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タイトル:公開特許公報(A)_血清コレステロールを低下させるために用いる飲食物およびその製造方法
出願番号:2005365113
年次:2006
IPC分類:A61K 31/353,C07D 311/62,A61P 3/06,A23L 1/30


特許情報キャッシュ

野澤 歩 杉本 明夫 永田 幸三 角田 隆巳 池田 郁男 小林 誠 JP 2006104213 公開特許公報(A) 20060420 2005365113 20051219 血清コレステロールを低下させるために用いる飲食物およびその製造方法 株式会社 伊藤園 591014972 竹内 三郎 100072084 市澤 道夫 100110962 野澤 歩 杉本 明夫 永田 幸三 角田 隆巳 池田 郁男 小林 誠 JP 2003032155 20030210 A61K 31/353 20060101AFI20060324BHJP C07D 311/62 20060101ALI20060324BHJP A61P 3/06 20060101ALI20060324BHJP A23L 1/30 20060101ALI20060324BHJP JPA61K31/353C07D311/62A61P3/06A23L1/30 Z 5 2004034129 20040210 OL 21 特許法第30条第1項適用申請有り 4B018 4C062 4C086 4B018MD60 4B018ME04 4B018MF06 4C062FF56 4C086AA01 4C086BA08 4C086MA03 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA05 4C086ZC33 本発明は、血清コレステロールを低下させるために用いる飲食物およびこれの製造方法に関する。 血清コレステロールの高値は、高脂血症、肥満、動脈硬化、血栓症などを誘因するばかりか、脳梗塞や心筋梗塞、動脈硬化などの原因ともなることが知られるようになり、血清コレステロール、特に総コレステロール値や悪玉と呼ばれるLDL−コレステロールの値は、今や現代人が最も注意する健康指標の一つとなっている。 ところで、食品に含まれるコレステロールは、腸内に分泌された胆汁酸の働きにより胆汁酸ミセルという非常に小さい親水性の分子に取り込まれて腸管から吸収されることが知られている。したがって、食品が摂取されてから胆汁酸ミセルに取り込まれるまでのいずれかの過程でコレステロールの吸収を阻害することができれば、コレステロールの上昇を抑制することができる。このような観点から、様々な物質について様々な作用機序が報告・提案がなされており、中でも、天然物である茶抽出成分には数多くの報告がなされている。 例えば、特許文献1は、茶葉中に含まれる(−)エピカテキン(EC)に血中コレステロール量低下作用がある旨を開示し、特許文献2は、茶カテキン類、中でも特に(−)エピガロカテキンガレート(EGCg)を有効成分とするコレステロール低下剤を開示し、特許文献3は、(−)エピガロカテキンガレート(EGCg)又は(−)エピカテキンガレート(ECg)を有効成分とする抗高コレステロール血症剤を開示し、特許文献4は、エピカテキンガレート(ECg)を有効成分とするコレステロール排泄促進剤を開示している。 また、静岡大学の村松敬一郎名誉教授らは、実験動物としてラットを用い、高脂・高コレステロール食若しくはコレステロール無添加食を投与した実験で、茶カテキン混合物(純度91.2%、相対カテキン含量(%);(−)EGCg:(−)EGC:(−)ECg:(−)EC=58:17:15:10)及び(−)EGCgには、血漿総コレステロール濃度及びLDL−コレステロール濃度の低下効果が認められる一方、血漿HDL−コレステロールやLDL−コレステロールを正常レベル以下に下げる作用はない旨を報告している(非特許文献1)。 他方、茶抽出物成分の作用機序に関しては、茶、赤ワイン等に含まれるポリフェノールの一種の高コレステロール血症予防作用は、ポリフェノール類が腸肝循環における胆汁酸のミセル形成を阻害し、コレステロールの再吸収を妨害することによって発現することが示唆されている(非特許文献2)。 また、茶カテキン(EGCg)の共存により、コレステロールの小腸粘膜への吸収が濃度依存的に抑制された旨の報告(非特許文献3)や、EGCgやECgが混合ミセル中のコレステロールの溶解性を低下させ、これが腸管よりのコレステロール吸収抑制の原因をなす旨の報告(非特許文献4)、更には、EGCgやECgがコレステロール生合成の律速酵素の1つであるスクアレンエポキシダーゼを極めて低濃度で選択的に阻害する旨の報告(非特許文献5)などがある。 さらにまた、茶カテキンがコレステロールの吸収を低下させることを動物と胆汁酸ミセルのモデルを使って証明したことに関し、この効果はEGCg及びECgの方がEGC及びECよりもはるかに高く、ガロイル基の存在によってできた疎水領域がコレステロールと相互作用して優れたコレステロール吸収低下作用を発揮することを示唆していると考察している記載も見られる(非特許文献6)。特開昭52−116473号特開昭60−156614号(特公平2−44449号)特開昭62−30711号特開平01−299224号(登録第2812682号)茶の機能:村松敬一郎,学会出版センター,2002,124−126p日本栄養・食料学会誌、vol.39、No.6、495−500、1986T.Chisaka,H.Matsuda, Y.Kubomura et al.: Chem.Pharm.Bull.,36,227(1988)I.Ikeda, Y.Imasato, E.Sasaki et al.: Biochem.Biophys.Acta,1127,141(1992)I.Abe, T.Seki, K.Umehara et al : Biochem.Biophys.Res.Commun.,268,767(2000)月刊「茶」2001年4月号、静岡県立大学 食品栄養科学部 中山 勉著 本発明は、カテキンの血清コレステロール降下作用について更に研究を進め、その結果得られた新たな知見に基づいて、本発明の血清コレステロール低下剤及び血清コレステロール低下飲食物を提供せんとするものである。 