タイトル: | 特許公報(B2)_光解裂性環状化合物 |
出願番号: | 2006048690 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07D 267/22,G03F 7/004 |
陶山 寛志 白井 正充 JP 4936512 特許公報(B2) 20120302 2006048690 20060224 光解裂性環状化合物 公立大学法人大阪府立大学 505127721 野河 信太郎 100065248 陶山 寛志 白井 正充 20120523 C07D 267/22 20060101AFI20120426BHJP G03F 7/004 20060101ALI20120426BHJP JPC07D267/22G03F7/004 503B C07D 267/22 G03F 7/004 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開平10−139640(JP,A) 特開昭57−106661(JP,A) 特表2002−514179(JP,A) 米国特許第03152145(US,A) 西独国特許出願公開第01695907(DE,A) 英国特許出願公開第01025904(GB,A) 日本化学会誌,1984年,n.1,192−199 European Polymer J.,1970年,6,933−943 J. Photochem. Photobiol. A: Chem.,2002年,151,27−37 Afinidad,2004年,61,304−316 J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1,1991年,3153−3157 Helvetica Chimica Acta,1976年,59,2499−2502 Chem Ber.,1971年,104,1512−1517 Chem Ber.,1971年,104,1507−1511 2 2007223968 20070906 7 20090223 早川 裕之 本発明は、光解裂部位を環状構造内に含有する光解裂性化合物に関するものである。さらに詳しくは、解裂部位が、光で解裂して分子内にアミノ基を生成することを特徴とする環状化合物に関し、例えば光反応用アミン発生剤として好適に用いることができる。 光アミン発生剤は光照射によってアミンを生成する化合物であり、生成したアミンは高分子の合成や架橋、分解に使用することができるため、UV硬化材料やフォトレジストへの応用が期待されている。 しかし光酸発生剤に比べ光アミン発生剤は種類が少なく、現状では分子設計の自由度があまりない。アミンの種類や発生効率だけでなく、溶解性や耐熱性など実用上に向けた観点も含め、現在研究が進められているところである。 光アミン発生剤の一つに、O−アシルオキシムがある。これまでの研究で、O−アシルオキシム中のアシルオキシイミノ部位は光照射でO−N結合が解裂し、脱炭酸を経て炭素ラジカルとイミノラジカルが生成し、これらのラジカルがカップリングすることでイミンが生成し、このイミンが速やかに加水分解し、第一級アミンとケトンになることが知られている。ここで、O−N結合は比較的容易に解裂するためO−アシルオキシムは光反応性が高く、熱分解温度も高い耐熱性にすぐれた光アミン発生剤である。 また、O−カルバモイルオキシムも光アミン発生剤として知られている。O−アシルオキシムと同様に、O−カルバモイルオキシム中のカルバモイルオキシイミノ部位のO−N結合が光照射で解裂し、脱炭酸を経てアミノラジカルとイミノラジカルが生成し、これらのラジカルがカップリングすることでヒドラゾンが生成し、このヒドラゾンが加水分解によりヒドラジンとケトンになることが知られている。また、アミノラジカルが反応系中の水素原子を引き抜くことで第一級アミンを生成することも知られている。O−カルバモイルオキシムも光反応性の高いすぐれた光アミン発生剤である。 これらの反応機構は下記の非特許文献1に詳しく記されている。J.Lalevee,X.Allonas,J.P.Fouassier,H.Tachi,A.Izumitani,M.Shirai and M.Tsunooka,J.Photochem.Photobiol.A:Chem.,Vol.151,27(2002). しかし、O−アシルオキシムやO−カルバモイルオキシムからアミンと共に生成するケトンは、ネガ型フォトレジストのプロセスにおいては、現像液に溶出し膜減りの要因となってしまう。また、UV硬化材料に適用する場合は硬化物からケトンが徐々にしみだす可能性がある。