タイトル: | 公開特許公報(A)_ヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法及び診断キット |
出願番号: | 2006061896 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 33/569,G01N 33/543 |
湯浅 貴恵 篠木 武 堀江 典子 JP 2006284567 公開特許公報(A) 20061019 2006061896 20060307 ヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法及び診断キット 株式会社ファーマフーズ 500101243 湯浅 貴恵 篠木 武 堀江 典子 JP 2005064650 20050308 G01N 33/569 20060101AFI20060922BHJP G01N 33/543 20060101ALI20060922BHJP JPG01N33/569 FG01N33/543 521 11 OL 24 本発明は、ヘリコバクター・ピロリの感染のみならず、感染しているヘリコバクター・ピロリが有毒株であるか否かをも判別できる診断方法及び診断キットに関する。 ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori、以下、単にピロリ菌ともいう)は、グラム陰性菌の一種であり、胃潰瘍、十二指腸潰瘍等の消化器系疾患の原因菌として注目されている。ピロリ菌を除菌することで消化器系疾患の発症が低減することが明らかになり、日本国内では現在、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療法としてピロリ菌の除菌療法が保険適用となっている。 日本国内におけるピロリ菌感染率は、40歳以上で約80%と報告されているが、感染者すべてが発症するわけではなく、感染者の数%程度が発症すると言われている。 感染と発症との関連性については未だ不明な点も多いが、ピロリ菌には毒素を有するピロリ菌(有毒株)と毒素を保有しないピロリ菌(無毒株)があるということが近年の研究で明らかになってきた(非特許文献1参照)。 更に、潰瘍等の発症が認められない感染者がピロリ菌を除菌することにより逆流性食道炎を引き起こすとの報告もあり、毒素を保有しないピロリ菌は常在菌であるという考え方もある。このような背景から、単にピロリ菌の感染の有無を判定するだけでなく、感染しているピロリ菌が発症を起こす有毒株であるか無毒株であるかを簡便に判定する方法の開発が望まれている。 現在、ピロリ菌感染の検査方法としては、尿素呼気試験がよく用いられている(特許文献1、非特許文献2〜3参照)。尿素呼気試験は、13C標識尿素あるいは14C標識尿素を被検者に経口投与した後に、呼気に出てくる13C標識CO2あるいは14C標識CO2を定量するものである。この方法は内視鏡を使わないで検査できるので、患者に対する負担が少ないこと、感度が高く胃壁全体の状況を反映すること等の長所を有している。 また、別のピロリ菌感染の検査方法として、抗原抗体反応を用いたものも知られており、例えば、下記特許文献2ではピロリ菌のウレアーゼに対する抗体を、下記特許文献3ではピロリ菌のカタラーゼに対する抗体を用いてピロリ菌を検出している。また、下記特許文献4では、糞便中のピロリ菌を抗ピロリ菌抗体を用いて検出している。WO2001/087353号特開平11−318490号公報特許第3504633号公報特許第3043999号公報S. A. Sharma et al., Infect. Immun. 63, 1681-1687(1995)D. Y. Graham, P. D. Klein, D. J. Evans, et al., Lancet 1, 1174(1987)G. D. Bell, J. Weil, J. Harrison, et al., Lancet 1, 1367 (1987) しかしながら、上記の方法においては、ピロリ菌の感染の有無については判定が可能であるが、感染しているピロリ菌が有毒株であるか無毒株であるかについては全く判定ができなかった。また、内視鏡により組織を採取し、ピロリ菌を分離培養した後、有毒株かどうかの判定をすることは可能であるが、培養設備及び多大な時間と労力が必要である、組織の一部を採取するため、サンプリングエラーが生じやすいなど問題点も多かった。 したがって、本発明は、胃の組織や細胞、胃液等を採取することなく、ピロリ菌の感染の有無、及び該ピロリ菌が有毒株であるか否かを、簡便、迅速且つ正確に診断することができる感度の高い診断方法及び診断キットを提供することを目的とする。 本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、胃潰瘍患者ではピロリ菌の毒素に対する抗体が血中だけでなく唾液や尿中にも分泌され、これを検出することでピロリ菌の有毒株を判別することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。 即ち、本発明のヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法は、唾液又は尿中に含まれるヘリコバクター・ピロリ特異抗原に対するヒト抗体を測定することを特徴とする。 本発明の診断方法においては、前記ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)特異抗原に対するヒト抗体として、(1)ウレアーゼ及び/又は鞭毛タンパクに対する抗体と、(2)空胞化毒素(VacA)、毒素随伴タンパク(CagA)及び好中球活性化タンパク(NapA)から選ばれた少なくとも1種に対する抗体を測定することが好ましい。 また、前記ヒト抗体が、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンM(IgM)、分泌型イムノグロブリンA(分泌型IgA)から選ばれたいずれか1種であることが好ましい。 本発明のヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法によれば、採取が容易な唾液又は尿中に含まれるヘリコバクター・ピロリ特異抗原に対するヒト抗体を測定することにより、ピロリ菌に感染しているかどうかを容易に診断することができる。そして、前記ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)特異抗原に対するヒト抗体として、(1)ウレアーゼ及び/又は鞭毛タンパクに対する抗体を測定することにより、ピロリ菌感染の有無を判別することができ、(2)空胞化毒素(VacA)、毒素随伴タンパク(CagA)及び好中球活性化タンパク(NapA)から選ばれた少なくとも1種に対する抗体を測定することにより、ピロリ菌が有毒株か無毒株かを判別することができる。 本発明のヘリコバクター・ピロリ感染診断キットの一つは、前記ヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法に用いられる診断キットであって、少なくとも、ヘリコバクター・ピロリ特異抗原を固定化した担体と、ヒト抗体に対する標識2次抗体とを含むことを特徴とする。 