本発明者が、(−)エピカテキン(EC)、(−)エピガロカテキン(EGC)、(−)エピカテキンガレート(ECg)及び(−)エピガロカテキンガレート(EGCg)、(−)カテキン(C)、(−)ガロカテキン(GC)、(−)カテキンガレート(Cg)及び(−)ガロカテキンガレート(GCg)の8種類の全カテキンについて血清コレステロール降下作用試験を行った結果、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgに優れた血清コレステロール降下作用を見出した。中でも非エピ体である(−)Cg及び(−)GCgは、エピ体である(−)ECg及び(−)EGCgよりも、一層優れた血清コレステロール降下作用を示すという新知見を見出し、かかる知見に基づいて本発明を想到した。 本発明は、(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を有効成分とする血清コレステロール低下剤及び血清コレステロールを低下させるために用いる飲食物(本発明では食品及び飲料をまとめて「飲食物」という。よって、飲食物には食品及び飲料が含まれる。)を提案する。 (−)GCg及び(−)Cgは、それぞれ(−)EGCg及び(−)ECgのエピマー、すなわち(−)EGCg及び(−)ECgの一つの不斉炭素原子が反転した立体配置を持つジアステレオマー(鏡像異性体以外のすべての立体異性体)である。これら(−)GCg及び(−)Cgは、天然物(例えば茶葉)中に僅かに含まれるのみであるが、天然物(例えば茶葉)中に多く含まれている(−)EGCgや(−)ECgを熱異性化することによって産業上利用できる程度に得ることができる。 従来、非エピ体である(−)GCg及び(−)Cgの薬理活性、特に血清コレステロール降下作用について考察した報告はほとんどみられなかったが、本発明者は、血清コレステロールの低下作用、詳しくは血清総コレステロール及び血清LDL−コレステロールの低下作用に関して、非エピ体である(−)Cg及び(−)GCgが、エピ体である(−)ECgや(−)EGCgなどよりも優れた効果を発揮することを見出し、これら(−)GCg及び(−)Cgを血清コレステロール低下剤或いはコレステロール低下飲食物の有効成分とすることで、従来よりもより一層薬理効果の優れた血清コレステロール低下剤及び飲食物を得ることができた。 本発明はまた、血清コレステロール低下剤の製造方法として、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で約500mg/L以上含有するカテキン溶液を作製し、これを約80℃以上で加熱処理した後濃縮・乾燥することを特徴とする製造方法を提案する。 また、血清コレステロールを低下させるために用いる飲食物の製造方法として、エステル型カテキン類(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で約500mg/L以上含有するカテキン溶液を作製し、これを約80℃以上で加熱処理後濃縮・乾燥し、得られた濃縮乾燥物を配合することを特徴とする製造方法を提案する。 また、血清コレステロールを低下させるために用いる飲料の製造方法として、エステル型カテキン類(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で約500〜6000mg/L含有するカテキン溶液を作製し、これを約80℃以上で加熱処理することを特徴とする製造方法を提案する。 いずれの製造方法も、エステル型カテキン類を所定値以上含有するカテキン溶液を作製し、これを加熱処理することによって(−)EGCg及び(−)ECgの熱異性化を促して(−)GCg及び(−)Cgの含有量を高めることができる特徴を備えている。 なお、本発明において「全カテキン」とは、(−)EC、(−)EGC、(−)ECg及び(−)EGCg、(−)C、(−)GC、(−)Cg及び(−)GCgの8種類のカテキンの意であり、「エステル型カテキン類」とは(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの4種類のカテキンの意である。また、「エピ体」とは(−)EC、(−)EGC、(−)ECg及び(−)EGCgを意味し、「非エピ体」とは(−)C、(−)GC、(−)Cg及び(−)GCgを意味する。 「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を有効成分とする」の「有効成分とする」とは、(−)GCg又は(−)Cgの血清コレステロール低下作用が阻害されなければ、その他の成分、例えば(−)EC、(−)ECg、(−)EGCgなどの成分を含んでいてもよいという意を包含する。 また、(−)GCgの重合体、(−)GCgと他のカテキンとの共重合体、(−)Cgの重合体、或いは(−)Cgと他のカテキンとの共重合体は、「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物」の均等物であると考えることができる。 次に本発明の実施の形態について説明する。(血清コレステロール低下剤) 本発明の血清コレステロール低下剤は、(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を所望濃度で配合することによって製造することができる。但し、(−)GCg及び(−)Cgの薬理活性を阻害しない範囲でその他の成分を配合したり、その他の処理を施すことは適宜可能である。 (−)GCg及び(−)Cgは、従来公知の方法或いは今後公知となる方法によって得ることができる。 (−)GCg及び(−)Cgは、茶葉を含めて天然植物中にほとんど存在しないが、例えば「(−)EGCg、(−)ECg或いはこれらの混合物」を約80℃以上で加熱処理して熱異性化(エピマー化)を促すことにより得ることができる。 よって、「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物」は、例えば精製した(−)EGCg或いは(−)ECg或いはこれらの混合物、又は、茶の抽出液或いは浸出液などの「(−)EGCg及び(−)ECgを含有するカテキン溶液」を、約80℃以上で加熱処理してカテキンの熱異性化を促すことにより(−)GCg又は(−)Cgの含有濃度を高めることができ、この加熱処理物から(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物、或いはこれらを高濃度で含有する混合物を分離・精製することにより得ることができる。 この際、カテキン溶液をpH5〜6に調製した上で加熱処理するのが好ましい。pH4.5以下ではカテキンはほとんど熱異性化しない可能性がある(末松伸一ら、:日食工誌、39,178(1992))。 