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タイトル:特許公報(B2)_ポリカーボネートの分解方法
出願番号:2005518004
年次:2010
IPC分類:C08J 11/14,B01J 3/00,C07C 37/01,C07C 37/84,C07C 39/16


特許情報キャッシュ

北原 麻衣 平田 滋己 伴 哲夫 佐脇 透 JP 4500774 特許公報(B2) 20100423 2005518004 20050208 ポリカーボネートの分解方法 帝人株式会社 000003001 大島 正孝 100080609 北原 麻衣 平田 滋己 伴 哲夫 佐脇 透 JP 2004034596 20040212 JP 2004094672 20040329 20100714 C08J 11/14 20060101AFI20100624BHJP B01J 3/00 20060101ALI20100624BHJP C07C 37/01 20060101ALI20100624BHJP C07C 37/84 20060101ALI20100624BHJP C07C 39/16 20060101ALI20100624BHJP JPC08J11/14B01J3/00 AC07C37/01C07C37/84C07C39/16 B09B 1/00- 5/00 B29B 17/00-17/04 C08J 11/00-11/28 B01J 3/00- 3/08 C07B 31/00-63/04 C07C 1/00-409/44 C08G 63/00-64/42 特開2002−233847(JP,A) 特開2001−170603(JP,A) 特開平11−302442(JP,A) 特開2000−103901(JP,A) 特開2003−292616(JP,A) 特開平11−286572(JP,A) 特開2000−053800(JP,A) 長瀬佳之、山形昌弘、福里隆一,超臨界水によるプラスチックのケミカルリサイクルプロセス,神戸製鋼技報,1997年11月,Vol.47,No.3,p.43-46 8 JP2005002184 20050208 WO2005077515 20050825 13 20060915 金 公彦 本発明は、超臨界ないし亜臨界の状態にある水を用いてポリカーボネートを分解する方法に関する。さらに詳しくは、ポリカーボネートを上記方法で分解して原料であるジヒドロキシ化合物を回収する方法に関する。 ポリカーボネート樹脂は耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れ、レンズ、コンパクトディスク等の光学材料として、さらに建築材料、自動車部品、OA機器等様々な用途に利用され、大量に生産、消費されている。その使用量は年々増加しており、今後更に増加することが予想される。 また、ポリカーボネート樹脂にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂等のオレフィン系樹脂をブレンドしたポリカーボネートコンパウンド樹脂も知られている。このポリカーボネートコンパウンド樹脂は、耐衝撃性、流動性、剛性、難燃性に優れ、かつ成形品の反りが少なく、家電、OA機器、電子電気部品、日用品分野をはじめ多様な用途において幅広く使用されている。 上記ポリカーボネート樹脂やポリカーボネートコンパウンド樹脂は市場に出回った後、ある程度の耐久期間が過ぎると新製品との代替などに伴って、通常廃棄されている。このような廃プラスチックの廃棄量は年々増加傾向にあり、その60%前後は単純焼却や埋め立てによって処分されている。しかし、単純焼却は大気中に炭酸ガスを放出するため、地球温暖化の観点からも問題がある。一方、埋め立てにより処分する場合、廃プラスチックは軽くてかさ張るため廃棄物の中でも大きな容積を占め、埋立地などの廃棄物最終処分場の用地不足が切迫化してきた現在、将来に亘ってこのような処分方法を続けることは不可能である。従って、廃棄物処理の点から、また石油資源の枯渇という地球資源の観点からも、上記ポリカーボネート樹脂やポリカーボネートコンパウンド樹脂を市場から回収し、リサイクルすることが非常に重要になってきている。 廃プラスチックのリサイクル方法には、(1)廃プラスチックをそのまま再利用するマテリアルリサイクル、(2)廃プラスチックをモノマーへ解重合したり、化学的に分解して有用化学原料として回収するケミカルリサイクル、(3)廃プラスチックを熱エネルギーとして回収するサーマルリサイクルなどに大別できる。これら複数のリサイクルのうち、ケミカルリサイクルは化学原料を回収するため、廃プラスチックから新たな合成樹脂や化成品を新規に合成することができ、広範囲な用途に利用できる。 