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タイトル:公開特許公報(A)_ジベンゾチオフェン誘導体、製造方法及びその用途
出願番号:2006020471
年次:2007
IPC分類:C07D 333/78,C07C 25/22,C07D 233/50,H01L 51/05,H01L 51/30


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渡辺 真人 山本 敏秀 大橋 知一 JP 2007197400 公開特許公報(A) 20070809 2006020471 20060130 ジベンゾチオフェン誘導体、製造方法及びその用途 東ソー株式会社 000003300 渡辺 真人 山本 敏秀 大橋 知一 C07D 333/78 20060101AFI20070713BHJP C07C 25/22 20060101ALI20070713BHJP C07D 233/50 20060101ALI20070713BHJP H01L 51/05 20060101ALI20070713BHJP H01L 51/30 20060101ALI20070713BHJP JPC07D333/78C07C25/22C07D233/50H01L29/28 100AH01L29/28 250H 12 OL 25 4H006 4H006AA01 4H006AB84 4H006EA23 本発明は、有機半導体等の電子材料への展開が可能なジベンゾチオフェン誘導体、その用途、その前駆化合物、及びそれらの製造方法に関する。 有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト、及びフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されるようになった。有機薄膜トランジスタは有機半導体活性相、基板、絶縁相、電極等数種類の材料から構成されるが、中でも電荷のキャリアー移動を担う有機半導体活性相は該デバイスの中心的な役割を有している。この有機半導体活性相を構成する有機材料のキャリアー移動能により半導体デバイス性能が左右される。 有機半導体活性相を作製する方法としては一般的に、高温真空下、有機材料を気化させて実施する真空蒸着法、及び有機材料を適当な溶媒に溶解させその溶液を塗布する塗布法が知られている。塗布法は高温高真空条件を用いることなく、印刷技術を用いても実施することができるため、デバイス作製の製造コストを大幅に削減することができることから、経済的に好ましいプロセスである。しかし、従来、有機半導体材料として高性能な材料ほど塗布法による活性相形成が困難になるという問題があった。 例えば、ペンタセン等の結晶性材料はアモルファスシリコン並みの高いキャリアー移動度を有し、優れた半導体デバイス特性を発現することが報告されている(非特許文献1参照)。しかし、ペンタセンはその強い凝集性のため溶解性が低く、一般的には経済的な塗布法適用することができない。また、ペンタセン等のポリアセンを溶解させ塗布法でデバイスを製造する試みも報告されているが(特許文献1参照)、元来難溶性のポリアセン類を溶解させるためには、高温加熱等の条件が必要とされ、さらにペンタセンの溶液は極めて容易に空気酸化されることから、塗布法の適用はプロセス的、経済的に困難を伴うものであった。また、ポリ−(3−ヘキシルチオフェン)等の自己組織化材料は溶媒に可溶であり、塗布によるデバイス作製が報告されているが、キャリアー移動度が結晶性化合物より1桁低いことから(非特許文献2参照)、得られた有機半導体デバイスの特性が低いという問題があった。 一方、硫黄原子は硫黄原子間の相互作用が期待されることから、低分子の結晶性化合物あるいは液晶性化合物において有機半導体材料によく利用される原子である。例えばジチオフェンテトラチアフルバレンは、塗布で作製したトランジスタでも高いキャリアー移動度を示すことが報告された(非特許文献3)。また、チオフェン環を主鎖あるいは主骨格に有する化合物も知られており、有機トランジスタとして作動することが報告されている(非特許文献4及び5)。しかし、これらの含硫黄化合物は、その合成に多工程を要する、あるいはキャリアー移動度が低い等の問題があり、工業的な適用には多くの解決すべき課題があった。 ジベンゾチオフェンの一つであるジナフトチオフェンは優れた半導体デバイス特性を期待できる有望な化合物であるが、その合成には10工程もの多くの工程を要し、経済的に好ましくない(非特許文献6)。「ジャーナル オブ アプライドフィジックス」、(米国)、2002年、92巻、5259−5263頁「サイエンス」、(米国)、1998年、280巻、1741−1744頁「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー」、(米国)、2004年、126巻、984−985頁「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー」、(米国)、2005年、127巻、2406−2407頁「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー」、(米国)、2005年、127巻、5084−5085頁「ジャーナル オブ ヘテロサイクリック ケミストリー」、1983年、20巻、1143−1148頁特WO2003/016599 そこで、本発明は上記の従来技術が有する問題点に鑑み、優れた耐酸化性を有し、塗布法による半導体活性相形成が可能なジベンゾチオフェン誘導体、製造工程が短縮され経済的に優れるジベンゾチオフェン誘導体の製造方法、並びに、該ジベンゾチオフェン誘導体を用いた耐酸化性有機半導体材料並びに有機薄膜を提供することを目的とする。 本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討の結果、新規なジベンゾチオフェン誘導体、及びその製造方法を見出した。加えて、該ジベンゾチオフェン誘導体からなる耐酸化性有機半導体材料及びその薄膜を見出した。さらに、該ジベンゾチオフェン誘導体を製造するに好適な前駆化合物であるジハロビフェニル誘導体を見出し、本発明を完成するに到った。 以下に本発明を詳細に説明する。(ジベンゾチオフェン誘導体) 本発明のジベンゾチオフェン誘導体は、下記一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体であり、下記(a)及び(b)の場合を除くジベンゾチオフェン誘導体である。(a)mが0であり且つA1環が一般式(A−2)で示される。(b)mが1であり、A1及びA2環が共に一般式(A−2)で示され且つ置換基R1〜R4と置換基R9〜R12が共に水素である。[ここで、置換基R1〜R4は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数1〜20の有機オキシ基、又はフッ素原子を示す。mは0又は1の整数であり、A1及びA2環は同一又は異なって、下記一般式(A−1)で示されるベンゾシクロブタ型構造、一般式(A−2)で示されるベンゾ型構造、又は一般式(A−3)で示されるナフト型構造を有する。](ここで、置換基R5〜R18は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数1〜20の有機オキシ基、又はフッ素原子を示す。なお、置換基群R5〜R8、R9〜R12、及びR14〜R17は、それぞれに、各置換基群内の任意の二以上の置換基が互いに結合し、置換基を有してもよいベンゼン環又は置換基を有してもよいチオフェン環を形成することができる。) 