生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_皮膚粘着剤用剥離剤組成物
出願番号:2005355700
年次:2007
IPC分類:A61L 15/58,A61F 13/02,A61K 8/02,A61K 8/891,A61K 8/31,A61K 8/37,A61Q 19/00


特許情報キャッシュ

高貴 俊輔 JP 2007159604 公開特許公報(A) 20070628 2005355700 20051209 皮膚粘着剤用剥離剤組成物 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 599056437 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 古賀 哲次 100087413 永坂 友康 100111903 西山 雅也 100082898 高貴 俊輔 A61L 15/58 20060101AFI20070601BHJP A61F 13/02 20060101ALN20070601BHJP A61K 8/02 20060101ALN20070601BHJP A61K 8/891 20060101ALN20070601BHJP A61K 8/31 20060101ALN20070601BHJP A61K 8/37 20060101ALN20070601BHJP A61Q 19/00 20060101ALN20070601BHJP JPA61L15/06A61F13/02 310JA61F13/02 380A61K8/02A61K8/891A61K8/31A61K8/37A61Q19/00A61F13/02 350 13 OL 22 4C081 4C083 4C081AA03 4C081AA12 4C081BB04 4C081BC03 4C083AC031 4C083AC032 4C083AC421 4C083AC422 4C083AC441 4C083AD091 4C083AD092 4C083AD151 4C083AD152 4C083BB04 4C083CC07 本発明は皮膚粘着剤用剥離剤組成物に関する。本発明は、より詳細には、サージカルテープ、ドレッシングフィルムや、それらを利用した生体電極、対極板、その他の医療用センサー類の様な医療機器用の剥離剤及び該剥離剤を含む製品に関する。 サージカルテープやドレッシングフィルムなどの皮膚用粘着剤塗布物品は、皮膚に貼り付けて使用している間には接着力が十分強いことが望まれる。しかし、強い接着力を持つサージカルテープなどは剥離時に皮膚を損傷させ又は皮膚に刺激を与えるなどの問題があった。そのため、使用時には十分な接着力を有するが、使用後の剥離時には皮膚損傷や刺激なしに、皮膚から容易に剥離できることが望まれている。粘着剤塗布物品の剥離の際に接着力を低減させることができる剥離剤は知られており、現在幾つかの剥離剤が医療用途に提案されている。 特許文献1(特開昭56−38370号公報)は、揮発性メチルシロキサン溶剤類を皮膚上の粘着剤に対して塗布し、粘着剤を皮膚から除去する方法を開示している。揮発性メチルシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)などが挙げられている。しかしながら、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)のような低分子量メチルシロキサンは、非常に揮発性が高いため、 サージカルテープ等の粘着剤塗布物品が完全に剥離される前に、素早く蒸発し、乾燥してしまうため、剥離中に剥離強度(剥離するために必要な力)が増加し、それにより糊残りや皮膚損傷が生じる場合がある。揮発性メチルシロキサンの剥離効果はサージカルテープやドレッシングフィルムに利用されている粘着剤の種類に依存し、アクリル系粘着剤には剥離効果は十分でない。 特許文献2(特許第3510910号公報)は、エタノールやイソプロピルアルコールなどの沸点90℃以下のアルコール類、アセトンなどの有機溶剤と、RCOOR’(式中、R及びR’は少なくとも一方が炭素数11〜16であり、両アルキル基の合計炭素数は24以下である)の脂肪酸エステルを含む粘着テープ剥離剤組成物を記載している。脂肪酸エステルは皮膚の乾燥を防ぎ、湿潤状態を維持するとしている。しかし、エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトンは損傷皮膚を刺激する。通常、サージカルテープやドレッシングフィルムは傷、創や皮膚炎のような損傷された皮膚または粘膜の周辺に貼り付けられる。そのため、この種の剥離剤組成物を剥離剤として使用することは望ましくない。 また、オレンジオイルの主成分であるD−リモネン(1−メチル−4−イソプロペニル−1−シクロヘキセン)、鉱物油、その他の添加剤を使った剥離剤ナプキンが数社から供給されている。D−リモネン(1−メチル−4−イソプロペニル−1−シクロヘキセン)は粘着剤自体を強力に溶解させる。そのため、この種の製品は人工肛門用品の転写接着剤に適している。しかし、サージカルテープなどの基材フィルム上に粘着剤を塗布した物品の場合には、粘着剤層が溶解して基材フィルムから剥離し、皮膚に完全に転写され、そして、転写された粘着剤が作業者の指に強力に付着しやすい。また、多量のD−リモネンの匂いは非常に強い。これらの問題のために、作業者である患者、医者、看護師、介護者等がこの種の剥離剤製品を扱うのは快適でなくかつ容易でない。特開昭56−38370号公報特許第3510910号公報 上述のとおり、皮膚に接着されたサージカルテープやドレッシングフィルムなどの皮膚用粘着剤塗布物品を皮膚損傷や刺激なしに低剥離力で剥離させることができる剥離剤組成物を提供することが望まれている。 また、粘着剤塗布物品の粘着剤層自体を過度に溶解させずに、また、皮膚に粘着剤を残留させずに、サージカルテープやドレッシングフィルムを容易に剥離することができる剥離剤組成物を提供することが望まれている。 本発明の1つの態様によると、85〜99.8wt.%の沸点95℃以上170℃未満のメチルシロキサン溶剤、0.1〜5wt.%の沸点170℃以上の油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤及び0.1〜10wt.%の非イオン性界面活性剤を含む、皮膚粘着剤用剥離剤組成物が提供される。 なお、本明細書中において、沸点が170℃未満のメチルシロキサン溶剤を「揮発性メチルシロキサン溶剤」、沸点が170℃以上の油剤を「難揮発性油剤」又は「不揮発性油剤」などと呼ぶ。 本発明の剥離剤組成物は、スプレーまたはナプキン等に含ませて拭き取る場合に、損傷皮膚に刺激が少なく、剥離力が強すぎず、再接着しにくく、低臭気である等の利点を有する。 また、本発明の剥離剤組成物は、粘着剤に対する適度な溶解力を有するので、皮膚上への糊残りを起こさずに、サージカルテープやドレッシングフィルム自体を剥離させることができる。 本発明の剥離剤組成物は、アクリル系粘着剤、合成ゴムをベースとする粘着剤、その他の粘着剤のような多くの種類の粘着剤に対して、選択性なしに十分な剥離効果を発揮することができる。 したがって、本発明の剥離剤組成物を含む製品は、サージカルテープやドレッシングフィルムだけでなく、人工肛門用品の転写接着剤、生体電極、対極板といった医療部材、粘着剤を使ったその他の医療物品に対しても幅広く利用できる。 本発明の剥離剤組成物は、沸点95℃以上170℃以下の揮発性メチルシロキサン溶剤と、沸点170℃以上の難揮発性の油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤と、非イオン性界面活性剤を含む。本発明の剥離剤組成物の主成分は、沸点95℃以上170℃以下のメチルシロキサン溶剤である。この種の溶剤は損傷皮膚に対して、刺激が無いため、剥離剤組成物の主溶剤としては適切である。また、メチルシロキサン溶剤は、好ましくは、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、オクタメチルトリシロキサン(OMTS)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(HMCTS)及びそれらの混合物から選ばれ、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)は最も適切である。これらのメチルシロキサン溶剤は、例えば日本の信越化学工業社、ダウコーニング社やその他のシリコーン製造会社から市販されている。揮発性メチルシロキサン溶剤は本発明の剥離剤組成物の重量を基準として85〜99.8wt.%の量で含まれる。 ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の様な低分子メチルシロキサンは、それを単独で剥離剤として用いる場合、粘着剤を良く溶解するが、非常に揮発性が高いため、サージカルテープなどの粘着剤塗布物品が完全に剥離される前に、素早く乾燥して、粘着剤塗布物品が再付着されてしまう。そのため、剥離作業中に剥離に必要な強度、すなわち剥離強度が増加し、糊残りや皮膚損傷の問題があった。本発明では、沸点が170℃以上の難揮発性の油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤を少量で添加することで、剥離剤組成物の乾燥を抑制でき、剥離強度の途中増加、糊残りや皮膚損傷の問題が解消される。 難揮発性の油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤は揮発性メチルシロキサン溶剤を助ける働きをし、それ自体が粘着剤を軟化、溶解させる。このような難揮発性油剤は、本発明の剥離剤組成物の重量を基準として、0.1〜5wt.%の量で含まれる。難揮発性油剤がこれより多すぎると、皮膚がベトベトになり、操作性が悪くなるため、上記の範囲の少量で添加される。このような場合に、剥離剤組成物の主成分であるメチルシロキサン溶剤が揮発した後でも、難揮発性油剤の薄層が粘着剤と皮膚界面に留まり、粘着剤の軟化状態を維持させ、粘着剤の再接着を防止できる。 油相溶性と粘着剤溶解性を持つ難揮発性の油剤としては、テルペン類、脂肪族化合物、脂肪酸エステル、ある種の脂肪酸が利用できる。