タイトル: | 公開特許公報(A)_超音波ファントム用ゲル |
出願番号: | 2005343909 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61B 8/00,G01N 29/28 |
敷波 保夫 蔦 薫 JP 2007143946 公開特許公報(A) 20070614 2005343909 20051129 超音波ファントム用ゲル タキロン株式会社 000108719 河▲崎▼ 眞樹 100090608 敷波 保夫 蔦 薫 A61B 8/00 20060101AFI20070518BHJP G01N 29/28 20060101ALI20070518BHJP JPA61B8/00G01N29/28 7 OL 19 2G047 4C601 2G047AA12 2G047AC13 2G047EA12 2G047EA19 2G047EA20 2G047EA21 2G047GE01 4C601EE11 4C601EE30 4C601GC04 本発明は、人体部位の超音波による検診のための医用超音波の研究、超音波診断装置の校正、医師や技術者の技術訓練等のために使用されるという目的に適した超音波ファントム(生体組織模型)ゲルに関する。 従来より、ファントム用のゲル材料として、寒天やゼラチンを母材とするゲル、蒟蒻に含まれるグルコマンナンを母材とするゲル(特許文献1)、酸性水含有ポリビニルアルコールを母材とするゲル(特許文献2)、ウレタン系水膨潤樹脂を母材とするゲル(特許文献3)、含水した吸水性樹脂を母材とするゲル(特許文献4)などのヒドロゲルが検討されており、これらは医用超音波の研究、超音波診断装置の校正、医師や技術者の技術訓練等にそれらの一部が検討されているが、不満足なものである。 一般に、実用的な超音波ファントムには次のような性質が要求される。即ち、超音波伝播速度が人体組織のそれにできるだけ近似していること、超音波減衰率が本質的に人体組織のそれよりも低く添加剤で減衰率を調節して測定すべき人体組織の減衰率に近づけられること、等の超音波特性をもつことが要求される。しかも、これらの超音波特性が長期の貯蔵時間に亘って変化することなく維持されることや、ファントムとしてのゲル材料が経時的に変質し難いことも要求される。 しかしながら、高比率に水を含む寒天、ゼラチンなどのゲル状超音波ファントムや特許文献1のグルコマンナンのゲル状超音波ファントムは、上記の良好な超音波特性を備えているとはいうものの、ヒドロゲル(含水ゲル)であるために、雑菌増殖、変質、腐敗の問題があり、しかも機械的強度が弱いため壊れ易いという問題もあった。 また、酸性水含有ポリビニルアルコールゲルからなる特許文献2の超音波ファントムや、ウレタン系含水膨潤ゲルからなる特許文献3の超音波ファントム、他の吸水性樹脂を母材とする特許文献4の超音波ファントムは、いずれも水を高比率に含んでいるため、空気中に水が飛散して含水率が経時的に変化することによって超音波特性が低下、変動するという問題があり、かつ、雑菌増殖などの不可避の問題が残されていた。この超音波特性の変動の問題は、水を含んだヒドロゲルの超音波ファントムには必ず存在する。特開2002−360572号公報特開平11−155856号公報特開平11−262487号公報特開平10−295692号公報 本発明は上記の問題に対処すべくなされたもので、十分な超音波特性を備え、その超音波特性が長期間に亘って変動せず、雑菌増殖、変質、腐敗等も生じない超音波ファントム用ゲルを提供することを解決課題としている。 上記課題を解決するため、本発明に係る超音波ファントム用ゲルは、常温で大半ないし全てが液状であるアルキレンオキサイドのセグメントを有するセグメント化ポリウレタンゲル中に、ウレタン反応に関与しない、超音波伝播速度が水に近く、減衰率が低い不揮発性の有機系ゲル膨張媒が含有されていることを特徴とするものである。 本発明の超音波ファントム用ゲルにおいては、アルキレンオキサイドのセグメントがエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体であること、共重合体中のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比が20:80〜80:20であることが好ましい。 また、本発明の超音波ファントム用ゲルにおいては、不揮発性の有機系ゲル膨張媒がセグメント化ポリウレタンゲル中に20〜80質量%含有されていることが好ましく、この有機系ゲル膨張媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ポリプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールジエチルエーテルのいずれか単独又はこれらの任意の混合物が好ましく使用される。