タイトル: | 公開特許公報(A)_ポリカルボフィルカルシウム含有粒剤 |
出願番号: | 2006003042 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 31/74,A61K 33/06,A61P 1/10,A61P 1/12,A61K 9/14,A61K 47/38 |
池内 裕一郎 JP 2007182411 公開特許公報(A) 20070719 2006003042 20060110 ポリカルボフィルカルシウム含有粒剤 日医工株式会社 592073695 大谷 嘉一 100114074 池内 裕一郎 A61K 31/74 20060101AFI20070622BHJP A61K 33/06 20060101ALI20070622BHJP A61P 1/10 20060101ALI20070622BHJP A61P 1/12 20060101ALI20070622BHJP A61K 9/14 20060101ALI20070622BHJP A61K 47/38 20060101ALI20070622BHJP JPA61K31/74A61K33/06A61P1/10A61P1/12A61K9/14A61K47/38 4 1 OL 8 4C076 4C086 4C076AA31 4C076BB01 4C076CC16 4C076EE31A 4C076FF31 4C086AA01 4C086AA02 4C086FA02 4C086HA04 4C086MA02 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA41 4C086MA52 4C086NA12 4C086ZA72 本発明は、過敏性腸症候群並びに下部消化管の機能障害により起こる便秘および下痢の治療に使用される、ポリカルボフィルカルシウム含有製剤に関し、特に酸性条件で分散可能であり、高い粒子強度を有する粒剤に係る。 ポリカルボフィルカルシウムはポリアクリル酸を3,4−ジヒドロキシ−1,5−ヘキサジエンにより架橋した合成高分子化合物で、カルシウムが脱離した後、酸性条件下ではわずかしか膨潤しないが、中性条件下では多量の水を吸収して膨潤・ゲル化するという特徴を有している。 このような特徴から、ポリカルボフィルカルシウムは過敏性腸症候群治療剤として使用されている。 しかしながら、カルボキシル基が遊離型であるポリカルボフィルの付着性は極めて強いために、ポリカルボフィルカルシウム製剤を酸性溶液(例えば、人工胃液:pH約1.2)中に投入した場合に、該製剤が容易に崩壊しないという問題点があった。 例えば錠剤の場合であれば、ポリカルボフィルカルシウム製剤が酸性溶液に接触すると、製剤表面のポリカルボフィルカルシウムからカルシウムが脱離してポリカルボフィルとなり、製剤表面に極めて粘着性の高いポリカルボフィル層が形成されるので、製剤内への水分侵入が困難になり、製剤の崩壊性及びカルシウムの脱離が著しく悪化する。 また散剤や細粒剤や顆粒剤のような粒子状製剤の場合であれば、ポリカルボフィルカルシウム製剤が酸性溶液に接触すると、製剤表面のポリカルボフィルカルシウムからカルシウムが脱離してポリカルボフィルとなり、製剤表面に極めて粘着性の高いポリカルボフィル層が形成されるので、製剤粒子同士が付着しあい、胃内でのカルシウムの脱離や消化管内での均一な分散が妨げられ、十分な薬効が発揮されないという問題点があった。 特開2004−224758公報には、ポリカルボフィルカルシウムに架橋高分子、天然多糖類および水溶性有機酸から選択される1種または2種以上の添加剤を含み、酸性条件で崩壊可能な製剤を開示し、ポリカルボフィルカルシウムにセルロース誘導体を添加した製剤(特許第2609022号公報)、及びポリカルボフィルカルシウムに結合剤として知られているプルランを添加した製剤(特開平8−198761号公報)も公知である。 しかし、これらに開示の製剤は酸性条件下で崩壊可能にするために高価な多くの種類の添加剤を必要としているのみならず次のような技術的課題も存在する。 ポリカルボフィルカルシウム製剤に該当する市販品ポリフル錠(商品名)とポリフル細粒(商品名)(ともにアボットジャパン株式会社)、およびコロネル錠(商品名)とコロネル細粒(商品名)(ともにアステラス製薬株式会社)を調査したところ、ポリフル細粒およびコロネル細粒は酸性溶液中での付着性を改善している点で優れた製剤であるが、粒子強度が低い傾向があった。 