これらのうち、粘着剤を軟化、溶解させる効果が高いものとしてテルペン類、脂肪族化合物がある。テルペン類はオレンジオイルやテレピン油などがあるが、皮膚刺激性などの安全性の点から最も適する難揮発性油剤のテルペン類はオレンジオイルの主成分であるD−リモネンである。少量のD−リモネン(1−メチル−4−イソプロペニル−1−シクロヘキセン) をメチルシロキサン溶剤、特にヘキサメチルジシロキサン(HMDS)に添加されることが好ましい。D−リモネンはオレンジなどの柑橘類から抽出される天然洗浄剤である。D−リモネンは、例えば日本のヤスハラケミカル社やUSAのフロリダケミカル社から市販されている。D−リモネンは粘着剤に対して強い溶解力と強い臭気を有する。このため、大量のD−リモネンをメチルシロキサン溶剤に添加した場合、剥離剤組成物は、粘着剤自体を良く溶解するので、サージカルテープにおいて粘着剤層が基材フィルムから剥離して皮膚上に完全に転写され、皮膚上に糊残りとして残ってしまう。剥離力を低下させるための十分であるが、粘着剤自体を過度に溶解しない適切な添加範囲は、剥離剤組成物の重量を基準(100wt.%)として0.1wt.%〜5wt.%であり、最も適切な範囲は1wt.% 〜4.5wt. %である。5wt.%を超える添加は、糊残りや強い臭気といった幾つかの困難を作り出し、そのことは患者、医者、看護師、介護者がこの種の製品を扱うには快適ではなくなってしまう。D−リモネンを難揮発性油剤として用いる場合には、本発明の剥離剤組成物中において、D−リモネンは室温では安定に溶解しているが、50℃以上の温度ではメチルシロキサン溶剤から分離しやすくなる傾向がある。 油相溶性と粘着剤溶解性を持つ難揮発性の油剤の他の好ましい例として脂肪族化合物が挙げられる。脂肪族化合物としては植物性脂肪の使用が好ましく、脂肪酸トリグリセリド類から選択されるものが、粘着剤を軟化、溶解させる効果が高く、かつ、メチルシロキサン溶剤に配合させた場合、50℃においても安定に存在する。粘着剤を軟化、溶解させる効果を持ち、生体に安全な脂肪酸トリグリセリド類として、例えば、日本の花王からココナードの商標で販売されている、トリカプリリン(Tricaprylin) (トリカプリル酸グリセリンエステル)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリンエステル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸)グリセリンエステル等がある。例えば、最も適する難揮発性油剤のための脂肪酸トリグリセリドは日本の花王からココナード RKの商標で販売されているトリカプリリン(Tricaprylin)である。適切な添加範囲は0.1 wt.% 〜5wt.%で、最も適切な範囲は1wt.% 〜4.5wt. %である。5wt.%を超える量での添加は、糊残りや皮膚に強いベタツキを与えるといった幾つかの困難を作り出してしまう。これらの素材は無臭であるため、患者、医者、看護師、介護者等の作業者は快適にこの種の製品を扱うことができる。 なお、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、デカメチルシクロペンタシロキサン(DMCS)の様な沸点170℃以上の難揮発性のメチルシロキサン類は、本発明で用いる難揮発性の油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤としては適切でない。というのは、揮発性メチルシロキサン溶剤との相溶性はよいが、粘着剤溶解性が低く、剥離力は改善されず、特に、ある種のアクリル系粘着剤に対しては十分な性能が発揮されないからである。 本発明の剥離剤組成物は、メチルシロキサン溶剤及び油相溶性と粘着剤溶解性を持つ難揮発性油剤の他に、非イオン性界面活性剤を、剥離剤組成物の重量を基準として0.1〜10wt.%の量で含む。難揮発性油剤の添加により、ある粘着剤に対しては剥離の際の剥離力が低下するが、その他の粘着剤に対しては、剥離力が剥離開始時は低いが、 完全に剥がされる前に剥離力が上昇してしまう。したがって、難揮発性油剤の添加だけでは、メチルシロキサン溶剤、特にヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の乾燥を十分には抑制できず、また再接着を防止できない。剥離剤組成物中に非イオン性界面活性剤を含ませることにより、剥離剤組成物の乾燥速度を遅延させ、再接着を防止することができる。このことは、理論に拘束されるつもりはないが、皮膚上にある粘着剤に対して、本発明の剥離剤組成物を塗布すると、難揮発性油剤を含む剥離性バリアー層が粘着剤と皮膚の間に素早く形成されるためであると考えられる。非イオン性界面活性剤の添加は、皮膚と粘着剤表面に対する剥離剤組成物の濡れ性を改善させ、さらに、難揮発性油剤と界面活性剤からなる剥離性バリアー層が粘着剤と皮膚の間に素早く形成させられるものと思われる。この剥離性バリアー層は、メチルシロキサン溶剤、特に、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の乾燥速度を遅延させ、粘着剤と皮膚の再接着を阻害する。 剥離剤組成物は皮膚に使用されるので、利用される界面活性剤は皮膚に対して安全である必要がある。そのため、本発明の剥離剤組成物では非イオン性界面活性剤を使用する。適切な非イオン性界面活性剤としては、ソルビタンエステル型界面活性剤(ICI社のSpan シリーズ)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル型界面活性剤(ICI社のTween シリーズ)、ポリエトキシレート化アルキルフェノール類(TritonX35、X102等)、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル類(ポリエチレングリコール400モノラウエート、ポリエチレングリコール400モノオレート等)が利用できる。界面活性剤の適切な添加範囲は、0.1〜10wt.%である。生体適合性を考慮すると、添加量が少ないことが好ましい。より好ましい範囲は0.5〜2wt.%である。非イオン性界面活性剤のうち、親水度が高いポリオキシエチレンソルビタンエステルを添加した場合、混合物は不透明な液体となり、長期間の経過後には界面活性剤が分離してしまう傾向がある。そのため、使用前には再度振る必要がある。難揮発性油剤とポリオキシエチレンソルビタンエステルの剥離性バリアー層は、親水性表面への親和力が強いので、主に皮膚表面に形成され、皮膚表面に容易に残る。 非イオン性界面活性剤のうち疎水度が高いある種のソルビタンエステルを添加した場合、混合物は透明溶液となり、長期間にわたって界面活性剤が分離することは無い。難揮発性油剤とソルビタンエステルのバリアー層は、疎水性表面への親和力が強いので、主に粘着剤表面に形成され、粘着剤表面に容易に残る。ソルビタンエステルの限定しない例としてUSA ICI社から市販されているスパン(Span)20, スパン(Span)40, スパン(Span)60, スパン(Span)65, スパン(Span) 80, スパン(Span)85がある。透明溶液が形成される好ましい界面活性剤は、ソルビタンモノオレエート(スパン(Span)80)とソルビタントリオレエート(スパン(Span)85)である。これらは日本では化粧品原料と食品添加物として登録されているので、生体適合性があり、安全である。最も好ましい界面活性剤は、ソルビタンモノオレエート(スパン(Span)80)である。スパン(Span)80 を利用した剥離剤組成物は、多くの種類のサージカルテープに対して十分低い剥離力を有している。 本発明の剥離剤組成物は液状であるため、専用容器に入れ、スプレーすることで、あるいは滴下することで使用できる。例えばスプレーとしては、液化石油ガス(LPG)などの噴射剤を使用したエアゾールスプレー缶や、ガスを使用しないハンドスプレーボトルなどで適用することができる。また、滴下は、スクイズボトル、ハンドポンプ、ドロッパー容器を使用できる。また、液供給口にローラが付いたロールオン塗布容器や、液供給口に発砲ラバーを付けた発泡ラバー塗布容器等よって、サージカルテープやドレッシングフィルムが貼られた患部に直接塗布してもよい。さらに、剥離剤組成物を浸透させたナプキンまたはワイプによっても適用することができる。 このように、製品としての形態としては、容器に該剥離組成物を入れた態様か、ナプキン、またはワイプに剥離組成物を含浸させた態様かいずれをも採用することができるが、コスト及び環境に対する影響の観点から、ガスを使用しない塗布容器等である。 本発明の剥離剤組成物は、多くの種類のサージカルテープ類やドレッシングフィルム類、さらに、ある種の粘着剤を使用した医療部材に対して適用することができる。本発明の剥離剤組成物で剥離を行なうことができる粘着剤は、たとえば、アクリル系粘着剤、合成ゴムをベースとする粘着剤、シリコーン粘着剤、その他の粘着剤のような多くの種類の粘着剤であることができる。 本発明は、別の態様によると、皮膚粘着剤の剥離方法を提供する。本発明は、例えば、剥離剤組成物を、皮膚粘着剤に対して塗布し、次いで粘着剤を剥離することを含む、皮膚粘着剤の皮膚からの剥離方法を提供する。かかる、塗布は、剥離剤組成物のスプレーもしくは滴下、又は、剥離剤組成物が含浸されたナプキンもしくはワイプからの適用によることができる。 不織布基材や多孔性基材を利用したサージカルテープ類では、剥離剤の浸透が容易で速いため、剥離剤組成物を滴下、塗布または、スプレーすることで、容易に剥離できる。不織布基材や多孔性基材を利用しないサージカルテープ類、ドレシングフィルムやその他の医療物品に対しては、まず、皮膚上のサージカルテープ類やその他の製品の端部を引き剥がすための処置を行うことが望ましい。端部の剥離の後に、サージカルテープ類やその他の製品は、剥離された新しい端部に連続的に滴下または、スプレー等の塗布を続けることで、剥離させることができる。この様な処置により、多くの種類のサージカルテープ類、ドレッシングフィルム類、粘着剤を使用した医療物品は低い剥離力で、皮膚に刺激と損傷なしに、極めて容易に剥離させることができる。 以下の実施例及び比較例において、剥離剤組成物を幾つかの項目について評価した。