生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_コンニャクマンナンの組織化方法および組織化物
出願番号:2006005459
年次:2007
IPC分類:A23L 1/0528,G01N 33/02


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滝口 強 JP 2007185136 公開特許公報(A) 20070726 2006005459 20060113 コンニャクマンナンの組織化方法および組織化物 群馬県 591032703 滝口 強 A23L 1/0528 20060101AFI20070629BHJP G01N 33/02 20060101ALI20070629BHJP JPA23L1/212 102AG01N33/02 3 OL 7 4B016 4B016LE03 4B016LG07 4B016LK01 4B016LQ06 4B016LQ10 本発明は、溶液の冷凍時において、水が氷結する際に溶液中の溶質が濃縮される機構を応用してコンニャクマンナンを含む溶液中からコンニャクマンナンを選択的に組織化する方法およびその組織化物に関するものである。 こんにゃく、およびしらたきなどコンニャクマンナンを含んだ食品の組織化は、通常、こんにゃく粉1部に対し約30〜40部の水を加え攪拌することにより、コンニャクマンナンを水中に十分に分散させ、粘性を高めた後、こんにゃく用凝固剤(通常は石灰)を加え、混練後型箱に移して加熱するか混練物を包装後、加熱し一定形状に成形するか、いずれかによって行われる。 コンニャクマンナンの組織化は、コンニャクマンナンの鎖状分子中に存在するアセチル基がアルカリによって離脱し、離脱後にできる水素結合により分子鎖間に架橋が形成されることによる(非特許文献1)。なお、加熱は不可避の工程ではないが、反応を早めるためおよび製品の殺菌を兼ねて多くのこんにゃく製造工場で採用されている。 市販のこんにゃく製品はすべてこの方式によって組織化が行われ、こんにゃく製品として完成する。凝固剤として石灰が普及する以前は草木灰(カリウム、ナトリウム等を多く含むためその水溶液はアルカリ性を呈し、こんにゃく用凝固剤として使い得た)が用いられたが、凝固反応の基本はアルカリ性物質の添加・混合とそれに続く加熱である点に変わりはない。コンニャクマンナンの組織化はこれまではこの一方法しか無く、冷凍することにより通常では起こりえない条件下でのコンニャクマンナンの組織化を可能にする技術はこれまでに知られていない。 なお、組織化後のこんにゃくを冷凍することにより組織の変化を起こさせる方法(特許文献1)、半組織化状態のまま冷凍し、その後加熱する方法(特許文献2)は提唱されているが、本発明のように冷凍時に組織化を完成させ、その後の加熱を全く必要としない方法は知られていない。前梶健治:農化 52(1973)特開2002−159276特開平3−206856 コンニャクマンナンはこんにゃく粉(精粉ともいう)の主成分であり食物繊維としての機能を有し、その機能性を期待してこんにゃく粉入りの種々の食品、たとえばうどん、パン、菓子などが製造され市販されている。しかし、コンニャクマンナンの定量法には確たるものが無く、どの程度添加されているのか判然としないため、かえってコンニャクマンナンあるいはこんにゃくへの信頼性を低下せしめる結果となっているのが現状である。 現在、提唱されているコンニャクマンナンの定量法としては、塩酸等の鉱酸によって加水分解し、遊離したマンノースを液体クロマトグラフ等で測定する方法がある。しかし、この方法では酸による過分解によるマンノースの消失の懸念と夾雑物の影響により生じる誤差は常に避けられず信頼性に欠ける。また、煩瑣な実験過程および必要とされる高価な実験設備はこの方法の普及を困難にしている。 こんにゃくは、通常こんにゃく粉1部に対し水30〜40部を加え混練して得られる。つまり、製品としてのこんにゃくにはコンニャクマンナンが約3%含まれる。そしてその物性は、攪拌方法、原料とするこんにゃく粉の品質、アルカリ使用量等を種々に変え工夫しても知覚できるほどに変化させることは困難である。これは、現行の方法で凝固させる以上宿命的なものであり、現行の組織化方法を採る以上、新たな食感を有するこんにゃく製品の製造には困難が伴う。 すなわち、本発明が解決を目指す課題の主体は、コンニャクマンナンが本来もつ基本的性質、つまり基本的にアルカリ性条件下において架橋を形成するという性質を有効に活用し、過酷な処理を経ることなくコンニャクマンナンのみを選択的に組織化する方法の開発である。 