生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ビフェノール誘導体及びジフェノキノン誘導体の製造方法
出願番号:2005326008
年次:2007
IPC分類:C12P 7/22,C12P 7/24


特許情報キャッシュ

西橋 秀治 平橋 智裕 JP 2007129952 公開特許公報(A) 20070531 2005326008 20051110 ビフェノール誘導体及びジフェノキノン誘導体の製造方法 大日本インキ化学工業株式会社 000002886 河野 通洋 100124970 西橋 秀治 平橋 智裕 C12P 7/22 20060101AFI20070427BHJP C12P 7/24 20060101ALI20070427BHJP JPC12P7/22C12P7/24 6 OL 12 4B064 4B064AC18 4B064AC40 4B064BH04 4B064CA21 4B064CB11 4B064CB30 4B064CC09 4B064DA16 本発明は、ビフェノール誘導体及びジフェノキノン誘導体の製造方法に関する。 ビフェノール誘導体は、エポキシ樹脂、エンジニアリングプラスチック、フォトレジスト等の樹脂材料や酸化防止剤等として広く用いられている。このうち酵素を用いたビフェノール誘導体は、有害なホルマリンを発生しない等の理由により従来から各種の方法が提案されている。 例えば、水性媒体中において、ペルオキシダーゼ酵素過酸化物及びラジカル伝達薬剤の存在下で、水酸基等の置換基を有する置換芳香族化合物を反応させるビフェノール誘導体の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。 また、難水溶性ないし非水溶性有機溶媒と水からなる二相系混合溶媒を用いることにより、フェノールの低分子量重合物を合成する製造方法が提案されている(特許文献2参照)。 さらに、水性媒質中で、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するジアルコキシフェノールと、マンガンペルオキシダーゼと、酸化剤と、二価のマンガンイオンとを反応させてジアルコキシキノン2量体を含む第一生成物を得る第一工程と、 前記第一工程に引き続いて該第一生成物に還元剤を添加する第二工程とを有することを特徴とするジアルコキシフェノール2量体の製造方法が提案されている(特許文献3参照)。特表平11−503021号公報特開2000−41691号公報特開2005−229944号公報 しかしながら、特許文献1に記載の方法は、ラジカル伝達剤として、フェノールやモノーアルキルフェノール、チオフェノール、アニリンなどを用いる必要があった。このため反応後、これらのラジカル伝達剤の一部が2量化され、副生成物として生産される結果、生成物から目的のビフェノール誘導体のみを抽出する工程が別途必要であった。さらに、この方法は酵素としてペルオキシダーゼを用いることから、反応に酸化剤も添加する必要があったため、製造コストが高かった。 また、特許文献2に記載の二層系混合溶媒を用いる方法ではモノマーとなるフェノールが難水溶性ないし非水溶性有機溶媒相にも溶解する。従って、水側へ溶解した酵素と該有機溶媒側へ溶解したモノマーとの反応性が非常に低くなり、二量体収率が非常に低かった。さらに、この方法も酵素としてペルオキシダーゼを用いることから、反応には酸化剤として過酸化物も添加する必要があったため、製造コストがかさむという問題があった。 さらに、特許文献3に記載の方法は、フェノール誘導体と酵素と酸化剤を添加した後、長時間放置すると、ポリフェニレンアルコキシドの生成が進行する場合があるため、フェノール誘導体と酵素と酸化剤を添加した後、引き続き、還元剤を加える工程が必須であり、精密な製造管理が必要であった。 そこで本発明が解決しようとする課題は、ラジカル伝達剤や酸化剤を用いることなく、フェノール誘導体を酵素の存在下で高収率で重合して、ビフェノール誘導体前駆体およびビフェノール誘導体を簡便に製造する方法を提供することにある。 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、オキシダーゼを用いてフェノール類を酸化重合する反応であって、有機溶媒を特定範囲の割合で水性溶媒と混合して用いることで、ビフェノール誘導体を収率良く製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、水性溶媒と有機溶媒を含む混合溶媒中で、下記一般式(1)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるフェノール誘導体とオキシダーゼとを反応させて、下記一般式(2)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるジフェノキノン誘導体を製造する工程(1)と、前記工程(1)で得られたジフェノキノン誘導体を含む溶液に還元剤を添加して、下記一般式(3)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるビフェノール誘導体を製造する工程(2)とを有するビフェノール誘導体の製造方法であって、前記混合溶媒中の有機溶媒濃度が1〜25(vol)%の範囲であることを特徴とするビフェノール誘導体の製造方法を提供する。 