粒子強度が低い細粒剤は、製造工程や輸送工程、あるいはユーザーの取扱い不備などにより、物理的破壊力を受け、粒子が壊れてしまいやすく、酸性溶液中で部分的に付着性が発現し、十分な薬効が発揮されないという問題点があった。 加えて市販細粒剤は嵩密度がそれほど大きくないため、単位重量あたりの製剤の体積が比較的大きい。 この事は服用性や服用感の悪化につながるものであり、改善が望まれる点であった。 さらに市販細粒剤は、7種類もの添加物(結晶セルロース、カルメロース、アスパルテーム、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、含水二酸化ケイ素)が使用されている。 特にセルロース誘導体でカルメロースやヒドロキシプロピルセルロースは結晶セルロースよりも高価であり、製造コストの面でも問題である。 散剤に属するその他のポリカルボフィルカルシウム改良製剤の一例として、アセント・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド社からスプリンクル製剤(特表平8−502073号公報)が開示されている。 該製剤は、滑らかな微粒子の超微細なポリカルボフィルカルシウム粉末を含有し、食物に混合又はふりかけることが可能な形状としたものである。 しかしながら、粒剤に比べて該投薬方法は医薬品として簡便であるとは言いがたい。特開2004−224758号公報特許第2609022号公報特開平8−198761号公報特表平8−502073号公報 本発明は、有効成分としてポリカルボフィルカルシウムを含有し、酸性条件で分散可能であり、重質で、高い粒子強度を有し、使用する添加剤の種類が少なく、且つ安価である粒剤の提供を目的とする。 本発明に係る粒剤は、有効成分としてポリカルボフィルカルシウムを含有し、粒子の強度が3N/mm2以上であり、酸性条件下で分散可能であることを特徴とする。 粒子強度を3N/mm2以上とすることで重質な粒子となり、従来の製剤に比較して比表面積が小さい。 本発明に係る粒剤は、重質であることより緩み嵩密度0.6以上で且つ固め嵩密度0.8以上であることが好ましい。 ここで嵩密度は、粒子の質量を体積で除した値を意味し、測定容器への充填方法により緩み嵩密度と固め嵩密度を測定した。 このような重質粒剤の製剤方法としてはポリカルボフィルカルシウムに対して15〜25質量%の結晶セルロースを添加して、攪拌造粒にて製剤化するのが望ましい。 本発明に係る粒剤は、セルロース誘導体、天然多糖類及び水溶性有機酸を実質的に含有していないことを特徴とする。 本発明に係るポリカルボフィルカルシウム含有粒剤は、粒子強度を3N/mm2することで酸性条件下で分散可能であり、胃における容易な崩壊及び消化管内での均一な分散を確保でき、確実な薬効が期待できる。 特に、粒子強度が高いために、取り扱い時の破壊を抑えることができるため酸性条件下での分散性が低下するのを防ぐ。 また、嵩密度が大きいことから製剤の嵩高を抑えることができるために、服用性を向上できる。 本発明における粒剤においては、セルロース誘導体、天然多糖類及び水溶性有機酸の実質的な添加が不要であり、安価に製剤化できる。 これらの効果により、本発明に係る粒剤は、消化管疾患治療剤、特に過敏性腸症候群並びに便秘及び下痢の治療薬として極めて有用であり、第十四改正日本薬局方に示す細粒剤に適用するのが効果的である。 本発明における粒剤の製剤化には、いわゆる攪拌造粒法が望ましい。 攪拌造粒法で造粒した場合、流動層造粒法や転動流動層造粒法で造粒した場合に比べ、高密度で高強度の造粒物が得られやすい。 粒子強度が3N/mm2以上、緩み嵩密度が0.6以上、固め嵩密度が0.8以上の粒剤を得るには、ポリカルボフィルカルシウムに対して15〜25質量%程度の結晶セルロースを添加するのがよい。 結晶セルロースの添加量が15%未満では上記嵩密度を確保するのが難しくなり、結晶セルロースの添加量が多い分には高密度球形粒子を得ることに問題は生じないが、結晶セルロースの添加量を増やしすぎると、製剤の単位重量あたりのポリカルボフィルカルシウム含量が少なくなり、より多量の製剤を投与しなければならなくなるため、結晶セルロースの添加量はポリカルボフィルカルシウムに対して15〜25質量%程度が好ましい。 