上記の「(−)EGCg及び(−)ECgを含有するカテキン溶液」の組成としては、エステル型カテキン類を合計で約500mg/L以上含有するように調製するのが好ましい。 また、上記の分離・精製方法は、従来公知の方法或いは今後公知となる方法を採用することができる。一例を挙げれば、被処理液(例えば茶の抽出液)を例えば水−アセトニトリル−リン酸の混合液を移動相とした逆相HPLCにかけ、アセトニトリル濃度でグラジエントをかけることによって(−)GCg及び(−)Cgをそれぞれ分離することができる。 「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物」は、それぞれ単独で本発明の有効成分として配合することが可能であるが、既に或いは将来的に血清コレステロール低下作用が認められた物質、例えば(−)EC、(−)ECg、(−)EGCgのいずれか或いはこれら二種類以上の組合せからなる混合物などと混合し、これらを有効成分とすることも可能である。 単独で本発明の有効成分として配合する場合、例えば(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を、精製水や生理食塩水などに溶解して血清コレステロール低下剤(例えば経口投与剤、腹腔内投与剤等)とすることもできる。 本発明の血清コレステロール低下剤は、経口投与剤または非経口投与剤(筋肉注射、静脈注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、経鼻投与など)として使用することができ、それぞれの投与に適した配合及び剤型とするのが好ましい。 剤型について言えば、例えば経口投与剤用としては液剤、錠剤、散剤、顆粒、糖衣錠、カプセル、懸濁液、乳剤、丸剤などの形態に調製することができ、非経口投与剤用としては注射剤、アンプル剤、直腸投与剤、油脂性坐剤、水溶性坐剤などの形態に調製することができる。 配合(製剤)について言えば、通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、潤滑剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤などを用いて常法により製造することができる。また、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウムなどの無毒性の添加剤を配合することも可能である。 本発明の血清コレステロール低下剤は、医薬品のほか、医薬部外品、薬理効果を備えた健康食品・健康飲料・特定保健用食品・機能性食品、食品添加剤、その他ヒト以外の動物に対する薬剤や餌、餌用添加剤などとして提供することもできる。 例えば、医薬部外品として調製し、これを瓶ドリンク飲料等の飲用形態、或いはタブレット、カプセル、顆粒等の形態とすることにより、より一層摂取し易くすることができる。 血清コレステロール低下効果を備えた健康食品・健康飲料・特定保健用食品・機能性食品としては、例えば、(−)GCg、(−)Cg、或いはこれらの混合物、或いはこの混合物を含むカテキン溶液を、炭酸、賦形剤(造粒剤含む)、希釈剤、或いは更に甘味剤、フレーバー、小麦粉、でんぷん、糖、油脂類等の各種タンパク質、糖質原料やビタミン、ミネラルなどの飲食品材料群から選ばれた一種或いは二種以上と混合したり、或いは、現在公知の飲食品、例えばスポーツ飲料、果実飲料、乳飲料、茶飲料、野菜ジュース、乳性飲料、アルコール飲料、ゼリー、ゼリー飲料、炭酸飲料、チューインガム、チョコレート、キャンディ、ビスケット、スナック、パン、乳製品、魚肉練り製品、畜肉製品、冷菓、乾燥食品、サプリメントなどに添加して製造することができる。 中でも、脂肪を多く含んだ飲食物に(−)GCg、(−)Cg、或いはこれらの混合物、或いはこの混合物を含むカテキン溶液などを加えて飲食物を調製すれば、含有脂肪の割にコレステロールの上昇を抑制することができるから、低コレステロール飲食物或いはダイエット飲食物などとして提供することができる。(血清コレステロール低下飲食物) 次に、本発明の血清コレステロール低下効果を備えた飲食物(すなわち、血清コレステロール低下食品及び飲料を含む。)、中でも茶由来の血清コレステロール低下飲料について詳しく説明する。 上述のように、(−)GCg及び(−)Cgは、天然の茶中にほとんど存在しないが、天然の茶に多く含まれている(−)EGCg、(−)ECg或いはこれらの混合物を加熱処理することにより得ることができる。 よって、(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを所定量以上含有する(これら以外を含んでいてもよい。)カテキン溶液を作製し、これを加熱処理することにより(−)GCg及び(−)Cgを所望量含有する茶由来の血清コレステロール低下飲料を製造することができる。 例えば、茶を抽出して得られる茶抽出物((−)EGCg及び(−)ECg含有)を、水等に加えて(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを所定量以上含有する(これら以外を含んでいてもよい。)カテキン溶液を作製し、これを加熱処理することにより(−)GCg及び(−)Cgを所望量含有する所望組成の茶由来の血清コレステロール低下飲料を製造することができる。 この際、原料とし得る茶は、(−)EGCg及び(−)ECgを含有していれば特に種類、部位などには制限されないが、例えば茶生葉、紅茶やプアール茶等の発酵茶、ウーロン茶や包種茶等の半発酵茶、緑茶や釜煎り緑茶、ほうじ茶等の不発酵茶のいずれか(単独)、又は、これらの2種類以上の混合物を抽出して得られるもの、或いはそれぞれを抽出して得られたものの混合物を用いることができる。 茶の抽出は、茶を水、温水または熱水、好ましくは40℃〜100℃の温熱水、中でも90〜100℃の熱水、或いは人体に無害なエタノール水溶液またはエタノールなどの有機溶媒で抽出して茶抽出物を得ればよい。更にこの茶抽出物を溶媒抽出法、樹脂吸着法、限外濾過・逆浸透濾過等の濾過などの精製手段によってカテキン、中でも(−)EGC及び(−)ECgの含有量を高める方向に精製して茶抽出物を得ることもできる。抽出の際、(−)EGC及び(−)ECgの含有量を高めるべく塩酸等を添加して酸性条件下で抽出を行ってもよい。 また、市販の茶抽出物を用いることがもできる。例えば、テアフラン30A(商品名;伊藤園社製)は、緑茶を熱水抽出処理し、この抽出物を乾燥させてカテキン濃度を約30%とした緑茶抽出物であり、テアフラン90S(商品名;伊藤園社製)は、緑茶を熱水抽出処理して得た抽出物を、水と低・高濃度アルコールを使って吸着カラムにて分離し乾燥させ、茶ポリフェノール濃度を約85〜99.5%とした緑茶抽出物である。