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タイトル:特許公報(B2)_後期糖化最終生成物形成の新規阻害剤及びアルドース還元酵素阻害剤
出願番号:2005514951
年次:2012
IPC分類:A61K 31/7048,A61P 43/00,A61P 3/10,A61P 13/12,A61P 25/00,A61P 25/28,A61P 9/00,A61P 27/02,A61P 27/12,A61P 29/00,A61P 19/02


特許情報キャッシュ

吉川 雅之 松田 久司 山岸 恵 松本 均 JP 5044122 特許公報(B2) 20120720 2005514951 20041019 後期糖化最終生成物形成の新規阻害剤及びアルドース還元酵素阻害剤 株式会社明治 000006138 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 吉川 雅之 松田 久司 山岸 恵 松本 均 JP 2003365190 20031024 20121010 A61K 31/7048 20060101AFI20120920BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120920BHJP A61P 3/10 20060101ALN20120920BHJP A61P 13/12 20060101ALN20120920BHJP A61P 25/00 20060101ALN20120920BHJP A61P 25/28 20060101ALN20120920BHJP A61P 9/00 20060101ALN20120920BHJP A61P 27/02 20060101ALN20120920BHJP A61P 27/12 20060101ALN20120920BHJP A61P 29/00 20060101ALN20120920BHJP A61P 19/02 20060101ALN20120920BHJP JPA61K31/7048A61P43/00 111A61P3/10A61P13/12A61P25/00A61P25/28A61P9/00A61P27/02A61P27/12A61P29/00 101A61P19/02 A61K 31/7048 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2005−082509(JP,A) 特開2000−001435(JP,A) 特開平03−232851(JP,A) 米国特許出願公開第2002/0115618(US,A1) 国際公開第01/001798(WO,A1) 特開2000−032954(JP,A) Morimitsu et al,International Congress Series,2002年,Vol.1245,p.503-508 Schroeter et al,Free Radical Biology & Medicine,2000年,Vol.29, No.12,p.1222-1233 3 JP2004015434 20041019 WO2005040182 20050506 11 20060407 森井 隆信 本発明は、後期糖化最終生成物(以下AGEと略する場合がある)形成の新規阻害剤、アルドース還元酵素の新規阻害剤、およびこれら阻害剤を含む組成物、さらに組成物を含む医薬品及び食品に関するものである。さらに詳しく述べれば、これらの新規化合物を有効成分として含有し、糖尿病性合併症(糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、白内障、大血管障害)、あるいはその他AGE生成に関連する各種疾患(アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、透析アミロイドーシス、関節リウマチ)の予防治療剤として有用な組成物および組成物を含む医薬品、食品に関するものである。 近年糖尿病患者数は増加の一途を辿り、1998年の厚生省統計では我が国の推定罹患人口は690万人、予備軍を含めると1400万人と報告されている。糖尿病患者の生命予後とquality of life (QOL)を直接左右するのは、一次的なインスリン作用不足ではなく、高血糖の結果二次的に起こる全身各部の血管障害すなわち血管合併症である。したがって、糖尿病合併症を克服するかを解明することは緊急な解決を要する国民的研究課題である。 