生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_米ペプチドの製造方法
出願番号:2006045697
年次:2010
IPC分類:C12P 21/06,A23J 3/34,C07K 2/00


特許情報キャッシュ

川村 博幸 熊谷 武久 JP 4600868 特許公報(B2) 20101008 2006045697 20060222 米ペプチドの製造方法 亀田製菓株式会社 390019987 牛木 護 100080089 清水 栄松 100119312 外山 邦昭 100119334 吉田 正義 100137800 川村 博幸 熊谷 武久 20101222 C12P 21/06 20060101AFI20101202BHJP A23J 3/34 20060101ALI20101202BHJP C07K 2/00 20060101ALI20101202BHJP JPC12P21/06A23J3/34C07K2/00 C12P 21/06 A23J 3/34 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed 特開平11−308969(JP,A) J. Am. Oil. Chem. Soc.,2001年,vol.78, no.1,pp.1-6 Agric. Biol. Chem.,1986年,vol.50, no.9,pp.2409-2411 Cereal Chem.,1997年,vo.74, no.5,pp.662-668 2 2007222053 20070906 6 20071005 戸来 幸男 本発明は、米ペプチドの製造方法とその米ペプチドの製造方法により得られた米ペプチドに関する。 タンパク質は20種類のアミノ酸がペプチド結合により鎖状に数百個連なって形作られている。ペプチドは、タンパク質の分解またはアミノ酸からの合成により生じるものであり、アミノ酸が2個以上連なっている状態のもので、アミノ酸に比べ、比較的分子量が大きい。このペプチドの形態であると、アミノ酸の形態で吸収する場合と比べて、体内への吸収の効率がよいため、激しい運動などに伴う体力低下時の栄養補給剤や消化機能の不十分な病態を改善するための経腸栄養剤に適している。 また、ペプチドの中には健康機能が認められているものもある。例えば、特許文献1には、アレルギーを予防する必要のある飲食品あるいは経腸栄養剤などの医薬品の素材として使用することのできるホエータンパク質ペプチドが開示されている。さらに、特許文献2には、大豆タンパク質由来のペプチドを有効成分とする抗脱毛症剤、特許文献3には、米タンパク質のタンパク質分解酵素分解物を含有するプロリルエンドぺプチダーゼ阻害用経口摂取物が開示されており、その経口摂取物は、老人性痴呆症の予防および治療に有効な医薬品または飲食品に利用することができるとされている。 ところで、精白米にタンパク質は通常6〜8%含まれ、胚乳中のタンパク顆粒であるプロテインボディー(以下、PBと表す。)に蓄えられている。タンパク顆粒にはPB1、2の2種類があり、うちPB1の主成分であるプロラミンは疎水性が強いため、水に不溶で酵素による分解を受けにくい。 プロラミンは、筋肉の材料になるといわれている分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acids、以下、BCAAという。)の含量が多い。BCAAは、ロイシン、イソロイシン、バリンの3種類のアミノ酸を指し、BCAAを補給すると、筋肉の損傷や筋力の低下を予防でき、筋タンパクの分解抑制を図ることができる。また、補給された余分なBCAAは、運動エネルギーに利用することができるため、スタミナを長時間維持することができる。 このように、ペプチドは体内への吸収がよく、中でも米により得られたペプチドは、BCAA含量の多いプロラミンを含んでいるため、運動後の栄養補給材料として優れている。 米由来のペプチドを酵素分解によって得る方法としては、例えば、特許文献4に開示されている方法が知られている。この方法は、米を食塩水に溶解して米タンパク質を抽出し、得られたタンパク質をタンパク質分解酵素によって加水分解し、米ペプチドを得るものである。しかし、この方法では、食塩水に溶解する米タンパク質が全体の10%に満たないため、1回に米から得られる米ペプチドの回収率が低い。 また、特許文献5には、米をデンプン分解酵素により加水分解し、デンプンを除去し、得られた米タンパク質をタンパク質分解酵素により加水分解して、米ペプチドを得る方法が開示されている。