タイトル: | 公開特許公報(A)_ポリアミンを用いた免疫測定法用検体処理液組成物及びキット、並びにこれらを用いる免疫測定法 |
出願番号: | 2005316631 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 33/531,G01N 21/78,G01N 33/543 |
小笠原 真也 瀧澤 和幸 JP 2007121205 公開特許公報(A) 20070517 2005316631 20051031 ポリアミンを用いた免疫測定法用検体処理液組成物及びキット、並びにこれらを用いる免疫測定法 デンカ生研株式会社 591125371 熊倉 禎男 100082005 小川 信夫 100084009 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 平山 孝二 100114007 市川 さつき 100123777 小笠原 真也 瀧澤 和幸 G01N 33/531 20060101AFI20070413BHJP G01N 21/78 20060101ALI20070413BHJP G01N 33/543 20060101ALI20070413BHJP JPG01N33/531 BG01N21/78 ZG01N33/543 501M 13 OL 13 2G054 2G054AA06 2G054AB05 2G054EA06 2G054GB04 本発明は、抗原または抗体を検出する為の免疫測定法において測定時の擬似反応の要因となる、抗体もしくは抗原への非特異的な結合を抑え、分析対象物を正確に且つ迅速に検出または定量することのできる免疫測定法に用いるための検体処理液組成物及びその使用に関する。 抗原抗体反応のような免疫反応の特異性を利用して試料中の分析対象物を検出または定量する分析方法(免疫学的分析方法)として、免疫拡散法、酵素免疫測定法、凝集法等種々の方法論が実用化されている(例えば、Annu Rev Microbiol.1960;14:161−76 “Intepretation of immunodiffusion tests.” Growle AJ, Biochimie.1972;54(7):837−42 “Enzyme−Immunoassay for the measurement of antigens using peroxidase conjugates.” Avrameas S, Guilbert B, Med Dosw Mikrobiol. 1950;2(2):167−8 “Evaluation of agglutination reaction in infectious mononucleosis.” Chojnowski J, Stetkiewicz S,参照)。 しかし、これらの手法を使用する際には、検体中に含まれる分析対象物以外の成分の抗体や抗原への非特異的な結合や、測定法に用いる資材(抗体を結合させたラテックスや金コロイド等のコロイド標識抗体、酵素標識抗体など)の使用時の分散性が常に問題となり、これらが要因となって非特異的な反応を起こして擬似陽性反応を呈する場合があり、診断が正確に行えない場合があった(例えば、非特許文献1及び2参照)。J Clin Microbiol 1979 Nov;10(5):703−7 “Analysis of nonspecific reactions in enzyme−linked immunosorbent assay testing for human rotavirus.” Yolken RH, Stopa PJ,Arch Viol. 1987;95(1−2):41−52 “Removal of nonspecific hemmagglutination inhibitors, immunoglobulin G,and immunoglobulin A with streptococcal cells and its application to the rubella hemagglutination inhibition test.” Kawano K, Minamishima Y, 従って、本発明は免疫測定法において検体中に含まれる分析対象物以外の成分の非特異的な結合を軽減し、且つ免疫測定法用資材の分散能を高め、これらの効果によって正確且つ迅速な診断を行うことを目的とする。 