正常よりも血糖値が顕著に高い糖尿病では、グルコースと幾つかのタンパク質類(例えば、ヘモグロビン、レンズクリスタリン及びコラーゲン)との反応は、後期糖化反応生成物(advanced glycation end products, AGE)の形成を起こさせ、それは次には、糖尿病に関係する合併症(例えば、腎障害、微小血管障害、内皮機能障害及び他の臓器機能障害)の原因となる。さらに、幾つかの成長因子(例えば、塩基性線維芽細胞成長因子)の活性をも弱める。AGEは、蛋白質のアミノ基と還元糖のアルデヒド基が反応して、シッフ塩基、アマドリ転位生成物(前期生成物)を経由して、脱水、酸化、縮合などの反応を経て得られる後期生成物である。AGEは、組織中の正常タンパク質類とは異なり、よりゆっくりした速度で代謝回転し、補充される。微小血管障害及び大血管障害(macroangiopathy)の証拠を有する糖尿病は、その機構は明らかにされていないが、酸化的ストレスの証拠をも示すことが実証されている。また、AGEは、糖尿病や老化に伴った様々な合併症に関与することが指摘され、モノサイト/マクロファージ、ニューロン、平滑筋細胞、内皮細胞などの細胞表面に発現される受容体などの細胞表面受容体と結合することも知られている。AGEはこうした受容体(レセプター)と相互作用し、様々な生理的及び生物学的作用を生体や細胞に及ぼすと考えられている。 このようにAGEの生成を阻害あるいは、できてしまったAGEを分解することによって糖尿病の合併症などを治療あるいは予防する方法が求められ、いくつか示されている。 例えば、AGE生成阻害剤(メイラード反応阻害剤)としては、特公平6-67827号公報(特許文献1)記載のアミノグアニジンが代表的である。また、医薬品では特開2002-302472号公報(特許文献2)では、新規のAGE生成阻害剤(メイラード反応阻害剤)が報告されており、特表2002-543118号公報(特許文献3)ではペントキシフィリン、ピオグリタゾンおよびメトフォルミンがAGE形成阻害剤として報告されており、特表2002-541139号公報(特許文献4)ではアリール及びヘテロ環式ウレイド並びにアリール及び複素環式カルボキサミドフェノキシイソ酪酸の誘導体は、AGE及び架橋の形成となることが多いタンパク質の非酵素的糖化を阻害することが見いだされた。しかし、これらの化合物は副作用が心配され、長期の大量の摂取が制限されており、安全に長期摂取して糖尿病性の合併症を予防もしくは治療出来るものが求められていた。 食品では、特開2000-186044号公報(特許文献5)記載の小麦ふすまの加熱生成物によるα-グルコシダーゼ阻害剤に代表されるように、α-グルコシダーゼ阻害効果による、糖尿病の治療、予防法があげられているが、AGE生成阻害作用の報告はなく、糖尿病合併症の予防又は治療法に関する知見は今までに見られなかった。 また、アルドース還元酵素は人間のような温血動物の中でグルコースおよびガラクトースのようなアルドースをそれぞれソルビトールおよびガラクチトールのような相当アルディトールへ接触的に転化する能力をもっている。アルディトールは細胞膜を透過しづらく、一たん形成されるとその後の新陳代謝によってのみ除かれる傾向がある。その結果、アルディトールはそれらが形成される細胞の内部に蓄積する傾向があり、内部滲透圧の上昇の原因となり、それはまた細胞自身の機能を破壊しあるいは損なう十分なものとなり得る。その上、増大したアルディトール水準はそれらの中間代謝物の異常水準をもたらし、それらは自らが細胞機能を害しあるいは損なうものであり得る。アルドース還元酵素は比較的低い親和性をもち、一般的には比較的大きい濃度のアルドースの存在下で効果があるにすぎない。そのような大濃度は糖尿病(グルコース過度)およびガラクトース血症(ガラクトース過度)の臨床的状態において存在する。従って、アルドース還元酵素阻害剤は、眼、神経および腎臓のような組織の中で一部にはそれぞれソルビトールあるいはガラクチトールの蓄積に基づくものであり得る糖尿病またはガラクトース血症の周辺効果の発現を軽減または防止するのに有用である。そのような周辺効果は例えば、黄斑浮腫(macular oedama)、白内障、網膜症、ニューロパシ、および神経伝導障害(impaired neural conduction)を包含する。数多くのアルドース還元酵素阻害剤が発見されかつ臨床的に評価されてきたが、別の阻害剤を求める要望は継続的に存在している。 本発明で用いる化合物あるいは組成物・飲食品の主成分はアントシアニン類である。