なお、水のみで造粒しようとした場合、ポリカルボフィルカルシウムが強い粘着性を持つようになる恐れがあるため、ある程度の量の水溶性有機溶媒を含んだ水溶液で造粒することが好ましい。 以下実施例に基づいて詳細に説明するが本発明は実施例に限定されるものではない。 図1の表に示すようにポリカルボフィルカルシウム500部、結晶セルロース(セオラスPH−302、旭化成ケミカルズ株式会社製)90部、アスパルテーム(PAL SWEET DIET、味の素株式会社製)4部を攪拌造粒機ハイスピードミキサーLFS−GS−1(深江パウテック株式会社製)に投入し、攪拌混合した(アジテーター600rpm、チョッパー2000rpm)。 次に20%(w/w)エタノール水溶液137.5部を加え、アジテーター600rpm、チョッパー2000rpmで1分間攪拌造粒し、さらにアジテーター600rpm、チョッパー600rpmで5分間攪拌造粒した。 湿った状態の造粒物を16meshの篩で湿式整粒し、更にその整粒物をハイスピードミキサーにもどし、アジテーター600rpm、チョッパー600rpmで5分間攪拌造粒した。 湿った状態の造粒物を16meshと30meshの篩で湿式整粒し、流動層造粒機FL−mini(フロイント産業株式会社製)に投入し、給気温度90℃で、排気温度が40℃になるまで乾燥し、その後30meshの篩で整粒した。 得られた造粒物594部にステアリン酸マグネシウム(日本油脂株式会社製)3部、タルク(タルカンハヤシ、林化成株式会社製)1.5部、軽質無水ケイ酸(アエロジル200,日本アエロジル株式会社製)1.5部を添加・混合し、細粒剤を得た。 次に図1の表に基づきながら、比較例について説明する。(比較例1) ポリカルボフィルカルシウム500部、結晶セルロース(セオラスPH−102、旭化成ケミカルズ株式会社製)49部、クロスポビドン(ポリプラスドンXL−10、アイエスピー・ジャパン株式会社製)30部、アスパルテーム(PAL SWEET DIET、味の素株式会社製)3部を転動流動層造粒機MP−01(株式会社パウレック製)に投入し、そこに5%ポビドン(プラスドンK90、アイエスピー・ジャパン株式会社製)水溶液240部をスプレーして転動流動層造粒した。 造粒が完了したらそのまま転動流動層造粒機内で流動乾燥し、その後30メッシュの篩で整粒した。 得られた造粒物594部にステアリン酸マグネシウム(日本油脂株式会社製)3部、タルク(タルカンハヤシ、林化成株式会社製)1.5部、軽質無水ケイ酸(アエロジル200,日本アエロジル株式会社製)1.5部を添加・混合し、細粒剤を得た。(比較例2) ポリカルボフィルカルシウム500部、結晶セルロース(セオラスPH−302、旭化成ケミカルズ株式会社製)83部、アスパルテーム(PAL SWEET DIET、味の素株式会社製)3部を転動流動層造粒機MP−01(株式会社パウレック製)に投入し、そこに5%ポビドン(プラスドンK90、アイエスピー・ジャパン株式会社製)水溶液240部をスプレーして転動流動層造粒した。 造粒が完了したらそのまま転動流動層造粒機内で流動乾燥し、その後30meshの篩で整粒した。 得られた造粒物594部にステアリン酸マグネシウム(日本油脂株式会社製)1部、タルク(タルカンハヤシ、林化成株式会社製)0.5部、軽質無水ケイ酸(アエロジル200,日本アエロジル株式会社製)0.5部を添加・混合し、細粒剤を得た。(比較例3) 実施例1の製造方法における、20%(w/w)エタノール水溶液の添加量を62.5部とし、その他の部分は実施例1と同様に製造した。 造粒溶媒の添加量が少ないため、細粒規格よりも細かな製剤しか得られなかった。(比較例4) ポリカルボフィルカルシウム500部を攪拌造粒機バーティカルグラニュレータVG−01(株式会社パウレック製)に投入し、そこへ50%(w/w)エタノール水溶液125部を加え、ブレード700rpm、クロススクリュー2000rpmで2分間攪拌造粒し、さらにブレード700rpm、クロススクリュー900rpmで7分間攪拌造粒した。 湿った状態の造粒物を16meshの篩で湿式整粒し、更にその整粒物をバーティカルグラニュレータにもどし、ブレード700rpm、クロススクリュー900rpmで8分間攪拌造粒した。 