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タイトル:特許公報(B2)_化粧品用抱水性油性原料及び化粧品
出願番号:2005513714
年次:2013
IPC分類:A61K 8/39,A61Q 1/04,A61Q 1/12


特許情報キャッシュ

大木 淳 野口 安則 JP 5255749 特許公報(B2) 20130426 2005513714 20040831 化粧品用抱水性油性原料及び化粧品 阪本薬品工業株式会社 390028897 野中 誠一 100100376 大木 淳 野口 安則 JP 2003313715 20030905 20130807 A61K 8/39 20060101AFI20130718BHJP A61Q 1/04 20060101ALI20130718BHJP A61Q 1/12 20060101ALI20130718BHJP JPA61K8/39A61Q1/04A61Q1/12 A61K 8/39 A61Q 1/00 − 1/14 国際公開第02/078650(WO,A1) 特開2003−040765(JP,A) 特開2001−122738(JP,A) 国際公開第2005/039516(WO,A1) 国際公開第2004/002438(WO,A1) 特開平08−217725(JP,A) 特開平08−217723(JP,A) 特開平08−143513(JP,A) 特開平07−308560(JP,A) 特開2002−241219(JP,A) 特開2003−113025(JP,A) 特開2005−239590(JP,A) 特開2005−239591(JP,A) 特開2005−239592(JP,A) 特開2005−247739(JP,A) 2 JP2004013079 20040831 WO2005023751 20050317 13 20070827 爾見 武志 本発明は、エステル化物に関し、詳しくは、ポリグリセリンと脂肪酸とをエステル化させることによって得られるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、このエステルを含有させた化粧品に関するものである。 油性原料は、広範囲の化粧品主要原料として使用され、クリームや乳液等の重要な成分となっている。化粧品に使用される油性原料は、皮膚からの水分蒸散の抑制、使用感触の向上等の目的で使用される。油性原料には、植物油、動物油等の天然油性成分および油脂、ロウ類から精製分離された高級アルコールや高級脂肪酸、石油を分留精製して得る炭化水素油類、並びに、合成されたエステル油類がある。 動物油の一種としては、ラノリンが知られており、羊毛に付着している油脂を精製して得られる。ラノリンは、油性原料に使用される他の油脂に無い高い抱水性を有した有用な油性原料である。ラノリンが有用な油性原料であることは、古くから認識されており、ラノリンは、スキンケア化粧品、ヘアケア化粧品、メイクアップ化粧品等のあらゆる化粧品に広く利用されてきた。 また、エステル油類としては、ジイソスアリン酸ジグリセリルやトリイソステアリン酸ジグリセリル等のジグリセリン分枝脂肪酸エステル、及び、リンゴ酸ジイソステアリル等のリンゴ酸分枝脂肪酸エステルが知られている。これらのエステルは、植物油に由来する脂肪酸を使用して製造され、ラノリンと同じく抱水性を有する油性原料として知られている。そして、これらのエステルは、種々の化粧品に使用され、特に口紅等の口唇化粧品に使用されている。これらのエステル以外に植物油に由来する脂肪酸を使用して製造され、化粧品の油性原料として使用されるエステル類としては、ペンタイソステアリン酸デカグリセリルが知られている。 更に他の公知の油性原料としては、例えば特許文献1、及び、特許文献2に抱水性油性原料が抱水性油剤として開示されている。特許文献1の[0021]、及び特許文献2の[0010]には、ラノリン誘導体、ラノリン誘導体をポリオキシアルキレンで変性したもの、アミノ酸系エステル油剤、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、ヒドロキシ脂肪酸エステルが抱水性を有する油性原料として開示されている。