タイトル: | 特許公報(B2)_医薬組成物 |
出願番号: | 2005509041 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 31/4439,A61K 31/51,A61P 3/10 |
川杉 要 JP 5140881 特許公報(B2) 20121130 2005509041 20030917 医薬組成物 川杉 要 502232233 川杉 要 20130213 A61K 31/4439 20060101AFI20130124BHJP A61K 31/51 20060101ALI20130124BHJP A61P 3/10 20060101ALI20130124BHJP JPA61K31/4439A61K31/51A61P3/10 A61K45/00-45/08 A61K31/00-31/80 A61P3/10 CA(STN) MEDLINE(STN) JDreamII 特開2002−255854号公報 日本臨床、1999、Vol.57、No.10、p.200−203 Chem.Pharm.Bull.、2003、Vol.52、No.2、p.138−151 医学のあゆみ、2001、Vol.198、No.13、p.949−952 健康・栄養食品研究、1998、Vol.1、No.1、p.39−44 診療と新薬、1985、Vol.22、No.4、226−231 1 JP2003011847 20030917 WO2005027967 20050331 6 20060307 2010007381 20100320 内藤 伸一 平井 裕彰 前田 佳与子 本発明は、医薬組成物に関し、更に詳細には、インスリン抵抗性改善薬を主薬としながら、これに起因する浮腫、心拡大、貧血の副作用を軽減した医薬組成物に関する。 インスリン抵抗性とは、細胞、臓器、個体レベルでインスリンの諸作用を得るのに通常量以上のインスリンを必要とする病態である。この病態は、肝臓、骨格筋および脂肪組織などにおけるインスリンの感受性が低下している状態であり、インスリン分泌不全とともに2型糖尿病の特徴的な病態である。またインスリン抵抗性は、糖尿病や耐糖能異常だけでなく、高血圧、高脂血症などの生活習慣病の病態形成にも大きく関与しており、その改善は臨床的に重要性を増している。 このような、インスリン抵抗性を抑制し、インスリン抵抗性改善薬として使用できる可能性を持つものとして、核内レセプターであるペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(peroxisome proliferator−activated receptor:PPAR)γアゴニスト活性を有する化合物(以下、「PPAR−γ活性化促進化合物」という)が知られており、一部は2型糖尿病に対して使用されている。これらは、血糖降下作用のほかに脂質代謝改善作用も有している。 PPAR−γ活性化促進化合物には、チアゾリジン系化合物や、非チアゾリジン系化合物が知られており、チアゾリジン系化合物としては、トログリタゾン(troglitazone)、ピオグリタゾン(pioglitazon)、ロシグリタゾン(rosiglitazone)、CS−011等のチアゾリジン系PPAR−γ活性化促進化合物や、TAK−559、FK−614等の非チアゾリジン系PPAR−γ活性化促進化合物が知られている。 これらのインスリン抵抗性改善薬は、PPARγを介して、主に脂肪細胞に作用し、脂肪細胞分化を促進したり、TNF−αなどのインスリン抵抗性惹起因子の抑制をすることにより、インスリン抵抗性を改善すると考えられているが、詳細については不明である。 ところで、世界で最初に発売されたインスリン抵抗性改善薬は、チアゾリジン系化合物のトログリタゾンであるが、重篤な肝障害の発生により発売が中止された。その後、同じくチアゾリジン系化合物であるピオグリタゾンとロシグリタゾンが開発され、現在ではインスリン抵抗性改善薬として、海外ではその2薬が使用され、日本国内ではピオグリタゾンのみが使用されている。 しかし、インスリン抵抗性改善薬では、別の副作用として、浮腫、心拡大、貧血の副作用、特に浮腫が問題となっていた。すなわち、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾンにおいても、それぞれ数パーセントに浮腫、貧血の副作用を認めており、更にピオグリタゾンにおいては、うっ血性心不全も認めており、インスリン抵抗性改善薬の有用性の割に、日本国内においてあまり使用されない理由のひとつとなっている。 このような、副作用としての浮腫は、これまで開発中のほとんどすべてのチアゾリジン系化合物において観察されているが、副作用としての浮腫が強い場合は、投与中止を余儀なくされることもあり、また、利尿剤が必要な症例も認められるほどで、薬剤として使用する上で大きな問題となっている。 上記のように、インスリン抵抗性改善薬においては、浮腫、心拡大、貧血の副作用が問題となっており、本発明の課題は、このような副作用を軽減するための技術を提供することである。 本発明者らは、上記課題を解決すべく、インスリン抵抗性改善薬の上記副作用の原因について、鋭意研究を行っていたところ、インスリン抵抗性改善薬の投与により、生体内のビタミンB1が相対的に欠乏することを見出した。そして、インスリン抵抗性改善薬と共にビタミンB1を投与することにより、前記副作用が防げることを見出し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、インスリン抵抗性改善薬と、ビタミンB1またはその誘導体を含有してなる医薬組成物を提供するものである。 本発明の医薬組成物において、使用されるインスリン抵抗性改善薬としては、PPARγアゴニスト活性をもつ化合物が挙げられる。より具体的には、ピオグリタゾン(pioglitazon)、ロシグリタゾン(rosiglitazone)、CS−011等のチアゾリジン系PPAR−γ活性化促進化合物や、TAK−559、FK−614等の非チアゾリジン系PPAR−γ活性化促進化合物を挙げることができる。