本発明の一般式(1)の置換基について、さらに述べる。 置換基R1〜R4における、炭素数1〜20のアルキル基は特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、ドデシル基等を挙げることができ;炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基は特に限定されず、例えばトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、パーフルオロヘキシル基等を挙げることができる。 置換基R1〜R4における、炭素数4〜30のアリール基は特に限定されず、例えばフェニル基、p−トリル基、p−(n−オクチル)フェニル基、m−(n−オクチル)フェニル基、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−フェノキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、1−ビフェニレノ基、2−ビフェニレノ基、ビフェニル基、パーフルオロビフェニル基、ターフェニル基、2−チエニル基、2,2’−ビチエニル−5−基、5’−(n−オクチル)−2,2’−ビチエニル−5−基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、2,2’−ビピリジル−6−基、テトラフルオロピリジル基、2−チエニル基、3−チエニル基、5−(n−ヘキシル)−2−チエニル基、2,2’−ビチエニル−5−基、キノリル基、(ジフェニルアミノ)フェニル基、(ジフェニルアミノ)ビフェニル基等を挙げることができ、好ましくは、フェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、ペンタフルオロフェニル基である。 置換基R1〜R4における、炭素数1〜20の有機オキシ基は特に限定されず、例えばメトキシ基、エトキシ基、1−ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−(トリフルオロメチル)フェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基等を挙げることができる。 置換基R1〜R4は好ましくは水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基であり、より好ましくは水素原子及び/又はフッ素原子である。 一般式(1)のmは、好ましくは1である。 一般式(1)のA1及びA2環は、一般式(A−1)、(A−2)又は(A−3)で示される構造から選ばれるものであれば、特に限定されない。好ましくは、両環が共に一般式(A−1)で示されるベンゾシクロブタ型構造である場合;A1環が一般式(A−1)で示されるベンゾシクロブタ型構造であり、A2環が一般式(A−2)で示されるベンゾ型構造である場合;及びA1環が一般式(A−2)で示されるベンゾ型構造であり、A2環が一般式(A−3)で示されるナフト型構造である場合であり;より好ましくは両環が共に一般式(A−1)で示されるベンゾシクロブタ型構造である。 さらに、A1及びA2環の置換基について述べる。 置換基R5〜R18における、炭素数1〜20のアルキル基は特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、ドデシル基等を挙げることができ;炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基は特に限定されず、例えばトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、パーフルオロヘキシル基等を挙げることができる。 置換基R5〜R18における、炭素数4〜30のアリール基は特に限定されず、例えばフェニル基、p−トリル基、p−(n−オクチル)フェニル基、m−(n−オクチル)フェニル基、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、p−(n−パーフルオロオクチル)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−フェノキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、1−ビフェニレノ基、2−ビフェニレノ基、ビフェニル基、パーフルオロビフェニル基、ターフェニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、2,2’−ビピリジル−6−基、テトラフルオロピリジル基、キノリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、5−(n−ヘキシル)−2−チエニル基、2,2’−ビチエニル−5−基、5’−(n−オクチル)−2,2’−ビチエニル−5−基、2−ベンゾチエニル基、(ジフェニルアミノ)フェニル基、(ジフェニルアミノ)ビフェニル基等を挙げることができ、好ましくはフェニル基、p−(n−オクチル)フェニル基、p−(n−パーフルオロオクチル)フェニル基、2−チエニル基、5−(n−ヘキシル)−2−チエニル基、5’−(n−オクチル)−2,2’−ビチエニル−5−基等を挙げることができる。置換基R5〜R18における、炭素数2〜20のアルキニル基は、例えばエチニル基、メチルエチニル基、イソプロピルエチニル基、tert−ブチルエチニル基、(n−オクチル)エチニル基、(トリフルオロメチル)エチニル基、(n−パーフルオロオクチル)エチニル基、フェニルエチニル基、{p−(n−オクチル)フェニル}エチニル基、ナフチルエチニル基、アントラセニルエチニル基、ビフェニレノエチニル基、ビフェニルエチニル基、ターフェニルエチニル基、ベンジルエチニル基、パーフルオロフェニルエチニル基、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エチニル基、{p−(n−パーフルオロオクチル)フェニル}エチニル基等を挙げることができ、好ましくは(n−オクチル)エチニル基、(トリフルオロメチル)エチニル基、フェニルエチニル基、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エチニル基、{p−(n−パーフルオロオクチル)フェニル}エチニル基、ビフェニルエチニル基、ターフェニルエチニル基等である。 置換基R5〜R18における、炭素数1〜20の有機オキシ基は特に限定されず、例えばメトキシ基、エトキシ基、1−ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−(トリフルオロメチル)フェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基等を挙げることができる。 置換基R5〜R18は、好ましくは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、又は炭素数4〜30のアリール基であり、より好ましくは水素原子又はフッ素原子である。中でも、置換基R9〜R12は、好ましくはフッ素原子、炭素数4〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基であり、特に好ましくはフッ素原子である。 