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タイトル:公開特許公報(A)_ヨードニウム塩の製造方法
出願番号:2005380189
年次:2007
IPC分類:C07C 41/30,C07C 43/225,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

嶋田 和人 國田 一人 JP 2007176904 公開特許公報(A) 20070712 2005380189 20051228 ヨードニウム塩の製造方法 富士フイルム株式会社 306037311 中島 淳 100079049 加藤 和詳 100084995 西元 勝一 100085279 福田 浩志 100099025 嶋田 和人 國田 一人 C07C 41/30 20060101AFI20070615BHJP C07C 43/225 20060101ALI20070615BHJP C07B 61/00 20060101ALI20070615BHJP JPC07C41/30C07C43/225C07B61/00 300 4 OL 23 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC30 4H006BA51 4H006BC10 4H006BC19 4H006GN38 4H039CA54 4H039CL00 本発明は、ラジカル重合開始剤、酸発生剤、カチオン重合開始剤として有用な、ヨードニウム塩の新規製造方法に関するものである。 従来、ネガ型感光性平版印刷版としては親水性支持体上に親油性の感光性樹脂組成物を設けた構成を有するPS版が広くもちいられ、その製版方法として、通常、リスフィルムを介してマスク露光後、非画像部をアルカリ水等により溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。 近年、画像情報をコンピューター等を用いて電子的に処理、蓄積、出力するデジタル化技術が広く普及してきており、平版印刷版の製版方法においても、レーザー光を用いて、リスフィルムを介さず、直接印刷版を製造するCTP技術が確立され、露光による光又は熱により、酸を発生させその酸を触媒とし、架橋反応を引き起こす化学増幅型のネガ型CTP刷版(例えば、特許文献1参照。)、或いは、熱又は光によりラジカルを発生させ、そのラジカルを触媒に用いたネガ型CTP刷版(例えば、特許文献2参照。)などが開発されてきた。 また、近年、半導体分野の開発においても、半導体素子の高密度集積化に伴い、微細加工、中でもリソグラフィに用いられる照射装置の光源は益々短波長化しており、この動きに伴い、感光性の組成物に酸発生剤を含有させ、露光により酸発生剤から酸を発生させ、その酸により画像を形成する化学増幅型のレジスト組成物が一般的に使用さるようになってきている。化学増幅型のレジスト組成物に使用される酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾジスルホン化合物等が検討されてきている。 酸発生剤として有用なこれら、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩はカチオン重合開始剤としても使用されている。 前記の如く、CTP用の酸発生剤、ラジカル発生剤、レジスト組成物の酸発生剤として、ヨードニウム塩やジアゾニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩が広く使用されている。これらの中でも酸発生剤、ラジカル発生剤として、安定性、反応性のバランスに優れるヨードニウム塩、特にジアリールヨードニウム塩が好ましく挙げられ、近年注目されているが、ジアリールヨードニウム塩の製造に際しては、一般に行われている方法は、過酢酸を使用したり、硝酸や硫酸などを過剰に、或いは、溶媒として大量に使用するなど、安全性に懸念のあるものであった。このような製造方法においては、アルキル置換されたジアリールヨードニウム塩などの合成例が多く見られるものの、本発明者らが注目する電子供与性のヨードニウム塩、ビス(アルコキシフェニル)ヨードニウム塩に関する合成方法に関しては、あまり検討されておらず、そのような技術としては、有機スズ化鉛とジシアノヨードニウムを用いる方法(例えば、非特許文献1参照。)や酢酸、酢酸無水物、硫酸及び過ヨウ素酸ナトリウムを用いる方法(例えば、非特許文献2参照。)などが知られているのみである。また、過酢酸を用いた合成反応の場合、中間体のヨードアリールジアセテート合成時に過酢酸反応時の発熱及び発熱に伴う副反応に起因したジアリールヨードニウム塩の純度低下を引き起こすなどの問題があった。また、ビス(アルコキシフェニル)ヨードニウム塩に、更に、電子供与性基を有するヨードニウム塩の製造方法に関してはあまり知られていないのが現状である。特開平7−20629号公報特開2001−343742公報Tetrahedron Letter、(1992年)P1419−1422J.A.C.S.