上記ヘリコバクター・ピロリ感染診断キットにおいては、前記ヘリコバクター・ピロリ特異抗原が、(1)ウレアーゼ及び/又は鞭毛タンパクと、(2)空胞化毒素(VacA)、毒素随伴タンパク(CagA)及び好中球活性化タンパク(NapA)から選ばれた少なくとも1種であり、前記ヒト抗体が、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンM(IgM)及び分泌型イムノグロブリンA(分泌型IgA)から選ばれたいずれか1種であることが好ましい。 また、前記ヒト抗体に対する標識2次抗体が、鶏卵抗体(IgY)であることが好ましい。 更にまた、前記ヒト抗体に対する標識2次抗体を、固相酵素免疫測定法(ELISA)を用いて検出することが好ましい。 また、本発明のヘリコバクター・ピロリ感染診断キットのもう一つは、前記ヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法に用いられる診断キットであって、クロマトグラフ媒体上に、少なくとも検体反応部位と検出部位とを有し、前記検体反応部位には標識されたヘリコバクター・ピロリ特異抗原を有しており、前記検出部位にはヒト抗体に対する2次抗体が固定化されてなるイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体からなることを特徴とする。 また、本発明のヘリコバクター・ピロリ感染診断キットのもう一つは、前記ヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法に用いられる診断キットであって、クロマトグラフ媒体上に、少なくとも検体反応部位と検出部位とを有し、前記検体反応部位に標識されたヒト抗体に対する2次抗体を有しており、前記検出部位にヘリコバクター・ピロリ特異抗原が固定化されてなるイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体からなることを特徴とする。 上記のヘリコバクター・ピロリ感染診断キットにおいては、前記ヘリコバクター・ピロリ特異抗原が、(1)ウレアーゼ及び/又は鞭毛タンパクと、(2)空胞化毒素(VacA)、毒素随伴タンパク(CagA)及び好中球活性化タンパク(NapA)から選ばれた少なくとも1種であり、前記ヒト抗体が、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンM(IgM)、分泌型イムノグロブリンA(分泌型IgA)から選ばれたいずれか1種であることが好ましい。 また、前記ヒト抗体に対する2次抗体が鶏卵抗体(IgY)であることが好ましい。 本発明のヘリコバクター・ピロリ感染診断キットによれば、ピロリ菌感染の有無だけでなく、該ピロリ菌が有毒株であるか否かを、簡便、迅速且つ正確に診断することができる。 本発明によれば、胃の組織や細胞、胃液等を採取することなく、ピロリ菌感染の有無、及び該ピロリ菌が有毒株であるか否かを、簡便、迅速且つ正確に診断することができるヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法及び診断キットを提供できる。 本発明のヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法は、ヒトがピロリ菌に感染した際に、ヘリコバクター・ピロリ特異抗原に対する抗体が血中だけでなく唾液や尿中にも分泌されるので、これを検出することにより、ピロリ菌感染の有無、及び該ピロリ菌が有毒株であるか否かを判別するものである。 上記ヘリコバクター・ピロリ特異抗原としては、ピロリ菌の菌体や鞭毛タンパク、ピロリ菌が分泌するウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素(VacA)、毒素随伴タンパク(CagA)、好中球活性化タンパク(NapA)等が例示できる。 本発明においては、主にピロリ菌感染の有無を判別するために、(1)全てのピロリ菌に共通するような抗原(以下、「ピロリ菌検出用抗原」という)に対する抗体と、(2)主にピロリ菌が有毒株であるか否かを判別するために、有毒株のピロリ菌特有の抗原(以下、「有毒/無毒株判別用抗原」という)に対する抗体を測定することが好ましい。 上記ピロリ菌検出用抗原としては、ピロリ菌全菌体、ウレアーゼ、カタラーゼ、鞭毛タンパク等が好ましく例示でき、中でもウレアーゼ及び/又は鞭毛タンパクが好ましく例示できる。 例えば、ウレアーゼは、分離されるピロリ菌全株で陽性であり、胃内でのピロリ菌の生残と持続感染に深く関与している。ピロリ菌のウレアーゼは、2種類のサブユニットタンパク(ウレアーゼA、ウレアーゼB)からなる6量体のタンパク(分子量500〜600kDa)である。ウレアーゼA(UreA)及びウレアーゼB(UreB)は、ピロリ菌ゲノム上のNotICフラグメント内に位置するureAB遺伝子にコードされており、関連遺伝子としてureCD、ureIEFGH遺伝子等が知られている。 また、ピロリ菌は、一端又は両端に2〜6本の有鞘性鞭毛を有しており、この鞭毛によって活発に運動して粘液層を通り粘膜上皮細胞へ到達し、胃に定着するものと考えられている。ピロリ菌の鞭毛タンパクとしては、FlaAやFlaB等のサブユニットタンパクのほか、関連タンパクとしてFliD、FliK、FlgE、FlgM等が知られている。FlaAタンパクは、NotIBフラグメント内に位置するflaA遺伝子にコードされており、FlaBタンパクは、NotI Cフラグメント内に位置するflaB遺伝子にコードされている。また、FliDタンパクは、ピロリ菌の鞭毛の結合部位に関わる重要な分子であり、ピロリ菌ゲノム上のfliD遺伝子(約2,060bp)にコードされている。 本発明においては、上記サブユニットタンパクや関連タンパクをピロリ菌検出用抗原として利用することもでき、例えば、ウレアーゼA(UreA)やFliDタンパク等が好ましく利用できる。 一方、上記有毒/無毒株判別用抗原としては、ピロリ菌有毒株が持っている各種毒素タンパクが利用できる。具体的には、空胞化毒素(VacA)、毒素随伴タンパク(CagA)及び好中球活性化タンパク(NapA)から選ばれた少なくとも1種が好ましく例示できる。 例えば、空胞化毒素(VacA)は、ピロリ菌ゲノム上のNotI Hフラグメント内に位置するvacA遺伝子(3,864bp)にコードされている分子量87kDaの分泌タンパク質であり、真核生物の細胞中に酸性の空胞を引き起こす。 また、毒素随伴タンパク(CagA)は、ピロリ菌ゲノム上のNotI Bフラグメント内に位置するcagA遺伝子にコードされている分子量105kDa〜140kDaの分泌タンパク質であり、強い免疫原性を持つ。 また、好中球活性化タンパク(NapA)は、ピロリ菌ゲノム上のnap遺伝子(約430bp)にコードされるタンパク質であり、好中球を活性化し、胃上皮細胞等への好中球付着を促進する作用を有する。 本発明において、唾液又は尿中に含まれる上記ヘリコバクター・ピロリ特異抗原に対するヒト抗体とは、ヒト体内のイムノグロブリンタンパク質、即ち、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンM(IgM)、単量体のイムノグロブリンA(IgA)、2量体の分泌型イムノグロブリンA(分泌型IgA)、イムノグロブリンE(IgE)、イムノグロブリンD(IgD)を意味するが、中でもIgG、IgM、分泌型IgAが好ましく、検体の採取に苦痛を伴わないこと、検査の簡便さ及び検出感度から唾液中の分泌型IgAが好ましい。 