生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_二量体化ペプチド
出願番号:2005508011
年次:2010
IPC分類:C07K 7/08,A61K 39/00,A61P 35/00


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杉山 治夫 高須 秀夫 三溝 文雄 JP 4498274 特許公報(B2) 20100423 2005508011 20040115 二量体化ペプチド 株式会社癌免疫研究所 505443953 中外製薬株式会社 000003311 大日本住友製薬株式会社 000002912 田村 恭生 100068526 齋藤 みの里 100087114 杉山 治夫 高須 秀夫 三溝 文雄 JP 2003007122 20030115 20100707 C07K 7/08 20060101AFI20100617BHJP A61K 39/00 20060101ALN20100617BHJP A61P 35/00 20060101ALN20100617BHJP JPC07K7/08A61K39/00 HA61P35/00 BIOSIS/WPIDS(STN) CA/REGISTRY(STN) PubMed 特表2002−525099(JP,A) 国際公開第02/079253(WO,A1) J.Immunother.,Vol.20,No.6(1997)p.431-436 Eur.J.Med.Chem.,Vol.35,No.6(2000)p.593-598 1 JP2004000254 20040115 WO2004063217 20040729 24 20061218 高堀 栄二 本発明は、癌ワクチン療法の分野に属し、詳細には細胞傷害性T細胞誘導活性を有する癌抗原ペプチドを生じさせるペプチド二量体およびそれを含有する医薬組成物に関する。 生体による癌細胞やウイルス感染細胞等の排除には細胞性免疫、とりわけ細胞傷害性T細胞(以下、CTLと称する)が重要な働きをしている。CTLは、癌細胞上の癌抗原タンパク質由来の抗原ペプチド(癌抗原ペプチド)とMHC(Major Histocompatibility Complex)クラスI抗原(ヒトの場合はHLA抗原と称する)とにより形成される複合体を認識し、癌細胞を攻撃・破壊する。 癌抗原タンパク質は、Immunity,vol.10:281,1999の表中に記載のものが代表例として挙げられる。具体的には、メラノサイト組織特異的タンパク質であるgp100(J.Exp.Med.,179:1005,1994)、MART−1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:3515,1994)、およびチロシナーゼ(J.Exp.Med.,178:489,1993)などのメラノソーム抗原、ならびにメラノーマ以外の癌抗原タンパク質としてHER2/neu(J.Exp.Med.,181:2109,1995)、CEA(J.Natl.Cancer.Inst.,87:982,1995)、およびPSA(J.Natl.Cancer.Inst.,89:293,1997)などの癌マーカーがある。 癌抗原ペプチドは、癌抗原タンパク質が細胞内プロテアーゼによりプロセシングされて生成される約8から11個のアミノ酸から成るペプチドである(Cur.Opin,Immunol.,5:709,1993;Cur.Opin,Immunol.,5:719,1993;Cell,82:13,1995;Immunol.Rev.,146:167,1995)。前記のように、この生成された癌抗原ペプチドとMHCクラスI抗原(HLA抗原)との複合体が細胞表面に提示され、CTLにより認識される。従って、CTLによる癌細胞破壊を利用する癌免疫療法剤(癌ワクチン)を開発する場合、CTLを効率良く誘導できる癌抗原ペプチドを癌抗原タンパク質から同定することが、非常に重要となる。 本発明の目的は、イン・ビボにて有用な癌抗原ペプチドから誘導される新たな癌抗原を提供することにある。 