生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_褐変原因菌検出培地およびその調製方法
出願番号:2005309739
年次:2007
IPC分類:C12Q 1/04


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田口 憲人 遠田 昌人 JP 2007116917 公開特許公報(A) 20070517 2005309739 20051025 褐変原因菌検出培地およびその調製方法 東洋製罐株式会社 000003768 坂本 徹 100070747 原田 卓治 100104329 田口 憲人 遠田 昌人 C12Q 1/04 20060101AFI20070413BHJP JPC12Q1/04 2 OL 6 4B063 4B063QA01 4B063QA18 4B063QQ06 4B063QQ07 4B063QR44 4B063QR48 4B063QR50 4B063QR69 4B063QS36 4B063QX01 本発明は、缶詰等容器詰食品の加熱殺菌後に生じる褐変の原因となる細菌を検出するための改良された培地およびその調製方法に関する。 従来容器詰食品の加熱殺菌後に生じる褐変の原因となる細菌を検出するためSMA培地(標準寒天培地)やPGG培地が使用されている。PGG培地の組成は、通常ペプトン1%、ビーフエクストラクト0.5%、グルコース5%、グルタミン酸ナトリウム5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%からなり、pHは7.0〜7.5である。PGG培地は、これらの成分の粉末を蒸留水に溶かし、オートクレーブで121℃、15分の加熱滅菌を行うことによって調製する。 しかし、以前より、このようにしてPGG培地を調製する場合、オートクレーブによる加熱により培地自体がある程度褐変することが知られている。 オートクレーブによって培地に生成される褐変物質(メラノイジン)には抗菌作用があることが知られており、このためこの褐変物質が生成したPGG培地で褐変原因菌の増殖を行うと、SMA培地で増殖を行った場合に比べて検出される生菌数が少ないという結果を生じ、褐変原因菌の正確な検出ができない、という問題を生じていた。また、褐変原因菌の培養を開始する以前に培地自体がある程度褐変しているために、バックグラウンドが高くなり、褐変原因菌の視認性が劣るという問題を生じていた。 本発明は、褐変原因菌検出用培地としての従来のPGG培地の問題点にかんがみなされたものであって、褐変原因菌の増殖開始前に培地自体の褐変が生じない改良された褐変原因菌検出培地を提供し、またその調製方法を提供しようとするものである。 PGG培地の調製に際し、オートクレーブによる加熱により培地自体に褐変が生じるのは、PGG培地の組成に糖成分とアミノ酸成分が含まれているため、これら両成分による非酵素的褐変反応が生じるためと考えられる。本発明者らは、上記本発明の課題を解決するため研究と実験を重ねる過程においてこの点に着目し、従来のようにPGG培地中の糖成分とアミノ酸成分を混合した後にオートクレーブで加熱滅菌するかわりに両成分を分けてそれぞれ加熱滅菌した後に混合して培地とすれば、両成分間の非酵素的褐変反応を抑制できることを見出し、本発明に到達した。また、本発明者らは、従来のPGG培地組成の1成分であるビーフエクストラクトが糖成分と非酵素的に反応するアミノ酸を多量に含んでいる上に加熱によりそれ自体褐変し、培地自体の褐変を増大する原因の一つとなっていることを見出し、ビーフエクストラクトをこのような褐変を起こし難い成分であるイーストエクストラクトに変えることにより培地自体の褐変を減少させることに成功した。 すなわち、上記本発明の課題を解決する褐変原因菌検出培地の調製方法は、PGG培地を構成する成分中ビーフエクストラクトをイーストエクストラクトで置換するとともに、該培地を構成する成分中糖成分と他の成分をそれぞれ別個に加熱滅菌した後混合することを特徴とするものである。 また、上記本発明の課題を解決する褐変原因菌検出培地は、PGG培地を構成する成分中ビーフエクストラクトをイーストエクストラクトで置換するとともに、該培地を構成する成分中糖成分と他の成分をそれぞれ別個に加熱滅菌した後混合してなるものである。 