次に、本発明の診断方法における上記ヒト抗体を検出する方法としては、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、固相酵素免疫測定法(ELISA)、放射線免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、ウエスタンブロット法、イムノクロマトグラフ法等の公知の免疫学的測定法が挙げられ、中でも簡便さの点から、ELISA法又はイムノクロマトグラフ法が好ましく採用される。上記の各種免疫学的測定法は、競合法やサンドイッチ法等により、標識剤で標識された抗原又は2次抗体を用い、目的とする抗原又は抗体を測定するものである。 上記免疫学的測定法に用いられる標識剤は特に限定されず、採用する免疫学的測定法に適した標識剤を用いればよい。例えば、ELISA法を採用する場合は、標識剤として、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、HRP等)、発光物質(例えば、イソルミノール、アクリジンエステル)、蛍光物質(例えば、FITC、ローダミン)等が好ましく用いられる。また、イムノクロマトグラフ法を採用する場合は、着色ラテックス、金コロイド等が好ましく用いられる。 本発明において、上記2次抗体としては、前記ヒト抗体を抗原としてマウスやウサギ、ヤギ、ニワトリに免疫してそれらの血中から得られるIgGや、ニワトリの卵から得られる鶏卵抗体(IgY)を用いることができるが、生産性及び抗原特異性の点から、鶏卵抗体(IgY)が好ましく用いられる。鶏卵抗体(IgY)は、公知の方法(特許第3597784号公報等)に従って調製することができる。すなわち、所定の抗原で免疫した鶏から卵(免疫卵)を採取し、この免疫卵から卵黄を分離して粉末化した卵黄粉末(免疫卵黄粉末)を、エタノール等の溶媒を用いて脱脂して脱脂卵黄粉末(免疫脱脂卵黄粉末)を得る。そして、この脱脂卵黄粉末1質量部に対して3〜6質量部の緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液等)を加えて撹拌・抽出して上清を回収し、この上清を適宜脱塩、濃縮、粉末化することにより各抗原蛋白質に対する鶏卵抗体(IgY)を調製することができる。 また、上記免疫学的測定法には、上記2次抗体の代わりに、上記ヘリコバクター・ピロリ特異抗原を用いることもでき、好ましくは上記ピロリ菌検出用抗原と、上記有毒/無毒株判別用抗原が用いられる。なお、ウレアーゼや鞭毛タンパクについては、上述したようにそれらを構成するサブユニットタンパクや関連タンパクをそれぞれ抗原として利用できる。これらの抗原タンパク質の調製方法は特に限定されず、例えば、ピロリ菌が分泌するウレアーゼ、VacA、CagA、NapA等のタンパクは、これらを産生するピロリ菌株の培養上清からアフィニティクロマトグラフ等により分離精製することができる。また、大腸菌等への遺伝子組み換えにより、ウレアーゼ遺伝子(ureA、ureB等)、鞭毛タンパク遺伝子(flaA、flaB、fliD等)、vacA遺伝子、cagA遺伝子、napA遺伝子等を発現させて各タンパク質を生産させることもできる(J.L. Telford et al, J. Exp. Med. 1994, 179,1653、j. Yan etal, World J. Gastroenterol. 2004, 10, 1183)。 上記免疫学的測定法に用いる標識2次抗体及び/又は標識抗原の調製方法、すなわち、上記標識剤と検出用2次抗体及び/又は抗原との結合は、特に限定されず、例えば、マレイミド法(J.Biochem. 1976,79,233)、活性化ビオチン法(J. Am. Chem. Soc.1978,100,3585)等の公知の方法を用いることができる。 次に、本発明の診断キットについて説明する。 本発明の診断キットの一つは、ヘリコバクター・ピロリ特異抗原を固定化した担体と、ヒト抗体に対する標識2次抗体とを含むものである。 上記ヘリコバクター・ピロリ特異抗原を固定化するために用いられる担体は、特に限定されないが、ポリスチレン等のポリマー、ガラスビーズ、マイクロプレート、イムノクロマトグラフ用濾紙等の不溶性担体が例示できる。本発明においては、多数の検体を一度に測定できる点から、マイクロプレートが好ましい。 上記ヘリコバクター・ピロリ特異抗原としては、ピロリ菌の感染の有無だけでなく、該ピロリ菌の有毒/無毒株をも正確に判別するために、上記ピロリ菌検出用抗原と上記有毒/無毒株判別用抗原とを併用することが好ましい(後述する他の態様の診断キットにおいても同じ)。 また、上記担体にヘリコバクター・ピロリ特異抗原を固定化する方法は、常法(特開2003−212898号公報等)に従って行うことができ、例えば、上記ピロリ菌特異抗原をpH9.6の緩衝液(炭酸緩衝液等)に5〜20μg/mLの濃度で溶解し、この溶液をマイクロプレートのウエルに添加して、37℃で1〜2時間静置した後、PBS−Tweenで数回洗浄すればよい。 また、上記2次抗体としては、鶏卵抗体(IgY)が好ましく用いられ、該2次抗体を標識する標識剤としては、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、HRP等)、発光物質(例えば、イソルミノール、アクリジンエステル)等、蛍光物質(例えば、FITC、ローダミン)等が用いられる。 以下、上記診断キットの使用方法について、具体的に説明する。 すなわち、上記ヘリコバクター・ピロリ特異抗原、好ましくは上記ピロリ菌検出用抗原と有毒/無毒株判別用抗原をそれぞれ固定化したマイクロプレートのウエルに、非特異的吸着を低減するためにブロッキングバッファー(例えば、PBS−BSA溶液)を添加し、37℃で1〜2時間静置した後、PBS−Tweenで数回洗浄する。 そして、PSB等で適宜希釈したサンプル(唾液又は尿)を、それぞれウエルに添加して37℃で1〜2時間静置して反応を行う。 反応終了後、各ウエルをPBS−Tweenで洗浄し、上記標識2次抗体を各ウエルに添加して37℃で0.5〜2時間静置して反応を行う。 反応終了後、各ウエルをPBS−Tweenで洗浄し、常法に従って上記標識2次抗体を検出する。ピロリ菌検出用抗原を固定化したウエルのみで標識2次抗体が検出された場合は、ピロリ菌(無毒株)に感染しているものと判定できる。一方、ピロリ菌検出用抗原を固定化したウエルと、有毒/無毒株判別用抗原を固定化したウエルの両方で標識2次抗体が検出された場合は、ピロリ菌(有毒株)に感染しているものと判定できる。 本発明の診断キットは、更に他の成分を含んでいてもよく、例えば、酵素、その基質、発色剤、色素、緩衝液等が挙げられる。 また、本発明のもう一つの診断キットは、クロマトグラフ媒体上に、少なくとも検体反応部位と検出部位とを有し、前記検体反応部位には標識されたヘリコバクター・ピロリ特異抗原を有しており、前記検出部位にはヒト抗体に対する2次抗体が固定化されてなるイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体からなるものである。 また、本発明のもう一つの診断キットは、クロマトグラフ媒体上に、少なくとも検体反応部位と検出部位とを有し、前記検体反応部位に標識されたヒト抗体に対する2次抗体を有しており、前記検出部位にヘリコバクター・ピロリ特異抗原が固定化されてなるイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体からなるものである。 上記クロマトグラフ媒体としては、ヘリコバクター・ピロリ特異抗原や2次抗体を固定化でき、かつヒト抗体が浸透してクロマトグラフとして移行できる板状又はシート状の媒体であれば特に限定されないが、具体的には、ニトロセルロースメンブレン、セルロースメンブレン、ポリスチレンポリマー板、ガラス繊維濾紙、ナイロンメンブレン等が例示できる。 