なお、置換基群R5〜R8、R9〜R12、及びR14〜R17が、それぞれに、各置換基群内の任意の二以上の置換基が互いに結合し、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいチオフェン環を形成することができ、好ましくは置換基を有してもよいベンゼン環である。置換基を有してもよいベンゼン環は特に限定はなく、例えば、ベンゼン環、ジメチルベンゼン環、ジフェニルベンゼン環を挙げることができ、好ましくはベンゼン環である。置換基を有してもよいチオフェン環は特に限定はなく、例えば、チオフェン環、メチルチオフェン環、フェニルチオフェン環を挙げることができ、好ましくはチオフェン環である。 本発明の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体の例として、以下の化合物を挙げることができる。(ジハロビフェニル誘導体)本発明のジハロビフェニル誘導体は、下記一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体であり、下記(c)及び(d)の場合を除くジハロビフェニル誘導体である。(c)A1環が一般式(A−1)で示される。(d)mが1であり且つA1及びA2環が共に一般式(A−2)で示され、置換基R1〜R4が水素原子であり、且つ置換基R9〜R12が水素原子及び炭素数1〜3のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1以上の置換基である。(ここで、置換基X1及びX2は臭素原子、ヨウ素原子又は塩素原子を示し、置換基R1〜R4、A1及びA2環、置換基R5〜R18並びに記号mは一般式(1)で示される置換基、環並びに記号と同意義を示す。) 一般式(2)の置換基について、さらに述べる。 X1及びX2は、好ましくは臭素及びヨウ素であり、より好ましくはヨウ素である。 置換基R1〜R4は好ましくは水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基であり、より好ましくは水素原子及び/又はフッ素原子である。 一般式(2)のmは、好ましくは1である。 一般式(2)のA1及びA2環は、好ましくはA1及びA2環が共に一般式(A−2)又は一般式(A−3)で示される構造である、若しくはA1環が一般式(A−2)で示され且つA2環が一般式(A−3)で示される構造である。 一般式(2)の置換基R5〜R18は好ましくは水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基であり、より好ましくは水素原子及び/又はフッ素原子である。 一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体例として、以下の化合物を挙げることができる。(ジベンゾチオフェン誘導体製造方法) 次に、本発明のジベンゾチオフェン誘導体の製造方法について述べる。 一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体は、下記一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体をリチオ化及び/又はグリニャール化した後、硫黄化合物又は硫黄と反応させることにより製造することができる。 一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体をリチオ化する場合、用いるリチオ化剤は、一般式(2)におけるハロゲンX1及び/又はX2をリチウムに置換することができるものである限り特に限定されず、例えば、有機リチウム試薬、有機リチウムアミド試薬、リチウム金属を挙げることができる。該有機リチウム試薬として、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等を挙げることができ;該有機リチウムアミド試薬として、例えばリチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等を挙げることができる。係るリチオ化剤は、好ましくはn−ブチルリチウムである。 リチオ化反応は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えばテトラヒドロフラン(以後、THFと略す)、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、好ましくはTHF、ジエチルエーテルである。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。 リチオ化剤は一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体に対し0.9〜3.0当量、好ましくは1.8〜2.5当量用いる。リチオ化反応の温度は−100〜60℃、好ましくは−90〜30℃であり、反応時間は1〜360分、好ましくは3〜60分である。 一般式(2)のジハロビフェニル誘導体をグリニャール化する場合、用いるグリニャール化剤は一般式(2)におけるハロゲンX1及び/又はX2をMgX(ここで、Xは塩素、臭素、又はヨウ素を示す。)に置換できるものであれば良く、例えば、Mg金属あるいはイソプロピルマグネシウムブロマイド、tert−ブチルマグネシウムブロマイド等のアルキルグリニャール試薬を挙げることができるが、好ましくはMg金属である。Mg金属の形態は特に限定されず、例えば、削り状、リボン状、粒状を挙げることができる。 グリニャール化反応は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えばTHF、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、好ましくはTHF、ジエチルエーテルである。 グリニャール化剤は、例えばMg金属の場合、一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体に対し好ましくは0.9〜20当量、好ましくは1.8〜5当量の範囲で用いる。グリニャール化反応の温度は好ましくは−20〜110℃であり、反応時間は1〜360分、好ましくは3〜60分の範囲である。 上述のように一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体をリチオ化及び/又はグリニャール化した後、係る反応物を硫黄化合物又は硫黄と反応させることで一般式(1)のジベンゾチオフェン誘導体を製造することができる。 ここで用いる硫黄化合物又は硫黄は、リチオ化及び/又はグリニャール化された上記一般式(2)の化合物と反応し、一般式(1)のジベンゾチオフェン誘導体を与えるものであれば特に限定されない。例えば、硫化ビス(アリールスルホニル)、ハロ硫化(アリールスルホニル)、ジハロ硫黄、又は硫黄を挙げることができ、好ましくは硫化ビス(アリールスルホニル)又はジハロ硫黄であり、より好ましくは硫化ビス(アリールスルホニル)である。 硫化ビス(アリールスルホニル)の具体例として、硫化ビス(フェニルスルホニル)、硫化ビス(p−トリルフェニルスルホニル)、硫化ビス(p−メトキシフェニルスルホニル)、硫化ビス(p−フルオロフェニルスルホニル)、硫化ビス(p−トリフルオロメチルフェニルスルホニル)等を挙げることができ、好ましくは硫化ビス(フェニルスルホニル)である。 ハロ硫化(アリールスルホニル)の具体例として、クロロ硫化(フェニルスルホニル)、ブロモ硫化(フェニルスルホニル)、フルオロ硫化(フェニルスルホニル)、クロロ硫化(p−メトキシフェニルスルホニル)、クロロ硫化(p−フルオロフェニルスルホニル)、クロロ硫化(p−トリフルオロメチルフェニルスルホニル)等を挙げることができ、好ましくはクロロ硫化(フェニルスルホニル)である。