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タイトル:特許公報(B2)_ヒドロキシアルキルカルボキシレート製造用触媒およびそれを用いたヒドロキシアルキルカルボキシレートの製造方法
出願番号:2006046759
年次:2011
IPC分類:B01J 31/22,C07C 67/26,C07C 69/54,C07B 61/00


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安齋 竜一 伊藤 芳 JP 4676901 特許公報(B2) 20110204 2006046759 20060223 ヒドロキシアルキルカルボキシレート製造用触媒およびそれを用いたヒドロキシアルキルカルボキシレートの製造方法 三菱レイヨン株式会社 000006035 宮崎 昭夫 100123788 石橋 政幸 100106138 緒方 雅昭 100127454 安齋 竜一 伊藤 芳 20110427 B01J 31/22 20060101AFI20110407BHJP C07C 67/26 20060101ALI20110407BHJP C07C 69/54 20060101ALI20110407BHJP C07B 61/00 20060101ALI20110407BHJP JPB01J31/22 ZC07C67/26C07C69/54 ZC07B61/00 300 B01J 21/00−38/74 特開昭57−156437(JP,A) 特開平1−96149(JP,A) 2 2007222781 20070906 10 20090114 岡田 隆介 本発明はカルボン酸とアルキレンオキサイドとの反応によりヒドロキシアルキルカルボキシレートの製造方法に関するものである。特に、新規な触媒の存在下に(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとの反応によりヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法に関する。また、本発明は、ヒドロキシアルキルカルボキシレート製造用の新規な触媒に関する。 ヒドロキシアルキルカルボキシレートは、触媒を使用し、カルボン酸とアルキレンオキサイドを反応させて製造される。 このとき使用される触媒としては、酢酸クロムなどのクロム化合物、メタクリル酸鉄などの鉄化合物、トリアルキルアミン類、ピリジン等の環状アミン類およびその4級塩などの含窒素化合物、スルフィド、スルホニウム塩などの含硫黄化合物、アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジニウム基などのアニオン交換基をもつアニオン交換樹脂などが使用されている。 アクリル酸又はメタクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させて2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法として、例えば、特許文献1にはクロム化合物を触媒として用いる製法が記載されている。しかしながら、クロム化合物は、毒性が懸念されており、クロムを含まない触媒が求められている。 また特許文献2には、触媒として芳香族カルボン酸の第二鉄塩を用いる製造方法が記載されている。鉄化合物は、有害性に関する問題は低いが、活性が低いため触媒の使用量が多くなり、廃棄触媒の処理量が多くなるという問題がある。 また、特許文献3には、触媒としてアミン類およびまたは第4級アンモニウム塩を用いる製造法が記載されている。しかしながら、これらの触媒は鉄化合物よりさらに活性が低く、仕込み量が多くなりすぎるため、工業的には実用的でない。さらに、これらの触媒は、クロム化合物に比べ、ヒドロキシアルキルカルボキシレート以外の副生成物が生成しやすい。 特許文献4には、鉄および/またはクロムを中心金属とし、下記式[FexCr3-x(μ3−O)(μ−MAA)6L3]Xa(式中、MAAはメタクリル酸カルボキシラートアニオン、Lは単座配位子、Xはハロゲンアニオン、ClO4、NO3、SO4およびメタクリル酸カルボキシラトの中から選ばれる1種以上のアニオンを表し、xは0、1、2または3、aは0ないし1の数である。)で表されるメタクリル酸含有三核錯体が開示されている。このメタクリル酸含有三核錯体は有機溶剤に可溶で、ポリマーの改質剤として用いて既存樹脂の特性の向上を図れることが記載されている。しかし、カルボン酸とアルキレンオキサイドの付加反応を促進する触媒としての機能は全く知られていない。特開昭57−42657号公報特開昭56−161349号公報特開昭56−18938号公報特開平7−17896号公報 本発明は、上述した従来技術の課題を解決するものであり、その目的は、毒性が懸念されているクロムを含まない高活性な触媒を提供すること、およびその触媒を使用したヒドロキシアルキルカルボキシレートの製造方法を提供することにある。 