1.評価項目1.1.臭気及び外観 透明ボトルに入れた剥離剤組成物(液体)の分離の有無及び色を観察し、ボトルを開けたときに感じる臭気を記録した。1.2.皮膚の評価 ポリエステル製スパンレース不織布と溶剤塗布により塗布されたアクリル系粘着剤からなる1 inch(25.4mm)幅のサージカルテープであるメディポア(Medipore (商品名)(住友3M社製))を被験者の前腕に貼り付け、該サージカルテープの周囲に試験対象となる剥離剤組成物をスプレーまたはワイプで塗布した。サージカルテープを30秒以内に剥離角180度、6 inch/min(2.54mm/sec)の剥離速度の条件で剥離試験機により剥離し、皮膚細胞の脱離を評価した。なお、皮膚細胞の脱離は1wt.% ジェンティアンバイオレット(Gentian Violet)と 0.5wt.% ブリリアントグリーン(Brilliant Green)水溶液で、剥離したサージカルテープの粘着剤表面に貼りついている脱離皮膚細胞を染色して、顕微鏡で観察して評価した。さらに、紙ヤスリで擦って形成した損傷皮膚に対して剥離剤組成物を接触させて、剥離剤組成物の損傷皮膚に対する刺激についても評価した。1.3.剥離剤組成物の剥離性能1.3.1.フェノール樹脂製試験板に対する剥離力及び糊残り サージカルテープを被着体に貼り付け、該テープを剥離する際の剥離剤組成物の性能を調べた。まず、サージカルテープをフェノール樹脂製試験板に貼り付け、その後、30秒以内に剥離を行なった。剥離は、剥離角180度、6 inch/min(2.54mm/sec)の剥離速度の条件で剥離試験機により行なった。得られた剥離力を「フェノール板での初期剥離力(剥離剤なし)」と呼ぶ。次に、サージカルテープをフェノール樹脂製試験板に貼り付け、その後、30秒以内に剥離を行なったが、剥離の前に、サージカルテープの周囲に試験対象となる剥離剤組成物をスプレーまたはワイプで塗布した。得られた剥離力を「フェノール板での初期剥離力(剥離剤あり)」と呼ぶ。また、剥離時に糊残りがあるか否かも観察した。 サージカルテープとしては、ポリエステル製スパンレース不織布と溶剤塗布により塗布されたアクリル系粘着剤からなる1 inch(25.4mm)幅のサージカルテープであるメディポア(Medipore (商品名)(住友3M社製))、及び、レーヨンとポリエステル繊維からなる不織布基材と、ホットメルト塗布によるアクリル系粘着剤からなる1 inch(25.4mm)幅のサージカルテープであるトランスポアホワイト(Transpore White (商品名)(住友3M社製))を用いた。 なお、皮膚への接着力は個人差、貼り付け部位の差、貼り付け時間の差等、誤差要因が大きいため、客観的に効果の差を把握するために、標準板としてフェノール樹脂製試験板を用いた初期剥離力で評価を行なっている。剥離剤組成物の効果は、皮膚に対する剥離力だけでなく、フェノール樹脂製試験板での効果が確認されれば、剥離信頼性が高いものと評価される。1.3.2.皮膚に対する剥離力 上述の「1.3.1.フェノール樹脂製試験板に対する剥離力」と同様に試験を行なったが、フェノール樹脂製試験板の代わりに、人の前腕の皮膚を用いた。得られた剥離力を、剥離剤組成物を用いない場合に「皮膚での初期剥離力(剥離剤なし)」、剥離剤組成物を用いた場合に「皮膚での初期剥離力(剥離剤あり)」と呼ぶ。また、剥離時に糊残りがあるか否かも観察した。 また、サージカルテープを皮膚に貼り付けて、その後、2時間放置した後に、同様に剥離力を測定した。得られた剥離力を、剥離剤組成物を用いない場合に「皮膚での2時間後剥離力(剥離剤なし)」、剥離剤組成物を用いた場合に「皮膚での2時間後剥離力(剥離剤あり)」と呼ぶ。また、剥離時に糊残りがあるか否かも観察した。2.評価 剥離力試験に望まれる性能は、接着中は皮膚に100g/inch(39g/cm)以上でしっかり接着でき、剥離処置後は、皮膚刺激、皮膚反応、皮膚損傷、糊残りを起こさずに、より低い剥離力、好ましくは50g/inch(20g/cm)以下で剥離できることである。比較例A〜C 比較例として、幾つかの剥離剤製品を評価した。アルコール類を使った剥離剤製品として、エチルアルコールとイソプロピルアルコールを主成分としたリムーバースプレー(比較例A:商品A)、イソプロピルアルコールに保湿剤、鉱物油等を添加した剥離ワイプ(比較例B:商品B)、さらにD−リモネン、鉱物油及びその他の添加剤からなる剥離ワイプ(比較例C:商品C)を評価した。表1に評価結果を示す。 エチルアルコールとイソプロピルアルコールを主成分としたリムーバースプレー(商品A)は、通常、スポーツテープに用いられる。剥離剤スプレーはトランスポアホワイト(Transpore White) 以外に対して有効であった。2時間後は多くの糊残りを生じていた。また、この剥離剤はアルコールを含んでいるので、損傷皮膚には刺激があることがあった。 イソプロピルアルコールに保湿剤、鉱物油等を添加した剥離ワイプ(商品B)は、通常、サージカルテープやドレシングフィルムに用いられる。剥離剤はイソパラフィン、プロピルアルコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、アロエ抽出物と香料からなる混合物である。この剥離液はメディポア(Medipore)に対して粘着剤を溶解させる強力な効果を持っていた。そのため、不織布基材は粘着剤から剥離し、糊残りとして、ベタベタの粘着剤が多量に皮膚に残ってしまった。皮膚上の糊残りはワイプで拭き取れるが、皮膚にはタックがありオイル状となり、さらに強い臭気のため、処置は快適ではなかった。剥離剤はイソプロピルアルコールを含んでいるため、損傷皮膚には少し刺激があった。また、トランスポアホワイト(Transpore White) に対する剥離効果も十分でなかった。剥離処置後の接着力は少し高く、初期において多くの糊残りを生じた。 D−リモネン、鉱物油及びその他の添加剤を含む剥離ワイプ(商品C)はメディポア(Medipore)に対して粘着剤を溶解させる強力な効果を持っていた。そのため、不織布基材は粘着剤から剥離し、糊残りとして、ベタベタの粘着剤が多量に皮膚に残ってしまった。皮膚上の糊残りはワイプで拭き取れるが、皮膚にはタックがありオイル状となり、さらに強い臭気のため、処置は快適ではなかった。損傷皮膚に対する刺激はないが、トランスポアホワイト(Transpore White) に対する剥離効果は十分でなかった。剥離処置後の接着力は少し高かった。 粘着剤が皮膚に転写されずに剥離された粘着剤表面に接触していた皮膚から脱離した少しの皮膚細胞が全てのサージカルテープ片から観察された。比較例D〜G メチルシロキサン類及びそれらの混合物からなる剥離剤組成物を評価した。各種剥離剤組成物はハンドスプレーによりサージカルテープの周囲に塗布した。評価は上述の評価手順により行なった。表2に結果を示す。 なお、表中、HMDSはヘキサメチルジシロキサンであり、OMTSはオクタメチルトリシロキサンであり、DMCSはデカメチルシクロペンタシロキサンである。配合比は重量基準である。HMDS100wt%の比較例Dは、メディポア(Medipore)には剥離効果があったが、トランスポアホワイト(Transpore White)には剥離効果がなかった。HMDSの乾燥速度が速すぎて、HMDSが乾燥する前に剥離することが出来ないためのようであった。皮膚と粘着剤層の再接着により、剥離力は上昇し、糊残りを生じてしまった。 HMDSの速い乾燥を抑制するために、沸点が210℃のデカメチルシクロペンタシロキサン(DMCS)を5wt.%HMDSに添加した比較例Eでは、かえって、DMCSの添加は性能を悪化させてしまった。DMCSの添加は、乾燥速度を抑制しなかった。 沸点が153℃のオクタメチルトリシロキサン(OMTS)100wt.%の比較例Fは、皮膚に対する剥離力は低く押さえられているが、トランスポアホワイト(Transpore White)に対するフェノール樹脂板からの剥離力は非常に高くなり、剥離力の安定性及び信頼性に問題を生じた。比較例Fは、粘着剤に対する溶解効果が十分でないため、平板に密着している場合、剥離剤の浸透が悪いため、増加してしまった。粘着剤に対する溶解効果を改善するために、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)7.75wt.%をオクタメチルトリシロキサン(OMTS)に添加して比較例Gとしたが、改善は少なかった。比較例H〜K メチルシロキサン類だけでは、皮膚および標準フェノール樹脂板からの剥離力性能を満足できないため、日本のヤスハラケミカル社のD−リモネンを特定量で難揮発性油剤として、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)に添加し、比較例H〜Jとした。また、D−リモネンと界面活性剤との混合物を比較例Kとした。各剥離剤をハンドスプレーにより、サージカルテープ周辺に塗布した。評価は上記評価手順により行なった。表3に結果を示す。 D−リモネンの大量添加は粘着剤自体を溶解させるため、糊残りと指にベタベタの粘着剤が付いてしまうなどの問題を生じた。D−リモネンの適切範囲は1から 5wt.%であった。しかし、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の乾燥速度は速すぎて、D−リモネンはヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の乾燥を抑制できなかった。10wt.%のツイーン(Tween)80 (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート) を添加したD−リモネンはメディアポア(Medipore)の粘着剤層を完全に溶解させたが、トランスポアホワイト(Transpore White)の粘着剤層は溶解させなかった。実施例1及び2 十分な剥離剤の効果を得るために、本発明の剥離剤組成物である、メチルシロキサン溶剤、難揮発性油剤及び非イオン性界面活性剤の混合物を製造した。難揮発性油剤としてD−リモネン、非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンソルビタンエステル類であるツイーン(Tween)80を用いた。