生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法
出願番号:2006035579
年次:2007
IPC分類:C07C 67/54,C07C 69/14,C07C 67/60


特許情報キャッシュ

中村 美和子 加藤 勝明 鈴木 五十夫 中本 英夫 JP 2007210980 公開特許公報(A) 20070823 2006035579 20060213 酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法 三和油化工業株式会社 591089855 中島 三千雄 100078190 中島 正博 100115174 中村 美和子 加藤 勝明 鈴木 五十夫 中本 英夫 C07C 67/54 20060101AFI20070727BHJP C07C 69/14 20060101ALI20070727BHJP C07C 67/60 20060101ALI20070727BHJP JPC07C67/54C07C69/14C07C67/60 8 OL 15 4H006 4H006AA02 4H006AD11 4H006AD30 4H006BC51 4H006BE90 本発明は、酢酸エチル及びメチルエチルケトンの混合系からの酢酸エチルの回収方法に係り、特に、酢酸エチルとメチルエチルケトンとを少なくとも含有する溶剤混合物、例えば廃溶剤等から、純度の高い酢酸エチルを効果的に回収することの出来る方法に関するものである。 近年、産業活動に際して排出される廃溶剤等の、複数の成分を含む溶剤混合物から、有用な成分を分離して、回収することが、有効資源のリサイクルや環境保全の面から、強く要望されるようになってきている。 ところで、複数の成分よりなる溶剤混合物から、その溶剤成分を分離して回収する方法としては、一般に、蒸留が用いられている。しかしながら、溶剤混合物の溶剤成分として少なくとも酢酸エチルとメチルエチルケトンとを含む場合、それら酢酸エチルとメチルエチルケトンの物理的性質が非常に類似しているため、沸点の違いを利用する通常の蒸留操作によって、或いは第3成分を添加して沸点に差を生じさせて蒸留する、共沸蒸留や抽出蒸留等の操作によって、分離精製を行うことは困難であった。そこで、従来から、酢酸エチルとメチルエチルケトンの溶剤混合物から酢酸エチルを分離回収する方法が、種々検討されてきている。 例えば、特表2004−536880号公報では、酢酸エチル及びメチルエチルケトンを含有する溶剤混合物中のメチルエチルケトンを、選択的水素転化触媒の存在下、水素と接触させることにより、2−ブタノールに転化した後、その酢酸エチルと2−ブタノールとを含有する溶剤混合物を蒸留カラムに供給し、1バール絶対値未満の圧力で操作することにより、酢酸エチルを回収する方法が、提案されている。しかしながら、このような方法では、高圧条件下での水素添加反応工程及び減圧条件下での蒸留工程が必要となり、そのために、コスト的に問題があるものであった。 また、特開平4−266847号公報には、酢酸メチルのようなエステル類から、カルボニル不純物を除去する方法として、エステル類に、カルボニル不純物と反応してカルボニル類の水溶性含窒素誘導体を生成させるアミノ化合物を加えて、反応せしめ、そして生じた反応生成物から有機エステル相と水性誘導体相を分離させた後、その得られたエステル相を蒸留して、重質不純物を更に除去することによって、カルボニル不純物を含有する酢酸メチルのようなエステル類を精製する方法が、開示されている。 そして、そこでは、カルボニル類と反応して水溶性含窒素誘導体を生成させるアミノ化合物として、ヒドロキシルアミンの使用が明らかにされているのであるが、かかるヒドロキシルアミンは徐々に分解してしまうところから、工業的には酸性塩(acid salt)として供給されることとなる。そのため、カルボニル不純物を含有する酢酸メチル流を、前記ヒドロキシルアミン酸塩と接触させた後、遊離のヒドロキシルアミンを得るべく、そこでは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化リチウムのような塩基で処理を行う手法が、採用されているのである。 