上記課題は、免疫測定法において、一定の組成からなる検体処理液組成物を用いることにより達成されることを見出し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、ポリアミンを含有する免疫測定法に用いるための検体処理液組成物に関する。 上記組成物において、ポリアミンは以下の一般式(I)で表されるアルキレンポリアミンであることが好ましい。NH2(CH2)aNH(CH2)bNH(CH2)c・・・・NH(CH2)zNH2 (I)式中、a:1以上の整数、b,c,・・・・,z:それぞれ独立に0以上の整数である。 また、上記組成物において、該ポリアミンは、1,3−ジアミノプロパン、プトレッシン、カダベリン、カルジン(ノルスペルミジン)、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン(ノルスペルミン)、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N’−ビス(アミノプロピル)カダベリン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、及びカルドヘキサミンより成る群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。 また上記組成物は、無機塩類及び界面活性剤より成る群より選択される少なくとも1種類の化合物を更に含むことが好ましい。 該無機塩類は01(1A)族、02(2A)族、13(3B)族から成る群より選択される金属塩類の少なくとも1種類であることが好ましく、該界面活性剤はポリアルキレンオキサイド誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましい。 また、上記組成物においてはポリアミンは0.001〜1Mの範囲で含有されることが好ましい。 本発明の他の実施態様は、検体中の分析対象物を免疫反応を利用して測定する免疫測定法において、検体を上記いずれかの組成物と混合することを特徴とする免疫測定法、である。 本発明の更なる他の実施態様は、(1)患者から採取した検体を上記いずれかの組成物と混合する、(2)前記混合液を分析対象物と特異的に反応する捕捉試薬が固定化された担体と接触させて分析対象物を前記担体上に捕捉する、(3)前記担体上に捕捉された分析対象物と、分析対象物と特異的に反応する標識化検出試薬とを反応させ、捕捉試薬−分析対象物−標識化検出試薬の免疫複合体を形成させる、及び(4)前記免疫複合体を検出する、工程を含む免疫測定法、である。 また、本発明の他の実施態様は、(1)患者から採取した検体、検体中の分析対象物と特異的に反応する標識化検出試薬及び上記いずれかの組成物を混合して、分析対象物−標識化検出試薬の免疫複合体を形成させる、(2)前記混合液を分析対象物と特異的に反応する捕捉試薬が固定化された担体と接触させて、前記担体上に捕捉試薬−分析対象物−検出試薬の免疫複合体を形成させる、及び(4)前記(3)で得られた免疫複合体を検出する、工程を含む免疫測定法、である。 本発明の他の実施態様として、上記いずれかの組成物を含む、免疫測定法用キットを提供する。 前記キットは、患者から採取した検体中の分析対象物に特異的に反応する捕捉試薬、分析対象物と特異的に反応する標識化検出試薬を更に含むことが好ましい。 また、前記キットにおいて、捕捉試薬は担体上に固定されていることが好ましい。 本発明の、ポリアミンを含む免疫測定法用検体処理液組成物を使用することにより、分析対象物以外の成分に起因する非特異的な反応を軽減させることができ、なお且つ免疫測定法用資材の検出反応時における分散能を高めることができ、分析対象物の正確な判定を行うことが可能となった。特に患者由来の脱離細胞成分、粘液成分などは捕捉試薬及び/あるいは検出試薬に吸着すると、擬似陽性の反応を呈する場合があるが、本発明の組成物、これを用いた免疫測定法及び免疫測定法用キットはこれらの非特異的な反応を軽減できるという優れた効果を奏する。 本発明のポリアミンを含む免疫測定法用検体処理液組成物を使用することにより、免疫測定法における検出感度を増強するという優れた効果を奏することは驚くべきことである。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明の免疫測定法に用いるための検体処理液組成物(以下、単に本発明の組成物ともいう)について説明する。