本発明者らは、癌抗原ペプチドとして証明されているペプチドの中にはシステイン残基が含まれているものがあり、意外にもこのようなペプチドを二量体化させて投与すると単量体と同等のCTLの誘導活性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は、 (1) 少なくとも1つのシステイン残基を含みかつ7〜30個のアミノ酸残基からなる、CTL誘導活性を有する癌抗原ペプチドを生じさせる2つのペプチド単量体が相互にジスルフィド結合により結合しているペプチド二量体; (2) CTL誘導活性を有する癌抗原ペプチドを生じさせる、上記(1)記載のペプチド二量体; (3) 2つのペプチド単量体が1または2個のジスルフィド結合により結合している、上記(1)または(2)記載のペプチド二量体; (4) ペプチド単量体が癌抑制遺伝子産物WT1に由来する、上記(1)〜(3)のいずれか記載のペプチド二量体; (5) ペプチド単量体がCys Xaa Thr Trp Asn Gln Met Asn Xaa(配列番号:72)(第2位のXaaは、Tyr、Phe、MetおよびTrpからなる群より選ばれる1つのアミノ酸残基を示し、第9位のXaaは、Phe、Leu、Ile、TrpおよびMetからなる群より選ばれる1つのアミノ酸残基を示す)である、上記(1)〜(4)のいずれか記載のペプチド二量体: (6) ペプチド単量体がCys Met Thr Trp Asn Gln Met Asn Leu(配列番号:11)、Asp Phe Lys Asp Cys Glu Arg Arg Phe(配列番号:18)、Ala Tyr Pro Gly Cys Asn Lys Arg Tyr(配列番号:19)、Asn Ala Pro Tyr Leu Pro Ser Cys Leu(配列番号:20)、Gly Cys Asn Lys Arg Tyr Phe Lys Leu(配列番号:21)、Arg Trp Pro Ser Cys Gln Lys Lys Phe(配列番号:22)、Asp Ser Cys Thr Gly Ser Gln Ala Leu(配列番号:23)およびCys Tyr Thr Trp Asn Gln Met Asn Leu(配列番号:44)からなる群より選ばれる、上記(1)〜(4)のいずれか記載のペプチド二量体; (7) 上記(1)〜(6)のいずれか記載のペプチド二量体と製薬的に許容されうる担体とを含有してなる医薬組成物; (8) 癌ワクチンとして使用される、上記(7)に記載の医薬組成物; (9) 上記(1)〜(6)のいずれか記載のペプチド二量体における、癌ワクチンを製造するための使用;および (10) 癌を治療または予防するための方法であって、上記(1)〜(6)のいずれか記載のペプチド二量体の治療または予防に有効な量を、それを必要としているWT1陽性の患者に投与する方法:に関する。 図1は、トランスジェニックマウスにおけるペプチド二量体(配列番号:44)によるCTL誘導の結果を示すグラフである。 本発明のペプチド二量体は、2つのペプチド単量体間における少なくとも1対のシステイン残基のSH基間でのジスルフィド結合によって2つの単量体が相互に結合して二量体化している。 本発明のペプチド二量体はCTLの誘導能を有するものであり、誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗癌作用を発揮することができる。従って本発明の二量体は、癌の治療または予防のための癌ワクチンに使用することができる。 本発明のペプチド二量体を構成するペプチド単量体は、少なくとも1つのシステイン残基を含みかつ7〜30個のアミノ酸残基からなり、そしてCTL誘導活性を有する癌抗原ペプチドを生じさせる。「癌抗原ペプチドを生じさせる」とは、ペプチド単量体がHLA抗原と結合して細胞傷害性T細胞(CTL)により認識される癌抗原ペプチドを生じさせる、という特性を有する意味である。ペプチド単量体は、それ自身CTL誘導活性を有している限り特に制限されるものではないが、多くの癌種で高発現しているヒトWilms癌の癌抑制遺伝子WT1(Cell.,60:509,1990、NCBIデータベースAccession No.XP_034418、配列番号:1)に由来しかつシステイン残基を少なくとも1つ含有するものが好ましい。WT1遺伝子は、Wilms癌、無紅彩、泌尿生殖異常、精神発達遅延などを合併するWAGR症候群の解析からWilms癌の原因遺伝子の1つとして染色体11p13から単離され(Nature,343:774,1990)、そのゲノムDNAは約50kbであり10のエキソンから成り、そしてそのcDNAは約3kbである。cDNAから推定されるアミノ酸配列は、配列番号:1に示す通りである(Cell.,60:509,1990)。