また本発明は、水性溶媒と有機溶媒を含む混合溶媒中で、下記一般式(1)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるフェノール誘導体とオキシダーゼとを反応させて、下記一般式(2)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるジフェノキノン誘導体を製造する方法であって、前記混合溶媒中の有機溶媒濃度が1〜25(vol)%の範囲であることを特徴とするビフェノキノン誘導体の製造方法を提供する。 本発明の製造方法によれば、フェノール誘導体を酵素の存在下で重合し、高収率でビフェノール誘導体前駆体およびビフェノール誘導体を得ることができる。また、副生成物の生成を抑え、副生成物の精製工程を省くことができることから、簡便かつ低コストでビフェノール誘導体前駆体およびビフェノール誘導体を得ることができる。 また、フェノール誘導体を材料としてビフェノール誘導体を安定して製造することができ、しかも製造工程全体を通して低温という効率の良い条件で製造することができる。 さらに、本発明の製造方法は、フェノール誘導体と酵素と酸化剤を添加してジフェノキノン誘導体を生成した後、長時間、例えば1〜3時間程度放置しても、ポリフェニレンアルコキシドの生成が進行しない。このため、フェノール誘導体と酵素と酸化剤を添加してジフェノキノン誘導体を生成した後、引き続き還元剤を加える工程が必須ではなくなり精密な製造管理が不要である。1.工程(1) 本発明のビフェノール誘導体およびジフェノキノン誘導体の製造方法は、水性溶媒と有機溶媒とを含む混合溶媒(以下、単に「混合溶媒」という。)中で、下記一般式(1)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を示す。)で表されるフェノール誘導体(以下、単に「フェノール誘導体」という)とオキシダーゼとを反応させて、下記一般式(2)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を示す。)で表されるジフェノキノン誘導体(以下、単に「ジフェノキノン誘導体」という)を製造する工程(1)を行う。本発明は、工程(1)において前記混合溶媒中の有機溶媒濃度を1〜25(vol)%の範囲とすることを特徴とする。・基質 本発明で用いる基質としては、一般式(1)で表されるフェノール誘導体において、Rとしては炭素原子数1〜8のアルキル基のものが挙げられる。 より具体的には、炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等が挙げられ、これらの基は直鎖または分岐状であってもよい。炭素原子数1〜8のアルキル基としては、このうちメチル基が好ましい。 前記フェノール誘導体は、単独で用いても良いし、あるいは2種以上を併用しても良いものの、得られるジフェノキノン誘導体乃至ビフェノール誘導体を各種用途に適用する際の利便性という観点から単独で用いることが好ましい。 一般式(1)で表されるフェノール誘導体の前記混合溶媒に対する濃度(以下、「基質濃度」ということがある。)は、反応開始時に、下限値が0.1mM以上であり、さらに収量の面から1mM以上が好ましく、5mM以上がより好ましい。一方、上限値は30mM以下、収率の面から20mM以下がより好ましい。・酵素 本発明で用いるオキシダーゼとしては、例えばカテコールオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ等が挙げられ、その中で、フェノール類2量体の収率の点でラッカーゼが好ましいものとして挙げられる。本発明において、オキシダーゼは一種で用いてもよいし、二種以上を併用しても良い。 前記ラッカーゼは、植物、動物、微生物に広く存在することが知られており、いずれのものも使用可能であるが、このうち植物由来、微生物由来のラッカーゼが好ましいものとして挙げられる。 植物由来のラッカーゼとしては、漆の木由来のラッカーゼが好ましい。又、微生物由来のラッカーゼとしては、例えば細菌、真菌(糸状菌及び酵母を含む)に由来するものが挙げられるが、真菌の内白色腐朽菌等の担子菌類や子のう菌類に由来するラッカーゼが、特に好ましいものとして挙げられる。 このようなラッカーゼの具体例としては、アスペルギルス(Aspergillus)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、ピリキュラリア・オリザエ(P.oryzae)などのピリキュラリア(Pyricularia)属、トラメテス・ビローサ(T.villosa)、トラメテス・バーシカラー(T.versicolor)等のホウロクタケ(Trametes)属、リゾクトニア・ソラニ(R.solani)等のリゾクトニア(Rhizoctonia)属、コプリヌス・シネレウス(C.cinereus)等のコプリヌス(Coprinus)属、コリオルス・ヒルスツス(C.hirsutus)、コリオルス・バーシカラー(C.versicolor)等のコリオルス(Coriolus)属に由来するものが挙げられる。 