その他、市販の茶抽出物として三井農林(株)製「ポリフェノン」、太陽化学(株)製「サンフェノン」、サントリー(株)製「サンウーロン」等も用いることができる。 「カテキン溶液」の組成としては、エステル型カテキン類を合計で約500mg/L以上含有するように調製するのが好ましい。カテキン溶液のエステル型カテキン類濃度が500mg/L未満では、途中で濃縮工程が必要となるため生産コストが過大となる可能性がある。 カテキン溶液の加熱処理は、約80℃以上で加熱処理するのが好ましい。試験結果を見ると、例えば100℃×15分加熱、115℃×20分加熱、120℃×3〜30分加熱、123℃×10分加熱、131℃×30秒加熱、133℃×45秒のいずれにおいても、カテキン類の熱異性化が認められている。 カテキン溶液の加熱処理が80℃未満では、エステル型カテキン類のエピ体から非エピ体への変換(熱異性化)が容易に起こらず、また平衡がエピ体リッチの方向にシフトするため好ましくない。 また、好ましくはカテキン溶液をpH5〜6に調製した上で加熱処理するのが好ましい。pH4.5以下ではカテキン類はほとんど熱異性化しないという旨の報告もある(末松伸一ら、:日食工誌、39,178(1992))。 本発明の血清コレステロール低下飲料は、上記のようにして得られたカテキン溶液の加熱処理液をそのまま或いは風味改善のため適宜緑茶抽出液やその他の物質を添加して調製すればよい。 ちなみに、本発明の血清コレステロール低下剤及び血清コレステロール低下飲食物は、上記のようにして得られたカテキン溶液の加熱処理液をさらに濃縮・乾燥し、得られた固形物を配合して製造することができる。この際の濃縮・乾燥工程は、減圧濃縮や凍結乾燥など通常の濃縮・乾燥方法により行うことができる。 このようにして得られた血清コレステロール低下飲食物は、主原料が、天然物、特に日常多量に引用している茶から得た成分を用いるので、安心して日常的に飲むことができる保健飲料として提供することができる。 次に、本発明の血清コレステロール低下飲食物の好ましい配合組成について説明する。 本発明の血清コレステロール低下飲食物は、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で、全カテキン合計含有量の約70重量%以上含有し、かつ、次の(1)〜(3)の条件を満足するのが好ましい。(1)(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量が、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量の約40重量%以上である。(2)(−)ECgの含有量が、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量の約20重量%以下である。(3)(−)GCgの含有量が、(−)ECgの含有量以上である。 後述するように、本発明者の検討の結果、4種類のエステル型カテキンに血清コレステロール低下作用があることが明らかになったが、エステル型カテキン類のみで血清コレステロール低下飲食物中のカテキンを構成しようとすると、風味が不足するため摂取しにくいものとなる。そこで、緑茶抽出物を添加して飲食物中の(−)ECの濃度を指標としてその値を、市販の緑茶飲料の2倍程度までの値とすることにより摂取の困難さを改善しようとすると、緑茶抽出物の必要添加量は最大当該飲食物の全カテキン含有量と等量程度となり、この場合の本発明の血清コレステロール低下飲食物中の4種類のエステル型カテキン類の合計含有量は、8種類の全カテキンの合計含有量の約70重量%以上となる。エステル型カテキン類の含有割合は変化させて呈味試験を行ったところ、全カテキンの合計含有量の約70重量%以上となるように飲料を調製するのが呈味性の上では好ましいことが確認された。 さらに、エステル型カテキン類の満足すべき条件(1)〜(3)に関して言えば、(1)については、非エピ体の血清コレステロール低減効果がエピ体(それなりに効果がある)のそれより優れているため、非エピ体、特に(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量が、エピ体を含めたエステル型カテキン類の合計含有量の少なくとも約40重量%を占めるのが好ましいからである。(2)については、ECgの血清コレステロール低減効果がエステル型カテキン中もっとも小さいため、(−)ECgの含有量が、エステル型カテキン類の合計含有量の約20重量%以下とするのが好ましいからである。(3)については、ECgの低減効果の低さを、最も低減効果の優れているGCgで補償するため、(−)GCgの含有量を(−)ECgの含有量以上とするのが好ましいからである。 以上の条件を満たす本発明の血清コレステロール低下飲食物は、そのエステル型カテキンの合計量と同量のEGCgを含有する飲食物と同等若しくはそれ以上の血清コレステロール低下作用を発揮する。(必要摂取量及び含有量) 本発明の血清コレステロール低下剤及び血清コレステロール低下飲食物におけるエステル型カテキン類の必要摂取量は、1日当たり約300〜2100mg程度であると考えられる。 使用方法によっても異なるが、(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を、乾燥重量換算で大人一日に120〜2100mg、好ましくは250〜1500mg程度摂取するのが好ましい。 上記の必要摂取量から考えると、固形形態の血清コレステロール低下剤及び血清コレステロール低下飲食物の場合、エステル型カテキン類を約0.1〜100重量%含有させるようにするのが好ましく、中でも(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を、約0.04〜100重量%、特に約0.1〜40重量%配合するのが好ましい。 エステル型カテキン類約0.1重量%未満では、摂取すべき固形物の量が1日当たり約2kgを超えることがあるため好ましくない。 他方、飲料形態の血清コレステロール低下剤及び血清コレステロール低下飲食物の場合、エステル型カテキン類を約500〜6000mg/L程度の濃度で含有させるのが好ましく、加熱処理後の飲料は(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を約200〜6000mg/L、特に約300〜3000mg/L程度の濃度で含有させるのが好ましい。 