しかしながら、水酸化カリウムのような強塩基を用いると、系のpHが上昇して、エステル類の加水分解が促進されてしまい、更に、上述したように、系に、直接、塩基を混合せしめると、局所的に系のpHが上昇し、より一層、エステル類の加水分解が促進されてしまうため、かかる手法を、酢酸エチルとメチルエチルケトンとを少なくとも含む前記溶剤混合物に適用した場合にあっては、回収した酢酸エチルに、酢酸エチルの加水分解によって発生した酢酸及びエタノールが混入してしまうという問題があった。このような場合、更にエタノールを除去する工程が必要となり、また、蒸留後の酢酸エチルに微量の酢酸が残留することにより、酢酸エチルの全酸価が高いものとなり、品質が低下してしまうという問題もあった。そして、そのような全酸価の高い酢酸エチルは、シンナー等の溶剤としての利用価値も低いものとなっていたのである。特表2004−536880号公報特開平4−266847号公報 ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、酢酸エチルとメチルエチルケトンとを少なくとも含有する溶剤混合物から、酢酸エチルの加水分解を惹起することなく、高純度で、全酸価の低い酢酸エチルを経済的に効率よく回収する方法を提供することにある。 そして、本発明は、上記した課題又はこの明細書全体の記載から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、この明細書全体の記載や、そこに開示の発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。(1) 酢酸エチルとメチルエチルケトンとを少なくとも含有する溶剤混合物から、酢酸エチルを分離回収する方法であって、ヒドロキシルアミン塩と弱塩基との接触により、遊離ヒドロキシルアミンを生成せしめる一方、この生成した遊離ヒドロキシルアミンを、前記溶剤混合物中のメチルエチルケトンに接触させて、該メチルエチルケトンを遊離ヒドロキシルアミンと反応させることによって、メチルエチルケトオキシムに変換せしめた後、かかるメチルエチルケトオキシムと共に酢酸エチルを含む有機相を蒸留して、酢酸エチルを分離することを特徴とする酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。(2) 前記ヒドロキシルアミン塩の水溶液に、前記弱塩基の水溶液が混合せしめられることによって、前記遊離ヒドロキシルアミンの水溶液が形成され、そしてこの遊離ヒドロキシルアミン水溶液が前記溶剤混合物に混合せしめられることにより、前記メチルエチルケトオキシムを含む反応生成物が形成され、更に該反応生成物の相分離により、前記有機相が取り出されることを特徴とする上記態様(1)に記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。(3) 前記弱塩基が、緩衝作用を有する無機アルカリであることを特徴とする上記態様(1)又は(2)に記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。(4) 前記無機アルカリが、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸カルシウム等の、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする上記態様(3)に記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。(5) 前記メチルエチルケトンと遊離ヒドロキシルアミンとの反応系が40℃を超えないように温度制御されることを特徴とする上記態様(1)乃至(4)の何れか一つに記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。(6) 前記遊離ヒドロキシルアミン水溶液が、前記溶剤混合物の容量に対して、0.3〜2倍容量において用いられることを特徴とする上記態様(2)乃至(5)の何れか一つに記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。(7) 前記ヒドロキシルアミン塩が、前記メチルエチルケトンに対して0.4〜0.6倍当量において用いられることを特徴とする上記態様(1)乃至(6)の何れか一つに記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。