(1953年)、P2705 上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、酸発生剤、ラジカル発生剤として有用な高純度のジアリールヨードニウム塩を、安定に、且つ、高収率で製造することが可能な、ジアリールヨードニウム塩の製造方法を提供することにある。 本発明者は、鋭意検討の結果、ヨードアリール化合物に過酸を作用させるヨードニウム塩の製造方法において、分子内にN−O結合を有する化合物を用いることにより、副反応や発熱を抑制することが可能となり、高純度のジアリールヨードニウム塩を製造しうることを見出し、本発明を完成した。 即ち、本発明のジアリールヨードニウム塩の製造方法は、分子内にN−O結合を有する化合物と、ヨードアリール化合物と過酸とを混合し、その後、芳香族化合物を加えることを特徴とする。 前記一般式(I)中、R1、R2はそれぞれ独立に有機基を表す。 R1,R2は好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基であり、R1とR2とは互いに結合して環を形成してもよい。 R1、R2としては、反応の安定化効果の観点からは、アルキル基、又はR1,R2が結合した環状構造であることが好ましい。 本発明の製造方法として、より具体的には、前記N−O結合を有する化合物を含む溶媒中で、ヨードアリール化合物を過酸と作用させ、その後、芳香族化合物を加え、さらに、酸又はその塩を加える工程を行うことが好ましい。 また、原料となる芳香族化合物として、電子供与性の置換基を有する化合物を用いることにより、電子供与性基を任意の位置に有する対称型或いは非対称型のジアリールヨードニウム塩化合物を得ることができる。 本発明の製造方法において、ヨードアリール化合物を過酸と作用させる際に、分子内にN−O結合を有する化合物を系中へ導入することによって、発熱、及びそれに伴う副生成物の発生が抑制される作用機構は明確ではないが、ヨードアリール化合物に過酸を反応させる際、過酸の分解に伴って発生する過剰のラジカルを該化合物がトラップすることにより、副反応が抑制され、且つ、発熱を抑えることができ、さらに、発熱に起因して生じる副反応の促進も、ともに抑制されることで、得られるジアリールヨードニウム塩のさらなる純度向上に繋がったものと考えられる。 本発明によれば、酸発生剤、ラジカル発生剤として有用な高純度のジアリールヨードニウム塩を、安定に、且つ、高収率で製造することができる。また、本発明製造方法によれば、原料を選択することで、対称型、非対称型のジアリールヨードニウム塩、電子供与性基を有するジアリールヨードニウム塩などを容易に製造することができるという利点をも有する。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の製造方法では、まず、(1)N−O結合を有する化合物とヨードアリール化合物と過酸とを混合することで、ヨードアリール化合物に過酸を作用させて、中間体であるヨードアリールジアセテートを得、その後、(2)芳香族化合物を加えて、該ヨードアリールジアセテートと芳香族化合物とがカップリングすることによりジアリールヨードニウム塩化合物を得るものである。 従って、原料となるヨードアリール化合物、及び、カップリングさせる芳香族化合物を適宜選択することにより、対称型、非対称型のジアリールヨードニウム塩化合物を得ることができる。 さらに、本発明においては、(1)ヨードアリール化合物に過酸を作用させる工程において、分子内にアミノ基及びカルボン酸基を有する化合物を共存させることにより、ヨードアリール化合物と過酸を反応させる際の副反応及び発熱を抑制することが可能となり、高純度のジアリールヨードニウム塩を製造することが可能となる。 なお、本発明のジアリールヨードニウム塩のカップリング反応時、或いは、カップリング反応後に、酸又はその塩を加えることにより、ジアリールヨードニウム塩に所望のアニオンを導入することも可能である。<分子内にN−O結合を有する化合物> 本発明に用いられる分子内にN−O結合を有する化合物は、分子内中にN−O・構造を有する化合物であれば使用することができ、本発明に好適に使用する該化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。 R1,R2は互いに独立した有機基を表す。 R1,R2としては、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基が挙げられ、R1とR2とは互いに結合して環を形成してもよい。 また、R1、R2が置換基を有する場合、それぞれに、以下に示す官能基を1つ以上有する置換基を導入することが可能である。置換可能な官能基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミド基、スルホ基、ハロアルキル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ウレタン基、ウレア基、チオアルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ニトロ基である。 