また、上記の標識されたヘリコバクター・ピロリ特異抗原あるいは標識されたヒト抗体に対する2次抗体としては、着色ラテックスや金コロイド等で標識されたものが好ましく用いられ、安定性や操作性等の点から着色ラテックスで標識されたものがより好ましい。なお、上記ヒト抗体に対する2次抗体としては、上述した鶏卵抗体(IgY)が好ましく用いられる。 本発明において、上記検体反応部位は、上記標識されたヘリコバクター・ピロリ特異抗原あるいは上記標識されたヒト抗体に対する2次抗体を有する溶出性シートと、試料吸収用濾紙とから構成されていることが好ましい。 上記溶出シートとしては、該シート中で標識抗原又は標識2次抗体が検体中のヒト抗体と反応することが可能で、かつ、これらの反応物が溶媒とともに容易に溶出可能なもの(クロマトグラフとして移行可能なもの)が用いられる。具体的には、PVAシート、シリカ薄層塗布ガラス板等が例示でき、これらに、上記標識されたヘリコバクター・ピロリ特異抗原、あるいは上記標識されたヒト抗体に対する2次抗体を含む溶液を含ませることにより作製できる。 また、上記試料吸収用部材としては、液体を速やかに吸収保持できるものであればよく、例えば、濾紙、綿布、ポリエチレンやポリプロピレン等からなる不織布等を用いることができる。 次に、クロマトグラフ媒体を用いた上記診断キットの作製方法について説明する。 (1)検体反応部位に標識されたヘリコバクター・ピロリ特異抗原を有し、検出部位にヒト抗体に対する2次抗体が固定化されたイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体 図1には、イムノクロマトグラフ抗体固相化支持体の一実施態様が示されており、図2には、該イムノクロマトグラフ抗体固相化支持体の縦断面の模式図が示されている。 図1に示すように、所定の大きさ(例えば、幅5〜30mm、長さ50〜100mm)に裁断したニトロセルロースシート1の所定の位置(通常、上端より5〜10mmの位置)に、上記ヒト抗体に対する2次抗体を線状(幅3〜10mm)に塗布し、室温で乾燥固定して検出部位3とする。その後、非特異的吸着を低減するために、1〜3質量%BSA−PBSに5〜60分間浸漬してブロッキングを行う。なお、前記検出部位3の上部に、所定の大きさの濾紙を吸収パッド4として、該検出部位3と重ならないように付設することが好ましい。 次いで、標識されたヘリコバクター・ピロリ特異抗原を、所定の大きさに切ったPVAシート2に吸着させて乾燥した後、該PVAシート2を上記ニトロセルロースシート1の上端から20〜60mmの位置に点着し、更にその上を覆うように試料吸収用濾紙5を重ねて検体反応部位6とし、イムノクロマトグラフ抗体固相化支持体10を構成する(図2参照)。 上記イムノクロマトグラフ抗体固相化支持体からなるヘリコバクター・ピロリ感染診断キットにおいては、該イムノクロマトグラフ抗体固相化支持体を複数個のセットとし、各イムノクロマトグラフ抗体固相化支持体の検体反応部位にそれぞれ異なったヘリコバクター・ピロリ特異抗原を用いることが好ましい。例えば、標識された上記ピロリ菌検出用抗原を用いた検体反応部位を有するイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体Aと、標識された上記有毒/無毒株判別用抗原を用いた検体反応部位を有するイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体Bとを組み合わせることにより、上記イムノクロマトグラフ抗体固相化支持体Aでピロリ菌の感染の有無を判別し、上記イムノクロマトグラフ抗体固相化支持体Bで該ピロリ菌が有毒株であるか否かを判別することができる。 (2)検体反応部位に標識されたヒト抗体に対する2次抗体を有し、検出部位にヘリコバクター・ピロリ特異抗原が固定化されたイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体 図3には、イムノクロマトグラフ抗原固相化支持体の一実施態様が示されている。なお、以下の説明においては、図1、2と実質的に同じ部分については同じ番号を付し、その説明を省略する。 図3に示すように、このイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体20においては、所定の大きさに裁断したニトロセルロースシート1の上端より5〜10mmの位置に、複数種類のヘリコバクター・ピロリ特異抗原(12、13、14)を、所定の間隔で線状(幅3〜10mm、長さ5〜10mm)に塗布し、室温で乾燥固定して検出部位16としている。なお、この例においても、前記検出部位16の上部に、所定の大きさの濾紙を吸収パッド4として、該検出部位16と重ならないように付設することが好ましい。 イムノクロマトグラフ抗原固相化支持体においては、ヘリコバクター・ピロリ特異抗原ごとに、イムノクロマトグラフ抗原固相化支持体を作製してもよいが、この例に示すように、一つのクロマトグラフ媒体上に複数種類のヘリコバクター・ピロリ特異抗原を固定化して検出部位を構成することが好ましい。その場合、ヘリコバクター・ピロリ特異抗原として、上記ピロリ菌検出用抗原と、上記有毒/無毒株判別用抗原とを組み合わせて用いることにより、ピロリ菌の感染の有無と、該ピロリ菌が有毒株であるか否かを判別することができる。 次いで、標識されたヒト抗体に対する2次抗体を、所定の大きさに切ったPVAシート11に吸着させて乾燥した後、非特異的吸着を低減するために、1〜3質量% BSA−PBSに5〜60分間浸漬してブロッキングを行う。このPVAシート11を上記ニトロセルロースシート1の上端から20〜60mmの位置に点着し、更にその上を覆うように試料吸収用濾紙5を重ねて検体反応部位15とし、イムノクロマトグラフ抗原固相化支持体20を構成する。 上記のようにして得られたイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体10の検体反応部位6あるいはイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体20の検体反応部位15に、検体(唾液サンプルや尿サンプル)を滴下して1〜10分間吸収展開し、検出部位の着色を観察することにより、ピロリ菌の感染の有無と、ピロリ菌が有毒株であるか否かを判別することができる。 上記のようなイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体あるいはイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体を用いたヘリコバクター・ピロリ感染診断キットの形態は特に限定されるものではないが、簡便に診断を行うために、上記診断キットの構成成分が一体となったカセット型、カートリッジ型の診断キットであることが好ましい。 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り「%」は「質量%」を意味する。 (A)抗原の調製 (1)全菌体抽出抗原の調製 HP分離培地(栄研化学)でピロリ菌(ATCC43504)を培養し、集菌後生理食塩水で3回洗浄した。細胞破砕機により菌体を破砕し、その上清を全菌体抽出抗原液とした。 (2)VacA、CagAの調製 ピロリ菌臨床分離株(VacA、CagA共に陽性)を上記と同様に培養し、集菌した。