生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_細胞培養基材
出願番号:2006030245
年次:2007
IPC分類:C12M 3/00


特許情報キャッシュ

浅井 量子 小田根 千春 船津 麻美 JP 2007209218 公開特許公報(A) 20070823 2006030245 20060207 細胞培養基材 日東電工株式会社 000003964 庄司 隆 100088904 資延 由利子 100124453 大杉 卓也 100135208 浅井 量子 小田根 千春 船津 麻美 C12M 3/00 20060101AFI20070727BHJP JPC12M3/00 A 2 OL 7 4B029 4B029AA21 4B029BB11 4B029CC02 4B029DF10 本発明は、材質がポリカプロラクトンの無孔性担体からなる細胞培養基材に関する。 細胞培養の技術は、細胞の生化学的現象や性質の解明、有用な物質の生産などの様々な目的で利用されている。培養細胞は、遺伝工学を中心としてバイオテクノロジーの進展の中で細胞による物質生産技術の開発を中心とした技術が数多く報告されているが、物質生産だけでなく、細胞の働きや形態を任意に加工することで、バイオセンサ、バイオリアクター、再生医療(人工臓器)などに利用しようという試みが盛んに行われている。例えば再生医療では、生体病変部や欠損部への補綴材、薬剤の評価などが挙げられる。 細胞培養基材として、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸(PLA)やポリ乳酸-グリコール酸(PLGA)などに代表される生分解性材料が近年注目されている。再生医療の分野ではティッシュエンジニアリング(組織工学)により、生分解性高分子を細胞培養の基材(足場)とし、対象となる組織の細胞を播種して培養系または生体内で組織構造を再生させ、培養人工組織、例えば軟骨、骨、心臓弁、人工器官、培養人工膀胱などの人工臓器が作製された。これらの基材上の細胞は、時間とともに自ら分裂・増殖して組織を形成する一方、細胞が接着した材料は次第に生体内で分解し、最終的には成長した細胞から構成された組織のみとなる。 生分解性材料はそのままでは細胞が付着しにくく、細胞の増殖性にも問題がある。三次元形状に形成された多孔質担体や(特許文献1)、細孔が相互に連結しているマイクロセルラー合成有機/無機/天然物質は、動植物の細胞又は酵素を成長させるための支持体としてよく使用される(特許文献2)。しかしながら、無孔性の生分解性材料からなる細胞培養基材についても、細胞を簡便かつ迅速に大量入手可能な細胞培養基材の開発が望まれている。国際公開WO2003/011353号パンフレット特表2003−516713号公報 本発明は、細胞を簡便かつ迅速に大量入手可能な無孔性の生分解性材料からなる細胞培養基材を提供することを課題とする。 本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ポリカプロラクトンからなる培養基材の表面に、微細な凹凸をもたせることで細胞増殖促進効果が得られることを見出し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、以下よりなる。1.材質がポリカプロラクトンの無孔性担体であり、表面粗さ(Ra)が105nm以下である細胞培養基材。2.培養する細胞が、付着性細胞である前項1に記載の細胞培養基材。 本発明の材質がポリカプロラクトンの無孔性担体で、表面粗さ(Ra)が105nm以下である細胞培養基材を用いて培養すると、表面粗さ(Ra)が105nmより大きい細胞培養基材で培養した場合に比べて、効果的に細胞の増殖が認められた。 本発明の細胞培養基材は、ポリカプロラクトンの無孔性担体からなる。ポリカプロラクトンは疎水性の生分解性ポリマーで、ε-カプロラクトンの開環重合により合成される。結晶の融解温度は60℃の熱可塑性ポリエステルであるが、大気中では化学的に安定し、廃棄時には分解性である。無孔性担体とは、細胞培養の足場となる基材の材質がフィルム状、シート状またはブロック状に形成されており、該材質が無孔性であることをいう。シート状であっても、例えば不織布のように繊維を直接シート状に仕上げたようなものは含まれない。 本発明の細胞培養基材は、表面粗さが105nm以下であり、好ましくは21nm以下である。ここで、表面粗さとはJIS表面粗さのJIS−B−0601により定義される中心線表面平均粗さ(Ra)をいう。このような表面粗さの細胞培養基材が得られるのであれば、その製法は特に限定されない。