好ましい置換基としては、水酸基、アルキル基が挙げられる。 R1、R2としては、反応の安定化効果の観点からは、アルキル基が好ましく、また、R1、R2がアルキル基であって、それが互いに結合した5員或いは6員の炭化水素環状構造を形成している態様も好ましく挙げられる。 また、このような環状構造に、さらに、アルキル基、シクロアルキル基、水酸基、アミド基、スルホ基、アミノ基、カルボキシル基、ヘテロ環基などの置換基を導入したものも好ましい。 また、R1とR2が結合して環を形成する場合、環の構成成分にN、S、Oなどのヘテロ原子を含む環を形成することも可能である。また、該ヘテロ原子はイオン構造をとることも可能である。 本発明に用いうる分子内にN−O結合を有する化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。 本発明で好適に用いうるN−O結合を有する化合物は、例えば、アルドリッチ社、和光純薬工業、東京化成工業などから市販品として入手可能である。 本発明の製造方法におけるN−O結合を有する化合物の好ましい添加量は、出発物質であるヨードアリール化合物に対して、0.001モル%以上であり、好ましくは0.01モル%〜1000モル%、更に好ましくは0.05モル%〜100モル%の範囲である。<ヨードアリール化合物> 本発明において、ジアリールヨードニウム塩を製造する際に、出発物質として使用することのできるヨードアリール化合物としては、ヨードベンゼン;アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミド基、スルホ基、ハロアルキル基、アミノ基より選ばれる置換基により1〜5置換されるヨードベンゼンが挙げられる。なお、前記置換基を有するヨードベンゼンが複数の置換基を有する場合、置換基は同一の置換基であっても、互いに異なる置換基であってもよい。 また、他のヨードアリール化合物としては、ヨードナフタレン、ヨードアントラセン、ヨードフェナントレンなどの化合物やこれらの誘導体、具体的には、これらの化合物に前記したような置換基が導入された化合物なども使用可能な化合物として挙げることができる。<過酸> 本発明において使用できる過酸としては、−O−O−結合を有するものであれば使用できるが、過酢酸、過安息香酸、過ギ酸、モノ過フタル酸、過マレイン酸、過ショウノウ酸、過コハク酸、過グルタル酸、過アジピン酸、過トリフルオル酸、過クロル酢酸、過酸化水素水などが挙げられる。 入手性、取り扱い性から好ましくは、過酸化水素水、過酢酸が好ましい。 本発明では、まず、前記ヨードアリール化合物と過酸とを混合し、中間体であるヨードアリールジアセテートを生成させるが、反応性、安全性の観点から、過酸の添加量としては、ヨードアリール化合物に対して、10モル%〜10000モル%、より好ましくは100モル%〜1000モル%程度であることが好ましい。<溶媒> 本発明に好適に使用できる溶媒としては、アリールヨード化合物、過酸を溶解させることが可能であれば特に制限なく使用しうるが、カルボン酸を溶解可能或いはカルボン酸と混合し、均一溶媒となるものを選択することが好ましい。本発明に好適に用いることのできる溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、sec−ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、2−メトキシエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエトキシメタン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、2,2,5,5、−テトラメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、3−メチルテトラヒドロピラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸、プロピオン酸、無水酢酸、トルエン、アニソール、キシレンなどが挙げられる。 好ましくは、過酢酸使用時には酢酸、過酸化水素水使用時には無水酢酸の組み合わせが好ましいが、安全性の観点から過酢酸/酢酸の組み合わせが好ましい。 ヨードアリール化合物と過酸とを、分子内にN−O結合を有する化合物の存在下で反応させる際の反応温度は、用いる溶媒の融点以上であればよいが、反応性、安全性の観点から、好ましくは−20℃〜200℃、より好ましくは10℃〜60℃の範囲であり、反応時間は、好ましくは反応剤混合終了後(0時間)〜200時間、より好ましくは反応剤混合終了後(0時間)〜50時間の範囲である。 本発明の製造方法においては、まず、このように分子内にN−O結合を有する化合物とアリールヨードニウム化合物と過酸とを混合して、反応させ、ヨードアリールジアセテートを生成した後、この中間体に芳香族化合物をカップリングさせて目的とするジアリールヨードニウム塩を得る。