表4は幾つかの試作剥離液の配合と評価結果を示した。各剥離剤はハンドスプレーによりサージカルテープ周辺に塗布した。評価手順は上述の比較例と同様である。 ツイーン(Tween)80 (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)を添加した場合、混合液は白色不透明液となった。しかし、各混合液は安定でなく、長期保存により、界面活性剤が分離した。そのため、使用前には再度振り混ぜ、白色不透明液を得る必要があった。4.5wt.%のD−リモネンと0.5wt.% ツイーン(Tween)80 (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)のヘキサメチルジシロキサン(HMDS)への添加(実施例1)はトランスポアホワイト(Transpore White)の剥離剤としても十分に効果的であった。シロキサン溶剤をヘキサメチルジシロキサン(HMDS)から オクタメチルトリシロキサン(OMTS)に変更した例(実施例2)では粘着剤に対して十分な溶解効果が得られず、剥離信頼性が悪化した。実施例3〜5 安定で透明かつトランスポアホワイト(Transpore White)に対しても、さらに良い剥離効果を得る剥離剤組成物を開発した。HLB (親水性−疎水性バランス)が小さいソルビタンエステル型界面活性剤Span類をヘキサメチルジシロキサン(HMDS)及びD−リモネンの混合物に添加した。ソルビタンエステル型界面活性剤としてスパン(Span)20 (ソルビタンモノラウレート), スパン(Span)60(ソルビタンモノステアレート), スパン(Span)65 (ソルビタントリステアレート)を添加した剥離液は不透明液になった。スパン(Span)20 (ソルビタンモノラウレート)とスパン(Span)60(ソルビタンモノステアレート)を添加した剥離液は、容易に分離してしまったが、スパン(Span)65 (ソルビタントリステアレート)を添加した剥離液は、長時間安定であった。さらに、スパン(Span)80 (ソルビタンモノオレエート) とスパン(Span)85 (ソルビタントリオレエート) を添加した剥離液は、透明溶液となり、長期間安定であった。表5に幾つかの試作剥離剤組成物の配合と評価結果を示した。各剥離液はハンドスプレーによりサージカルテープ周辺に塗布された。評価方法は上述の比較例と同様である。 95wt.% のHMDS、4.5wt.% のD−リモネン、0.5wt.%の スパン(Span)80 (ソルビタンモノオレエート)の混合物である実施例3は、メディアポア(Medipore)とトランスポアホワイト(Transpore White)に対して、皮膚だけでなく、標準フェノール樹脂板に対しても優れた剥離効果を持っていた。剥離処置後の皮膚での剥離力は、全ての条件で50g/inch(20g/cm)以下であった。糊残りが無く、損傷皮膚への刺激も無く、皮膚細胞の脱離も少なかった。さらに、混合物の臭気も強くなく、芳香剤の心地よいレベルであった。界面活性剤をスパン(Span)85 (ソルビタントリオレエート)に変更した実施例4と比較すると、実施例3は剥離剤組成物の浸透性がより良好であった。また、シロキサン溶剤をヘキサメチルジシロキサン(HMDS)からオクタメチルトリシロキサン(OMTS)に変更した実施例5と比較すると、実施例3は粘着剤に対して十分な溶解効果があり、標準フェノール樹脂板での剥離力も優れていた。実施例6 実施例3を異なる基材類と粘着剤類から構成される多くの種類のサージカルテープに対して試験した。表6にサージカルテープと評価結果を示し、サージカルテープは全て3Mカンパニー社製の製品であり、商品名で示している。使用された粘着剤の多くは、アクリル系であるが、各粘着剤は異なる配合、製造方法、塗布方法で製造された種々の粘着剤である。皮膚に接着させた各サージカルテープが実施例3の剥離剤組成物のハンドスプレー塗布で瞬間的に剥離可能となるかを確認するために、サージカルテープの一端を部分的に剥離し、50gの錘をクリップで粘着剤面が裏返り上面になるように吊り下げた。 不織布基材や多孔性基材を利用したサージカルテープでは剥離剤組成物の浸透が容易で速いため、剥離剤組成物のハンドスプレーにより容易に剥離できた。不織布基材や多孔性基材を利用しないサージカルテープ類に対しては、剥離スプレーを皮膚上のサージカルテープ類の端部に対して行なった。サージカルテープ類は剥離された新しい端部に連続的にスプレーを続けることで、50gの錘の吊り下げで剥離させることができた。剥離処置前は全ての サージカルテープ類は50gの錘の吊り下げでは皮膚より剥離することはできなかった。 ハンドスプレー容器に入れた実施例3の剥離剤組成物をスプレーすることで、試験された全てのサージカルテープを全く低い剥離力で、皮膚に対して刺激も損傷もなく、全く容易に瞬間的に剥離することができた。剥離された粘着剤層の表面に貼りついている脱離された皮膚細胞のレベルはサージカルテープの種類にやや依存したが、未処理に比べて、脱離された皮膚細胞レベルは少なかった。実施例7〜9 その他の難揮発性油剤として、日本の花王社からココナード RKとして市販されている、脂肪酸トリグリセリドであるトリカプリリン(Tricaprylin)を、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)又はオクタメチルトリシロキサン(OMTS)とスパン(Span)80の混合液に混ぜ合わせた。表7に実施例7〜9の配合と評価結果を示した。剥離剤組成物は透明で安定な液体であった。剥離剤組成物はハンドスプレーによりサージカルテープ周辺に塗布した。評価方法は上述の比較例と同様である。 混合液は透明な溶液となり、長期間分離することは無かった。剥離剤組成物は剥離処置後、低い剥離力となり、D−リモネンを利用した剥離剤とほぼ同等の特性を有していた。この剥離剤組成物は、臭いが殆どなく、処置が快適であった。剥離処置後、ハンドスプレーした残留物はティッシュで軽く拭き取ることで、少々の粘着剤の残留物も除去されるためベタツキもなく、快適であったまた、シロキサン溶剤をヘキサメチルジシロキサン(HMDS)からオクタメチルトリシロキサン(OMTS)に変更した実施例9と比較すると、実施例7は粘着剤に対して十分な溶解効果があり、標準フェノール樹脂板での剥離力も優れていた。実施例10 実施例8を異なる基材類と粘着剤類から構成される多くの種類のサージカルテープに対して試験した。表8にサージカルテープと評価結果を示し、サージカルテープは全て3Mカンパニー社製の製品であり、商品名で示している。使用された粘着剤の多くは、アクリル系であるが、各粘着剤は異なる配合、製造方法、塗布方法で製造された種々の粘着剤である。皮膚に接着させた各サージカルテープが実施例8の剥離剤組成物のハンドスプレー塗布で瞬間的に剥離可能となるかを確認するために、サージカルテープの一端を部分的に剥離し、50gの錘をクリップで粘着剤面が裏返り上面になるように吊り下げた。 不織布基材や多孔性基材を利用したサージカルテープでは剥離剤組成物の浸透が容易で速いため、剥離剤組成物のスプレーにより容易に剥離できた。不織布基材や多孔性基材を利用しないサージカルテープ類に対しては、剥離スプレーを皮膚上のサージカルテープ類の端部に対して行なった。サージカルテープ類は剥離された新しい端部に連続的にスプレーを続けることで、50gの錘の吊り下げで剥離させることができた。剥離処置前は全ての サージカルテープ類は50gの錘の吊り下げでは皮膚より剥離することはできなかった。 ハンドスプレー容器に入れた実施例8の剥離剤組成物をスプレーすることで、試験された全てのサージカルテープを全く低い剥離力で、皮膚に対して刺激も損傷もなく、全く容易に瞬間的に剥離することができた。剥離された粘着剤層の表面に貼りついている脱離された皮膚細胞のレベルはサージカルテープの種類にやや依存したが、未処理に比べて、脱離された皮膚細胞レベルは少なかった。 85〜99.8wt.%の沸点95℃以上170℃未満のメチルシロキサン溶剤と、 0.1〜5wt.%の沸点170℃以上の、油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤と、 0.1〜10wt.%の非イオン性界面活性剤とを含む、皮膚粘着剤用剥離剤組成物。 前記メチルシロキサン溶剤は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、オクタメチルトリシロキサン(OMTS)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(HMCTS)からなる群より選ばれる少なくとも一以上の溶剤である、請求項1記載の剥離剤組成物。 前記油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤は、テルペン類、脂肪族化合物及びそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1又は2記載の剥離剤組成物。 前記油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤は、D−リモネンを含む、請求項3記載の剥離剤組成物。 前記油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤は、脂肪酸トリグリセリドを含む、請求項3記載の剥離剤組成物。 前記脂肪酸トリグリセリドは、トリカプリル酸グリセリンエステル(トリカプリリン)である、請求項5記載の剥離剤組成物。 前記非イオン性界面活性剤はソルビタンエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルからなる群より選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項記載の剥離剤組成物。 前記ソルビタンエステルは、ソルビタンモノオレエート及びソルビタントリオレエートからなる群より選ばれる、請求項7記載の剥離剤組成物。 皮膚粘着剤はアクリル系粘着剤である、請求項1〜8のいずれか1項記載の剥離剤組成物。 請求項1〜9のいずれか1項記載の剥離剤組成物と、 前記剥離剤組成物が入れられた、容器とを有する皮膚粘着剤用剥離製品。 請求項1〜9のいずれか1項記載の剥離剤組成物と、 前記剥離剤組成物が含浸された、ナプキン又はワイプとを有する皮膚粘着剤用剥離製品。 請求項1〜9のいずれか1項記載の剥離剤組成物を、皮膚粘着剤に対して塗布し、次いで粘着剤を剥離することを含む、皮膚粘着剤の皮膚からの剥離方法。 前記塗布は、剥離剤組成物のスプレーもしくは滴下、又は、剥離剤組成物が含浸されたナプキンもしくはワイプからの適用による、請求項12記載の剥離方法。 【課題】 皮膚損傷や刺激なしに低剥離力で、かつ、皮膚に粘着剤を残留させずに、サージカルテープやドレッシングフィルムを剥離させることができる剥離剤組成物を提供する。【解決手段】 85〜99.8wt.%の沸点95℃以上170℃未満のメチルシロキサン溶剤、0.1〜5wt.%の沸点170℃以上の油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤及び0.1〜10wt.%の非イオン性界面活性剤を含む、皮膚粘着剤用剥離剤組成物。【選択図】 なし


