生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_育毛剤の評価方法
出願番号:2005303418
年次:2007
IPC分類:G01N 33/15,G01N 33/50


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佐倉 正明 田口 暢彦 JP 2007113956 公開特許公報(A) 20070510 2005303418 20051018 育毛剤の評価方法 ホーユー株式会社 000113274 恩田 博宣 100068755 恩田 誠 100105957 佐倉 正明 田口 暢彦 G01N 33/15 20060101AFI20070406BHJP G01N 33/50 20060101ALI20070406BHJP JPG01N33/15 ZG01N33/50 Q 4 OL 7 2G045 2G045AA40 2G045CB09 2G045CB17 2G045GC30 本発明は、育毛剤の評価方法に係り、詳しくはマウスを用いた育毛剤の評価方法に関する。 一般にマウスを用いた育毛剤の評価方法は、毛の長さ測定、毛の発毛面積の測定、発毛開始時期の測定等することにより行なわれていた。また、in vitro実験系での分子レベルの評価はマウスの皮膚等を採取することによって行われているため、連続的な観察評価を行うことは困難であった。 ところで、非特許文献1に記載されるように、哺乳類(例えば、マウス)のヘアサイクル(毛周期)は、大きく分けて休止期、成長期、退行期の繰り返しによって構成されている。育毛剤の正確な育毛評価を行なうために、かかるヘアサイクルに着目し、成長期の早期誘導、成長期の延長、退行期の遅延作用を有する薬剤の検索が行なわれるようになった。しかしながら、ヘアサイクルは毛母細胞の成長等によって評価されるため、その観察及びヘアサイクルのステージの特定は容易ではなかった。そこで、ヘアサイクルと皮膚色の変化との関係に着目した育毛剤の評価方法が知られている(特許文献1)。かかる育毛剤の評価方法は、ヘアサイクルに関連するマウス皮膚のメラニン顆粒による皮膚色の変化を測定することによって、ヘアサイクルにおける成長期の誘導、成長期の延長、退行期の遅延作用を評価するものである。The Journal of Investigative Dermatology Vol.117, No.1 July 2001, pp.3-15特許第3227400号公報 しかしながら、皮膚色を目視にて相対評価する場合、個人差により又は観察方向により色が変化するため正確に測定することは困難であった。また、測定器を使用する場合、画像解析装置等の高価な装置が必要であり、皮膚色により育毛剤を容易に評価することはできなかった。 ところで、ヘアサイクルの変化に伴って、皮膚色のみならず皮膚の厚みも変化することが知られている(非特許文献1)。しかしながら、育毛剤による育毛効果と皮膚の厚みとの相関関係は未だ報告されていなかった。 本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、ヘアサイクルにおける皮膚の厚みと育毛剤の育毛効果との関係を評価することにより上記課題が解決されることを見出したことによりなされたものである。その目的とするところは、マウスを用いた育毛剤の評価方法において、容易に評価することができる育毛剤の評価方法を提供することにある。 上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、マウスを用いた育毛剤の評価方法において、前記マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する行程、前記マウスの皮膚厚増加開始日からマウスの皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間を測定する行程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期延長効果を評価する工程からなる。 請求項2記載の発明は、マウスを用いた育毛剤の評価方法において、前記マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する行程、前記育毛剤の塗布日から前記マウスの皮膚厚増加開始日までの期間を測定する行程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期誘導効果を評価する工程からなる。 請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の育毛剤の評価方法では、前記マウスはC3Hマウスである。 請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項記載の育毛剤の評価方法において、前記マウスの皮膚厚は皮膚を摘むことによって測定される。 