<芳香族化合物> 本発明に用いることのできる芳香族化合物は、ヨードニウム塩化に用いられるため、少なくとも芳香族基上に1つの水素原子を有する芳香族であれば使用することができ、より具体的には、芳香族基上に1つの水素原子を有する置換可能なベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素、又は置換可能なインドール、チアゾール、テトラゾール、チオフェン、ベンゾフェノン、ベンゾチオフェン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン等のヘテロ原子を有する芳香族化合物が挙げられる。ここで、置換可能な官能基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミド基、スルホ基、ハロアルキル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ウレタン基、ウレア基、チオアルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ニトロ基が挙げられ、これらの置換基により1〜5置換されていてもよい。芳香族化合物が複数の置換基を有する場合、これらの置換基は同一であっても、互いに異なっていてもよい。 これらのなかでも、カップリング体の安定性及び製造適性から、置換基を有するベンゼン化合物が好ましく、特に安定性の面からアルコキシ基で置換されている芳香族化合物が好ましい。 このような芳香族化合物としては、得られるジアリールヨードニウム塩のラジカル開始剤、酸発生剤としての特性向上の観点から、電子供与性の置換基を導入した化合物を用いることが好ましい。即ち、ヨードニウム塩に電子供与性基を導入することでヨードニウム塩の水、やアニオンによる分解、或いは、求核性種による経時での分解が抑制され、分解に伴う経時での変色、暗重合などが抑えられるものと考えられている。 芳香族化合物に導入しうる電子供与性基としては、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ウレア基、アルコキシアルキル基、アシロキシアミノ基、シクロアルキル基、アリル基が挙げられ、それらは電子供与性を失わない範囲でアルキル基、アルケニル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、チオール基、チオアルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等の置換基を有していても良い。 上記の中でも特に好ましい電子供与性基としては、アルキル基、アルコキシ基が挙げられ、最も好ましい置換基はアルコキシ基である。 電子供与性基の好ましい具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、例えば、メチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−オクチル基、ドデシル基など、炭素数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘテロキシ基、オクチロキシ基、ドデシロキシ基、シクロヘキシル基などが挙げられる。 芳香族化合物に複数の電子供与性基を有する場合、それらは同じでも互いに異なるものであってもよい。 電子供与性基の置換数としては、得られるジアリールヨードニウム塩に2以上の電子供与性基を有することが好ましく、より好ましくは3置換以上であり、最も好ましくは4置換されている化合物である。 芳香族化合物に導入された電子供与性基は、目的物質であるヨードニウム塩のアリール基に導入されることになるが、その好ましい置換位置としては、パラ位、オルト位が挙げられる。電子供与性基はヨードニウム塩における2つのアリール基の双方に1個以上導入されていてもよく、また、片方のみに2個以上導入されていてもよい。 電子供与性基を導入するにあたっての物性値としての目安を挙げれば、置換基(アリール基に導入される電子供与性基)のハメット値の総和が、−0.27以下であることが好ましく、−0.54以下がより好ましく、−0.84以下であることが最も好ましい。 なお、ハメット値は本発明の製造方法で得られるジアリールヨードニウム塩における置換基の電子吸引性の程度を表すものであり、本発明におけるハメット値としては、日本化学会 編、化学便覧 基礎編II(1984年、丸善(株)発行)に記載の数値を参照することができる。なお、ハメット値は通常、置換位置がm位、p位の値で用計算されるが、電子的な効果としてo位の値はp位の値と同値として計算してもよい。 芳香族化合物の添加量としては、前記ヨードアリール化合物に対して、50モル%以上であることが製造適性、収率の観点から好ましく、100〜1000モル%であることがさらに好ましく、100〜500モル%であることが最も好ましい。<酸> 本発明の方法においては、前記分子内にN−O結合を有する化合物を含む溶媒中で、ヨードアリール化合物を過酸と作用させた後、前記芳香族化合物とともに、酸又はその塩を加えることができる。 