特開平11−246354号公報特開2002−255738号公報 今日においてヨーロッパやアメリカ等で盛んになっている動物愛護に起因して、動物油に由来するラノリンを使用することが消費者に敬遠されるようになっている。ラノリン以外の動物油である牛脂に由来する油性原料を使用する場合にあっては、使用の法的規制、及び、昨今の狂牛病問題に起因して、その使用がより一層消費者に敬遠されている。このような牛脂が敬遠される背景下、狂牛病と同様の狂羊病を発症することがある羊に由来するラノリンの使用は、化粧品業界から敬遠されている。 一方、植物に由来する脂肪酸を使用して製造されるジグリセリン分枝脂肪酸エステル、及び、リンゴ酸分枝脂肪酸エステルは、抱水性を発揮するが、その抱水性は、ラノリンに比して不十分である。また、植物に由来する脂肪酸を使用して製造される公知のペンタイソステアリン酸デカグリセリルについての抱水性を確認すると、その抱水性は、ラノリンの抱水性よりも劣り、更に、臭気を発し、化粧品に使用した場合の保湿性が不十分となっている。 その他、特許文献1、及び、特許文献2に具体的に開示されている油性原料は、ラノリンと比べて不十分な抱水性を発揮するに過ぎない。 上記事情に鑑み、本発明の目的は、消費者に好まれる植物由来の脂肪酸を使用して製造することができる油性原料であって、抱水性を発揮し、化粧品原料として使用された場合に保湿性を発揮するエステル化物を提供することである。 また、本発明の目的は、抱水性及び保湿性を有するエステル化物を含有させた化粧品を提供することである。 本発明者らは、上記問題を解決するため鋭意検討した結果、特定のポリグリセリンと特定の分枝脂肪酸とをエステル化して得られる所定のエステル化率の脂肪酸エステル化物が、抱水性を発揮し、抱水用途に適したエステル化物となることを見出だし、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、ポリグリセリンと脂肪酸とをエステル化させて得られるエステル化物であって、前記ポリグリセリンは、水酸基価から算出される平均重合度が6〜15のポリグリセリンであり、前記脂肪酸は、炭素数8〜22の分枝脂肪酸から選択される一種以上の分枝脂肪酸であり、前記エステル化物のエステル化率が60%以上であることを特徴とするエステル化物である。この発明において、エステル化物とは、遊離の脂肪酸が含有されているエステル化物、及び、遊離の脂肪酸が含有されていないエステル化物の双方が含まれる。 前記水酸基価から算出される平均重合度(n)とは、末端分析法によって算出される値であり、次式(式1)及び(式2)から算出される。(式1)分子量=74n+18(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量 前記水酸基価とは、エステル化物中に含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのエステル化物に含まれる遊離のヒドロキシル基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのミリグラム数をいい、水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)、1996年度版」に準じて算出される。 前記エステル化率とは、水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、付加する分枝脂肪酸のモル数(M)とした時、{M/(n+2)}×100=エステル化率(%)で算出される値である。 また前記エステル化物は、酸価が3.0以下であるエステル化物であることが好適である。この酸価とは、エステル化物中に含まれる遊離脂肪酸の大小の指標となる数値であり、エステル化物1g中に含まれている遊離脂肪酸を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいい、社団法人日本油化学会編纂「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、1996年度版」に準じて算出される。 本発明は、前記エステル化物を含有させた化粧品である。 