上記の課題を解決する手段として、本発明は、通常よりも低い濃度のコンニャクマンナン水溶液に炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質を加え、冷凍することによりコンニャクマンナンとアルカリ性物質とを反応させ、コンニャクマンナンを組織化する方法を確立した。すなわち、コンニャクマンナン1部に対し、200〜2000部の水を加えて得たコンニャクマンナンの希薄溶液(コンニャクマンナンとして0.5%から0.05%)を冷凍することによって組織化させるものである。 これに対し、通常のこんにゃくがコンニャクマンナン1部に対し水30〜40部で製造されることから明らかなように、この程度の比率がコンニャクマンナンの組織化に適しており、製造上もまた容易であった。つまり、これまで、この比率を逸脱した場合にはコンニャクマンナンの組織化が安定しておこらないと考えられていた。 ここで、冷凍による組織化の過程を説明する。1.コンニャクマンナン、アルカリ性物質(凝固剤)、水の混合物、つまりコンニャクマンナンの水溶液にアルカリ性物質を加えたものが冷却され凝固点に達すると、水が次第に凍り、氷の結晶として成長する。そのため、コンニャクマンナンと凝固剤とが未凍結の部分に押しやられる2.その結果、本来組織化には不適な程度にまで希薄であったコンニャクマンナンは濃縮され、高濃度になる。同様に凝固剤成分も高濃度になり、高濃度のコンニャクマンナンと高濃度のアルカリ性物質とが先に凍った氷の周辺部で接近し、反応しようとする。3.アルカリ性物質と反応したコンニャクマンナン部分でアセチル基の離脱が起こり、組織化が完成する。 なお、組織化はコンニャクマンナンの分子鎖中のアセチル基の離脱による水素結合によるものであり、この点においては通常のコンニャクマンナンの組織化と異なるものではない。また、この反応はコンニャクマンナン以外の物質の介在によって影響を受けない。すなわち、本発明はコンニャクマンナンの新たな組織化方法に関するものである。 ここで発明した方法(仮に「凍結組織化法」とする)によれば、通常のこんにゃく製造の1/5〜1/100程度の低濃度でもコンニャクマンナンの組織化を完成させることができる。これにより、微量のコンニャクマンナンでも、アルカリ性物質と反応するというコンニャクマンナン本来の性質を利用して組織を形成せしめる事により分離・定量することが可能となった。さらに、他の素材と混合された状態の試料からもコンニャクマンナンを選択的に組織化させることをも可能にした。つまり、種々の混合物中からコンニャクマンナンを分別定量することが出来る。すなわち、これまで信頼するに足る定量方法のなかったコンニャクマンナンを簡便、穏和な条件下で定量することの出来る新たな分析手段として活用できる。 また、得られた組織化物の組織はコンニャクマンナンが非常に希薄であったがために通常のものと異なり、粗であり、吸水性のあるスポンジ様の物性である。そのため、通常のこんにゃくと異なった新規な食感を有する食品としてはもとより、食用以外の用途、たとえば断熱材、保湿剤等としても利用できる。 本発明の基本的実施形態について説明する。 組織化を試みる試料としては、コンニャクマンナン単独あるいはコンニャクマンナンと他の食品素材の混合物、いずれでも可である。まず、コンニャクマンナンとして0.05〜0.5%を含む試料の均質な水溶液を調製し、これに0.2〜2モル濃度のアルカリ性物質、たとえば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどの水溶液を加え、ストマッカー等で混合・均質化する。次に、これをたとえばペトリ皿のような平板型容器に移し、マイナス10℃〜80℃の冷凍庫におき、全体を完全に冷凍する。これを解凍するとコンニャクマンナン部分のみがアルカリ性物質と反応し、不可逆的に組織化された状態で得られる。この間におこる化学反応は「0003」において説明したとおりである。 以下に、本発明について実施例、比較例を用いて具体的に説明する。しかしながら本発明はこれらに限定されるものではない。組織化のために使用しうるアルカリ性物質 アルカリ性物質は本発明における組織化法において、凝固剤として機能するものであるが、その種類と効果について確認するため、代表的アルカリ性物質として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウムについて組織化能の有無を調べた。