(8) 前記弱塩基が、前記ヒドロキシルアミン塩に対して1〜1.5倍当量において用いられることを特徴とする上記態様(1)乃至(7)の何れか一つに記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。 このように、本発明にあっては、酢酸エチルとメチルエチルケトンとを少なくとも含有する溶剤混合物中のメチルエチルケトンを、遊離ヒドロキシルアミンに接触させて、メチルエチルケトオキシムに変換せしめるに際して、かかる遊離ヒドロキシルアミンを、ヒドロキシルアミン塩と弱塩基との接触により生成せしめることによって、塩基により系のpHが上昇して、酢酸エチルの加水分解が促進されることを抑制し、以てそのような加水分解によって生じるエタノールを除去するための追加の工程を何等必要とすることなく、また蒸留後の酢酸エチルに含まれる微量の酢酸によって、回収した酢酸エチルの全酸価が高くなる問題を回避し、品質が低下する恐れもない等の特徴を発揮せしめ得たのである。 従って、このようにして回収された酢酸エチルは、全酸価が低く、純度の高いものであることから、シンナー等の種々の溶剤として好適に利用することが出来、一方、得られたメチルエチルケトオキシムは、油性塗料の皮張り防止剤、電着塗料のブロッキング剤、シリコーンゴムの硬化剤原料等として、有効に利用され得るものである。 また、本発明の上記した第二の態様に従って、ヒドロキシルアミン塩の水溶液に、弱塩基の水溶液を混合せしめて、遊離ヒドロキシルアミンの水溶液を形成し、そして、この遊離ヒドロキシルアミン水溶液を酢酸エチル−メチルエチルケトン溶剤混合物に混合せしめるようにすることによって、塩基によって系のpHが上昇せしめられることを回避し、以て、溶剤混合物中の酢酸エチルの加水分解を、更に有利に抑制することが出来る利点がある。 さらに、本発明の第三の態様に従って、弱塩基として、緩衝作用のある無機アルカリを使用することにより、メチルエチルケトンのオキシム化反応が進行する間の系のpHを中性から弱酸性に保つことが出来、より一層有利に酢酸エチルの加水分解を抑制することが出来る特徴を発揮する。 加えて、本発明に従う酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法にあっては、本発明の上記した第四の態様に従って、無機アルカリが、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸カルシウム等の、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いることによって、また第五の態様に従って、メチルエチルケトンと遊離ヒドロキシルアミンとの反応系が40℃を超えないように、温度制御することによって、更に第六から第八の態様に従って、溶剤混合物の容量に対する遊離ヒドロキシルアミン水溶液の容量、メチルエチルケトンに対するヒドロキシルアミン塩の量、ヒドロキシルアミン塩の量に対する弱塩基の量を所定の範囲とすることによって、本発明の特徴は、更に有利に発揮され得るものとなる。 ところで、本発明において、分離回収の処理対象とされる溶剤混合物は、酢酸エチルとメチルエチルケトンとを少なくとも含有する溶剤混合物であるが、そのような溶剤混合物は、本発明においては、特に限定されるものではなく、一般に、酢酸エチル及びメチルエチルケトンを含む、種々の用途で使用された廃溶剤等が、その対象とされる。また、かかる溶剤混合物における、酢酸エチルとメチルエチルケトンの配合割合は、それら二成分が混合されておれば、特に限定されるものではない。更に、そのような溶剤混合物には、上述せる如き酢酸エチルとメチルエチルケトン以外にも、各種の添加剤や混入物等の様々な成分が、添加、含有されていても、或いは、混入されていても、何等差支えない。 そして、本発明に従って、上述せる如き溶剤混合物から、酢酸エチルを分離回収するには、先ず、溶剤混合物中のメチルエチルケトンがメチルエチルケトオキシムに変換されることとなる。即ち、本発明においては、下記反応式(I)で表されるオキシム化反応が、進行せしめられるのである。 要するに、前記溶剤混合物に対して、遊離ヒドロキシルアミンが接触せしめられると、上記反応式(I)にて示されるオキシム化反応に従って、溶剤混合物中のメチルエチルケトンが、メチルエチルケトオキシムに変換されるのである。 ここにおいて、かかるオキシム化反応を生ぜしめる遊離ヒドロキシルアミンは、安定性及び安全性の面から、工業的には、ヒドロキシルアミン塩として供給されることとなる。