ポリカーボネート樹脂のケミカルリサイクルのための分解方法としては、特開2003−41049号公報に、溶媒として超臨界状態のメタノールを用いてエステル交換を行い、ジヒドロキシ化合物並びにジメチルカーボネートを得る方法が開示されている。また、特公平6−25086号公報には、ポリカーボネート樹脂をアンモニア水溶液下で加水分解し、ジヒドロキシ化合物を得る方法が提案されている。 一方、ポリカーボネートコンパウンド樹脂のリサイクルについては特開2001−302844号公報に、PC/ABS樹脂アロイ中のポリカーボネート樹脂及びABS樹脂を共に溶解するハロゲン系有機溶媒と、アンモニア水溶液とが存在する溶液中にて、廃プラスチック中のポリカーボネート樹脂を化学的に分解して、分解生成物からビスフェノールA及び尿素を有用化学原料として回収する方法が報告されている。しかし、上記方法はハロゲン系有機溶媒を大量に使用するため環境への悪影響が懸念され、かつアンモニア水溶液の中和等の後処理が煩雑で経済性を著しく損なうことから、ポリカーボネートコンパウンド樹脂を大量に処理してリサイクルするには不適である。 本発明の目的は、ポリカーボネートを有機溶媒を用いずに分解する方法を提供することにある。 本発明の他の目的は、副反応を抑制して、大きい分解速度でポリカーボネートを分解する方法を提供することにある。 本発明のさらに他の目的は、ポリカーボネートを分解してポリカーボネートの原料であるジヒドロキシ化合物を高純度、高収率で回収することを可能とする、工業的に簡便で且つ有利な、ポリカーボネートの分解方法を提供することにある。 本発明のさらに他の目的は、芳香族ジヒドロキシ化合物を高濃度で安定に含有する水溶液を提供することにある。 本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。 本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、ポリカーボネートを超臨界ないし亜臨界の状態にある水で分解せしめることを特徴とするポリカーボネートの分解法によって達成される。 本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、温度が10〜100℃の範囲にあり、0.1〜10MPaの範囲の圧力下にありそして芳香族ジヒドロキシ化合物を1重量%以上の濃度で水中に溶解している、ことを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物水溶液によって達成される。 本発明で分解の対象とするポリカーボネートは、ポリカーボネートそのものでも、あるいはポリカーボネートと他の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性組成物中の当該ポリカーボネートであってもよい。 ポリカーボネートは、脂肪族ポリカーボネート、脂環式ポリカーボネートおよび芳香族ポリカーボネートのいずれでもよい。このうち、芳香族ポリカーボネートが好ましく、例えば下記式(1) ここで、R1、R2、R3およびR4は互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基またはハロゲン原子であり、そしてWは単結合、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルキリデン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキリデン基、炭素数8〜15のアルキレン−アリーレン−アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基またはスルホン基である、で表される繰り返し単位からなるものがさらに好ましい。 炭素数1〜10のアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。その例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、デシル等を挙げることができる。炭素数6〜10のアリール基としては、例えばフェニル、トリル、クミル、ナフチル等を挙げることができる。炭素数7〜10のアラルキル基としては、例えばベンジル、2−フェネチル、2−メチル、2−フェニルエチル等を挙げることができる。 R1、R2、R3およびR4としては、互いに独立に、水素原子、メチル基およびt−ブチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。 また、Wの定義も上記のとおりである。 