湿った状態の造粒物を16meshと30meshの篩で湿式整粒し、流動層造粒機FL−mini(フロイント産業株式会社製)に投入し、給気温度90℃で、排気温度が40℃になるまで乾燥し、その後30meshの篩で整粒した。 得られた造粒物500部にステアリン酸マグネシウム(日本油脂株式会社製)1部、タルク(タルカンハヤシ、林化成株式会社製)0.5部、軽質無水ケイ酸(アエロジル200,日本アエロジル株式会社製)0.5部を添加・混合し、製剤を得た。 結晶セルロースを全く添加しない造粒処方であったため、細粒規格よりも細かな製剤しか得られなかった。(試験例1) このようにして得られた細粒および市販製剤であるポリフル細粒(商品名)を未処理で、あるいは乳鉢で粉砕処理して、溶出試験に供した。 試験液としてはpH約1.2の人工胃液(日本薬局方に示された崩壊試験液第1液)を900ml使用し、パドル法50rpmで、各種製剤を1.2gずつ投入した。 結果は図4に示した通りであり、実施例1の製剤および市販細粒剤は、細粒同士が付着し合うことはなかった。 しかし比較例1および比較例2は細粒同士がすぐに付着しあってしまい、海綿体状の凝集物を形成してしまった。 また比較例3及び比較例4は、粒子の一部がベッセルの底で付着凝集塊を形成してしまった。 実施例1の製剤および市販細粒剤も、乳鉢で粉砕すると、溶出試験に供したときに粉末同士の一部が付着しあってしまった。 この事から考えて、細粒状態では良好な分散性を持つ製剤でも、粉砕されてしまうと本来の薬効を期待できなくなることが予想される。(試験例2) 細粒が元々十分な強度を持っていれば、粉砕による薬効の低下を避けることができる。 そこで各製剤について、強度を測定した。 測定には粒子強度測定装置GRANO(岡田精工株式会社製)を使用した。 強度の測定には、42mesh篩を通過し、60mesh篩上に残った細粒を一粒ずつ測定した。 GRANOで直接的に測定される値は、粒径と硬度であるため、図2の式に従い、粒径及び硬度から求めた。 その結果、図3に示した測定結果が得られ、実施例1の製剤は市販製剤であるポリフル細粒(商品名)よりも高い強度を持つことが判明した。(試験例3) 細粒の嵩密度をパウダテスタ(PT−N型、ホソカワミクロン株式会社)で測定したところ、図3に示した結果が得られ、実施例1の製剤が高い密度を持つことが判明した。 また実施例1の製剤および市販細粒剤を電子顕微鏡で観察した結果、図5に示したように、実施例の製剤は市販細粒剤に比べて表面の滑らかな粒子であることが判明した。 これらのことから、実施例1の製剤が高い強度を持つ原因は、その高嵩密度さにあると推定された。 以上をまとめると、実施例1にて示した製剤は、人口胃液中での分散性が良く、粒子強度も高い、良好な製剤であった。各種製剤の処方を示す。粒子の強度を求める計算式を示す。各種製剤の物性測定結果を示す。各種製剤の分散性評価結果を示す。粒子の電子顕微鏡写真を示す。 有効成分としてポリカルボフィルカルシウムを含有し、粒子の強度が3N/mm2以上であり、酸性条件下で分散可能であることを特徴とする粒剤。 緩み嵩密度が0.6以上で且つ固め嵩密度が0.8以上であることを特徴とする、請求項1記載の粒剤。 ポリカルボフィルカルシウムに対して15〜25質量%の結晶セルロースを添加して攪拌造粒することにより得られたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の粒剤。 セルロース誘導体、天然多糖類及び水溶性有機酸を実質的に含有していないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粒剤。 【課題】有効成分としてポリカルボフィルカルシウムを含有し、酸性条件で分散可能であり、重質で、高い粒子強度を持ち、高価な添加物を使用しない粒剤を提供する。【解決手段】ポリカルボフィルカルシウムに対して、15〜25重量%の結晶セルロースを添加して攪拌造粒することにより、重質(緩み嵩密度が0.6以上で固め嵩密度が0.8以上)で、高強度(3N/mm2以上)の粒子を得る。 この粒子にはセルロース誘導体、天然多糖類及び水溶性有機酸などの高価な添加剤を使用していないが、酸性条件で分散可能である。【選択図】 図1