ここで、使用され得るヒドロキシルアミン塩としては、例えば、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン、リン酸ヒドロキシルアミン等が挙げられ、一般的には、硫酸ヒドロキシルアミンが用いられることとなる。 また、本発明に従う酢酸エチルの回収方法にあっては、有利には、そのようなヒドロキシルアミン塩が、溶剤混合物中のメチルエチルケトンに対して、0.4〜0.6倍当量、好ましくは0.41〜0.5倍当量の範囲において、用いられることとなる。なお、ヒドロキシルアミン塩の使用量が、上記した範囲より少なくなると、未反応のメチルエチルケトンの量が多くなり、回収される酢酸エチルの純度が低下するといった問題があり、一方、上記した範囲より多くなると、未反応のヒドロキシルアミンが反応系に残るようになるため、安全面から好ましくないといった問題がある。 そして、本発明に従う、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法にあっては、上記したようなヒドロキシルアミン塩を、弱塩基と接触させることによって、遊離ヒドロキシルアミンを生成せしめるようにしたところに、大きな特徴を有しているのである。 すなわち、このように、ヒドロキシルアミン塩と接触せしめる塩基として、弱塩基を使用することによって、そのような塩基を混合せしめた系のpHが上昇して、溶剤混合物中の酢酸エチルの加水分解が促進せしめられるようなことが、有利に防止され得、オキシム化反応後に得られる反応生成物中に、酢酸エチルの加水分解によって生じた酢酸及びエタノールが混入せしめられるようなことが、有利に抑制され得ることとなるからである。従って、そのようなエタノールを除去するための追加の工程を、特に必要とすることがなく、また、反応生成物を蒸留して、分離、回収された酢酸エチルに、酢酸が微量に含まれて、かかる回収された酢酸エチルの全酸価が上昇してしまうようなことが、有利に防止され得、以て、全酸価の低い、高純度の酢酸エチルが、効果的に且つ経済的に回収され得ることとなるのである。 そして、このようにして回収された酢酸エチルは、シンナー等の各種溶剤として有効に利用され得るのである。また、上記したようなオキシム化反応によって、メチルエチルケトンから変換されたメチルエチルケトオキシムにあっても、全酸価が低く、且つ高純度のメチルエチルケトオキシムが回収され得ることから、そのようなメチルエチルケトオキシムは、油性塗料の皮張り防止剤、電着塗料のブロッキング剤、シリコーンゴムの硬化剤原料等として、有効に利用され得ることとなり、以て、廃棄物の発生を有利に抑制することが出来ることとなる。 これに対して、ヒドロキシルアミン塩から遊離ヒドロキシルアミンを生成せしめるための塩基として、強塩基を使用した場合にあっては、前述せるように、ヒドロキシルアミンの遊離が速く、そのような塩基を混合せしめた系のpHが高くなって、溶剤混合物中の酢酸エチルの加水分解が促進されることとなるために、好ましくないのである。 そして、かかる本発明に従って、ヒドロキシルアミン塩から遊離ヒドロキシルアミンを生成せしめるために使用される弱塩基としては、有利には、緩衝作用を有する無機アルカリが、用いられる。そのような緩衝作用を有する無機アルカリを使用することによって、メチルエチルケトンのオキシム化反応が進行する間の系のpHを、中性から弱酸性に保つことが出来るのであり、以て、より一層有利に溶剤混合物中の酢酸エチルの加水分解を抑制することが可能となるのである。 ここで、そのような無機アルカリとしては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等の、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩を挙げることが出来、中でも、特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸カルシウムが好ましく用いられる。更に、炭酸カルシウムを使用する場合には、中和反応により副生する塩が、水に不溶性の硫酸カルシウムとなるため、後述するように、ヒドロキシルアミン塩及び/又は弱塩基を水溶液として使用する場合には、反応終了後、容易に水と分離することが出来、そのようにして回収した水は、再びヒドロキシルアミン塩又は弱塩基の溶解等に使用することが可能であり、以て、廃棄物の発生を有利に抑制することが出来るという利点がある。 