炭素数1〜10のアルキレン基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。その例としては、メチレン、1,2−エチレン、2,2−プロピレン、2,2−ブチレン、1,1−デシレン等を挙げることができる。 炭素数2〜10のアルキリデン基としては、例えばエチリデン、プロピリデン、ブチリデン、ヘシリデン等を挙げることができる。 炭素数6〜10のシクロアルキレン基としては、例えば1,4−シクロヘキシレン、2−イソプロピル−1,4−シクロヘキシレン等を挙げることができる。 炭素数6〜10のシクロアルキリデン基としては、例えばシクロヘキシリデン、イソプロピルシクロヘキシリデン等を挙げることができる。 炭素数8〜15のアルキレン−アリーレン−アルキレン基としては、例えばm−ジイソプロピルフェニレン基などが挙げられる。 Wとしては、シクロヘキシリデン基、2,2−プロピリデン基が好ましく、2,2−プロピリデン基が特に好ましい。 また、本発明で用いられるポリカーボネートの分子量は特に限定されるものではないが、好ましくは粘度平均分子量が10,000〜250,000である。 ポリカーボネートは、それ自体公知の方法、例えばジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重縮合法あるいはジヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートとの溶融重縮合法等により製造される。 本発明は、製造法の如何にかかわらず、分解の対象とすることができる。 また本発明においては、製品の製造途中に生じた不良品、宵ポリマー、さらに使用済みCD等のポリカーボネート廃棄物も、分解の対象として用いることが可能である。この場合、該廃棄物はAl記録層などの不純物を含有していても良く、そのまま分解に供しても、不純物を除去した後に分解に供しても良い。 上記ヒドロキシ化合物のうち、芳香族ポリカーボネートを与える芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記式(2) ここでR1、R2、R3、R4およびWの定義は上記式(1)に同じである、で表わされるものを好ましいものとして挙げることができる。 かかる芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわちビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4’−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)イソブタンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上混合して使用してもよい。上記例示の化合物のうち、本発明において特に好ましく分解の対象として用いられる芳香族ポリカーボネートは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いた芳香族ポリカーボネートである。 また、上記ポリカーボネートとともに熱可塑性組成物を形成する他の熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、オレフィン系樹脂が好ましい。 かかるオレフィン系樹脂としては、通常ポリカーボネートと組成物を形成して用いられるものであればいずれでも良いが、代表的な樹脂として例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(慣用的にABS樹脂といわれる)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、ポリエチレン樹脂(PE樹脂)などを挙げることができる。なかでもABS樹脂は耐衝動性、耐熱耐油性、および加工性を併せ持ちその市場が大きいために、特に広く用いられている。また、上記熱可塑性組成物は、好ましくはポリカーボネートが10〜95重量%より好ましくは40〜90重量%、他の熱可塑性樹脂が5〜90重量%、より好ましくは10〜60%の割合からなる。 上記ABS樹脂とは、ジエン系ゴムと芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体を重合してなる樹脂であり、上述のジエン系ゴムの存在下に単量体を重合してなるグラフト重合体または該グラフト重合体と単量体を重合してなる共重合体との混合物である。本発明はかかるグラフト重合体および共重合体のいずれにも適用可能である。ABS樹脂の製造法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらを組み合わせた方法等が挙げられる。 