本発明によれば、PGG培地を構成する成分中ビーフエクストラクトをイーストエクストラクトで置換するとともに、該培地を構成する成分中糖成分と他の成分をそれぞれ別個に加熱滅菌した後混合することにより、ビーフエクストラクトによる培地の褐変が防止され、また糖成分とアミノ酸成分相互間の非酵素的褐変反応が生じることがなく、褐変原因菌の増殖開始前に培地自体の褐変が生じない改良された褐変原因菌検出培地を提供することができる。 したがって、褐変原因菌の検出精度を上げることができ、またバックグラウンドが改善されることにより褐変原因菌の視認性を向上させることができる。 以下本発明の実施の形態について説明する。 本発明に係る培地は、ペプトン、イーストエクストラクト、グルコース、グルタミン酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよび寒天を主成分として含有し、ビーフエクストラクトを含有しない。培地組成の好適な一例は、ペプトン1%、イーストエクストラクト0.5%、グルコース5%、グルタミン酸ソーダ5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%を含有し、pH7.0〜7.5の培地である。 培地を調製するには、これらの諸成分の中グルコースの粉末を蒸留水に溶かしてグルコース水溶液とする一方これら諸成分中グルコースを除く成分の粉末をまとめて蒸留水に溶かしてこれら他の成分の水溶液を作る。グルコース水溶液および他の成分の水溶液をそれぞれ別個にオートクレーブで適当な滅菌条件たとえば121℃、15分の滅菌条件で加熱滅菌した後冷却する。 こうして別々に加熱滅菌したグルコース水溶液および他の成分の水溶液はそのまま保存しておき、褐変原因菌接種のために培地をシャーレ等に分注する前に両成分を混合して褐変原因菌検出培地とする。 検出対象菌の増殖を阻害する酵母、カビ等の真菌の増殖を防止し検出対象菌のみを充分に増殖させるためにアンホテリシン(Amphotericin)Bやミコナゾール(Miconazole)のように耐熱性のない抗真菌剤を培地に添加する場合は、別途メンブレンフイルター等によって予め除菌を行った後加熱滅菌後の他の培地成分または混合培地に添加する。 本発明に係る培地の検出対象となる褐変原因菌としては、たとえば、Gluconobactor oxydans、Enterobactor intermidius、Ewingella Americana、Tatumera Ptyseous、Rahnella aquatilisを挙げることができるが、これに限定されるものではない。 培地成分の混合および必要により抗真菌剤の添加後、培地をシャーレ等に分注し、検出対象の褐変原因菌を培地に接種し、培養することにより、検出対象菌を増殖し、分離し、菌数を測定する。 PGG改良培地1の調製 培地組成が、ペプトン1%、イーストエクストラクト0.5%、グルコース5%、グルタミン酸ソーダ5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%を含有し、pH7.0〜7.5となるように各成分の粉末を用意した。 これらの諸成分の中グルコースの粉末を蒸留水に溶かしてグルコース水溶液とする一方これら諸成分中グルコースを除く成分の粉末をまとめて蒸留水に溶かしてこれら他の成分の水溶液を作った。グルコース水溶液および他の成分の水溶液をそれぞれ別個にオートクレーブで121℃、15分の滅菌条件で加熱滅菌した後冷却した。 こうして別々に調製したグルコース水溶液および他の成分の水溶液はそのまま保存しておき、褐変原因菌接種のために培地をシャーレの平板に塗抹する直前に両成分を混合してPGG改良培地とした。 次いで検出対象菌としてEnterobactor intermidius菌を培地に接種し、培養を行った後増殖した生菌数を分離し、生菌数を測定した。 PGG改良培地2の調製 PGG改良培地1と同一組成、同一工程によりグルコース水溶液および他の成分の水溶液を別個に調製した後培地をシャーレの平板に塗抹する直前に両成分を混合し、この混合溶液にさらに抗真菌剤としてAmphotericin B10ppmを添加混合してPGG改良培地2とした。以下PGG改良培地1と同様にして検出対象菌の接種、培養、分離、菌数測定を行った。 PGG培地1の調製 比較のため、培地組成が、ペプトン1%、ビーフエクストラクト0.5%、グルコース5%、グルタミン酸ソーダ5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%を含有し、pH7.0〜7.5となるように各成分の粉末を用意した。 これらの諸成分の粉末をまとめて蒸留水に溶かして培地成分水溶液を作った。