本発明者らは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造触媒として、上記課題を解決する触媒として、上記特許文献4に開示される鉄を中心金属とする三核錯体を使用したところ、高活性を示すことを見いだした。さらに、中心金属として鉄の一部を他の金属原子で置換するとさらに活性の向上が得られることを見いだした。すなわち本発明は、以下の構成よりなるものである。 (1)以下の式(1)で表されるヒドロキシアルキルカルボキシレート製造用触媒。[FexM3-x(μ3−O)(μ−A)6L3]Xa ・・・ (1)(式中、Mは鉄およびクロムを除く一種以上の金属原子、Aは不飽和結合またはフェニル基を有する炭素数3〜12のカルボキシラートアニオン、Lは単座配位子、Xはハロゲンアニオン、ClO4、NO3、SO4および不飽和結合またはフェニル基を有する炭素数3〜12のカルボキシラートアニオンの中から選ばれる1種以上のアニオンを表し、xは2≦x≦3を満たす数、aは0ないし1の数である。) (2)上記の触媒の存在下で炭素数2〜12のカルボン酸と炭素数2〜6のアルキレンオキサイドとを反応させることを特徴とするヒドロキシアルキルカルボキシレートの製造方法。 本発明の触媒はクロムを含まず、活性が高い。また、本発明の触媒を用いる製造方法により、高収率でヒドロキシアルキルカルボキシレートを製造することができる。また、触媒中に鉄以外の第二金属を含有させることで収率をさらに向上させることができる。 1.触媒の製造 本発明で使用される触媒は、金属原料、溶媒および不飽和結合またはフェニル基を有する炭素数3〜12のカルボン酸を混合して、pHを調整して生成する沈殿として取得できる、前記式(1)で表される三核錯体である。 本発明においては、金属原料として、鉄化合物を必須原料として用いる。鉄化合物としては、硝酸第2鉄・9水和物、硝酸第2鉄・6水和物等の硝酸鉄、塩化鉄、臭化鉄等のハロゲン化鉄、水酸化鉄、硫酸鉄または過塩素酸鉄等を挙げることができる。 上記式(1)中、Aで表される不飽和結合またはフェニル基を有する炭素数3〜12のカルボキシラートアニオンは、不飽和結合またはフェニル基を有する炭素数3〜12のカルボン酸に由来するものである。カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、プロピオール酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、メチル安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フェニル酢酸、フェニルアクリル酸などがあげられる。中でも、(メタ)アクリル酸として総称されるアクリル酸およびメタクリル酸が錯体の安定性の点から最も好ましい。 単座配位子Lとしては、水溶液から調製した場合は水分子であるが、他の一般的に使用される単座配位子を導入することもできる。例えば、ピリジンやトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチル−ジエチルアミン、N−エチル−ジメチルアミン、N−エチル−ジアミルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジエチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミンなどのトリアルキルアミン、ハイドロキノンなどのフェノール類またはアルコール類を配位子とすることもできる。 電荷を中和するための対アニオンXとしては、金属原料に含まれるアニオンがそのまま用いられるが、仕込み原料におけるカルボン酸/金属原料のモル比を高くすることにより、対アニオンXを不飽和結合またはフェニル基を有する炭素数3〜12のカルボキシラートアニオンとすることもできる。 本発明の三核錯体の合成においては、反応系のpHを厳密に4〜7の範囲に制御することが好ましい。すなわち、pHが4未満の場合、三核錯体の沈澱が得られ難くなり、pHが7を超える場合は、沈澱は得られてもそれはカルボン酸の金属塩であり、三核錯体ではなくなる場合がある。三核錯体の結晶の大きさの点からpHは6以下が好ましく、5.5以下がより好ましい。錯体形成時の反応温度は90℃以下とすることが好ましい。90℃を超える反応温度の場合、pHが4〜7の範囲にあっても三核錯体は生成せず、カルボン酸鉄塩が生成してしまう場合がある。 得られた三核錯体は、遠心分離やろ過によって回収し、必要により水洗してから使用することが望ましい。錯体を単離することにより、不完全な錯体や未反応金属を除去出来るので、これらが原因である副反応を抑制することが可能である。 また、風乾または0℃〜40℃での減圧乾燥を行うことにより、錯体構造が安定化し、副反応がさらに抑制される。 また、金属原料として、前記鉄化合物に加えて、鉄およびクロム以外の金属(以降、第二金属ともいう)を含む第二金属化合物を用いることが好ましい。これによって、鉄以外の中心金属Mを有する錯体の製造が可能となる。すなわち、鉄化合物と金属原子としてMを含む第二金属化合物とメタクリル酸および水を混合し、pHを4〜7に調整して生成する沈殿として得られる三核錯体が好ましい。