上記ジエン系ゴムとしては、例えばガラス転移温度が0℃以下のポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等が列挙される。 上記芳香族ビニル系単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらは一種または二種以上用いることができる。これらのうち、特にスチレンが一般的に用いられる。 上記シアン化ビニル系単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。これらは一種または二種以上用いることができる。これらのうち、特にアクリロニトリルが一般的に用いられている。 また、上記芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物の如き不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸無水物、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの如きの不飽和カルボン酸アルキルエステル、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、O−クロル−N−フェニルマレイミドの如きマレイミド系単量体等が挙げられる。これらは一種または二種以上で用いられる。 上記熱可塑性樹脂組成物は、さらにリン系難燃性化合物、ハロゲン系難燃性化合物、ゴム状物質、繊維/非繊維状フィラー等の添加剤を含有していてもよい。 リン系難燃性化合物としては、例えば赤リン、ホスフィン、次亜リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、無水リン酸の如き無機系リン化合物、または公知の有機リン酸エステル化合物が挙げられる。 ハロゲン系難燃性化合物としては、例えばテトラブロモビスフェノールAおよびその誘導体、テトラブロモビスフェノールS,ポリブロモジフェニルエーテル、臭素化ポリカーボネートオリゴマーおよびその変性体、臭素化エポキシオリゴマーおよびその変性体、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化フェニレンエーテル、トリブロモフェノキシエタン、臭素化トリアジン化合物、塩素化縮合脂環式化合物などが挙げられる。 ゴム状物質としては、例えばガラス転移温度が−100℃以上かつ50℃以下の重合体、または該重合体が共重合されてなる共重合体、イソプレン系、ブタジエン系、オレフィン系、ポリエステルエラストマー系、アクリル系重合体などが挙げられる。これらはホモポリマーであっても、コポリマーであってもよい。これらのうち広汎に用いられるものとしては、ブタジエン系、オレフィン系共重合体が挙げられる。ブタジエン系共重合体としては、スチレンとの共重合体であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体、あるいはその水添物が使用される。さらには、酸成分との3元系共重合体も有用であり、具体的には、アクリル酸−ブタジエン−スチレン共重合体、カルボン酸/カルボン酸無水物含有酸化合物−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。 繊維状フィラーとしては、熱可塑性樹脂組成物の目的とする強化の度合いにもよるが、アスペクト比で2〜100のものが挙げられる。具体的には、ガラス繊維、カーボン繊維、酸化チタンウィスカー、繊維状ワラストナイトなどが挙げられる。 非繊維状フィラーは、強度と寸法安定性との改良が同時に得られることから、幅広く用いられる。形状的としては、板状、粒状、無定形いずれであってもよい。具体例としては、タルク、マイカ、クレー、シリカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、中空フィラーなどが挙げられる。フィラーは単独で、あるいは2種以上組み合わせて添加されていてもよい。 また、本発明における上記熱可塑性樹脂組成物は、上記添加物の他に、必要に応じ、脂環式飽和炭化水素樹脂、高級脂肪酸エステル、石油炭化水素類、芳香族炭化水素系石油樹脂、ポリオキシアルキレン、テルペン類、ワックス類、フッ素系樹脂、酸化防止剤、離型剤、帯電防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、顔料などを含有していてもよい。 本発明の分解法は、上記の如きポリカーボネートあるいは熱可塑性樹脂組成物中のポリカーボネートを超臨界ないし亜臨界の状態にある水で分解する。以下超臨界状態にある水を超臨界水、亜臨界状態にある水を亜臨界水ということがある。