菌体破砕液を、抗VacA抗体をリガンドしたアフィニティーカラムに添加後、リン酸緩衝液にて洗浄した。洗浄により非吸着画分を除いた後、カラムに吸着したVacA蛋白質を溶出した。 得られたVacA蛋白質画分を常法に従ってHeLa細胞に添加し、細胞の空胞化が起こることを確認した。CagAについても同様にアフィニティーカラムを用い精製した。 (3)ウレアーゼ抗原、カタラーゼ抗原の調製 前記ピロリ菌全菌体抽出抗原液から常法に従ってウレアーゼを精製した(Icatlo FC et al. J. Biol. Chem 273 18130−18138,1997)。同様に、常法に従ってカタラーゼを精製した(HazellSL et al, J. Gen. Microbiol., 137 57−61,1991) (B)卵黄抗体の調製 (1)抗ヒト分泌型IgAニワトリIgYの作製 産卵鶏(ホワイトレグホン)に、ヒト分泌型IgA(コスモバイオ社製)をフロイントコンプリートアジュバントと混合し、筋肉注射(抗原液1mL/羽)による免疫操作を行った。 初回免疫後1週ごとに集められた鶏卵から卵黄を分離し、これを抗体価測定用サンプルとした。免疫卵黄の卵黄中抗体価の推移を、それぞれの免疫抗原を固相化したプレートを用いた酵素免疫測定法により測定した。 初回免疫から2週間目に卵黄中の抗体価が上昇し、抗体価が低下した時点(11週目)を確認後、初回免疫と同様に追加免疫を行った。その後、週毎の抗体価を測定し、16週目でピークに達することを確認した。 (2)抗体の精製 上記免疫操作により得られた各免疫卵から卵黄を分離し、噴霧乾燥にて粉末化し、各抗原に対する抗体を含んだ卵黄粉末を得た。 各卵黄粉末は、脱脂操作(卵黄粉末100gにエタノール500mLを加えて混合)を繰り返し行って、各脱脂卵黄粉末を得た。 得られた脱脂卵黄粉末に、その5倍量のリン酸生理食塩水(PBS)を加えて撹拌し、卵黄水溶性蛋白質を抽出した。 水溶性蛋白質に15%になるように硫酸アンモニウムを添加し、撹拌後30分間静置した。得られた沈殿物を8,000rpm、30分間遠心分離し回収した。上記塩析操作を3回繰り返し凍結乾燥後IgY粉末を得た。 (3)アフィニティー精製抗体の調製 上記(2)で得られたIgY粉末を10mg/mLの濃度で溶解し、分泌型ヒトIgA(コスモバイオ社製)をリガンドしたアフィニティーカラムに添加した。カラムをリン酸緩衝液にて洗浄後、溶出バッファーにてIgYをカラムから溶出した。フラクションコレクターにて溶出されてきた特異抗体画分を回収し、pH7.0に調整後凍結乾燥しアフニティー精製抗ヒト分泌型IgAニワトリIgY粉末を得た。以下抗ヒトIgAニワトリIgYと示す。 (C)標識2次抗体の調製 上記(B)で得られた抗ヒトIgAニワトリIgYを用い、常法に従って標識2次抗体を調製した。標識はアルカリフォスファターゼを用い、マレイミド法にてアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgAニワトリIgYを調製した。 (D)ピロリ菌各抗原蛋白質に対する反応性(ELISA法) (1)被験者 まず、尿素呼気試験用キット(商品名「ユービット」、大塚製薬製)を用いて、被験者候補のピロリ菌感染の有無を調べた。そして、その結果に基づき、ピロリ菌陽性の健常者(陽性健常者)を10名、陽性で更には胃潰瘍、十二指腸潰瘍治療中(陽性治療中)の者10名、さらに陰性の者10名、合計30名を選定した。なお、陽性治療中の被験者はいずれも内視鏡により組織を採取し、菌を培養後VacA、CagA共に陽性であることを確認した人を選定した。 (2)抗原のコーティング 上記(A)で調製した各抗原蛋白質(全菌体抽出物、VacA、CagA、ウレアーゼ、カタラーゼ)を、それぞれ5μg/mLの濃度でコーティングバッファー(炭酸緩衝液、pH9.6)に溶解して100μL/ウエルで96穴ELISAプレートに添加し、37℃で2時間静置した後、PBS−Tweenで3回洗浄した。 (3)ブロッキング コーティングしたプレートに、PBS−BSA(3%)溶液を200μL/ウエルで添加し、37℃で2時間静置後PBS−Tweenで3回洗浄した。 (4)サンプルの添加 前記3グループ計30名の被験者の唾液サンプルを、それぞれPBSで2倍希釈し、100μL/ウエルでプレートに添加し、37℃で1時間静置して反応を行った。 (5)標識2次抗体の添加 反応終了後のプレートを、PBS−Tweenにて3回洗浄後、上記(C)で得られた標識抗ヒトIgAニワトリIgYを100μL/ウエルでプレートに添加し、37℃で1時間静置して反応を行った。 (6)基質の添加 反応終了後のプレートをPBS−Tweenにて3回洗浄後、p−Nitrophenylphosphateタブレット(SIGMA社製)を基質溶解用緩衝液に溶解し、100μL/ウエルで添加した。アルミホイルで遮光し、37℃で30分間反応を行い、405nmで吸光度を測定した。各抗原に対する吸光度の平均値を表1に示す。 表1より、陰性者については、いずれの抗原に対する反応性も低かったが、全菌体及びウレアーゼ、カタラーゼに対しては少し反応が見られ、擬陽性となる可能性が示唆された。 また、全菌体抽出物、ウレアーゼ、カタラーゼに対しては、陽性健常者と陽性治療中で、同様の高い反応性を示した。一方、VacA及びCagAに対しては、陽性治療中で高い反応性を示したにもかかわらず、陽性健常者の反応性は陰性者と同じ程度の低い反応であることが確認できた。即ち、陽性治療中に対して強い特異性を示した。 (E)標識2次抗体の交差性評価(ELISA法) 標識2次抗体の交差性について各種標識抗体を用い、比較試験を行った。 (1)抗原のコーティング 上記(A)で得られた抗原のうち、ウレアーゼ、VacA、CagAの3種類の各抗原を5μg/mLの濃度でコーティングバッファーに溶解し、100μL/ウエルで96穴ELISAプレートに添加して37℃で2時間静置した後、PBS−Tweenで3回洗浄した。 (2)ブロッキング コーティングしたプレートにPBS−BSA(3%)溶液を200μL/ウエルで添加し、37℃で2時間静置後PBS−Tweenで3回洗浄した。 (3)サンプルの添加 上記(D)と同じ3グループの被験者から得た唾液サンプルをPBSで2倍希釈し、100μL/ウエルでプレートに添加し、37℃で1時間静置して反応を行った。 (4)標識2次抗体の添加 反応終了後のプレートをPBS−Tweenにて3回洗浄し、下記に示す3種類の標識2次抗体及び上記(C)で得られたアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgAニワトリIgYを100μL/ウエルで添加した。その後、37℃で1時間静置して反応を行った。1.アルカリフォスファターゼ標識抗ヒト分泌型IgAマウスIgG(コスモバイオ社製)2.アルカリフォスファターゼ標識抗ヒト分泌型IgAヤギIgG(コスモバイオ社製)3.アルカリフォスファターゼ標識抗ヒト分泌型IgAウサギIgG(コスモバイオ社製) (5)基質の添加 反応終了後のプレートをPBS−Tweenにて3回洗浄後、p−Nitrophenylphosphateタブレット(SIGMA社製)を基質溶解用緩衝液に溶解し、100μL/ウエルで添加した。アルミホイルで遮光し、37℃で30分間反応を行い、405nmで吸光度を測定した。その結果を表2〜4に示す。 表2〜4から、マウス由来の抗ヒト分泌型IgAマウスIgG標識抗体は、陰性者の唾液に対しても高い吸光度を示し、擬陽性が発生するという結果が得られた。また、ヤギIgG、ウサギIgGについても、ニワトリIgGと比較して陰性者に対して若干高い吸光度を示すことが確認できた。 