タイトル: | 公開特許公報(A)_NF−κB阻害剤及びそれを含有する医薬組成物 |
出願番号: | 2005292660 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 31/7076,A61P 43/00,A61P 31/18 |
岡本 尚 北出 幸夫 JP 2007099702 公開特許公報(A) 20070419 2005292660 20051005 NF−κB阻害剤及びそれを含有する医薬組成物 公立大学法人名古屋市立大学 506218664 国立大学法人岐阜大学 304019399 渥美 久彦 100114605 岡本 尚 北出 幸夫 A61K 31/7076 20060101AFI20070323BHJP A61P 43/00 20060101ALI20070323BHJP A61P 31/18 20060101ALI20070323BHJP JPA61K31/7076A61P43/00 111A61P31/18 5 6 OL 18 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA18 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZC02 4C086ZC55 本発明は、NF−κB阻害剤及びそれを含有する医薬組成物に関するものである。 転写因子nuclear factor κB(NF−κB)は、炎症、免疫反応、細胞増殖、アポトーシスなどを制御する様々な遺伝子や、AIDS(acquired immunodeficiency syndrome:後天性免疫不全症候群)の原因ウィルスであるHIV−1(human immunodeficiency virus type1)遺伝子の発現に関わる誘導型の転写因子である。NF−κB は、様々な炎症性疾患や骨髄腫などの悪性腫瘍において恒常的に活性化されており、HIV−1潜伏感染細胞からのウィルス複製においてもその引き金となる分子である。そのため、NF−κBに対する阻害剤はこれらの疾患に対する治療に有効であると考えられている。 NF−κBは、Rel familyタンパク質であるp65(RelA), RelB, c-Rel, p50/p105, p52/p100により構成されるヘテロ、またはホモ二量体であり、その内 p65-p50二量体が最も主要なものである。通常は阻害タンパク質であるIκBと会合した不活性型として細胞質にとどまっており、一部が細胞質と核との間をシャトリングしている。細胞がTNFαやinterleukin-1 (IL−1)などの炎症性サイトカインの刺激を受けると、mitogen-activated protein kinase/extracellular signal-regulated kinase kinase 1,3 (MEKK1,3)、NF−κB inducing kinase (NIK)などのリン酸化酵素により、IκB kinase (IKK)複合体が活性化される。IKK複合体は、リン酸化活性を持つ2つのサブユニット (IKKα,IKKβ)とこれらと会合した制御性サブユニット(IKKγ/NEMO)から主に構成され、活性化型IKK複合体はIκB分子上の2つの特異的なセリン残基 (IκBαではSer32/36)をリン酸化する。リン酸化されたIκBがポリユビキチン化され26Sプロテアソームにより分解される結果、NF−κB p65上の核移行シグナル (nuclear localization signal : NLS) が露出し、フリーとなったNF−κBが核内に移行し標的遺伝子の転写を活性化する。IKKα,IKKβにはIκB以外にもp65、ヒストンH3という2つの基質が知られている。p65の転写活性化ドメイン上に存在する特異的セリン残基 (Ser536)はIKKα,IKKβによりリン酸化され、ヒストンH3はIKKαのみによってリン酸化されることがわかっており、それぞれNF−κB依存性の転写活性を正に制御することが知られている。 ところで、NF−κBは各種炎症性疾患や多くの悪性腫瘍で恒常的に活性化していることが分かっている。このため近年、NF−κB阻害剤を新たな抗炎症剤、抗悪性腫瘍剤などの候補として位置づけた研究や開発が精力的に行われており、様々な作用機序を持つ低分子化合物からなるNF−κB阻害剤がいくつか報告されている。例えば、骨髄腫の治療薬として臨床試験が行われているBortezomib (PS-341)は、26Sプロテアソーム阻害剤であり、IκBの分解を抑制することでNF−κB阻害効果を示す。