第二金属化合物を添加することにより助触媒作用が生じ、活性が高くなると推察している。 第二金属化合物を用いて導入される金属原子Mとしては、鉄およびクロム以外の金属原子が挙げられるが、例えば、2族(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)、3a族(スカンジウム、イットリウム)、4a族(チタン、ジルコニウム、ハフニウム)、5a族(バナジウム、ニオブ、タンタル)、6a族(モリブデン、タングステン)、7a族(マンガン)、8族(コバルト、ニッケル)、1a族(銅)、2a族(亜鉛)、3族(アルミニウム)、4族(スズ)、5族(アンチモン、ビスマス)、6族(テルル)、ランタノイド系列(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム)からなる群から選ばれる1種以上の金属が好ましい。 特に、マグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、ランタン、マンガン、ストロンチウム、チタン、セリウムを含有させると、活性をより向上させることができる。 これら金属原子M導入のための出発原料となる第二金属化合物としては、それら金属のハロゲン化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩または過塩素酸塩のいずれをも用いることができる。以上の金属原子Mの含有量は鉄原子に対し0.001倍モル以上(すなわち、式(1)におけるxが2.997以下)0.5倍モル以下(すなわち、式(1)におけるxが2.0以上)が好ましい。活性向上効果の点から0.005倍モル以上(x≦2.985)が好ましく、0.1倍モル以上(x≦2.7)がより好ましい。錯体の安定性の点から0.3倍モル以下(x≧2.3)が好ましく、0.2倍モル以下(x≧2.5)がより好ましい。 本発明の三核錯体の生成確認は、可視部の吸収スペクトル、IRスペクトルまたはFAB−MSに基づいて行う。例えば、メタクリル酸を使用し、鉄のみを含む三核錯体が生成された場合、460nmおよび527nmに鉄のd軌道の電子遷移による吸収が観測される。 IRスペクトルにおいても、メタクリル酸カルボキシラト(MAA)の伸縮振動の吸収は、塩構造の場合、1524および1421cm-1にあるが、鉄の錯体形成に伴いC=Oの非対称伸縮振動が1570〜1600cm-1にシフトする。そしてカルボキシラトの非対称および対称のC=O伸縮振動の波数差Δνが150cm-1以上に拡大する。これらは架橋したカルボキシラトに特徴的な現象であって、三核錯体の生成を示唆するものである。三核錯体の場合、そのFAB−MSにはFe3O(MAA)3による質量439のベースピークの他に、524:Fe3O(MAA)4、609:Fe3O(MAA)5、694:Fe3O(MAA)6のピークが観測される。 2.ヒドロキシアルキルカルボキシレートの製造 前記式(1)で表される三核錯体を触媒として、炭素数2〜12のカルボン酸と炭素数2〜6のアルキレンオキサイドとを反応させてヒドロキシアルキルカルボキシレートを製造する。本発明に使用される炭素数2〜12のカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロピオール酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フェニル酢酸、フェニルアクリル酸などが挙げられる。三核錯体と配位子が交換され、三核錯体の配位子がアルキレンオキサイドと反応することによる不純物生成を避けるために、炭素数2〜12のカルボン酸と三核錯体に含まれるカルボン酸は同一であることが好ましい。特に本発明の三核錯体は、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドの付加反応を進行させるのに有効である。 反応に用いる炭素数2〜12のカルボン酸は必ずしも高純度のものを使用する必要はないが、98%程度以上の純度を有するものが好ましい。 前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、および2,3−ブチレンオキサイドなどが挙げられる。反応性および目的物の選択性の点から、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドがより好ましい。 炭素数2〜12のカルボン酸と炭素数2〜6のアルキレンオキサイドとの反応における原料の仕込み量は特に限定されないが、反応速度と経済性の兼ね合いから、カルボン酸に対してアルキレンオキサイドが0.5〜10倍モルであることが好ましい。収率の点から、0.7倍モル以上が好ましく、0.8倍モル以上がさらに好ましい。安全性の点から5倍モル以下が好ましく、3倍モル以下がより好ましい。 本発明で使用する式(1)で表される触媒の使用量は特に限定されないが、原料の炭素数2〜12のカルボン酸に対して、0.00001〜0.1倍モルの範囲で用いることが好ましい。