この水溶液をオートクレーブで121℃、15分の滅菌条件で加熱滅菌した後冷却してPGG培地1を調製した。 次いでこのPGG培地1をシャーレの平板に塗抹し、検出対象菌としてEnterobactor intermidius菌を培地に接種し、培養を行った後増殖した生菌数を分離し、菌数を測定した。 PGG培地2の調製 PGG培地1と同一組成、同一工程により培地を調製し、さらに抗真菌剤としてAmphotericin B10ppmを添加混合してPGG培地2とした。以下PGG培地1と同様にして検出対象菌の接種、培養、分離、菌数測定を行った。 各種培地による生菌数の比較 上記各培地による検出対象菌の菌数測定の結果を図1のグラフに示す。図1中SMAは比較のために使用したバールコア標準寒天培地を示す。このSMA培地においては、上記各培地で使用したEnterobactor intermidius菌を上記各培地の場合と同一条件で接種し、培養を行った後増殖した生菌数を分離し、菌数を測定した。また、図1において、PGG1は上記PGG培地1を、PGG2は上記PGG培地2を、PGG(改1)は上記PGG改良培地1を、PGG(改2)は上記PGG改良培地2をそれぞれ示す。 図1から、上記PGG改良培地1の測定生菌数はSMA培地の測定生菌数に比べて実質的に遜色がなく、これを従来のPGG培地1と比べて有意に多く、またPGG改良培地2の測定生菌数はPGG培地2と比べて有意に多いことが判る。 従来のPGG培地と本発明に係る改良PGG培地における褐変原因菌の増殖による培地の褐変の度合いを視覚的に客観的に数値化するために、コニカミノルタ株式会社製MINOLTA色差計CR−200を用いて菌の生えている培地部分すなわち検出対象菌を接種して増殖させた培地部分と菌が生えていない培地部分のL値、a値およびb値をそれぞれ測定した。その結果を下表1に示す。表1において、「PGG改」は実施例1のPGG改良培地1を示す。また「菌あり」は検出対象菌を接種、培養した培地部分を示し、「菌なし」は検出対象菌を接種していない培地部分を示す。L、a、bは検出対象菌を接種した時点での測定値であり、ΔL、Δa、Δbは菌が増殖を終了した時点でのL値、a値、b値の変化量を示す値である。したがって、ΔLが大きいほど褐変の度合いは大きいこと、すなわち生菌数が増えたことを示すものである。 表1コントロール L a b ΔL Δa Δb PGG 菌無し 31.86 3.25 10.15 0 0 0 PGG改 菌なし 38.14 −0.36 5.56 0 0 0 検出対象菌 Gluconobactor oxydans L a b ΔL Δa Δb PGG 菌あり 24.93 4.84 2.06 6.93 −1.59 8.09 菌なし 31.82 3.51 10.11 0.04 −0.26 0.04 PGG改 菌あり 23.13 1.61 0.3 15.01 1.97 5.26 菌なし 37.89 −0.45 5.95 0.25 0.09 −0.39 検出対象菌 Enterobactor intermidius L a b ΔL Δa Δb PGG 菌あり 24.1 3.68 1.31 7.76 −0.43 8.84 菌なし 32.01 3.26 10.77 0.15 −0.01 −0.62 PGG改 菌あり 23.65 1.9 0.21 8.21 1.25 9.94 菌なし 38.07 −0.47 5.42 0.07 0.11 0.14 検出対象菌 Tatumera ptyseous L a b ΔL Δa Δb PGG 菌あり 28.19 6.6 5.74 3.67 −3.35 4.41 菌なし 32.46 2.94 10.84 −0.6 0.31 −0.69 PGG改 菌あり 27.34 6.98 5.78 10.8 −7.34 −0.22 菌なし 38.32 −0.54 4.77 −0.18 0.18 0.79 検出対象菌 Rhanella aquatilis L a b ΔL Δa Δb PGG 菌あり 27.92 6.47 5.98 3.94 −3.22 4.17 菌なし 32.94 2.64 11.2 −1.08 0.61 −1.05 PGG改 菌あり 27.4 6.91 5.87 10.74 . −7.27 −0.31 菌なし 38. −0.42 4.53 0.14 0.06 1.03 検出対象菌 Ewingella americana L a b ΔL Δa Δb PGG 菌あり 26.38 5.52 3.34 5.48 −2.27 6.81 菌なし 32.71 2.79 11.1 −0.85 0.46 −0.95 PGG改 菌あり 25.32 5.54 3.36 12.82 −5.9 2.2 菌なし 38.12 −0.45 5.3 0.02 0.09 0.26 表1から明らかなように、従来のPGG培地ではΔLは3.7〜7.8であるのに対して本発明に係るPGG改良培地ではΔLは8.2〜15.1であり、色の差が数値的にもはっきりと判る。