ここではコンニャクマンナンとして0.5%を含む水溶液について各アルカリ性物質の水溶液一定量を加え、凍結させるという方法を採ったが、その結果は表1に示したごとく、いずれのアルカリ性物質の場合でもコンニャクマンナンの組織化が認められた。これにより、本発明の実施に当たり、組織化の可否はアルカリ性物質の種類は問題ではなく、化学反応による組織化、つまりアセチル基の離脱とその後に起こる水素結合の形成に必要なpH値が得られるか否かに依存している。この実施例では各アルカリ性物質濃度を1モルとしたが、混合後のpHはすべて11を越えており、組織化には十分な値であった。表1コンニャクマンナン濃度と組織化の可否 凍結組織化法におけるコンニャクマンナン濃度と組織化の関係を、確認した。コンニャクマンナン濃度を0.05%〜1.00%としそれぞれに1M濃度の炭酸ナトリウム水溶液一定量を加え、一定形状の容器に移し、マイナス20℃の冷凍庫中に一夜おいた。その後容器を取り出し自然解凍し組織化の有無を調べた。その結果、表2に示したごとく、凍結組織化法によれば、0.05%という著しい低濃度領域でも組織化がおこることが実証された。また、得られた組織化物の組織は著しく粗で、液を絞ることが可能なほどであり、再び液中に投入すると復元する、クラゲあるいはスポンジのような物性で、通常の「こんにゃく」の示す物性とは全く異なるものであった。比較例1コンニャクマンナン濃度と通常法における組織化 実施例2との比較のため、まったく同一のコンニャクマンナン・アルカリ性物質混合物を調製し、冷凍工程に代え、沸騰水中20分の加熱を試みた。その結果、表2に併せて示したごとく、コンニャクマンナン濃度0.7%まではまったく組織化がみられず、濃度0.8%でようやくごく弱い組織の形成がみられた。ただし、その組織は密ではあるが、かろうじて自立できる程度の強度であり、身近な例で示せば「煮こごり」あるいは「茶碗蒸し」程度の物性で、完全に組織化しているとは言い難い程度であった。また、実施例2の組織化物がある程度の圧縮強度、引張強度を示したのとは大きな差異を呈した。表2混合物中からのコンニャクマンナンの回収 コンニャクマンナンと他の食品素材(ここではコーンスターチを選んだ)の混合物を調製し、凍結組織化法を応用した場合のコンニャクマンナンの回収率を測定した。混合物として、一定量(2.0g)のコーンスターチにコンニャクマンナンを段階的に0.2g、0.4g、0.6g、0.8g、1.0g、1.2g、1.4g、1.6g、1.8g、2.0g加えた10個の試験区を設定した。ここで、たとえば、コーンスターチ2.0gにコンニャクマンナン0.2gを加えたものでは、コンニャクマンナンの含有量は9.09%となり、この試料の場合、試験に用いた1g中にはコンニャクマンナンを0.0909g、つまり91mg含むこととなる。こうして調製した10段階のコンニャクマンナンを含む試料10個についての回収率は、表3に示したごとく、最低で90.7%,最高で100.5%で、平均的には96%程度の回収率を示した。これは、凍結組織化法が簡易定量法として十分信頼に足る方法であることを示すとともに、混合物に対しても応用可能であることを同時に示している。表3 本発明の産業上の価値としては、こんにゃく市場を混乱させることが懸念される海外からのこんにゃく粉調整品に対し、コンニャクマンナンの存在を定量的に明示することにより、違法ルートからのこんにゃく粉の国内への流入を阻止し、産業の安定化に貢献できる。また、コンニャクマンナンの簡易な定量方法として利用できるため、これまで不明瞭であった各種食品、たとえばこんにゃく入りめん、こんにゃく入りスナック菓子などの中のコンニャクマンナン量を測定でき、機能性の評価に役立てられる。 また、こんにゃく産業界は、製品のマンネリ化などを原因として低迷が続いている。一方、こんにゃくおよびコンニャクマンナンの持つ機能性については、(1)食物繊維に富む(2)低カロリーである(3)カルシウムを多く含む(4)アルカリ食品である等々が知られており、長い食経験とも相まって潜在的な人気は高い。にも関わらず売り上げが低下していることは、消費者が現今の板こんにゃく、しらたき以外の新製品を待ち望んでいることを示している。本発明は、従来の方法ではなしえなかった極低濃度での組織化を可能にしている。また、組織化の機作も従来法とは異なり、冷凍処理のみを用い、加熱を全く必要としない。そのため、得られる組織化物の組織、物性もまた新規で特異なものであり、消費者の期待に応えうるものである。