さらに、本発明に従う酢酸エチルの回収方法にあっては、有利には、弱塩基が、ヒドロキシルアミン塩に対して、1〜1.5倍当量、好ましくは1〜1.2倍当量の範囲において、用いられることとなる。上記した範囲よりも少なくなると、ヒドロキシルアミンが完全に遊離されなくなり、効率的な反応が充分に期待出来ないといった問題があり、また、上記した範囲よりも多くなると、弱塩基の量が過剰となり、系のpHが上昇し、酢酸エチルの加水分解が促進されるため、好ましくないといった問題がある。 なお、そのようなヒドロキシルアミン塩と弱塩基とを接触せしめて、遊離のヒドロキシルアミンを生成させるに際しては、一般的には、それらヒドロキシルアミン塩及び弱塩基を、それぞれ水溶液として混合せしめることが望ましい。ここで、用いられる水としては、例えば、水道水や蒸留水、イオン交換水や、他の適当な水溶液等の水性媒体を用いることが出来る。 ここで、本発明に従う酢酸エチルの回収方法にあっては、有利には、ヒドロキシルアミン塩の水溶液が、5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%の濃度において、用いられることとなる。上記した濃度よりも低くなると、効率的な反応が期待できないと共に、回収を目的とする酢酸エチルの水相への溶解量が増加してしまうため、回収率が低下するといった問題や、反応後の水相の量が増大し、廃水として処理する水の量が増大するため、経済的に好ましくないといった問題があり、また、上記した濃度より高くなると、ヒドロキシルアミン塩が析出し、反応上好ましくないといった問題がある。 また、本発明に従う酢酸エチルの回収方法にあっては、有利には、弱塩基の水溶液が、5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%の濃度において、用いられることとなる。上記した濃度よりも低くなると、効率的な反応が期待できないと共に、上述したように、酢酸エチルの水相への溶解量の増加による回収率の低下の問題や、廃水の量の増大等の問題があり、上記した濃度よりも高くなると、弱塩基の溶解が均一ではなくなり、効率的な反応が期待出来ないといった恐れがある。なお、使用する弱塩基の種類によっては、弱塩基が完全に溶解しない場合もあるが、懸濁状態で使用しても、本発明においては、問題ない。 なお、そのようなヒドロキシルアミン塩及び弱塩基を接触せしめ、更に前記溶剤混合物に接触せしめるに際しては、何等特殊な方法を必要とせず、従来から周知の方法に従って、任意の順序にて、例えば、ヒドロキシルアミン塩を溶剤混合物に混合した後、そこに弱塩基を加えることにより、溶剤混合物中のヒドロキシルアミン塩を遊離ヒドロキシルアミンに変換せしめたり、或いは、弱塩基を溶剤混合物に混合した後、そこにヒドロキシルアミン塩を加えることにより、遊離ヒドロキシルアミンを生成せしめたりすることによって、容易に得ることが出来るものであるが、好ましくは、ヒドロキシルアミン塩に、弱塩基を混合せしめることによって、遊離ヒドロキシルアミンを生成せしめた後、かかる遊離ヒドロキシルアミンを、前記溶剤混合物に混合せしめるようにする。 このように、先ず、遊離ヒドロキシルアミンを生成せしめてから、その後に、かかる遊離ヒドロキシルアミンを溶剤混合物中に混合せしめることによって、前記弱塩基によって溶剤混合物の系のpHが上昇することを有利に回避し、従って、溶剤混合物中の酢酸エチルの加水分解が抑制され得ることとなり、以て、かかる酢酸エチルの加水分解により生じるエタノールを除去するための追加の工程を何等必要とすることなく、更に、加水分解によって生じるもう一方の成分である酢酸が、酢酸エチルに混入して、回収された酢酸エチルの全酸価が上昇せしめられるようなことが、より一層有利に回避され得ることとなる。そして、このようにして回収された酢酸エチルは、高純度で且つ全酸価が低いものであることから、各種溶剤として有効に利用され得るものであるのである。 従って、本発明に従う酢酸エチルの回収方法にあっては、上述したように、有利には、ヒドロキシルアミン塩及び弱塩基をそれぞれ水溶液として用い、それらの水溶液を混合して得られた遊離ヒドロキシルアミン水溶液を、前記溶剤混合物に混合せしめることとなる。ここにおいて、遊離ヒドロキシルアミン水溶液は、本発明で用いるヒドロキシルアミン塩の量や弱塩基の種類及び量によっても異なるが、一般に、溶剤混合物に対して0.3〜2倍容量、好ましくは0.5〜1倍容量において、用いられることとなる。