また、セグメント化ポリウレタンゲルには、超音波減衰率を調整する減衰率調整剤が適宜含有され、減衰率調整剤としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、発泡ポリスチレン、アクリルの架橋もしくは非架橋ビーズ、又は、ポリエチレン、グラファイト、ガラス、固形状パラフィンワックスのビーズのいずれかであって、1〜100μmの平均粒径を有するものが好ましく使用される。 良好な超音波特性を備えた超音波ファントム用ゲルを得るためには、セグメント化ポリウレタンゲルのアルキレンオキサイドのセグメントの大半ないし全てが常温にて流動性を持ち、かつ、セグメントを形成する分子鎖が適度に伸展した状態に保たれてセグメント間隔が膨潤剤を添加する以前よりも網目鎖構造が拡張した状態であることが望ましい。セグメントが固体状で剛直で流動性のない場合や、セグメントがひどく屈曲し縮まっていて、丸まっている状態では、超音波振動エネルギーの吸収が大きくなり、音波の伝播が低抵抗に行われない。そのために、セグメント化ポリウレタンゲルの超音波伝播の減衰がおよそ60〜70%の水分を含む生体内臓組織のそれよりも大きくなる。それ故に、減衰率調製剤を添加して調整する意味がなくなるという不都合を生じる。けれども、本発明の超音波ファントム用ゲルは、アルキレンオキサイドのセグメントが常温で大半ないし全てが液状であり、かつ、ゲル中に含有されている不揮発性の有機系ゲル膨張媒によってセグメントが適度に伸展した状態に保たれている。それ故、超音波振動に同調して、極めて低抵抗に、容易にこの液状セグメントが振動するので、エネルギーの吸収が極めて少なく減衰が極度に抑制される。このとき、該膨張媒は本質的に水と同等の超音波特性をもつので、ゲル状を形成、保持するための該セグメント化ポリウレタンの網目鎖間に存在して、要望する人体軟組織と同等以上、血液や体液と同等の良好な超音波特性が得られるのである。従って、後述の実験データに示されるように超音波減衰率が人体内臓(軟)組織のそれよりも低く、そのために減衰率調整剤を添加して減衰率を適度に高め、所望の人体内臓組織の超音波減衰率に近似させることができる。また、このファントム用ゲルの超音波伝播速度は、後述の実験データに示されるように人体内臓組織のそれよりはやや遅いけれども、超音波診断装置等の調整によって人体内臓組織の超音波伝播速度に近似するように設定できる範囲内であるから、実用上問題はない。 本発明において、セグメント化ポリウレタンゲル中に含有される膨張媒は、ウレタン反応に関与しない有機系ゲル膨張媒であるから、ゲルの形成時にウレタン反応が阻害されたり、ポリウレタンゲルが膨潤媒によって変性されたりする心配はない。また、このゲル膨張媒は有機系のもので水と無縁のものであるから雑菌の増殖がなく、かつ、ゲルがポリウレタンゲルであるから変質、腐敗などの問題が生じることもない。しかも、この有機系ゲル膨張媒は不揮発性であるから、本発明の超音波ファントム用ゲルは、有機系ゲル膨張媒の含有量が一定を保ち、経時的に変化することがなく、長期間(永久的)に亘って上述の良好な超音波特性を維持することができる。 以下、本発明の具体的な実施形態を詳述する。 本発明の超音波ファントム用ゲルは、常温で大半ないし全てが液状であるアルキレンオキサイドのセグメントを有するセグメント化ポリウレタンゲル中に、ウレタン反応に関与しない不揮発性の有機系ゲル膨張媒を含有させたものであって、このセグメント化ポリウレタンゲルは、具体的には下記の構造式A〜Dのポリオール成分と、下記の構造式E〜Iのポリイソシアネート成分を、それぞれ単独で又は混合して使用し、双方の成分の−OH基と−NCO基をウレタン結合させることによって得られる、いわゆる三次元貫入形(Interpenetrated Network)の一成分系のセグメント化ポリウレタンゲルである。 式中、R1,R2はアルキル化合物、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。 式中、AOはアルキレンオキサイドのセグメントであり、lは1または4の整数である。 式中、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。 式中、AOはアルキレンオキサイドのセグメントであり、Rは水素原子もしくはアルキル化合物、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかである。 式中、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。 式中、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。 