dehydroxymethylepoxyquinomycin (DHMEQ) は、NF−κB二量体の核移行を阻害することでNF−κBの活性化を抑制する化合物であり、種々の骨髄腫細胞のアポトーシスを誘導する。また、リウマチ治療薬である金化合物のうちのいくつか、特にaurothioglucoce (AuTG)は、そのレドックス制御を通じてNF−κBのDNA結合を阻害する。また、炭素環アデニンヌクレオシドの一種である9-[(1S,3R)-cis-cyclopentan-3-ol]adenine (cPA)も、NF−κBの活性化を阻害する化合物として知られている。cPAはNF−κB二量体のDNA結合を阻害することでNF−κB依存性の転写を抑制すると報告されているが、その詳細は不明である。 またこれらの他に近年では、特にIKKをターゲットとしてこれを阻害するNF−κB阻害剤がいくつか報告されている。現在までに報告されているNF−κB阻害剤は、その作用機序により、ATPアナログとして作用するものと、アロステリックな効果を示すものとに分類することができる。ATPアナログとして機能するNF−κB阻害剤の例としては、2-amino-3-cyano-4-alkyl-6-(2-hydroxyphenyl)pyridine (ACHP)誘導体が挙げられる。この化合物は、IKKβの活性を選択的に阻害することにより、インビボで強い抗炎症作用を示し、種々の骨髄腫細胞に対してアポトーシスを誘導する。また、アロステリックな効果を示すNF−κB阻害剤の例としては、BMS-345541が挙げられる。この化合物は、IKKβの活性を選択的に阻害することにより、マウスにおいてコラーゲン誘導型の関節炎を抑制する。 また、これらの化合物以外にも、IKKβの活性を選択的に阻害するNF−κB阻害剤として、従来様々な化合物が報告されている(例えば、特許文献1〜3参照)。具体的にいうと、特許文献1には4(2’−アミノエチル)アミノ−1,8−ジメチルイミダゾ(1,2−a)キノキサリンが、特許文献2にはアニリノピリミジン誘導体が、特許文献3にはアミノチオフェン化合物が、それぞれNF−κB阻害剤として開示されている。ただし、現時点において本願発明者の知る限りでは、IKKαを選択的に阻害するNF−κB阻害剤の報告例はまだない。特表2004−529088号公報特表2004−523497号公報特表2005−506334号公報 ところで、IKK阻害効果を有する上述のNF−κB阻害剤は、骨髄腫などのNF−κBの活性化が関与する疾患の治療薬として有望視されており、より効果的なNF−κB阻害剤の開発が期待されている。しかしながら、NF−κB阻害剤として十分な効果を有す化合物は、現在のところ得られていない。それゆえ、NF−κB阻害剤として十分な効果を有する化合物の探索が望まれていた。 また、NF−κBの活性化が関与する疾患の治療薬は、できるだけ副作用が少ない化合物であることが実用上望ましい。しかし、IKKβを選択的に阻害するNF−κB阻害剤の場合、薬効が高くなると副作用が多くなる傾向があった。 本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、NF−κBの活性化阻害効果が強いにもかかわらず副作用の軽減が期待できるNF−κB阻害剤及びそれを含有する医薬組成物を提供することにある。 上記の課題を解決しうる手段を模索する過程で、本願発明者は「IKKβ(IKK−2とも呼ばれる。)はIKKα(IKK−1とも呼ばれる。)に比べて多くのNF−κB活性化過程に関与し、IKKβの阻害剤は同時に正常の炎症・免疫応答をも抑制する」という事実に着目した。そこで、NF−κB阻害剤の副作用を軽減するためには、IKKβの活性化を選択的に阻害するのではなく、むしろIKKβにあまり影響を与えずにIKKαの活性化を選択的に阻害する化合物のほうが望ましいと考え、このような化合物の探索を試みた。そして本願発明者が鋭意研究を行ったところ、合成炭素環アデニンヌクレオシドであってcPA類似の化合物のなかに、IKKαの活性化を選択的に阻害でき細胞毒性も少なくて、しかも強いNF−κB活性化阻害効果を示すものがあることを突き止め、以下の本願発明を完成させるに至った。 即ち、請求項1に記載の発明(第1発明)は、ノルアリステロマイシン(NAM)またはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、IKKαを選択的に阻害することを特徴とするNF−κB阻害剤をその要旨とする。 