アントシアニン類は、活性酸素除去作用があることが知られており、本発明者らが別途出願(WO01/01798(特許文献6))しているように、視覚改善効果、血流改善効果などが知られている。また特開2000-32954号公報(特許文献7)記載のように抗酸化機能による白内障の予防効果が期待されているが、AGE阻害活性、アルドース還元酵素阻害活性や糖尿病性合併症についての記述はない。特開平10-59846号公報(特許文献8)にはブドウ由来のプロアントシアニジンオリゴマーの白内障予防効果が示されているが、AGE阻害活性、アルドース還元酵素阻害活性や糖尿病性合併症についての記述はない。特許公報2967523号(特許文献9)には、アントシアニジンを有効成分とする眼病用製薬組成物が報告されているが、AGE阻害活性、アルドース還元酵素阻害活性についての記述はなく、またアントシアニジンは配糖体ではないために本発明とは異なるものである。 よって、本発明では新たにアントシアニン類に、AGE阻害活性とアルドース還元酵素阻害活性の双方を有することを見いだし、糖尿病性合併症などの予防や治療に効果を見いだすことができたのである。特公平6-67827号公報特開2002-302472号公報特表2002-543118号公報特表2002-541139号公報特開2000-186044号公報WO01/01798特開2000-32954号公報特開平10-59846号公報特許公報2967523号 このような現状を踏まえて、本発明は、これまで報告されたAGE生成阻害剤と構造上異なり、強いAGE生成阻害活性を有する化合物を見出し、その化合物が同時にアルドース還元酵素阻害活性を同時に有し、AGE生成に関連する糖尿病性合併症(糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、白内障、大血管障害)、あるいはその他AGE生成に関連する各種疾患(アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、透析アミロイドーシス、関節リウマチ)の予防治療作用と同時にアルドース還元酵素阻害作用による、糖尿病またはガラクトース血症の周辺効果(黄斑浮腫、白内障、網膜症、ニューロパシ、および神経伝導障害)の予防治療剤として有用な組成物、および組成物を含む医薬品、飲食品を提供することである。 本発明者らは、大量に得ることができる天然物由来のAGE生成を阻害し得る化合物を得るべく鋭意研究を重ねた結果、AGE生成を強く阻害する化合物を見出し、この化合物が同時にアルドース還元酵素阻害活性を有することを見いだし、本発明を完成させるに至った。 本発明の阻害剤として用い得る化合物は、配糖体であるアントシアニンである。主に下記の構造式に示されるような骨格を含む化合物の総称をアントシアンと呼ぶが、アグリコンのみのものを特にアントシアニジン、配糖体として糖が結合したものを特にアントシアニンと呼ぶ。アントシアニジンには、下記のように側鎖によりデルフィニジン、シアニジン、マルビジン、ぺラルゴニジン、ペオニジン、ペツニジンがある。例えば、グルコースが配糖体として結合しているものはアントシアニジングルコシドと呼ぶことも可能である。また、アントシアニジンとアントシアニンの総称としてアントシアンと呼ぶ。[式中、R1およびR2は、同一または異なって水素原子、水酸基またはメトキシ基を表し、Glyは、グルコース、ルチノース、アラビノース、ガラクトース、ソフォロースなどの糖類基を表す。] アントシアン類は自然界に幅広く存在し、主に天然系色素として食品、あるいはその機能性から欧州では、医薬品、医薬部外品、化粧品などに幅広く使用されている。例えば特公昭59-53883号公報に記載されるような瘢痕形成剤としての利用、あるいは、特開平3-81220号公報に記載されるようなブルーベリー由来のアントシアニンを用いた末梢血管の疾病治療について価値ある薬理学的性質が見出されている。昨今日本国内でもアントシアニンの色素以外の利用法としてアントシアニンの機能性に注目が集まってきている。本発明者らも、カシス(英名Black currant, 和名黒フサスグリ)のアントシアニンにいくつかの有用な効能を見出し、PCT/JP00/04337として出願している。 特に、ベリー類の1種であるカシスから抽出したデルフィニジンおよびシアニジンの3-グルコシドおよびルチノシドの4種の化合物は、対照薬として比較されるアミノグアニジンの10分の1程度の低濃度でAGEの形成を強力に阻害することを発明者らは見出した。