この方法によると、分解されなかった米タンパク質が不溶成分として残るため、これを除去する工程が必要となり、工程が複雑になるため、生産性が良好でないといった問題があった。これは、プロラミンが疎水性であり、酵素による分解を受けにくいためであると考えられている。特開平08−098656号公報特開平09−249535号公報特開平09−037719号公報特開平7−258288号公報特開2003−192695号公報 そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の方法では回収されにくかったBCAA含量の多いプロラミンを分解、回収することができ、米ペプチドを効率よく得ることのできる米ペプチドの製造方法を提供することを目的とする。 上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、米または米糠をアルカリ溶液に溶解させて得られた上澄液を、酸により中和して米タンパク質を回収し、得られた米タンパク質をタンパク質分解酵素により加水分解することにより、効率よく米ペプチドを得ることができるという本発明を完成するに至った。 本発明の請求項1の発明は、米または米糠をアルカリ溶液に溶解するアルカリ溶解工程と、前記アルカリ溶解工程において得られた上澄液を酸により中和してプロラミンを含む米タンパク質を回収する回収工程と、前記回収工程において得られた米タンパク質をタンパク質分解酵素により加水分解する加水分解工程とを備え、前記加水分解工程後の未分解タンパク質が10%以下であることを特徴とする米ペプチドの製造方法である。 本発明の請求項2の発明は、請求項1記載の米ペプチドの製造方法により得られたことを特徴とする米ペプチドである。 本発明の米ペプチドの製造方法によれば、米または米糠をアルカリ溶液に溶解させて得られた上澄液を、酸により中和して米タンパク質を回収し、得られた米タンパク質をタンパク質分解酵素により加水分解する。この操作により、従来の方法では回収されにくかったBCAA含量の多いプロラミンを分解、回収することができ、米ペプチドを効率よく得ることのできる米ペプチドの製造方法が提供される。 また、本発明の米ペプチドの製造方法により得られたペプチドは、BCAAを豊富に含むため、激しい運動などに伴う体力低下時の栄養補給剤や消化機能の不十分な病態を改善するための経腸栄養剤に適しており、医薬品または食品業界で広く利用できるものである。 本発明の米ペプチドの製造方法は、米または米糠をアルカリ溶液に溶解するアルカリ溶解工程と、前記アルカリ溶解工程において得られた上澄液を酸により中和して米タンパク質を回収する回収工程と、前記回収工程において得られた米タンパク質をタンパク質分解酵素により加水分解する加水分解工程とを備えている。 本発明に使用される米は、その品種、種類、精米方法に関しても特に限定されない。粳米あるいは糯米であってもよく、粳米はジャポニカ米、インディカ米を問わない。また、玄米あるいは精白米であってもよい。 また、米糠には18〜25%のタンパク質が含まれているが、精白米とはタンパク質成分が異なり、プロラミンは少量しか含まれないが、BCAAは精白米と同程度の割合で含まれているため、米糠からも本方法を用いて米ペプチドを得ることができる。したがって、米糠であってもよい。 また、本発明に使用されるタンパク質分解酵素は、特定のものに限定されない。単独または2つ以上のタンパク質分解酵素を併用することができ、動物起源、植物起源、微生物起源のものであってもよい。 さらに、タンパク質分解酵素の反応条件は、用いる酵素の性質に合わせて、作用pH域、作用温度域を設定することが望ましい。また、用いるタンパク質分解酵素の量は、米タンパク質を加水分解するために十分な量を用いることが望ましい。 なお、中性タンパク質分解酵素を使用すれば、反応後に中和する必要がなく、さらに中和によって生じた塩を脱塩する工程が必要ないため、工程の簡略化を図ることができる。また、得られた米ペプチドは塩分含量が少ないので、塩分制限食の用途に適したものとなる。 本発明の米ペプチドの製造方法は、前記加水分解工程後の未分解タンパク質が10%以下である。従来の米ペプチドの製造方法では、前記加水分解工程後の未分解タンパク質が20%以上であったのに対し、本発明の米ペプチドの製造方法では、前記加水分解工程において、米タンパク質はほとんど完全に分解される。 このようにして、本発明の米ペプチドの製造方法により得られた米ペプチドは、アミノ酸に比べて体内への吸収の効率がよいため、激しい運動などに伴う体力低下時の栄養補給剤や消化機能の不十分な病態を改善するための経腸栄養剤に適しており、医薬品または食品業界で広く利用できるものである。 