本発明によれば、マウスを用いた育毛剤の評価方法において、容易に評価することができる。 以下、本発明の育毛剤の評価方法の一実施形態について説明する。 本実施形態の育毛剤の評価方法は、マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する工程、前記マウスの皮膚厚増加開始日からマウスの皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間を測定する工程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期延長効果を評価する工程からなる。 また、別の育毛剤の評価方法では、マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する工程、前記育毛剤の塗布日から前記マウスの皮膚厚増加開始日までの期間を測定する工程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期誘導効果を評価する工程からなる。 本実施形態に使用されるマウスは好ましくはC3Hマウスである。C3Hマウスは、特定周齢において均一で同調したヘアサイクルを有しているため、ヘアサイクルが休止期にある時に除毛処理すると均一にヘアサイクルを成長期に移行させることができる特徴を有している。また、これまでにヒトで発毛効果が実証されているサイクロスポリンA(シクロスポリン)、ミノキシジル、ジアゾキサイド等の成分について、C3Hマウスでも同様に発毛効果が実証されているため育毛評価の対象として適している。 育毛評価に使用されるC3Hマウスはヘアサイクルが休止期である生後45〜90日、好ましくは生後7〜9周齢、より好ましくは8週齢のマウスである。かかる休止期のC3Hマウスの試験部位(例えば、背部)の毛を剃ることにより、休止期にあるヘアサイクルは均一に成長期に移行される。 除毛処理方法としては、市販の電気バリカンによる毛剃り、回転式シェーバーやカミソリを用いた毛剃り、除毛剤を用いた除毛処理方法が挙げられる。これらの除毛処理方法の中でも皮膚の厚みとヘアサイクルの相関関係の得られやすい電気バリカン又は回転式シェーバーを用いた毛剃り方法が好ましい。また、除毛処理は育毛剤の塗布日以降毎日行われることが好ましい。除毛処理はそれ自体が毛の成長期を誘導する刺激になり得ることから、除毛処理は細心の注意を払う必要がある。つまり、マウスの皮膚を傷つけないように、試験対象となるマウス全てにおいて同じ条件となるように除毛処理されることが好ましい。 除毛処理された皮膚に塗布される各評価対象の育毛剤は毛剃り後の皮膚表面に特定量塗布される。皮膚に塗布される育毛剤の塗布回数、塗布間隔等は育毛剤の種類、試験内容等により適宜設定される。好ましくは、毛剃り後の塗布部位において1日1回塗布される。 次に、ヘアサイクルについて説明する。ヘアサイクルは毛乳頭における細胞分裂が停止している休止期、毛乳頭における細胞分裂が盛んな成長期、毛乳頭が萎縮し毛の成長が止まる後退期のサイクルで構成され、成長期はさらに成長期の開始、初期成長期、中期成長期、後期成長期に分けられる。発毛効果を有する育毛剤は、毛剃り後の休止期から成長期の開始に移行する期間の短縮効果、つまり、成長期の早期誘導効果を有することが知られている。その他に、発毛効果を有する育毛剤は、成長期の延長効果、退行期の遅延作用等を有することも知られている。これらの成長期の早期誘導効果等の効果は育毛剤の育毛効果の一つの指標とされている。 ヘアサイクルにおいて、皮膚の厚みは毛剃り後の休止期から成長期移行の際に少しずつ増加し、初期成長期後の成長期期間中に皮膚厚がピーク(最大厚み)を迎える。そして、成長期から退行期へ移行するに従い皮膚厚は育毛剤塗布前の水準に戻る。育毛剤による育毛効果において、皮膚の厚みと育毛効果は下記のように相関関係を有する。毛剃り後(育毛剤塗布後)から皮膚厚の増加開始日までの期間について、その期間が短いほど、その育毛剤は成長期の早期誘導効果を有する。また同様に、毛剃り後(育毛剤塗布後)において皮膚厚の増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間について、その期間が長いほど、その育毛剤は成長期延長効果を有する。つまり、育毛剤の育毛効果は、毛剃り後から皮膚厚の増加開始日までの期間又は皮膚厚の増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間について、予め育毛効果が明らかなサイクロスポリンA等の育毛剤や育毛成分を含有しないもの(コントロール、プラセボ)と比較することにより評価することが可能となる。このように、皮膚の厚みを測定するのみで育毛効果の指標とされるヘアサイクルにおける成長期の早期誘導効果等を確認することができる。 