生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ジャーミノーマの判定法
出願番号:2005356897
年次:2007
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/543,C12Q 1/42


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渡辺 伸一郎 菊野 晃 松田 武英 JP 2007139731 公開特許公報(A) 20070607 2005356897 20051114 ジャーミノーマの判定法 株式会社明日香特殊検査研究所 504209091 渡辺 伸一郎 505456621 渡辺 伸一郎 菊野 晃 松田 武英 G01N 33/53 20060101AFI20070511BHJP G01N 33/543 20060101ALI20070511BHJP C12Q 1/42 20060101ALI20070511BHJP JPG01N33/53 CG01N33/543 575G01N33/543 545ZC12Q1/42 3 1 書面 6 4B063 4B063QA01 4B063QQ03 4B063QQ33 4B063QR13 4B063QR72 中枢神経系疾患の診断や治療をするための検査法に関する技術分野 中枢神経系疾患のうち、脳腫瘍は原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍に大別される。原発性脳腫瘍には髄膜腫、下垂体腺腫、神経膠腫、頭蓋咽頭腫、神経鞘腫、胚細胞性腫瘍などがあるが、脳腫瘍は増大すると脳や神経を圧迫して、その機能を障害し、てんかんや神経脱落症状、さらには頭蓋内圧亢進、水頭症を起こし、やがては生命を脅かすことになる。また、下垂体腺腫のような種々のホルモンの分泌異常をおこし尿崩症や低身長など多彩な病態を呈する。 胚細胞性腫瘍はジャーミノーマ(胚腫)、胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、奇形腫、混合性胚細胞性腫瘍の6種に分類されているが、その発生頻度は欧米に比べ日本では3〜5倍多い。また、特に小児に多く、小児の脳腫瘍の5〜15%を占めている。さらに、ジャーミノーマは胚細胞性腫瘍の中でも最も発生頻度が高く、約70%を占めている。 ジャーミノーマは放射線療法や化学療法に対して感受性が高く、化学療法と放射線療法の併用療法を行った場合の5年生存率95%、10年生存率92%と高い完全緩解率を示し、長期生存が可能な予後良好な疾患である。一方、ジャーミノーマを除く他の胚細胞性腫瘍(非ジャーミノーマ)は5年生存率27%と予後不良である。したがって、ジャーミノーマは非ジャーミノーマと鑑別できる特異性の高い検査法が開発されれば、必ずしも外科的手術を必要とせずに放射線療法、化学療法による内科的治療のみで治癒すると期待される。 脳腫瘍の治療はその組織型によって全く異ってくるので、その質的診断は外科手術でも放射線療法や化学療法でもその治療方針を決定する上で極めて重要になってくる。近年CTやMRIなど画像診断の発達によって脳腫瘍の存在診断は正確に行われるようになったが、腫瘍の組織分類に基づいた質的診断は画像診断のみでは容易ではなく、病理組織学的診断が根拠になっている。 胚細胞性腫瘍の診断を確定するためには、手術時の生検や摘出標本、あるいは髄液細胞診の病理組織学的検査によって質的診断が用いられているが、診断のために手術を行うことは患者に対する侵襲も非常に大きいと言わざるを得ない。 血液中の腫瘍マーカーとしては、卵黄嚢腫瘍ではアルファフェトプロテイン(AFP)が高値を示し、絨毛癌ではβ−ヒトゴナドトロピン(β−HCG)が高値を示すことから、これらの診断に用いられている。一方、ジャーミノーマは胎盤型アルカリフォスファターゼ(PLAP)を産生することが知られ、免疫組織学的にPLAPを免疫染色して診断に用いられているが、これは脳細胞穿刺が必要で治療上の検査としては使用し難い。 