検体処理液組成物とは、免疫測定法において検体中の分析対象物を検出する為の反応過程及び/またはその前処理過程に関与する溶液組成物を意味する。より具体的には、ウイルスや細菌等に感染した患者の咽頭あるいは鼻腔等から採取した検体を浮遊させるための溶液、浮遊後更に、標識化抗体等の標識化検出試薬と反応させるための溶液等を意味する。 免疫測定法用検体処理液の基本組成として、免疫学的手法による試料の検出または定量において通常使用されるバッファー類を使用できる。より具体的には、生理食塩水、リン酸緩衝性生理食塩水(PBS)、ゼラチン添加PBS、ウシ血清アルブミン(BSA)添加PBS、グッドの緩衝液、子牛インフュージョンブロス(VIB)、ハートインフュージョンブロス、イーグルの最小必須培地(EMEM)、BSA添加EMEMなどが挙げられるが、この限りではない。また、上記バッファー類は2種類以上を組み合わせて用いても良い。 本発明の組成物は、ポリアミン類から選択される少なくとも一種の化合物を含む。 本明細書において、ポリアミンとは、同一分子内にアミノ基を2以上有する脂肪族炭化水素化合物の総称を意味する。より好ましくは、第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を分子内に二つ以上持つ脂肪族炭化水素化合物である。 本発明において更に好ましいポリアミンとしては以下の一般式(I)で表されるポリアルキレンポリアミンが挙げられる。NH2(CH2)aNH(CH2)bNH(CH2)c・・・・NH(CH2)zNH2 (I)式中、a:1以上の整数、b,c,・・・・,z:それぞれ独立に0以上の整数である。 上記式において、より好ましくはaは1〜5であり、b,c,・・・・,zはそれぞれ独立に0〜5であることが好ましい。 ポリアミンの例として、生体内ポリアミンまたは人工的に得られる生体内ポリアミン誘導体が挙げられ、より具体的には、1,3−ジアミノプロパン、プトレッシン、カダベリン、カルジン(ノルスペルミジン)、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン(ノルスペルミン)、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N'’−ビス(アミノプロピル)カダベリン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミンあるいはそれらの誘導体が挙げられる。 ポリアミンの構造について以下に記載する。(1)ジアミン:NH2(CH2)aNH21,3−ジアミノプロパン(a=3)、プトレッシン(a=4)、カダベリン(a=5)(2)トリアミン:NH2(CH2)aNH(CH2)bNH2カルジン(ノルスペルミジン)(a=3, b=3)、スペルミジン(a=3, b=4)、ホモスペルミジン(a=4, b=4)、アミノプロピルカダベリン(a=3, b=5)(3)テトラアミン:NH2(CH2)aNH(CH2)bNH(CH2)cNH2テルミン(ノルスペルミン)(a=3, b=3, c=3)、スペルミン(a=3, b=4, c=3)、テルモスペルミン(a=3, b=3, c=4)、カナバルミン(a=4, b=3, c=4)、アミノペンチルノルスペルミジン(a=3, b=3, c=5)、N,N’−ビス(アミノプロピル)カダベリン(a=3, b=5, c=3)(4)ペンタアミン:NH2(CH2)aNH(CH2)bNH(CH2)cNH(CH2)dNH2カルドペンタミン(a=3, b=3, c=3, d=3)、ホモカルドペンタミン(a=3, b=3, c=3, d=4)(5)ヘキサアミン:NH2(CH2)aNH(CH2)bNH(CH2)cNH(CH2)dNH(CH2)eNH2カルドヘキサミン(a=3, b=3, c=3, d=3, e=3) 本発明の組成物は、これらのポリアミンを2種類以上含んでいてもよい。 組成物中のポリアミンの濃度は、用いるポリアミンの種類等により適宜変更することができるが、例えば、0.01〜1M程度、より好ましくは0.02〜0.2Mである。 検体の種類(例えば、患者由来の脱離・剥離細胞等あるいはそれらの細胞から放出された細胞成分、粘性成分、糖成分等を含むような検体)によっては、反応中に不要な凝集塊(凝集物)が形成され、これが非特異的な反応の原因となる場合があるが、ポリアミンはこれら凝集を抑制する凝集抑制剤としての作用も期待できる。