上記のように構成されたエステル化物は、特定のポリグリセリンと特定の分枝脂肪酸とをエステル化させ、60%以上のエステル化率となった構成を有することで、抱水性を発揮し、化粧品の原料として使用された場合には、化粧品を優れた保湿性を有する化粧品とする。また、上記のエステル化物の酸価が3.0以下の場合には、臭気に優れたエステル化物となる。 また、上記のように構成された化粧品は、本発明に係るエステル化物を含有させて製造された化粧品であるので、抱水性および保湿性に優れた化粧品となる。 以下、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。本発明に係る分枝脂肪酸エステル化物は、ポリグリセリンが有する水酸基を特定の分枝脂肪酸の一種以上でエステル化した分枝脂肪酸エステル化物である。 ポリグリセリンには、水酸基価から算出される平均重合度で6〜15、好ましくは8〜12のポリグリセリンが選択される。 特定の分枝脂肪酸には、炭素数8〜22、好ましくは14〜20のものが一種以上選択される。飽和の分枝脂肪酸を使用することが好ましく、炭素数8〜22の飽和分枝脂肪酸は、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、4−プロピルペンタン酸、4−エチルペンタン酸、2−メチルデカン酸、3−メチルデカン酸、4−メチルデカン酸、5−メチルデカン酸、6−メチルデカン酸、7−メチルデカン酸、9−メチルデカン酸、6−エチルノナン酸、5−プロピルオクタン酸、3−メチルウンデカン酸、6−プロピルノナン酸、2−メチルドデカン酸、3−メチルドデカン酸、4−メチルドデカン酸、5−メチルドデカン酸、11−メチルドデカン酸、7−プロピルデカン酸、2−メチルトリデカン酸、12−メチルトリデカン酸、2−メチルテトラデカン酸、4−メチルテトラデカン酸、13−メチルテトラデカン酸、14−メチルペンタデカン酸、2−エチルテトラデカン酸、15−メチルヘキサデカン酸、2−プロピルデカン酸、2−エチルヘキサデカン酸、14−エチルヘキサデカン酸、14−メチルヘプタデカン酸、15−メチルヘプタデカン酸、16−メチルヘプタデカン酸、2−ブチルテトラデカン酸、2−メチルオクタデカン酸、3−メチルオクタデカン酸、4−メチルオクタデカン酸、5−メチルオクタデカン酸、6−メチルオクタデカン酸、7−メチルオクタデカン酸、8−メチルオクタデカン酸、9−メチルオクタデカン酸、10−メチルオクタデカン酸、11−メチルオクタデカン酸、14−メチルオクタデカン酸、15−メチルオクタデカン酸、16−メチルオクタデカン酸、17−メチルオクタデカン酸、15−エチルペンタデカン酸、3−メチルノナデカン酸、2−エチルオクタデカン酸、2−メチルイコサン酸、2−プロピルオクタデカン酸、2−ブチルオクタデカン酸が例示される。飽和分枝脂肪酸中、炭素数18の16−メチルヘプタデカン酸(イソステアリン酸)が好ましい。 エステル化物のエステル化率が60%であることが、ラノリン以上の抱水性を発揮するので好適である。また、エステル化率が60%未満では親油性が悪く撥水性が不十分となり、皮膚からの水分蒸散を抑制する効果が小さくなるので、化粧品に使用した場合の化粧品の保湿性が乏しくなってしまう。従って、保湿性を向上させて、皮膚保護の向上を図る化粧品に使用されるエステル化物とするためにも、エステル化率が60%以上であることが好適である。 エステル化率の上限値は、特に限定されるものではないが、90%以下であると良く、好ましくは、80%以下である。それは、90%を超えるエステル化率の場合には、抱水性がラノリンよりも劣る傾向が生じ、80%を超える場合には、ラノリンよりも優れた抱水性を発揮するものの、エステル化率が高くなるにつれて抱水性が低下する傾向が生じるからである。 エステル化物の酸価は、3.0以下であることが、エステル化物、及び、このエステル化物を使用して製造された化粧品が発する臭気を抑制することができるので好適である。酸価が3.0を超えると未反応の脂肪酸含量が増えるので、臭気面が悪くなり、また未反応脂肪酸による皮膚刺激が懸念され、化粧品用の油性原料として相応しくない。 本発明に係る分枝脂肪酸エステル化物は、上述の所定範囲の平均重合度のポリグリセリンと所定範囲の炭素数の分枝脂肪酸とをエステル化させる以下の方法を使用することで製造される。