ジハロ硫黄の具体例として、ジクロロ硫黄、ジブロモ硫黄、ジヨード硫黄、ジフルオロ硫黄を挙げることができ、好ましくはジクロロ硫黄である。 生成したリチオ化物及び/又はグリニャール化物と硫黄化合物又は硫黄との反応は好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えばリチオ化反応に用いた溶剤を挙げることができる。用いる硫黄化合物又は硫黄の量は、一般式(2)のジハロビフェニル誘導体に対し、0.7〜2.0当量であり、好ましくは0.9〜1.5当量である。硫黄化合物又は硫黄との反応温度は−100〜100℃、好ましくは−80〜50℃であり、反応時間は1〜48時間、好ましくは1〜24時間である。 本発明の一般式(1)のジベンゾチオフェン誘導体の製造は、好ましくは窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気下で実施する。 かくして得られた、一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体は、さらに精製することができる。精製する方法は特に限定されず、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶化、あるいは昇華による方法を挙げることができる。(ジハロビフェニル誘導体製造方法) 次に、本発明の一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体(以下、「前駆化合物」と称することもある。)の好ましい製造方法について述べる(以下、「前駆体製造方法I」と称する。)。さらに左右の置換記構造が対称な前駆化合物を製造する場合について述べる(以下、「前駆体製造方法II」と称する。)。(前駆体製造方法I) 前駆化合物は下記一般式(3)で示されるアリールジハライド誘導体と下記一般式(4)で示される2−ハロアリール金属試薬をパラジウム及び/又はニッケル触媒存在下でクロスカップリング反応させることにより得ることができる。(ここで、置換基X3は臭素、ヨウ素又は塩素を示し、その他の置換基X1、R1、R2、及びA1環は一般式(2)で示される置換基及び環と同意義を示す。)(ここで、MはMg、B、Zn、Sn又はSiのハロゲン化物、ハイドロオキサイド、アルコキサイド又はアルキル化物を示し、置換基X2、R3、R4、及びA2環、並びに記号mは一般式(2)で示される置換基及び環、並びに記号と同意義を示す。) 一般式(3)のX3は、好ましくは臭素又はヨウ素である。 係るクロスカップリング反応例として、一般式(4)で示される2−ハロアリール金属試薬である2−ハロアリールジンククロライドを一般式(3)で示されるアリールジハライド誘導体に対し0.8〜2.2当量、触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等の0価のパラジウム化合物又はジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等の2価のパラジウム化合物を一般式(3)で示されるアリールジハライドに対して0.1モル%〜20モル%用い、溶剤としてTHF、ジエチルエーテル、トルエン、エタノール、水等を用い、反応温度10〜110℃、反応時間0.5〜48時間で反応させる方法を挙げることができる。 一般式(4)で示される2−ハロアリール金属試薬は、例えば、アリールジハライド誘導体をイソプロピルマグネシウムブロマイド等のグリニャール試薬、あるいはn−ブチルリチウム等の有機リチウム試薬によりハロゲン/金属交換反応を行った後、塩化亜鉛あるいはトリメトキシボラン等と反応させることで調製することができる。トリメトキシボランと反応させた時は、酸性水溶液でさらに処理することでB(OH)2基を導入することができる。(前駆体製造方法II) 前駆化合物の製造に置いて左右の置換記構造が非対称若しくは対称な前駆化合物は、上記の前駆体製造方法Iにより製造することができる。一方、左右の置換記構造が対称な前駆化合物は以下の方法でも製造することができる。 即ち、一般式(3)で示されるアリールジハライド誘導体をリチオ化剤を用いてホモカップリング反応させて一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体を得ることができる。なお、ここで、ホモカップリング反応とは2つのアリールジハライド誘導体を単結合させることを意味する。 該ホモカップリング反応に用いるリチオ化剤は、一般式(3)におけるハロゲンX1及びX3の何れか一つをリチオ化することができるものである限り特に限定されず、例えば、一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体例から一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体を得る際に用いたリチオ化剤を挙げることができる。好ましくはn−ブチルリチウムである。 該リチオ化反応は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えば一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体例から一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体を得る際に用いた溶剤を挙げることができる。 リチオ化剤は一般式(3)で示されるアリールジハライド誘導体に対し0.3〜1.2当量、好ましくは0.4〜0.7当量用いる。リチオ化反応の温度は−110〜40℃、好ましくは−100〜30℃であり、反応時間は1〜240分、好ましくは3〜120分である。 なお、n−ブチルリチウムによる該ホモカップリング反応は、例えば「ジャーナル オブ ケミカルソサイティー、パーキン トランザクション1」、2001年、159−165頁に記載されている方法を用いることもできる。(耐酸化性有機半導体材料) 次に、本発明の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体を含む耐酸化性有機半導体材料について述べる。該耐酸化性有機半導体材料は溶剤への溶解性、耐酸化性に優れ、好適な塗布性を有する。 中でも、一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体の内、前述の(a)及び(b)の場合を除くジベンゾチオフェン誘導体が好ましい。 本発明の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体の溶解に用いる溶剤は、好ましくは、塩素等のハロゲンを含むハロゲン系溶剤、例えばo−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロホルム;1個乃至2個の酸素を含むエーテル系溶剤、例えばTHF、ジオキサン;芳香族化合物の炭化水素系溶剤、例えばトルエン、キシレン;エステル系溶剤、例えば酢酸エチル、γ−ブチロラクトン;アミド系溶剤、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン;等である。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。中でも、好ましくはトルエン、又はo−ジクロロベンゼンである。 