WT1遺伝子はヒト白血病で高発現しており、白血病細胞をWT1アンチセンスオリゴマーで処理するとその細胞増殖が抑制される(特開平9−104627号公報)ことなどから、WT1遺伝子は白血病細胞の増殖に促進的に働いていることが示唆されている。さらに、WT1遺伝子は、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、胚細胞癌、皮膚癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌等の固形癌においても高発現しており(特開平9−104627号公報および国際公開第00/06602号パンフレット)、白血病および固形癌における新しい癌抗原タンパク質であることが判明した(J.Immunol.,164:1873−80,2000およびJ.Clin.Immunol.,20,195−202,2000)。癌免疫療法(癌ワクチン)は多くの癌患者に対して適用可能であることが好ましいことから、多くの癌種で高発現しているWT1における癌抗原ペプチドの同定、および当該癌抗原ペプチドを利用した癌ワクチンの開発は重要である。これに関し、国際公開第00/06602号パンフレットおよび国際公開第00/18795号パンフレットには、WT1タンパク質の部分から成る幾つかの天然型の癌抗原ペプチドが記載されているが、イン・ビボでの効果は知られていない。 本発明に用いられる他のペプチド単量体としては、Immunity,vol.10:281,1999の表中に記載の癌抗原タンパク質由来の癌抗原ペプチドでありかつシステイン残基を少なくとも1つ含有するものが挙げられる。 CTL誘導活性は、HLAテトラマー法(Int.J.Cancer:100,565−570(2002))または限界希釈法(Nat.Med.:4,321−327(1998))によりCTLの数を測定することにより確認することができる。あるいは、例えばHLA−A24拘束性のCTL誘導活性の場合、国際公開第02/47474号パンフレットおよびInt.J.Cancer:100,565−570(2002)に記述されたHLA−A24モデルマウスを用いることなどにより調べることができる。 ペプチド単量体のアミノ酸残基の個数は7〜30個であるが、8〜12個が好ましく、9〜11個がより好ましい。ペプチド単量体中のシステイン残基の数は、HLAとの結合モチーフとペプチドの長さとを考慮し、1または2個であることが好ましい。 ペプチド単量体は、通常のペプチド化学に用いられる方法に準じて合成することができる。合成方法としては、文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991)などに記載されている方法が挙げられる。 得られたペプチド単量体は、通常のペプチド化学に用いられる方法に準じて分子間でジスルフィド結合を形成することができる。ジスルフィド結合の形成方法は、文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991)などに記載されている方法が挙げられる。 具体的には、ペプチド単量体に含まれるシステイン残基が1個の場合、システイン側鎖の保護基を含むすべての保護基を除去した後、ペプチド単量体を含む溶液をアルカリ条件下で空気酸化反応に付す方法、あるいは、アルカリ性または酸性条件下酸化剤を添加してジスルフィド結合を形成する方法などが挙げられる。ここで、酸化剤としては、ヨウ素、ジメチルスルホキシド(DMSO)、フェリシアン化カリウムなどが挙げられる。 システイン残基が2個以上の場合も、前記と同様の方法を用いることができる。この場合はジスルフィド結合様式が異なる異性体が得られる。システイン側鎖の保護基を特定の組み合わせにすることにより、目的のシステイン残基間でジスルフィド結合を形成した二量体を得ることができる。前記保護基の組み合わせとしては、MeBzl(メチルベンジル)基とAcm(アセトアミドメチル)基、Trt(トリチル)基とAcm基、Npys(3−ニトロ−2−ピリジルチオ)基とAcm基、S−Bu−t(S−tert−ブチル)基とAcm基などが挙げられる。例えばMeBzl基とAcm基の組み合わせの場合、まずMeBzl基とシステイン側鎖以外のその他の保護基を除去した後、ペプチド単量体を含む溶液を空気酸化反応に付して脱保護されたシステイン残基間にジスルフィド結合を形成し、次いでヨウ素による脱保護および酸化を行ってAcm基で保護されていたシステイン残基間にジスルフィド結合を形成する方法などが挙げられる。 得られたペプチド二量体は、通常のペプチド化学に用いられる方法に準じて精製することができる。