式中、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントであり、lは1または4の整数である。 式中、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。 式中、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。 構造式A〜Dに掲げたポリオール成分としてのプレポリマーについて説明すると、構造式Aはポリエーテルポリオールとジイソシアネートの反応物であるポリウレタンポリオールプレポリマーであって、両末端成分がポリエーテルポリオールからなり、末端は−OH基である。ここで使用されるジイソシアネート化合物は、後述するポリウレタンポリイソシアネートのプレポリマーの中のそれと同じものであり、例えばフェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添加TDI、水素化MDI、ジシクロヘキシルジメチルメタン−p,p′−ジイソシアネート、ジエチルフマレートジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが任意に使用できる。 構造式Bはグリセロール(l=1)またはソルビトール(l=4)にポリエーテルポリオールを付加したものであり、また、構造式Cはトリメチロールプロパンにポリエーテルを付加したものである。同様に下記の構造式Jの1,2,6−ヘキサントリオール、構造式Kのトリメチロールエタン、構造式Lのペンタエリスリットや構造式Mのポリグリセリン(n=2〜30の整数)やその部分エステルなどの多価アルコールとポリエーテルポリオールの付加物も使用できる。 構造式Dはアルキレンオキサイド(AO)のセグメントを有するポリエーテルポリオールであり、両末端が−OH基の場合と、片末端がアルキル基、芳香族基などで封鎖されている場合があり、市販品として容易に入手できる。 次に、構造式E〜Iに掲げたポリイソシアネートプレポリマーについて説明すると、構造式Eはトリメチロールプロパンにジイソシアネートを反応して得られるトリイソシアネートの2分子をAOの1分子で2量化したもので、4官能であるテトライソシアネートである。そして、トリメチロールプロパンの代わりにグリセロールを用いたものが構造式Fである。この種のテトライソシアネートは、AOの2分子または3分子でトリイソシアネートが2量化され易いので反応を微妙に調節する必要がある。 構造式Gは、構造式Bのポリオールにジイソシアネートを反応させたものである。また、構造式Hは同様に構造式Cのポリオールにジイソシアネートを反応させたものであり、3官能である。構造式Iはポリエーテルポリオールとジイソシアネートの反応物で2官能である。 上記構造式A〜I中のAOで表されるアルキレンオキサイドのセグメントは、良好な超音波特性を有するセグメント化ポリウレタンゲルを得るためには、常温で大半ないし全てが液状であるセグメントであることが必要であり、具体的にはエチレンオキサイド(EO)鎖、プロピレンオキサイド(PO)鎖、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体(EO−PO共重合体)、ブチレンオキサイド(BO)鎖、BO−PO共重合体のいずれかであるが、この中でも、特にEO−PO共重合体が好ましい。AOセグメントがEO−PO共重合体であると、EOおよびPOは減衰率が低いことから、種々の特性のファントムを作製する際に、組成検討の自由度が高まるという利点があるからである。 EO−PO共重合体は、例えば下記の構造式Nで表されるようなブロック共重合体、或いは、−(PO−EO−EO−PO)m−、−(PO−PO−EO)m−、−(EO−EO−PO)m−、−(EO−PO−EO−PO)m−等の交互共重合体(mは1以上の正数)、或いは、EOとPOのランダム共重合体のいずれでもよいが、特にEOとPOのランダム共重合体が好ましい。AOセグメントがEOとPOのランダム共重合体であると、減衰率がより低いEOをセグメント中に高い比率で配する際に結晶化を防いでくれるため、低音域でのファントムの超音波性能を維持するのに都合が良いという利点があるからである。 上記のEO鎖、PO鎖、EO−PO共重合体、BO鎖、BO−PO共重合体よりなるAOセグメントは、良好な超音波特性を有するセグメント化ポリウレタンゲルを得るために常温で大半ないし全てが液状でなければならないから分子量の上限が規制される。また、液状であっても分子量が小さすぎる場合は、架橋点間の距離が短くなり、架橋密度が高くなってポリウレタンゲルの超音波減衰率が高くなることから、分子量の下限も規制される。