請求項2に記載の発明(第2発明)は、請求項1において、9−[(1S,3R)−シス−シクロペンタン−3−オール]アデニン(cPA)の細胞毒性と同程度の細胞毒性を有する一方、cPAよりもNF−κB依存性の転写に対する抑制効果が大きいことをその要旨とする。 請求項3に記載の発明(第3発明)は、請求項1または2において、IKKα活性に対し1μM以下のIC50を有し、IKKβ活性に対し10μM以上のIC50を有することをその要旨とする。 請求項4に記載の発明(第4発明)は、NF−κBの活性化が関与する疾患を治療するためのものであって、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のNF−κB阻害剤を含有することを特徴とする医薬組成物をその要旨とする。 請求項5に記載の発明(第5発明)は、請求項4において、前記疾患はAIDSであることをその要旨とする。 以上詳述したように、請求項1〜3に記載の発明によると、NF−κBの活性化阻害効果が強いにもかかわらず、IKKαの活性化を選択的に阻害する特異性を有しかつ細胞毒性が低いため副作用の軽減が期待できるNF−κB阻害剤を提供することができる。請求項4,5に記載の発明によると、このような優れたNF−κB阻害剤を含有する医薬組成物を提供することができ、これを使用することによりNF−κBの活性化が関与する様々な疾患を治療、予防することが可能となる。 以下、本発明を具体化した一実施の形態を詳細に説明する。 本発明のNF−κB阻害剤は、ノルアリステロマイシン(noraristeromycin;NAM)またはその医薬上許容できる塩を有効成分としている。ノルアリステロマイシン(NAM)とは、合成炭素環アデニンヌクレオシドであってcPA類似の化合物である。その分子量は251.248、分子式はC10H13N5O3である。ちなみに、NAMにおける糖部には3つの水酸基が結合しているのに対し(化1参照)、cPAではそのうち2つの水酸基が水素になっている(化2参照)。 NAMはIKKαを選択的に阻害する特異性を有することが、後述する試験によって実証されている。 本発明のNF−κB阻害剤は、cPAの細胞毒性と同程度の細胞毒性を有する一方、cPAよりもNF−κB依存性の転写に対する抑制効果が大きいという特徴がある。なお、細胞毒性のレベルがcPAと同程度であれば一応細胞毒性が低いと言うことができ、それゆえIKKα選択的阻害性との相乗効果により副作用の軽減を期待することができる。 本発明のNF−κB阻害剤は、IKKα活性に対する阻害力がIKKβ活性に対する阻害力の2倍以上、好ましくは5倍以上、特に好ましくは10倍以上となっている。また、本発明のNF−κB阻害剤は、IKKα活性に対し1μM以下のIC50を有し、IKKβ活性に対し10μM以上のIC50を有していることがよい。その理由は、IKKβにあまり影響を与えずにIKKαの活性化を選択的にかつ確実に阻害でき、副作用の低減につながるからである。 NAMの医薬上許容できる塩とは、毒性がないため医薬上許容できる塩(例えば無機金属)などを指し、カチオンが当該塩の毒性あるいは生物学的活性に重大に関与しないものが好ましい。その具体例を挙げると、ナトリウム、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属塩がある。無機金属以外の塩としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸などの無機酸との塩や、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アジピン酸、パルミチン酸、タンニン酸などの有機酸との塩や、リジンなどの塩基性アミノ酸との塩を挙げることができる。 上記のNF−κB阻害剤を含有する本発明の医薬組成物は、NF−κBの活性化が関与する疾患の治療、予防を目的として使用される。当該医薬組成物が治療または予防の対象とする疾患としては例えば癌が挙げられる。具体的には、大腸癌、直腸癌、前立腺癌、子宮頚癌、血液癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、咽頭癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌、気管支癌、膵臓癌、頚部癌、胃癌、皮膚癌、腎臓癌、食道癌、口腔癌などが、治療または予防の対象となりうる。 また、NF−κBの活性化が関与する疾患としては、例えば炎症が挙げられる。