したがって、本発明の培地によれば、培地自体の褐変を抑えることによって、視覚的にもバックグラウンドが低くなり、従来のPGG培地よりも褐変原因菌の検出が容易にできることが判る。各培地による検出対象菌の菌数測定結果を示すグラフである。 PGG培地を構成する成分中ビーフエクストラクトをイーストエクストラクトで置換するとともに、該培地を構成する成分中糖成分と他の成分をそれぞれ別個に加熱滅菌した後混合することを特徴とする褐変原因菌検出培地の調製方法。 PGG培地を構成する成分中ビーフエクストラクトをイーストエクストラクトで置換するとともに、該培地を構成する成分中糖成分と他の成分をそれぞれ別個に加熱滅菌した後混合してなる褐変原因菌検出培地。 【課題】褐変原因菌の増殖開始前に培地自体の褐変が生じない改良された褐変原因菌検出培地およびその調製方法を提供する。【解決手段】PGG培地を構成する成分中ビーフエクストラクトをイーストエクストラクトで置換するとともに、該培地を構成する成分中糖成分と他の成分をそれぞれ別個に加熱滅菌した後混合する。【選択図】なし


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特許公報(B2)_褐変原因菌検出培地およびその調製方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_褐変原因菌検出培地およびその調製方法
出願番号:2005309739
年次:2012
IPC分類:C12Q 1/04,C12N 1/20


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田口 憲人 遠田 昌人 JP 4867284 特許公報(B2) 20111125 2005309739 20051025 褐変原因菌検出培地およびその調製方法 東洋製罐株式会社 000003768 坂本 徹 100070747 原田 卓治 100104329 田口 憲人 遠田 昌人 20120201 C12Q 1/04 20060101AFI20120112BHJP C12N 1/20 20060101ALI20120112BHJP JPC12Q1/04C12N1/20 A C12Q 1/00−3/00 C12N 1/00−1/38 PubMed JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 金山龍男、外2名,水産ねり製品の褐変について−I 褐変原因菌の来源,Bulletin of the japanese society of scientific fisheries. 1973, Vol.39, No.2, p.221-228 小川博望、外2名,微生物による食品のかっ変(第2報) かっ変反応におよぼす糖類,タンパク質およびアミノ酸の効果,食品衛生雑誌,1970年,Vol.11,No.5,p.356−360 日本生化学会,新生化学実験講座17 微生物実験法,東京化学同人,1992年 3月23日,第1版,p.433−446 2 2007116917 20070517 7 20080916 清水 晋治 本発明は、缶詰等容器詰食品の加熱殺菌後に生じる褐変の原因となる細菌を検出するための改良された培地およびその調製方法に関する。 従来容器詰食品の加熱殺菌後に生じる褐変の原因となる細菌を検出するためSMA培地(標準寒天培地)やPGG培地が使用されている。PGG培地の組成は、通常ペプトン1%、ビーフエクストラクト0.5%、グルコース5%、グルタミン酸ナトリウム5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%からなり、pHは7.0〜7.5である。PGG培地は、これらの成分の粉末を蒸留水に溶かし、オートクレーブで121℃、15分の加熱滅菌を行うことによって調製する。 しかし、以前より、このようにしてPGG培地を調製する場合、オートクレーブによる加熱により培地自体がある程度褐変することが知られている。 