本発明の分解反応により、ポリカーボネートが分解して相当するジヒドロキシ化合物と二酸化炭素が生成される。 一般に、超臨界流体とは臨界温度、臨界圧力を超えた状態の物質を示す。超臨界水とは臨界温度374℃以上、臨界圧力22MPa以上の水を示す。また、亜臨界水とは温度350℃以上かつ圧力18MPa以上であって、超臨界状態ではない水を示す。超臨界または亜臨界状態の水は、その温度・圧力に対応して密度、イオン積、イオン濃度、誘電率等の諸物性値が幅広く変動することが知られており、これらを制御することが容易である。この結果、超臨界水または亜臨界水中における反応は、温度や圧力ごとに異なった酸・塩基触媒効果および溶媒効果を受ける可能性がある。さらに超臨界水または亜臨界水は粘度が液体に比べて小さいため物質の拡散が速く、超臨界水または亜臨界水中での反応は通常の液体中の反応に比べて拡散律速になりにくいという利点もある。また、実用的な側面から見ると、水は最も安価である上、無毒、難燃性であり環境への負荷が少なく、熱安定性に富み、酸化もされない、理想的な溶媒であるといえる。 本発明における分解は、超臨界水または亜臨界水の温度が前記臨界温度である374〜500℃で行うことが好ましく、374〜430℃で行うことがより好ましい。温度が374℃より低いと、ポリカーボネートの分解速度が著しく低下し、未反応成分の残存等の問題が生じるため、好ましくない。また500℃を超えると、得られたジヒドロキシ化合物の熱分解反応が急速に進行して目的とするジヒドロキシ化合物以外のヒドロキシ化合物やその誘導体が多量に副成するだけでなく、熱可塑性樹脂組成物の場合にはABS樹脂等の熱可塑性樹脂の分解も進行して多岐にわたる化合物を生成し、生成物の純度低下ならびに回収工程の複雑化を引き起こす恐れがあるため好ましくない。 また、分解は18〜40MPaの圧力条件下で行うことが好ましく、20〜30MPaがさらに好ましい。圧力が40MPa以上であると、工業プロセスにおいて多量なエネルギーコストを要し、安全面、経済面において多大な負荷がかかるため、好ましくない。また、18MPaより低いと前述の亜臨界水特有の諸物性が発現しにくくなるため、好ましくない。 本発明は、超臨界水または亜臨界水のイオン積(Kw)が10−15mol2/kg2以下の条件で行うことが好ましく、10−17mol2/kg2以下で行うのがより好ましい。この状態で処理を行うと、ポリカーボネートまたは樹脂組成物中のポリカーボネートを非常に短時間で分解し、ジヒドロキシ化合物を高選択率で得ることができる。これは、反応場のイオン濃度の低下がポリカーボネートの分解にとって最適な環境を提供することによると考えられる。イオン積がKw=10−15mol2/kg2より大きい条件で処理を行うと、ポリカーボネートの分解速度が遅くなり、好ましくない。さらにこの条件で反応時間を長くした場合、ポリカーボネートの分解と同時にジヒドロキシ化合物の分解反応が進行してその純度および収率が大幅に低下するため、好ましくない。また、本発明においてイオン積の下限は特に限定されるものではないが、10−23mol2/kg2とするのがより好ましい。 さらに、前記超臨界水または亜臨界水の誘電率は10以下であることが好ましく、より好ましくは5以下である。誘電率は物質内で電荷とそれによって与えられる力との関係を示す係数であり、溶媒の極性の指標となる。室温での水の誘電率は約80と非常に大きいため、電解質等の無機物はよく溶けるが、有機物はほとんど溶解しない。しかし温度を上げると誘電率は徐々に低下し、374℃以上の超臨界水ないし亜臨界水では10程度と極性の小さな有機溶媒と同程度の値になる。その結果、有機物はよく溶けるが無機物はほとんど溶けないという、通常の水とは逆の現象が起こる。本発明においては、誘電率を10以下とすることでポリカーボネートまたは熱可塑性樹脂組成物への超臨界水ないし亜臨界水の浸透性を向上させ、該超臨界水ないし亜臨界水をポリカーボネートと効率的に接触させることができる。また一方で、分解生成物であるジヒドロキシ化合物を超臨界水または亜臨界水に溶解・分散させ、その二次分解を抑制する効果もある。誘電率がこの値より大きいと超臨界水の樹脂への浸透性が低下するのみならず、ジヒドロキシ化合物と超臨界水または亜臨界水とが相分離して、分離した相界面でジヒドロキシ化合物の分解が進行するので好ましくない。 本発明における反応時間は特に限定されるものではないが、上記条件において、例えば1分未満〜5分という非常に短時間でポリカーボネートまたは熱可塑性樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂を分解することができる。