タイトル: | 公開特許公報(A)_フレーム原子吸光法によるセレンの定量分析方法 |
出願番号: | 2005325970 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 21/31 |
久保田 剛包 JP 2007132790 公開特許公報(A) 20070531 2005325970 20051110 フレーム原子吸光法によるセレンの定量分析方法 住友金属鉱山株式会社 000183303 田中 増顕 100087583 久保田 剛包 G01N 21/31 20060101AFI20070427BHJP JPG01N21/31 610B 3 OL 4 2G059 2G059AA01 2G059BB04 2G059CC03 2G059DD02 2G059DD03 2G059EE01 2G059GG10 2G059HH03 2G059HH06 2G059NN01 本発明は、フレーム原子吸光法によるセレンの定量分析方法に関する。 セレンは有害物質として排水や土壌に対して規制の対象になっている。セレンの分析は原子吸光法やICP発光分析法が一般的である。装置への試料導入は、水溶液をネブライザー(噴霧器)で噴霧して原子吸光分析装置のフレーム(炎)やICP発光分析装置のプラズマに導入する方法と、セレンを還元して気体状の水素化物としてこれらに導入する方法がある。前者は簡便であるが感度が低いという問題があり、後者は高感度であるが予備還元等の前処理操作が伴い現場で簡単には実施しずらいという問題がある。セレンを取り扱う工程や、排水処理において簡便な分析方法があれば工程管理上大変役に立つ。 原子吸光分析装置はICP発光分析装置に比べ安価で、操作も簡便で現場分析に適している。原子吸光分析装置を用いて簡便に濃度0.5mg/l程度まで分析できれば工程管理に大変役立つ。原子吸光法ではフレームは空気−アセチレンフレームが一般的であるがこれはセレンに対しては感度が不十分でこのような低濃度まで分析することは困難である。また、アルゴン−水素フレームを用いればこの濃度での分析が可能であるが、フレームの温度が低いので共存元素による化学干渉を受けやすいという問題がある。 セレンは水溶液中では酸素と化合して亜セレン酸イオン又はセレン酸イオンとして存在しているが、フレーム原子吸光法でセレンを分析する場合に鉄等の共存元素が存在すると、フレーム中でセレンがこれらと複合酸化物を生成して原子状セレンへの解離が抑えられるために原子吸収が弱くなり分析感度が低下する。 そこで、本発明は、フレーム中でのセレンの複合酸化物生成を抑制する効果のある第三の物質(リン酸、又はリン酸塩)を添加することにより、共存元素による干渉を抑制することが出来るセレンの定量分析方法を提供するものである。 上記課題を解決するために、本発明の方法はフレーム原子吸光法を用いるセレンの定量分析方法において、共存元素の影響を除去するために、測定液にリン酸又はリン酸塩を加えて測定することを特徴とする。更に、上記のセレンの定量分析方法において、前記共存元素は、Al、Ca、Cd、Co、Cr、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、Si、V、Znの少なくとも1を含むことを特徴とする。更に、上記測定液中に加えられるリン酸又はリン酸塩に基づくリン酸イオン濃度が100mg/lから20,000mg/lの範囲であることを特徴とする。 測定液に添加する干渉抑制剤について調査した結果、リン酸イオンを添加することにより、Al、Ca、Cd、Co、Cr、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、Si、V、Znその他多くの共存元素の干渉を抑制できることを見出した。干渉抑制のメカニズムは、リン酸イオンが存在するとフレーム中で鉄等の共存元素がリンと複合酸化物を生成するために、セレンと鉄等の共存元素との複合酸化物生成が抑えられ分析感度の低下が抑えられるためであると考えられる。 本発明による方法を用いれば、現場にて工程試料中のセレン濃度を分析感度の低下を招くことなく簡便且つ迅速に分析することが出来る。 添加するリン酸イオンはリン酸及びリン酸塩のいずれでも良い。リン酸塩としてはリン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三アンモニウム、 リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等を挙げることができる。