オートクレーブによって培地に生成される褐変物質(メラノイジン)には抗菌作用があることが知られており、このためこの褐変物質が生成したPGG培地で褐変原因菌の増殖を行うと、SMA培地で増殖を行った場合に比べて検出される生菌数が少ないという結果を生じ、褐変原因菌の正確な検出ができない、という問題を生じていた。また、褐変原因菌の培養を開始する以前に培地自体がある程度褐変しているために、バックグラウンドが高くなり、褐変原因菌の視認性が劣るという問題を生じていた。 本発明は、褐変原因菌検出用培地としての従来のPGG培地の問題点にかんがみなされたものであって、褐変原因菌の増殖開始前に培地自体の褐変が生じない改良された褐変原因菌検出培地を提供し、またその調製方法を提供しようとするものである。 PGG培地の調製に際し、オートクレーブによる加熱により培地自体に褐変が生じるのは、PGG培地の組成に糖成分とアミノ酸成分が含まれているため、これら両成分による非酵素的褐変反応が生じるためと考えられる。本発明者らは、上記本発明の課題を解決するため研究と実験を重ねる過程においてこの点に着目し、従来のようにPGG培地中の糖成分とアミノ酸成分を混合した後にオートクレーブで加熱滅菌するかわりに両成分を分けてそれぞれ加熱滅菌した後に混合して培地とすれば、両成分間の非酵素的褐変反応を抑制できることを見出し、本発明に到達した。また、本発明者らは、従来のPGG培地組成の1成分であるビーフエクストラクトが糖成分と非酵素的に反応するアミノ酸を多量に含んでいる上に加熱によりそれ自体褐変し、培地自体の褐変を増大する原因の一つとなっていることを見出し、ビーフエクストラクトをこのような褐変を起こし難い成分であるイーストエクストラクトに変えることにより培地自体の褐変を減少させることに成功した。 すなわち、上記本発明の課題を解決する褐変原因菌検出培地の調製方法は、PGG培地を構成する成分中ビーフエクストラクトをイーストエクストラクトで置換するとともに、該培地を構成する成分中糖成分と他の成分をそれぞれ別個に加熱滅菌した後混合することを特徴とするものである。 また、上記本発明の課題を解決する褐変原因菌検出培地は、PGG培地を構成する成分中ビーフエクストラクトをイーストエクストラクトで置換するとともに、該培地を構成する成分中糖成分と他の成分をそれぞれ別個に加熱滅菌した後混合してなるものである。 本発明によれば、PGG培地を構成する成分中ビーフエクストラクトをイーストエクストラクトで置換するとともに、該培地を構成する成分中糖成分と他の成分をそれぞれ別個に加熱滅菌した後混合することにより、ビーフエクストラクトによる培地の褐変が防止され、また糖成分とアミノ酸成分相互間の非酵素的褐変反応が生じることがなく、褐変原因菌の増殖開始前に培地自体の褐変が生じない改良された褐変原因菌検出培地を提供することができる。 したがって、褐変原因菌の検出精度を上げることができ、またバックグラウンドが改善されることにより褐変原因菌の視認性を向上させることができる。 以下本発明の実施の形態について説明する。 本発明に係る培地は、ペプトン、イーストエクストラクト、グルコース、グルタミン酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよび寒天を主成分として含有し、ビーフエクストラクトを含有しない。培地組成の好適な一例は、ペプトン1%、イーストエクストラクト0.5%、グルコース5%、グルタミン酸ソーダ5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%を含有し、pH7.0〜7.5の培地である。 培地を調製するには、これらの諸成分の中グルコースの粉末を蒸留水に溶かしてグルコース水溶液とする一方これら諸成分中グルコースを除く成分の粉末をまとめて蒸留水に溶かしてこれら他の成分の水溶液を作る。グルコース水溶液および他の成分の水溶液をそれぞれ別個にオートクレーブで適当な滅菌条件たとえば121℃、15分の滅菌条件で加熱滅菌した後冷却する。 こうして別々に加熱滅菌したグルコース水溶液および他の成分の水溶液はそのまま保存しておき、褐変原因菌接種のために培地をシャーレ等に分注する前に両成分を混合して褐変原因菌検出培地とする。 検出対象菌の増殖を阻害する酵母、カビ等の真菌の増殖を防止し検出対象菌のみを充分に増殖させるためにアンホテリシン(Amphotericin)Bやミコナゾール(Miconazole)のように耐熱性のない抗真菌剤を培地に添加する場合は、別途メンブレンフイルター等によって予め除菌を行った後加熱滅菌後の他の培地成分または混合培地に添加する。 