一方、アルカリ性物質としては、通常こんにゃく製造者が用いる炭酸ソーダ等が使用でき、混合・攪拌も従来の装置で可能であり、新たに機械設備を導入する必要性は小さく、こんにゃく製造業者にとって実用化への障害は小さい。 本発明により得られる組織化物の用途は、たとえば食品分野では、ナタデココ様の冷菓、漬物素材、煮物など幅広く、食物繊維ほぼ100%の素材として日々の食物繊維摂取不足を解消する一助となることが期待できる。また、最終形態は皮膜状、ブロック状など自在に調整することが可能である。また、食品以外の用途としては、天然素材を原料とするため、化学製品への過敏性の高い乳幼児等への衛生製品等としても利用できる。コンニャクマンナンを含有する物質を溶液状態にし、これにアルカリ性物質を加え均質化し、非組織化状態のまま冷凍処理することにより溶液中のコンニャクマンナン部分を選択的に組織化する方法 請求項1に記載した方法によって得られる組織化物請求項1に記載した方法によるコンニャクマンナンの定量方法 【課題】 コンニャクマンナンの新たな組織化方法を開発し、その方法をコンニャクマンナンの定量方法として活用するとともに、組織化物の食品分野等での利用を図る。【解決手段】 希薄なコンニャクマンナン溶液にアルカリ性物質を加え、均質化したのち全体を冷凍処理すると溶液中の水が氷へと状態変化し、その際コンニャクマンナンおよび凝固剤としてのアルカリ性物質が濃縮されるため、通常では組織化がおこらない程度の低濃度でもコンニャクマンナンの不可逆的組織化が達成できる。また、得られた組織化物の組織は多孔性で粗く、特異な物性を呈する食品等へ利用できる。


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特許公報(B2)_コンニャクマンナンを含有する物質の希薄溶液を冷凍し得られる組織化物を用いたコンニャクマンナンの定量方法

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タイトル:特許公報(B2)_コンニャクマンナンを含有する物質の希薄溶液を冷凍し得られる組織化物を用いたコンニャクマンナンの定量方法
出願番号:2006005459
年次:2011
IPC分類:A23L 1/0528,G01N 33/02


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滝口 強 JP 4665106 特許公報(B2) 20110121 2006005459 20060113 コンニャクマンナンを含有する物質の希薄溶液を冷凍し得られる組織化物を用いたコンニャクマンナンの定量方法 群馬県 591032703 滝口 強 20110406 A23L 1/0528 20060101AFI20110317BHJP G01N 33/02 20060101ALI20110317BHJP JPA23L1/212 102AG01N33/02 A23L 1/0528 G01N 33/02 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) G−Search 食品関連文献情報(食ネット) 特開昭61−170362(JP,A) 特開昭62−215362(JP,A) 特開平09−248141(JP,A) 特開昭59−227267(JP,A) 1 2007185136 20070726 8 20080910 山本 匡子 本発明は、溶液の冷凍時において、水が氷結する際に溶液中の溶質が濃縮される機構を応用してコンニャクマンナンを含む溶液中からコンニャクマンナンを選択的に組織化する方法およびその組織化物に関するものである。 こんにゃく、およびしらたきなどコンニャクマンナンを含んだ食品の組織化は、通常、こんにゃく粉1部に対し約30〜40部の水を加え攪拌することにより、コンニャクマンナンを水中に十分に分散させ、粘性を高めた後、こんにゃく用凝固剤(通常は石灰)を加え、混練後型箱に移して加熱するか混練物を包装後、加熱し一定形状に成形するか、いずれかによって行われる。 コンニャクマンナンの組織化は、コンニャクマンナンの鎖状分子中に存在するアセチル基がアルカリによって離脱し、離脱後にできる水素結合により分子鎖間に架橋が形成されることによる(非特許文献1)。なお、加熱は不可避の工程ではないが、反応を早めるためおよび製品の殺菌を兼ねて多くのこんにゃく製造工場で採用されている。 市販のこんにゃく製品はすべてこの方式によって組織化が行われ、こんにゃく製品として完成する。