EO鎖の分子量(重量平均分子量MW、以下同じ)は150〜1000が適当であり、好ましくは300〜800である。PO鎖は分子量が数万でも液体であり、使用できる分子量の範囲は広い。しかし、末端基の比率が小さいほど反応確率が低くなり、また、あまりに長いセグメントの場合は、ポリウレタンゲルの流動性が増して保形性に乏しくなるので、大略200〜数千の範囲が好ましい。 一方、EO−PO共重合体は、EOとPOのモル比や配列によってその流動性(柔らかさ)等が左右される。例えば、EO−POブロック共重合体においてPOのモル比率が高い場合には分子量が大きくても液状であるが、POのモル比率が低い場合でも、EOの分子量が小さければ液状となる。しかし、既述したようにPO鎖の分子量が高ければ保形性などの問題が生じるし、共重合体の分子量が小さければ架橋密度の増大によりセグメント化ポリウレタンゲルの超音波減衰率が高くなるので、60〜8000、好ましくは800〜6000の分子量を有する常温で液状のEO−POブロック共重合体、EO−PO交互共重合体、EO−POランダム共重合体が使用される。 また、BO鎖は重合度が高くなると固体になるため、200〜1000、好ましくは400〜800の分子量の範囲で使用できる。そして、BO−PO共重合体は、POのモル比率が高ければ分子量が大きくても液状であるので、800〜6000、好ましくは900〜3000の分子量の範囲で使用できる。 AOセグメントを構成するEO−PO共重合体は、そのEOとPOのモル比が20:80〜80:20であることが好ましい。EOのモル比が80を越えると、EO−PO共重合体の結晶化が進むため、セグメント化ポリウレタンゲルの減衰率が高くなる。一方、POのモル比が80を越えて過剰になると、EO−PO共重合体の流動性が増してセグメント化ポリウレタンゲルの保形性が低下し、壊れやすくなるとともに、減衰率が高くなる。EOとPOのより好ましいモル比は50:50〜70:30である。 また、セグメント化ポリウレタンゲルがEO鎖のセグメントとPO鎖のセグメントを有する場合(例えば、ポリオール成分とポリイソシアネート成分のいずれか一方がEO鎖のセグメントを有し、他方がPO鎖のセグメントを有するものをウレタン反応させた場合)も、EOとPOのモル比は上記と同様に20:80〜80:20であることが好ましい。 尚、EO鎖を形成する化合物としてポリエチレングリコール(PEG)が、PO鎖を形成する化合物としてポリプロピレングリコール(PPG)が、EO−PO共重合体を形成する化合物としてPEG−PPGブロック共重合体やランダム共重合体が、BO鎖を形成する化合物としてポリブチレングリコール(PBG)が、BO−PO共重合体を形成する化合物としてPBG−PPG共重合体が使用される。 良好な超音波特性を有するセグメント化ポリウレタンゲルは、含有された有機系ゲル膨張媒によって、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分のAOセグメントやポリマー鎖が適度に伸展し、AOセグメント間やポリマー鎖間が拡張した状態にある三次元網目鎖構造の嵩高い分子構造を有することが必要であり、このような三次元網目鎖構造の嵩高い分子構造のセグメントポリウレタンゲルを得るためには、ウレタン反応させるポリオール成分とポリイソシアネート成分のいずれか一方が2官能で、他方が3官能または4官能であることが好ましい。ポリオール成分とポリイソシアネート成分の双方が3官能以上であると、網目鎖濃度が高くなり過ぎて、超音波減衰率が生体組織のそれを越える恐れが生じる。 また、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の反応比は、末端の官能基の比率、即ちOH/NCOの価によって規制できる。未反応の−NCOが残ると後反応が生じるので、OH/NCOは1以上でなければならないが、1.5≦OH/NCO≦3.5で良好な超音波特性を有するポリウレタンゲルが得られる。OH/NCOが3.5を越えると、嵩高い分子の集まりにおいて、末端にOH基を備えた自由運動する直鎖セグメントが多くなり、この直鎖セグメントが超音波減衰率や伝播速度に悪影響を及ぼすため、超音波特性が低下する恐れが生じる。 ポリオール成分とポリイソシアネート成分の分子量の範囲は、AOやイソシアネートの種類、分子形状、AOセグメントがホモポリマーであるかコポリマーであるか等によって広い範囲で変わるが、分子量が高すぎると、有機系ゲル膨張媒によってAOセグメントを有するポリオール成分及びポリイソシアネート成分のポリマー鎖を十分に伸展させて張りを与えることが難しくなるため、超音波特性が低下するようになり、また、分子量が小さすぎると、架橋密度が高くなり過ぎてやはり超音波特性が低下するようになる。