エステル型カテキン類濃度が500mg/L未満では、摂取すべき飲料の体積が1日当たり4Lを超えることがあるため好ましくない。6000mg/Lを超えると、カテキン類が高濃度となり渋味が強すぎるため好ましくない。より好ましくは、エステル型カテキン類濃度750〜3750mg/L程度である。<試験1> 茶カテキン類のコレステロール吸収阻害能を測定し、異性化カテキン(非エピ体カテキン)のコレステロール吸収阻害能を比較検討した。 茶カテキンのうち、エステル型カテキンとして(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cg、遊離型カテキンとして(−)EGC、(−)EC、(−)GC及び(−)Cの合計8種のカテキンを試料として以下の試験を行った。(試験方法) 15mM リン酸緩衝液(pH6.8)に0.5mMコレステロール、6.6mMタウロコ−ル酸Na、0.6mM卵黄レシチン、132mM NaClを添加し、超音波処理により胆汁酸混合ミセル(以下[胆汁酸ミセル]という)を調製した。 この胆汁酸ミセルをアルゴンガス封入し、37℃で24時間保持してミセルを安定化させた後、脱イオン水に溶解させて上記8種類のカテキンをそれぞれ最終濃度1000μM或いは2000μMとなるようにミセルに添加し、1時間インキュベートした。この際、いくつかのカテキン添加群においてミセル溶液は白濁し、沈殿した。なお、カテキン無添加群には、脱イオン水のみを添加した。 インキュベート開始から1時間後、この溶液を220nmのフィルターでろ過し、清澄なミセル溶液を得、この溶液中のコレステロール濃度を測定した。結果を、図1及び図2に示す。(結果) 図1を見ると、エステル型カテキンである(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを胆汁酸ミセルへ添加したものは、ミセル中のコレステロール濃度が添加量依存的に減少した。その作用は、1000μM添加では、(−)EGCg、(−)GCg、(−)Cgは、(−)ECgに比較して強い低下作用を示した(P<0.05)。 前者の3種のカテキンのうちでは、(−)GCgが最も低下作用が強く、(−)EGCgに対して有意に低下(P<0.05)し、次いで(−)Cg、(−)EGCgの順であった。 他方、図2を見ると、遊離型カテキンである(−)EGC、(−)EC、(−)GC及び(−)Cgは、胆汁酸ミセル中のコレステロール濃度をほとんど低下させなかった。(考察) 以上の結果、カテキンのガレートエステルはエピ体(epi体)だけでなく、非エピ体(異性体)も胆汁酸混合ミセル中のコレステロールを沈殿させ、ミセルから脱離させていることが明らかとなった。 さらに、非エピ体(異性体)である(−)GCg及び(−)Cgのコレステロール低下作用は、エピ体(epi体)である(−)EGCg及び(−)ECgよりもその作用が強いと考えることができる。<試験2> 異性化非エピ体カテキン混合物による相乗効果を検討すべく、試験1と同じ方法を用いて、(−)GCg及び(−)Cgを含むエステル型カテキン混合物(実施例1の飲料)、これらを含まないエステル型カテキン混合物、EGCgの三者のコレステロール吸収阻害効果を比較検討した(図3)。 なお、(−)GCg及び(−)Cgを含むエステル型カテキン混合物として下記実施例1の飲料を用い、この実施例飲料から試験1同様に胆汁酸混合ミセルを調製した。 また、(−)GCg及び(−)Cgを含まないエステル型カテキン混合物としてテアフラン90S(伊藤園製緑茶抽出物、組成は表1参照)を用い、この実施例飲料から試験1同様に胆汁酸混合ミセルを調製した。 この結果、EGCgに比べて、いずれのエステル型カテキンの混合物も高い活性を示すことが分かった。また、本試験結果では、(−)GCg及び(−)Cgを含むエステル型カテキン混合物と含まないエステル型カテキン混合物との間に大きな活性の差は認められなかった。 なお、平成15年2月10日に出願に添付した図3は、(−)GCg及び(−)Cgを含まないエステル型カテキン混合物の方が高い活性を示す結果となっていたが、出願後この図面は誤記であることが発覚したので正しい図3に差し替えたものである。 <試験3> テアフラン90S(伊藤園製カテキンエキス、組成は表1参照)を1450mg/Lの濃度となるように60℃の温水に溶解させ、35℃に冷却後ビタミンCを300mg/L添加し、次いでサイクロデキストリンを1重量%、緑茶エキスを0.2重量%、重曹を約300mg/Lを加え、蒸留水で最終的に1kgに調製してカテキン溶液を得た。この際、1缶当たりポリフェノールは250mg含有していた。 このようにして得られたカテキン溶液を、95℃に加熱した後、缶の場合には缶に充填して123℃・10分間の加熱処理(レトルト殺菌)を行い、また、PETボトルの場合には95℃に加熱した後133.5℃・45秒の加熱処理(UHT殺菌)を行ってPETボトルに充填し、その後各工程におけるカテキン類の含有量を測定し、それぞれの含有量(mg/L)を表2に示し、カテキン類の異性化率(変化率%)を表3に示した。 ここで、飲料中における(−)EGCg、(−)GCg、(−)ECg及び(−)Cgのコレステロール低下作用に関する寄与率を求めると、試験1より、(−)EGCg、(−)GCg、(−)ECg及び(−)Cgは100μMにおけるミセル中の残存コレステロール濃度がそれぞれ272、244、337、262であったから、沈殿させたコレステロールは初期値425μMとの差をとって153、181、88、163となり、1μM当たりのコレステロール沈殿能は1.53、1.81、0.88、1.63となる。 他方、本試験飲料190mL中に含まれるカテキン組成を、(−)EGCg:(−)GCg:(−)ECg:(−)Cg=51.3mg(589.5μM):62.7mg(720.5μM):19.0mg(226.2μM):17.0mg(202.4μM)とすると、上記の1μM当たりのコレステロール沈殿能より、本試験飲料190mL中に含まれるカテキンのコレステロール低下作用に関する寄与率は、(−)EGCg:(−)GCg:(−)ECg:(−)Cg=33.0:47.7:7.3:12.0(%)と算出できた。<試験4:ヒト試験>1)対象者 本試験は、健常な生活を営む20歳以上の男性のうち、血清総コレステロールが200mg/dL以上280mg/dL以下の境界領域および軽度高血清コレステロール値にある被験者42名を、試験に直接参加しない医師により抽出した。 対象者は病院での加療を受けていない者であることを条件とし、入院や通院による脂質降下剤や降圧剤等の薬剤の服用者、重篤な肝機能障害、腎障害、呼吸器障害、内分泌障害、心血管障害のある者は対象から除外した。 