皮膚の厚みは、毛剃り後の育毛剤塗布前の皮膚厚がブランク(Blank)として測定され、その後、一定期間(好ましくは1日1回以上)経過ごとに測定される。皮膚の厚みは好ましくは皮膚を摘むことによりノギス等の測定器を用いて測定される。マウスの皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織から構成される。ヘアサイクルにおいて厚みが増加する組織は皮下組織である。マウスの皮膚を指等で摘むことによって皮下組織も一緒に摘むことができる。 その他、C3Hマウスを用いた育毛剤の評価方法は、マウスの性別、日齢、餌、飼育温度、1ゲージ当たりの飼育数等、試験結果に変動を与える可能性のある要因はできる限り一定にすることが好ましい。 本実施形態の育毛剤の評価方法によれば、以下のような効果を得ることができる。 (1)本実施形態では、皮膚厚を測定することにより育毛剤の育毛評価を行なった。したがって、容易に育毛剤の育毛効果を評価することができる。つまり、毛母細胞の成長等を直接観察する必要がなく成長期の早期誘導効果等を確認することができる。 (2)また、皮膚色を目視にて相対評価する場合と比較して、個人差により又は観察方向により測定値に差が生じないため正確な育毛剤の育毛評価をすることができる。 (3)また、皮膚色を画像解析装置等を用いて測定する場合と比較して、高価な測定器を使用することなく育毛評価をすることができる。 (4)また、育毛剤の育毛評価において、マウスを屠殺する必要がなく一個体において連続的な観察が可能となる。つまり、正確な育毛評価を行なうことができる。 (5)本実施形態では、毛剃り後から皮膚厚の増加開始日までの期間及び皮膚厚の増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間を測定し、それぞれ育毛剤のヘアサイクルにおける成長期の早期誘導効果及び成長期延長効果と関連付けた。したがって、毛の長さ、毛の発毛面積、発毛開始時期等の観察による評価と比較して、正確な育毛剤の育毛効果を評価することができる。 (6)本実施形態では、C3Hマウスを用いて育毛剤の育毛評価を行なった。したがって、特定週齢のC3Hマウスは均一なヘアサイクルを有するとともに、ヘアサイクルが休止期にあるときに除毛処理を施すと同調して成長期に移行させることができる。つまり、一本一本の毛のヘアサイクルを特定及び観察する必要がなく、容易に育毛評価を行なうことができる。 (7)本実施形態では、ノギスを用いて皮膚厚を測定した。したがって、容易に皮膚厚を測定することができる。 なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。 ・上記実施形態では、マウスはヘアサイクルが同調しているC3Hマウスを使用した。しかしながら、C3Hマウスに限定されず、その他のマウスを使用してもよい。例えば、一般に若いマウスほど均一なヘアサイクルを有しているため、かかるマウスを使用してもよい。 ・上記実施形態では、マウスの皮下組織の増加を皮膚を摘むことによってその厚みを測定した。しかしながら、それ以外の方法でもよく、例えばマウスの皮膚を摘出することにより顕微鏡等を使用して厚みを測定してもよい。 ・塗布される育毛剤の形状は特に限定されず、液状、ミスト状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等の形状が使用される。 ・上記実施形態において適用される育毛剤の種類は特に限定されず、例えば毛細血管拡張作用を有するもの、細胞賦活作用を有するもの、抗男性ホルモン作用を有するもの等が適用され得る。 次に、実施例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。 育毛効果の認められる有効成分を含有する各試験体について、マウスの皮膚に塗布し、前記実施形態の育毛方法と従来の育毛評価方法を比較した。 <試験体> 表1に示されるように、育毛効果の認められる各有効成分が含有される試験体1〜3を調整した。表1における各成分の配合を示す数値の単位は質量%である。 <育毛評価方法> 本実施例において使用するマウスは、C3H/HeNマウス、雄7週齢のものを各試験体につき12匹使用した。一週間馴化させた後、背部を電気バリカン及び回転式ローターを使用して毛剃りを行った。その翌日より各試験体を1日1回、一匹当たり0.2ml塗布した。その時、各試験体塗布前に電気バリカン及び回転式ローターを使用して毛剃りを行った。各試験体塗布開始日よりデジタルシックネスゲージ(TECLOCK社製)を使用して1日1回皮膚厚を測定した。 上述したように1日1回皮膚厚を測定することにより、各試験体塗布日から皮膚厚増加開始日までの期間をヘアサイクルにおける成長期誘導日数として評価した。表2において、成長期誘導日数は12匹のマウスの平均値として示す。 