また、ケトンの揮発性が高い場合、臭気を伴ったり、フォトリソグラフィーの光学系を汚染させる可能性がある。このような問題点のため、ケトンが副生成物として生成すると、使用される分野が限定される場合がある。 したがって本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は副生成物として遊離するケトンが生成しない光アミン発生剤を提供することにある。 上記目的を達成するために、通常の光アミン発生剤においては光解裂反応で生成するアミンとケトンを、本発明者らはあらかじめ共有結合でつないでおき、かかる光解裂部位が環状構造内に含まれるよう分子設計するものである。 本発明における光解裂性環状化合物においては、光照射で励起され結合の解裂をおこなう光解裂部位を含有する。その光解裂部位としては、アシルオキシイミノ部位、またはカルバモイルオキシイミノ部位である。このように光解裂部位が環状構造に含まれることで、光解裂反応で生成するケトンがアミンと共有結合で結ばれており、生成するケトンの溶出や揮発を抑制できることを見出し、本発明に至った。 すなわち本発明は、光解裂部位を環状構造内に含有する化合物であり、光解裂部位が、光で解裂して分子内にアミノ基を生成することを特徴とする、アシルオキシイミノ部位を含有する式1で表される環状化合物:あるいはカルバモイルオキシイミノ部位を含有する式2:で表される環状化合物(但し、式中、Xは―(CH2)n―基、脂環式基、アリーレン基、―(CH2)n―基と脂環式基の結合したもの、―(CH2)n―基とアリーレン基の結合したものから選択され、nは2〜7の整数、R1は芳香族基または置換アルキル基である)に関し、また式1あるいは式2で表される環状化合物を主成分とする、光反応用アミン発生剤を提供する。 本発明の、光解裂部位を環状構造内に含有する化合物を主成分として含有する、光反応用アミン発生剤を使用したUV硬化剤やフォトレジストによれば、生成するケトンはアミンと分子内で結びつけられているため、臭気の発生やレジストの膜減りなどの不具合を起こさない。 更に、本発明における環状化合物を主成分とする光反応用アミン発生剤を用いると、アミン生成の途中過程であるラジカル再カップリングによるイミンの生成効率を、従来公知の非環状化合物より高くすることも可能になる。 本発明の、光解裂部位を環状構造内に含有する環状化合物は、環員数が7〜12の環状O−アシルオキシムおよび環員数に制限のないO−カルバモイルオキシムが特に好適に用いられ、これらはUV硬化剤やフォトレジスト用光反応用アミン発生剤の主成分として調整される。光反応用アミン発生剤の調整法は、従来公知の方法が用いられる。 本発明において環状化合物とは、共有結合で原子が環状に結ばれたものである。本発明では環部分がその一部に光解裂部位を含むものであり、光解裂部位以外の構成成分としては脂肪族基、脂環式基、アリーレン基などがある。アリーレン基には芳香環、複素環が含まれる。 光解裂部位と発色団を結合させることで、感光域を調整することもできる。発色団としては、芳香環、置換芳香環、ケトンなどがある。これらは、環状構造の中に組み込んでも良いし、組み込まなくても良い。 また、分子内に発色団を結合させる替わりに、増感剤を系中に加えることもできる。O−アシルオキシムやO−カルバモイルオキシムの増感剤としては、特に三重項増感剤が有効であり、特にベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーケトン、ケトビスクマリン及びその誘導体が有効である。 O−アシルオキシムの場合、環員数は、安定な化合物としては5員環以上のものが可能であるが、環員数が6以下ではラジカルカップリングが進行しにくく、光反応によって結合の解裂が起こってもアミンを生成しにくく光アミン発生剤としては好ましくない。一方、環員数があまり大きすぎても、生成したラジカル同士が近づく確率が減少するため、ラジカルカップリングが進行しにくく、好ましくない。また、環員数が12より大きな化合物は原料の入手や合成が困難であり、これらの点からも好ましくない。 O−カルバモイルオキシムの場合は、水素引き抜きにより第一級アミンを生成するので、環員数に上記のような制限は無い。本発明の光反応用アミン発生剤は、上記の式1または式2の化合物自体で構成してもよく、また適当な不活性担体または賦形剤とともに製剤化されてもよい。 以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明は、この実施例によって何ら制限されるものではない。