試験開始にあたっては、42名の被験者をA群、B群、C群の3群にわけ、各群14名とした。開始時の各群の血圧や総コレステロール値に差はなかった。2)試験飲料 本試験には、茶カテキンを1本当たり150mg(茶ポリフェノールとして250mg:(株)伊藤園製商品名テアフラン90S)となるよう配合した飲料190gを用いた。試験飲料中の茶カテキン組成を表4に示す。 試験飲料には茶カテキンのほか、茶カテキンを含まない緑茶抽出液、サイクロデキストリン、ビタミンCを加えた。 また、プラセボ飲料として茶カテキン以外同成分の飲料を用いた。3)試験スケジュール 試験は二重盲検法により実施した。試験スケジュールを図4に示す。いずれの群も各期間の開始時および終了時に血液検査を行った。 A群には対照飲料を1日3本摂取させ、B群には試験飲料を1日2本、C群には試験飲料を1日3本摂取させた。各群とも食事とともに1本ずつ摂取させた。 なおB群においては、茶カテキン以外の1日当たりの総摂取量をA群、C群と合わせるため、昼食時のみ対照飲料を1本摂取させた。4)観察項目 全被験者に対し、血清脂質として総コレステロール(TC)、HDL−コレステロール(HDL-C)、LDL−コレステロール(LDL-C)、中性脂肪(TG)を測定した。 TC,HDL−CおよびTGについては酵素法にて測定した。LDL−CについてはFriedewa1dらの式(LDL-C=TC-HDL-C-TG/5)によって算出した。 また健康状態を確認するため、BUN、尿酸、総タンパク、ALP、GOT、GPT、LDH、γ−GTP、CPK、Na、K、Ca、Cl、Fe、UIBC、フェリチン、HbA1c、ヘモグロビン、赤血球数、白血球数、血小板数およびヘマトクリットを測定した。さらに各採血前3日間、食事調査および運動量調査を行った。食事については被験者に食事調査票に記入させ、「五訂日本食品標準成分表」に準拠して栄養計算を行った。運動量については全被験者に歩数計を配布し、1日の総歩数を記入させた。 なお、採血は早朝空腹時に行った。各採血日には医師による診察を行い、体調の変化について観察を行った。5)統計解析 各測定値は平均値±標準偏差で示した。有意差検定はSAS統計解析プログラムを用い、危険率を5%未満として解析を行った。 各測定値の検定は、正規性が認められた場合、多重比較検定(Dumet法)を行った。正規性が認められなかった場合Stea1法にて検定を行った。6)結果 1.栄養摂取量・運動量 試験期間中の1日当たりの栄養摂取量および運動量を表5に示す。食事調査・運動量調査は各採血日前、平日3日間の平均値として示した。全体を通して摂取エネルギーの平均値が1638〜1846kcaL/dayと低かったが、医師による聞き取りの結果、すべての被験者が有職者であり、食習慣として平日朝・昼食は極めて簡単な食事で済まし、平日夜および休日にアルコールとともに多食する傾向があったためと判断された。 各群間のエネルギー摂取量には有意な差は認められなかった。また摂取開始4週時に、C群(106.1±95.6mg/d1)においてA群(198.O±69.3mg/d1)に比してコレステロール摂取量が有意に低かったが、一般的に一時的なコレステロール摂取の多寡が即時に血清コレステロール値に反映されることはなく、実際この時点において各群の血清脂質濃度に差が認められていないことから、特に影響はないものと考えられた。その他の各被験者の栄養摂取量および運動量に差は認められなかった。 2.血清脂質 試験期間中の血清脂質関連検査値の推移を表6に示す。C群(3本/day)では、TC値が226.9±20.2mg/dL(摂取開始時)から203.0±22.7mg/dL(8週後)と摂取開始時に比べて有意(ρ<O.05 by Dunnet-test)に低下した。 開始8週後のA群(対照飲料群)のTC値236.O±19.1mg/dLに対しても有意(ρ<O.01)に低かった。同様にLDL−C値も141.6±22.3mg/dL(摂取開始時)から116.9±14.4mg/dL(8週後)と摂取開始時に比べて有意(ρ<O.01)に低下し、開始8週後のA群(対照飲料群)のLDL−C値147.3±22.3mg/d1に対しても有意(ρ<0.01)に低かった。 B群(2本/day)においてもTC値が236.O±25.8mg/d1(摂取開始時)から219.1±21.Omg/d1(8週後)と推移し、摂取開始8週後において、A群(対照飲料群)のTC値236.O±19.1mg/d1に対して低い傾向(ρ<0.1)にあった。一方、HDL−C、TG、HbA1cの各数値にはB群、C群とも摂取開始時に比べて有意な差は認められなかった。またA群(対照飲料群)に対しても有意な差は認められなかった。 3. 血液成分・ミネラルおよびその他の所見 被験者の血液成分およびミネラルの推移を表7に示す。摂取期問中、B群、C群ともに開始時と比較して、赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、フェリチンおよびFe、Ca、K、Cl、Naの各数値に有意な変化は認められなかった。 また各群間にも有意な差は認められなかった。 後経過観察期間後に、摂取開始時に比してC群でNaの有意(ρ<0.01)な増加(141.7±1.3mg/d1→143.4±1.3mg/d1)が、B群でCaの有意(ρ<0.05)な増加(4.7±O.2mg/d1→4.9±O.1mg/d1)が認められたが、ともに正常範囲内であり、医師により医学的に問題ないと判断された。 試験期間中、γ−GTP、GOT、GPTにも有意な変化は認められず、医師の診察時に有害事象と思われる所見も一切観察されなかった。7)考察 本試験では、被験者に1本当たり茶ポリフェノール250mg、うち茶カテキンとして150mg(EGCg51.3mg,GCg62.7mg,ECg19.Omg,Cg17.0mg)を含む飲料を、1日2本または3本を8週間摂取させた。したがって1日当たりの摂取量は、B群で茶ポリフェノール500mg、茶カテキンとして300mg(EGCg102.6mg, GCg125.4mg, ECg38.Omg, Cg34.Omg)、C群で茶ポリフェノール750mg、茶カテキンとして450mg(EGCg153.9mg,GCg188.1mg,ECg57.Omg,Cg51.Omg)となる。このC群の1日当たり450mgの茶カテキン摂取量は、通常の緑茶8〜9杯分の茶カテキン量に相当する。 