よって、このようなアントシアニン成分を有効量摂取することによって、糖尿病性合併症(糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、白内障、大血管障害)、あるいはその他AGE生成に関連する各種疾患(アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、透析アミロイドーシス、関節リウマチ)の予防あるいは治療を行うことができる。 また、同時にアルドース還元酵素阻害活性を有することからも、糖尿病またはガラクトース血症の周辺効果(黄斑浮腫、白内障、網膜症、ニューロパシ、および神経伝導障害)の予防あるいは治療することができる。 すなわち、本発明は以下の通りである。[1] アントシアニンを含有してなる後期糖化最終生成物形成の阻害剤、[2] アントシアニンがデルフィニジンまたはシアニジンの配糖体であることを特徴とする[1]の後期糖化最終生成物形成の阻害剤、[3] アントシアニンを含有してなるアルドース還元酵素の阻害剤、[4] アントシアニンがデルフィニジンまたはシアニジンの配糖体であることを特徴とする[3]のアルドース還元酵素の阻害剤、[5] アントシアニンを含有してなる後期糖化最終生成物形成阻害活性およびアルドース還元酵素阻害活性を有する組成物、[6] [1]または[2]の後期糖化最終生成物形成の阻害剤あるいは、[3]または[4]のアルドース還元酵素の阻害剤を含有する組成物、[7] 前記の組成物がベリー類から調製したアントシアニンを含む医薬である[6]の組成物、[8] 前記の組成物がカシスから調製したアントシアニンを含む医薬である[6]の組成物、[9] 前記の組成物がベリー類から調製したアントシアニンを含む食品である[6]の組成物、[10] 前記の組成物がカシスから調製したアントシアニンを含む食品である[6]の組成物、[11] アントシアニンを含有してなる、後期糖化最終生成物形成またはアルドース還元酵素活性に起因する疾患の予防または治療用食品、ならびに[12] 前記の疾患が糖尿病およびその合併症である、[11]の予防または治療用食品。 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2003-365190号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。 本発明の実施例が示すように、本発明のアントシアニンはアミノグアニジンよりも優れたAGE生成阻害活性を有し、またrutinと同等以上のアルドース還元酵素阻害活性を有していた。本発明のアントシアニンは、糖尿病合併症、並びに腎臓疾患、神経損傷、アテローム性動脈硬化症、網膜症、皮膚科学的症状及びすでに形成されている高濃度のAGEによって起きる歯の着色を含む老化関連合併症の治療に有用であると同時にアルドース還元酵素阻害活性を有することからも、糖尿病またはガラクトース血症の周辺効果(黄斑浮腫、白内障、網膜症、ニューロパシ、および神経伝導障害)の予防あるいは治療を行うことができる。 本発明は、アントシアニンを有効成分とするAGE阻害剤およびアルドース還元酵素阻害剤である。 本発明の阻害剤として用い得るアントシアニンは、カシス(ブラックカーラント)、エルダーベリー、カウベリー、グースベリー、クランベリー、サーモンベリー、スィムブルーベリー、ストロベリー、ハクルベリー、ブラックベリー、ブルーベリー、ホワートルベリー、ボイセンベリー、マルベリー、ラズベリー、レッドカーラント、ローガンベリーなどのベリー類、紫サツマイモ、赤キャベツ、ブドウ果汁あるいは果皮、ブドウ果皮、紫トウモロコシ、赤ダイコン、シソ、赤米、ダークスィートチェリー、チェリー、ハイビスカス、プラム、紫イモ、紫ヤマイモなどアントシアニンを多く含む物から抽出することにより得ることができる。例えば本願発明者がすでに開示している(WO01/01798)ように植物体などから抽出した化合物を用いることができる。アントシアニンの原料が高いことから、この中でもベリー類から抽出されることが望ましい。また、例えば、本発明者らが開示している(WO02/22847)デルフィニジンおよびシアニジンの-3-グルコシドおよびルチノシドのように結晶化したアントシアニンも望ましい。本発明で用いるアントシアニンおよびその結晶は、WO01/01798およびWO02/22847の記載に従って得ることができる。本発明のアントシアニンの一般式は上記の通りであり、アグリコン部分は、デルフィニジン、シアニジン、マルビジン、ぺラルゴニジン、ペオニジン、ペツニジンのいずれのものも用い得るが、デルフィニジンまたはシアニジンが望ましい。