それ故、ポリウレタンポリオールプレポリマーは大略1000〜10000、ポリオールは大略150〜6000、ポリウレタンポリイソシアネートプレポリマーは大略500〜10000の範囲であることが必要であり、好ましくは各々大略1400〜6000、大略300〜3000、大略1000〜6000の範囲で選択できる。 本発明の超音波ファントム用ゲルは、上記のセグメント化ポリウレタンゲルに有機系ゲル膨張媒を含有させたものであって、この有機系ゲル膨張媒は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分のAOセグメントやポリマー鎖を伸展させてAOセグメント間やポリマー鎖間を拡張させた状態とすることにより、超音波減衰率や超音波伝播速度などの超音波特性を高める役目を果たすものである。この有機系ゲル膨張媒は、ウレタン反応に関与しない不揮発性のものであることが必要であり、超音波振動エネルギーの吸収が少なく、超音波伝播速度が水に近く、減衰率が低く、セグメント化ポリウレタンゲル(特にAOセグメント)との親和性が良い有機系ゲル膨張媒が好ましく使用される。そのような有機系ゲル膨張媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ポリプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールジエチルエーテル等を挙げることができ、これらは単独で、又は、任意に混合して含有される。ポリプロピレングリコールジメチルエーテルやポリプロピレングリコールジエチルエーテルは、200〜500の重量平均分子量(Mw)を有するものが好ましく使用される。 上記の有機系ゲル膨張媒は、セグメント化ポリウレタンゲルの形成時に含有させても、ウレタン反応に関与しないのでウレタン反応が阻害されたり膨潤媒によって変性されたりする心配がなく、また、有機系の膨潤媒であるから雑菌増殖、変質、腐敗などが生じることもない。しかも、このゲル膨張媒は不揮発性で、ポリウレタンゲル中の含有量が経時的に変化しないため、AOセグメントやポリマー鎖に張りを与えた状態を保つことができ、ゲル膨張媒自体も超音波振動エネルギーの吸収が少ないので、長期間に亘って良好な超音波特性を持続して発揮できる。更に、このゲル膨張媒はセグメント化ポリウレタンゲルとの親和性が良いので、セグメント化ポリウレタンゲルに吸収させて含有させる場合でも、速やかに必要量のゲル膨張媒を吸収させることができる。 セグメント化ポリウレタンゲル中の有機系ゲル膨張媒の含有率は、20〜80質量%であることが好ましく、20質量%未満では、AOセグメントやポリマー鎖を十分に伸展させてAOセグメント間やポリマー鎖間を十分に拡張させた状態にすることが難しいため、良好な超音波特性を付与することが困難になる。一方、有機系ゲル膨張媒の含有率が80質量%を上回ると、セグメント化ポリウレタンゲルの強度が低下して脆くなり、簡単に破壊される恐れが生じる。 有機系ゲル膨張媒をセグメント化ポリウレタンゲルに含有させる場合は、セグメント化ポリウレタンゲルに後から有機系ゲル膨張媒を浸透、吸収させる方法を採用してもよいし、また、セグメント化ポリウレタンゲルを形成する際にポリオール成分又はポリイソシアネート成分のいずれかに有機系ゲル膨張媒を混合して反応させる方法を採用してもよい。 また、このセグメント化ポリウレタンゲルには、その超音波減衰率を所望の生体内臓組織のそれに近似させるために減衰率調整剤が適宜含有される。減衰率調整剤としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、発泡ポリスチレン、アクリルの架橋もしくは非架橋ビーズ、又は、ポリエチレン、グラファイト、ガラス、固形状パラフィンワックスのビーズのいずれかであって、1〜100μmの平均粒径を有するものが好ましく、これらは単独で、又は、任意に混合して使用される。 以上のような超音波ファントム用ゲルは、例えば次の方法で製造することができる。 第一の方法は、まず、前記のポリオール成分とポリイソシアネート成分をOH/NCOが前記の価となるように混合すると共に、必要に応じて適量の触媒(例えば、ジブチル錫ジラウレートや、トリアルキルアミン、トリエチレンジアミンなどの第3級アミン)を混合して材料液を調製し、この材料液を型内に注入して常温ないし加温下に反応させることにより、セグメント化ポリウレタンゲルを作製する。次いで、このセグメント化ポリウレタンゲルに、液体の前記有機系ゲル膨張媒を浸透、含有させて超音波ファントム用ゲルを製造する。 第二の方法は、まず、前記のポリオール成分とポリイソシアネート成分のいずれかに有機系ゲル膨張媒を混合し、OH/NCOが前記の価となるように両成分と適量の触媒を混合して材料液を調製する。