生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ノックアウトマウス
出願番号:2005325275
年次:2007
IPC分類:A01K 67/027,C12N 15/09,C12N 5/10


特許情報キャッシュ

澤村 大輔 清水 宏 JP 2007129938 公開特許公報(A) 20070531 2005325275 20051109 ノックアウトマウス 国立大学法人 北海道大学 504173471 鷲田 公一 100105050 澤村 大輔 清水 宏 A01K 67/027 20060101AFI20070427BHJP C12N 15/09 20060101ALI20070427BHJP C12N 5/10 20060101ALI20070427BHJP JPA01K67/027C12N15/00 AC12N5/00 B 6 OL 8 4B024 4B065 4B024AA01 4B024AA10 4B024AA20 4B024CA02 4B024DA02 4B024GA30 4B024HA20 4B065AA91X 4B065AB05 4B065AC20 4B065BA01 4B065BA25 4B065BD50 4B065CA44 本発明は、BP180遺伝子の機能が欠損しており、表皮基底膜を構成するタンパク質の一つである180kD類天疱瘡抗原を欠損したマウスに関する。 潰瘍治療の実験をするために、潰瘍が形成された動物モデルが用いられる。これまでの動物モデルは、皮膚に物理的な衝撃を与えて潰瘍を形成させて作製されていた。このように作製された動物モデルの潰瘍の深さや大きさは、個々の動物によって一定ではなく、そのモデルから得られる実験データの信頼性が十分ではなかった。 皮膚潰瘍とは、表皮の部分的欠損が皮下組織にまで達した状態である。したがって、表皮と真皮の間に存在する表皮基底膜を構成するタンパク質が欠損すると、潰瘍が形成されやすくなる。基底膜タンパク質の例には、VII型コラーゲン、ラミニン5、β4インテグリンなどのほか、180kD類天疱瘡抗原(XVIIコラーゲン)が含まれる。これらのうち、ラミニン5、VII型コラーゲン、またはα6インテグリンを欠損したマウスが報告されている(非特許文献1〜4参照)。しかしながら、これらのマウスは、生後間もなく(2〜3日)に死亡するため、潰瘍治療の実験の動物モデルには適さない。 一方、180kD類天疱瘡抗原は、BP180遺伝子にコードされたタンパク質である。BP180遺伝子のcDNAのアクセッション番号はNM 007732であって、ゲノム情報は非特許文献5に記載されている。J. Invest Dermatol. 2003 121 (4): 720-31J. Cell Biol. 1999 145 (6): 1309-23.J. Cell Sci. 1999 112 (Pt 21): 3641-8.J. Cell Biol. 1998 143 (1):253-66.J. Biol. Chem. 268 (12), 8825-8834 (1993) 表皮基底膜を構成するタンパク質を欠損したマウスは、基底膜のレベルで皮膚潰瘍を一定に発症することができ、潰瘍治療の実験動物モデルとして有用であると考えられる。そこで本発明は、基底膜タンパク質を欠損したマウスであって、潰瘍治療の実験の動物モデルとして十分な寿命を有するマウスを提供することを課題とする。 本発明は、BP180遺伝子を不活性化させて、180kD類天疱瘡抗原(以下、「BP180タンパク質」とも称する)の発現を抑制すると、基底膜レベルで一定の皮膚潰瘍を容易に発症し、かつ長寿命であるマウスが得られることを見出して完成された。すなわち本発明は以下の通りである。[1]BP180遺伝子の機能が欠損したノックアウトマウス。[2]BP180遺伝子の機能が欠損したノックアウトマウスの製造方法であって、BP180遺伝子が不活性化されたマウス胚幹細胞をマウス胚盤胞に導入して得られたキメラ胚を、メスマウスの子宮に着床させて得られるキメラマウス同士を交配させて、ヘテロ接合体のノックアウトマウス、またはホモ接合体のノックアウトマウスを得るステップを含む、ノックアウトマウスの製造方法。 本発明のマウスは、皮膚潰瘍治療の実験のための動物モデルとして用いることができるので、皮膚潰瘍の治療剤の開発や、皮膚再生治療の開発に応用される。1.本発明のマウス 本発明のマウスは、そのBP180遺伝子の機能が欠損されていることを特徴とする。BP180遺伝子の機能が欠損されているとは、BP180遺伝子の少なくとも一部が欠失している;少なくとも一部が他の遺伝子と置換されている;任意の部位に外来シークエンスが挿入されている;または当該遺伝子のプロモーターが不活性化されている、ことを含む。 