また、上述したように1日1回皮膚厚を測定することにより、皮膚厚増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間をヘアサイクルにおける成長期日数として評価した。表2において、成長期日数は12匹のマウスの平均値として示す。 従来の育毛評価方法として、発毛面積を求めることにより評価を行った。発毛面積は、C3H/HeNマウス、雄7週齢のものを使用した。一週間馴化させた後、背部を電気バリカン及び回転式ローターを使用して毛剃りを行った。その翌日より各試験体を1日1回、一匹当たり0.2ml塗布した。各試験体塗布後、14日後の塗布部における発毛面積を求めることにより従来の発毛面積による育毛評価とした。表2において、発毛面積は12匹のマウスの平均値として示す。 表2に示されるように、発毛面積による従来の育毛評価方法において試験体1(有効成分:ミノキシジル)が最も育毛効果が高く、次に試験体2(有効成分:プロシアニジン)が育毛効果が高いことが示される。試験体3(有効成分:オトギリソウエキス)及び試験体4(プラセボ)がほぼ同様の発毛面積であることが示される。 また、ヘアサイクルにおける成長期誘導日数として示される各試験体塗布日から皮膚厚増加開始日までの期間が一番短い試験体は発毛面積が一番高い試験体1であった。また、二番目に短い試験体は発毛面積が二番目に高い試験体2であった。試験体3,4は塗布日から皮膚厚増加開始日までの期間がほぼ同一日数であった。以上により、試験体塗布日から皮膚厚増加開始日までの期間と育毛効果との間には相関関係があることが確認された。つまり、試験体塗布日から皮膚厚増加開始日までの期間が短いほど有効成分に育毛効果を有することが認められる。 また、ヘアサイクルにおける成長期日数として示される皮膚厚増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間が一番長い試験体は発毛面積が一番目と二番目に高い試験体1,2であった。また、試験体3,4は皮膚厚増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間がほぼ同一日数であった。以上により、皮膚厚増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間と育毛効果との間には相関関係があることが確認された。つまり、皮膚厚増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間が長いほど育毛効果を有することが認められる。 次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。 (a)上記皮膚厚はノギスを用いて測定される育毛剤の育毛評価方法。従って、この(a)に記載の発明によれば、容易に皮膚厚を測定することができる。 マウスを用いた育毛剤の評価方法において、前記マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する工程、前記マウスの皮膚厚増加開始日からマウスの皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間を測定する工程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期延長効果を評価する工程からなる育毛剤の評価方法。 マウスを用いた育毛剤の評価方法において、前記マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する工程、前記育毛剤の塗布日から前記マウスの皮膚厚増加開始日までの期間を測定する工程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期誘導効果を評価する工程からなる育毛剤の評価方法。 前記マウスはC3Hマウスである請求項1又は請求項2記載の育毛剤の評価方法。 前記マウスの皮膚厚は皮膚を摘むことによって測定される請求項1から請求項3のいずれか一項記載の育毛剤の評価方法。 【課題】マウスを用いた育毛剤の評価方法において、容易に評価することができる育毛剤の評価方法を提供する。【解決手段】C3Hマウスを用いて育毛剤の育毛効果を評価する方法において、前記マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する工程、前記マウスの皮膚の皮膚厚増加開始日からマウスの皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間を測定する工程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期延長効果を評価する工程からなる。【選択図】なし