また、コロイド粒子を用いた免疫測定法に際しては、コロイド粒子同士の非特異的な凝集に起因する非特異的な反応・非特異的な判定結果が起こる場合があるが、ポリアミンはこれら凝集を抑制する凝集抑制剤としての作用も期待できる。従って、このような検体の検出を行う場合には、特に本発明の組成物を用いることが好ましい。 本発明の組成物は、好ましくは無機塩類及び界面活性剤より成る群より選択される少なくとも1種類の化合物を更に含む。無機塩を添加することにより、コロイド粒子の分散性の向上、抗原抗体反応における非特異的な反応解消効果が更に期待されるからである。また界面活性剤を添加すると、膜部材(例えばニトロセルロース膜)の測定時(反応時)の濡れ性が向上し、それにより反応性の向上が見られるため好ましい。また、抗原の可溶化(検出抗原の検体からの抽出効率化)という効果も奏するため好ましい。 また本発明の組成物として、ポリアミン、無機塩類、及び界面活性剤の3種類を含むものが本発明の効果の点において特に好ましい。 本発明の組成物において用いられる無機塩類の例としては、01(1A)族、02(2A)族、13(3B)族から成る群より選択される金属塩類であり、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の塩化物、臭化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩等が挙げられるが、この限りではない。コスト面から、塩化ナトリウム、塩化カリウムが好ましい。 無機塩類を用いる場合、本発明の組成物中に0.01〜0.3M程度、より好ましくは0.05〜0.1M程度、さらに好ましくは0.05M程度の濃度となるように添加することが好ましい。 本発明の組成物において用いられる界面活性剤の例としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、及び両性界面活性剤のいずれでも使用することが出来るが、特に特異的(抗原抗体)反応への影響の少ないノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、ポリアルキレンオキサイド基を分子中に有するポリアルキレンオキサイド誘導体が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド基としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド基のアルキレンオキサイドの繰り返し数は、通常6〜20程度であり、6〜12が更に好ましい。ポリアルキレンオキサイド誘導体としては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン縮合物が挙げられる。特に好ましいポリアルキレンオキサイド誘導体としては、特異的反応への影響の少ないポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが挙げられる。 界面活性剤を用いる場合、本発明の組成物中に0.1〜5%(v/v)程度の濃度となるように添加することが好ましい。 上記組成物には更に保存剤、防腐剤等の添加剤を更に使用しても良い。防腐剤としては、アジ化ナトリウム等が挙げられる。また、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンや2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾロン系の防腐剤も使用可能である。 本発明の免疫測定法において説明する。 本発明において、免疫測定法とは、抗体抗原反応のような免疫反応の特異性を利用して試料中の分析対象物を免疫学的手法により検出または定量する方法を意味する。 本発明の免疫測定法としては、免疫拡散法、酵素免疫測定法、凝集法等が挙げられる。本発明の方法は特に、フロースルーアッセイやラテラルフローアッセイなどの簡易迅速診断において有利に使用することができる。 本発明の免疫測定法は、上記組成物を用いることを特徴とする。免疫測定法において、本発明の組成物を検体と混合して用いることにより、細菌、ウイルス、ホルモン、その他臨床マーカー等の様々な抗原、抗体等を正確且つ迅速に分析する事ができる。 