具体的には、溶媒を蒸発させる方法、プラズマ処理、紫外線照射処理、ラビング処理、レーザー加工、フォトレジスト加工、ナノプリント、といった方法が挙げられる。 本発明の細胞培養基材を用いて培養される細胞は付着性細胞であり、例えば市販されている、または独自に株化された付着性の各種腫瘍細胞、骨格筋芽細胞、繊維芽細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、血管内皮細胞、神経細胞、ES細胞、脂肪細胞、骨髄幹細胞、骨細胞、肝細胞などが挙げられる。特に好適には、骨格筋芽細胞の1種であるL6細胞が挙げられる。 以下実施例および実験例を示して説明するが、これらは発明の内容をより理解するためのものであって、本発明はこれらに限定されるものではないことはいうまでもない。本実施例および実験例では、表面粗さの異なるポリカプロラクトンからなる基材を作製し、該基材上でL6細胞(ラットの筋組織由来骨格筋芽細胞)の増殖性を試験した。(実施例1)基材の作製 ポリカプロラクトン(重量平均分子量:70,000〜100,000)をクロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(以下THF)、アセトンの4種類の溶媒に溶解させ、ポリマー濃度が1g/L、10g/L、50g/Lとなるように調製した。これらの溶液を15mmΦのカバーガラス上に滴下後、密封または開放状態で溶媒を蒸発させ、その後2日間室温で真空乾燥して薄膜を得た。本製膜方法をキャスト法といい、表1においてシャーレの蓋を閉じて緩慢に蒸発させたものをCLOSEと記し、シャーレの蓋を開放して迅速に蒸発させたものをOPENと記した。また、前記各ポリカプロラクトン溶液を回転体上に設置した15mmΦのカバーガラス上に滴下して、回転数1000rpm×10秒の条件で回転させて溶媒を蒸発させ薄膜を得た。本製膜方法を表1においてスピンコートと記した。上記により、計9種類のポリカプロラクトン基材を得、表1に示した。 上記の方法により得られた各ポリカプロラクトン基材の原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)観察像を図1に示した。(実験例1)細胞培養 各ポリカプロラクトン基材を15mmΦのカバーガラス上に製膜し、あらかじめサイドガスにて滅菌しておいた。滅菌した各基材を、16mmФのシャーレ(一般に24穴プレートとよばれるもの)内に置き、L6細胞(ラット骨格筋芽細胞株化細胞、ATCCより入手)を400cells/mm2となるように各基材上に播種した(各n=4)。各シャーレに蓋をして、CO2インキュベータ内で培養し、4日後の細胞数を計数した。培養液はDMEM(1%ペニシリン/ストレプトマイシン、10%ウシ胎児血清)を用いた。 培養4日後の細胞数ならびに表面粗さの一覧を表2に示し、グラフにまとめたものを図2に示した。単位は、JIS表面粗さのJIS−B−0601により定義される中心線表面平均粗さ(Ra)で、50μm四方範囲を探針した際の平均凹凸(nm)と定義した。 ポリカプロラクトン基材の製膜条件によって、同じ材料でも表面粗さの異なる基材を作製することができた。表面粗さが105nm以下において細胞の増殖性が優れ、特に21nm以下において、L6細胞の増殖性が優れていることが観察された。 本発明の表面粗さのポリカプロラクトンからなる細胞培養基材を用いることにより、表面が滑らかな細胞培養基材で培養するのに比べて細胞の増殖性が良好であった。本培養細胞基材は、使用後に環境にやさしい細胞培養器具(シャーレ、培養フラスコ)や、再生医療における移植部材などに利用可能である。 具体的には、再生医療分野における人工血管、人工骨、創傷被覆材、再生医医療スキャホールドや、その他縫合糸、組織代用布などに利用することができる。9種類のポリカプロラクトン基材のAFM観察像(50μm四方範囲)を示す図である。(実施例1)9種類のポリカプロラクトン基材の表面粗さ(Ra)および各基材上でL6細胞を4日間培養したときの細胞数を示す図である。(実験例1)材質がポリカプロラクトンの無孔性担体であり、表面粗さ(Ra)が105nm以下である細胞培養基材。培養する細胞が、付着性細胞である請求項1に記載の細胞培養基材。 【課題】本発明は、細胞を簡便かつ迅速に大量入手可能な無孔性の生分解性材料からなる細胞培養基材を提供することを課題とする。【解決手段】培養基材の表面に微細な凹凸をもたせることで細胞増殖促進効果が得られる。具体的には、表面粗さ(Ra)が105nm以下のポリカプロラクトンからなる無孔性の細胞培養基材による。【選択図】なし


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