先述したように、上記した量よりも多くなると、酢酸エチルの水相への溶解量の増加による回収率の低下の問題や、廃水の量の増大等といった問題があり、上記した量よりも少なくなると、ヒドロキシルアミン塩、弱塩基の溶解が不均一となり、効率的な反応が期待出来ないといった問題がある。 このようにして、溶剤混合物中のメチルエチルケトンに、遊離ヒドロキシルアミンが接触せしめられると、かかるメチルエチルケトンが、前記反応式(I)に従って、メチルエチルケトオキシムに変換せしめられるのであるが、本発明に従う酢酸エチルの回収方法にあっては、好ましくは、メチルエチルケトンと遊離ヒドロキシルアミンとの反応が、40℃を越えないようにして進行せしめられるよう、反応系が温度制御されることとなる。例えば、前述したように、ヒドロキシルアミン塩水溶液及び弱塩基の水溶液から遊離ヒドロキシルアミン水溶液を得、かかる遊離ヒドロキシルアミン水溶液を溶剤混合物に混合せしめる場合には、反応による発熱によって、反応系の温度が40℃を超えることのないように、かかる水溶液の滴下流量を調整し、或いは、反応系の温度調整をしながら、かかる水溶液の滴下をするようにすることが出来る。ここで、上記した温度が40℃を越えるようになると、ヒドロキシルアミンの分解が促進されるといった問題が惹起されるようになり、また、安全性の面からも好ましくないといった問題もある。 そして、以上のようにして得られた反応生成物から、有機相を取り出すこととなる。ここで、ヒドロキシルアミン塩及び/又は弱塩基を水溶液として溶剤混合物に混合するか、若しくは遊離ヒドロキシルアミンを水溶液として溶剤混合物に混合する場合にあっては、かかる反応生成物の相分離により、有機相を取り出すこととなる。 その後、この取り出した有機相が、蒸留せしめられるのである。その際、蒸留手法や蒸留装置は、特に制限されるものではなく、例えば、蒸留手法としては、常圧蒸留であっても、減圧蒸留であっても良く、従来から公知の手法が何れも採用され得るのであり、また、蒸留装置にあっても、連続式や回分式等、公知の各種の蒸留装置が何れも採用され得る。 かくして、蒸留操作が実施されると、メチルエチルケトオキシムと酢酸エチルとを含む反応生成物においては、メチルエチルケトオキシムの蒸発に先立って、メチルエチルケトオキシムよりも沸点の低い酢酸エチルが蒸発して、反応系内から、酢酸エチルが取り出されることとなる。 なお、酢酸エチルを蒸留によって分離回収する際の条件としては、特に限定されるものでないものの、酢酸エチルの沸点程度の温度で10分〜2時間程度還流した後、酢酸エチルを蒸留して単離することが望ましく、こうすることによって、より一層純度の高い酢酸エチルを回収することが可能となるのである。 そして、以上のような、本発明に従う酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの分離回収方法によれば、溶剤混合物中の酢酸エチルの加水分解により酢酸及びエタノールが発生して、かかるエタノールを除去するための追加の工程が必要となったり、また、酢酸エチルに混入する酢酸により回収された酢酸エチルの全酸価の上昇が惹起せしめられたりすることなく、純度の高い酢酸エチルを、効果的且つ経済的に回収することが出来るのである。そして、このようにして回収された酢酸エチルは、シンナー等の各種溶剤として有効に利用され得るのである。更に、酢酸エチルの回収後に残る、メチルエチルケトンから変換せしめられたメチルエチルケトオキシムにあっても、全酸価が低く、高純度のものが得られることから、工業的に有効に利用され得るものであるのである。 以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。 先ず、酢酸エチルとメチルエチルケトンとを少なくとも含有する溶剤混合物として、下記表1に示される組成の溶剤混合物1及び溶剤混合物2を、それぞれ準備した。−実施例1− 下記表2に示されるように、溶剤混合物中のメチルエチルケトンに対して0.5倍当量となる、硫酸ヒドロキシルアミンの56.4gを、イオン交換水の131.7gに溶解させることによって得られた水溶液と、かかる硫酸ヒドロキシルアミンに対して1.0倍当量となる、炭酸ナトリウムの36.5gを、イオン交換水の145.8gに溶解させることによって得られた水溶液とを混合して、遊離ヒドロキシルアミン水溶液を得た。 