ニワトリ由来の抗ヒトIgAニワトリIgY標識抗体は、陰性者のサンプルに対して低い反応性であり、ELISA法による診断キットの標識2次抗体として有効であることが確認できた。 (A)ラテックス標識抗原の調製 実施例1(A)で得られた抗原蛋白質5種類を用い、常法に従って標識抗原を調製した。すなわち、青色ラテックス粒子分散液300μLにPBSを3mL加え、10,000rpm、10分間遠心分離を行った。沈殿物に抗原液(5mg/mL)1mLを加え撹拌、混合後、37℃で2時間静置した。10,000rpm、10分間遠心分離を行い、沈殿にPBSを加えて再度遠心分離を行った。沈殿に1%BSA溶液を加え、37℃で1時間反応させた。その後遠心分離を行い、沈殿に1% BSA−PBS 2mLを加え懸濁し、ラテックス標識抗原5種類を調製した。 (B)イムノクロマトグラフ抗体固相化支持体の調製 ニトロセルロースシート(ワットマン社製)を幅5mm、長さ50mmに裁断した試験片の上端より20mmの位置に、実施例1(B)で得られた抗ヒトIgAニワトリIgYを線状に塗布し固定した(検出部位)。室温で2時間乾燥後、1%BSA−PBSに10分間浸漬してブロッキングを行った。また、試験片の上部5mmには、幅5mm、長さ10mmの濾紙(ワットマン社、WFワインフィルター)を吸収パッドとして付設した。 上記(A)で得られたラテックス標識全菌体抗原溶液20μLを、幅5mm、長さ5mmに切ったPVAシートに吸着させ乾燥後、上記試験片の上端から30mmの位置に点着した(検体反応部位)。また、検体反応部位の上に液体試料吸収用濾紙(ワットマン社製)を重ねた(検体滴下部)。 実施例1(A)で得られたその他の抗原(VacA、CagA、ウレアーゼ、カタラーゼ)についても同様にイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体を調製した。 (C)イムノクロマトグラフによるピロリ菌抗体の検出 上記(B)で作製したイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体(試験片)の検体滴下部に、被験者の唾液サンプルを300μL滴下し、吸収展開させ反応を開始した。検出部位に青いラインが確認できたものを(+)とし、ラインが薄いものを(±)、ラインが確認できなかったものを(−)と評価した。被験者は実施例1と同様に陽性健常者、陰性者、陽性治療中の3グループを選定した。その結果を表5〜9に示す。 表5〜9に示す結果から、陽性健常者ではウレアーゼ、カタラーゼ、全菌体抽出物に陽性反応が確認できた。特に、ウレアーゼ、全菌体抽出物には被験者ごとの差がなく、全被験者において同程度の反応性であることが確認できた。VacA、CagAに対しては反応が認められなかった。 陽性治療中の被験者では、ウレアーゼ、カタラーゼ、全菌体抽出物、VacA、CagAの5種類全ての抗原に対して陽性反応を示した。特にVacA、CagAに対しては被験者毎の差も少なくいずれの被験者も明確な陽性反応が確認できた。 一方、陰性被験者においては、カタラーゼ、全菌体抽出物に弱く反応を示す例が認められた。VacA、CagAには反応を示さなかった。 以上の結果から、ピロリ菌の毒素に対する唾液中のヒト分泌型IgAをイムノクロマト法で検出できることが確認できた。また、カタラーゼ、全菌体抽出抗原では陰性被験者においても反応が認められ擬陽性が発生する危険性が示唆された。 (A)ラテックス標識2次抗体の調製 実施例1(B)で得られた抗ヒトIgAニワトリIgYを用い、常法に従って標識抗体を調製した。すなわち、青色ラテックス粒子分散液300μLにPBSを3mL加え、10,000rpm、10分間遠心分離を行った。沈殿物に抗ヒトIgAニワトリIgY(5mg/mL)1mLを加え撹拌、混合後、37℃で2時間静置した。10,000rpm、10分間遠心分離を行い、沈殿にPBSを加え再度遠心分離を行った。沈殿に1%BSA溶液を加え、37℃で1時間反応させた。その後遠心分離を行い、沈殿に1% BSA−PBS 2mLを加え懸濁し、ラテックス標識2次抗体を調製した。 (B)イムノクロマトグラフ抗原固相化支持体の調製 ニトロセルロースシート(ワットマン社製)を、幅5mm、長さ50mmに裁断した試験片の上端より20mmの位置に、実施例1(A)で得られた全菌体抽出抗原を線状に塗布し固定した(検出部位)。室温で2時間乾燥後、1%BSA−PBSに10分間浸漬してブロッキングを行った。また、試験片の上部5mmには、幅5mm、長さ10mmの濾紙(ワットマン社、WFワインフィルター)を吸収パッドとして付設した。 上記(A)で得られたラテックス標識抗ヒトIgAニワトリIgY溶液20μLを、幅5mm、長さ5mmに切ったPVAシートに吸着させ乾燥後、上記試験片の上端から30mmの位置に点着した(検体反応部位)。また、検体反応部位の上に液体試料吸収用濾紙(ワットマン社製)を重ねた(検体滴下部)。 実施例1(A)で得られたその他の抗原(VacA、CagA、ウレアーゼ、カタラーゼ)についても同様にイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体を調製した。 (C)イムノクロマトグラフによるピロリ菌抗体の検出 上記(B)で作製したイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体(試験片)の検体滴下部に、被験者の唾液サンプルを300μL滴下し、吸収展開させ反応を開始した。検出部位に青いラインが確認できたものを(+)とし、ラインが薄いものを(±)、ラインが確認できなかったものを(−)と評価した。被験者は実施例1と同様に陽性健常者、陰性者、陽性治療中の3グループを選定した。その結果を表10〜14に示す。 表10〜14から、陽性健常者ではウレアーゼ、カタラーゼ、全菌体抽出物に対して明確な陽性反応が確認できた。特に、ウレアーゼ、全菌体抽出物には被験者ごとの差がなく全被験者において同程度の反応性であることが確認できた。VacA、CagAに対してはほとんど反応が認められなかった。 陽性治療中の被験者では、ウレアーゼ、カタラーゼ、全菌体抽出物、VacA、CagAの5種類全ての抗原に対して陽性反応を示した。特にVacA、CagAに対しては、他のグループに比べて被験者毎の差も少なく、いずれの被験者も明確な陽性反応が確認できた。 一方、陰性被験者においては、カタラーゼ、全菌体抽出物に弱く反応を示す例が認められたが、VacA、CagAには反応を示さなかった。 以上の結果から、ピロリ菌の毒素に対する唾液中のIgAをイムノクロマト法で検出できることが確認できた。また、カタラーゼ、全菌体抽出抗原では陰性被験者においても反応が認められ、弱いながらも擬陽性が発生する危険性が示唆された。 (D)標識2次抗体の交差性の評価 標識2次抗体の交差性について各種標識抗体を用い、比較試験を行った。 上記(A)で得られたラテックス標識抗ヒトIgAニワトリIgY及び下記の2種類の標識2次抗体を用い上記(B)と同様の方法でイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体を調製した。 検出部位に固定化した抗原は全菌体抽出物、VacAの2種類とした。1.青色ラテックス標識抗ヒト分泌型IgAマウスIgG(コスモバイオ社製)2.青色ラテックス標識抗ヒト分泌型IgAウサギIgG(コスモバイオ社製) その結果を表15〜20に示す。 表15〜20に示す結果から、マウスIgG、ウサギIgGでは陰性者の唾液に対しても高い反応性を示し、高い頻度で擬陽性が発生するという結果が得られた。 