ペプチド二量体の精製方法は、文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991)などに記載されているが、HPLCが好ましい。 このようにして得られた本発明のペプチド二量体は、システイン残基がジスルフィド結合を形成していることにより、溶液中での酸化剤等に対する安定性に優れており、医薬品原料として一定の品質とCTLの誘導活性を保持するものである。 本発明に用いられるペプチド単量体の好ましい具体例としてWT1を例に以下に示す。なお、本明細書においてアミノ酸残基を略号で表示する場合、次の3文字表記または1文字表記を用いる:Ala(A):アラニン残基、Arg(R):アルギニン残基、Asn(N):アスパラギン残基、Asp(D):アスパラギン酸残基、Cys(C):システイン残基、Gln(Q):グルタミン残基、Glu(E):グルタミン酸残基、Gly(G):グリシン残基、His(H):ヒスチジン残基、Ile(I):イソロイシン残基、Leu(L):ロイシン残基、Lys(K):リジン残基、Met(M):メチオニン残基、Phe(F):フェニルアラニン残基、Pro(P):プロリン残基、Ser(S):セリン残基、Thr(T):トレオニン残基、Trp(W):トリプトファン残基、Tyr(Y):チロシン残基、Val(V):バリン残基。 表中、「位置」とは配列番号1に記載のヒトWT1におけるペプチドの位置を示す。 HLA分子には多くのサブタイプが存在し、結合できる抗原ペプチドのアミノ酸配列にはそれぞれのタイプについて規則性(結合モチーフ)が存在することが知られている。HLA−A24の結合モチーフとして、8〜11アミノ酸からなるペプチドのうちの第2位のアミノ酸がチロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)またはトリプトファン(Trp)であり、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン(Phe)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、トリプトファン(Trp)またはメチオニン(Met)となることが知られている(J.Immunol.,152,p3913,1994、Immunogenetics,41,p178,1995、J.Immunol.,155,p4307,1994)。従って、上記表4に示すペプチド単量体に加え、ペプチド単量体がCys Xaa Thr Trp Asn Gln Met Asn Xaa(配列番号:72)(第2位のXaaは、Tyr、Phe、MetおよびTrpからなる群より選ばれる1つのアミノ酸残基を示し、第9位のXaaは、Phe、Leu、Ile、TrpおよびMetからなる群より選ばれる1つのアミノ酸残基を示す)であるペプチドも、HLA−A24拘束性ペプチド単量体として好適に用いられる。 またHLA−A0201の結合モチーフとして、8〜11アミノ酸からなるペプチドのうちの第2位のアミノ酸がロイシン(Leu)またはメチオニン(Met)であり、C末端のアミノ酸がバリン(Val)またはロイシン(Leu)となることが知られている。HLA−A0205の結合モチーフとして、8〜11アミノ酸からなるペプチドのうちの第2位のアミノ酸がバリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)またはメチオニン(Met)であり、C末端のアミノ酸がロイシン(Leu)となることが知られている(Immunogenetics,41,p178,1995、J.Immunol.,155:p4749,1995)。従って、上記表2または3に示すペプチド単量体の第2位のアミノ酸またはC末端のアミノ酸を上記モチーフのいずれかに置換したペプチドもHLA−A0201またはHLA−A0205拘束性ペプチド単量体として好適に用いられる。 上記表4に示すペプチド単量体が本発明においては特に好適に用いられる。表4中、配列番号:44のペプチドは、配列番号:11(235〜243位)のアミノ酸配列において236位のメチオニンをチロシンに改変した非天然の改変型ペプチドである。よって、本発明におけるペプチド単量体には、天然型ペプチド中のシステイン残基以外の残基を一部改変したペプチドであって、CTLの誘導活性を有するペプチドも含まれる。 本発明は別の態様として、本発明のペプチド二量体と製薬的に許容されうる担体とを含有する医薬組成物を提供する。