凝固剤として石灰が普及する以前は草木灰(カリウム、ナトリウム等を多く含むためその水溶液はアルカリ性を呈し、こんにゃく用凝固剤として使い得た)が用いられたが、凝固反応の基本はアルカリ性物質の添加・混合とそれに続く加熱である点に変わりはない。コンニャクマンナンの組織化はこれまではこの一方法しか無く、冷凍することにより通常では起こりえない条件下でのコンニャクマンナンの組織化を可能にする技術はこれまでに知られていない。 なお、組織化後のこんにゃくを冷凍することにより組織の変化を起こさせる方法(特許文献1)、半組織化状態のまま冷凍し、その後加熱する方法(特許文献2)は提唱されているが、本発明のように冷凍時に組織化を完成させ、その後の加熱を全く必要としない方法は知られていない。前梶健治:農化 52(1973)特開2002−159276特開平3−206856 コンニャクマンナンはこんにゃく粉(精粉ともいう)の主成分であり食物繊維としての機能を有し、その機能性を期待してこんにゃく粉入りの種々の食品、たとえばうどん、パン、菓子などが製造され市販されている。しかし、コンニャクマンナンの定量法には確たるものが無く、どの程度添加されているのか判然としないため、かえってコンニャクマンナンあるいはこんにゃくへの信頼性を低下せしめる結果となっているのが現状である。 現在、提唱されているコンニャクマンナンの定量法としては、塩酸等の鉱酸によって加水分解し、遊離したマンノースを液体クロマトグラフ等で測定する方法がある。しかし、この方法では酸による過分解によるマンノースの消失の懸念と夾雑物の影響により生じる誤差は常に避けられず信頼性に欠ける。また、煩瑣な実験過程および必要とされる高価な実験設備はこの方法の普及を困難にしている。 こんにゃくは、通常こんにゃく粉1部に対し水30〜40部を加え混練して得られる。つまり、製品としてのこんにゃくにはコンニャクマンナンが約3%含まれる。そしてその物性は、攪拌方法、原料とするこんにゃく粉の品質、アルカリ使用量等を種々に変え工夫しても知覚できるほどに変化させることは困難である。これは、現行の方法で凝固させる以上宿命的なものであり、現行の組織化方法を採る以上、新たな食感を有するこんにゃく製品の製造には困難が伴う。 すなわち、本発明が解決を目指す課題の主体は、コンニャクマンナンが本来もつ基本的性質、つまり基本的にアルカリ性条件下において架橋を形成するという性質を有効に活用し、過酷な処理を経ることなくコンニャクマンナンのみを選択的に組織化する方法の開発である。 上記の課題を解決する手段として、本発明は、通常よりも低い濃度のコンニャクマンナン水溶液に炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質を加え、冷凍することによりコンニャクマンナンとアルカリ性物質とを反応させ、コンニャクマンナンを組織化する方法を確立した。すなわち、コンニャクマンナン1部に対し、200〜2000部の水を加えて得たコンニャクマンナンの希薄溶液(コンニャクマンナンとして0.5%から0.05%)を冷凍することによって組織化させるものである。具体的には、コンニャクマンナンを含有する物質を溶液状態にし、これにアルカリ性物質を加え均質化し、非組織化状態のまま冷凍処理することにより溶液中のコンニャクマンナン部分を選択的に組織化することにおいて、 前記コンニャクマンナンを含有する物質の溶液状態は、コンニャクマンナン1部に対し、500〜2000部の水を加えて得たコンニャクマンナンの希薄溶液とし、 この希薄溶液にアルカリ性物質の水溶液を混合後にpH10.5以上、望ましくはpH11以上になるように加え均質化し、冷凍することによって得られる組織化物を分離し定量することによるコンニャクマンナンの定量方法である。 これに対し、通常のこんにゃくがコンニャクマンナン1部に対し水30〜40部で製造されることから明らかなように、この程度の比率がコンニャクマンナンの組織化に適しており、製造上もまた容易であった。つまり、これまで、この比率を逸脱した場合にはコンニャクマンナンの組織化が安定しておこらないと考えられていた。 ここで、冷凍により組織化の過程を説明する。1.コンニャクマンナン、アルカリ性物質(凝固剤)、水の混合物、つまりコンニャクマンナンの水溶液にアルカリ性物質を加えたものが冷却され凝固点に達すると、水が次第に凍り、氷の結晶として成長する。そのため、コンニャクマンナンと凝固剤とが未凍結の部分に押しやられる。2.