ニワトリ由来の抗ヒトIgAニワトリIgY標識抗体は、陰性者のサンプルに対し、低い反応性であり、イムノクロマト法による診断キットの標識2次抗体として有効であることが確認できた。 (A)抗原(NapA、FliD、UreA、UreBタンパク)の調製 (1)NapAタンパクを以下のようにして調製した。 napA遺伝子(ヘリコバクター・ピロリ由来、NCBI GeneBank/NC_000921、GeneID:889403、Locus tag:jhp0228)の塩基配列を元に、プライマー(フォワード:26mer、リバース:25mer)を設計し、これを用いて常法に従ってPCRを行い、NapAタンパク(144アミノ酸)をコードした塩基配列を含み、かつ両末端に制限酵素(BspHI、XhoI)認識配列を有するDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を、市販のベクター(商品名「pETBlue−1」、Novagen社製)に組み込み、大腸菌を用いてNapAタンパクの組み替え体(His−tag融合タンパク)を作製した。 (2)FliDタンパクを以下のようにして調製した。 fliD遺伝子(ヘリコバクター・ピロリ由来、NCBI GeneBank/NC_000921、GeneID:890207、Locus tag:jhp0689)の塩基配列を元に、FliDタンパクの一部(#1〜#336アミノ酸)をコードした塩基配列を増幅するためのプライマー(フォワード:29mer、リバース:30mer)を設計し、これを用いて常法に従ってPCRを行い、FliDタンパクの一部(#1〜#336アミノ酸)をコードした塩基配列を含み、かつ両末端に制限酵素(BspHI、XhoI)認識配列を有するDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を、常法に従って市販のベクター(商品名「pETBlue−1」、Novagen社製)に組み込み、大腸菌を用いて、FliDタンパクの組み替え体(His−tag融合タンパク、以下「FliD1」という)を作製した。 上記と同様にして、FliDタンパクの一部(#281〜693アミノ酸)をコードした塩基配列を増幅するためのプライマー(フォワード:29mer、リバース:30mer)を設計し、これを用いて常法に従ってPCRを行い、FliDタンパクの一部(#281〜693アミノ酸)をコードした塩基配列を含み、かつ両末端に制限酵素(BspHI、XhoI)認識配列を有するDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を、常法に従って市販のベクター(商品名「pETBlue−1」、Novagen社製)に組み込み、大腸菌を用いて、FliDタンパクの組み替え体(His−tag融合タンパク、以下「FliD2」という)を作製した。 (3)UreA、UreBタンパクを以下のようにして調製した。 ureA遺伝子(ヘリコバクター・ピロリ由来、NCBI GeneBank/NC_000921、GeneID:890414、Locus tag:jhp0068)の塩基配列を元に、プライマー(フォワード:26mer、リバース:32mer)を設計し、これを用いて常法に従ってPCRを行い、UreAタンパク(244アミノ酸)をコードした塩基配列を含み、かつ両末端に制限酵素(BspHI、XhoI)認識配列を有するDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を、市販のベクター(商品名「pETBlue−1」、Novagen社製)に組み込み、大腸菌を用いて、UreAタンパクの組み替え体(His−tag融合タンパク)を作製した。 ureB遺伝子(ヘリコバクター・ピロリ由来、NCBI GeneBank/NC_000921、GeneID:890410、Locustag:jhp0067)の塩基配列を元に、プライマー(フォワード:30mer、リバース:27mer)を設計し、これを用いて常法に従ってPCRを行い、UreBタンパク(569アミノ酸)をコードした塩基配列を含み、かつ両末端に制限酵素(BspHI、XhoI)認識配列を有するDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を、市販のベクター(商品名「pETBlue−1」、Novagen社製)に組み込み、大腸菌を用いて、UreBタンパクの組み替え体(His−tag融合タンパク質)を作製した。 上記(1)〜(3)で得られた各抗原タンパクは、アフィニティーカラム(商品名「His trap FFカラム」、GEHealthcare Bio-Sciences社製)を用いて精製した。 (B)ELISA法による唾液中のピロリ菌構成タンパク質に対する抗体(IgA)の検討 (1)被験者 ヒトボランティア(健常者19名)について、尿素呼気試験、血液検査(血中抗ピロリ抗体)、便検査(便中ピロリ菌抗原)等の既存の検査方法により、ピロリ菌の感染の有無を調べた。その結果、ピロリ菌陽性の者が5名、陰性の者14名であった。 (2)抗原のコーティング 上記(A)で調製した各抗原タンパク(NapA、FliD1、FliD2、UreA、UreB)を、それぞれ20μg/mLの濃度でコーティングバッファー(0.05M炭酸緩衝液、pH8.5)に溶解して100μL/ウエルで96穴ELISAプレートに添加し、4℃で一晩静置した後、PBS−Tweenで3回洗浄した。 (3)ブロッキング コーティングしたプレートに、ブロッキング液(2% BSA、0.5%カゼイン精製物(商品名「NZcase」、和光純薬工業株式会社製)、0.1%スキムミルク)を200μL/ウエルで添加し、37℃で2時間静置後、PBS−Tweenで3回洗浄した。 (4)サンプルの添加 被験者の唾液サンプルを、それぞれ1% BSA−TBSで5〜135倍(あるいは10〜80倍)に希釈し、100μL/ウエルでプレートに添加して37℃で1時間静置して反応を行った。 (5)標識2次抗体の添加 反応終了後のプレートをPBS−Tweenにて3回洗浄後、1%BSA、0.02% Tween20に溶解したHRP標識抗ヒト分泌型IgAヤギIgG(Bethyl社製)を100μL/ウエルでプレートに添加し、37℃で1時間静置して反応を行った。 (6)基質の添加・測定 反応終了後のプレートをPBS−Tweenにて3回洗浄後、TMB(tetramethylbenzidin)溶液(0.2g/L TMB、0.01% H2O2/クエン酸緩衝液)を、100μL/ウエルで添加した。アルミホイルで遮光して37℃で20分間反応を行い、TMBと等量の2NH2SO4を添加して反応を停止して吸光度(450nm)を測定し、各抗原タンパクにおいて、ピロリ菌陽性群と陰性群の平均値を求めた。その結果を図5〜9に示す。 図5〜8から、ピロリ菌陽性群は陰性群に比べて高い吸光度を示し、NapA、FliD、UreAタンパクに対する抗体(唾液IgA)を検出することにより、ピロリ菌の感染の有無が判別できることが示唆された。特にNapAはピロリ菌が分泌する毒素タンパクの一つであり、NapAタンパクに対する抗体(唾液IgA)を検出することにより、有毒株であるか否かを判別できることが示唆された。 一方、図9に示すように、今回の試験ではUreBに対する抗体(唾液IgA)については、ピロリ菌陽性群と陰性群との間に明確な差は認められなかった。 