反応時間を延ばすと得られたジヒドロキシ化合物の分解が進行して純度が低下する上、工業プロセスにおいては単位時間当たりの処理量が少なくなる、または反応容器の容積が大きくなるため、好ましくない。 本発明の分解法はポリカーボネートが芳香族ポリカーボネートでありそして分解生成物として芳香族ジヒドロキシ化合物を生成する方法で好ましく実施される。芳香族ポリカーボネートが前記式(1)で表わされる繰返し単位からなるとき、分解生成物は前記式(2)で表わされる芳香族ジヒドロキシ化合物である。 上記反応によって生成されたジヒドロキシ化合物が芳香族ジヒドロキシ化合物である場合、これは温度10℃〜100℃、圧力0.1MPa〜10MPaの範囲内において1重量%以上の濃度で水に溶解した準安定な均一水溶液として回収される。芳香族ジヒドロキシ化合物の水への溶解度は25℃、0.1MPaの温度圧力条件において約100ppmであることが公知であり、通常の条件ではほとんど溶解しない。従って上記水溶液は、超臨界水または亜臨界水に芳香族ジヒドロキシ化合物が溶解した状態から降温降圧することにより得られそして従来知られている芳香族ジヒドロキシ化合物水溶液より高い濃度で芳香族ジヒドロキシ化合物を含有する全く新規な水溶液であるといえる。分解生成物が上記状態で得られることは、工業プロセスにおいて生成物の精製プロセスおよび回収プロセスの簡素化が可能になるのみならず、配管や弁の閉塞を防ぐことができるため、非常に好ましい。本発明において、水溶液中の芳香族ジヒドロキシ化合物は公知の晶析操作により精製および回収することができ、これにより高純度の芳香族ジヒドロキシ化合物を得ることができる。 なお、分解対象物が熱可塑性組成物であるときには、生成されるジヒドロキシ化合物は上記と同じ均一水溶液として得られる。 一方、ABS樹脂の如き熱可塑性樹脂は分解速度が遅く固形分として残存するため、固液分離操作を加えることによりジヒドロキシ化合物水溶液を容易に回収することが可能である。熱可塑性樹脂組成物がフィラー等の添加物を含有している場合は、該添加物も固形分として残存するため、同様に固液分離操作を加えればよい。分離後、水溶液中の芳香族ジヒドロキシ化合物は冷却等の公知の晶析操作により精製および回収することができ、これにより高純度の芳香族ジヒドロキシ化合物を得ることができる。また、処理条件によってはABS樹脂の如き熱可塑性樹脂が分解されて油分に変換する場合があるが、この場合には工業プロセスにおいては水層と油層との液液分離により、水層からジヒドロキシ化合物を容易に回収することが可能である。 本発明の分解法は公知のポリマー分解処理装置を用いて実施することができる。超臨界水または亜臨界水による加水分解を行う反応器と、この反応器にポリカーボネートまたは熱可塑性樹脂組成物と超臨界水ないし亜臨界水を供給する供給手段と、反応器内の超臨界水ないし亜臨界水で加水分解された後の処理流体を濾過体で濾過して不溶性不純物を除去する濾過手段と、濾過処理された処理流体を水と分解生成物であるジヒドロキシ化合物とに分離する手段と、分離手段により分離された水を処理する水処理手段とを備えていることが好ましい。ここでリサイクル原料のポリカーボネートまたは熱可塑性樹脂組成物は、(1)粉砕してスラリーとして、(2)加熱して溶融状態にして、(3)溶媒に溶解した状態で、あるいは(4)固形のままで、反応容器に供給される。リサイクル原料中の不純物は事前に圧延等の処理により除去しても良く、(2)または(3)においては、ろ過手段を反応容器の前段に設置して除去しても良く、また上記不純物除去手段は併用されても良い。反応容器は流通式、半回分式、またはバッチ式反応器の何れでもよいが、流通式を用いると処理量を増やすことができるので好ましい。また、反応溶媒、原料は、流通式、あるいは半回分式装置においては熱交換器等によりあらかじめ加熱され、反応容器に供給することが可能である。水とジヒドロキシ化合物とを分離する手段は特に限定されるものではない。本発明によれば冷却操作のみにより高純度のジヒドロキシ化合物を晶析させることが可能であり、晶析したジヒドロキシ化合物は、遠心分離等の固液分離手段で分離することができる。分離後の水は、公知の水処理手段で所定の水質になるように処理して再び反応器に返送することにより、反応器内で良好な反応制御性を確保しつつ超臨界水または亜臨界水の補給用水として処理水を再利用し、経済的な水サイクルを形成することができる。また、所定の水質の補給水、例えば純水レベルの水質に処理した水を補給水として反応器に供給することにより、反応器内で良好な反応制御性を確保できるので、ジヒドロキシ化合物を高純度、かつ高収率で回収することができる。 本発明により得られたジヒドロキシ化合物を必要に応じて精製し、リサイクルして前記カーボネート前駆体と重合することにより、高品質、高グレードのポリカーボネートを製造することができる。