医薬組成物中の有効成分であるペプチド二量体の量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは0.001mg〜1000mg、より好ましくは0.1mg〜20mgである。 本発明医薬組成物には有効成分として、本発明ペプチド二量体だけでなく、ペプチド単量体を含むことができる。本発明医薬組成物中に含まれる「ペプチド二量体」の割合は、CTLの誘導活性をもたらす限り特に制限されるものではないが、全ペプチド中50%以上であり、70〜100%が好ましく、80〜100%がより好ましい。ペプチド二量体の割合は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認することができる。 製薬的に許容されうる担体は、細胞性免疫を増強する作用を有するものである。当該担体としては、例えばアジュバントが挙げられる。アジュバントとしては、文献(Clin.Microbiol.Rev.,7:277−289,1994)に記載のものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分、サイトカイン、植物由来成分、水酸化アルミニウム如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルジョン製剤)などを挙げることができる。また、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤などの製剤化に必要な成分も担体に含まれる。 本発明医薬組成物の投与方法としては、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与などが挙げられる。CTLを効率よく誘導する皮内投与や皮下投与が好ましい。投与回数および投与間隔は、治療または予防目的の疾患、患者の個体差により適宜調整することができるが、通常複数回であり、数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。 例えば、WTI由来のペプチド単量体から構成されるペプチド二量体を含有する本発明医薬組成物をWTI陽性の患者に投与すると、抗原提示細胞のHLA抗原にペプチドが提示され、提示されたHLA抗原複合体特異的CTLが増殖して癌細胞を破壊することができ、従って、癌の治療または予防が可能となる。本発明の医薬組成物は、WTI遺伝子の発現レベルの上昇を伴う癌、例えば白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫などの血液性の癌や、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、胚細胞癌、肝癌、皮膚癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌等の固形癌の予防または治療のために使用することができる。 本発明はさらに別の態様として、本発明の医薬組成物をWT1陽性の患者に投与することにより、癌を治療または予防するための方法を提供する。 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。製造例11.保護ペプチド樹脂(H−Cys(Trt)−Tyr(Trt)−Thr(tBu)−Trp(Boc)−Asn(Trt)−Gln(Trt)−Met−Asn(Trt)−Leu−Alko−Resinの合成 Fmoc−Leu−Alko−樹脂(ここに、Alkoはp−アルコキシベンジルアルコール)12g(渡辺化学製;0.81mmol/g)をAdvanced ChemTech社製ACT90型固相合成機の500ml反応槽内に入れ、一旦この樹脂をDMF等で洗浄後(工程1)、25%Pip(ピペリジン)で処理(3分×1回及び15分×1回)してFmoc基を切断後(工程2)、再びDMF等で樹脂を洗浄し(工程1)、Pipを除去した。この反応槽内に、Fmoc−Asn(Trt)−OH29.36gとHOBT(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)7.5gをNMP(N−メチルピロリジノン)150mlに溶解した溶液を加え、更にDIPCI(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)7.6mlを加えて30分間室温撹拌を行った(工程3)。