具体的には、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、ルー・ゲーリック病、敗血症、結膜炎、紫斑病、鼻ポリープ、紅斑性狼瘡、急性呼吸窮迫症候群、クローン病、胃炎、食道炎、肝炎、膵炎、腎炎、過敏性腸症候群、粘液性大腸炎、潰瘍性大腸炎、骨関節炎、痛風、乾癬、湿疹、皮膚炎、慢性関節リウマチ、リウマチ性脊椎炎、嚢胞性繊維症、炎症性腸疾患、多発性硬化症などが、治療または予防の対象となりうる。 また、NF−κBの活性化が関与する疾患としては、例えば自己免疫症や感染症が挙げられる。具体的には、全身性強皮症、ベーチェット病、結節性動脈周囲炎、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、活動性慢性肝炎、糸球体腎炎、後天性免疫不全症候群(AIDS)、ヒトパピローマウィルスによる感染症、ヒトT細胞白血病ウィルスによる感染症、B型肝炎ウィルスによる感染症、C型肝炎ウィルスによる感染症などが、治療または予防の対象となりうる。 さらにこの他にも、NF−κBの活性化が関与する疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、II型糖尿病、骨粗鬆症、内毒素性ショック、血管形成術後の再狭窄、左心室肥大、心不全、心臓や肝臓などの虚血、臓器移植拒絶症、多臓器不全、卒中、アテローム性動脈硬化症、癲癇などが、治療または予防の対象となりうる。 本発明の医薬組成物においては、NF−κB阻害剤に加えて、他の治療剤または生物学的活性物質(例えばホルモン等)を適宜組み合わせて使用することができる。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬上許容できる担体、希釈剤、賦形剤などを含有していてもよい。 また、本発明の医薬組成物は、NF−κBの活性化が関与する治療、予防を目的として個体に使用されるが、この場合において個体は限定されるものではなく、広く動物一般を意味する。当該医薬組成物の使用対象となる動物としては、例えば、ネコ、イヌ、ウシ、サル、シチメンチョウ、ウズラ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ニワトリ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットなどが挙げられるが、より好ましくは哺乳類であり、最も好ましくはヒトである。 以下、本実施形態をより具体化した実施例について説明するが、言うまでもなく本発明は実施例に限定されるわけではない。[試験例1]14種類の合成炭素環アデニンヌクレオシドのNF−κBの転写活性に対する効果の検討 <目的> cPA及びその誘導体の合計16種類の合成炭素環アデニンヌクレオシド(図1を参照)のNF−κB依存性転写に対する抑制効果を、HEK293細胞(ヒト胎児腎細胞)を用いたレポーターアッセイを行って比較検討した。NF−κBの活性化はTNFα(1ng/mL)の刺激により行った。図1には、この実験に用いた合成炭素環アデニンヌクレオシドの構造式がグループ別に示されている。グループAには6種の化合物(サンプル1〜6)が属し、グループBには5種の化合物(サンプル7〜11)が属し、グループCには1種の化合物(サンプル12)が属し、グループDには1種の化合物(サンプル13)が属し、グループEには1種の化合物(サンプル14)が属している。 <具体的手順> 1)HEK293細胞を12-well plateに1x105 cells/wellの密度でまいた。2)4κB-lucレポータープラスミドをトランスフェクションさせてHEK293細胞に遺伝子を導入した。3)トランスフェクションの24時間後、HEK293細胞に100μMの合成炭素環アデニンヌクレオシドを加え、その1時間後に1ng/mLのTNFα(Roche社製)で刺激した。このときTNFα(1ng/mL)で刺激しない区も設定した。4)遺伝子導入48時間後に、500L/wellのpassive lysis buffer (Promega社製)を加え、室温で15分間振動させて細胞を溶解し、その上清10Lをルシフェラーゼアッセイに用いた。5)ルシフェラーゼ活性は、Dual Luciferase Assay System Kit (Promega社製)を用いて、AutoLumat LB 9507 luminometer (EG&G Berthold社製)で測定した。6)遺伝子導入効率は、内部標準としてpRL-TK (Promega)を用い、Renillaのルシフェラーゼ活性を測定することによりモニタリングした。7)データは3つの独立したサンプルの活性の平均値により、レポータープラスミドのみを遺伝子導入したサンプルと比較、検討した。 <試験結果> 上記の実験を行った結果、図2の表に示すようにいくつかの化合物(Sample #2,3,6,14)がcPAと比較してより強いNF−κB阻害効果を示した。このうち3つの化合物(Sample #3,6,14)では、TNFα非刺激時にもその阻害効果が見られた。この阻害効果は細胞毒性によるものか、または非特異的な転写活性阻害であると考えられた。TNFα刺激時にのみ阻害効果を示したSample#2の化合物は、抗ウィルス活性を持つことが報告されているNAMであった。[試験例2]NAMの阻害作用のNF−κBに対する特異性の検討 A.レポーターアッセイ <目的> NAMの効果がNF−κB活性化シグナル伝達経路特異的なものであるかどうかを検討するために、HEK293細胞を用い、cAMP response element binding protein (CREB)依存性のルシフェラーゼレポータープラスミドを用いたレポーターアッセイを行った。 <具体的手順> 1)HEK293細胞を12-well plateに1x105 cells/wellの密度でまいた。2)24時間後、Fugene6トランスフェクション試薬(Roche社製)を用いて遺伝子を導入した。3)トランスフェクションの24時間後に各濃度(0,0.1,1,10μM)のNAMを加え、その1時間後にTNFα(1ng/mL)で刺激した。4)遺伝子導入48時間後に500μL/wellのpassive lysis bufferを加え、室温で15分間振動させて細胞を溶解し、その上清10μLをルシフェラーゼアッセイに用いた。5)ルシフェラーゼ活性はDual Luciferase Assay System Kitを用いてAutoLumat LB 9507 luminometerで測定した。6)遺伝子導入効率は、内部標準としてpRL-TK (Promega社製)を用い、Renillaのルシフェラーゼ活性を測定することによりモニタリングした。7)データは3つの独立したサンプルの活性の平均値により、レポータープラスミドのみを遺伝子導入したサンプルと比較、検討した。 <試験結果> 上記の試験を行った結果を図3のグラフに示す。図3(a)のグラフに示すとおり、NAMは濃度依存的にNF−κB依存性の転写活性を阻害した。具体的なデータは示さないが、Sample#3,6,14の化合物は10μM以下では抑制効果を示さなかった。なお、図3(b)はTNFαに替えてForskolinを用いた場合のグラフであるが、NAMはForskolinの転写活性を殆ど阻害しないことがわかった。ちなみに、TNFα処理時においては、NF−κB依存性の転写活性に対し10μM以下(具体的には約2.7μM)のIC50を有していた。 B.細胞毒性試験 <目的> 次に、NAMの細胞に対する毒性を、HEK293細胞にて細胞活性測定試薬であるWST-1により細胞の活性を比較することにより検討した。 <具体的手順> 1)HEK293細胞を1x105 cell/wellの密度で96 wellプレートにまき、37℃、5% CO2存在下で24時間培養した。2)NAMで1時間前処理した後、TNFαを最終濃度が1ng/mLとなるように加え、さらに24時間培養した。3)Cell Proliferation Reagent WST-1試薬(Roche社製)を10μL/well加え、さらに4時間培養した。4)1分間撹拌した後、microtiter plate readerを用いて450nmの吸光度を測定した。5)データは4つの独立したサンプルの平均値を用い、阻害剤非処理、TNFα非処理のサンプルと比較検討した。 <試験結果> その結果、NAMはTNFα刺激時、非刺激時ともにそのNF−κB阻害濃度においてコントロール細胞と同等の細胞の生存率を示し、毒性を示さないことが分かった(図4のグラフ参照)。この結果は、レポーターアッセイにおいてNAMがTNFα非刺激時にはNF−κB阻害効果を示さなかった結果とも一致する(図3(a)のグラフ参照)。[試験例3]ウェスタンブロッティングによるNF−κB阻害におけるNAMの作用機序の検討 <目的> 次に、NAMのNF−κB阻害効果の作用機序を検討するために、抗リン酸化IκBα(Ser 32/36)抗体、抗IκBα抗体を用いてウェスタンブロッティングを行った。 <試験準備作業及び試験の手順> A.SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS−PAGE)及びウェスタンブロッティングについて (1)SDS−PAGE SDS−PAGEについて試料の調製を以下のように行った。 