%、濃縮焼酎かす液(霧島酒造株式会社製)5.0重量%、グルコース(和光純薬株式会社製)0.2重量%を含む培地5リットル(pH7.0に調整)を10リットル容のジャーファーメンターに入れ、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。その後、バチルス ズブチリス FERM BP−10244菌株を前培養した菌懸濁液10mlを、前述のオートクレーブした培地に植菌し、通気量5.0SL/ml、攪拌速度350rpm、培養温度30℃で本培養を行った。なお、培養開始24時間後に攪拌速度を250rpmに変更した。 表12に、実施例4の培養過程の培養液(培養1日後及び2日後)のpHと生菌数、並びに培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥物としたものの重量と生菌数を示す。 培養1日後の生菌数は2.1×109cfu/ml、pHは8.8であった。培養2日後には、生菌数が2.4×109cfu/ml、pHが9.2となった。凍結乾燥物は、8.65g、生菌数は、1.2×1012cfu/gであった。胞子形成は、培養1日後には1割程度、培養2日後には9割程度に観察された。 培地を、濃縮焼酎かす液(霧島酒造株式会社製)5.0重量%、グルコース(和光純薬株式会社製)0.2重量%を含む培地に変更したこと以外は、実施例4と同条件で培養を行った。 表13に、実施例5の培養過程の培養液(培養1日後及び2日後)のpHと生菌数、並びに培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥物としたものの重量と生菌数を示す。 培養1日後の生菌数は2.3×109cfu/ml、pHは8.2であった。培養2日後には、生菌数が8.5×108cfu/ml、pHが9.3となった。SK酵母エキスS−2と混用した実施例4の場合と比較すると、培養2日後の生菌数は低くなった。凍結乾燥物は、3.65g、生菌数は、9.0×1011cfu/gであった。SK酵母エキスS−2と混用した実施例4の場合と比較すると、生菌数は、25%減、採取量は58%減と大幅に少なくなった。 培地を、SK酵母エキスS−2(日本製紙ケミカル株式会社製)1.0重量%、グルコース(和光純薬株式会社製)0.2重量%を含む培地に変更したこと以外は、実施例4と同条件で培養を行った。 表14に、実施例6の培養過程の培養液(培養1日後及び2日後)のpHと生菌数、並びに培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥物としたものの重量と生菌数を示す。 培養1日後の生菌数は5.1×108cfu/ml、pHは8.6であった。培養2日後には、生菌数が6.2×108cfu/ml、pHが8.8となった。SK酵母エキスS−2の濃度は高いにも関わらず、濃縮焼酎かすと混用した実施例4の場合と比較して、生菌数は極めて低く、芽胞形成も遅かった。 さらにもう1日培養を継続したところ、生菌数は、4.5×108cfu/ml、pHは8.7となった。凍結乾燥物は、2.52g、生菌数は、6.9×1011cfu/gであり、濃縮焼酎かすと混用した実施例4の場合と比較して、採取量・生菌数共に大幅に少なかった。 酵母エキス(日本製紙ケミカル株式会社製 商品名:SK酵母エキスS−2)1.0重量%、CSL(日本食品加工株式会社製)2.0重量%、グルコース(和光純薬株式会社製)0.2重量%を含む培地5リットル(pH7.0に調整)を10リットル容のジャーファーメンターに入れ、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。その後、バチルス ズブチリス FERM BP−10244菌株を前培養した菌懸濁液10mlを、前述のオートクレーブした培地に植菌し、通気量5.0SL/ml、攪拌速度350rpm、培養温度30℃で本培養を行った。なお、培養開始24時間後に攪拌速度を250rpmに変更した。 表15に、実施例7の培養過程の培養液(培養1日後及び2日後)のpHと生菌数、並びに培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥物としたものの重量と生菌数を示す。 培養1日後の生菌数は9.1×108cfu/ml、pHは9.2であった。培養2日後には生菌数が1.3×109cfu/ml、pHが9.4となった。凍結乾燥物は、6.55g、生菌数は、8.0×1011cfu/gであった。胞子形成は、培養1日後には6割程度、培養2日後には9割程度に観察された。 培地を、CSL(日本食品加工株式会社製)2.0重量%、グルコース(和光純薬株式会社製)0.2重量%を含む培地に変更したこと以外は、実施例4と同条件で培養を行った。 表16に、実施例8の培養2日後の菌体を集菌し、凍結乾燥物としたものの重量と生菌数を示す。 凍結乾燥物は、1.17g、生菌数は、1.8×1011cfu/gであり、実施例7の場合と比較して量・生菌数共に非常に少なかった。 上記実施例4〜8の結果から、窒素源を2種以上組み合わせて使用すると、窒素源を1種のみ使用する場合に比べて、より大量かつ高生菌数の芽胞菌体を採取することができることが明らかとなった。実施例1の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(培養開始時〜14時間後)実施例1の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(14時間後〜28.5時間後)実施例1の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(27.5時間後〜42時間後)比較例1の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(培養開始時〜13時間後)比較例1の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(12時間後〜27時間後)比較例1の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(26時間後〜41時間後)比較例1の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(40時間後〜50時間後)比較例2の