以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。 本発明の米ペプチドの製造方法と従来の米ペプチドの製造方法の比較を行った。 本発明の米ペプチドの製造方法に基づき、以下の手順により米ペプチドを得た。精白米粉末20kgを0.2%水酸化ナトリウム溶液100Lに懸濁し、1時間攪拌した後、一晩放置した。不溶性のデンプン画分を遠心分離によって除去した。6N塩酸を用いてpH5.0に中和し、生じた沈殿を遠心分離によって回収した。これに水100Lを加え、1時間攪拌した後、遠心分離を用いて沈殿を回収することで水洗を行った。その後、乾燥を行い、米タンパク質を得た。精白米20kgから得られた米タンパク質は0.80kg、純度は98%であった。すなわち純粋なタンパク質として0.78kgを得た。なお、米タンパク質の純度の測定は、公知のゲルダール法またはそれに順ずる方法で窒素量を定量し、窒素係数(5.95)を乗じて算出した。 つぎに、米タンパク質200gを2Lの蒸留水に懸濁し、1Nの塩酸または1Nの水酸化ナトリウム溶液を用いてタンパク質分解酵素の至適pHに調整した後、タンパク質分解酵素を添加し、攪拌しながら24時間、酵素反応を行った。80℃、30分間加熱によって反応を停止した後、乾燥し、米ペプチドを得た。米タンパク質20gから得られた米ペプチドは20gであった。 得られた米ペプチドを下記の条件でゲル濾過分析したところ、分子量分布は300から4000、平均分子量は738であった(図1)。ゲル濾過分析はカラムにTSK gel G2500PWXL(直径×長さ=7.5mm×300mm、東ソー(株)製)、移動相に0.1%トリフルオロ酢酸含有45%アセトニトリル溶液を用い、流速を0.2mL/分とし、UV検出器を用いて215nmの吸光度により検出を行った。平均分子量はデータ処理装置(D−2500Chromato−Integrator、日立製作所社製)を用いて積分チャートの面積比より算出した。 一方、従来の米ペプチドの製造方法として、特許文献5に開示されている方法に従って、米ペプチドを得た。精白米粉末20kgを蒸留水100Lに懸濁し、デンプン分解酵素(アミラーゼAD「アマノ」1、天野エンザイム(株)製、10000U)を200g加え、95℃、30分間攪拌した後、冷却し、遠心分離によって沈殿を回収した。これに水100Lを加え、1時間攪拌した後、遠心分離を用いて沈殿を回収することで水洗を行った。その後、乾燥を行い、米タンパク質を得た。精白米20kgから得られた米タンパク質は0.90kg、純度は78%であった。すなわち純粋なタンパク質として0.70kgを得た。なお、米タンパク質の純度の測定は、公知のゲルダール法またはそれに順ずる方法で窒素量を定量し、窒素係数(5.95)を乗じて算出した。 つぎに、米タンパク質200gを2Lの蒸留水に懸濁し、1Nの塩酸または1Nの水酸化ナトリウム溶液を用いてタンパク質分解酵素の至適pHに調整した後、タンパク質分解酵素を添加し、攪拌しながら24時間、酵素反応を行った。80℃、30分間加熱によって反応を停止した後、残った不溶成分を遠心分離により除去し、乾燥し、米ペプチドを得た。米タンパク質20gから得られた米ペプチドは14gであった。 また、図2に、実施例1における未分解タンパク質の経時変化を示す。図2のグラフより、従来の米ペプチドの製造方法では、タンパク質分解酵素による分解時間が26時間後でも米タンパク質の30%が未分解だが、本発明の米ペプチドの製造方法では6時間後には、米タンパク質はほぼ完全に分解された。 以上の結果より、本発明の米ペプチドの製造方法では、従来の米ペプチドの製造方法に比べ、米に含まれるタンパク質がタンパク質分解酵素によりほとんど分解されるため、収率よく米ペプチドを得ることができることが確認された。また、不溶成分を除去する工程が必要ないため、より効率的に米ペプチドを得ることができることが証明された。実施例1におけるゲル濾過分析結果を示すチャートである。実施例1における未分解タンパク質の経時変化を示すグラフである。 米または米糠をアルカリ溶液に溶解するアルカリ溶解工程と、前記アルカリ溶解工程において得られた上澄液を酸により中和してプロラミンを含む米タンパク質を回収する回収工程と、前記回収工程において得られた米タンパク質をタンパク質分解酵素により加水分解する加水分解工程とを備え、前記加水分解工程後の未分解タンパク質が10%以下であることを特徴とする米ペプチドの製造方法。 請求項1記載の米ペプチドの製造方法により得られたことを特徴とする米ペプチド。


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