この工程において用いることのできる酸としては、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、リン酸、酸基を少なくとも1つ有するリン酸エステル、スルフィン酸、硫酸、モノ硫酸エステル、硝酸、ハロゲン化水素、過ヨウ素酸、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ハロゲン置換カルボン酸、ヘキサフルオロアンチモン、或いはこれらの塩を挙げることができる。またその他の酸として、テトラアリールボレートなどの有機ホウ素化合物、リン化合物、シリル化合物などが挙げられる。 本発明に用いることのできる好ましい酸として、反応性、ヨードニウム塩の取り出し性の観点から、パラトルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸などのパーフルオロアルカンスルホン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸などが挙げられる。 酸の添加量は、前記ヨードアリール化合物に対して、100モル%以上であることが製造適性の観点から好ましく、100〜1000モル%であることがさらに好ましく、100〜200モル%であることが最も好ましい。 また、本工程において、前記中間体と芳香族化合物とをカップリング反応させる際、反応制御しやすいように、溶媒を添加して反応させることが可能である。 添加できる溶媒としては、前記ヨードアリール化合物と過酸との反応時に用いた溶媒と混合可能な溶媒であることが好ましく、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、sec−ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、2−メトキシエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエトキシメタン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、2,2,5,5、−テトラメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、3−メチルテトラヒドロピラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸、プロピオン酸、無水酢酸、トルエン、アニソール、キシレンなどが挙げられる。副反応抑制の観点から、非芳香族の溶媒が好ましく、更にこの中でも取り扱い性、反応後の生成物の取り出し性から、アセトニトリルが好ましい。 この中間体に芳香族化合物をカップリングさせて目的とするジアリールヨードニウム塩を得る際の反応温度は、用いる溶媒の融点以上であればよいが、反応性−安全性の観点から、好ましくは−78℃〜200℃、より好ましくは10℃〜100℃の範囲であり、反応時間は、好ましくは混合直後(0時間)〜100時間、生産性の観点からより好ましくは(0時間)〜48時間の範囲である。 本発明方法で得られたヨードニウム塩はWO02/081439に記載の方法等により、塩交換を行い所望の塩構造へ変換することが可能である。 本発明の製造方法及びそれに引き続く公知の塩交換処方により得ることができるヨードニウム塩(ジアリールヨードニウム塩)の具体例を挙げるが、本発明の製造方法により得られる化合物は、以下のヨードニウム塩に限定されるわけではない。 本発明の製造方法によれば、酸発生剤、ラジカル発生剤として有用なジアリールヨードニウム塩、特に、従来検討されていなかった電子供与型のジアリールヨードニウム塩を、高収率で製造することができ、且つ、製造安定性に優れるという利点を有する。また、副反応が効果的に抑制されるため、原料を選択することにより、任意の構造のジアリールヨードニウム塩を容易に製造しうる。 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。<実施例1> オクチロキシヨードベンゼン(ヨードアリール化合物)6.62gを酢酸20mlに溶解させ、攪拌する。30℃で維持し、ここに下記化合物(A)〔分子内にN−O基を有する化合物〕0.20gを加えて、室温で10分攪拌する。30℃に温度を調整し、38〜39%過酢酸/酢酸溶液8.0gを1時間掛けゆっくり滴下し、30℃〜35℃で6時間攪拌後、室温で12時間放置、アセトニトリルを30ml滴下し、内温が5℃以下になるように、氷冷し、1,3,5−トリメトキシベンゼン(芳香族化合物)3.20gを加え、ここにパラトルエンスルホン酸3.62gをアセトニトリル50mlに溶解させ滴下した。 その後、5℃以下で2時間攪拌し、その後、氷水500mlへ投入し、ジクロロメタン500mlで抽出し、更に水層をジクロロメタン200mlで抽出した。有機層を、亜硫酸ナトリウム75.6gを水500mlに溶解させた水溶液で洗浄し、更に有機層を水300mlで2回洗浄する。