欠失または置換される、BP180遺伝子の少なくとも一部には、遺伝子のコード領域またはエキソンが含まれることが好ましく、特にエキソン2が含まれることが好ましい。また、置換している他の遺伝子は、選択マーカー遺伝子であることが好ましく、選択マーカー遺伝子の例には、ネオマイシン耐性遺伝子、単純ウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子、およびジフテリアトキシンA断片遺伝子などが含まれるが、好ましくはネオマイシン耐性遺伝子である。 本発明のマウスは、BP180遺伝子における対立遺伝子のいずれか一方の機能が欠損されているヘテロ接合体でも、対立遺伝子の両方の機能が欠損されているホモ接合体のノックアウトマウスであってもよいが、180kD類天疱瘡抗原を欠損しているマウスはホモ接合体のノックアウトマウスである。 本発明のマウスは、そのBP180遺伝子の機能が欠損されており、さらにホモ接合体である本発明のマウスはBP180タンパク質を欠損している。BP180タンパク質は、皮膚基底膜を構成するタンパク質の一つであって、XVIIコラーゲンまたは180kD類天疱瘡抗原と称されることもある。皮膚基底膜とは、表皮と真皮の間に存在し、表皮と真皮を結合させるほか、外界からの力学的ストレスから皮膚を守る働きなどを担っている。したがって、BP180タンパク質を発現できない本発明のマウスは、外界からの刺激によって、容易に皮膚潰瘍、またはびらんを発症する。組織学的に言えば、本発明のマウスは表皮と真皮の基底膜部に解離を生じさせやすい。 一方、本発明のマウスはBP180タンパク質を発現しないが、通常は、その他の基底膜タンパク質を正常に発現する。 さらに、本発明のマウスは、実験動物モデルとして十分な寿命を有しうる。実験動物モデルとして十分な寿命とは、たとえば3〜4ヶ月以上である。 一方、本発明のマウスは陰部にびらんを発症しているため、通常は生殖能力を有さない。 本発明のマウスは種々の用途で用いられうるが、たとえば実験動物モデルとして用いられる。動物モデルとして用いるとは、抗潰瘍剤;皮膚の再生治療;表皮水疱症の遺伝子治療の効果を検討するために、これらのモデルを用いることを含む。2.本発明のマウスの製造方法 本発明のマウスの製造方法は特に制限されないが、たとえばBP180遺伝子が不活性化されたマウス胚幹細胞をマウス杯盤胞に導入して得られるキメラ胚を、メスマウスの子宮に着床させて得られるキメラマウスを得るステップを含む。より具体的には、たとえば以下のA)〜G)の工程で、本発明のマウスが得られる。 A)BP180ゲノムDNAのフラグメントをクローニングする工程; B)得られたフラグメントの少なくとも一部を欠失させるか、または他の遺伝子と置換させて、BP180遺伝子を不活性化する改変フラグメントを得る工程; C)得られた改変フラグメントをベクターに組み込み、ターゲッティングベクターを得る工程; D)得られたターゲティングベクターをマウス胚幹細胞に導入して、BP180遺伝子が不活性化されたマウス胚幹細胞を得る工程; E)得られたマウス胚幹細胞をマウス杯盤胞に導入して、キメラ胚を得る工程;および F)得られたキメラ胚をメスマウスの子宮に着床させて、キメラマウスを発生させる工程。 さらに本発明のマウスの製造方法は、G)前記キメラマウス同士を交配させて、ヘテロ接合体のノックアウトマウス、またはホモ接合体のノックアウトマウスを得る工程を含みうる。以下、それぞれの工程について説明する。A)BP180のゲノムDNAフラグメントをクローニングする工程 BP180の、所望のゲノムDNAフラグメントは、マウスゲノムライブラリーから、クローニング、さらに必要に応じてサブクローニングすることによって得られる。クローニングまたはサブクローニングされるフラグメントには、コード領域(好ましくは、ATG開始コドンを有する第2エキソン)が含まれることが好ましい。 たとえば、129Sv/Evマウスライブラリーから14.7kbのフラグメントをクローニングして、さらに11.5kbのNheI−NotIフラグメントをサブクローニングすれば、所望のフラグメントが得られる。B)BP180遺伝子を不活性化する改変フラグメントを得る工程 工程A)で得られたフラグメントの一部を欠失させるか、または他の遺伝子と置換させることで、BP180遺伝子を不活性化するフラグメント(以下、「改変フラグメント」ともいう)を得ることができる。欠失または置換される部分は、コード領域(好ましくはエキソン2)を含むことが好ましい。 置換する他の遺伝子を、選択マーカーすなわち薬剤耐性遺伝子(たとえば、PGK−neo:ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター/ネオマイシン抵抗遺伝子カセット)とすれば、後述するマウス胚幹細胞の選択が容易になりうる。