上記に挙げた溶剤と一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体を混合攪拌することにより、一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体を含む耐酸化性有機半導体の溶液を調製することができる。混合攪拌の温度は10〜200℃であり、好ましくは20℃から190℃である。10℃より低いと濃度が低くなりすぎ、良好な薄膜を得ることが難しくなり、好ましくなく、200℃より高いと常圧で使用できる溶剤が限られると同時に経済的に好ましくない。溶液の濃度は、溶剤及び温度により変えることができるが、好ましくは0.01〜10.0重量%である。溶液の調製は空気中でも実施することができるが、好ましくは窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で調製する。 一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体を含む耐酸化性有機半導体材料の耐酸化性の評価は、該溶液を所定時間、空気と接触させる方法で実施することができる。評価に用いる溶剤は予め脱気しておき、溶存酸素を除去する。空気との接触時間は、0.5分〜3時間が適当である。酸化の進行は、溶液の色の変化並びにガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析による酸化物の検出により行うことができる。 本発明の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体を含む耐酸化性有機半導体材料の溶液は、用いられる一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体自体が適度の凝集性を有することから比較的に低温で溶剤へ溶解でき、且つ耐酸化性があることから、塗布法による有機薄膜の製造に好適に適用できる。即ち、雰囲気から厳密に空気を除く必要がないことから塗布工程を簡略化することができる。塗布は空気中でも実施できるが、好ましくは溶剤の乾燥を考慮して窒素気流下で行う。なお、好適な塗布性を得るために、本発明の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体を含む耐酸化性有機半導体材料の溶液の粘度は、0.005〜20ポアズの範囲にあることが好ましい。(有機薄膜) 次に本発明の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体を含む耐酸化性有機半導体材料を用いた有機薄膜について述べる。係る有機薄膜は上記の耐酸化性有機半導体材料溶液の基板への塗布により製造することができる。 基板への塗布による薄膜の製造は、該耐酸化性有機半導体材料溶液を基板上に塗布した後、加熱、気流、及び自然乾燥等の方法により溶剤を気化させることで実施することができる。該溶液中の一般式(1)の化合物の濃度、特に限定はなく、例えば0.01〜10.0重量%であることが好ましい。塗布温度は特に限定されず、例えば20℃から200℃の間で好適に実施することができる。塗布の具体的方法は特に限定されず、公知の方法、例えばスピンコート、キャストコート、及びディップコート等を用いることができる。さらにスクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の印刷技術を用いても作製することが可能である。使用する基板の材料は特に限定されるものではなく、結晶性、非結晶性の種々の材料を用いることができる。また、基板は絶縁性あるいは誘電性を有する材料であっても良い。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール等のプラスチック基板;ガラス、石英、酸化アルミニウム、シリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料基板;金、銅、クロム、チタン等の金属基板を好適に用いることができる。またこれらの基板の表面は例えばオクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等のシラン類又はヘキサメチルジシラザンで修飾処理したものであっても使用することができる。塗布した後の溶剤の乾燥は、常圧若しくは減圧で除去することができる、又、窒素気流、加熱により乾燥してもよい。さらに、溶剤の気化速度を調節することで本発明の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体の結晶成長を制御することができる。基板への塗布により得られる薄膜の膜厚は特に限定されないが、好ましくは1nm〜100μm、特に好ましくは10nm〜10μmである。 また、本発明の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体を含む耐酸化性有機半導体材料を用いた有機薄膜は真空蒸着法により基板上に作製することもできる。 本発明の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体は平面剛直性の高い分子構造を有することから、優れた半導体特性を与えることが期待できる。又、該ジベンゾチオフェン誘導体はトルエン等の溶媒に溶解し、溶液状態にあっても容易に空気酸化されることはない。従って、塗布法により半導体薄膜を容易に作成できる。したがって、本発明の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体は電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、又はICタグ用等のトランジスタの有機半導体活性相用途、さらに有機ELディスプレイ材料、有機半導体レーザー材料、有機薄膜太陽電池材料、又はフォトニック結晶材料等に利用することができる。 優れた耐酸化性を有し、塗布法による半導体活性相形成が可能な、ジベンゾチオフェン誘導体及びその用途を提供する。さらに、短工程で経済性に優れたジベンゾチオフェン誘導体の製造方法を提供する。本発明の製造法では置換基を導入したジベンゾチオフェン誘導体を製造することができ、新規な有機半導体材料を提供することができる。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。 生成物の同定には1H NMRスペクトル及びマススペクトルを用いた。なお、1H NMRスペクトルは日本電子製JEOL GSX−270WB(270MHz)を用いて測定した。マススペクトル(MS)は日本電子製JEOL JMS−700を用いて、試料を直接導入し、電子衝突(EI)法(70エレクトロンボルト)で測定した。 反応の進行の確認等はガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析を用いた。 ガスクロマトグラフィー分析 装置 島津GC14B カラム J&Wサイエンティフィック社製、DB−1,30m ガスクロマトグラフィー−マススペクトル分析 装置 パーキンエルマーオートシステムXL(MS部;ターボマスゴールド) カラム J&Wサイエンティフィック社製、DB−1,30 X線回折測定は、以下の条件で行った。 装置 理学電機製RAD−C X線 CuKα線(グラファイトモノクロメーター使用)、50kV,200mA 条件 θ−2θスキャン、3≦2θ≦70°、スキャンスピード=4.8°/分、 連続スキャン 0.04°毎計測 反応用の溶媒は市販の脱水溶媒をそのまま用いた。 