次いで、上記で準備した溶剤混合物1の501gを、マグネチックスターラーを備えた1000ml容量のフラスコ内に投入し、上述のようにして調製した遊離ヒドロキシルアミン水溶液をゆっくりと滴下し、約60分間撹拌した。このとき、反応系の温度が40℃を越えないように温度調整した。その後、撹拌を停止して、水相と有機相の二相に分離したうちの、上層の有機相の496gを、分液漏斗を用いて、回収した。 また、蒸留装置として、図1に示されるものを準備した。かかる図1中、Aは、蒸留操作の施される溶剤混合物が収容される容器であって、ここでは、1000ml容量のフラスコ(蒸留缶)が採用されている。また、Bは、精留塔であって、ここでは、6mm角のマクマホン充填物が充填された内径10mmの精留塔の三つが、上下方向に直列に取り付けられている。更に、Cは、冷却管であって、フラスコAで生じた蒸気を液化する。また、Dは、還流比タイマーによって作動するボール弁であって、かかるボール弁が開放とされると、蒸発物が、枝管E及び冷却管Fを経由して、受器Gに貯えられるように構成されている。そして、かかる図1に示される蒸留装置においては、先ず、フラスコAがマントルヒーター等の加熱手段によって加熱されることによって、フラスコAに収容された液体が蒸気となる。そして、フラスコAで発生した蒸気は、精留塔Bにより気液熱交換が繰り返され、次第に精留塔Bを上昇する。その後、冷却管Cまで上昇した蒸気は、かかる冷却管Cによって液化され、それが、ボール弁Dが開放のうちに、枝管E及び冷却管Fを通じて、受器Gに貯えられるようになっている。 そして、前述せるようにして回収した有機相を、1000ml容量のフラスコAに投入し、図1に示される蒸留装置の精留塔Bの下部に取り付け、溶剤が沸騰するまで加熱し、沸騰後、30分間の加熱還流を行ない、その後、蒸留を開始した。かかる蒸留が終了した後、留出物を分取して、その回収率を算出すると共に、かかる留出物の純度をガスクロマトグラフィーにて確認し、また、全酸価を、自動酸価滴定装置:COM−1500(平沼産業製)を用いて、確認した。そして、得られた回収率、純度及び全酸価を、下記表2に併せて示した。なお、回収率は、以下の式を用いて算出した。 回収率(%)=[回収された量(g)]/[溶剤混合物の仕込量(g)]×100 なお、ガスクロマトグラフィ条件は、次の通りである。 装 置:GC−14B(島津製作所製) カラム:キャピラリーカラム(CBP1−M50−025) 固定相液体 メチルシリコーン 固定相液体厚 0.25μm カラム材質 超高純度シリカ カラム内径 0.22mm カラム長 50m キャリヤーガス:ヘリウム 流速 2ml/分 圧力 150kPa 検出器:水素炎イオン化検出器(FID) 水素圧 50kPa 空気圧 50kPa カラム温度:50℃(1分間保持)→5℃/分昇温→145℃(5分間保持) 注入口温度:200℃ 検出器温度:200℃ 試料量:0.2μl(スプリット比1/50) 指定感度:10-2 定量方法:補正面積百分率法−実施例2− 硫酸ヒドロキシルアミンから遊離ヒドロキシルアミンを生成させるための塩基として、炭酸カルシウムを使用した以外は、実施例1と同様にした。得られた結果を、下記表2に示した。−実施例3− 硫酸ヒドロキシルアミンの添加量を、メチルエチルケトンに対して、0.41倍当量とした以外は、実施例1と同様にした。得られた結果を、下記表2に示した。−実施例4− 硫酸ヒドロキシルアミンから、遊離ヒドロキシルアミンを生成させるための弱塩基の添加量を、硫酸ヒドロキシルアミンに対して、1.1倍当量とした以外は、実施例1と同様にした。得られた結果を、下記表2に示した。−実施例5− 溶剤混合物として、溶剤混合物2を使用した以外は、実施例1と同様にした。得られた結果を、下記表2に示した。−実施例6− 硫酸ヒドロキシルアミンから遊離ヒドロキシルアミンを生成させるための塩基として、炭酸カルシウムを使用した以外は、実施例5と同様にした。得られた結果を、下記表2に示した。−比較例1− 硫酸ヒドロキシルアミンから遊離ヒドロキシルアミンを生成させるための塩基として、水酸化ナトリウムを、硫酸ヒドロキシルアミンに対して2倍当量使用した以外は、実施例1と同様にした。得られた結果を、下記表2に示した。 