本発明の免疫測定法の第一の態様は、(1)患者から採取した検体を上述した本発明の組成物と混合する、(2)前記混合液を分析対象物と特異的に反応する捕捉試薬が固定化された担体と接触させて分析対象物を前記担体上に捕捉する、(3)前記担体上に捕捉された分析対象物と、分析対象物に特異的に反応する標識化検出試薬とを反応させ、捕捉試薬−分析対象物−標識化検出試薬の免疫複合体を形成させる、及び(4)前記免疫複合体を検出する、工程を含む免疫測定法、である。 (1)の工程において本発明の組成物と混合した検体中の分析対象物は、(2)の工程において担体上の捕捉試薬に捕捉され、分析対象物−捕捉試薬の免疫複合体を形成する。(2)の工程後、担体上に残存する検体液由来物を水、本発明の組成物、その他バッファー等により洗浄してもよい。任意に洗浄した後、分析対象物に特異的に反応する標識化検出試薬を前記分析対象物が捕捉された担体上に滴下し、捕捉試薬−分析対象物−標識化検出試薬の免疫複合体を担体上に捕捉する。その後、過剰の標識化試薬を任意に洗浄し、担体上の、捕捉試薬−分析対象物−標識化検出試薬の免疫複合体を、標識化検出試薬の標識を利用して検出する。標識物が例えば、金コロイドのような発色物である場合には、目視で検出することができる。また、例えば酵素標識の場合には、酵素の作用によって発色するような酵素の基質を更に添加することにより、発色を行なって検出する。これらの各工程において、本発明の組成物と混合した検体を用いることにより、検体中に存在する患者由来の脱離細胞成分や粘液成分と、捕捉試薬、検出試薬との非特異的な反応が軽減され、偽陽性を防止することができる。 本発明の免疫測定法の第二の態様は、(1)患者から採取した検体、検体中の分析対象物と特異的に反応する標識化検出試薬及び上述した本発明の組成物を混合して、分析対象物−標識化検出試薬の免疫複合体を形成させる、(2)前記混合液を分析対象物と特異的に反応する捕捉試薬が固定化された担体と接触させて、前記担体上に捕捉試薬−分析対象物−検出試薬の免疫複合体を形成させる、及び(4)前記(3)で得られた免疫複合体を検出する、工程を含む免疫測定法、である。 上記方法では、(1)の工程において、患者から採取した検体、検体中の分析対象物と特異的に反応する標識化検出試薬及び上述した本発明の組成物を混合して分析対象物−標識化検出試薬の免疫複合体を形成させる。このとき、検体、標識化検出試薬の混合順序はいずれが先でもよい。(2)の工程において前記分析対象物−標識化検出試薬の免疫複合体を、捕捉試薬が固定された担体上に滴下することにより、分析対象物−捕捉試薬の免疫複合体を形成する。(2)の工程後、担体上に残存する検体液由来物を水、本発明の組成物、その他バッファー等により洗浄してもよい。任意に洗浄した後、担体上の、捕捉試薬−分析対象物−標識化検出試薬の免疫複合体を、標識化検出試薬の標識を利用して検出する。これらの各工程において、本発明の組成物と混合した検体を用いると、検体中に存在する患者由来の脱離細胞成分や粘液成分と、捕捉試薬、検出試薬との非特異的な反応が軽減され、偽陽性を防止することができる。 本明細書において、捕捉試薬とは、分析対象物に特異的に結合し、分析対象物と複合体を形成するものを意味する。従って、分析対象物により捕捉試薬が異なることは当然であるが、一般には分析対象物が、細菌、ウイルス、ホルモン、その他の臨床マーカーの場合にはこれらに対し特異的に反応して結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、レセプター、リガンド等が挙げられる。その他、ウイルス抗原等の抗原、ウイルス中空粒子、遺伝子組換えタンパク質等が挙げられる。 本明細書において、検出試薬とは、分析対象物に特異的に結合し、分析対象物と複合体を形成し得るものである。これは直接または間接的に標識化され得るものである場合もあり、分析対象物と複合体を形成した後に、何らかの手段で検出を可能とせしめる試薬を意味する。酵素で標識化された場合には、該酵素により触媒される反応により比色法、蛍光法等により検出可能な物質を生成する該酵素の基質を添加することにより複合体の検出を行う事ができる。標識化される前の検出試薬としては捕捉試薬について述べたものと同じものが挙げられる。また、標識は酵素、蛍光・発光性標識、磁性体標識、放射性同位元素、金コロイド等の金属コロイド、ラテックス等が挙げられる。