本発明のヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法及び診断キットは、ヘリコバクター・ピロリ感染の有無だけでなく、ピロリ菌が有毒株であるか否かを、簡便、迅速且つ正確に診断することができるので、医療の現場での検査や診断に好適である。検体反応部位に、標識されたヘリコバクター・ピロリ特異抗原を有し、検出部位に、ヒト抗体に対する2次抗体が固定化されたイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体の一実施例を示す図である。図1に示されたイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体の縦断面を示す模式図である。検体反応部位に、標識されたヒト抗体に対する2次抗体を有し、検出部位に、ヘリコバクター・ピロリ特異抗原が固定化されたイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体の一実施例を示す図である。図3に示されたイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体の縦断面を示す模式図である。ピロリ菌陽性群及び陰性群におけるNapAタンパクに対する抗体(唾液IgA)をELISA法により検出した結果を示す図である。ピロリ菌陽性群及び陰性群におけるFliD1タンパクに対する抗体(唾液IgA)をELISA法により検出した結果を示す図である。ピロリ菌陽性群及び陰性群におけるUreAタンパクに対する抗体(唾液IgA)をELISA法により検出した結果を示す図である。ピロリ菌陽性群及び陰性群におけるFliD2タンパクに対する抗体(唾液IgA)をELISA法により検出した結果を示す図である。ピロリ菌陽性群及び陰性群におけるUreBタンパクに対する抗体(唾液IgA)をELISA法により検出した結果を示す図である。符号の説明1.ニトロセルロースシート2、11.PVAシート3、16.検出部位4.吸収パッド5.試料吸収用濾紙6、15.検体反応部位10.イムノクロマトグラフ抗体固相化支持体20.イムノクロマトグラフ抗原固相化支持体 唾液又は尿中に含まれるヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)特異抗原に対するヒト抗体を測定することを特徴とするヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法。 前記ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)特異抗原に対するヒト抗体として、 (1)ウレアーゼ及び/又は鞭毛タンパクに対する抗体と、 (2)空胞化毒素(VacA)、毒素随伴タンパク(CagA)及び好中球活性化タンパク(NapA)から選ばれた少なくとも1種に対する抗体を測定する請求項1記載のヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法。 前記ヒト抗体が、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンM(IgM)及び分泌型イムノグロブリンA(分泌型IgA)から選ばれたいずれか1種である請求項1又は2記載のヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法。 請求項1〜3のいずれか一つに記載されたヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法に用いられる診断キットであって、少なくとも、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)特異抗原を固定化した担体と、ヒト抗体に対する標識2次抗体とを含むことを特徴とするヘリコバクター・ピロリ感染診断キット。 前記ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)特異抗原が、 (1)ウレアーゼ及び/又は鞭毛タンパクと、 (2)空胞化毒素(VacA)、毒素随伴タンパク(CagA)及び好中球活性化タンパク(NapA)から選ばれた少なくとも1種であり、 前記ヒト抗体が、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンM(IgM)及び分泌型イムノグロブリンA(分泌型IgA)から選ばれたいずれか1種である請求項4記載のヘリコバクター・ピロリ感染診断キット。 前記ヒト抗体に対する標識2次抗体が、鶏卵抗体(IgY)である請求項4又は5記載のヘリコバクター・ピロリ感染診断キット。 前記ヒト抗体に対する標識2次抗体を、固相酵素免疫測定法(ELISA)を用いて検出する請求項4〜6のいずれか一つに記載のヘリコバクター・ピロリ感染診断キット。 請求項1〜3のいずれか一つに記載されたヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法に用いられる診断キットであって、クロマトグラフ媒体上に、少なくとも検体反応部位と検出部位とを有し、前記検体反応部位には標識されたヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)特異抗原を有しており、前記検出部位にはヒト抗体に対する2次抗体が固定化されてなるイムノクロマトグラフ抗体固相化支持体からなることを特徴とするヘリコバクター・ピロリ感染診断キット。 請求項1〜3のいずれか一つに記載されたヘリコバクター・ピロリ感染の診断方法に用いられる診断キットであって、クロマトグラフ媒体上に、少なくとも検体反応部位と検出部位とを有し、前記検体反応部位に標識されたヒト抗体に対する2次抗体を有しており、前記検出部位にヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)特異抗原が固定化されてなるイムノクロマトグラフ抗原固相化支持体からなることを特徴とするヘリコバクター・ピロリ感染診断キット。 前記ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)特異抗原が、 (1)ウレアーゼ及び/又は鞭毛タンパクと、 (2)空胞化毒素(VacA)、毒素随伴タンパク(CagA)及び好中球活性化タンパク(NapA)から選ばれた少なくとも1種であり、 前記ヒト抗体が、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンM(IgM)、分泌型イムノグロブリンA(分泌型IgA)から選ばれたいずれか1種である請求項9又は10記載のヘリコバクター・ピロリ感染診断キット。 前記ヒト抗体に対する2次抗体が鶏卵抗体(IgY)である請求項8〜10のいずれか一つに記載のヘリコバクター・ピロリ感染診断キット。 【課題】胃の組織や細胞、胃液等を採取することなく、ピロリ菌の感染の有無、及び該ピロリ菌が有毒株であるか否かを、簡便、迅速且つ正確に診断することができる感度の高い診断方法及び診断キットを提供する。【解決手段】 唾液又は尿中に含まれるヘリコバクター・ピロリ特異抗原に対するヒト抗体を測定することにより、ピロリ菌感染の有無、及び該ピロリ菌が有毒株であるか否かを診断する。前記ヘリコバクター・ピロリ特異抗原に対するヒト抗体として、(1)ウレアーゼ及び/又は鞭毛タンパクに対する抗体と、(2)空胞化毒素(VacA)、毒素随伴タンパク(CagA)及び好中球活性化タンパク(NapA)から選ばれた少なくとも1種に対する抗体を測定することが好ましい。【選択図】 なし