合成例1 (1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼンの合成) 1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼンは「シンレット」、2003年、29−34頁に記載されている方法に従い合成した。 メカニカルスターラー付き1lの三口フラスコに過ヨウ素酸36.9g(162mmol)及び硫酸150mlを加えた。過ヨウ素酸が溶解した後、ヨウ化カリウム80.7g(486mmol)を少しずつ添加した。その内容物の温度を0℃に冷却し、1,2−ジブロモベンゼン75.0g(和光純薬工業製)(318mmol)を添加した。得られた混合物を0℃で30分間撹拌した。反応混合物を氷へ注いだ後、濾過し固体を取り出した。その固体をTHF/メタノールから2回再結晶化し、1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼンの白色結晶を得た(76.2g、収率49%)。 1H NMR(CDCl3,21℃):δ=8.03(s,2H). 合成例2 (4,5−ジブロモ−2,2’−ジヨードビフェニルの合成) 窒素雰囲気下、300mlシュレンク反応容器に1,2−ジヨードベンゼン(東京化成工業製)8.13g(24.6mmol)及びTHF35mlを加えた。この溶液を−70℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムブロマイド(関東化学製、0.65M)のTHF溶液40ml(26mmol)を滴下した。30分間かけて−65℃まで温度を上げた後、その温度で塩化亜鉛(シグマ−アルドリッチ製、1.0M)のジエチルエーテル溶液26ml(26mmol)を滴下した。溶液を徐々に室温まで昇温した後、生成した白色スラリー液を減圧濃縮し白色固体を得た。 得られた白色固体に、合成例1で合成した1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼン10.08g(20.6mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)691mg(0.597mmol)、及びTHF56mlを添加した。加熱還流条件で3時間反応を実施した後、容器を水冷し3N塩酸20mlを添加することで反応を停止させた。反応後の混合液を減圧濃縮し、溶媒を留去した。析出した固体を濾液が中性になるまで水で洗浄し、さらにヘキサンで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥した後、トルエン22mlを用いて、再結晶で精製した。析出した固体を濾過し、トルエン2ml及びヘキサン8mlで洗浄した。減圧乾燥後、4,5−ジブロモ−2,2’−ジヨードビフェニルの白色固体を得た(7.58g,収率65%)。 融点:177−179℃(分解) 1H NMR(CDCl3,21℃):δ=8.16(s,1H),7.93(d,J=7.8Hz,1H),7.43(s,1H),7.42(t,J=7.6Hz,1H),7.17−7.06(m,2H). MS m/z: 564(M+,25%),437(M+−I,80),310(M+−2I,26),150(M+−(2Br+2I),100). 合成例3 (2,3−ジブロモビフェニレンの合成) 窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にp−フルオロブロモベンゼン1.43g(8.16mmol)及びTHF50mlを添加した。この溶液を−72℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液4.8ml(7.6mmol)を滴下した。−72℃で15分間反応を行った後、−98℃に冷却しp−フルオロフェニルリチウムの溶液を調製した。 一方、窒素雰囲気下、300mlシュレンク反応容器に合成例2で合成した4,5−ジブロモ−2,2’−ジヨードビフェニル2.00g(3.55mmol)及びTHF65mlを添加した。この溶液を−98℃に冷却し、ここにp−フルオロフェニルリチウムの溶液をキャヌラーを用いて導入した。2分間撹拌後、−97℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)1.45g(10.8mmol)を投入した。一晩かけて室温まで反応温度を上げた。3N塩酸を添加した後、トルエン(40ml)及びNaClを加えた後分相し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、反応混合物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製し(溶離液;ヘキサン)、目的物を含む固体627mgを得た。ヘプタン5.8mlを用い再結晶化による精製を行い、2,3−ジブロモビフェニレンの黄色固体を得た(300mg)。さらに濾液を濃縮後、ヘキサンから再結晶化することで2,3−ジブロモビフェニレンの黄色固体を得た(57mg)。(合計収率32%)。 融点:152−153℃ 1H NMR(CDCl3,21℃):δ=6.86(s,2H),6.83(dd,J=5.0Hz,2.9Hz,2H),6.70(dd,J=4.9Hz,2.9Hz,2H). MS m/z: 310(M+,73%),229(M+−Br,5),150(M+−2Br,100). 合成例4 (3,3’−ジブロモ−2,2’−ビス(ベンゾシクロブタ)ビフェニルの合成) 窒素雰囲気下、50mlシュレンク反応容器に合成例3で合成した2,3−ジブロモビフェニレン178mg(0.574mmol)及びTHF6mlを加えた。これを−95℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液0.18ml(0.286mmol)を滴下した。−95℃で1時間反応後、3N塩酸を加えた。トルエン及びNaClを添加し分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。減圧濃縮し、得られた固体残渣をトルエン6.2mlを用い再結晶化した。析出した固体を濾過、乾燥し3,3’−ジブロモ−2,2’−ビス(ベンゾシクロブタ)ビフェニルの光沢のある黄色結晶を得た(83mg,収率63%)。 融点:294−298℃ 1H NMR(CDCl3,21℃):δ=6.89(s,2H),6.81(dd,J=5.0Hz,2.8Hz,4H),6.70(dd,J=5.4Hz,2.8Hz,4H),6.48(s,2H). MS m/z: 460(M+,30%),300(M+−2Br,100),150((M+−2Br)/2,81). 実施例1 ((ビス(ベンゾシクロブタ)ジベンゾチオフェンの合成) 窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例4で合成した3,3’−ジブロモ−2,2’−ビス(ベンゾシクロブタ)ビフェニル125.0mg(0.272mmol)及びTHF14mlを加えた。−85℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液0.35ml(0.56mmol)を滴下した。−85℃で5分間撹拌した後、硫化ビス(フェニルスルホニル)(アクロス製)87.7mg(0.278mmol)の粉を投入した。一晩かけて室温まで昇温した後、水を加えた。トルエンを添加し、黄色固体を濾過した。この黄色固体をトルエン、水、さらにアセトンで洗浄した。減圧乾燥後、得られた粗黄色固体55.3mgをトルエン90mlから再結晶化することで、(ビス(ベンゾシクロブタ)ジベンゾチオフェンの光沢のある黄色板状結晶を得た(45.4mg、収率50%)。 