本発明に係る培地の検出対象となる褐変原因菌としては、たとえば、Gluconobactor oxydans、Enterobactor intermidius、Ewingella Americana、Tatumera Ptyseous、Rahnella aquatilisを挙げることができるが、これに限定されるものではない。 培地成分の混合および必要により抗真菌剤の添加後、培地をシャーレ等に分注し、検出対象の褐変原因菌を培地に接種し、培養することにより、検出対象菌を増殖し、分離し、菌数を測定する。 PGG改良培地1の調製 培地組成が、ペプトン1%、イーストエクストラクト0.5%、グルコース5%、グルタミン酸ソーダ5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%を含有し、pH7.0〜7.5となるように各成分の粉末を用意した。 これらの諸成分の中グルコースの粉末を蒸留水に溶かしてグルコース水溶液とする一方これら諸成分中グルコースを除く成分の粉末をまとめて蒸留水に溶かしてこれら他の成分の水溶液を作った。グルコース水溶液および他の成分の水溶液をそれぞれ別個にオートクレーブで121℃、15分の滅菌条件で加熱滅菌した後冷却した。 こうして別々に調製したグルコース水溶液および他の成分の水溶液はそのまま保存しておき、褐変原因菌接種のために培地をシャーレの平板に塗抹する直前に両成分を混合してPGG改良培地とした。 次いで検出対象菌としてEnterobactor intermidius菌を培地に接種し、培養を行った後増殖した生菌数を分離し、生菌数を測定した。 PGG改良培地2の調製 PGG改良培地1と同一組成、同一工程によりグルコース水溶液および他の成分の水溶液を別個に調製した後培地をシャーレの平板に塗抹する直前に両成分を混合し、この混合溶液にさらに抗真菌剤としてAmphotericin B10ppmを添加混合してPGG改良培地2とした。以下PGG改良培地1と同様にして検出対象菌の接種、培養、分離、菌数測定を行った。 PGG培地1の調製 比較のため、培地組成が、ペプトン1%、ビーフエクストラクト0.5%、グルコース5%、グルタミン酸ソーダ5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%を含有し、pH7.0〜7.5となるように各成分の粉末を用意した。 これらの諸成分の粉末をまとめて蒸留水に溶かして培地成分水溶液を作った。この水溶液をオートクレーブで121℃、15分の滅菌条件で加熱滅菌した後冷却してPGG培地1を調製した。 次いでこのPGG培地1をシャーレの平板に塗抹し、検出対象菌としてEnterobactor intermidius菌を培地に接種し、培養を行った後増殖した生菌数を分離し、菌数を測定した。 PGG培地2の調製 PGG培地1と同一組成、同一工程により培地を調製し、さらに抗真菌剤としてAmphotericin B10ppmを添加混合してPGG培地2とした。以下PGG培地1と同様にして検出対象菌の接種、培養、分離、菌数測定を行った。 各種培地による生菌数の比較 上記各培地による検出対象菌の菌数測定の結果を図1のグラフに示す。図1中SMAは比較のために使用したバールコア標準寒天培地を示す。このSMA培地においては、上記各培地で使用したEnterobactor intermidius菌を上記各培地の場合と同一条件で接種し、培養を行った後増殖した生菌数を分離し、菌数を測定した。また、図1において、PGG1は上記PGG培地1を、PGG2は上記PGG培地2を、PGG(改1)は上記PGG改良培地1を、PGG(改2)は上記PGG改良培地2をそれぞれ示す。 図1から、上記PGG改良培地1の測定生菌数はSMA培地の測定生菌数に比べて実質的に遜色がなく、これを従来のPGG培地1と比べて有意に多く、またPGG改良培地2の測定生菌数はPGG培地2と比べて有意に多いことが判る。 従来のPGG培地と本発明に係る改良PGG培地における褐変原因菌の増殖による培地の褐変の度合いを視覚的に客観的に数値化するために、コニカミノルタ株式会社製MINOLTA色差計CR−200を用いて菌の生えている培地部分すなわち検出対象菌を接種して増殖させた培地部分と菌が生えていない培地部分のL値、a値およびb値をそれぞれ測定した。その結果を下表1に示す。表1において、「PGG改」は実施例1のPGG改良培地1を示す。また「菌あり」は検出対象菌を接種、培養した培地部分を示し、「菌なし」は検出対象菌を接種していない培地部分を示す。