また、市販されているラッカーゼとして、「ラッカーゼダイワ Y120」(商標名、大和化成株式会社製)等が例示される。 これらのラッカーゼは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。 オキシダーゼの前記混合溶媒に対する濃度(以下、「酵素濃度」ということがある。)は、本発明の効果を損なわない範囲でその酵素活性により適宜加減すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、前記混合溶媒に対して下限値が1×105POU/L以上、好ましくは6×105POU/L以上である。一方、上限値は、過剰量であってもかまわず、特に限定されるものではないが、経済的な面から、4×107POU/L以下、より好ましくは3×107POU/L以下である。 ただし1POUは、4−アミノアンチピリンとフェノールにpH4.5、30℃でオキシダーゼを作用させるとき、前記オキシダーゼが触媒する酸化縮合反応により生成するキノンイミン色素の505nmにおける吸光度を反応初期1分間に0.1増加させるのに必要な酵素量を言うものとする。・溶媒 本発明に用いる混合溶媒は水性溶媒と有機溶媒とを含む。ここで利用しうる有機溶媒の代表的な例としては、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノールが挙げられる。また水性溶媒としては、水、pH緩衝液が用いられる。pH緩衝液としては、例えば、マロン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、等が挙げられる。 前記混合溶媒中の有機溶媒の割合は、1〜25(vol)%、好ましくは1〜20(vol)%、より好ましくは7〜13(vol)%、特に好ましくは9〜11(vol)%である。有機溶媒の割合が1〜25(vol)%の範囲であれば、副生成物として製造される三量体以上のポリマーの生成量を低く抑えることができる結果、生成物中に占めるジフェノキノン誘導体の生成割合を高くすることができる。さらに7〜13(vol)%の範囲では、上記の理由に加え、基質転換率をより高く保持できること、さらにジフェノキノン誘導体の収率をより向上させることができる。さらに、9〜11(vol)%の範囲であれば、上記の理由に加え、三量体以上のポリマーを生成することなく、ジフェノキノン誘導体のみを生成することができる。1.4)反応条件 本発明の工程(1)において、混合溶媒、フェノール誘導体及びオキシダーゼとを含む反応溶液の調製は、オキシダーゼが失活して本発明の効果を損なう条件でなければ特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法が挙げられる。I)水性溶媒にオキシダーゼを加えてオキシダーゼが溶解乃至分散した溶液を調整し、一方、有機溶媒にフェノール誘導体を加えてフェノール誘導体が溶解乃至分散した溶液を調整し、これら両者を混合することにより前記反応溶液を調製することができる。II)有機溶媒にフェノール誘導体を加えてフェノール誘導体が溶解乃至分散した溶液を調製し、得られた溶液に水性溶媒を加えた後、さらにオキシダーゼもしくは水性溶媒に溶解乃至分散させたオキシダーゼを含む溶液を加えることにより前記反応溶液を調製することができる。III)水性溶媒にフェノール誘導体を加えてフェノール誘導体が溶解乃至分散した溶液を調製し、得られた溶液に有機溶媒を加えた後、さらにオキシダーゼもしくは水性溶媒に溶解乃至分散させたオキシダーゼを含む溶液を加えることにより前記反応溶液を調製することができる。 上記のように調製した反応溶液は所望の反応温度、pH等に制御され、フェノール誘導体の酵素反応が行われる。 反応温度は、基質濃度、オキシダーゼの種類、酵素濃度に応じて適宜調整されうるが、比較的低温に設定することができ、5〜70℃とすることが好ましく、20〜60℃とすることが特に好ましい。 pHはオキシダーゼの種類に応じて適宜調製されうるが、pH3.0〜8.0が好ましく、pH3.5〜7.0が特に好ましい。 また反応時間は30分〜24時間が好ましく、1時間〜20時間が特に好ましい。 本工程では、前記の条件を満たし、且つ攪拌している状態では、水浴中もしくは気流中でも構わない。2.工程(2) 本発明のビフェノール誘導体の製造方法は、前記工程(1)で得られたジフェノキノン誘導体を含む溶液に還元剤を添加して、下記一般式(3)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるビフェノール誘導体を製造する工程(2)を行う。・還元剤 本発明で用いる還元剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば従来公知のものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウムなどが挙げられる。 還元剤の添加量は、前記工程(1)で得られたジフェノキノン誘導体を含む溶液において、該ジフェノキノン誘導体の濃度の当量以上とすることが好ましい。