摂取されたカテキンが食事由来コレステロール、腸管に排泄された内因性のコレメテロールおよび胆汁酸ミセル中のコレステロールと不溶性沈殿を形成することによって、小腸からのコレステロール吸収が阻害され、糞便中に胆汁酸ならびにコレステロールが排泄される。特にエステル型カテキンは胆汁酸ミセルからのコレステロール脱離能が他のカテキン種に比べて高いことから、エステル型カテキンを主として配合している本飲料の効果は、腸管からのコレステロール吸収阻害によるものであると推察される。 また、茶カテキンは腸内乳酸菌を増殖させるなど腸内細菌叢を変化させることが知られている。食事由来の食物繊維は乳酸菌等により容易に資化され、その結果、産生されるプロピオン酸が増加する。産生されたプロピオン酸は肝臓のHMG-CoA synthase活性を阻害し、コレステロール合成を抑制することが報告されていることから、本試験の後経過観察期間後の血清コレステロール値の推移には、この機序の寄与も考えられる。すなわち、茶カテキン摂取期間中は、1)腸管に排出された内因性コレステロールの再取り込み阻害、2)乳酸菌増殖に起因するコレステロール合成阻害、3)胆汁酸が腸管循環阻害を受けたことに起因するコレステロールから胆汁酸への合成の亢進によって、内因性コレステロールプールが低下するとともに胆汁中のコレステロール飽和度も低下すると考えられる。茶カテキン摂取終了後は、内因性コレステロールプールが回復して胆汁酸合成が低下した後、余剰の内因性コレステロールが血中に流出し血清コレステロール値の増加に至ると考えられる。しかしながら茶カテキン摂取開始後、血清コレステロール値の低下が顕著になるまでに4週を要していることを考慮すれば、被験者の血清コレステロール値が摂取開始前に復帰するためには若干の時間的遅延があったものと推察される。 一方、本試験においては茶カテキンによる血清ミネラル値の低下は認められなかった。加えて血清鉄やUIBC、ヘモグロビン、ヘマトクリットの各数値にも有意な変化が認められなかった。 この結果は、茶の摂取は微量金属元素の吸収に影響を与えないとするRecordらの報告と一致する。したがって今回の検討は8週間であったが、茶カテキンを配合した茶飲料の摂取は、血清ミネラルの各数値を低下させることなく、長期にわたり摂取可能である。 なお、脂質二重層に対する親和性と立体化学的構造が没食子酸エステル型カテキン類の間で異なることが報告されている( K. Kajiyaら:Biosci. Biotech. Biochem. 2001, 65, pp.2638-2643)。このことからすると、これらの差がECg、EGCg、Cg及びGCgの間のコレステロール低下作用の差異に影響しているものと考えられる。<試験5> 本試験は、胸管カニューレ挿入ラットを対象として、緑茶カテキン類(エピ体:(−)EC、(−)EGC、(−)ECg及び(−)EGCg)及び熱エピマー化カテキン類(非エピ体:(−)C、(−)GC、(−)Cg及び(−)GCg)が、コレステロールのリンパ管吸収に及ぼす効果について比較検討した。1)材料 カテキン純品に関しては、(−)EC、(−)EGC及び(−)Cは和光純薬工業社製、(−)GC、(−)Cg及び(−)GCgは長良化学工業社(Nagara Science)製、(−)ECg及び(−)EGCgは栗田工業社製のものを入手した。これらのカテキン類(単一物質)の純度はいずれも98%以上であった。また、4-14C-コレステロール(55 mCi/mmoL)は、Amersham Pharmacia Biotech社から購入した。 緑茶カテキン類の混合物は、伊藤園製のテアフラン90Sを用いた。熱エピマー化カテキン類(非エピ体)は、このカテキン混合物を120℃で5分間オートクレーブ加熱処理して調製した。 緑茶カテキン類(エピ体)及び熱エピマー化カテキン類(非エピ体)のカテキン組成を表8に示す。この表8を見ると、緑茶カテキン類から調製したエピマー化カテキン類(非エピ体)では、Cg及びGCg量が増加していることが確認できる。2)試験内容 8週齢SDラットに、手術までの1週間市販の中国風食事(チャウチャウ)を与えた。これらのラットの頭部くも膜下槽乳糜(にゅうび)への左胸部リンパ管に前もってカニューレを挿入した。 試験乳濁液投与のため胃内部に第二の体内導入カテーテルを置いた。外科的処置後動物を拘束かごに入れ、実験終了まで3.4 mL/hの速度で139 mMのグルコースと85 mMのNaClを含む溶液を胃内部に連続注入した。同じ溶液を飲料水として与えた。翌朝、一定のリンパ流速を持つ動物に3 mLの14C-コレステロール含有試験乳濁液を、カテキン試料とともに又はなしで投与した。 試験乳濁液(3 mL)は、200 mg のタウロコール酸(複合胆汁酸)ナトリウム、50 mgの脂肪酸を含まないウシアルブミン分画V、200 mgのトリオレイン、37 kBqの14C-コレステロール及び25 mgのコレステロールを含有していた。該混合物を超音波処理により乳化した。 茶カテキン類及び熱エピマー化カテキン類を投与する場合は、これらのカテキン類を該乳濁液3 mL中にそれぞれ100 mg及び120 mg添加した。カテキン類の含有量(ECg、EGCg、Cg及びGCgの合計)は、熱エピマー化カテキン類では減少するので、カテキン量は茶カテキン類とエピマー化カテキン類間で同じレベルとなるように調節した。 脂質乳濁液中におけるコレステロールに対する全カテキン類のモル比は、約2.5であった。リンパをEDTAを含む氷冷管で捕集して、放射能を測定した。 なお、動物での研究はすべて、九州大学大学院農学研究院動物実験ガイドライン並びに「動物の保護及び管理に関する法律」(昭和48年10月1日法律第105 号) 及び「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」(昭和55年3月27日総理府告示第6号) に従って実施した。 図7には、胃内部に脂質乳濁液を投与したラットに対して、コントロール、緑茶カテキン類或いは熱エピマー化カテキン類を投与した各群におけるコレステロールのリンパ管吸収吸収率の経時的変化を示した。 なお、データは6又は7匹のラットの平均値±標準誤差で示し、a、b、cは異なる文字間で有意差があることを示している(P<0.05)。(結果) コントロール群、緑茶カテキン類((−)EC、(−)EGC、(−)ECg及び(−)EGCg)群及び熱エピマー化カテキン類((−)C、(−)GC、(−)Cg及び(−)GCg)群間ではリンパ流速は直線的で、差異は認められなかった(それぞれ175±15 mL/24h、165±16 mL/24h及び154±17 mL/24h)。 