次いで、この材料液を型内に注入して常温ないし加温下に反応させることにより、有機系ゲル膨張媒を含有したセグメント化ポリウレタンゲルよりなる超音波ファントム用ゲルを製造する。 尚、上記のいずれの方法においても、減衰率調製剤を含有させる場合は、ポリオール成分又はポリイソシアネート成分のいずれか一方に減衰率調製剤を含有させて材料液を調製することが好ましい。 上記の方法によって得られる超音波ファントム用ゲルは、AOセグメントが常温で大半ないし全てが液状であり、かつ、ゲル中に含有されている不揮発性の有機系ゲル膨張媒によってポリオール成分及びポリイソシアネート成分のAOセグメントやポリマー鎖が伸展した張りのある状態に保たれているので、超音波振動エネルギーの吸収が少なく、その超音波減衰率が生体内臓組織のそれよりも低くいため、減衰率調整剤を添加して所望の生体内臓組織の超音波減衰率に近似させることができる。また、このファントム用ゲルの超音波伝播速度は、生体内臓組織のそれよりは少し遅いけれども、超音波診断装置等の設定によって生体内臓組織の超音波伝播速度に近似するように調整できる範囲内であるから、実用上問題はない。 しかも、セグメント化ポリウレタンゲル中に含有される有機系ゲル膨張媒は、ウレタン反応に関与しないものであるから、ゲルの形成時に混合してもウレタン反応が阻害されたり、有機系ゲル膨潤媒によって変性されたりする心配はなく、また、このゲル膨張媒は有機系のものであるから雑菌増殖、変質、腐敗などが生じることもない。更に、この有機系ゲル膨張媒は不揮発性で、ポリウレタンゲル中の含有量が経時的に変化(減少)しないため、AOセグメントやポリマー鎖を伸展させて張りを与えた状態に保つことができ、ゲル膨張媒自体も超音波振動エネルギーの吸収が少ないので、長期間に亘って良好な超音波特性を持続して発揮できる。また、この有機系ゲル膨張媒はセグメント化ポリウレタンゲルとの親和性が良いので、セグメント化ポリウレタンゲルに吸収させて含有させる場合でも速やかに必要量のゲル膨張媒を吸収させることができ、セグメント化ポリウレタンゲルからの経時的な滲出も防止することができる。 次に、本発明の更に具体的な実施例と比較例を説明する。[実施例1] 下記の表1に示す構造式番号に対応する構造と分子量とアルキレンオキサイド(AO)のセグメントを有するポリオールとポリイソシアネートを表1に示す部数準備し、有機系ゲル膨張媒として下記表1に示す部数のプロピレンカーボネートと、触媒として下記表1に示す部数のジブチル錫ラウレートをポリオールに混合した後、この混合液をポリイソシアネートに混合して、OH/NCOが2.7である材料液を調製した。 この材料液を型内に注入し、50℃で8時間反応させることによって、EOとPOのモル比が1:1であるEO−POランダム共重合体のセグメントを備え、且つ、有機系ゲル膨張媒としてプロピレンカーボネートをゲル中に50質量%含有した超音波ファントム用のセグメント化ポリウレタンゲルを得た。 得られた超音波ファントム用ゲルについて、その密度を測定すると共に、シングアラウンド式音速測定装置[超音波工業社(株)製]を用いて、超音波減衰率(減衰係数)と超音波伝播速度を、20℃×3.5MHzで測定した。その結果は、下記の表2に示すように、密度が1.13(10−3kg/m3)、超音波減衰係数が0.13(dB/cmMH)、超音波伝播速度が1468(m/s)であった。この結果から、本発明の超音波ファントム用ゲルの超音波減衰係数は人体内臓組織の超音波減衰係数(0.5±0.05dB/cmMH)よりも低く、減衰率調製剤の添加によって人体内臓組織の超音波減衰係数に近似させることができるものであり、また、超音波伝播速度も人体内臓組織の超音波伝播速度(1540±15m/s)より低いが、診断装置等の設定によって人体内臓組織の超音波伝播速度に近似するように調整できる範囲内であることが分かった。 更に、8ヵ月後、上記の超音波ファントム用ゲルについて超音波減衰係数と超音波伝播速度を測定したところ、下記の表2に示すように、超音波減衰係数が0.14(dB/cmMH)、超音波伝播速度が1472(m/s)であり、製造当初の実質的に変わらない良好な超音波特性を示した。また、雑菌の増殖や、ゲルの変質なども全く見られなかった。[実施例2〜5] 有機系ゲル膨張媒であるプロピレンカーボネートの混合部数を61.7質量部、99.6質量部、431.7質量部、1,048質量部にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、プロピレンカーボネートを25質量%含有した超音波ファントム用ゲル(実施例2)、35質量%含有した超音波ファントム用ゲル(実施例3)、70質量%含有した超音波ファントム用ゲル(実施例4)、85質量%含有した超音波ファントム用ゲル(実施例5)を作製した。 