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特許公報(B2)_育毛剤の評価方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_育毛剤の評価方法
出願番号:2005303418
年次:2011
IPC分類:G01N 33/15,G01N 33/50


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佐倉 正明 田口 暢彦 JP 4674147 特許公報(B2) 20110128 2005303418 20051018 育毛剤の評価方法 ホーユー株式会社 000113274 恩田 博宣 100068755 恩田 誠 100105957 佐倉 正明 田口 暢彦 20110420 G01N 33/15 20060101AFI20110331BHJP G01N 33/50 20060101ALI20110331BHJP JPG01N33/15 ZG01N33/50 H G01N 33/15 G01N 33/50 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2003−149230(JP,A) 特開2004−264024(JP,A) OZEKI,M. et al.,In vivo promoted growth of mice hair follicles by the controlled release of growth factors. ,Biomaterials,2003年,Vol.24, No.13,p.2387-2394 横山大三郎 ,香粧品の有用性評価法の確立と問題点 育毛効果の評価法の確立と問題点,Fragr.J. ,1999年,Vol.27 No.1 ,Page.50-56 4 2007113956 20070510 7 20080627 白形 由美子 本発明は、育毛剤の評価方法に係り、詳しくはマウスを用いた育毛剤の評価方法に関する。 一般にマウスを用いた育毛剤の評価方法は、毛の長さ測定、毛の発毛面積の測定、発毛開始時期の測定等することにより行なわれていた。また、in vitro実験系での分子レベルの評価はマウスの皮膚等を採取することによって行われているため、連続的な観察評価を行うことは困難であった。 ところで、非特許文献1に記載されるように、哺乳類(例えば、マウス)のヘアサイクル(毛周期)は、大きく分けて休止期、成長期、退行期の繰り返しによって構成されている。育毛剤の正確な育毛評価を行なうために、かかるヘアサイクルに着目し、成長期の早期誘導、成長期の延長、退行期の遅延作用を有する薬剤の検索が行なわれるようになった。しかしながら、ヘアサイクルは毛母細胞の成長等によって評価されるため、その観察及びヘアサイクルのステージの特定は容易ではなかった。そこで、ヘアサイクルと皮膚色の変化との関係に着目した育毛剤の評価方法が知られている(特許文献1)。かかる育毛剤の評価方法は、ヘアサイクルに関連するマウス皮膚のメラニン顆粒による皮膚色の変化を測定することによって、ヘアサイクルにおける成長期の誘導、成長期の延長、退行期の遅延作用を評価するものである。The Journal of Investigative Dermatology Vol.117, No.1 July 2001, pp.3-15特許第3227400号公報 しかしながら、皮膚色を目視にて相対評価する場合、個人差により又は観察方向により色が変化するため正確に測定することは困難であった。また、測定器を使用する場合、画像解析装置等の高価な装置が必要であり、皮膚色により育毛剤を容易に評価することはできなかった。 ところで、ヘアサイクルの変化に伴って、皮膚色のみならず皮膚の厚みも変化することが知られている(非特許文献1)。しかしながら、育毛剤による育毛効果と皮膚の厚みとの相関関係は未だ報告されていなかった。 本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、ヘアサイクルにおける皮膚の厚みと育毛剤の育毛効果との関係を評価することにより上記課題が解決されることを見出したことによりなされたものである。その目的とするところは、マウスを用いた育毛剤の評価方法において、容易に評価することができる育毛剤の評価方法を提供することにある。 上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、マウスを用いた育毛剤の評価方法において、前記マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する行程、前記マウスの皮膚厚増加開始日からマウスの皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間を測定する行程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期延長効果を評価する工程からなる。 