1)シャーレ内の培養液を除き、氷冷PBS(-) 10mLで洗った。2)氷冷PBS(-) 1mLを加えてスクレーパーを用いて細胞をサンプルチューブに回収し、2000rpm, 4℃, 3min遠心した。3)上清を除き、氷冷したlysis buffer 1mLを加え4℃で30分間振盪した。4)15,000 rpm, 4℃, 15minで遠心し、得られた上清を細胞抽出液とし、-80℃で保存した。 また、上記のようにして得られた細胞抽出液15μLに6×SDS sample bufferを3μL加え100℃,3分間熱処理後、遠心し全量を電気泳動用試料とした。 そして電気泳動を以下のように行った。 1)所定の組成を有する10%ポリアクリルアミドゲルを2種作製した。2)調製した試料と分子量マーカー Precision Plus Protein Dual Color Standards (Bio-Rad社製)をとスタッキングゲルにのせ、ランニングゲルに達するまでは10mA、以後は20mAの定電流で電気泳動を行った。 (2)ウェスタンブロッティング PVDF (polyvinylidene difluoride)メンブレンとして、Immobilon-P (0.45μm pore size) (MILLIPORE社製)を準備した。ブロッティング用濾紙として、chromatography paper 3MM Chr (Whatman社製)を準備した。10×transfer bufferとして、Trisbase 24g, Glycine 113g, H2O to 800mLの混合物を作製し、これを4℃で保存した。使用時には、最終濃度で20%のメタノールを加え超純水で希釈した。また、10 x TBST (Tris buffered saline)として、Trisbase 24.2g, NaCl 80g, HCl(pH調整用), H2O to 1L, Tween-20 10mLの混合物を準備した。使用時には、超純水で希釈した。また、ブロッキング液として、5%skim milk (Difco社製) / TBSTを準備した。 そして以下の手順でブロッティングを行った。 1)ランニングゲルと同じ大きさに切り1分間メタノールに浸したPVDFメンブレンと、同じ大きさのブロッティング用濾紙及びスポンジとをトランスファーバッファーに浸しておいた。2)SDS-PAGEが終了すると、ランニングゲルのみを切り出し、ブロッティング装置のカセットの陽極側からスポンジ、ブロッティング用濾紙2枚、PVDFメンブレン、ゲル、ブロッティング用濾紙2枚、スポンジの順に重ね、気泡が入らないように装置に装着した。3)ブロッティング装置に80℃に冷却したアイスボックスを入れ、トランスファーバッファーを加えて、撹拌しながら350mAの定電流で1時間のトランスファーを4℃で行った。4)トランスファー終了後、PVDFメンブレンをTBSTで洗い、ブロッキング液に浸して室温で30分間ブロッキングを行った。 B.抗体処理及びシグナルの検出について 次に、抗体処理及びシグナルの検出を行うために、2種類の抗体希釈液、即ち5% bovine serum albumin (BSA) (SIGMA) / TBST (anti-phospho p65 (Ser536)に用いる)と、5% skim milk / TBST(その他の抗体に用いる)とを準備した。また、一次抗体を準備し、これを上記の抗体希釈液で1000倍に希釈して用いた。また、二次抗体 (HRP標識抗体)を準備し、これを抗体液で2000倍に希釈した。さらに、二次抗体検出用試薬としてSuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate (PIERCE社製)を準備し、二次抗体検出用フィルムとしてHyperfilm ECL (Amersham Biosciences社製)を準備した。自動現像機として、KODAK X-Omat 1000 Processor (Kodak社製)を用いることとした。 そして以下の手順で抗体処理及びシグナルの検出を行った。 1)ブロッキングの終了したPVDFメンブレンをハイブリ・バック(コスモ・バイオ社製)に挟み三方を接着した。2)希釈した一次抗体を2mL加え、気泡が入らないように接着し密封して室温で1時間、または4℃で一晩抗体処理を行った。3)TBSTで5分間3回洗った。4)一次抗体と同様に二次抗体処理を室温で1時間行い、TBSTで5分間3回洗った。5)二次抗体検出用試薬を用いて発光させ、暗室にてフィルムに露光し、自動現像機で現像してシグナルを検出した。 <試験結果> まず、TNFα刺激時のHEK293細胞におけるIκBαのリン酸化、分解の時間的経過を調べた(図5(a)参照)。TNFα刺激後5分でIκBαはリン酸化を受け始め、10分後に最も強くリン酸化された(図5(a)の中段のパネル参照)。また、そのリン酸化にともなってIκBαはTNFα刺激後10分頃から分解され始め、30分後にはほぼ完全に分解された(図5(a)の上段のパネル参照)。 この結果に基づき、まずTNFα刺激後10分後のIκBαのリン酸化状態に対するNAMの影響を調べた(図5(b)参照)。その結果、IκBαのリン酸化はNAMによりその濃度依存的に抑制された(図5(b)の2段目のパネル参照)。 また、同じくIKKα及びIKKβによってリン酸化されることが知られているNF−κB p65サブユニットのSer 536のリン酸化に対する影響も抗リン酸化p65 (Ser 536)を用いて調べたところ、同様にNAMによって濃度依存的に阻害された(図5(b)の4段目のパネル参照)。IκBα、p65自体の発現量に変化は見られなかった(図5(b)の1、3段目のパネル参照)。 次に、リン酸化に引き続いて起こるIκBαの分解も同様に阻害されるかどうかを検討した。図5(c)に示すように、NAM未添加の細胞においてはTNFα刺激30分後にほぼ完全に分解されたIκBαの発現量が、NAMの濃度依存的に回復した。以上より、NAMがIκBαのリン酸化とそれに引き続き起こる分解及びNF−κB p65サブユニットのリン酸化を抑制することでNF−κB活性化のシグナル伝達経路を阻害することが明らかとなった。また、NAMがIκBα、p65の共通のリン酸化酵素であるIKKの活性を阻害する可能性が示唆された。[試験例4]インビトロ・キナーゼ・アッセイ(in vitro kinase assay)によるNAMのIKKリン酸化活性に対する影響の検討 <目的> これまでの結果から、NAMはIKKの活性を阻害することでNF−κB活性化を抑制する可能性が示唆された。そこで、NAMがIKKの活性に対して直接阻害作用を示すかどうか、さらにはIKKα,IKKβのどちらについて阻害を示すかをin vitro immunocomplex kinase assayを行い検討した(図6,図7,図8のグラフ参照)。 <具体的手順> (1)GST融合タンパク質の合成と精製 あらかじめ所定のバッファーA、溶出液及び透析液をそれぞれ準備しておき、以下の手順を実行した。 1)GST-IκBα (1-54)発現プラスミドを大腸菌 (DH5α)にトランスフォームし、LB培地 (100μg/mL Ampicilin)で37℃で一晩培養した。2)100倍量のLB培地に希釈し、OD600が0.5〜0.7になるまで37℃で培養した。3)最終濃度が0.4mMとなるようにIPTG (SIGMA社製)を加え、30℃でさらに5時間培養した。4)1Lの大腸菌培養あたり20mlの氷冷したバッファーAに懸濁し、氷上で1時間放置した。5)1mLの20% TritonX-100(最終濃度1%)及び480μLの5M NaCl(最終濃度150mM)を加えた。6)超音波処理装置(コスモ・バイオ社製)を用いて、15秒間のパルスを氷令しながら5回加え、細胞を破粋した。7)4℃、15000rpmで15分間遠心した。8)上清を別のチューブに移し、再度遠心した。9)上清を0.45μmのフィルター (MILLIPORE社製)を通しこれを粗抽出液とし、氷上に放置した。10)1Lの大腸菌培養あたりベッドボリュームで3mLのレジン (Glutathione Sepharose 4B ; Amersham Biosciences社製)をカラム (Bio-Rad社製)に詰め、30mLの氷冷PBSで洗った。11)コールドルームにおいて、上記の粗抽出液をカラムに通し、レジンに吸着させた。12)30mLの氷冷PBSで3回カラムを洗った。13)カラムのボトムキャップを閉じ、室温にて3mLの溶出液を加えて10分間放置した。14)キャップをはずし溶出液を回収し氷冷した。溶出をさらに2回繰り返した。15)透析チューブに入れ、4℃で一晩透析を行った。透析液は2回交換した。16)翌日、タンパクを回収し、-80℃で保存した。タンパク濃度を測定し、SDS-PAGEで産物を確認した。 (2)免疫沈降とリン酸化反応 あらかじめ所定のキナーゼ・アッセイ・リシス・バッファー(kinase assay lysis buffer)及びキナーゼ・バッファー(kinase buffer)をそれぞれ準備しておき、以下の手順を実行した。 1)HEK293細胞を6×105 cells/dishの密度で60mm dishにまいた。