C)改変フラグメントを組み込まれたターゲッティングベクターを得る工程 改変フラグメントを、任意のベクターに導入してターゲッティングベクターを得る。ベクターの種類は特に制限されないが、改変フラグメントの上流領域と下流領域の相同配列を含むことが好ましい。ベクターの例には、プラスミドベクターpSP72(プロメガ株式会社)を適宜改変したものが含まれる。これらのベクターに改変遺伝子断片を通常の手段で組み込むことにより、ターゲッティングベクターが得られる。なお、ターゲッティングベクターはマウス胚幹細胞に相同組み換えを起こすことができるものであれば、特に制限されない。D)BP180遺伝子が不活性化されたマウス胚幹細胞を得る工程 BP180遺伝子が不活性化されたマウス胚幹細胞は、前記ターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞に導入し;遺伝子断片が組み込まれた組み換えマウス胚幹細胞を選別する;ことにより得られる。 前記ターゲッティングベクターのマウス胚幹細胞への導入は、エレクトロポレーション法のほか任意の方法によって行われうる。ターゲッティングベクターは、導入前に線状化されることが好ましい。ベクターを導入するマウス胚幹細胞の種類は特に制限されないが、フラグメントをクローニングしたマウスと同系統のマウスであることが好ましい。 さらに、ターゲッティングベクターを導入されたマウス胚幹細胞から、組み換えマウス胚幹細胞を選択する。たとえば前述の遺伝子断片が薬剤(たとえばネオマイシン)耐性遺伝子を含む場合は、ターゲッティングベクターを導入されたマウス胚幹細胞を、当該薬剤を含む培地で培養することで、組み換えマウス胚幹細胞を選択することができる。選択されたマウス胚幹細胞は、公知の遺伝子解析法により組み換え体であることを確認され得る。E)マウス胚幹細胞を、マウス杯盤胞に導入してキメラ胚を得る工程 得られた組み換えマウス胚幹細胞は、所望する種類のマウス初期胚に導入される。マウス初期胚への導入は、マイクロインジェクションなどの公知の方法で行うことができる。好ましいマウスの種類の例には、C57BL/6Jが含まれる。F)キメラ胚をメスマウスの子宮に着床させて、キメラマウス発生させる工程 マウス胚幹細胞を導入されたマウス初期胚を、仮親として用いるメスマウスの子宮内に着床させ、F1のキメラマウスを得ることができる。仮親として用いるメスマウスは、キメラ胚を得るために用いたマウスと同系統のマウスとすればよい。G)F1のキメラマウス同士を交配させて、ヘテロ接合体マウスまたはホモ接合体マウスを得る工程 前記キメラマウス同士を交配させることにより、1)ヘテロ接合体のノックアウトマウス、または2)ホモ接合体のノックアウトマウスを得ることができる。得られたノックアウトマウスが、ヘテロ接合体か、またはホモ接合体であるかは、サザンブロット法などの公知の遺伝子解析法により行うことができる。 以下、実施例を参照して本発明をさらに説明するが、これにより本発明の範囲は限定されない。[実施例1] ノックアウトマウスの製造 マウス129Sv/Evゲノムライブラリー(Stratagene, La Jolla, CA)から、14.7kbマウスゲノムDNAフラグメントをクローニングした。このフラグメントは、BP180ゲノムDNAの5’UTRおよびexon2を有する。さらに、14.7kbマウスゲノムDNAフラグメントから、11.5kbのNheI−NotIフラグメントをサブクローニングした。 エキソン2のATG開始コドンの6bp上流部位から、エキソン2の1.2kb下流部位(イントロン2内部)までの領域を、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター/ネオマイシン抵抗遺伝子カセット(PGK−neo)で置換した。置換された領域は、5’−TATGGGATGGATGTGACCAAGAAAAGCAAGCG−3’(配列番号2)で開始しており、5’−AAGCCAGCGGTTGGCACCTGCTCTGGCCACGCT−3’(配列番号3)で終結している。 このストラテジーによって、ATG開始コドンを含むexon2のコード領域と、イントロン2の一部とが、PGK−neoで置換された改変フラグメントを得た。これにより、遺伝子転写がPGK−neoでトラップされ、第2エキソンよりも下流のエキソン配列が発現されなかった。さらに改変フラグメントを、プラスミドベクターpSP72(プロメガ株式会社)の改変物(図1を参照)に組み込んで、ターゲッティングベクターpTVCOL17を得た。pSP72の改変物の塩基配列を、後述の配列表に示した(配列番号1)。