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特許公報(B2)_皮膚粘着剤用剥離剤組成物

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_皮膚粘着剤用剥離剤組成物
出願番号:2005355700
年次:2012
IPC分類:A61L 15/58,A61F 13/02,A61K 8/891,A61K 8/37,A61Q 19/00


特許情報キャッシュ

高貴 俊輔 JP 5005916 特許公報(B2) 20120601 2005355700 20051209 皮膚粘着剤用剥離剤組成物 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 505005049 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 古賀 哲次 100087413 永坂 友康 100111903 西山 雅也 100082898 高貴 俊輔 20120822 A61L 15/58 20060101AFI20120802BHJP A61F 13/02 20060101ALN20120802BHJP A61K 8/891 20060101ALN20120802BHJP A61K 8/37 20060101ALN20120802BHJP A61Q 19/00 20060101ALN20120802BHJP JPA61L15/06A61F13/02 380A61K8/891A61K8/37A61Q19/00 A61L 15/58 A61F 13/02 A61K 8/37 A61K 8/891 A61Q 19/00 特表2002−536397(JP,A) 特開昭56−038370(JP,A) 特開2004−331927(JP,A) 4 2007159604 20070628 21 20081208 馬場 亮人 本発明は皮膚粘着剤用剥離剤組成物に関する。本発明は、より詳細には、サージカルテープ、ドレッシングフィルムや、それらを利用した生体電極、対極板、その他の医療用センサー類の様な医療機器用の剥離剤及び該剥離剤を含む製品に関する。 サージカルテープやドレッシングフィルムなどの皮膚用粘着剤塗布物品は、皮膚に貼り付けて使用している間には接着力が十分強いことが望まれる。しかし、強い接着力を持つサージカルテープなどは剥離時に皮膚を損傷させ又は皮膚に刺激を与えるなどの問題があった。そのため、使用時には十分な接着力を有するが、使用後の剥離時には皮膚損傷や刺激なしに、皮膚から容易に剥離できることが望まれている。粘着剤塗布物品の剥離の際に接着力を低減させることができる剥離剤は知られており、現在幾つかの剥離剤が医療用途に提案されている。 特許文献1(特開昭56−38370号公報)は、揮発性メチルシロキサン溶剤類を皮膚上の粘着剤に対して塗布し、粘着剤を皮膚から除去する方法を開示している。揮発性メチルシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)などが挙げられている。しかしながら、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)のような低分子量メチルシロキサンは、非常に揮発性が高いため、 サージカルテープ等の粘着剤塗布物品が完全に剥離される前に、素早く蒸発し、乾燥してしまうため、剥離中に剥離強度(剥離するために必要な力)が増加し、それにより糊残りや皮膚損傷が生じる場合がある。揮発性メチルシロキサンの剥離効果はサージカルテープやドレッシングフィルムに利用されている粘着剤の種類に依存し、アクリル系粘着剤には剥離効果は十分でない。 特許文献2(特許第3510910号公報)は、エタノールやイソプロピルアルコールなどの沸点90℃以下のアルコール類、アセトンなどの有機溶剤と、RCOOR’(式中、R及びR’は少なくとも一方が炭素数11〜16であり、両アルキル基の合計炭素数は24以下である)の脂肪酸エステルを含む粘着テープ剥離剤組成物を記載している。脂肪酸エステルは皮膚の乾燥を防ぎ、湿潤状態を維持するとしている。しかし、エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトンは損傷皮膚を刺激する。通常、サージカルテープやドレッシングフィルムは傷、創や皮膚炎のような損傷された皮膚または粘膜の周辺に貼り付けられる。そのため、この種の剥離剤組成物を剥離剤として使用することは望ましくない。 また、オレンジオイルの主成分であるD−リモネン(1−メチル−4−イソプロペニル−1−シクロヘキセン)、鉱物油、その他の添加剤を使った剥離剤ナプキンが数社から供給されている。D−リモネン(1−メチル−4−イソプロペニル−1−シクロヘキセン)は粘着剤自体を強力に溶解させる。そのため、この種の製品は人工肛門用品の転写接着剤に適している。しかし、サージカルテープなどの基材フィルム上に粘着剤を塗布した物品の場合には、粘着剤層が溶解して基材フィルムから剥離し、皮膚に完全に転写され、そして、転写された粘着剤が作業者の指に強力に付着しやすい。また、多量のD−リモネンの匂いは非常に強い。これらの問題のために、作業者である患者、医者、看護師、介護者等がこの種の剥離剤製品を扱うのは快適でなくかつ容易でない。特開昭56−38370号公報特許第3510910号公報 上述のとおり、皮膚に接着されたサージカルテープやドレッシングフィルムなどの皮膚用粘着剤塗布物品を皮膚損傷や刺激なしに低剥離力で剥離させることができる剥離剤組成物を提供することが望まれている。 また、粘着剤塗布物品の粘着剤層自体を過度に溶解させずに、また、皮膚に粘着剤を残留させずに、サージカルテープやドレッシングフィルムを容易に剥離することができる剥離剤組成物を提供することが望まれている。 本発明の1つの態様によると、85〜99.8wt.%の沸点95℃以上170℃未満のメチルシロキサン溶剤、0.1〜5wt.%の沸点170℃以上の油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤及び0.1〜10wt.%の非イオン性界面活性剤を含む、皮膚粘着剤用剥離剤組成物が提供される。 なお、本明細書中において、沸点が170℃未満のメチルシロキサン溶剤を「揮発性メチルシロキサン溶剤」、沸点が170℃以上の油剤を「難揮発性油剤」又は「不揮発性油剤」などと呼ぶ。 本発明の剥離剤組成物は、スプレーまたはナプキン等に含ませて拭き取る場合に、損傷皮膚に刺激が少なく、剥離力が強すぎず、再接着しにくく、低臭気である等の利点を有する。 また、本発明の剥離剤組成物は、粘着剤に対する適度な溶解力を有するので、皮膚上への糊残りを起こさずに、サージカルテープやドレッシングフィルム自体を剥離させることができる。 本発明の剥離剤組成物は、アクリル系粘着剤、合成ゴムをベースとする粘着剤、その他の粘着剤のような多くの種類の粘着剤に対して、選択性なしに十分な剥離効果を発揮することができる。 したがって、本発明の剥離剤組成物を含む製品は、サージカルテープやドレッシングフィルムだけでなく、人工肛門用品の転写接着剤、生体電極、対極板といった医療部材、粘着剤を使ったその他の医療物品に対しても幅広く利用できる。 本発明の剥離剤組成物は、沸点95℃以上170℃以下の揮発性メチルシロキサン溶剤と、沸点170℃以上の難揮発性の油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤と、非イオン性界面活性剤を含む。本発明の剥離剤組成物の主成分は、沸点95℃以上170℃以下のメチルシロキサン溶剤である。この種の溶剤は損傷皮膚に対して、刺激が無いため、剥離剤組成物の主溶剤としては適切である。また、メチルシロキサン溶剤は、好ましくは、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、オクタメチルトリシロキサン(OMTS)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(HMCTS)及びそれらの混合物から選ばれ、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)は最も適切である。これらのメチルシロキサン溶剤は、例えば日本の信越化学工業社、ダウコーニング社やその他のシリコーン製造会社から市販されている。揮発性メチルシロキサン溶剤は本発明の剥離剤組成物の重量を基準として85〜99.8wt.%の量で含まれる。 ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の様な低分子メチルシロキサンは、それを単独で剥離剤として用いる場合、粘着剤を良く溶解するが、非常に揮発性が高いため、サージカルテープなどの粘着剤塗布物品が完全に剥離される前に、素早く乾燥して、粘着剤塗布物品が再付着されてしまう。そのため、剥離作業中に剥離に必要な強度、すなわち剥離強度が増加し、糊残りや皮膚損傷の問題があった。本発明では、沸点が170℃以上の難揮発性の油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤を少量で添加することで、剥離剤組成物の乾燥を抑制でき、剥離強度の途中増加、糊残りや皮膚損傷の問題が解消される。 