特許文献1、2には脳腫瘍の診断に特定の遺伝子が作るいくつかの蛋白質類の測定に関してなされているが何れも本願以外の特殊蛋白質である。 参考文献 特開2005−73621特表2000−512126内科学25.11A脳腫瘍、朝倉書店、第7版、p1917〜1928、2002.5渡辺伸一郎他:検査と技術、医学書院、Vol.31、260−262、2003 脳腫瘍は非特許文献1にあるように、組織型別に115種類に分類されている。その中でも、胚細胞性腫瘍は欧米に比べ日本では3〜5倍も発生頻度が高い。また、特に小児に多い脳腫瘍で、その5〜15%を占めている。ジャーミノーマは胚細胞性腫瘍の約70%と最も多く、化学療法と放射線療法の併用療法によって10年生存率90%以上と高い完全緩解率を示すことは前述した。この小児期に多発するジャーミノーマは浸潤性の腫瘍で、進行すれば中枢神経組織を破壊性に浸潤し致命的な影響を生じうるため、早期に診断し、治療することが重要であり、内科的治療によって完治が期待できる腫瘍でもある。また、ジャーミノーマは非ジャーミノーマと比べ放射線感受性が高いので、放射線照射量を低く抑えることができ、知能低下などの重篤な放射線障害を回避することにも役立つ。しかし、ジャーミノーマを簡便、かつ正確に判定することのできる検査法はない。本願発明は、このジャーミノーマの診断を簡便、かつ正確に行うための方法を提供するためになされた。 胎盤型アルカリ性フォスファターゼ(PLAP)は妊娠12〜20週の妊婦の血清中に出現する酵素蛋白でアルカリフォスファターゼの一種であり、精巣や卵巣などの原生殖細胞由来の腫瘍においても出現する。 最近、非特許文献2に示すようにジャーミンーマの髄液中に特異的にPLAPが極微量出現するとの報告があった。 本願発明は髄液中のPLAPだけでなく、AFP、β−HCGを超高感度免疫学的測定法で測定し、それぞれの測定値からジャーミノーマをより正確に判定できる方法を見つけ出すことができた。 1984年から1996の日本の脳腫瘍統計によると原発性脳腫瘍52196例中、胚細胞性腫瘍は1375例あったと報告されている。この内訳を図1に示した。ジャーミノーマ76%(1)、奇形腫7%(2)、悪性奇形腫6%(3)、胎児性癌5%(4)、卵黄嚢腫3%(5)、絨毛癌3%(6)のなどである。ジャーミノーマの発生頻度が76%と高く、また化学療法と放射線療法の併用療法によって10年生存率90%以上と高い完全緩解率を示すことから、ジャーミノーマが確実に診断できれば、手術や放射線照射による副作用を最小限にして、完治する可能性が非常に高くなるので、この検査法の重要性が注目される。 胚細胞性腫瘍を除く脳腫瘍および非腫瘍性中枢神経系疾患32例の髄液中のPLAP、AFP、β−HCGの測定値は、各々5pg/mL以下、0.4ng/mL以下、0.1IU.L以下を示した。ジャーミノーマ13例では、PLAPが30pg/mL以上、AFPが0.4ng/mL以下、β−HCGが1.0IU/L以下を示した。また非ジャーミノーマ4例では,PLAPが30pg/mL以下、AFPが488〜0.4ng/mL、β−HCGが1.0IU/L以下を示した。 表1および表2にジャーミノーマの判定基準を設定した。ジャーミノーマ症例ではこの基準によりほぼ100%正確に診断できた。 小児期に多発するジャーミノーマは、前述したように脳腫瘍の中でも放射線療法、化学療法に感受性が高く、これらの併用療法によって高い治癒率がえられる。本願発明の結果を利用して手術前診断ができれば、未発達な小児に対して開頭手術や放射線照射による副作用を避けて、内科的治療でほぼ完治できるということが最大の効果である。 また、その診断は早期になされなければならず、本願の検査結果はその他の検査に比し測定が簡便、迅速、かつ正確である点が特筆すべきである。 患者の立場に立って言えば、部位が頭部であることと、若年者の罹患が多いという点において、より悲観的になり勝ちであるが、手術をすることなく内科的に治癒できる腫瘍となれば安心と希望を与えることができる。 