また、糖部分はグルコース、ルチノース、アラビノース、ガラクトース、ソフォロースなどいずれも用いることができる。以前の研究において、この化合物が、非毒性であることが示され、血液中に存在することが示され、そして経口的に、非経口的にあるいは直腸的に、投与や摂取することができる。 本発明のアントシアニンを含有してなるAGE阻害剤は、in vitroのAGE生成阻害試験において、AGE生成阻害活性を有する物質として知られているアミノグアニジンの活性と比較して、明らかに優れた阻害活性を示す。in vitroのAGE生成阻害試験として、リゾチームや牛血清アルブミン(BSA)とフルクトースを用いた試験があり、例えば森光らの方法(Morimitu. Y. et. al., Biosci. Biotech. Biochem., 59, 2018-2021 (1995))が挙げられる。活性の比較はAGE生成を50%阻害する濃度(IC50)を指標に行えばよい。このように、本発明のアントシアニンを含有してなるAGE阻害剤は、優れたAGE生成阻害活性を有するものであり、AGEが関与する疾患の予防及び治療剤の医薬品等として有効に用いることができる。 また、本発明のアントシアニンを含有してなるアルドース還元酵素の阻害剤は、in vitroのアルドース還元酵素阻害活性試験において、アルドース還元酵素阻害活性を有する物質として知られているrutinの活性と比較して、同等の阻害活性を示す。in vitroのアルドース還元酵素阻害活性試験として、例えばDufraneらの方法(Dufrane S.P. et al., Biochem. Med., 32, 99-105 (1984))が挙げられる。活性の比較はアルドース還元酵素活性を50%阻害する濃度(IC50)を指標に行えばよい。このように、本発明のアントシアニンを含有してなるアルドース還元酵素阻害剤は、優れたアルドース阻害活性を有するものであり、アルドース還元酵素が関与する疾患の予防及び治療剤の医薬品などとして有効に用いることができる。 また、本発明で用いるアントシアニンは、AGE生成阻害活性およびアルドース還元酵素阻害活性の両方を有しているため、本発明のアントシアニンをAGE阻害剤兼アルドース還元酵素阻害剤として用いることができる。 本発明のアントシアニンを含有してなるAGE阻害剤兼アルドース還元酵素阻害剤は、医薬特にAGE生成阻害薬として有用であり、特に冠動脈性心疾患、末梢循環障害、脳血管障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、動脈硬化症、関節硬化症、白内障、網膜症、凝固障害症、糖尿病性骨減少症などの糖尿病性合併症;アテローム性動脈硬化症、糸球体腎炎、白内障、骨関節症、関節周囲硬直症、関節硬化症、老人性骨粗鬆症、アルツハイマー病などの老人性疾患;また、周知のようにメイラード後期反応により活性酸素種が産生されることから、動脈硬化、冠動脈性心疾患、脳血管障害、肝不全、腎不全、白内障、網膜症、自己免疫疾患などの活性酸素を主原因の一つとして考えられている疾患の予防及び治療剤として非常に有用である。更に、蛋白質やアミノ酸を含有する食品においてもメイラード反応が進行し、AGE生成物により蛋白質やアミノ酸の劣化が起こるため、食品においても当該メイラード反応を阻害する化合物として有用である。 本発明のアントシアニンを含有してなるAGE阻害剤はアルドース還元酵素阻害活性試験から、有用な阻害剤であるrutinとほぼ同等な阻害活性を有することを見出した。以上のように、本発明のアントシアニンを含有してなるAGE阻害剤は、アルドース還元酵素阻害活性も同時に有し、過剰なソルビトールやガラクチトールの蓄積で引き起こされる糖尿病またはガラクトース血症の周辺効果(黄斑浮腫、白内障、網膜症、ニューロパシ、および神経伝導障害)の予防あるいは治療を同時に行うことができる。 本発明のアントシアニンを含有してなるAGE阻害剤兼アルドース還元酵素阻害剤は多くの無機酸、及び有機酸と塩を形成し、この性質は純物質製造並びに医薬品としての提供形態に利用される。すなわち製造時にあっては酸性とすることで例えば水などの極性溶媒に可溶化、抽出精製がされ、好ましい物理化学的性状を示す塩の形態として単離され、医薬の用途においては、薬理学的に許容される塩の形態をとることができる。とりうる塩の形態としては、塩酸、硝酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との酸付加塩、もしくは脂肪族のモノカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシアルカン酸、ヒドロキシアルカン二酸、アミノ酸などと、また芳香族の酸、脂肪族、芳香族のスルホン酸などの無毒な有機酸から誘導される塩がある。