L、a、bは検出対象菌を接種した時点での測定値であり、ΔL、Δa、Δbは菌が増殖を終了した時点でのL値、a値、b値の変化量を示す値である。したがって、ΔLが大きいほど褐変の度合いは大きいこと、すなわち生菌数が増えたことを示すものである。 表1コントロール L a b ΔL Δa Δb PGG 菌無し 31.86 3.25 10.15 0 0 0 PGG改 菌なし 38.14 −0.36 5.56 0 0 0 検出対象菌 Gluconobactor oxydans L a b ΔL Δa Δb PGG 菌あり 24.93 4.84 2.06 6.93 −1.59 8.09 菌なし 31.82 3.51 10.11 0.04 −0.26 0.04 PGG改 菌あり 23.13 1.61 0.3 15.01 1.97 5.26 菌なし 37.89 −0.45 5.95 0.25 0.09 −0.39 検出対象菌 Enterobactor intermidius L a b ΔL Δa Δb PGG 菌あり 24.1 3.68 1.31 7.76 −0.43 8.84 菌なし 32.01 3.26 10.77 0.15 −0.01 −0.62 PGG改 菌あり 23.65 1.9 0.21 8.21 1.25 9.94 菌なし 38.07 −0.47 5.42 0.07 0.11 0.14 検出対象菌 Tatumera ptyseous L a b ΔL Δa Δb PGG 菌あり 28.19 6.6 5.74 3.67 −3.35 4.41 菌なし 32.46 2.94 10.84 −0.6 0.31 −0.69 PGG改 菌あり 27.34 6.98 5.78 10.8 −7.34 −0.22 菌なし 38.32 −0.54 4.77 −0.18 0.18 0.79 検出対象菌 Rhanella aquatilis L a b ΔL Δa Δb PGG 菌あり 27.92 6.47 5.98 3.94 −3.22 4.17 菌なし 32.94 2.64 11.2 −1.08 0.61 −1.05 PGG改 菌あり 27.4 6.91 5.87 10.74 . −7.27 −0.31 菌なし 38. −0.42 4.53 0.14 0.06 1.03 検出対象菌 Ewingella americana L a b ΔL Δa Δb PGG 菌あり 26.38 5.52 3.34 5.48 −2.27 6.81 菌なし 32.71 2.79 11.1 −0.85 0.46 −0.95 PGG改 菌あり 25.32 5.54 3.36 12.82 −5.9 2.2 菌なし 38.12 −0.45 5.3 0.02 0.09 0.26 表1から明らかなように、従来のPGG培地ではΔLは3.7〜7.8であるのに対して本発明に係るPGG改良培地ではΔLは8.2〜15.1であり、色の差が数値的にもはっきりと判る。したがって、本発明の培地によれば、培地自体の褐変を抑えることによって、視覚的にもバックグラウンドが低くなり、従来のPGG培地よりも褐変原因菌の検出が容易にできることが判る。各培地による検出対象菌の菌数測定結果を示すグラフである。 ペプトン1%、ビーフエクストラクト0.5%、グルコース5%、グルタミン酸ナトリウム5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%を含有するPGG培地を構成する成分中ビーフエクストラクトのみをイーストエクストラクト0.5%で置換するとともに、該培地を構成する成分中糖成分と他の成分をそれぞれ別個に加熱滅菌した後混合し、褐変原因菌を接種する前の培地のL値を37.89〜38.32とすることを特徴とする褐変原因菌検出培地の調製方法。 ペプトン1%、ビーフエクストラクト0.5%、グルコース5%、グルタミン酸ナトリウム5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%を含有するPGG培地を構成する成分中ビーフエクストラクトのみをイーストエクストラクト0.5%で置換するとともに、該培地を構成する成分中糖成分と他の成分をそれぞれ別個に加熱滅菌した後混合してなる培地であって、褐変原因菌を接種し培養後褐変した部分と接種していない部分とのL値の変化量ΔLが8.21〜15.01であることを特徴とする褐変原因菌検出培地。


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