その結果、本来組織化には不適な程度にまで希薄であったコンニャクマンナンは濃縮され、高濃度になる。同様に凝固剤成分も高濃度になり、高濃度のコンニャクマンナンと高濃度のアルカリ性物質とが先に凍った氷の周辺部で接近し、反応しようとする。3.アルカリ性物質と反応したコンニャクマンナン部分でアセチル基の離脱が起こり、組織化が完成する。 なお、組織化はコンニャクマンナンの分子鎖中のアセチル基の離脱による水素結合によるものであり、この点においては通常のコンニャクマンナンの組織化と異なるものではない。また、この反応はコンニャクマンナン以外の物質の介在によって影響を受けない。すなわち、本発明はコンニャクマンナンの新たな組織化方法に関するものである。 ここで発明した方法(仮に「凍結組織化法」とする)によれば、通常のこんにゃく製造の1/5〜1/100程度の低濃度でもコンニャクマンナンの組織化を完成させることができる。これにより、微量のコンニャクマンナンでも、アルカリ性物質と反応するというコンニャクマンナン本来の性質を利用して組織を形成せしめる事により分離・定量することが可能となった。さらに、他の素材と混合された状態の試料からもコンニャクマンナンを選択的に組織化させることをも可能にした。つまり、種々の混合物中からコンニャクマンナンを分別定量することが出来る。すなわち、これまで信頼するに足る定量方法のなかったコンニャクマンナンを簡便、穏和な条件下で定量することの出来る新たな分析手段として活用できる。 また、得られた組織化物の組織はコンニャクマンナンが非常に希薄であったがために通常のものと異なり、粗であり、吸水性のあるスポンジ様の物性である。そのため、通常のこんにゃくと異なった新規な食感を有する食品としてはもとより、食用以外の用途、たとえば断熱材、保湿剤等としても利用できる。 本発明の基本的実施形態について説明する。 組織化を試みる試料としては、コンニャクマンナン単独あるいはコンニャクマンナンと他の食品素材の混合物、いずれでも可である。まず、コンニャクマンナンとして0.05〜0.5%を含む試料の均質な水溶液を調製し、これに0.2〜2モル濃度のアルカリ性物質、たとえば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどの水溶液を加え、ストマッカー等で混合・均質化する。次に、これをたとえばペトリ皿のような平板型容器に移し、マイナス10℃〜80℃の冷凍庫におき、全体を完全に冷凍する。これを解凍するとコンニャクマンナン部分のみがアルカリ性物質と反応し、不可逆的に組織化された状態で得られる。この間におこる化学反応は「0003」において説明したとおりである。 以下に、本発明について実施例、比較例を用いて具体的に説明する。しかしながら本発明はこれらに限定されるものではない。組織化のために使用しうるアルカリ性物質 アルカリ性物質は本発明における組織化法において、凝固剤として機能するものであるが、その種類と効果について確認するため、代表的アルカリ性物質として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウムについて組織化能の有無を調べた。ここではコンニャクマンナンとして0.5%を含む水溶液について各アルカリ性物質の水溶液一定量を加え、凍結させるという方法を採ったが、その結果は表1に示したごとく、いずれのアルカリ性物質の場合でもコンニャクマンナンの組織化が認められた。これにより、本発明の実施に当たり、組織化の可否はアルカリ性物質の種類は問題ではなく、化学反応による組織化、つまりアセチル基の離脱とその後に起こる水素結合の形成に必要なpH値が得られるか否かに依存している。この実施例では各アルカリ性物質濃度を1モルとしたが、混合後のpHはすべて11を越えており、組織化には十分な値であった。表1コンニャクマンナン濃度と組織化の可否 凍結組織化法におけるコンニャクマンナン濃度と組織化の関係を、確認した。コンニャクマンナン濃度を0.05%〜1.00%としそれぞれに1M濃度の炭酸ナトリウム水溶液一定量を加え、一定形状の容器に移し、マイナス20℃の冷凍庫中に一夜おいた。その後容器を取り出し自然解凍し組織化の有無を調べた。その結果、表2に示したごとく、凍結組織化法によれば、0.05%という著しい低濃度領域でも組織化がおこることが実証された。また、得られた組織化物の組織は著しく粗で、液を絞ることが可能なほどであり、再び液中に投入すると復元する、クラゲあるいはスポンジのような物性で、通常の「こんにゃく」の示す物性とは全く異なるものであった。