AFPとβ−HCGの測定は既に血漿または血清または尿検体による微量濃度測定法が存在している。この測定法でヒトの脳脊髄液検体を用いて測定した。 しかし、PLAPの測定においては0.005ng/mLいわゆる5pg/mL以下の超微量測定ができる測定法が必要であった。非特許文献2で本願発明者達が、酵素免疫測定法(EIA)での測定を報告した。本願発明の1実施例において、超微量のPLAPの測定にはEIA法より高感度の免疫学的化学発光法を応用して測定を実施した。既に免疫学的化学発光法およびアルカリ性フォスファターゼを化学発光基質(AMPPD)として用いる方法が参考文献特開2001−249079にある。本願が目的とする物質はヒトの胎盤型アルカリフォスファターゼ(PLAP)であるため、非特許文献2にある抗ヒトPLAPマウスモノクローナル抗体を用いてPLAPと反応させ前記AMPPDを基質として化学発光免疫測定法で高感度かつ特異的に測定することができた。 これら3項目の測定結果から、表1、表2に示すジャーミノーマの判定法を発明した。 最近の免疫化学的な自動分析装置では、1回のサンプリングで多項目1度に測定することが出来るようになっている。例えば富士レビオ株式会社のルミパルス−フォルテやベックマンコールター社のアクセス2などの装置に、ヒトの脳脊髄液中のPLAP、AFPおよびβ−hCGを同時測定する測定系を組み込むことは可能である。または、最近POCT型試験機器としてイムノクロマト法が普及しているが、PLAP、AFPおよびβ−HCGの3項目を同時測定できるように試薬を組み込むことも可能である。 ジャーミノーマの判定は、ヒトの脳脊髄液中のPLAPが31pg/mL以上、AFPが1ng/mL未満、β−HCGが1mIU/mL未満である場合とした。 逆にヒトの脳脊髄液中のPLAPが5pg/mL未満、AFPが1ng/mL未満、β−HCGが1mIU/mL未満の場合はジャーミノーマを否定できるとした。 非ジャーミノーマの場合は、ヒトの脳脊髄液中のPLAP、AFPおよびβ−HCGがそれぞれ不特定な値を示すが、PLAPが31pg/mL以上を示すことはないものとした。 実施例1〜3のカットオフ値については、PLAPが20pg/mL以上、AFPが0.5ng/mL未満、β−HCGが0.5mIU/mL未満と言うように判断を変化することも本願発明の延長線上である。 日本の脳腫瘍統計による胚細胞腫瘍の発生頻度 符号の説明 (1)ジャーミノーマ(2)奇形腫(3)悪性奇形腫(4)胎児性癌(5)卵黄嚢腫(6)絨毛癌 ヒト脳脊髄液中の胎盤型アルカリ性フォスファターゼの31pg/mL以上の出現とアルファフェトプロテインの1ng/mL未満およびβHCGの1mIU/mL未満の存在を測定することにより、ジャーミノーマを判定する方法 ジャーミノーマの判定のためヒト脳脊髄液中の胎盤型アルカリ性フォスファターゼの定量およびアルファフェトプロテインの定量およびβHCGの定量を免疫学的化学発光法または酵素免疫測定法で測定する請求項1のジャーミノーマを判定する方法 ヒト脳脊髄液中の胎盤型アルカリ性フォスファターゼの定量およびアルファフェトプロテインの定量およびβHCGの定量を、1回のサンプリングで同時に測定する事を特長とする請求項1のジャーミノーマを判定する方法 【課題】 小児期に多発するジャーミノーマは、脳腫瘍の中でも放射線療法、化学療法に感受性が高く、これらの併用療法によって10年生存率90%以上と高い完全緩解率が得られ、長期生存が可能である。このジャーミノーマを術前に特定できれば、内科的治療で治癒する可能性が高いため、ジャーミノーマの判定を簡便、かつ正確に行うための方法を提供した。【解決手段】 従来難しいと言われていた、ヒトの脳脊髄液中の微量のPLAPとAFPおよびβ−HCGをそれぞれ測定して、ある一定の基準に入ることでジャーミノーマと判定する。【選択図】図1


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