酵素標識を用いる場合には、使用される酵素としては例えば、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコース‐6‐リン酸脱水素酵素が挙げられる。 次に本発明の免疫測定法用キットについて説明する。本発明の免疫測定法用キットは、上述した本発明の組成物を含むことを特徴とする。 本発明のキットは更に、患者から採取した検体中の分析対象物に特異的に反応する捕捉試薬、分析対象物と特異的に反応する標識化検出試薬を含んでいてもよい。 また、該捕捉試薬が担体上に固定されていてもよい。すなわち、本発明のキットは、捕捉試薬の代わりに、捕捉試薬が固定された担体を含んでいても良い。本発明において担体とは、分析対象物−捕捉試薬または標識化検出試薬−分析対象物−捕捉試薬の免疫複合体を捕集するための、ろ過フィルターの役割、捕捉試薬を固定化する支持体の役割、あるいは免疫複合体を検出するための標識物の反応、例えば酵素−基質反応を行なう反応場の役割を行なうものであり、通常、膜(メンブレン)状の形態を有する。 従って、担体(濾過フィルター)の孔径(直径)または保留粒子径は、免疫複合体を捕集できる程度のサイズであることが必要である。例えば、0.2〜2.0μm、好ましくは0.2〜0.6μmである。また、担体の材質の例としては、不織布、紙、ガラス繊維、シリカ繊維、ニトロセルロース、セルロースエステル、ニトロセルロースとセルロースエステルの混合物、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ナイロン6,6、ポリエステル、コットン、ステンレススチール繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。 本発明のキットは、例えば、上述した担体を備えたアッセイ装置を含むものであってもよい。アッセイ装置は、いわゆる、フロースルー式メンブレンアッセイ法またはラテラルフロー式メンブレンアッセイ法を利用する装置であることが好ましい。フロースルー式メンブレンアッセイ法を利用するアッセイ装置の具体例は、例えば図5及び6に示されるような装置である。 図5は装置の平面図であり、図6は、図5のI−I’切断端面図である。図5及び6において、aは、調製した検体試料を滴下する開口部を有し、底面部に試料が通過するための穴(Aホール及びBホール)を備えたアダプターである。bは被測定物に特異的に結合する捕捉物質が結合したメンブレンであり、cは液体を吸収する部材である。 本発明のキットはさらに必要により、洗浄液組成物、標識化検出試薬の標識が酵素標識である場合には、後述する酵素の基質、反応停止液等を含むことができる。 また、必要に応じて、キットの活性を検査するためのバッファーのみからなる陰性コントロール液、抗原性物質などの被測定物を含むバッファーからなる陽性コントロールを含んでいてもよい。さらに、滅菌綿棒等の検体採取器具を含んでいてもよい。 本発明において、分析対象物の例としては、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、HAV、HBc、HCV、HIV、EBV、ノーウォーク様ウイルス等のウイルス抗原、クラミジア・トラコマティス、溶連菌、百日咳菌、ヘリコバクター・ピロリ、レプトスピラ、トレポネーマ・パリダム、トキソプラズマ・ゴンディ、ボレリア、炭疽菌、MRSA等の細菌抗原、マイコプラズマ脂質抗原、ヒト繊毛性ゴナドトロピン等のペプチドホルモン、ステロイドホルモン等のステロイド、エピネフリンやモルヒネ等の生理活性アミン類、ビタミンB類等のビタミン類、プロスタングランジン類、テトラサイクリン等の抗生物質、細菌等が産生する毒素、各種腫瘍マーカー、農薬、抗大腸菌抗体、抗サルモネラ抗体、抗ブドウ球菌抗体、抗カンピロバクター抗体、抗ウェルシュ菌抗体、抗腸炎ビブリオ菌抗体、抗ベロトキシン抗体、抗ヒトトランスフェリン抗体、抗ヒトアルブミン抗体、抗ヒト免疫グロブリン抗体、抗マイクログロブリン抗体、抗CRP抗体、抗トロポニン抗体、抗HCG抗体、抗クラミジア・トラコマティス抗体、抗ストレプトリジンO抗体、抗ヘリコバクター・ピロリ抗体、抗β−グルカン抗体、抗HBe抗体、抗HBs抗体、抗アデノウイルス抗体、抗HIV抗体、抗ロタウイルス抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パルボウイルス抗体、抗RSウイルス抗体、抗RF抗体、病原微生物に由来する核酸成分に相補的なヌクレオチド等を挙げることができるが、これらに限定されない。 