比較例1コンニャクマンナン濃度と通常法における組織化 実施例2との比較のため、まったく同一のコンニャクマンナン・アルカリ性物質混合物を調製し、冷凍工程に代え、沸騰水中20分の加熱を試みた。その結果、表2に併せて示したごとく、コンニャクマンナン濃度0.7%まではまったく組織化がみられず、濃度0.8%でようやくごく弱い組織の形成がみられた。ただし、その組織は密ではあるが、かろうじて自立できる程度の強度であり、身近な例で示せば「煮こごり」あるいは「茶碗蒸し」程度の物性で、完全に組織化しているとは言い難い程度であった。また、実施例2の組織化物がある程度の圧縮強度、引張強度を示したのとは大きな差異を呈した。表2混合物中からのコンニャクマンナンの回収 コンニャクマンナンと他の食品素材(ここではコーンスターチを選んだ)の混合物を調製し、凍結組織化法を応用した場合のコンニャクマンナンの回収率を測定した。混合物として、一定量(2.0g)のコーンスターチにコンニャクマンナンを段階的に0.2g、0.4g、0.6g、0.8g、1.0g、1.2g、1.4g、1,6g、1.8g、2.0g加えた10個の試験区を設定した。ここで、たとえば、コーンスターチ2.0gにコンニャクマンナン0.2gを加えたものでは、コンニャクマンナンの含有量は9.09%となり、この試料の場合、試験に用いた1g中にはコンニャクマンナンを0.0909g、つまり91mg含むこととなる。こうして調製した10段階のコンニャクマンナンを含む試料10個についての回収率は、表3に示したごとく、最低で90.9%、最高で100.5%で、平均的には96%程度の回収率を示した。これは、凍結組織化法が簡易定量法として十分信頼に足る方法であることを示すとともに、混合物に対しても応用可能であることを同時に示している。表3 本発明の産業上の価値としては、こんにゃく市場を混乱させることが懸念される海外からのこんにゃく粉調整品に対し、コンニャクマンナンの存在を定量的に明示することにより、違法ルートからのこんにゃく粉の国内への流入を阻止し、産業の安定化に貢献できる。また、コンニャクマンナンの簡易な定量方法として利用できるため、これまで不明瞭であった各種食品、たとえばこんにゃく入りめん、こんにゃく入りスナック菓子などの中のコンニャクマンナン量を測定でき、機能性の評価に役立てられる。 また、こんにゃく産業界は、製品のマンネリ化などを原因として低迷が続いている。一方、こんにゃくおよびコンニャクマンナンの持つ機能性については、(1)食物繊維に富む(2)低カロリーである(3)カルシウムを多く含む(4)アルカリ食品である等々が知られており、長い食経験とも相まって潜在的な人気は高い。にも関わらず売り上げが低下していることは、消費者が現今の板こんにゃく、しらたき以外の新製品を待ち望んでいることを示している。本発明は、従来の方法ではなしえなかった極低濃度での組織化を可能にしている。また、組織化の機作も従来法とは異なり、冷凍処理のみを用い、加熱を全く必要としない。そのため、得られる組織化物の組織、物性もまた新規で特異なものであり、消費者の期待に応えうるものである。一方、アルカリ性物質としては、通常こんにゃく製造者が用いる炭酸ソーダ等が使用でき、混合・攪拌も従来の装置で可能であり、新たに機械設備を導入する必要性は小さく、こんにゃく製造業者にとって実用化への障害は小さい。 本発明により得られる組織化物の用途は、たとえば食品分野では、ナタデココ様の冷菓、漬物素材、煮物など幅広く、食物繊維ほぼ100%の素材として日々の食物繊維摂取不足を解消する一助となることが期待できる。また、最終形態は皮膜状、ブロック状など自在に調整することが可能である。また、食品以外の用途としては、天然素材を原料とするため、化学製品への過敏性の高い乳幼児等への衛生製品等としても利用できる。 コンニャクマンナンを含有する物質を溶液状態にし、これにアルカリ性物質を加え均質化し、非組織化状態のまま冷凍処理することにより溶液中のコンニャクマンナン部分を選択的に組織化することにおいて、 前記コンニャクマンナンを含有する物質の溶液状態は、コンニャクマンナン1部に対し、500〜2000部の水を加えて得たコンニャクマンナンの希薄溶液とし、 この希薄溶液にアルカリ性物質の水溶液を混合後にpH10.5以上、望ましくはpH11以上になるように加え均質化し、冷凍することによって得られる組織化物を分離し定量することによるコンニャクマンナンの定量方法。


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