反応時間の観点から触媒は0.0001倍モル以上が好ましく、0.001倍モル以上がより好ましい。廃触媒量を低減させる観点から、0.05倍モル以下が好ましく、0.01倍モル以下がより好ましい。 反応は、バッチ式でも連続式でも良い。バッチ式で反応を行う場合、カルボン酸中に液状のアルキレンオキサイドを導入して行われる。溶媒を使用してカルボン酸を希釈してからアルキレンオキサイドを導入しても良い。アルキレンオキサイドは、一括して添加しても良いし、連続的にまたは間欠的に添加してもよい。、また、アルキレンオキサイド導入後も反応を継続させて、いわゆる熟成を行い、反応を完結させることもできる。また、カルボン酸も初期に一度に仕込む必要は必ずしもなく、いくつかに分割して投入することもできる。触媒は、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、溶媒またはそれらの混合液中に予め溶解しておき、その後にアルキレンオキサイドを導入するのが好ましい。また、(メタ)アクリル酸を分割投入する場合には、分割投入する(メタ)アクリル酸に触媒の一部を溶解し、(メタ)アクリル酸と共に投入してもよい。 連続式で反応を行う場合には、(メタ)アクリル酸と液状のアルキレンオキサイドを管型、槽型などの反応器内に連続的に投入し、連続的に反応液を反応器から抜き出して行われる。この際、触媒は、原料とともに連続的に供給して反応液とともに連続的に抜き出して使用できる。触媒は、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、溶媒またはそれらの混合液中に予め溶解しておいてから、反応器へ投入するのが好ましい。 反応温度は、20〜90℃の範囲で行うことが好ましい。十分な反応速度を得るためには、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。三核錯体触媒の分解や副反応抑制のために80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。 反応においては、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタンなどの不活性な溶媒を用いてもよいが、無溶媒にて行うことが可能であり、通常はその方が好ましい。また、ガス状のアルキレンオキサイドを用いる場合は、密閉容器にて、好ましくは加圧下で反応させることが好ましい。反応時の系内圧力は、使用する原料の種類や混合比にもよるが、一般には加圧下で行われる。 得られたヒドロキシアルキルカルボキシレートが(メタ)アクリル酸エステル等の重合性の不飽和脂肪族カルボン酸エステル類の場合、重合防止剤を添加して、反応中の重合を防止することが好ましい。使用できる重合防止剤は公知の重合防止剤であれば特に限定されないが、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のキノン化合物、ヒドロキシN,N’−ジイソプロピルパラフェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチルパラフェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)パラフェニレンジアミン、フェノチアジン等のアミン系化合物、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル系化合物、あるいは下記の式(2)で例示されるN−オキシル系化合物等が挙げられる。(式中、n=0〜18の整数であり、R1=R2=H、もしくは、R1、R2の一方が水素原子であり、他方がメチル基である。また、R3、R4、R5、R6は直鎖状あるいは分岐状のアルキル基である。さらに、R7=H又は(メタ)アクリロイル基である。) 重合防止剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。 本発明で使用する触媒を回収再利用する場合には、蒸留により触媒と生成物とを分離させ、蒸留ボトム液として触媒を回収し、反応工程で再利用する方法や、他の溶剤を加え、触媒層と反応液層を2相分離させて触媒を回収し、反応に再利用する方法などが挙げられる。 本発明の製造方法においては、得られた粗ヒドロキシアルキルカルボキシレートについて、必要に応じ、さらに精製を行ってもよい。精製方法としては、特に限定されないが、例えば、蒸留による精製が挙げられる。蒸留は塔を用いた精留や単蒸留、薄膜蒸留など、既知の蒸留方法を用いることができる。 以下に本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。(転化率、収率および選択率) 原料および生成物の分析はガスクロマトグラフィーを用いて行った。なお、転化率、収率および選択率は以下のように定義される。 転化率(%)=(B/A)×100 収率(%)=(C/A)×100 選択率(%)=(C/B)×100 ここで、Aは原料のメタクリル酸のモル数、Bは反応したメタクリル酸のモル数、Cは生成したヒドロキシプロピルメタクリレートのモル数である。