最初に、ポリグリセリンに分枝脂肪酸を仕込む。この場合、二種以上の分枝脂肪酸を仕込むのであれば、各分枝脂肪酸を混合してからポリグリセリンに仕込むか、各分枝脂肪酸を一種ずつポリグリセリンに仕込むかを問わず、最終的に各分枝脂肪酸が所定量仕込まれていれば良い。次に、分枝脂肪酸を仕込んだポリグリセリンに水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を加えた後、常圧もしくは減圧下において常法に従ってエステル化反応を行なわせる。このエステル化反応を、エステル化物のエステル化率が60%以上、酸価が3.0以下となるまで継続して行うと良い。 本実施形態におけるエステル化物を使用し、公知の化粧品の調製方法によって、本発明に係る分枝脂肪酸エステル化物を含有させた化粧品を調製することが出来る。 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。 実施例1〜3のエステル化物を以下の通り合成した。実施例のエステル化物の比較のために比較例1〜4のエステル化物も合成した。なお、実施例および比較例のエステル化物の合成に使用した脂肪酸は、全て植物由来の脂肪酸を使用した。 水酸基価から算出される平均重合度が10のポリグリセリン100gと16−メチルヘプタデカン酸(慣用名:イソステアリン酸)337gを反応容器に入れ、0.2gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において250℃、4時間の条件下でエステル化反応を行なわせることによって、実施例1の分枝脂肪酸エステル化物395gを得た。この分枝脂肪酸エステル化物のエステル化率は、75.0%であり、酸価は、1.0であった。 水酸基価から算出される平均重合度が6のポリグリセリン100gと2−エチルヘキサン酸(慣用名:オクチル酸)150gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応を行なわせ、実施例2の分枝脂肪酸エステル化物220gを得た。この分枝脂肪酸エステル化物のエステル化率は、60.0%であり、酸価は、0.5であった。 水酸基価から算出される平均重合度が12のポリグリセリン100gとイソステアリン酸351gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応を行わせ、実施例3の分枝脂肪酸エステル化物407gを得た。この分枝脂肪酸エステル化物のエステル化率は、80.0%であり、酸価は、3.0であった。 〈比較例1〉水酸基価から算出される平均重合度が10のポリグリセリン100gとイソステアリン酸225gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応を行わせ、比較例1の分枝脂肪酸エステル化物295gを得た。この分枝脂肪酸エステル化物のエステル化率は、50.0%であり、酸価は、5.0であった。 〈比較例2〉水酸基価から算出される平均重合度が4のポリグリセリン100gとイソステアリン酸380gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応を行わせ、比較例2のエステル化物433gを得た。この脂肪酸エステル化物のエステル化率は、70.0%であり、酸価は、1.0であった。 〈比較例3〉水酸基価から算出される平均重合度が10のポリグリセリン100gとオレイン酸335gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応を行わせ、比較例3のエステル化物393gを得た。この脂肪酸エステル化物のエステル化率は、75.0%であり、酸価は、1.0であった。 〈比較例4〉水酸基価から算出される平均重合度が10のポリグリセリン100gとステアリン酸337gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応を行わせ、比較例4のエステル化物395gを得た。この脂肪酸エステル化物のエステル化率は、75.0%であり、酸価は、1.0であった。 