以下、本発明を実施例に基づき更に具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例に限定されるものではない。実施例1 フロースルー型アッセイ装置を用いたインフルエンザウイルスの検出(1)検出方法 インフルエンザA型ウイルスまたはB型ウイルスを含むサンプルを緩衝液に浮遊させた(それぞれ6〜15×1011pfu/mL)。その溶液500μLと金コロイド標識抗インフルエンザ抗体8.0OD520、50μLを混合し反応させる。一定時間反応後、フィルター(例えば、0.22μm)で濾過した後、アッセイ装置(図5及び6に記載と同様のデバイス)へ全量滴下する。液が膜部材に全て吸収された後、抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を吸着させた部分の膜部材が金コロイドの色(例えば、赤色〜赤褐色)に着色していれば、サンプル中にインフルエンザウイルスが存在していると判定する。色調の変化がなく膜部材の色のままであれば、サンプル中にインフルエンザウイルスが存在していないと判定する。使用した緩衝液組成: Bis−Tris(pH 7.0) 20mM ウシ血清アルブミン 1%(w/v) NaCl 50mM ポリエチレングリコールモノ-p-イソオクチルフェニルエーテル (Triton X-100、ナカライテスク製) 5%(v/v) 上記緩衝液組成に加え、本発明の方法としてポリアミンを、また対照実験としてアルギニンを添加し実験を行った。ポリアミンとしてはプトレッシン、スペルミジン、スペルミンを用い、それぞれ25mMから200mMまで、25mM毎に濃度を変えて、非特異反応が抑制されえる境界値を決定した。結果を図1及び図2に示す。 また、様々な濃度のポリアミンを用いて、インフルエンザウイルス抗原の希釈濃度を変化させて、感度を調べた(表1及び表2、図3及び4)。 該インフルエンザ検出試薬は簡易迅速診断を狙った診断法である為、最終的な検査の判定は目視判定で行なわれる。その為、図中の判定境界は、目視判定結果と検出スポット中の金コロイド密度(赤色の濃さ)によって決定した。その為、検出境界とは、検出スポット中の金コロイド相対密度がその境界値以下であれば陰性と、境界値以上であれば陽性と判断する、判定境界値であり、その値は約24(RD/mm2)である。なお、縦軸Density(RD/mm2)はRelative Density(相対密度)を示し、検出スポットのカウント数の密度をデンシトメトリーで算出した値である。よって、Mean Value × Num.Pixels / Area による算出によって出された値であり、単位はO.D.(530nm)/mm2である。 スペルミジン添加により、またその添加濃度の増加により、該インフルエンザウイルス検出試薬の非特異反応は解消された(図1及び図2)。 A型、B型両方のインフルエンザウイルス検出試薬の検出強度(感度)は、様々なポリアミンの添加によって維持または更に増強される結果が得られた(図3及び4)。 また、図2、図4の結果より、B型インフルエンザウイルス検出試薬の非特異抑制および検出強度(感度)は、アルギニンに比してポリアミンの添加によって、驚くべき事に増強されていることがわかる。 着色の度合はRD(相対密度(relative density))で表されており、具体的には検出スポットのカウント数の密度をデンシトメトリーで算出した値(RD=平均値×ピクセル数/面積)(RD : Mean Value × Num.Pixels / Area)(単位はO.D.(530nm)/mm2)である。なお、530nmは、金コロイド粒子の極大吸収波長である。極大吸収波長は、粒径の差によって数nm範囲でずれる場合が有るが結果に対しての影響は小さいため、補正をしていない。インフルエンザA型ウイルスを測定する免疫測定法において本発明の組成物による非特異反応抑制効果を示した図である。インフルエンザB型ウイルスを測定する免疫測定法において本発明の組成物による非特異反応抑制効果を示した図である。インフルエンザウイルスA型抗原を測定する免疫測定法における本発明の組成物の感度を示した図である。インフルエンザウイルスB型抗原を測定する免疫測定法における本発明の組成物の感度を示した図である。本発明の方法に用いることのできる装置の一例(平面図)を示す。