30分後、NMPで樹脂を洗浄し(工程4)、Fmoc−Asn(Trt)−OH29.36gとHOBT7.5gを用いて再度カップリング反応を行い(工程5)、Fmoc−Asn(Trt)−Leu−Alko樹脂を合成した。その後、工程2の脱保護操作を行い、H−Asn(Trt)−Leu−Alko−樹脂とした。次いで、工程1の洗浄操作を行い、Fmoc−Met−OH18.27g、Fmoc−Gln(Trt)−OH30.04g、Fmoc−Asn(Trt)−OH29.36g、Fmoc−Trp(Boc)−OH25.91g、Fmoc−Thr(tBu)−OH19.56g、Fmoc−Tyr(tBu)−OH22.60g、Fmoc−Cys(Trt)−OH28.82gを順次加え、工程3のカップリング反応を行った。但しFmoc−Thr(tBu)−OHについてはカップリングを3回繰り返して行った後、得られた樹脂をDMPで洗浄後、25%AC2O(無水酢酸)で15分×2回で未反応のアミノ基をキャッピングした。N末端のFmoc−Cys(Trt)−OHを縮合後、工程2の脱保護操作を行い、工程6の洗浄操作を実施し、H−Cys(Trt)−Tyr(Trt)−Thr(tBu)−Trp(Boc)−Asn(Trt)−Gln(Trt)−Met−Asn(Trt)−Leu−Alko−Resinを得た。上記合成工程の概要を表33に示す。2.保護ペプチド樹脂の脱保護 上記操作によって得られた保護ペプチド樹脂(H−Cys(Trt)−Tyr(Trt)−Thr(tBu)−Trp(Boc)−Asn(Trt)−Gln(Trt)−Met−Asn(Trt)−Leu−Alko−Resin 14.06gにReagent K(5%フェノール/5%チオアニソール/5%H2O/2.5%エタンジチオール/TFA溶液)100mlとトリイソプロピルシラン(TIPS)15mlを加え、室温で2.5時間攪拌した。その後、ジエチルエーテル約500mlを加え、グラスフィルターで濾過を行い、Reagent Kとジエチルエーテルを濾液として除いた。濾上物を約100mlのジエチルエーテルで3回洗浄し、洗浄後の濾上物に約100mlのTFAを加える操作を3回繰り返して行い、目的物を含む濾液を約300ml得た。この濾液を濃縮してTFAを除き、アセトニトリル約50mlと20%酢酸水約250ml加え凍結乾燥し、パウダー状の粗ペプチド(H−Cys−Tyr−Thr−Trp−Asn−Gln−Met−Asn−Leu−OH、配列番号:44)6.12gを得た。3.粗ペプチドの精製 得られた粗ペプチド749mgをTFA10mlに溶解し、HPLC(Shimazu製;LC8AD型)1液=H2O/0.1%TFAで平衡化しているYMC社製 ODS C18 5cmΦ×50cmLのカラムにHPLCのポンプでチャージした。その状態で約30分間保ち、30分後、2液=CH3CN/0.1%TFAの濃度を30分間で0%から15%迄上昇した。その後、更に330分かけて28%まで2液の濃度を上昇させ、目的とするペプチドの溶出液を220nmのUVでモニターしながら、目的物を含む分画を集めた。集めた分画を、YMC社製ODS C18 4.6mmΦ×25cmLカラムをセットしたHPLC(日立製 L−4000型)で1液=H2O/0.1%TFAと2液=CH3CN/0.1%TFAの溶出液で、2液=CH3CN/0.1%TFAの濃度を17%で平衡化しているカラムに注入し、220nmのUVでモニターしながら2液の濃度47%まで30分間で上昇させ、保持時間14.79分の目的ペプチド単量体の精製品227.5mgを得た。・アミノ酸分析 加水分解:1%フェノール/6N塩酸水、110℃ 10時間 分析法:ニンヒドリン法 Asx:1.71(2)Thr:0.75(1)Glx:1.07(1)Met:0.91(1)*Leu:(1)Tyr:0.82(1)*)Leu=基準アミノ酸( )内 理論値・質量分析:LC/MS M+1=1173.0(理論値=1172.36)・アミノ酸配列分析:N末2残基目Tyrから、C末Leuまで順次確認した。 次式で示される二量体の合成: 製造例1により得られたペプチド単量体227.5mg、N−メチルグルカミン(NMG)227.5mg、水23mlを加え室温で約2日間攪拌することにより、空気酸化を行った。その後、反応液中に酢酸ナトリウム2gを水5mlに溶解した水溶液を加え約20分間室温攪拌を行い、更に水200mlとアセトニトリル約200mlを加えた後、桐山ロート(ろ紙 No5C)で濾過し、濾上物を水(約50ml×3回)で洗浄した。