このような酸付加塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸鉛、硫酸水素塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、グリコール酸塩などがあげられる。上記にあげた酸付加塩は、一方で薬理学的に許容される医薬品としての意義があり、医薬品として、製剤上の利点、また、人体に投与される場合、分散性、吸収性などの面に有用性を示すものと思われる。 本発明のアントシアニンを含有してなるAGE阻害剤兼アルドース還元酵素阻害剤を有効成分とする医薬は、経口および非経口(例えば静注、筋注、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で、ヒトおよびヒト以外の動物に投与することができる。従って、本発明のアントシアニンを含有してなるAGE阻害剤兼アルドース還元酵素阻害剤を有効成分とする医薬品は、投与経路に応じた適当な剤型とされる。具体的には、経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などがあげられ、非経口剤としては、静注、筋注などの注射剤、直腸投与剤、油脂性座剤、水性座剤などがあげられる。これらの各種製剤は、通常用いられている賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤などを用いて常法により製造することができる。 賦形剤としては例えば乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビット、結晶セルロースなどが、崩壊剤としては例えばデンプン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン末、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリンなどが、結合剤としては例えばジメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが、滑沢剤としては例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、硬化植物油などがそれぞれあげられる。また、上記注射剤は、必要により緩衝剤、pH調整剤、安定化剤などを添加して製造することができる。 本発明のアントシアニンを含有してなるAGE阻害剤兼アルドース還元酵素阻害剤を含む組成物を医薬品として用いる場合は、その剤型に応じて異なるが、通常全組成物中アントシアニンが0.1〜50重量%、好ましくはアントシアニンが0.1〜20重量%程度である。投与量は患者の年齢、体重、性別、疾患の相違、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常成人1日当りアントシアニンが1〜1000mg、好ましくは1〜200mgであり、これを1日1回または数回に分けて投与する。 また、本発明のアントシアニンを含有してなるAGE阻害剤兼アルドース還元酵素阻害剤を含む組成物を食品として使用する場合、食品全体に対して本発明の化合物の含有量が0.01から10重量%となるように配合することができる。すなわち、粉末、顆粒状、液状、ペースト状などの食品用組成物の形態が可能であり、飲食品としてはキャンディー、チューイングガム、ジュース、粉末飲料、チョコレート、錠菓(タブレット)、ゼリー状食品、ジャム、ハードカプセル、ソフトカプセルなどが挙げられる。[実施例1] アントシアニンを含む組成物の調製 WO01/01798に記載の方法により、以下のようにアントシアニンを含む組成物を調製した。 市販のカシス濃縮果汁3kg(固形分当たりのアントシアニン純度2.8%)を水で希釈し、Bx.10(固形分濃度10%)の濃度に調製した。この希釈果汁を濾紙で濾過して異物を除去した後、マイナス荷電型逆浸透膜 日東電工社製NTR-7410をセットした装置で膜分離を実施した。濃縮液が循環しなくなるまで分離を実施し、再度水を添加して希釈した後、再度分離を継続した。濃縮液が循環しなくなった段階で分離を終了した。濃縮液をスプレードライして粉末状のアントシアニン高含有組成物を得た。本組成物のアントシアニン純度は固形分当たり14.1%であった。