請求項2記載の発明は、マウスを用いた育毛剤の評価方法において、前記マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する行程、前記育毛剤の塗布日から前記マウスの皮膚厚増加開始日までの期間を測定する行程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期誘導効果を評価する工程からなる。 請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の育毛剤の評価方法では、前記マウスはC3Hマウスである。 請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項記載の育毛剤の評価方法において、前記マウスの皮膚厚は皮膚を摘むことによって測定される。 本発明によれば、マウスを用いた育毛剤の評価方法において、容易に評価することができる。 以下、本発明の育毛剤の評価方法の一実施形態について説明する。 本実施形態の育毛剤の評価方法は、マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する工程、前記マウスの皮膚厚増加開始日からマウスの皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間を測定する工程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期延長効果を評価する工程からなる。 また、別の育毛剤の評価方法では、マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する工程、前記育毛剤の塗布日から前記マウスの皮膚厚増加開始日までの期間を測定する工程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期誘導効果を評価する工程からなる。 本実施形態に使用されるマウスは好ましくはC3Hマウスである。C3Hマウスは、特定周齢において均一で同調したヘアサイクルを有しているため、ヘアサイクルが休止期にある時に除毛処理すると均一にヘアサイクルを成長期に移行させることができる特徴を有している。また、これまでにヒトで発毛効果が実証されているサイクロスポリンA(シクロスポリン)、ミノキシジル、ジアゾキサイド等の成分について、C3Hマウスでも同様に発毛効果が実証されているため育毛評価の対象として適している。 育毛評価に使用されるC3Hマウスはヘアサイクルが休止期である生後45〜90日、好ましくは生後7〜9周齢、より好ましくは8週齢のマウスである。かかる休止期のC3Hマウスの試験部位(例えば、背部)の毛を剃ることにより、休止期にあるヘアサイクルは均一に成長期に移行される。 除毛処理方法としては、市販の電気バリカンによる毛剃り、回転式シェーバーやカミソリを用いた毛剃り、除毛剤を用いた除毛処理方法が挙げられる。これらの除毛処理方法の中でも皮膚の厚みとヘアサイクルの相関関係の得られやすい電気バリカン又は回転式シェーバーを用いた毛剃り方法が好ましい。また、除毛処理は育毛剤の塗布日以降毎日行われることが好ましい。除毛処理はそれ自体が毛の成長期を誘導する刺激になり得ることから、除毛処理は細心の注意を払う必要がある。つまり、マウスの皮膚を傷つけないように、試験対象となるマウス全てにおいて同じ条件となるように除毛処理されることが好ましい。 除毛処理された皮膚に塗布される各評価対象の育毛剤は毛剃り後の皮膚表面に特定量塗布される。皮膚に塗布される育毛剤の塗布回数、塗布間隔等は育毛剤の種類、試験内容等により適宜設定される。好ましくは、毛剃り後の塗布部位において1日1回塗布される。 次に、ヘアサイクルについて説明する。ヘアサイクルは毛乳頭における細胞分裂が停止している休止期、毛乳頭における細胞分裂が盛んな成長期、毛乳頭が萎縮し毛の成長が止まる後退期のサイクルで構成され、成長期はさらに成長期の開始、初期成長期、中期成長期、後期成長期に分けられる。発毛効果を有する育毛剤は、毛剃り後の休止期から成長期の開始に移行する期間の短縮効果、つまり、成長期の早期誘導効果を有することが知られている。その他に、発毛効果を有する育毛剤は、成長期の延長効果、退行期の遅延作用等を有することも知られている。これらの成長期の早期誘導効果等の効果は育毛剤の育毛効果の一つの指標とされている。 ヘアサイクルにおいて、皮膚の厚みは毛剃り後の休止期から成長期移行の際に少しずつ増加し、初期成長期後の成長期期間中に皮膚厚がピーク(最大厚み)を迎える。そして、成長期から退行期へ移行するに従い皮膚厚は育毛剤塗布前の水準に戻る。育毛剤による育毛効果において、皮膚の厚みと育毛効果は下記のように相関関係を有する。