かかる表2の結果からも明らかなように、硫酸ヒドロキシルアミンから遊離ヒドロキシルアミンを生成させるための塩基として、強塩基である水酸化ナトリウムを使用した比較例1にあっては、硫酸ヒドロキシルアミンから遊離ヒドロキシルアミンを生成させるための塩基として、弱塩基を使用した実施例1〜実施例6に比較して、回収された酢酸エチル及び回収されたメチルエチルケトオキシムの全酸価が高いものであった。一方、硫酸ヒドロキシルアミンから遊離ヒドロキシルアミンを生成させるための塩基として、弱塩基を使用した実施例1〜実施例6にあっては、回収された酢酸エチル及びメチルエチルケトオキシムの全酸価は低く、更に回収された酢酸エチル及びメチルエチルケトオキシムの純度及び回収率についても、比較例1と比較して、何等遜色のないものであった。実施例で用いた蒸留装置の概略説明図である。符号の説明 A:蒸留缶 B:精留塔 C:冷却管 D:ボール弁 E:枝管 F:冷却管 G:受器 酢酸エチルとメチルエチルケトンとを少なくとも含有する溶剤混合物から、酢酸エチルを分離回収する方法であって、ヒドロキシルアミン塩と弱塩基との接触により、遊離ヒドロキシルアミンを生成せしめる一方、この生成した遊離ヒドロキシルアミンを、前記溶剤混合物中のメチルエチルケトンに接触させて、該メチルエチルケトンを遊離ヒドロキシルアミンと反応させることによって、メチルエチルケトオキシムに変換せしめた後、かかるメチルエチルケトオキシムと共に酢酸エチルを含む有機相を蒸留して、酢酸エチルを分離することを特徴とする酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。 前記ヒドロキシルアミン塩の水溶液に、前記弱塩基の水溶液が混合せしめられることによって、前記遊離ヒドロキシルアミンの水溶液が形成され、そしてこの遊離ヒドロキシルアミン水溶液が前記溶剤混合物に混合せしめられることにより、前記メチルエチルケトオキシムを含む反応生成物が形成され、更に該反応生成物の相分離により、前記有機相が取り出されることを特徴とする請求項1に記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。 前記弱塩基が、緩衝作用を有する無機アルカリであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。 前記無機アルカリが、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸カルシウム等の、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。 前記メチルエチルケトンと遊離ヒドロキシルアミンとの反応系が40℃を超えないように温度制御されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。 前記遊離ヒドロキシルアミン水溶液が、前記溶剤混合物の容量に対して、0.3〜2倍容量において用いられることを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れか一つに記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。 前記ヒドロキシルアミン塩が、前記メチルエチルケトンに対して0.4〜0.6倍当量において用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。 前記弱塩基が、前記ヒドロキシルアミン塩に対して1〜1.5倍当量において用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合系からの酢酸エチルの回収方法。 【課題】酢酸エチルとメチルエチルケトンとを少なくとも含有する溶剤混合物から、酢酸エチルの加水分解を惹起することなく、高純度で、全酸価の低い酢酸エチルを経済的に効率よく回収する方法を提供すること。【解決手段】ヒドロキシルアミン塩と弱塩基との接触により、遊離ヒドロキシルアミンを生成せしめる一方、この生成した遊離ヒドロキシルアミンを、前記溶剤混合物中のメチルエチルケトンに接触させて、該メチルエチルケトンを遊離ヒドロキシルアミンと反応させることによって、メチルエチルケトオキシムに変換せしめた後、かかるメチルエチルケトオキシムと共に酢酸エチルを含む有機相を蒸留して、酢酸エチルを分離するようにした。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る