さらに、ポリカーボネートのコンパウンド樹脂、ならびにジヒドロキシ化合物を原料とする他の樹脂への適用も可能である。上記重合は公知の方法の何れを用いて行ってもよいが、界面重合法または溶融重合法が好ましい。 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。実施例1 全内容積6mLのSUS316製チューブ型反応管に、ポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成(株)製AD−5503)0.11gを入れ、圧力が25MPaとなるように水1.1gを仕込み、密閉した。反応管内をアルゴン置換して不活性雰囲気とした後、400℃に予熱したサンドバス中に浸漬させ、3分間保持した。ここで、上記条件におけるイオン積Kw=10−20 mol2/kg2、比誘電率=2であった。その後、反応管を水に浸漬させて室温まで急冷し、内容物をガラス瓶に取り出したところ、20℃、0.1MPaの温度圧力条件下にて内容物は無色透明の均一水溶液であり固形分は全く認められなかった。また、取り出しの際に気体の発生が確認された。さらに、上記水溶液を一定時間静置したところ、針状結晶の析出が見られた。 結晶が混在した上記水溶液にジエチルエーテルを加えて攪拌し、エーテル相をガスクロマトグラフィー(HP5890)で分析した結果、0.1gの2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわちビスフェノールA)が含まれていることが分かった。従って、回収直後の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン水溶液の濃度は、20℃、0.1MPaの状態で、約10重量%と計算される。上記2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの回収量は理論収率の99%であり、上記方法によってポリカーボネートが完全に分解され、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと二酸化炭素のみを容易に回収できることが確認された。実施例2 反応管にポリカーボネート樹脂ペレット0.08gを入れ、圧力が25MPaとなるように水0.84gを仕込み、420℃に予熱したサンドバス中に浸漬した以外は実施例1と同様にして分解を行った。上記条件におけるイオン積、比誘電率を表1に示した。反応後、内容物をガラス瓶に取り出したところ、20℃、0.1MPaの温度、圧力条件下にて内容物は無色透明の均一水溶液であり、固形分は全く認められなかった。実施例1と同様の方法により水溶液中に含まれる2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの量を求め、表1に示した。実施例3 反応管にポリカーボネート樹脂ペレット0.06gを入れ、圧力が20MPaとなるように水0.60gを仕込み、400℃に予熱したサンドバス中に浸漬した以外は実施例1と同様にして分解を行った。上記条件におけるイオン積、比誘電率を表1に示した。反応後、内容物をガラス瓶に取り出したところ、20℃、0.1MPaの温度、圧力条件下にて内容物は無色透明の均一水溶液であり、固形分は全く認められなかった。実施例1と同様の方法により水溶液中に含まれる2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)の量を求め、表1に示した。実施例4 反応管にポリカーボネート樹脂ペレット0.07gを入れ、圧力が25MPaとなるように水0.66gを仕込み、450℃に予熱したサンドバス中に浸漬した以外は実施例1と同様にして分解を行った。上記条件におけるイオン積、比誘電率を表1に示した。また、分解により得られた水溶液中に含まれる2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)の量を求め、表1に示した。実施例5 反応管にポリカーボネート樹脂ペレット0.21gを入れ、圧力が30MPaとなるように水2.1gを仕込み、400℃に予熱したサンドバス中に浸漬した以外は実施例1と同様にして分解を行った。上記条件におけるイオン積、比誘電率を表1に示した。反応後、内容物をガラス瓶に取り出したところ、20℃、0.1MPaの温度圧力条件下にて内容物は無色透明の均一水溶液であり、固形分は全く認められなかった。実施例1と同様の方法により水溶液中に含まれる2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)の量を求め、表1に示した。