実施例1[環状O−アシルオキシムの合成](実験例1)5−ベンゾイルペンタン酸(東京化成)7.5g (36.3mol)、ヒドロキシルアンモニウムクロライド(和光純薬)3.75g、メタノール30mlをフラスコに入れ、ここにKOH5.6gを含む水溶液15mlを加えた。一旦加熱したあと室温に冷却し、氷浴下1.2N塩酸水溶液で中和した。析出した白色固体をトルエンで再結晶し、5.40g(24.4mmol)の6−ヒドロキシイミノ−6−フェニルヘプタン酸を無色結晶として得た。収率:67%融点:116〜116.5℃IR(KBr):1704cm-1(C=O)、2800−3500cm-1(OH)(実験例2) フラスコ中に3.06g(13.6mmol)の6−ヒドロキシイミノ−6−フェニルヘキサン酸とピリジン45ml、ジエチルエーテル60mlを入れ、−20〜−30℃に保ちながら塩化チオニル1.20ml(16.4mmol)を含むジエチルエーテル120mlを滴下した。室温で一晩撹拌した後、溶媒をエバポレーターで留去した。析出物に50mlのクロロホルムを加え、このクロロホルム溶液を1.2N HCl水溶液、飽和NaHCO3水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、クロロホルムを留去し、得られた淡黄色固体をカラムクロマトグラフィーで分離すると、式3:1.16g(5.71mmol)の8H−1,2−オキサゾシン-8-オン−4,5,6,7−テトラヒドロ−3−フェニルが得られた。再結晶はシクロヘキサンから行った。収率:41 %融点:135.5−136.5 ℃熱分解温度(TGA):214 ℃UV(CH3CN): λmax248nm(ε1.4×104L・mol-1・cm-1)IR(KBr):1755 cm-1(C=O)、1125cm-1(C−O−C)元素分析:計算値 C12H13NO2; C: 70.92,H:6.45,N:6.89. 実測値 C:71.19,H:6.53,N:6.82.[環状O−アシルオキシムの光反応性の評価](実験例3)ポリメタクリロニトリルと8H−1,2−オキサゾシン−8−オン−4,5,6,7−テトラヒドロ−3−フェニルをシクロヘキサノンに溶解しシリコン基板または石英板上にスピンコートした。この基板をホットプレート上80℃で5分間プレベークし、膜厚約2.0μmの薄膜を得た。できた薄膜を低圧水銀灯を用いて光照射し、スペクトル変化を測定した。赤外スペクトルのC=O伸縮バンドから光分解率を算出し、既に知られている光解裂性環状化合物である、式4:O−フェニルアセチルアセトフェノンオキシム(PaApO)、O−フェニルアセチル−2−アセトナフトンオキシム(PaAnO)と比較した(図1)。 図1では、環状化合物8H−1,2−オキサゾシン−8−オン−4,5,6,7−テトラヒドロ−3−フェニルの光反応性は非環状のPaApOより高かった。また、ナフチル基を有するPaAnOより低かった。 なお、前記ポリメタクリロニトリル中における光照射の際、8H−1,2−オキサゾシン−8−オン−4,5,6,7−テトラヒドロ−3−フェニルを含む膜を光照射しても膜からの臭気は特に無かったが、PaApOを含む膜を光照射するとアセトフェノン特有の臭気が感じられた。[架橋反応促進の評価](実験例4) ポリグリシジルメタクリレート(数平均分子量17,000)とグリシジル基に対して5モル%の光アミン発生剤をシクロヘキサノンに溶解させ、シリコン基板上にスピンコートした。この基板を80℃で5分間プレベークすると膜厚は0.3μmの薄膜が得られた。この薄膜を低圧水銀灯で光照射し、その後120℃で5分間ホットプレートで加熱した。加熱後の膜をテトラヒドロフラン(THF)に室温で10分間浸漬し溶解性変化を調べた。THF浸漬前後の膜厚比を不溶化率とした(図2)。 図2から、8H−1,2−オキサゾシン−8−オン−4,5,6,7−テトラヒドロ−3−フェニルを含む膜の方がPaAnOを含む膜より、はるかに少量の光照射で膜が不溶化することがわかった。本発明の環状光アミン発生剤と非環状の光アミン発生剤の光反応性の比較を表した図である。ポリグリシジルメタクリラートの光・熱不溶化における本発明の環状光アミン発生剤と非環状の光アミン発生剤の添加効果を表した図である。 式1:(但し、式中、Xは―(CH2)n―基であり、nは3〜7の整数、R1は芳香族基または置換アルキル基である)で示される光解裂性環状化合物。 請求項1に記載の環状化合物を主成分として含有することからなる、光反応用アミン発生剤。