好ましいのはリン酸である。 添加するリン酸の量は、共存元素の量が少ない場合には少なくても良いが、共存元素の量が多くなるとリン酸の量も増加させる必要がある。リン酸イオンの添加量は、多いほど干渉抑制の効果は増すが、一方で溶液の粘性が増加してフレームへの導入効率が低下する。このため、上記の理由から一般的には測定液中のリン酸イオン濃度は100から20、000mg/lの範囲が適当である。好ましくは、1,000mg/lから15,000mg/lである。原子吸光分析で用いるフレームはアルゴン−水素フレーム以外に窒素−水素フレームでも良い。(実施例1) 本発明のリン酸イオン添加による共存元素の干渉抑制の効果を示すために、リン酸イオン添加なしとリン酸イオン添加ありの場合を実施した。これらを比較した結果を下記の表1に示す。 ここで、セレンの濃度は20mg/l、共存元素の濃度は200mg/lで、リン酸イオン添加量は3,000mg/lである。 表1から明らかなように、リン酸イオン添加なしの場合には、感度の低下が見られたが、リン酸イオン添加の場合には、共存元素の影響はほとんどなく、感度の低下はほとんど見られなかった。(実施例2) 工程試料(セレン及び鉄を含む酸性溶液)の分析方法を以下に示す。2種類の試料溶液の一定量をそれぞれ100mlメスフラスコに分取し、リン酸(85%)を1ml添加した後、純水で標線まで希釈し(リン酸:14,400mg/l)、この溶液を原子吸光光度計のアルゴン−水素フレーム中に噴霧して波長196.0nmにおける吸光度を測定し、あらかじめ作成した検量線からセレン濃度を求めた。 検量線作成は、セレン0mg,0.5mg,1mg,1.5mg及び2.0mgを夫々100mlメスフラスコに分取し、夫々にリン酸1mlを加え、純水で標線まで希釈し、この溶液の一部を原子吸光光度計のアルゴン−水素フレーム中に噴霧して波長196.0nmにおける吸光度を測定し、セレン量と吸光度との関係線を作成した。 本発明の方法による分析結果とJIS K0102 工場廃水試験方法による結果の比較を下記の表2に示す。両者一致した結果が得られた。 実施例1と2の結果から、添加するリン酸の量は、共存元素の量が少ない場合には少なくても良いが、共存元素の量が多くなるとリン酸の量も増加させる必要があることが分かった。リン酸イオンの添加量は、多いほど干渉抑制の効果は増すが、一方で溶液の粘性が増加してフレームへの導入効率が低下する。このため、測定液中のリン酸イオン濃度は100mg/lから20,000mg/lの範囲内が適当であるが、好ましくは、1,000mg/lから15,000mg/lの範囲内にあることが適当であることが推測される。フレーム原子吸光法を用いてセレンを定量分析方法において、共存元素の影響を除去するために、測定液にリン酸又はリン酸塩を加えて測定することを特徴とするセレンの定量分析方法。請求項1記載のセレンの定量分析方法において、前記共存元素は、Al、Ca、Cd、Co、Cr、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、Si、V、Znの少なくとも1を含むことを特徴とするセレンの定量分析方法。請求項1記載のセレンの定量分析方法において、測定液中に加えられるリン酸又はリン酸塩に基づくリン酸イオン濃度が100mg/lから20,000mg/lの範囲であることを特徴とするセレンの定量分析方法。 【課題】セレンは水溶液中では酸素と化合して亜セレン酸イオン又はセレン酸イオンとして存在しているが、フレーム原子吸光法でセレンを分析する場合に鉄等の共存元素が存在すると、フレーム中でセレンがこれらと複合酸化物を生成して原子状セレンへの解離が抑えられるために原子吸収が弱くなり分析感度が低下する。本発明は、この分析感度の低下を防止するセレンの定量分析方法を提供する。【解決手段】フレーム原子吸光法を用いてセレンを定量分析方法において、共存元素の影響を除去するために、測定液にリン酸又はリン酸塩を加えて測定する。共存元素は、Al、Ca、Cd、Co、Cr、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、Si、V、Znの少なくとも1を含む。測定液中に加えられるリン酸又はリン酸塩に基づくリン酸イオン濃度が100から20,000mg/lの範囲であることが好ましい。【選択図】 なし