融点:365−366℃ 1H NMR(1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2,80℃):δ=7.14(s,2H),6.98(s,2H),6.84−6.68(m,8H). MS m/z: 332(M+,100%),166(M+/2,10). 得られた(ビス(ベンゾシクロブタ)ジベンゾチオフェンの構造式を下記に示す。 合成例5(3,3’−ジブロモ−2,2’−ビナフチルの合成) 原料である2−ブロモ−3−ヨードナフタレンの合成は、シンセティック コミュニケーションズ、2003年、33巻、2751−2756頁に記載されている方法を用いて行った。 窒素雰囲気下、300mLシュレンク反応容器に2−ブロモ−3−ヨードナフタレン1.03g(3.09mmol)及びTHF6mlを加えた。これを−60℃に冷却し、イソブチルマグネシウムブロミド(関東化学製、0.65M)のTHF溶液4.2ml(2.7mmol)をシリンジにより滴下して加えた。−60℃で75分撹拌した後、塩化亜鉛(シグマ−アルドリッチ製、0.5M)のTHF溶液5.4ml(2.7mmol)を滴下した。−40℃まで撹拌しながら自然昇温した後、冷却バスをはずして室温まで戻した。得られた溶液から溶媒を減圧留去し、白色粉体を得た。得られた白色粉体に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(東京化成工業製)136mg(0.118mmol)と2−ブロモ−3−ヨードナフタレン0.90g(2.70mmol)及びTHF8mlを加えた。得られた溶液を65℃に昇温してその温度で5時間撹拌した。室温まで冷却した後、3N塩酸溶液4mlを用いて反応をクエンチした。溶液を濃縮後ジクロロメタンにて抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを除去した後、ジクロロメタンを濃縮除去して得られた残渣にn−ヘプタン20mlとクロロホルム5mlからなる混合溶媒を添加し、再結晶化を行った。室温まで冷却後、析出した固体を濾過し、3,3’−ジブロモ−2,2’−ビナフチルの白色固体0.82gを得た(収率74%)。 1H NMR(CDCl3,21℃):δ=8.20(s,2H),7.97−7.75(m,6H),7.59−7.48(m,4H). MS m/z: 412(M+,26%),332(M+−Br,5),252(M+−2Br,100),126((M+−2Br)/2,54). 合成例6(3,3’−ジブロモ−2,2’−ビナフチルの合成) 原料である2,3−ジブロモナフタレンの合成は、ジャーナル オブ オルガニック ケミストリー、1983年、48巻、2364−2366頁に記載されている方法を用いて行った。 窒素雰囲気下、500mlシュレンク反応容器に2,3−ジブロモナフタレン(8.31g,29.1mmol)及びTHF(200ml)を加えた。これを−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液9.6ml(15.3mmol)を滴下した。冷却用バスを外し、室温で1時間撹拌した。3N塩酸を用いた処理後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン−トルエン)、3,3’−ジブロモ−2,2−ビナフチルの白色固体3.30gを得た(収率55%)。この生成物の1H NMR(CDCl3,21℃)及びマススペクトルは、合成例5で得られた生成物のそれらと同一であった。 実施例2 (ジナフトチオフェンの合成) 窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例54で合成した3,3’−ジブロモ−2,2’−ビナフチル294.0mg(0.71mmol)及びTHF24mlを加えた。−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液1.1ml(1.7mmol)を滴下した。−78℃で15分間撹拌した後、硫化ビス(フェニルスルホニル)(アクロス製)246.3mg(0.78mmol)の粉を投入した。一晩かけて室温まで昇温した後、水を加えた。トルエンを添加し、黄色固体を濾過した。この黄色固体をトルエン、水、さらにアセトンで洗浄した。減圧乾燥後、得られた粗黄色固体136.3mgをトルエン15mlから再結晶化することで、ジナフトチオフェンの光沢のある黄色板状結晶を得た(120.1mg、収率59%)。 融点:265−266℃ 1H NMR(CDCl3,21℃):δ=8.73(s,2H),8.23(s,2H),8.10−8.02(m,2H),7.95−7.87(m,2H),7.59−7.48(m,4H). MS m/z: 284(M+,100%),142(M+/2,9). 得られたジナフトチオフェンの構造式を下記に示す。 実施例3 (耐酸化性評価) 窒素雰囲気下、20mlシュレンク容器にo−ジクロロベンゼン2.4gを添加し、凍結(液体窒素)−減圧−窒素置換−融解から成るサイクルを3回繰り返すことで溶存酸素を除去した。そこへ実施例1で得られたビス(ベンゾシクロブタ)ジベンゾチオフェンの固体2.8mgを添加し、120℃に加熱し溶解させると黄色溶液となった。次にこのシュレンク容器の上部の栓を開け、1時間、外気に接触させることで空気を導入し、さらに120℃で撹拌した。しかし、色の変化は見られず、ガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析で酸化に由来する新たなピークの出現はなかった。 比較例1 窒素雰囲気下、20mlシュレンク容器にo−ジクロロベンゼン2.7gを添加し、凍結(液体窒素)−減圧−窒素置換−融解から成るサイクルを3回繰り返すことで溶存酸素を除去した。そこへペンタセン(東京化成工業製)2.1mgを添加し、120℃に加熱し溶解させると赤紫色溶液となった。次にこのシュレンク容器の上部の栓を開け、1時間、空気を導入すると溶液の色がピンクに変化していた。さらに120℃で撹拌した。ガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析から、6,13−ペンタセンキノンが生成していることがわかった。 さらにこの溶液を120℃、1時間、撹拌下で空気を導入すると溶液の色が黄に変化していた。ガスクロマトグラフィー分析から、6,13−ペンタセンキノンの生成が増加していることがわかった。 比較例2 窒素雰囲気下、20mlシュレンク容器にo−ジクロロベンゼン2.8gを添加し、凍結(液体窒素)−減圧−窒素置換−融解から成るサイクルを3回繰り返すことで溶存酸素を除去した。そこへジベンゾチオフェン(東京化成工業製)2.3mgを添加し、120℃に加熱し溶解させた。次にこのシュレンク容器の上部の栓を開け、1時間、外気に接触させることで空気を導入し、さらに120℃で撹拌した。ガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析から、酸化物に由来する新たなピークが出現していることがわかった。 実施例4 (有機薄膜の作成) 窒素雰囲気下、実施例1で得られたビス(ベンゾシクロブタ)ジベンゾチオフェン9.2mgをトルエン15.5gと混合し、110℃で1時間撹拌し、ビス(ベンゾシクロブタ)ジベンゾチオフェンの黄色溶液を調製した。 空気雰囲気下、凹面のある石英基板を75℃に加熱し、この基板上に上記の溶液をスポイトを用いて塗布し常圧下で乾燥し、膜厚420nmの薄膜を作製した。