・反応条件 本発明の工程(2)において、前記工程(1)で得られたジフェノキノン誘導体を含む溶液は、前記工程(1)で得られた反応終了後の反応溶液をそのまま用いてもよいし、前記工程(1)で得られた反応終了後の反応溶液を一旦精製した後、ジフェノキノン誘導体が溶解可能な溶媒に前記工程(1)で得られたジフェノキノン誘導体を加えることによって、新たにジフェノキノン誘導体を含む溶液を調製してもよい。 なお、前者の場合、工程(1)の実施中に、波長470nm付近におけるジフェノキノン誘導体の吸光度を経時的に測定し、上記の反応率を算出して、例えば、反応率が最大に達した時点など、その状況に応じて還元剤を添加して工程(1)を終了するとともに、工程(2)を開始することもできる。このようにすると、さらに信頼性良く高い収率でビフェノール誘導体を得ることができる。ただし、反応率は、後述する式(3)より求められることから、反応率が最大に達する時点は、ジフェノキノン誘導体の波長470nm付近の経時測定における極大吸収点として確認することができる。 上記のように調製したジフェノキノン誘導体を含む溶液は所望の反応温度に制御され、ジフェノキノン誘導体がビフェノール誘導体に還元される。 この際、反応温度は、ビフェノール誘導体を安定に得るために0℃以上とすることが好ましい。製造効率、副生物の生成抑制の面では反応温度が低い方が好ましく、25℃以下とすることが好ましい。工程(2)では、充分な収率をあげることができるため、反応温度を23℃付近(室温)とすることが、収率と製造効率とのバランス面で好ましい。 反応時間は、還元剤の添加時点を起点として、好ましくは30秒以下、さらに好ましくは5〜10秒である。本発明のビフェノール誘導体の製造方法では、工程(2)の反応時間が上記の通り非常に短くとも、充分な収率のビフェノール誘導体を得ることができる。 本発明のビフェノール誘導体の製造方法において、pHはオキシダーゼの種類等に応じて適宜調整されうるが、pH 2.5〜6.5、特に好ましくはpH 4.0〜5.0とすることが好ましい。・精製 上記の工程(2)において得られたビフェノール誘導体に副生成物が含まれている場合には公知慣用の方法でビフェノール誘導体を分離・精製してもよい。分離・精製法としては、例えば、ビフェノール誘導体が水に不溶であることから濾過あるいは遠心分離にて回収し精製することができる。また、還元剤を添加後、有機溶媒にて抽出することにより、より精製度の高いビフェノール誘導体を得ることができる。 また、特開2003−327554号公報に記載されたように、ビフェノール誘導体と3量体以上のポリマーとをpH2.5〜5の酸性条件下でアルコールを加えて混合攪拌し、濾過あるいは遠心分離にてビフェノール誘導体を3量体以上のポリマーから分離・精製することもできる。 抽出に用いる有機溶媒としては、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル等が挙げられるが、水相と分離できることから酢酸エチルが好ましい。酢酸エチルの使用量は、工程(2)にて用いた反応溶液の量に対して0.5〜10倍量が好ましく、当量〜5倍量が特に好ましい。また、その際の温度は、室温とすること最も好ましい。さらに、その際の攪拌方法は、振盪、回転子もしくは攪拌翼を用いた攪拌のいずれでもよい。 このようにして得られた酢酸エチル抽出液から、減圧濃縮により酢酸エチルを除去することによって、ビフェノール誘導体を得る。3.用途 本発明の製造方法により得られるビフェノール誘導体は、種々の分野、例えば、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂の原料、あるいは、ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の原料として、また、これらの樹脂に用いられる硬化剤として用いることができ、さらに、これらの樹脂は、難燃剤、酸化防止剤等として用いることができ、さらに芳香族ジオールが使用される他の用途にも広く使用することができる。 以下、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。(ラッカーゼ含有溶液の調製) 50mMのクエン酸(和光純薬株式会社製特級試薬)緩衝液(pH4.5)にラッカーゼ粉末(大和化成株式会社製「ラッカーゼダイワ Y120」商標名)を1.2×107POU/Lとなるよう懸濁し、遠心分離にて沈殿を除去して得た上清を、ラッカーゼを含む溶液(以下、「ラッカーゼ含有溶液」という)として調製した。(フェノール含有溶液の調製) 濃度が1mMとなるように2,6−ジメチルフェノールをアセトンに添加して、2,6−ジメチルフェノールを含む溶液(以下、「フェノール含有溶液」という)を調製した。(反応溶液の調製及びジフェノキノン誘導体の合成)フェノール含有溶液(10ml)、ラッカーゼ含有溶液(10ml)、水性溶媒と有機溶媒とが表1の比率となるよう調整した50mMクエン酸緩衝液(pH4.5)およびアセトンを含む混合溶媒(80ml)を混合して反応溶液を調製し、直ちに、反応溶液を50℃に制御して反応を開始させた。(ビフェノール誘導体の合成) 反応開始から1時間後、還元剤として過剰量のハイドロサルファイトナトリウム(和光純薬株式会社特級試薬製)を添加し、更に5倍量のアセトニトリルにて抽出してビフェノール誘導体を含む反応生成物を得た。(生成量の測定)前記抽出物を以下の条件にて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析に供した。