図4のI−I’切断端面図である。符号の説明a:調製した検体試料を滴下する開口部を有するアダプターb:は被測定物に特異的に結合する捕捉物質が結合したメンブレンc:液体吸収部材A:試料が通過するための穴B:試料が通過するための穴ポリアミンを含有する、免疫測定法用検体処理液組成物。ポリアミンが以下の一般式(I)で表されるアルキレンポリアミンである、請求項1記載の組成物:NH2(CH2)aNH(CH2)bNH(CH2)c・・・・NH(CH2)zNH2 (I)式中、a:1以上の整数、b,c,・・・・,z:それぞれ独立に0以上の整数である。該ポリアミンが、1,3−ジアミノプロパン、プトレッシン、カダベリン、カルジン(ノルスペルミジン)、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン(ノルスペルミン)、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N’−ビス(アミノプロピル)カダベリン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、及びカルドヘキサミンより成る群より選択される少なくとも一種である請求項1または2に記載の組成物。無機塩類及び界面活性剤より成る群より選択される少なくとも1種類の化合物を更に含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。該無機塩類が01(1A)族、02(2A)族、13(3B)族から成る群より選択される金属塩類の少なくとも1種類である請求項4に記載の組成物。該界面活性剤がポリアルキレンオキサイド誘導体から選択される少なくとも一種である請求項4または5に記載の組成物。ポリアミンを0.001〜1Mの範囲で含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。検体中の分析対象物を免疫反応を利用して測定する免疫測定法において、検体を請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物と混合することを特徴とする、上記免疫測定法。(1)患者から採取した検体を請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物と混合する、(2)前記混合液を分析対象物と特異的に反応する捕捉試薬が固定化された担体と接触させて分析対象物を前記担体上に捕捉する、(3)前記担体上に捕捉された分析対象物と、分析対象物と特異的に反応する標識化検出試薬とを反応させ、捕捉試薬−分析対象物−標識化検出試薬の免疫複合体を形成させる、及び(4)前記免疫複合体を検出する、工程を含む免疫測定法。(1)患者から採取した検体、検体中の分析対象物と特異的に反応する標識化検出試薬及び請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物を混合して、分析対象物−標識化検出試薬の免疫複合体を形成させる、(2)前記混合液を分析対象物と特異的に反応する捕捉試薬が固定化された担体と接触させて、前記担体上に捕捉試薬−分析対象物−検出試薬の免疫複合体を形成させる、及び(4)前記(3)で得られた免疫複合体を検出する、工程を含む免疫測定法。請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物を含む、免疫測定法用キット。患者から採取した検体中の分析対象物に特異的に反応する捕捉試薬、分析対象物と特異的に反応する標識化検出試薬を更に含む、請求項11記載の免疫測定法用キット。該捕捉試薬が担体上に固定されている、請求項12記載の免疫測定法用キット。 【課題】本発明は免疫測定法において検体中に含まれる分析対象物以外の成分の非特異的な結合を軽減し、且つ免疫測定法用資材の分散能を高め、これらの効果によって正確且つ迅速な診断を行うことを目的とする。【解決手段】上記課題は、ポリアミンを含む、免疫測定法に用いるための検体処理液組成物、特にポリアミンが以下の一般式(I)で表されるアルキレンポリアミンである本発明の組成物:NH2(CH2)aNH(CH2)bNH(CH2)c・・・・NH(CH2)zNH2 (I)式中、a:1以上の整数、b,c,・・・・,z:それぞれ独立に0以上の整数である、により解決されることが見出された。【選択図】なし