この薄膜の成分をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ビス(ベンゾシクロブタ)ジベンゾチオフェン以外にピークはなく、酸化されていなかった。従って、空気中でも酸化されることなくビス(ベンゾシクロブタ)ジベンゾチオフェンの薄膜を作成できることがわかった。 実施例5 (耐酸化性評価) 窒素雰囲気下、20mlシュレンク容器にo−ジクロロベンゼン2.8gを添加し、凍結(液体窒素)−減圧−窒素置換−融解から成るサイクルを3回繰り返すことで溶存酸素を除去した。そこへ実施例2で得られたジナフトチオフェンの固体2.2mgを添加し、120℃に加熱し溶解させると黄色溶液となった。次にこのシュレンク容器の上部の栓を開け、1時間、外気に接触させることで空気を導入し、さらに120℃で撹拌した。しかし、色の変化は見られず、ガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析で酸化に由来する新たなピークの出現はなかった。 実施例6 (有機薄膜の作成) 窒素雰囲気下、実施例2で得られたジナフトチオフェン5.0mgをトルエン17.2gと混合し、75℃で1時間撹拌し、ジナフトチオフェンの黄色溶液を調製した。 空気雰囲気下、凹面のある石英基板を75℃に加熱し、この基板上に上記の溶液をスポイトを用いて塗布し常圧下で乾燥し、膜厚360nmの薄膜を作製した。この薄膜の成分をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ジナフトチオフェン以外にピークはなく、酸化されていなかった。従って、空気中でも酸化されることなくジナフトチオフェンの薄膜を作成できることがわかった。さらに該薄膜のX線回折を測定した結果、面間距離1.42nmの(001)面のピークが得られ、基板上で配列した結晶性の薄膜であることがわかった。該X線回折パターンを図1に示した。ここで用いた石英基板のみのX線回折を測定したが、ピーク強度は非常に弱くジナフトチオフェンの薄膜のX線回折ピークに影響を与えるものではなかった。該石英基板のみのX線回折パターンを図2に示した。実施例6の薄膜のX線回折パターン実施例6の石英基板のX線回折パターン下記一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体であり、下記(a)及び(b)の場合を除くジベンゾチオフェン誘導体。(a)mが0であり且つA1環が一般式(A−2)で示される。(b)mが1であり、A1及びA2環が共に一般式(A−2)で示され且つ置換基R1〜R4と置換基R9〜R12が共に水素である。[ここで、置換基R1〜R4は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数1〜20の有機オキシ基、又はフッ素原子を示す。mは0又は1の整数であり、A1及びA2環は同一又は異なって、下記一般式(A−1)、(A−2)又は(A−3)で示される構造を有する。](ここで、置換基R5〜R18は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数1〜20の有機オキシ基、又はフッ素原子を示す。なお、置換基群R5〜R8、R9〜R12、及びR14〜R17は、それぞれに、各置換基群内の任意の二以上の置換基が互いに結合し、置換基を有してもよいベンゼン環又は置換基を有してもよいチオフェン環を形成することができる。)。mが1であり、A1及びA2環が共に一般式(A−1)で示される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のジベンゾチオフェン誘導体mが1であり、A1環が一般式(A−1)で示され、A2環が一般式(A−2)で示される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のジベンゾチオフェン誘導体mが1であり、A1環が一般式(A−2)で示され、A2環が一般式(A−3)で示される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のジベンゾチオフェン誘導体請求項1に記載の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体を含む耐酸化性有機半導体材料。請求項5に記載の耐酸化性有機半導体材料を用いた有機薄膜。下記一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体であり、下記(c)及び(d)の場合を除くジハロビフェニル誘導体。(c)A1環が下記一般式(A−1)で示される。(d)mが1であり且つA1及びA2環が共に下記一般式(A−2)で示され、置換基R1〜R4が水素原子であり、且つ置換基R9〜R12が水素原子及び炭素数1〜3のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1以上の置換基である。[ここで、置換基R1〜R4は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数1〜20の有機オキシ基、又はフッ素原子を示す。mは0又は1の整数であり、A1及びA2環は同一又は異なって、下記一般式(A−1)、(A−2)又は(A−3)で示される構造を有する。](ここで、置換基R5〜R18は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数1〜20の有機オキシ基、又はフッ素原子を示す。なお、置換基群R5〜R8、R9〜R12、及びR14〜R17は、それぞれに、各置換基群内の任意の二以上の置換基が互いに結合し、置換基を有してもよいベンゼン環又は置換基を有してもよいチオフェン環を形成することができる。)mが1であり、A1及びA2環が共に一般式(A−2)又は一般式(A−3)で示される構造であることを特徴とする、請求項7に記載の一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体。mが1であり、A1環が一般式(A−2)で示され、A2環が一般式(A−3)で示される構造であることを特徴とする、請求項7に記載の一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体。請求項7に記載の一般式(2)で示されるジハロビフェニル誘導体をリチオ化及び/又はグリニャール化した後、硫黄化合物又は硫黄と反応させることを特徴とする、請求項1に記載の一般式(1)で示されるジベンゾチオフェン誘導体の製造方法。硫黄化合物が、硫化ビス(アリールスルホニル)、ハロ硫化(アリールスルホニル)及びジハロ硫黄からなる群から選ばれる少なくとも一種の硫黄化合物であることを特徴とする請求項10に記載のジベンゾチオフェン誘導体の製造方法。硫化ビス(アリールスルホニル)が硫化ビス(フェニルスルホニル)であることを特徴とする請求項11記載のジベンゾチオフェン誘導体の製造方法。 【課題】優れた耐酸化性を有し、塗布法による半導体活性相形成が可能なジベンゾチオフェン誘導体、製造工程が短縮され経済的に優れる該誘導体の製造方法、並びに、該誘導体を用いた耐酸化性有機半導体材料並びに有機薄膜を提供する。【解決手段】一般式で示されるジベンゾチオフェン誘導体、及びジハロビフェニル誘導体をリチオ化及び/又はグリニャール化した後、硫黄化合物又は硫黄と反応させて製造する。[R1〜R4は水素原子、アルキル基等を示す。mは0又は1の整数。]【選択図】 なし


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