難揮発性の油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤は揮発性メチルシロキサン溶剤を助ける働きをし、それ自体が粘着剤を軟化、溶解させる。このような難揮発性油剤は、本発明の剥離剤組成物の重量を基準として、0.1〜5wt.%の量で含まれる。難揮発性油剤がこれより多すぎると、皮膚がベトベトになり、操作性が悪くなるため、上記の範囲の少量で添加される。このような場合に、剥離剤組成物の主成分であるメチルシロキサン溶剤が揮発した後でも、難揮発性油剤の薄層が粘着剤と皮膚界面に留まり、粘着剤の軟化状態を維持させ、粘着剤の再接着を防止できる。 油相溶性と粘着剤溶解性を持つ難揮発性の油剤としては、テルペン類、脂肪族化合物、脂肪酸エステル、ある種の脂肪酸が利用できる。これらのうち、粘着剤を軟化、溶解させる効果が高いものとしてテルペン類、脂肪族化合物がある。テルペン類はオレンジオイルやテレピン油などがあるが、皮膚刺激性などの安全性の点から最も適する難揮発性油剤のテルペン類はオレンジオイルの主成分であるD−リモネンである。少量のD−リモネン(1−メチル−4−イソプロペニル−1−シクロヘキセン) をメチルシロキサン溶剤、特にヘキサメチルジシロキサン(HMDS)に添加されることが好ましい。D−リモネンはオレンジなどの柑橘類から抽出される天然洗浄剤である。D−リモネンは、例えば日本のヤスハラケミカル社やUSAのフロリダケミカル社から市販されている。D−リモネンは粘着剤に対して強い溶解力と強い臭気を有する。このため、大量のD−リモネンをメチルシロキサン溶剤に添加した場合、剥離剤組成物は、粘着剤自体を良く溶解するので、サージカルテープにおいて粘着剤層が基材フィルムから剥離して皮膚上に完全に転写され、皮膚上に糊残りとして残ってしまう。剥離力を低下させるための十分であるが、粘着剤自体を過度に溶解しない適切な添加範囲は、剥離剤組成物の重量を基準(100wt.%)として0.1wt.%〜5wt.%であり、最も適切な範囲は1wt.% 〜4.5wt. %である。5wt.%を超える添加は、糊残りや強い臭気といった幾つかの困難を作り出し、そのことは患者、医者、看護師、介護者がこの種の製品を扱うには快適ではなくなってしまう。D−リモネンを難揮発性油剤として用いる場合には、本発明の剥離剤組成物中において、D−リモネンは室温では安定に溶解しているが、50℃以上の温度ではメチルシロキサン溶剤から分離しやすくなる傾向がある。 油相溶性と粘着剤溶解性を持つ難揮発性の油剤の他の好ましい例として脂肪族化合物が挙げられる。脂肪族化合物としては植物性脂肪の使用が好ましく、脂肪酸トリグリセリド類から選択されるものが、粘着剤を軟化、溶解させる効果が高く、かつ、メチルシロキサン溶剤に配合させた場合、50℃においても安定に存在する。粘着剤を軟化、溶解させる効果を持ち、生体に安全な脂肪酸トリグリセリド類として、例えば、日本の花王からココナードの商標で販売されている、トリカプリリン(Tricaprylin) (トリカプリル酸グリセリンエステル)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリンエステル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸)グリセリンエステル等がある。例えば、最も適する難揮発性油剤のための脂肪酸トリグリセリドは日本の花王からココナード RKの商標で販売されているトリカプリリン(Tricaprylin)である。適切な添加範囲は0.1 wt.% 〜5wt.%で、最も適切な範囲は1wt.% 〜4.5wt. %である。5wt.%を超える量での添加は、糊残りや皮膚に強いベタツキを与えるといった幾つかの困難を作り出してしまう。これらの素材は無臭であるため、患者、医者、看護師、介護者等の作業者は快適にこの種の製品を扱うことができる。 なお、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、デカメチルシクロペンタシロキサン(DMCS)の様な沸点170℃以上の難揮発性のメチルシロキサン類は、本発明で用いる難揮発性の油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤としては適切でない。というのは、揮発性メチルシロキサン溶剤との相溶性はよいが、粘着剤溶解性が低く、剥離力は改善されず、特に、ある種のアクリル系粘着剤に対しては十分な性能が発揮されないからである。 本発明の剥離剤組成物は、メチルシロキサン溶剤及び油相溶性と粘着剤溶解性を持つ難揮発性油剤の他に、非イオン性界面活性剤を、剥離剤組成物の重量を基準として0.1〜10wt.%の量で含む。難揮発性油剤の添加により、ある粘着剤に対しては剥離の際の剥離力が低下するが、その他の粘着剤に対しては、剥離力が剥離開始時は低いが、 完全に剥がされる前に剥離力が上昇してしまう。したがって、難揮発性油剤の添加だけでは、メチルシロキサン溶剤、特にヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の乾燥を十分には抑制できず、また再接着を防止できない。剥離剤組成物中に非イオン性界面活性剤を含ませることにより、剥離剤組成物の乾燥速度を遅延させ、再接着を防止することができる。このことは、理論に拘束されるつもりはないが、皮膚上にある粘着剤に対して、本発明の剥離剤組成物を塗布すると、難揮発性油剤を含む剥離性バリアー層が粘着剤と皮膚の間に素早く形成されるためであると考えられる。非イオン性界面活性剤の添加は、皮膚と粘着剤表面に対する剥離剤組成物の濡れ性を改善させ、さらに、難揮発性油剤と界面活性剤からなる剥離性バリアー層が粘着剤と皮膚の間に素早く形成させられるものと思われる。この剥離性バリアー層は、メチルシロキサン溶剤、特に、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の乾燥速度を遅延させ、粘着剤と皮膚の再接着を阻害する。 剥離剤組成物は皮膚に使用されるので、利用される界面活性剤は皮膚に対して安全である必要がある。そのため、本発明の剥離剤組成物では非イオン性界面活性剤を使用する。適切な非イオン性界面活性剤としては、ソルビタンエステル型界面活性剤(ICI社のSpan シリーズ)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル型界面活性剤(ICI社のTween シリーズ)、ポリエトキシレート化アルキルフェノール類(TritonX35、X102等)、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル類(ポリエチレングリコール400モノラウエート、ポリエチレングリコール400モノオレート等)が利用できる。界面活性剤の適切な添加範囲は、0.1〜10wt.%である。生体適合性を考慮すると、添加量が少ないことが好ましい。より好ましい範囲は0.5〜2wt.%である。非イオン性界面活性剤のうち、親水度が高いポリオキシエチレンソルビタンエステルを添加した場合、混合物は不透明な液体となり、長期間の経過後には界面活性剤が分離してしまう傾向がある。そのため、使用前には再度振る必要がある。難揮発性油剤とポリオキシエチレンソルビタンエステルの剥離性バリアー層は、親水性表面への親和力が強いので、主に皮膚表面に形成され、皮膚表面に容易に残る。 非イオン性界面活性剤のうち疎水度が高いある種のソルビタンエステルを添加した場合、混合物は透明溶液となり、長期間にわたって界面活性剤が分離することは無い。難揮発性油剤とソルビタンエステルのバリアー層は、疎水性表面への親和力が強いので、主に粘着剤表面に形成され、粘着剤表面に容易に残る。ソルビタンエステルの限定しない例としてUSA ICI社から市販されているスパン(Span)20, スパン(Span)40, スパン(Span)60, スパン(Span)65, スパン(Span) 80, スパン(Span)85がある。透明溶液が形成される好ましい界面活性剤は、ソルビタンモノオレエート(スパン(Span)80)とソルビタントリオレエート(スパン(Span)85)である。これらは日本では化粧品原料と食品添加物として登録されているので、生体適合性があり、安全である。最も好ましい界面活性剤は、ソルビタンモノオレエート(スパン(Span)80)である。スパン(Span)80 を利用した剥離剤組成物は、多くの種類のサージカルテープに対して十分低い剥離力を有している。 本発明の剥離剤組成物は液状であるため、専用容器に入れ、スプレーすることで、あるいは滴下することで使用できる。例えばスプレーとしては、液化石油ガス(LPG)などの噴射剤を使用したエアゾールスプレー缶や、ガスを使用しないハンドスプレーボトルなどで適用することができる。また、滴下は、スクイズボトル、ハンドポンプ、ドロッパー容器を使用できる。また、液供給口にローラが付いたロールオン塗布容器や、液供給口に発砲ラバーを付けた発泡ラバー塗布容器等よって、サージカルテープやドレッシングフィルムが貼られた患部に直接塗布してもよい。さらに、剥離剤組成物を浸透させたナプキンまたはワイプによっても適用することができる。 このように、製品としての形態としては、容器に該剥離組成物を入れた態様か、ナプキン、またはワイプに剥離組成物を含浸させた態様かいずれをも採用することができるが、コスト及び環境に対する影響の観点から、ガスを使用しない塗布容器等である。 本発明の剥離剤組成物は、多くの種類のサージカルテープ類やドレッシングフィルム類、さらに、ある種の粘着剤を使用した医療部材に対して適用することができる。本発明の剥離剤組成物で剥離を行なうことができる粘着剤は、たとえば、アクリル系粘着剤、合成ゴムをベースとする粘着剤、シリコーン粘着剤、その他の粘着剤のような多くの種類の粘着剤であることができる。 本発明は、別の態様によると、皮膚粘着剤の剥離方法を提供する。本発明は、例えば、剥離剤組成物を、皮膚粘着剤に対して塗布し、次いで粘着剤を剥離することを含む、皮膚粘着剤の皮膚からの剥離方法を提供する。かかる、塗布は、剥離剤組成物のスプレーもしくは滴下、又は、剥離剤組成物が含浸されたナプキンもしくはワイプからの適用によることができる。 