これらは、必要に応じて、その薬学的に許容されるその塩等のような誘導体として用いることもできる。 特に好ましいインスリン抵抗性改善薬としては、チアゾリジン系PPAR−γ活性化促進化合物であるピオグリタゾンおよびロシグリタゾン並びにこれらの付加塩等の誘導体を挙げることができる。 一方、本発明の医薬組成物において使用されるビタミンB1(チアミン)は、周知の水溶性ビタミンであり、過剰投与によっても副作用はほとんどなく、しかも安価なものである。また、このビタミンB1の誘導体も周知であり、例えば、フルスルチアミン、ベンフォチアミン、オクトチアミン、プロスルチアミン、ビスペンチアミン、塩酸ジセチアミン、塩酸チアミン、チアミンジスルフィド、コカルボキシラーゼ等が挙げられる。 本発明の医薬組成物を製造するに当たっては、上記インスリン抵抗性改善薬およびビタミンB1もしくはその誘導体(以下、「ビタミンB1類」という)を適当な医薬上許容される担体と組み合わせ、これを混合した後、所望の剤形とすれば良い。 本発明医薬組成物の1投与単位当たりの、インスリン抵抗性改善薬の配合量は、5から300mgとすることが好ましく、また、ビタミンB1類の配合量は、1から500mgとすることが好ましい。 また、インスリン抵抗性改善薬とビタミンB1類の配合割合は特に制約されるものではないが、インスリン抵抗性改善薬1重量部に対し、ビタミンB1類を0.01ないし200重量部程度、好ましくは、0.05ないし40重量部程度とすればよい。 より具体的に本発明の医薬組成物について、現在日本国内において唯一使用可能なインスリン抵抗性改善薬である塩酸ピオグリタゾンを用いた場合の好ましい配合を説明すれば次の通りである。すなわち、塩酸ピオグリタゾンの用量(経口投与)は1日1回、15〜45mgであるから、この量を1投与単位当たりの製剤中に含有させる。それに対して、ビタミンB1類としてフルスルチアミンを併用する場合、1投与単位あたり、5〜100mgのフルスルチアミンを配合すればよい。この量は、フルスルチアミンを他のビタミンB1類であるベンフォチアミンに代えた場合も同様で良い。 本発明の医薬組成物の剤形としては、粉剤、粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固型剤や、液剤等の液状製剤とすることができる。 本発明の医薬組成物の製造に当たって使用される担体としては、特に制約はなく、目的とする剤形に応じた、粉末状ないし液状の担体を使用することができる。更に、必要に応じて、医薬品の分野において使用される適当な添加剤を加えることもできる。 なお、以上の説明は、合剤を例にして行ったが、インスリン抵抗性改善薬とビタミンB1類をそれぞれ独立で製剤化し、これを組み合わせた剤形としてもよいことはもちろんである。 ( 作 用 ) インスリン抵抗性改善薬の副作用としての浮腫発現機序に関しては、インスリンの腎におけるNa再吸収促進作用の増強、腎におけるNaHCO3−共輸送体に対する直接の促進作用、血中VEGFレベルの増加による血管透過性の亢進作用などの可能性が報告されている。また、心拡大、貧血はそれらによる循環血漿量の増加によると考えられている。 本発明者によって、上記副作用の原因の一つが、インスリン抵抗性改善薬の作用により生じる、生体内においてビタミンB1の需要の増大であることが見出された。 従って、本発明の作用は、インスリン抵抗性改善薬と一緒にビタミンB1を投与し、生体内におけるビタミンB1の相対的欠乏を予防、改善し、浮腫、心拡大、貧血の副作用を軽減するというものである。 以下実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものはない。 ラットを用いた10日間反復経口投与試験: 8週齢のSD系ラット(Crj:CD:IGS)を2群にわけ、一方の群には塩酸ピオグリタゾン240mg/kg/dayを、もう一方の群には塩酸ピオグリタゾン240mg/kg/dayとベンフォチアミン100mg/kg/dayを10日間、胃ゾンデを用いる強制経口投与により投与した。投与終了後、ラットの血液を採取し、そのヘモグロビン(Hb)値を測定した。またその後、ラットを屠殺し、その心臓重量(相対重量)を調べた。血中Hbに関しての結果を表1に、心臓の体重に対する重量比率を表2に示す。 表1から明らかなように、塩酸ピオグリタゾン単独投与群に比べ、ベンフォチアミン併用群ではヘモグロビン低下(貧血)の改善傾向が認められた。 また、表2に示されるように、ベンフォチアミン併用群の投与後の心臓の相対重量割合は、塩酸ピオグリタゾン単独投与群に比べ軽く、心臓重量増加(心肥大)の改善傾向が認められた。 これらの結果から、ベンフォチアミンを併用することにより、塩酸ピオグリタゾン単独投与による副作用を抑制できることが示された。 インスリン抵抗性改善薬とビタミンB1類を併用した本発明の医薬組成物は、インスリン抵抗性改善薬を主薬とするものであるにもかかわらず、浮腫、心拡大、貧血等の副作用を起こすことがなく、しかも、その薬効が低下することもないものである。 また、併用するビタミンB1類は、過剰投与しても副作用はほとんどなく、さらに、比較的安価であるので、本発明の医薬組成物は、安全性面からもまた医薬経済上も優れたものである。 従って、本発明の医薬組成物は、2型糖尿病に対し、血糖降下作用を目的として使用することができる。 また、本発明の医薬組成物に含まれるインスリン抵抗性改善薬は、脂質代謝改善作用、抗腫瘍作用や抗リウマチ作用などを有するものであるから糖尿病治療薬の他、生活習慣病治療薬、抗腫瘍薬、抗リウマチ薬等として使用することも可能である。 ピオグリタゾンまたはロシグリタゾンと、ビタミンB1とを含有してなる、ピオグリタゾンまたはロシグリタゾンの副作用である浮腫、心拡大および貧血の少なくとも一つを軽減する医薬組成物。