実施例および比較例の各エステル化物の抱水性および臭気について、以下の抱水率試験および臭気強度試験に基づき試験を行なった。これら両試験を、ラノリンおよびトリイソステアリン酸ジグリセリルについても行なった。 (抱水率試験)実施例のエステル化物、比較例のエステル化物、ラノリン、又は、トリイソステアリン酸ジグリセリル1gとワセリン9gとの混合物を試料とし、その試料を撹拌しながら、徐々に水を滴下し、離水するまで試料に抱水させた。この場合の抱水率を、抱水率(%)=抱水量(g)/試料重量(g)×100とした。(臭気強度の試験)実施例のエステル化物、比較例のエステル化物、ラノリン、又は、トリイソステアリン酸ジグリセリル1gを手の甲に塗り広げ、臭気の強度を以下の基準に従って官能評価した。尚、官能評価を行なったモニター数は、20名の男女とした。基準 ○:臭気を殆ど感じない。 △:やや臭気を感じる。 ×:強い臭気を感じる 抱水率試験の結果、及び、臭気強度の試験の結果をエステル化に使用したポリグリセリンの平均重合度、及び、脂肪酸、並びに、エステル化物のエステル化率、及び、酸価と併せて次表1に示す。 表1から、平均重合度が6〜15のポリグリセリンと炭素数が8〜22の分枝脂肪酸をエステル化させて得られたエステル化率60%以上の実施例のエステル化物は、比較例のエステル化物に比べて抱水率が大きく、更に、ラノリンを200%以上も上回る抱水率であることを確認することができる。 また、酸価が5.0の比較例1のエステル化物は、臭気を感じさせ、酸価が3.0以下の比較例3のエステル化物も、臭気を感じさせるものであるが、酸価が3.0以下の各実施例のエステル化物は、臭気をほとんど感じさせることがないので優れていることが、表1において確認することができる。なお、比較例1〜4のエステル化物の何れよりも高い抱水率を示しているラノリンは、強い臭気を感じさせる結果であるが、本発明の実施例1〜3のエステル化物は、ラノリンより高い抱水率であり且つ臭気を感じさせない特異的性質を有していることが表1から確認することができる。 上記実施例1〜3のエステル化物とは別に、実施例4〜7のエステル化物を植物由来の脂肪酸を使用して以下の通り合成した。 水酸基価から算出される平均重合度が10のポリグリセリン100gとイソステアリン酸337gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応を行なわせ、実施例4の分枝脂肪酸エステル化物を得た。 イソステアリン酸の量を360gとした以外は、実施例4と同様にして、実施例5の分枝脂肪酸エステル化物を得た。 イソステアリン酸の量を405gとした以外は、実施例4と同様にして、実施例6の分枝脂肪酸エステル化物を得た。 イソステアリン酸の量を450gとした以外は、実施例4と同様にして、実施例7の分枝脂肪酸エステル化物を得た。 得られた実施例4〜7のエステル化物について、上述の抱水率試験と同様にして抱水率を確認した。その結果を次表2に示す。 表2において、実施例7以外のエステル化物の抱水率は、何れも表1のラノリンの抱水率(360%)よりも高い。つまり、本発明のエステル化物である実施例4〜7のエステル化物は、抱水性を有し、エステル化率が90%未満の本発明のエステル化物は、ラノリンと同等以上の抱水性を有していることを確認することができる。また、エステル化率が80%を超える本発明のエステル化物は、抱水率が低下する傾向があることを確認することができる。 (化粧品の調製) 前記実施例1〜3または比較例のエステル化物を配合して、各種化粧品を調製した。配合比率及び化粧品の調製方法は、以下の配合実施例1〜9、配合比較例1〜9の通り行なった。 〈配合実施例1〉 エモリエントクリームA相 (重量%) 実施例1の分枝脂肪酸エステル化物 5.00 スクワラン 7.50 モノミリスチン酸デカグリセリル 2.00 ステアリン酸 3.50 モノステアリン酸グリセリン 2.00 トリ−2エチルヘキサン酸グリセリル 5.00B相 グリセリン 7.00 10重量%−水酸化カリウム水溶液 1.00 精製水 67.00A相を80℃にて溶解し、これに80℃に加温したB相を徐々に添加して乳化した。乳化後、35℃まで冷却してエモリエントクリームを得た。 