実施例6 全内容積6mLのSUS316製チューブ型反応管に、ポリカーボネートを約50重量%含有するポリカーボネート/ABS樹脂ペレット(帝人化成(株)製)0.2gを入れ、圧力が25MPaとなるように水1.1gを仕込み、密閉した。反応管内をアルゴン置換して不活性雰囲気とした後、400℃に予熱したサンドバス中に浸漬させ、4分間保持した。ここで、上記条件におけるイオン積Kw=10−20mol2/kg2、比誘電率=2であった。その後、反応管を水に浸漬させて室温まで急冷し、内容物をガラス瓶に取り出したところ、内容物はABS樹脂固形分を含む透明の水溶液であった。また、取り出しの際に気体の発生が確認された。さらに、上記水溶液を一定時間静置したところ、針状結晶の析出が見られた。 結晶が混在した上記水溶液からABS樹脂固形分を濾別し、フィルターおよびABS樹脂固形分をジエチルエーテルで洗浄した洗浄液を水相に加えて抽出操作を行った後、エーテル相をガスクロマトグラフィー(HP5890)で分析した結果、0.07gの2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが含まれていることが分かった。これは、ポリカーボネート/ABS樹脂中のポリカーボネートから得られる2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの理論収量の、約70%であった。従って、上記方法によってポリカーボネート/ABS樹脂中のポリカーボネートが分解され、有用化学原料である2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを容易かつ効率的に回収できることが確認された。比較例1 反応管に、ポリカーボネート樹脂ペレット0.48gを入れ、圧力が30MPaとなるように水4.8gを仕込み、270℃に予熱したサンドバス中に浸漬させ、30分間保持した。ここで、上記条件におけるイオン積Kw=10−11mol2/kg2、比誘電率=25であった。その後、反応管を水に浸漬させて室温まで急冷し、内容物をガラス瓶に取り出したところ、内容物は0.4gの未分解ポリカーボネートを含んでおり、ポリカーボネート転化率は16%と計算された。 内容物を実施例1と同様にガスクロマトグラフィーで分析した結果、0.01gの2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが含まれていた。これは理論収率の3%であり、上記条件下ではポリカーボネートの分解反応がほとんど進行せず、また副生成物も多く生成するため、好ましくないことが分かった。 イオン積Kw10−15mole2/kg2以下である超臨界ないし亜臨界の状態にある水で、芳香族ポリカーボネートを分解して該芳香族ポリカーボネートのジヒドロキシ化合物成分である芳香族ジヒドロキシ化合物を生成せしめることを特徴とするポリカーボネートの分解法。 芳香族ポリカーボネートが芳香族ポリカーボネートを含有する熱可塑性組成物中の該ポリカーボネートである請求項1に記載の分解法。 芳香族ポリカーボネートが下記式(1) ここで、R1、R2、R3およびR4は互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基またはハロゲン原子であり、そしてWは単結合、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルキリデン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキリデン基、炭素数8〜15のアルキレン−アリーレン−アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基またはスルホン基である、で表わされる繰返し単位からなりそして分解生成物が下記式(2) ここでR1、R2、R3、R4およびWの定義は上記式(1)に同じである、で表わされる芳香族ジヒドロキシ化合物である請求項1に記載の分解法。 芳香族ジヒドロキシ化合物を晶析により回収する請求項1に記載の分解法。 超臨界ないし亜臨界の状態にある水の比誘電率が10以下である請求項1に記載の分解法。 分解を374〜500℃の範囲で行う請求項1に記載の分解法。 分解を18〜40MPaの範囲で行う請求項1に記載の分解法。 請求項1に記載のポリカーボネートの分解法により得られた、温度が10〜100℃の範囲にあり、0.1〜10MPaの範囲の圧力下にありそして芳香族ジヒドロキシ化合物を1重量%以上の濃度で水中に溶解している、ことを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物水溶液。


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