ポンプ:島津製作所(株)製LC−10ADvpカラム:ジーエルサイエンス(株)製Inertsil ODS−3検出器:島津製作所(株)製SPD−M10Avp展開溶媒:水:アセトニトリル=80:20→0:100(リニアグラジエント)温度:40℃送液速度:1.0mL/min検出波長:267nm,271nm(3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールの収率) 上記条件によるHPLC測定において検出された吸収ピークの強度により、生成物に含まれる基質の2,6−ジメチルフェノールのモル濃度α及び反応生成物の3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールのモル濃度βを求め、以下の式により、基質転換率、二量体収率および三量体以上のポリマー収率(以下、単に「ポリマー収率」という)を求めた(表1及び図1)。なお、モル濃度βを算出した吸収ピークが反応生成物3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールのものであることはH−NMRを用いて確認した(図2)。(二量体収率)[%]=β/[(1/2)×(基質として供給した2,6−ジメチルフェノールモル濃度)]×100 また前記モル濃度αと、基質として供給した2,6−ジメチルフェノールの濃度との比率によって表される値を、2,6−ジメチルフェノールの残存率(以下、「残存率」という)とし、下記式により算出した。(基質転換率)[%]=[1−α/(基質として供給した2,6−ジメチルフェノールモル濃度)]×100 さらに、基質として供給した2,6−ジメチルフェノールのうち3量体以上のポリマーの生成に使用された量と、基質として供給した2,6−ジメチルフェノールの濃度との比率によって表される値である2,6−ジメチルフェノールのポリマー収率を、前記二量体収率及び残存率を用いて、下記式により算出した。(ポリマー収率)[%]=(基質転換率)−(二量体収率) 表1に示した結果より、比較例1と比してアセトン−水の混合溶媒系反応を用いた方が基質転換率に対する二量体の収率が特異的かつ大幅に高くなることが分かった。従って、本発明による混合溶媒系反応を用いることによって、二量体収率がはるかに向上することが示された。本発明の製造方法における基質転換率、二量体収率および三量体以上のポリマー収率の関係を表すグラフである。反応生成物(3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノール)の存在を確認したH−NMRチャートである。水性溶媒と有機溶媒を含む混合溶媒中で、下記一般式(1)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるフェノール誘導体とオキシダーゼとを反応させて、下記一般式(2)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるジフェノキノン誘導体を製造する工程(1)と、前記工程(1)で得られたジフェノキノン誘導体を含む溶液に還元剤を添加して、下記一般式(3)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるビフェノール誘導体を製造する工程(2)とを有するビフェノール誘導体の製造方法であって、前記混合溶媒中の有機溶媒濃度が1〜25(vol)%の範囲であることを特徴とするビフェノール誘導体の製造方法。反応開始時の混合溶媒中の前記フェノール誘導体濃度が0.1〜30mMの範囲にある請求項1記載のビフェノール誘導体の製造方法。前記有機溶媒が、アセトン、2−プロパノール、メタノール、エタノールからなる群から選ばれる一種以上の有機溶媒である請求項1又は2に記載のビフェノール誘導体の製造方法。前記オキシダーゼが、ラッカーゼである請求項1〜3のいずれか一項に記載のビフェノール誘導体の製造方法。前記フェノール誘導体が、2,6−ジメチルフェノールである請求項1〜4のいずれか一項に記載のビフェノール誘導体の製造方法。水性溶媒と有機溶媒を含む混合溶媒中で、下記一般式(1)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるフェノール誘導体とオキシダーゼとを反応させて、下記一般式(2)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるジフェノキノン誘導体を製造する方法であって、前記混合溶媒中の有機溶媒濃度が1〜25(vol)%の範囲であることを特徴とするビフェノキノン誘導体の製造方法。 【課題】ラジカル伝達剤や酸化剤を用いることなく、フェノール誘導体を酵素の存在下で高収率で重合して、ビフェノール誘導体前駆体およびビフェノール誘導体を簡便に製造する方法を提供する。【解決手段】オキシダーゼを用いてフェノール類を酸化重合する反応であって、有機溶媒を1〜25(vol)%という特定範囲の割合で水性溶媒と混合して用いることで、ビフェノール誘導体を収率良く製造する。【選択図】なし


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