〈配合実施例2〉 ミルキーローションA相 (重量%) 実施例1の分枝脂肪酸エステル化物 2.50 モノオレイン酸デカグリセリル 1.00B相 1重量%−カルボキシビニルポリマー水溶液 5.00 10重量%−水酸化カリウム水溶液 1.00 1,3−ブチレングリコール 5.00 グリセリン 2.00 精製水 83.50A相を80℃にて溶解し、これに80℃に加温したB相を徐々に添加して乳化した。乳化後、35℃まで冷却してミルキーローションを得た。〈配合実施例3〉 口紅A相 (重量%) 実施例2の分枝脂肪酸エステル化物 20.00 セレシン 23.50 ヒマシ油 27.00 流動パラフィン 15.00 カルナウバロウ 7.00 キャンデリラロウ 5.00B相 酸化チタン 2.00 赤色系色素 0.50A相を80℃に加温して均一に溶解した後、冷却し、ロールミルで均一に練った。次にB相を添加し、脱泡後、型に流し込み急冷して口紅を得た。 〈配合実施例4〉 シャンプー (重量%) 実施例2の分枝脂肪酸エステル化物 2.00 グリセリン 5.00 POE(2)ラウリルエーテル硫酸 ナトリウム(27重量%水溶液) 20.00 POE(2)ラウリルエーテル硫酸 トリエタノールアミン(32重量%水溶液) 35.00 塩化ポリオキシプロピレン(36)メチル ジエチルアンモニウム 2.00 パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド(1) 1.00 塩化ナトリウム 0.50 クエン酸1水和物 0.20 精製水 34.30全成分を80℃にて加温して、均一に溶解し、35℃まで冷却してシャンプーを得た。 〈配合実施例5〉 ヘアコンディショナーA相 (重量%) 実施例3の分枝脂肪酸エステル化物 3.00 塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(63重量%水溶液)0.70 塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(80重量%水溶液) 0.60 ステアリルアルコール 2.50 親油型モノステアリン酸グリセリン 0.50B相 ヒドロキシエチルセルロース 0.50 精製水 92.20A相を80℃にて溶解し、これに80℃に加温したB相を徐々に添加して乳化した。乳化後、35℃まで冷却してヘアコンディショナーを得た。 〈配合実施例6〉 軟膏基剤A相 (重量%) 実施例3の分枝脂肪酸エステル化物 10.00 流動パラフィン 13.00 ワセリン 10.00 セチルアルコール 10.00 モノイソステアリン酸デカグリセリル 3.00B相 ラウリル硫酸ナトリウム 1.00 精製水 53.00A相を80℃にて溶解し、これに80℃に加温したB相を徐々に添加して乳化した。乳化後、35℃まで冷却して軟膏基剤を得た。 〈配合実施例7〉 クレンジングクリームA相 (重量%) 実施例1の分枝脂肪酸エステル化物 20.00 スクワラン 10.00 イソノナン酸イソノニル 10.00 セチルアルコール 3.00 親油型モノステアリン酸グリセリン 3.00B相 モノイソステアリン酸デカグリセリル 3.00 グリセリン 5.00 N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 1.00 精製水 45.00A相及びB相を80℃にて溶解し、B相にA相を徐々に添加して乳化した。乳化後、35℃まで冷却してクレンジングクリームを得た。 〈配合実施例8〉 ヘアワックスA相 (重量%) 実施例2の分枝脂肪酸エステル化物 10.00 ホホバワックス 3.00 ワセリン 3.00 スクワラン 2.00 セチルアルコール 1.50 自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 2.00B相 ジグリセリン 5.00 モノミリスチン酸デカグリセリル 2.00 2重量%−アクリル酸・メタクリル酸アルキル 共重合体水溶液 18.00 2重量%−カルボキシビニルポリマー水溶液 5.00 10重量%−水酸化カリウム水溶液 1.80 精製水 46.70A相及びB相を80℃にて溶解し、B相にA相を徐々に添加して乳化した。