該有機層を溶媒量が1/10になるまで濃縮し、酢酸エチル100mlを加え、再度濃縮し、放置することで下記ヨードニウム塩〔化合物(I−35)〕が6.98g(収率:52%)で得られた。HPLC純度は98.5%であった。 得られたジアリールヨードニウム塩(I−35)の構造をNMRにて確認した。 NMR 400MHz CDCl3 0.879(m,3H);1.275−1.299(m,8H);1.350−1.420(m,2H);1.777(m,2H);2.321(s,3H);3.853(s,3H);3.880(s,3H);3.900(q,2H);6.146(s,2H);6.780(d,2H,J=8.8);7.093(d,2H,J=8.0);7.701(d,2H,J=8.0);7.785(d,2H,J=8.8)<比較例1> 実施例1において、分子内にN−O基を有する化合物である前記化合物(A)を添加せず反応を実施したところ、前記実施例1と同様の上記ヨードニウム塩(I−35)が6.10g(収率:46%)で得られた。HPLC純度は90.7%であった。<実施例2> 実施例1において、4−オクチロキシヨードベンゼンを4−ブトキシヨードベンゼンに、1,3,5−トリメトキシベンゼンをブトキシヨードベンゼンに、分子内にN−O基を有する化合物である前記化合物(A)を下記化合物(B)1.00gに変更し、パラトルエンスルホン酸をノナフルオロブタンスルホン酸に変更して実施したところ、下記ヨードニウム塩(I−32)が収率60%で得られた。HPLC純度は97.0%であった。 得られたジアリールヨードニウム塩(I−32)の構造をNMRにて確認した。 NMR 400MHz CDCl3 0.956(t,6H,J=7.6);1.459(m,4H);1.756(m,4H);3.941(t,4H,J=6.8);6.890(d,4H,J=5.2);7.879(d,4H,J=5.2)<比較例2> 実施例2において、分子内にN−O基を有する化合物である前記化合物(B)を添加せず、反応を実施したところ、前記実施例2と同様の上記ヨードニウム塩(I−32)が収率53%で得られた。HPLC純度は89.9%であった。<実施例3> 実施例1において、4−オクチロキシヨードベンゼンをヨードベンゼンに、分子内にN−O基を有する化合物である前記化合物(A)を下記化合物(C)に変更して反応を実施したところ、下記ヨードニウム塩(I−25)が収率58%で得られた。HPLC純度は98.2%であった。 得られたジアリールヨードニウム塩(I−25)の構造をNMRにて確認した。 NMR 400MHz CDCl3 2.327(s,3H);3.873(s,9H);6.712(s,2H);7.108(d,2H,J=8.0);7.313(m,2H);7.460(t,1H,J=7.6);7.727(d,2H,J=8.0);7.870(m,2H)<比較例3> 実施例3において分子内にN−O基を有する化合物である前記化合物(C)を添加せず、添加せず、反応を実施したところ、実施例3と同様の上記ヨードニウム塩(I−25)が収率57%で得られた。HPLC純度は91.1%であった。<実施例4> オクチロキシヨードベンゼン(ヨードアリール化合物)6.62gを酢酸20mlに溶解させ、攪拌する。30℃で維持し、ここに分子内にN−O基を有する化合物である前記化合物(A)0.20gを加えて、室温で10分攪拌する。30℃に温度を調整し、38〜39%過酢酸/酢酸溶液8.0gを1時間掛けゆっくり滴下し、30℃〜35℃で6時間攪拌後、室温で12時間放置、内温が25℃になるようにし、その後、芳香族化合物である1,3,5−トリメトキシベンゼン3.20gをゆっくり加え、更にパラトルエンスルホン酸3.62gをゆっくり添加した。この後、20℃以下で2時間攪拌し、その後、氷水500mlへ投入し、ジクロロメタン500mlで抽出し、更に水層をジクロロメタン200mlで抽出した。有機層を、亜硫酸ナトリウム75.6gを水500mlに溶解させた水溶液で洗浄し、更に有機層を水300mlで2回洗浄する。該有機層を溶媒量が1/10になるまで濃縮し、酢酸エチル100mlを加え、再度濃縮し、放置することで下記ヨードニウム塩(I−33)が6.91g(収率:52%)得られた。HPLC純度は98.3%であった。 前記各実施例に明らかなように、本発明の製造方法によれば、目的とするジアリールヨードニウム塩を高純度、高収率で得られることがわかる。また、実施例1〜4と、それぞれがN−O化合物を有する化合物を用いなかったことのみ異なる比較例1〜3との対比において、この化合物をヨードアリール化合物と過酸との反応時に共存させることで、得られる目的物質の純度、及び、収率が向上することが確認された。<実施例5> 無水酢酸20mlを30℃に保ち、30%過酸化水素水 5g滴下し、30℃〜35℃で5時間攪拌し、ここに分子内にN−O基を有する化合物である前記化合物(A)を0.25gを加えて、10℃に温度を調整し、オクチロキシヨードベンゼン(ヨードアリール化合物)6.62gを滴下する。10〜15℃で6時間攪拌後、室温で12時間放置、アセトニトリルを30ml滴下し、内温が5℃以下になるように、氷冷し、1,3,5−トリメトキシベンゼン(芳香族化合物)3.20gを加え、ここにパラトルエンスルホン酸3.62gをアセトニトリル50mlに溶解させ滴下した。