毛剃り後(育毛剤塗布後)から皮膚厚の増加開始日までの期間について、その期間が短いほど、その育毛剤は成長期の早期誘導効果を有する。また同様に、毛剃り後(育毛剤塗布後)において皮膚厚の増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間について、その期間が長いほど、その育毛剤は成長期延長効果を有する。つまり、育毛剤の育毛効果は、毛剃り後から皮膚厚の増加開始日までの期間又は皮膚厚の増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間について、予め育毛効果が明らかなサイクロスポリンA等の育毛剤や育毛成分を含有しないもの(コントロール、プラセボ)と比較することにより評価することが可能となる。このように、皮膚の厚みを測定するのみで育毛効果の指標とされるヘアサイクルにおける成長期の早期誘導効果等を確認することができる。 皮膚の厚みは、毛剃り後の育毛剤塗布前の皮膚厚がブランク(Blank)として測定され、その後、一定期間(好ましくは1日1回以上)経過ごとに測定される。皮膚の厚みは好ましくは皮膚を摘むことによりノギス等の測定器を用いて測定される。マウスの皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織から構成される。ヘアサイクルにおいて厚みが増加する組織は皮下組織である。マウスの皮膚を指等で摘むことによって皮下組織も一緒に摘むことができる。 その他、C3Hマウスを用いた育毛剤の評価方法は、マウスの性別、日齢、餌、飼育温度、1ゲージ当たりの飼育数等、試験結果に変動を与える可能性のある要因はできる限り一定にすることが好ましい。 本実施形態の育毛剤の評価方法によれば、以下のような効果を得ることができる。 (1)本実施形態では、皮膚厚を測定することにより育毛剤の育毛評価を行なった。したがって、容易に育毛剤の育毛効果を評価することができる。つまり、毛母細胞の成長等を直接観察する必要がなく成長期の早期誘導効果等を確認することができる。 (2)また、皮膚色を目視にて相対評価する場合と比較して、個人差により又は観察方向により測定値に差が生じないため正確な育毛剤の育毛評価をすることができる。 (3)また、皮膚色を画像解析装置等を用いて測定する場合と比較して、高価な測定器を使用することなく育毛評価をすることができる。 (4)また、育毛剤の育毛評価において、マウスを屠殺する必要がなく一個体において連続的な観察が可能となる。つまり、正確な育毛評価を行なうことができる。 (5)本実施形態では、毛剃り後から皮膚厚の増加開始日までの期間及び皮膚厚の増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間を測定し、それぞれ育毛剤のヘアサイクルにおける成長期の早期誘導効果及び成長期延長効果と関連付けた。したがって、毛の長さ、毛の発毛面積、発毛開始時期等の観察による評価と比較して、正確な育毛剤の育毛効果を評価することができる。 (6)本実施形態では、C3Hマウスを用いて育毛剤の育毛評価を行なった。したがって、特定週齢のC3Hマウスは均一なヘアサイクルを有するとともに、ヘアサイクルが休止期にあるときに除毛処理を施すと同調して成長期に移行させることができる。つまり、一本一本の毛のヘアサイクルを特定及び観察する必要がなく、容易に育毛評価を行なうことができる。 (7)本実施形態では、ノギスを用いて皮膚厚を測定した。したがって、容易に皮膚厚を測定することができる。 なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。 ・上記実施形態では、マウスはヘアサイクルが同調しているC3Hマウスを使用した。しかしながら、C3Hマウスに限定されず、その他のマウスを使用してもよい。例えば、一般に若いマウスほど均一なヘアサイクルを有しているため、かかるマウスを使用してもよい。 ・上記実施形態では、マウスの皮下組織の増加を皮膚を摘むことによってその厚みを測定した。しかしながら、それ以外の方法でもよく、例えばマウスの皮膚を摘出することにより顕微鏡等を使用して厚みを測定してもよい。 ・塗布される育毛剤の形状は特に限定されず、液状、ミスト状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等の形状が使用される。 ・上記実施形態において適用される育毛剤の種類は特に限定されず、例えば毛細血管拡張作用を有するもの、細胞賦活作用を有するもの、抗男性ホルモン作用を有するもの等が適用され得る。 次に、実施例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。 育毛効果の認められる有効成分を含有する各試験体について、マウスの皮膚に塗布し、前記実施形態の育毛方法と従来の育毛評価方法を比較した。 <試験体> 表1に示されるように、育毛効果の認められる各有効成分が含有される試験体1〜3を調整した。表1における各成分の配合を示す数値の単位は質量%である。 <育毛評価方法> 本実施例において使用するマウスは、C3H/HeNマウス、雄7週齢のものを各試験体につき12匹使用した。一週間馴化させた後、背部を電気バリカン及び回転式ローターを使用して毛剃りを行った。その翌日より各試験体を1日1回、一匹当たり0.2ml塗布した。その時、各試験体塗布前に電気バリカン及び回転式ローターを使用して毛剃りを行った。各試験体塗布開始日よりデジタルシックネスゲージ(TECLOCK社製)を使用して1日1回皮膚厚を測定した。 上述したように1日1回皮膚厚を測定することにより、各試験体塗布日から皮膚厚増加開始日までの期間をヘアサイクルにおける成長期誘導日数として評価した。表2において、成長期誘導日数は12匹のマウスの平均値として示す。 また、上述したように1日1回皮膚厚を測定することにより、皮膚厚増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間をヘアサイクルにおける成長期日数として評価した。表2において、成長期日数は12匹のマウスの平均値として示す。 従来の育毛評価方法として、発毛面積を求めることにより評価を行った。発毛面積は、C3H/HeNマウス、雄7週齢のものを使用した。一週間馴化させた後、背部を電気バリカン及び回転式ローターを使用して毛剃りを行った。その翌日より各試験体を1日1回、一匹当たり0.2ml塗布した。各試験体塗布後、14日後の塗布部における発毛面積を求めることにより従来の発毛面積による育毛評価とした。表2において、発毛面積は12匹のマウスの平均値として示す。 表2に示されるように、発毛面積による従来の育毛評価方法において試験体1(有効成分:ミノキシジル)が最も育毛効果が高く、次に試験体2(有効成分:プロシアニジン)が育毛効果が高いことが示される。試験体3(有効成分:オトギリソウエキス)及び試験体4(プラセボ)がほぼ同様の発毛面積であることが示される。 また、ヘアサイクルにおける成長期誘導日数として示される各試験体塗布日から皮膚厚増加開始日までの期間が一番短い試験体は発毛面積が一番高い試験体1であった。また、二番目に短い試験体は発毛面積が二番目に高い試験体2であった。試験体3,4は塗布日から皮膚厚増加開始日までの期間がほぼ同一日数であった。以上により、試験体塗布日から皮膚厚増加開始日までの期間と育毛効果との間には相関関係があることが確認された。つまり、試験体塗布日から皮膚厚増加開始日までの期間が短いほど有効成分に育毛効果を有することが認められる。 また、ヘアサイクルにおける成長期日数として示される皮膚厚増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間が一番長い試験体は発毛面積が一番目と二番目に高い試験体1,2であった。また、試験体3,4は皮膚厚増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間がほぼ同一日数であった。以上により、皮膚厚増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間と育毛効果との間には相関関係があることが確認された。つまり、皮膚厚増加開始日から皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間が長いほど育毛効果を有することが認められる。 次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。 (a)上記皮膚厚はノギスを用いて測定される育毛剤の育毛評価方法。従って、この(a)に記載の発明によれば、容易に皮膚厚を測定することができる。 マウスを用いた育毛剤の評価方法において、前記マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する工程、前記マウスの皮膚厚増加開始日からマウスの皮膚厚が最大厚みに到達した日までの期間を測定する工程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期延長効果を評価する工程からなる育毛剤の評価方法。 マウスを用いた育毛剤の評価方法において、前記マウスの皮膚に評価対象の育毛剤を塗布する工程、前記育毛剤の塗布日から前記マウスの皮膚厚増加開始日までの期間を測定する工程、前記期間によりヘアサイクルにおける成長期誘導効果を評価する工程からなる育毛剤の評価方法。 前記マウスはC3Hマウスである請求項1又は請求項2記載の育毛剤の評価方法。 前記マウスの皮膚厚は皮膚を摘むことによって測定される請求項1から請求項3のいずれか一項記載の育毛剤の評価方法。


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