不織布基材や多孔性基材を利用したサージカルテープ類では、剥離剤の浸透が容易で速いため、剥離剤組成物を滴下、塗布または、スプレーすることで、容易に剥離できる。不織布基材や多孔性基材を利用しないサージカルテープ類、ドレシングフィルムやその他の医療物品に対しては、まず、皮膚上のサージカルテープ類やその他の製品の端部を引き剥がすための処置を行うことが望ましい。端部の剥離の後に、サージカルテープ類やその他の製品は、剥離された新しい端部に連続的に滴下または、スプレー等の塗布を続けることで、剥離させることができる。この様な処置により、多くの種類のサージカルテープ類、ドレッシングフィルム類、粘着剤を使用した医療物品は低い剥離力で、皮膚に刺激と損傷なしに、極めて容易に剥離させることができる。 以下の実施例及び比較例において、剥離剤組成物を幾つかの項目について評価した。1.評価項目1.1.臭気及び外観 透明ボトルに入れた剥離剤組成物(液体)の分離の有無及び色を観察し、ボトルを開けたときに感じる臭気を記録した。1.2.皮膚の評価 ポリエステル製スパンレース不織布と溶剤塗布により塗布されたアクリル系粘着剤からなる1 inch(25.4mm)幅のサージカルテープであるメディポア(Medipore (商品名)(住友3M社製))を被験者の前腕に貼り付け、該サージカルテープの周囲に試験対象となる剥離剤組成物をスプレーまたはワイプで塗布した。サージカルテープを30秒以内に剥離角180度、6 inch/min(2.54mm/sec)の剥離速度の条件で剥離試験機により剥離し、皮膚細胞の脱離を評価した。なお、皮膚細胞の脱離は1wt.% ジェンティアンバイオレット(Gentian Violet)と 0.5wt.% ブリリアントグリーン(Brilliant Green)水溶液で、剥離したサージカルテープの粘着剤表面に貼りついている脱離皮膚細胞を染色して、顕微鏡で観察して評価した。さらに、紙ヤスリで擦って形成した損傷皮膚に対して剥離剤組成物を接触させて、剥離剤組成物の損傷皮膚に対する刺激についても評価した。1.3.剥離剤組成物の剥離性能1.3.1.フェノール樹脂製試験板に対する剥離力及び糊残り サージカルテープを被着体に貼り付け、該テープを剥離する際の剥離剤組成物の性能を調べた。まず、サージカルテープをフェノール樹脂製試験板に貼り付け、その後、30秒以内に剥離を行なった。剥離は、剥離角180度、6 inch/min(2.54mm/sec)の剥離速度の条件で剥離試験機により行なった。得られた剥離力を「フェノール板での初期剥離力(剥離剤なし)」と呼ぶ。次に、サージカルテープをフェノール樹脂製試験板に貼り付け、その後、30秒以内に剥離を行なったが、剥離の前に、サージカルテープの周囲に試験対象となる剥離剤組成物をスプレーまたはワイプで塗布した。得られた剥離力を「フェノール板での初期剥離力(剥離剤あり)」と呼ぶ。また、剥離時に糊残りがあるか否かも観察した。 サージカルテープとしては、ポリエステル製スパンレース不織布と溶剤塗布により塗布されたアクリル系粘着剤からなる1 inch(25.4mm)幅のサージカルテープであるメディポア(Medipore (商品名)(住友3M社製))、及び、レーヨンとポリエステル繊維からなる不織布基材と、ホットメルト塗布によるアクリル系粘着剤からなる1 inch(25.4mm)幅のサージカルテープであるトランスポアホワイト(Transpore White (商品名)(住友3M社製))を用いた。 なお、皮膚への接着力は個人差、貼り付け部位の差、貼り付け時間の差等、誤差要因が大きいため、客観的に効果の差を把握するために、標準板としてフェノール樹脂製試験板を用いた初期剥離力で評価を行なっている。剥離剤組成物の効果は、皮膚に対する剥離力だけでなく、フェノール樹脂製試験板での効果が確認されれば、剥離信頼性が高いものと評価される。1.3.2.皮膚に対する剥離力 上述の「1.3.1.フェノール樹脂製試験板に対する剥離力」と同様に試験を行なったが、フェノール樹脂製試験板の代わりに、人の前腕の皮膚を用いた。得られた剥離力を、剥離剤組成物を用いない場合に「皮膚での初期剥離力(剥離剤なし)」、剥離剤組成物を用いた場合に「皮膚での初期剥離力(剥離剤あり)」と呼ぶ。また、剥離時に糊残りがあるか否かも観察した。 また、サージカルテープを皮膚に貼り付けて、その後、2時間放置した後に、同様に剥離力を測定した。得られた剥離力を、剥離剤組成物を用いない場合に「皮膚での2時間後剥離力(剥離剤なし)」、剥離剤組成物を用いた場合に「皮膚での2時間後剥離力(剥離剤あり)」と呼ぶ。また、剥離時に糊残りがあるか否かも観察した。2.評価 剥離力試験に望まれる性能は、接着中は皮膚に100g/inch(39g/cm)以上でしっかり接着でき、剥離処置後は、皮膚刺激、皮膚反応、皮膚損傷、糊残りを起こさずに、より低い剥離力、好ましくは50g/inch(20g/cm)以下で剥離できることである。比較例A〜C 比較例として、幾つかの剥離剤製品を評価した。アルコール類を使った剥離剤製品として、エチルアルコールとイソプロピルアルコールを主成分としたリムーバースプレー(比較例A:商品A)、イソプロピルアルコールに保湿剤、鉱物油等を添加した剥離ワイプ(比較例B:商品B)、さらにD−リモネン、鉱物油及びその他の添加剤からなる剥離ワイプ(比較例C:商品C)を評価した。表1に評価結果を示す。 エチルアルコールとイソプロピルアルコールを主成分としたリムーバースプレー(商品A)は、通常、スポーツテープに用いられる。剥離剤スプレーはトランスポアホワイト(Transpore White) 以外に対して有効であった。2時間後は多くの糊残りを生じていた。また、この剥離剤はアルコールを含んでいるので、損傷皮膚には刺激があることがあった。 イソプロピルアルコールに保湿剤、鉱物油等を添加した剥離ワイプ(商品B)は、通常、サージカルテープやドレシングフィルムに用いられる。剥離剤はイソパラフィン、プロピルアルコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、アロエ抽出物と香料からなる混合物である。この剥離液はメディポア(Medipore)に対して粘着剤を溶解させる強力な効果を持っていた。そのため、不織布基材は粘着剤から剥離し、糊残りとして、ベタベタの粘着剤が多量に皮膚に残ってしまった。皮膚上の糊残りはワイプで拭き取れるが、皮膚にはタックがありオイル状となり、さらに強い臭気のため、処置は快適ではなかった。剥離剤はイソプロピルアルコールを含んでいるため、損傷皮膚には少し刺激があった。また、トランスポアホワイト(Transpore White) に対する剥離効果も十分でなかった。剥離処置後の接着力は少し高く、初期において多くの糊残りを生じた。 D−リモネン、鉱物油及びその他の添加剤を含む剥離ワイプ(商品C)はメディポア(Medipore)に対して粘着剤を溶解させる強力な効果を持っていた。そのため、不織布基材は粘着剤から剥離し、糊残りとして、ベタベタの粘着剤が多量に皮膚に残ってしまった。皮膚上の糊残りはワイプで拭き取れるが、皮膚にはタックがありオイル状となり、さらに強い臭気のため、処置は快適ではなかった。損傷皮膚に対する刺激はないが、トランスポアホワイト(Transpore White) に対する剥離効果は十分でなかった。剥離処置後の接着力は少し高かった。 粘着剤が皮膚に転写されずに剥離された粘着剤表面に接触していた皮膚から脱離した少しの皮膚細胞が全てのサージカルテープ片から観察された。比較例D〜G メチルシロキサン類及びそれらの混合物からなる剥離剤組成物を評価した。各種剥離剤組成物はハンドスプレーによりサージカルテープの周囲に塗布した。評価は上述の評価手順により行なった。表2に結果を示す。 なお、表中、HMDSはヘキサメチルジシロキサンであり、OMTSはオクタメチルトリシロキサンであり、DMCSはデカメチルシクロペンタシロキサンである。配合比は重量基準である。HMDS100wt%の比較例Dは、メディポア(Medipore)には剥離効果があったが、トランスポアホワイト(Transpore White)には剥離効果がなかった。HMDSの乾燥速度が速すぎて、HMDSが乾燥する前に剥離することが出来ないためのようであった。皮膚と粘着剤層の再接着により、剥離力は上昇し、糊残りを生じてしまった。 HMDSの速い乾燥を抑制するために、沸点が210℃のデカメチルシクロペンタシロキサン(DMCS)を5wt.%HMDSに添加した比較例Eでは、かえって、DMCSの添加は性能を悪化させてしまった。DMCSの添加は、乾燥速度を抑制しなかった。 沸点が153℃のオクタメチルトリシロキサン(OMTS)100wt.%の比較例Fは、皮膚に対する剥離力は低く押さえられているが、トランスポアホワイト(Transpore White)に対するフェノール樹脂板からの剥離力は非常に高くなり、剥離力の安定性及び信頼性に問題を生じた。比較例Fは、粘着剤に対する溶解効果が十分でないため、平板に密着している場合、剥離剤の浸透が悪いため、増加してしまった。粘着剤に対する溶解効果を改善するために、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)7.75wt.%をオクタメチルトリシロキサン(OMTS)に添加して比較例Gとしたが、改善は少なかった。比較例H〜K メチルシロキサン類だけでは、皮膚および標準フェノール樹脂板からの剥離力性能を満足できないため、日本のヤスハラケミカル社のD−リモネンを特定量で難揮発性油剤として、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)に添加し、比較例H〜Jとした。また、D−リモネンと界面活性剤との混合物を比較例Kとした。各剥離剤をハンドスプレーにより、サージカルテープ周辺に塗布した。評価は上記評価手順により行なった。表3に結果を示す。 D−リモネンの大量添加は粘着剤自体を溶解させるため、糊残りと指にベタベタの粘着剤が付いてしまうなどの問題を生じた。D−リモネンの適切範囲は1から 5wt.%であった。しかし、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の乾燥速度は速すぎて、D−リモネンはヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の乾燥を抑制できなかった。