その後、5℃以下で2時間攪拌し、その後、氷水500mlへ投入し、ジクロロメタン500mlで抽出し、更に水層をジクロロメタン200mlで抽出した。 有機層を、亜硫酸ナトリウム75.6gを水500mlに溶解させた水溶液で洗浄し、更に有機層を水300mlで2回洗浄する。該有機層を溶媒量が1/10になるまで濃縮し、酢酸エチル100mlを加え、再度濃縮し、放置することで、実施例1で得られたのと同様のヨードニウム塩(I−35)が7.01g(収率:53%)で得られた。HPLC純度は98.4%であった。<比較例4> 実施例5において、分子内にN−O基を有する化合物である前記化合物(A)を添加せずに反応を実施した。実施例1で得られたのと同様のヨードニウム塩(I−35)が6.85g(収率52%)で得られた。HPLC純度89.6%であった。<実施例6> 実施例5において、分子内にN−O基を有する化合物である前記化合物(A)を下記化合物(D)に変更し反応を実施したところ、実施例1で得られたのと同様のヨードニウム塩(I−35)が収率7.45g(57%)で得られた。HPLC純度は98.6%であった。<実施例7> オクチロキシヨードベンゼン(ヨードアリール化合物)6.62gを酢酸20mlに溶解させ、攪拌する。20℃で維持し、ここに前記化合物(A)0.25gを加えて、室温で10分攪拌する。20℃に温度を調整し、mCPBA(3−クロロパーオキシベンゾイックアシッド)6.90gをゆっくり添加し、25℃〜30℃で6時間攪拌後、室温で12時間放置、アセトニトリルを30ml滴下し、内温が5℃以下になるように、氷冷し、1,3,5−トリメトキシベンゼン(芳香族化合物)3.20gを加え、ここにパラトルエンスルホン酸3.62gをアセトニトリル50mlに溶解させ滴下した。その後、5℃以下で2時間攪拌し、その後、氷水500mlへ投入し、ジクロロメタン500mlで抽出し、更に水層をジクロロメタン200mlで抽出した。有機層を、亜硫酸ナトリウム75.6gを水500mlに溶解させた水溶液で洗浄し、更に有機層を水300mlで2回洗浄する。該有機層を溶媒量が1/10になるまで濃縮し、酢酸エチル100mlを加え、再度濃縮し、放置することで実施例1で得られたのと同様の下記ヨードニウム塩(I−35)が6.86g(収率:51%)で得られた。HPLC純度は98.3%であった。<実施例8> 本発明の製造方法においては必要に応じ、アニオンの交換が可能である。 実施例1で得られたヨードニウム塩(I−35)1.5gをメタノール8mlに溶解させ、0.5N KPF6水50mlに滴下し、得られる固体を濾過、乾燥し、下記ヨードニウム塩(I−36)1.3g(収率:90.0%)を得た。 このように、使用する分子内にN−O基を有する化合物、過酸或いは芳香族化合物を変更した場合にも、本発明の優れた効果がえられることがわかる。 また、実施例1と実施例5との対比において、分子内にN−O基を有する化合物を予め溶剤に溶解させ、その後、ヨードアリール化合物と過酸とを加えた場合、及び、ヨードアリール化合物と過酸とを混合した後、分子内にN−O基を有する化合物を滴下した場合のいずれにおいても本発明の効果が得られることがわかる。 さらに、実施例8において、本発明の製造方法により得られたヨードニウム塩の塩交換を行い、所望のアニオン構造を有するヨードニウム塩化合物を高収率で得られることがわかる。 分子内にN−O基を有する化合物と、ヨードアリール化合物と過酸とを混合し、その後、芳香族化合物を加えることを特徴とする、ジアリールヨードニウム塩の製造方法。 分子内にN−O基を有する化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有することを特徴とする請求項1記載のジアリールヨードニウム塩の製造方法。 R1、R2はそれぞれ独立に有機基を表す。また、R1とR2とは互いに結合して環を形成してもよい。 分子内にN−O基を有する化合物を含む溶媒中で、ヨードアリール化合物を過酸と作用させた後、芳香族化合物を加え、さらに、酸又はその塩を加えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のジアリールヨードニウム塩の製造方法。 前記芳香族化合物が、電子供与性の置換基を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。 【課題】酸発生剤、ラジカル発生剤として有用な高純度のジアリールヨードニウム塩を安定に、且つ、高収率で得ることができる製造方法を提供する。【解決手段】分子内にN−O基を有する化合物と、ヨードアリール化合物と過酸とを混合し、その後、芳香族化合物を加えることを特徴とする。ここで、芳香族化合物とともに酸を添加することが好ましい。また、芳香族化合物として、電子供与性の置換基を有する化合物を用いることが可能である。【選択図】なし


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