それぞれの超音波ファントム用ゲルについて、実施例1と同様に、製造直後の密度、超音波減衰係数、超音波伝播速度を測定すると共に、8ヵ月経過後の超音波減衰係数、超音波伝播速度を測定した。その結果を下記の表2に示す。[比較例1] 有機系ゲル膨張媒を混合しないで材料液を調製した以外は実施例1と同様にして、EOとPOのモル比が1:1であるEO−POランダム共重合体のセグメントを備え、且つ、有機系ゲル膨張媒を含まないセグメント化ポリウレタンゲルを得た。このセグメント化ポリウレタンゲルについて、実施例1と同様に、製造直後の密度、超音波減衰係数、超音波伝播速度を測定すると共に、8ヵ月経過後の超音波減衰係数、超音波伝播速度を測定した。その結果を下記の表2に示す。 この表2から、有機系ゲル膨張媒のプロピレンカーボネートを含んだ実施例1〜5のファントム用のセグメント化ポリウレタンゲルと、有機系ゲル膨張媒を含まない比較例1のセグメント化ポリウレタンゲルは、その製造直後の超音波伝播速が1443〜1506m/sの範囲内にあり、人体内臓組織の超音波伝播速度(1540±15m/s)より低いが、診断装置等の設定によって人体内臓組織の超音波伝播速度に近似するように調整できる範囲内にあることが分かる。 一方、超音波減衰係数については、有機系ゲル膨張媒を含まない比較例1のセグメント化ポリウレタンゲルが1.15(dB/cmMH)であって、人体内臓組織の超音波減衰係数(0.5±0.05dB/cmMH)を大きく越えており、超音波ファントム用のゲルとして適していないことが分かる。これに対し、有機系ゲル膨張媒のプロピレンカーボネートをそれぞれ35質量%、50質量%、70質量%含んだ実施例3,1,4のセグメント化ポリウレタンゲルは、超音波減衰係数が0.13〜0.39(dB/cmMH)であって、人体内臓組織の超音波減衰係数よりも低い値であり、減衰率調製剤の添加により人体内臓組織の超音波減衰係数に近似させることができるので、ファントム用ゲルとして好適なものであることが分かる。また、有機系ゲル膨張媒をそれぞれ25質量%、85質量%含んだ実施例2,5のセグメント化ポリウレタンゲルは、その超音波減衰係数が人体内臓組織のそれを上回っているが、比較例1のゲルほど大きく上回ってなく、人体内臓組織の超音波減衰係数に比較的近い値を有しており、ファントム用ゲルとして使用できることが分かる。 これら実施例1〜5のゲルの測定結果から、人体内臓組織の超音波伝播速度に近いす超音波伝播速度を有し、且つ、人体内臓組織のす超音波減衰係数よりも低い超音波減衰係数を有する、超音波特性の良好なファントム用ゲルを得るためには、有機系ゲル膨張媒を30〜80質量%含有させれば良いことが分かる。 また、実施例1〜5のファントム用セグメント化ポリウレタンゲルは、含有する有機系ゲル膨張媒が不揮発性であるため、その超音波伝播速度や超音波減衰係数が製造直後と8カ月後で実質的に変わらず、良好な超音波特性を持続することが分かる。そして、比較例1のゲルも、水を含まない一成分系のセグメント化ポリウレタンゲルであるため、超音波伝播速度や超音波減衰係数が製造直後と8カ月後で実質的に変わらないことが分かる。[実施例6] 下記の表3に示す構造式番号に対応する構造と分子量とアルキレンオキサイド(AO)のセグメントを有するポリオールとポリイソシアネートを表3に示す部数準備し、有機系ゲル膨張媒として下記表3に示す部数のプロピレンカーボネートと、触媒として下記表3に示す部数のジブチル錫ラウレートをポリオールに混合した後、この混合液をポリイソシアネートに混合して、OH/NCOが4.0である材料液を調製した。 この材料液を型内に注入し、50℃で8時間反応させることによって、EOとPOのモル比が1:1であるEO−POランダム共重合体のセグメントを備え、且つ、有機系ゲル膨張媒としてプロピレンカーボネートをゲル中に44質量%含有した超音波ファントム用のセグメント化ポリウレタンゲルを得た。 この超音波ファントム用ゲルについて、実施例1と同様に、製造直後の密度、超音波減衰係数、超音波伝播速度をそれぞれ測定したところ、密度は1.12(10−3kg/m3)、超音波減衰係数は0.66(dB/cmMH)、超音波伝播速度は1412(m/s)であった。 また、この超音波ファントム用ゲルは、材料液のOH/NCOが4.0であって、OH/NCOの好ましい上限価である3.5を越えているため、保形性に乏しく流動性を示した。[実施例7] 下記の表4に示す構造式番号に対応する構造と分子量とアルキレンオキサイド(AO)のセグメントを有するポリオールI、IIとポリイソシアネートを表4に示す部数準備し、有機系ゲル膨張媒として下記表4に示す部数のプロピレンカーボネートと、触媒として下記表4に示す部数のジブチル錫ラウレートをポリオールに混合した後、この混合液をポリイソシアネートに混合してOH/NCOが2.8である材料液を調製した。