カテキン類の投与は、24時間のリンパ捕集の間コントロール群と比較してコレステロールのリンパへの回復を効果的かつ有意に低下させた(図7参照)。 エピマー化カテキン類は、コレステロール吸収の低下において茶カテキン類よりも効果的かつ有意であった。14C-コレステロールのリンパへの回復率は、コントロール、緑茶カテキン及び熱エピマー化カテキン群における24時間のリンパ捕集の間それぞれ40.5±1.6%、24.9±3.0%及び15.2±2.0%であった。(考察) 本試験結果より、レトルト処理中に増加した熱エピマー化カテキン類((−)C、(−)GC、(−)Cg及び(−)GCg)が、熱エピマー化する前のカテキン類、すなわち緑茶カテキン類((−)EC、(−)EGC、(−)ECg及び(−)EGCg)よりも血漿コレステロール濃度を効果的に低下させることが分かった。 また、血漿コレステロール濃度がアテローム性動脈硬化症に対する独立のリスク因子であることも立証されていることから(G. Rose and M. Shipley:Brit. Med. J. 1986, 293, pp.306-307)、本試験結果と合わせて検討すると、緑茶カテキン類と熱エピマー化カテキン類の双方とも、血漿コレステロール低下と抗酸化活性とによってアテローム性動脈硬化症の防止に効果を有し、中でも熱エピマー化カテキン類は緑茶カテキン類よりも一層効果的であると考えられる。 なお、熱エピマー化カテキン類の安全性に関しては、緑茶カテキン類及び熱エピマー化カテキン類を含む茶飲料を全カテキン類として450〜900 mg/dayとなるように8〜20週間ヒトに与えたところ、生物化学的血液パラメータに異常は認められなかったと報告されている(T. Nagaoら:J. Oleo Sci. 2001, 50, pp.717-728)。(実施例1) テアフラン90S(伊藤園製緑茶抽出物、組成は表1参照)を1450mg/Lの濃度となるように60℃の温水に溶解させ、35℃に冷却後ビタミンCを300mg/L添加し、次いでサイクロデキストリンを1重量%、重曹を約300mg/Lを加え、蒸留水で最終的に1kgに調製してカテキン溶液を得た。得られたカテキン溶液を、95℃に加熱した後、缶に充填して123℃・10分間の加熱処理を行い、下記組成の血清コレステロール低下飲料を作製した。 カテキン 150mg (−) GCg 62.7mg (−)EGCg 51.3mg (−) ECg 19.0mg (−) Cg 17.0mg ビタミンC 50mg サイクロデキストリン 500mg 水 全体を190mLに調製 この血清コレステロール低下飲料は、含有するカテキン類がすべてエステル型カテキン類であり(すなわち100重量%)、エステル型カテキン類の濃度は789mg/L、エステル型カテキン類中の「(−)GCg+(−)Cg」の割合は53.1重量%、また、(−)ECgの割合は12.7重量%である。試験1において、カテキン添加量とミセル中のコレステロール濃度との関係を示すことにより、エステル型カテキン(EGCg、GCg、ECg、Cg)のコレステロール吸収阻害作用を比較したグラフである。試験1において、カテキン添加量とミセル中のコレステロール濃度との関係を示すことにより、遊離型カテキン(EGC、GC、EC、C)のコレステロール吸収阻害作用を比較したグラフである。試験2において、カテキン添加量とミセル中のコレステロール濃度との関係を示すことにより、異性化カテキン混合物、エステル型カテキン混合物、EGCgのコレステロール吸収阻害作用を比較したグラフである。試験4の試験スケジュールを示したグラフである。試験4における総コレステロール濃度の経時変化を示したグラフである。試験4におけるLDL−コレステロール濃度の経時変化を示したグラフである。試験5において、胃内部に脂質乳濁液を投与したラットに対して、コントロール、緑茶カテキン類或いは熱エピマー化カテキン類を投与した各群におけるコレステロールのリンパ管吸収率の経時的変化を示したグラフである。 エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で、全カテキン合計含有量の70重量%以上含有し、かつ、次の(1)〜(3)の条件を満足することを特徴とする、血清コレステロールを低下させるために用いる飲食物。(1)(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量が、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量の40重量%以上である。(2)(−)ECgの含有量が、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量の20重量%以下である。(3)(−)GCgの含有量が、(−)ECgの含有量以上である。 エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で、0.1〜100重量%含有する請求項1記載の飲食物。 エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で、500〜6000mg/L含有する請求項1記載の飲食物。 エステル型カテキン類(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で500mg/L以上含有するカテキン溶液を作製し、これを80℃以上で加熱処理後濃縮・乾燥し、得られた濃縮乾燥物を配合することを特徴とする、血清コレステロールを低下させるために用いる飲食物の製造方法。 エステル型カテキン類(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で500〜6000mg/L含有するカテキン溶液を作製し、これを80℃以上で加熱処理することを特徴とする、血清コレステロールを低下させるために用いる飲料の製造方法。 【課題】 カテキンに由来する新たな血清コレステロール低下飲食物を提供する。【解決手段】 8種類のカテキンについて血清コレステロール降下作用試験を行った結果、エステル型カテキン類、中でも非エピ体である(−)Cg及び(−)GCgにより一層優れた血清コレステロール降下作用を見出し、かかる知見に基づいて、(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を有効成分とする、血清コレステロールを低下させるために用いる飲食物を提案する。【選択図】 なし


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