濾上物を濾取し、水約200mlを加えて凍結乾燥を行い、目的とする粗ペプチド二量体158mgを得た。粗ペプチド二量体の精製 粗ペプチド二量体158mgをDMSO9mlに溶解し、HPLC(Shimazu製;LC8AD型)に1液=H2O/1%AcOHで平衡化しているYMC社製ODS C18 5cmΦ×50cmLのカラムにHPLCのポンプでチャージした。その状態で約30分間保ち、30分後、2液=CH3CN/1%AcOHの濃度を360分間で0%から40%迄上昇した。その後、目的とする二量体の溶出液を220nmのUVでモニターしながら、自動分画装置により目的物を含む分画を集めた。集めた分画を、YMC社製ODS C18 4.6mmΦ×25cmLカラムをセットしたHPLC(日立製 L−4000型)で1液=H2O/0.1%TFAと2液=CH3CN/0.1%TFAの溶出液で、2液=CH3CN/0.1%TFAの濃度を17%で平衡化しているカラムに注入し、220nmのUVでモニターしながら2液の濃度を0%から47%まで30分で上昇させ、保持時間20.51分の目的とするペプチド二量体精製品46.6mgを得た。 FAB.MS 2365.0(理論値 2342.70)Na+ F=0.25%試験例1ペプチド二量体によるCTL誘導 実施例1にて調製したペプチド二量体のCTL誘導能をHLA−A24トランスジェニックマウス(Int.J.Cancer:100,565,2002)を用いて評価した。ペプチド二量体をジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解し、40mg/mlのペプチド溶液を作製した。このペプチド溶液35μlを581μlの10mMリン酸緩衝液(pH7.5)に添加してペプチド懸濁液を調製した。このペプチド懸濁液550μlとMontanide ISA51(Seppic社)700μlを連結したガラスシリンジを用いて混合し、エマルションを作製して投与液を調製した。 投与液200μlをHLA−A24トランスジェニックマウスの尾根部皮下に投与した。マウスは3匹用いた。投与7日後に脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。脾細胞の一部を100μg/mlのペプチド二量体で1時間パルスした。ペプチドをパルスしていない脾細胞を24穴プレートに7×106個/wellで播種し、更に上記のペプチドをパルスした脾細胞を1×106個/well添加して培養した。培養液には、RPMI1640培地に10%FCS、10mM HEPES、20mM L−グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、1mM MEM非必須アミノ酸、1% MEMビタミン、55μM 2−メルカプトエタノールを含ませ、5日間培養した。 培養した脾細胞中の投与ペプチド特異的なCTLの活性を51Crリリースアッセイ(J.Immunol.:159,4753,1997)により測定した。標的細胞としては、HLA−A24とH−2KbのキメラのMHCクラスI分子(Int.J.Cancer:100,565,2002)を安定的に発現するようにマウスリンパ腫由来細胞株EL−4細胞(ATCC株番号TIB−39)に遺伝子導入して作製した細胞株EL−4−A2402/Kbを用いた。標的細胞は3.7Mbq/106個で51Crラベル後、前記ペプチドを100μg/mlになるように添加して更に1時間パルスした。またペプチド非パルスの標的細胞を2時間51Crラベルしてコントロール標的細胞とした。これらのラベルされた標的細胞と先に調製された脾細胞を1:120の割合で混合して4時間培養し、傷害を受けた標的細胞の割合よりCTL活性を求めた。結果を図1に示した。前記ペプチドを投与したマウスより調製した脾細胞は、ペプチドをパルスした標的細胞を強く傷害したが、コントロールのペプチドをパルスしていない標的細胞に対する傷害性は弱かったことから、ペプチド特異的CTLが誘導されていることが明らかとなった。 本発明により、インビボにおいてCTL誘導活性を有するペプチド二量体およびそれを有効成分として含有する医薬組成物が提供される。本発明は、多くの癌患者の病態の改善に有効であると考えられる。 2つのCys Tyr Thr Trp Asn Gln Met Asn Leu(配列番号:44)が相互にジスルフィド結合により結合している、ペプチド二量体。配列表


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