[実施例2] 結晶アントシアニンの調製 さらに本組成物から、WO02/22847に記載の方法に従って、以下のようにアントシアニンを結晶として調製した。 実施例1に記載の方法に準じて得られた粉末40g(アントシアニン各成分の内訳はD3G(デルフィニジン-3-O-グルコシド)12.5%、D3R(デルフィニジン-3-O-ルチノシド)47.9%、C3G(シアニジン-3-O-グルコシド)4.1%、C3R(シアニジン-3-O-ルチノシド)35.5%)をODSシリカゲルカラムを用い0.1%TFAを含む9%アセトニトリル水溶液で分画した。 得られたD3G画分は1.51gとC3G画分0.98g、C3R画分162mg、D3R画分231mgであった。 この濃縮物を5%塩化水素/メタノール溶液で溶解後、5℃で24時間静置し結晶化を行い、結晶性D3G塩酸塩1.06gと結晶性C3G塩酸塩0.59g、結晶性C3R塩酸塩58mg、結晶性D3R塩酸塩88mgを調製した。[試験例1] AGE生成抑制試験 森光らの方法(Morimitu. Y. et. al., Biosci. Biotech. Biochem., 59, 2018-2021 (1995))を一部改変して行った。すなわちグルコース、DMSOに溶解した被験物質、ウシ血清アルブミンを67mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.2)中で60℃で48時間、インキュベートしてAGEを十分に生成させた。AGEの生成量は反応液を希釈して、蛍光分光光度計で測定して求めた。得られた値より50%阻害濃度(IC50)を算出した。よって、IC50が低いほどAGE阻害活性が高く、阻害剤として有用であることを示している。 被験物質は実施例1で調製したアントシアニン含有組成物と実施例2で調製した4種の結晶アントシアニンを用いた。 結果は以下の表のようになり、試験に用いた4種の結晶アントシアニンは、強いAGE阻害活性を持つ物質として既知のアミノグアニジン以上の強いAGE生成阻害活性があることを見いだした。同様にアントシアニン含有組成物も強いAGE阻害活性を有することが見出された。[試験例2] アルドース還元酵素阻害活性試験 Dufraneらの方法(Dufrane S.P. et al., Biochem. Med., 32, 99-105 (1984))を一部改変して行った。すなわちWistar系雄性ラットのレンズを10mmol/L 2-メルカプトエタノールでホモジナイズし遠心分離し、その上清を粗酵素液として用いた。1mmol/LのDLグリセルアルデヒドを基質として、pH7.0、180mmol/Lのリン酸緩衝液中で、被験物質をDMSOに溶解して加え、100mmol/Lの硫酸リチウムと0.03mmol/LのNADPHを加え30℃で反応を開始した。0.5mol/LのHClを加えて反応停止後、10mmol/Lイミダゾール含有6mol/L水酸化ナトリウムを加え、20分間60℃で加熱し、NADPを蛍光物質に変換させ、生成した蛍光物質を蛍光分光光度計を用いて測定した。得られた値より50%阻害濃度(IC50)を算出した。これも実施例1と同様にIC50が低いほど阻害活性が強いことを示している。 被験物質は実施例1で調製したアントシアニン含有組成物と実施例2で調製した4種の結晶アントシアニンを用いた。 結果は以下の表のようになり、試験に用いた4種の結晶アントシアニンは、強いアルドース還元酵素阻害活性を持つ物質として既知のrutinと同等のアルドース還元酵素阻害活性があることを見いだした。同様にアントシアニンを含む組成物も強いアルドース還元酵素阻害活性を有することが見出された。 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。 デルフィニジンの配糖体および/またはシアニジン-3-O-グルコシドもしくはシアニジン-3-O-ルチノシドを有効成分として含む、後期糖化最終生成物形成の阻害剤(糖尿病、糖尿病合併症及びアルツハイマー病の治療用途を除く)。 デルフィニジンの配糖体および/またはシアニジンの配糖体を有効成分として含む、アルドース還元酵素の阻害剤(糖尿病、糖尿病合併症及びアルツハイマー病の治療用途を除く)。 デルフィニジンの配糖体および/またはシアニジンの配糖体を有効成分として含む、後期糖化最終生成物形成およびアルドース還元酵素の阻害剤(糖尿病、糖尿病合併症及びアルツハイマー病の治療用途を除く)。


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