ターゲッティングベクターの前記ターゲッティングベクターは、"in Genious Targeting Laboratory, Inc." に委託して製造された。 得られたターゲッティングベクターをNotIによって線状化して、129Sv/Ev胎生期幹細胞(WW1 cell line, NIH[National Institutes of Health]に登録されている)に、エレクトロポレーションによってトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、抗生物質G418を含む(500mg/ml)、ES細胞用の10%FCS−DMEM培地において37℃で培養し、組み換えクローンを選択した。 選択された200の抵抗性コロニーを拡張させ、以下の条件でPCRを行い、組み換えクローンを同定した。 まず、ターゲッティング構築物を得るために用いられる領域外のショートホモロジーアーム(short homology arm)の下流側(3’)へのプライマーYA1(5’−CATACCAGGGCCAACTTTGA−3’)(配列番号4)と、Neoカセットの5’末端へのプライマーN1(5’−TTGTGTAGCGCCAAGTGCCA−3’)(配列番号5)を得た。 プライマーYA1とN1を用いて、0.75mMのMgCl2存在下、「94℃で1分間、60℃で1分間、さらに72℃で1分間」35サイクルのPCR反応により、562bpフラグメントを増幅させた。 適切にターゲッティングされたマウス胚幹細胞を、C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories; Bar Harbor, ME)から得られた胚盤胞にマイクロインジェクトして、キメラ胚を得た。得られたキメラ胚を、C57BL/6Jメスマウスに着床して、キメラマウス(C57BL/6Jメスと交雑されている)を発生させた。 F1のヘテロ接合体を、6週齢を超えるC57BL/6Jと交雑させ、インタークロスさせてBP180−/−マウス(ホモ接合体)とした。 成体マウス、および新生仔マウスについて、3つのPCRプライマー[YA1,N1,WT1(5’−CCTTATATCCCTTGACTGCC−3’)(配列番号6)]を用いて、その遺伝子型を同定した。 YA1およびN1のプライマーペアを用いたPCRでは562bp突然変異バンドが増幅され、一方、YA1およびWT1のプライマーペアを用いたPCRでは、野生型ゲノムBP180DNAの496bpフラグメントが増幅された。[実施例2] マウスの生存試験 BP180−/−マウスの生存曲線と、正常マウスの生存曲線を図3に示す。図3に示されたように、BP180−/−マウスの約20%が50日以上、約10%が100日以上生存したので、潰瘍治療の実験動物として十分に用いられうる。 本発明のマウスを動物モデルとして用いることで、新たな皮膚潰瘍治療剤の開発が行われうる。実施例1で用いられたターゲッティングベクターのベクター図である。図1に示されたターゲッティングベクターのバックボーンの配列である。本発明のノックアウトマウス(ホモ接合体)と、正常マウスの生存曲線を示す図である。 BP180遺伝子の機能が欠損したノックアウトマウス。 BP180遺伝子の少なくとも一部が欠失しているか、または他の遺伝子と置換されている、請求項1記載のノックアウトマウス。 前記BP180遺伝子の少なくとも一部がエキソン2を含む、請求項2記載のノックアウトマウス。 前記他の遺伝子が選択マーカー遺伝子である、請求項2記載のノックアウトマウス。 ホモ接合体である、請求項1記載のノックアウトマウス。 BP180遺伝子の機能が欠損したノックアウトマウスの製造方法であって、 BP180遺伝子が不活性化されたマウス胚幹細胞をマウス胚盤胞に導入して得られたキメラ胚を、メスマウスの子宮に着床させて得られるキメラマウス同士を交配させて、ヘテロ接合体のノックアウトマウス、またはホモ接合体のノックアウトマウスを得るステップを含む、ノックアウトマウスの製造方法。 【課題】基底膜レベルで一定レベルの皮膚潰瘍を容易に発症し、かつ実験動物モデルとして十分な寿命を有するマウスを提供すること。【解決手段】BP180遺伝子が不活性化された、180kD類天疱瘡抗原を発現できないノックアウトマウス、およびその製造方法であって、BP180が不活性化されたマウス胚幹細胞をマウスに導入して得られたキメラ胚を、マウスの子宮に着床させて得られるキメラマウス同士を交配させて、ヘテロ接合体またはホモ接合体のノックアウトマウスを得るステップを含む方法。配列表


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