乳化後、35℃まで冷却してヘアワックスを得た。 〈配合実施例9〉 油性ファンデーション(スティックタイプ)A相 (重量%) 実施例3の分枝脂肪酸エステル化物 15.00 固形パラフィン 7.50 マイクロクリスタリンワックス 7.00 リンゴ酸ジイソステアリル 5.00 オレイン酸フィトステリル 5.00 精製水 10.00 B相 カオリン 23.00 酸化チタン 23.00 ベンガラ 1.00 黄酸化鉄 3.00 黒酸化鉄 0.50A相を85℃にて加温して均一に溶解した後、これに予め混合粉砕したB相を攪拌しながら添加し、コロイドミルで磨砕分散した。脱気後、70℃で型に流し込み急冷させて、油性ファンデーションを得た。 〈配合比較例1〉 エモリエントクリームA相 (重量%) 比較例1のエステル化物 5.00 スクワラン 7.50 モノミリスチン酸デカグリセリル 2.00 ステアリン酸 3.50 モノステアリン酸グリセリン 2.00 トリ−2エチルヘキサン酸グリセリル 5.00B相 グリセリン 7.00 10重量%−水酸化カリウム水溶液 1.00 精製水 67.00A相を80℃にて溶解し、これに80℃に加温したB相を徐々に添加して乳化した。乳化後、35℃まで冷却してエモリエントクリームを得た。 <配合比較例2> ミルキーローションA相 (重量%) 比較例2のエステル化物 2.50 モノオレイン酸デカグリセリル 1.00B相 1重量%−カルボキシビニルポリマー水溶液 5.00 10重量%−水酸化カリウム水溶液 1.00 1,3−ブチレングリコール 5.00 グリセリン 2.00 精製水 83.50A相を80℃にて溶解し、これに80℃に加温したB相を徐々に添加していき乳化した。乳化後、35℃まで冷却してミルキーローションを得た。 <配合比較例3> 口紅A相 (重量%) 比較例3のエステル化物 20.00 セレシン 23.50 ヒマシ油 27.00 流動パラフィン 15.00 カルナウバロウ 7.00 キャンデリラロウ 5.00 B相 酸化チタン 2.00 赤色系色素 0.50A相を80℃にて加温して均一に溶解した後、冷却しロールミルで均一に練った。これにB相を添加し、脱泡後、型に流し込み急冷して口紅を得た。 <配合比較例4> シャンプー (重量%) 比較例4のエステル化物 2.00 グリセリン 5.00 POE(2)ラウリルエーテル硫酸 ナトリウム(27重量%水溶液) 20.00 POE(2)ラウリルエーテル硫酸 トリエタノールアミン(32重量%水溶液) 35.00 塩化ポリオキシプロピレン(36)メチル ジエチルアンモニウム 2.00 パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド(1) 1.00 塩化ナトリウム 0.50 クエン酸1水和物 0.20 精製水 34.30全成分を80℃にて加温して均一溶解し、35℃まで冷却してシャンプーを得た。 <配合比較例5> ヘアコンディショナーA相 (重量%) 比較例1のエステル化物 3.00 塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(63重量%水溶液)0.70 塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(80重量%水溶液) 0.60 ステアリルアルコール 2.50 親油型モノステアリン酸グリセリン 0.50B相 ヒドロキシエチルセルロース 0.50 精製水 92.20A相を80℃にて溶解し、これに80℃に加温したB相を徐々に添加して乳化した。乳化後、35℃まで冷却してヘアコンディショナーを得た。 <配合比較例6> 軟膏基剤A相 (重量%) 比較例2のエステル化物 10.00 流動パラフィン 13.00 ワセリン 10.00 セチルアルコール 10.00 モノミリスチン酸デカグリセリル 3.00 B相 ラウリル硫酸ナトリウム 1.00 精製水 53.00A相を80℃にて溶解し、これに80℃に加温したB相を徐々に添加して乳化した。乳化後、35℃まで冷却して軟膏基剤を得た。 <配合比較例7> クレンジングクリームA相 (重量%) 比較例3のエステル化物 20.00 スクワラン 10.00 イソノナン酸イソノニル 10.00 セチルアルコール 3.00 親油型モノステアリン酸グリセリン 3.00B相 モノラウリン酸デカグリセリル 3.00 グリセリン 5.00 N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 1.00 精製水 45.00A相及びB相を80℃にて溶解し、B相にA相を徐々に添加して乳化した。乳化後、35℃まで冷却してクレンジングクリームを得た。 <配合比較例8> ヘアワックスA相 (重量%) 比較例4のエステル化物 10.00 ホホバワックス 3.00 ワセリン 3.00 スクワラン 2.00 セチルアルコール 1.50 自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 2.00B相 ジグリセリン 5.00 モノミリスチン酸デカグリセリル 2.00 2重量%−アクリル酸・メタクリル酸アルキル 共重合体水溶液 18.00 2重量%−カルボキシビニルポリマー水溶液 5.00 10重量%−水酸化カリウム水溶液 1.80 精製水 46.70A相及びB相を80℃にて溶解し、B相にA相を徐々に添加して乳化した。乳化後、35℃まで冷却してヘアワックスを得た。 <配合比較例9> 油性ファンデーション(スティックタイプ)A相 (重量%) 比較例1のエステル化物 15.00 固形パラフィン 7.50 マイクロクリスタリンワックス 7.00 リンゴ酸ジイソステアリル 5.00 オレイン酸フィトステリル 5.00 精製水 10.00B相 カオリン 23.00 酸化チタン 23.00 ベンガラ 1.00 黄酸化鉄 3.00 黒酸化鉄 0.50 A相を85℃にて加温して均一溶解した後、これに予め混合粉砕したB相を攪拌しながら添加し、コロイドミルで磨砕分散した。脱気後、70℃で型に流し込み急冷して、油性ファンデーションを得た。 配合実施例および配合比較例の化粧品を使用して保湿性(しっとり感)、ベタつき等の油性感、及び、臭気についての評価を行なった。この評価を配合実施例1と配合比較例1のエモリエントクリーム、配合実施例2と配合比較例2のミルキーローション、配合実施例3と配合比較例3の口紅、配合実施例4と配合比較例4のシャンプー、配合実施例5と配合比較例5のヘアコンディショナー、配合実施例6と配合比較例6の軟膏基剤、配合実施例7と配合比較例7のクレンジングクリーム、配合実施例8と配合比較例8のヘアワックス、及び、配合実施例9と配合比較例9の油性ファンデーションを直接比較することにより行なった。 配合実施例と配合比較例の何れの直接比較においても、配合比較例の化粧品は、しっとり感が不足しており、ベタついた油性感もあり官能面上不十分であったが、配合実施例の化粧品の方がしっとり感があり、油性感がなくサラッとした使用感であることが確認された。また、臭気を発している比較例1、比較例3のエステル化物を使用して調製された配合比較例1、3、5、7、及び、9の化粧品は、何れも臭気を発していたが、本発明のエステル化物を使用した配合実施例の化粧品は、配合実施例1、3、5、7、及び、9のみならず、全ての化粧品において殆ど気になる臭気もなく、無香料化粧品としても十分に使用出るものであった。 本発明の分枝脂肪酸エステル化物は、抱水性を有し、化粧品の油性原料として使用された場合には、保湿性に優れた化粧品を製造する事ができる。本発明のエステル化物は、例えば、クリーム、ローション等のスキンケア化粧品、口紅、ファンデーション等のメイクアップ化粧品、シャンプー、コンディショナー、ヘアワックス等の毛髪化粧品、クレンジング化粧品、軟膏類等、様々な化粧品の原料として使用することが可能である。 水酸基価から算出される平均重合度が10のポリグリセリンとイソステアリン酸とをエステル化させて得られ、エステル化率が75%であり、かつ酸価が3.0以下であるエステル化物を含有することを特徴とするメイクアップ化粧料。 口紅及び油性ファンデーションからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載のメイクアップ化粧料。


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