10wt.%のツイーン(Tween)80 (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート) を添加したD−リモネンはメディアポア(Medipore)の粘着剤層を完全に溶解させたが、トランスポアホワイト(Transpore White)の粘着剤層は溶解させなかった。比較例1及び2 十分な剥離剤の効果を得るために、剥離剤組成物である、メチルシロキサン溶剤、難揮発性油剤及び非イオン性界面活性剤の混合物を製造した。難揮発性油剤としてD−リモネン、非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンソルビタンエステル類であるツイーン(Tween)80を用いた。表4は幾つかの試作剥離液の配合と評価結果を示した。各剥離剤はハンドスプレーによりサージカルテープ周辺に塗布した。評価手順は上述の比較例と同様である。 ツイーン(Tween)80 (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)を添加した場合、混合液は白色不透明液となった。しかし、各混合液は安定でなく、長期保存により、界面活性剤が分離した。そのため、使用前には再度振り混ぜ、白色不透明液を得る必要があった。4.5wt.%のD−リモネンと0.5wt.% ツイーン(Tween)80 (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)のヘキサメチルジシロキサン(HMDS)への添加(比較例1)はトランスポアホワイト(Transpore White)の剥離剤としても十分に効果的であった。シロキサン溶剤をヘキサメチルジシロキサン(HMDS)から オクタメチルトリシロキサン(OMTS)に変更した例(比較例2)では粘着剤に対して十分な溶解効果が得られず、剥離信頼性が悪化した。比較例3〜5 安定で透明かつトランスポアホワイト(Transpore White)に対しても、さらに良い剥離効果を得る剥離剤組成物を開発した。HLB (親水性−疎水性バランス)が小さいソルビタンエステル型界面活性剤Span類をヘキサメチルジシロキサン(HMDS)及びD−リモネンの混合物に添加した。ソルビタンエステル型界面活性剤としてスパン(Span)20 (ソルビタンモノラウレート), スパン(Span)60(ソルビタンモノステアレート), スパン(Span)65 (ソルビタントリステアレート)を添加した剥離液は不透明液になった。スパン(Span)20 (ソルビタンモノラウレート)とスパン(Span)60(ソルビタンモノステアレート)を添加した剥離液は、容易に分離してしまったが、スパン(Span)65 (ソルビタントリステアレート)を添加した剥離液は、長時間安定であった。さらに、スパン(Span)80 (ソルビタンモノオレエート) とスパン(Span)85 (ソルビタントリオレエート) を添加した剥離液は、透明溶液となり、長期間安定であった。表5に幾つかの試作剥離剤組成物の配合と評価結果を示した。各剥離液はハンドスプレーによりサージカルテープ周辺に塗布された。評価方法は上述の比較例と同様である。 95wt.% のHMDS、4.5wt.% のD−リモネン、0.5wt.%の スパン(Span)80 (ソルビタンモノオレエート)の混合物である比較例3は、メディアポア(Medipore)とトランスポアホワイト(Transpore White)に対して、皮膚だけでなく、標準フェノール樹脂板に対しても優れた剥離効果を持っていた。剥離処置後の皮膚での剥離力は、全ての条件で50g/inch(20g/cm)以下であった。糊残りが無く、損傷皮膚への刺激も無く、皮膚細胞の脱離も少なかった。さらに、混合物の臭気も強くなく、芳香剤の心地よいレベルであった。界面活性剤をスパン(Span)85 (ソルビタントリオレエート)に変更した比較例4と比較すると、比較例3は剥離剤組成物の浸透性がより良好であった。また、シロキサン溶剤をヘキサメチルジシロキサン(HMDS)からオクタメチルトリシロキサン(OMTS)に変更した比較例5と比較すると、比較例3は粘着剤に対して十分な溶解効果があり、標準フェノール樹脂板での剥離力も優れていた。比較例6 比較例3を異なる基材類と粘着剤類から構成される多くの種類のサージカルテープに対して試験した。表6にサージカルテープと評価結果を示し、サージカルテープは全て3Mカンパニー社製の製品であり、商品名で示している。使用された粘着剤の多くは、アクリル系であるが、各粘着剤は異なる配合、製造方法、塗布方法で製造された種々の粘着剤である。皮膚に接着させた各サージカルテープが比較例3の剥離剤組成物のハンドスプレー塗布で瞬間的に剥離可能となるかを確認するために、サージカルテープの一端を部分的に剥離し、50gの錘をクリップで粘着剤面が裏返り上面になるように吊り下げた。 不織布基材や多孔性基材を利用したサージカルテープでは剥離剤組成物の浸透が容易で速いため、剥離剤組成物のハンドスプレーにより容易に剥離できた。不織布基材や多孔性基材を利用しないサージカルテープ類に対しては、剥離スプレーを皮膚上のサージカルテープ類の端部に対して行なった。サージカルテープ類は剥離された新しい端部に連続的にスプレーを続けることで、50gの錘の吊り下げで剥離させることができた。剥離処置前は全ての サージカルテープ類は50gの錘の吊り下げでは皮膚より剥離することはできなかった。 ハンドスプレー容器に入れた比較例3の剥離剤組成物をスプレーすることで、試験された全てのサージカルテープを全く低い剥離力で、皮膚に対して刺激も損傷もなく、全く容易に瞬間的に剥離することができた。剥離された粘着剤層の表面に貼りついている脱離された皮膚細胞のレベルはサージカルテープの種類にやや依存したが、未処理に比べて、脱離された皮膚細胞レベルは少なかった。実施例7〜9 その他の難揮発性油剤として、日本の花王社からココナード RKとして市販されている、脂肪酸トリグリセリドであるトリカプリリン(Tricaprylin)を、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)又はオクタメチルトリシロキサン(OMTS)とスパン(Span)80の混合液に混ぜ合わせた。表7に実施例7〜9の配合と評価結果を示した。剥離剤組成物は透明で安定な液体であった。剥離剤組成物はハンドスプレーによりサージカルテープ周辺に塗布した。評価方法は上述の比較例と同様である。 混合液は透明な溶液となり、長期間分離することは無かった。剥離剤組成物は剥離処置後、低い剥離力となり、D−リモネンを利用した剥離剤とほぼ同等の特性を有していた。この剥離剤組成物は、臭いが殆どなく、処置が快適であった。剥離処置後、ハンドスプレーした残留物はティッシュで軽く拭き取ることで、少々の粘着剤の残留物も除去されるためベタツキもなく、快適であったまた、シロキサン溶剤をヘキサメチルジシロキサン(HMDS)からオクタメチルトリシロキサン(OMTS)に変更した実施例9と比較すると、実施例7は粘着剤に対して十分な溶解効果があり、標準フェノール樹脂板での剥離力も優れていた。実施例10 実施例8を異なる基材類と粘着剤類から構成される多くの種類のサージカルテープに対して試験した。表8にサージカルテープと評価結果を示し、サージカルテープは全て3Mカンパニー社製の製品であり、商品名で示している。使用された粘着剤の多くは、アクリル系であるが、各粘着剤は異なる配合、製造方法、塗布方法で製造された種々の粘着剤である。皮膚に接着させた各サージカルテープが実施例8の剥離剤組成物のハンドスプレー塗布で瞬間的に剥離可能となるかを確認するために、サージカルテープの一端を部分的に剥離し、50gの錘をクリップで粘着剤面が裏返り上面になるように吊り下げた。 不織布基材や多孔性基材を利用したサージカルテープでは剥離剤組成物の浸透が容易で速いため、剥離剤組成物のスプレーにより容易に剥離できた。不織布基材や多孔性基材を利用しないサージカルテープ類に対しては、剥離スプレーを皮膚上のサージカルテープ類の端部に対して行なった。サージカルテープ類は剥離された新しい端部に連続的にスプレーを続けることで、50gの錘の吊り下げで剥離させることができた。剥離処置前は全ての サージカルテープ類は50gの錘の吊り下げでは皮膚より剥離することはできなかった。 ハンドスプレー容器に入れた実施例8の剥離剤組成物をスプレーすることで、試験された全てのサージカルテープを全く低い剥離力で、皮膚に対して刺激も損傷もなく、全く容易に瞬間的に剥離することができた。剥離された粘着剤層の表面に貼りついている脱離された皮膚細胞のレベルはサージカルテープの種類にやや依存したが、未処理に比べて、脱離された皮膚細胞レベルは少なかった。 85〜99.8wt.%の沸点95℃以上170℃未満のメチルシロキサン溶剤と、 0.1〜5wt.%の沸点170℃以上の、油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤と、 0.1〜10wt.%の非イオン性界面活性剤とを含む、皮膚粘着剤用剥離剤組成物であって、 前記メチルシロキサン溶剤は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、オクタメチルトリシロキサン(OMTS)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(HMCTS)からなる群より選ばれる少なくとも一以上の溶剤であり、 前記油相溶性でかつ粘着剤溶解性の油剤は、脂肪酸トリグリセリドを含む、皮膚粘着剤用剥離剤組成物。 前記脂肪酸トリグリセリドは、トリカプリル酸グリセリンエステル(トリカプリリン)である、請求項1記載の剥離剤組成物。 前記メチルシロキサン溶剤は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)である、請求項1又は2に記載の剥離剤組成物。 前記非イオン性界面活性剤は、ソルビタンエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルからなる群より選ばれる、請求項1記載の剥離剤組成物。


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