そして、この材料液を実施例1と同様の条件下に反応させることによって、EO−POブロック共重合体のセグメントを備え、且つ、有機系ゲル膨張媒としてプロピレンカーボネートをゲル中に50質量%含有した超音波ファントム用のセグメント化ポリウレタンゲルを得た。 この超音波ファントム用ゲルについて、実施例1と同様に、製造直後の密度、超音波減衰係数、超音波伝播速度をそれぞれ測定したところ、密度は1.13(10−3kg/m3)、超音波減衰係数は0.29(dB/cmMH)、超音波伝播速度は1462(m/s)であった。更に、製造から8カ月後の密度、超音波減衰係数、超音波伝播速度をそれぞれ測定したところ、製造直後とほぼ同様の値が得られた。[実施例8] 下記の表5に示す構造式番号に対応する構造と分子量とアルキレンオキサイド(AO)のセグメントを有するポリオールとポリイソシアネートを表5に示す部数準備し、有機系ゲル膨張媒として下記表5に示す部数のテトラエチレングリコールジメチルエーテルと、触媒として下記表5に示す部数のジブチル錫ラウレートをポリオールに混合した後、この混合液をポリイソシアネートに混合して、OH/NCOが2.4である材料液を調製した。 この材料液を型内に注入し、実施例1と同様の条件下に反応させることによって、EOとPOのモル比が1:1であるEO−POランダム共重合体のセグメントを備え、且つ、有機系ゲル膨張媒としてテトラエチレングリコールジメチルエーテルをゲル中に71質量%含有した超音波ファントム用のセグメント化ポリウレタンゲルを得た。 この超音波ファントム用ゲルについて、実施例1と同様に、製造直後の密度、超音波減衰係数、超音波伝播速度をそれぞれ測定したところ、密度は1.03(10−3kg/m2)、超音波減衰係数は0.31(dB/cmMH)、超音波伝播速度は1465(m/s)であった。更に、製造から8カ月後の密度、超音波減衰係数、超音波伝播速度をそれぞれ測定したところ、製造直後とほぼ同様の値が得られた。 常温で大半ないし全てが液状であるアルキレンオキサイドのセグメントを有するセグメント化ポリウレタンゲル中に、ウレタン反応に関与しない不揮発性の有機系ゲル膨張媒が含有されていることを特徴とする超音波ファントム用ゲル。 アルキレンオキサイドのセグメントが、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体である請求項1に記載の超音波ファントム用ゲル。 共重合体中のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比が、20:80〜80:20である請求項2に記載の超音波ファントム用ゲル。 有機系ゲル膨張媒がセグメント化ポリウレタンゲル中に20〜80質量%含有されている請求項1又は請求項2に記載の超音波ファントム用ゲル。 有機系ゲル膨張媒がプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ポリプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールジエチルエーテルのいずれか単独又はこれらの任意の混合物である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の超音波ファントム用ゲル。 セグメント化ポリウレタンゲル中に、超音波減衰率を調整する減衰率調整剤が含有されている請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の超音波ファントム用ゲル。 減衰率調整剤が、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、発泡ポリスチレン、アクリルの架橋もしくは非架橋ビーズ、又は、ポリエチレン、グラファイト、ガラス、固形状パラフィンワックスのビーズのいずれかであって、1〜100μmの平均粒径を有するものである請求項6に記載の超音波ファントム用ゲル。 【課題】良好な超音波特性を備え、その超音波特性が長期間に亘って変動せず、雑菌増殖、変質、腐敗等も生じない超音波ファントム用ゲルを提供する。【解決手段】常温で大半ないし全てが液状であるアルキレンオキサイドのセグメントを有するセグメント化ポリウレタンゲル中に、ウレタン反応に関与しない不揮発性の有機系ゲル膨張媒が含有されている超音波ファントム用ゲルとする。不揮発性の有機系ゲル膨張媒によって、液状のセグメント等が伸展した状態に保たれ、セグメント間が拡張されるので、超音波減衰率や伝播速度等、良好な超音波特性を備えており、膨張媒の含有率の経時変化がないので良好な超音波特性が長期間維持される。有機系ゲル膨張媒を含むので雑菌増殖、変質、腐敗等も生じない。【選択図】なし