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(培養開始時〜13.5時間後)比較例2の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(12.5時間後〜27.5時間後)比較例2の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(26.5時間後〜41.5時間後)比較例2の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(40.5時間後〜49時間後)比較例3の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(培養開始時〜15時間後)比較例3の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(15.5時間後〜30.5時間後)比較例3の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(30時間後〜45時間後)実施例2の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(培養開始時〜14時間後)実施例2の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(13.5時間後〜28時間後)実施例2の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(27.5時間後〜42時間後)実施例2の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(41.5時間後〜48時間後)比較例4の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(培養開始時〜14.5時間後)比較例4の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(14.5時間後〜29.5時間後)比較例4の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(29.5時間後〜44.5時間後)比較例4の培養における培養液の温度、pH、溶存酸素率(DO)、攪拌速度のチャート(44時間後〜48時間後)溶存酸素率が10%以下の培養液でバチルス属細菌を培養する工程(C)と、工程(C)の後に、溶存酸素率が10%より多い培養液でバチルス属細菌を培養する工程(D)と、工程(D)の後に、バチルス属細菌の芽胞を得る工程(E)を備えたことを特徴とするバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。溶存酸素率が10%以下の培養液で培養するバチルス属細菌が、対数増殖期(Log Phase)以降のバチルス属細菌であることを特徴とする請求項1に記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。溶存酸素率が10%以下の培養液で培養するバチルス属細菌が、対数増殖期(Log Phase)及び静止期(Stationary Phase)のバチルス属細菌であることを特徴とする請求項1に記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。工程(C)の前に、溶存酸素率が10%より多い培養液でバチルス属細菌を培養してバチルス属細菌を増殖させる工程(A)、及び/又は、培養液の溶存酸素率を10%以下にする工程(B)を、さらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。培養液への通気量及び/又は培養液の撹拌速度を調節することによって、培養液の溶存酸素率を10%以下にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。培養液が、酵母エキス、コーンスティープリカー、大豆ペプトン、及び濃縮焼酎かすからなる群から選ばれるいずれか1種以上の成分を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。培養液が、酵母エキス、コーンスティープリカー、大豆ペプトン、及び濃縮焼酎かすからなる群から選ばれるいずれか2種以上の成分を含有することを特徴とする請求項6に記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。培養液が、酵母エキスを0.2〜10.0重量%、コーンスティープリカーを0.5〜20.0重量%、大豆ペプトンを0.2〜10.0重量%、濃縮焼酎かすを0.2〜20.0重量%含有することを特徴とする請求項7に記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。培養液が、糖類をさらに含有することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。培養液が、糖類を0.05〜5.0重量%含有することを特徴とする請求項9に記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。バチルス属細菌が、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス パミルス(Bacillus pumils)、バチルス レンタス(Bacillus lentus)、バチルス ラテロスポルス(Bacillus laterosporus)、バチルス アルベイ(Bacillus alvei)、バチルス ポピリエ(Bacillus popilliae)、及びバチルス リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)からなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。バチルス属細菌が、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)FERM BP−10244又はその変異株であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞を形成する方法。