(ガスクロマトグラフィー測定条件)機種:GC−1700(島津製作所製)カラム:DB−FFAP 30m*0.32mm I.D.:0.25μm(J&W)カラム温度:100℃(1分保持) 100℃→230℃(昇温レート:5℃/min) 230℃(11分保持)インジェクター:230℃ディテクター:250℃(FID) <実施例1> (触媒調製) 硝酸第二鉄九水和物20.2(0.05モル)gを500mlビーカーに採り、水400mlに溶解させてから、メタクリル酸21.5g(0.25モル)を添加して攪拌した。この溶液に、水酸化ナトリウム10.0g(0.25モル)を含む水溶液100mlを攪拌しながら添加すると、直ちに赤褐色の沈澱が析出した。この時、溶液のpHは5.3であった。析出沈澱をろ過し、風乾して重量を量ると27.1gであった。 得られた固体のアセトニトリル溶液の可視スペクトルでは、460nmに弱い吸収、527nmに肩ピークが認められた。またこの錯体の赤外吸収スペクトルには、1685cm-1、1645cm-1、1581cm-1、1419cm-1に吸収があった。 この錯体の元素分析結果は、鉄:20.6%、炭素:40.5%、水素:4.6%であり、その結果から、錯体の分子式として[Fe3O(MAA)6(H2O)3]MAAと推定した(MAAは、メタクリル酸カルボキシラートアニオンを示す)。 (ヒドロキシプロピルメタクリレートの製造) 温度計、加熱冷却装置および攪拌機を備えた容積500mlのSUS−316製オートクレーブを使用した。オートクレーブに、メタクリル酸103.3g、酸化プロピレン76.7g、重合防止剤として4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.011gを仕込み、触媒として上記製造した三核錯体を金属モルに換算して4.23ミリモルとなるように添加した。 次に、オートクレーブ内の液温を反応温度である65℃に昇温した。この後、65℃を維持しながら8時間反応を継続した。 反応後、反応液を冷却し、得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応成績を表1に示す。 <実施例2> 硝酸第二鉄九水和物20.2g(0.05モル)、硝酸マグネシウム六水和物6.4g(0.025モル)を水400mlに溶解させ、さらにメタクリル酸21.5g(0.25モル)を添加して攪拌した。この溶液に、水酸化ナトリウム10.0g(0.25モル)を含む水溶液100mlを添加して攪拌した。この時、溶液のpHは4.8であった。析出した固体をろ過、風乾して薄褐色固体13.0gを得た。この錯体の金属分析結果は、鉄:19.7%、マグネシウム:0.8%であり、実施例1で得られた三核錯体の鉄金属の一部がマグネシウムに置き換わったものであると判断した。 この触媒を使用して、実施例1と同様に操作を行い、ヒドロキシプロピルメタクリレートを製造した。その結果を表1に示す。 実施例3〜11 硝酸マグネシウム六水和物に替えて、以下の化合物をを使用した以外は実施例2と同様にして三核錯体を製造した。実施例3:塩化亜鉛実施例4:塩化第2銅・2水和物実施例5:硝酸ニッケル実施例6:塩化コバルト(II)・6水和物実施例7:硝酸ランタン(III)・6水和物実施例8:塩化チタン(IV)実施例9:硝酸セリウム(III)・6水和物 これらの触媒を使用して、実施例1と同様に操作を行い、ヒドロキシプロピルメタクリレートを製造した。その結果を表1に示す。 <比較例1> 触媒として、三核錯体の代わりに酢酸鉄(II)無水和物を用いた以外は、実施例1と同様に操作を行い、ヒドロキシプロピルメタクリレートを製造した。その結果を表2に示す。 <比較例2> 触媒として、三核錯体の代わりに単核錯体である鉄(III)アセチルアセトナートを用いた以外は、実施例1と同様に操作を行い、ヒドロキシプロピルメタクリレートを製造した。その結果を表2に示す。 本発明の触媒を用いる製造方法により、高収率でヒドロキシプロピルメタクリレートを製造することができる。また、触媒中に鉄以外の第二金属を含有させることで収率をさらに向上させることができる。 以下の式(1)で表されるヒドロキシアルキルカルボキシレート製造用触媒。[FexM3-x(μ3−O)(μ−A)6L3]Xa ・・・ (1)(式中、Mは鉄およびクロムを除く一種以上の金属原子、Aは不飽和結合またはフェニル基を有する炭素数3〜12のカルボキシラートアニオン、Lは単座配位子、Xはハロゲンアニオン、ClO4、NO3、SO4および不飽和結合またはフェニル基を有する炭素数3〜12のカルボキシラートアニオンの中から選ばれる1種以上のアニオンを表し、xは2≦x≦3を満たす数、aは0ないし1の数である。) 請求項1記載の触媒の存在下で炭素数2〜12のカルボン酸と炭素数2〜6のアルキレンオキサイドとを反応させることを特徴とするヒドロキシアルキルカルボキシレートの製造方法。


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