2) 細胞を1mLの氷冷PBSで洗い、500μLのlysis bufferで回収した。3)抗IKKα抗体を用いて、4℃で90分間、IKK複合体の免疫沈降を行った。4)1mLの氷冷lysis bufferで3回、kinase bufferで2回ビーズを洗った。5)20μM ATP, 2.5μCi [γ-32P] ATP, 2.5μg GST-IκBα (1-54)を含むkinase buffer 30μLを加え、30℃で20分間リン酸化反応を行った。6)6×SDS sample bufferを6mL加え、100℃で5分間加熱処理した後、10% SDS-PAGEを行った。7)ゲル乾燥機 (RAPIDRY, ATTO社製)でゲルを乾燥後、BAS-1800 II (FUJIFILM社製)を用いてシグナルを検出した。シグナルの検出用ソフトはImage Reader (FUJIFILM社製)を、データ解析はImage Gauge V4.0 (FUJIFILM社製)をそれぞれ用いた。 <試験結果> 上記アッセイを行って検討した結果、図6〜図8に示すように、NAMは抗IKK抗体を用いて免疫沈降した内在性のIKK複合体のリン酸化能をその濃度依存的に阻害した。以上の結果より、NAMはIKKのリン酸化能を阻害する、より詳細にいうとIKKα活性の選択的阻害を通じてIKKのリン酸化能を阻害することで、NF−κBの活性化を抑制することが示された。ちなみに、NAMはIKKα活性に対し1μM以下(具体的には約0.93μM)のIC50を有し、IKKβ活性に対し10μM以上のIC50を有していた。[試験例5]HIV−1潜伏感染細胞からのHIV−1の複製に対するNAMの効果の検討 <目的> 次に、NAMの効果が実際にNF−κBにより制御されている生物学的現象に対して有効であるかどうかを検討するために、TNF刺激におけるHIV-1潜伏感染細胞からのウィルス複製に対しての効果を検討した。ここでは、測定用キットとしてRETRO-TEK HIV-1 p24 Antigen ELISA kit (Zeoto Metrix Corp., 社製)を用いるとともに、試験に供する細胞としてOM10.1 細胞(HL-60(ヒト前骨髄性白血病細胞株)のHIV-1潜伏感染細胞株)を用いた。 <具体的手順> 1)12-well plateにOM10.1細胞を5 x 105 cells/wellの密度になるようにまき、NAMを加えた。2)1時間後、0.2ng/mLとなるようにTNFαで刺激した。3)24時間後、細胞上清を回収し、HIV-1 p24抗原レベルをRETRO-TEK HIV-1 p24 Antigen ELISA kitを用いて、ELISA法によりウィルス複製量を測定した。 <試験結果> その結果、NAMは、TNFα刺激によって強く誘導される培養上清中のHIV-1 p24抗原量を著しく、かつ濃度依存的に減少させた (図9のグラフを参照)。以上の結果より、NAMはそのNF−κB活性化阻害作用を通じてHIV-1の複製に対して強い抑制効果を示すことが明らかとなった。また、NAMはHIV-1の複製抑制に対し0.05μM〜0.1μM程度のIC50を有することがわかった。[全体考察] 以上のように本実施例では、新規に合成したcPA類似化合物を含む合計14種類の合成炭素環アデニンヌクレオシド化合物を用い、NF−κB阻害剤としてのスクリーニングを行った。その中で、最も強い抑制効果を示すものとしてNAMを同定した。そして、この化合物について各種の試験を行うことで、下記のような極めて好適な結果を得ることができた。 ・NAMは細胞毒性を示さない濃度において特異的にNF−κBの活性化を阻害した。 ・NAMは、IκBαのリン酸化を阻害し、それに引き続きおこるIκBαの分解を抑制することにより、NF−κB阻害効果を示した。 ・NAMは、NF−κB p65サブユニット Ser536のリン酸化阻害し、この効果もNF−κB阻害作用の一因となっていると考えられた。 ・NAMはインビトロでIKKの活性を、とりわけIKKαの活性を直接阻害した。それに対してIKKβの活性についてそれほど阻害していなかった。 ・NAMは、そのNF−κB阻害効果を通じて、TNFα刺激によるHIV-1潜伏感染細胞からのウィルスの複製を強力に抑制した。 次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。 (1)ノルアリステロマイシン(NAM)またはその医薬上許容できる塩を有効成分とすることを特徴とするNF−κB阻害剤。 (2)cPAを除く合成炭素環アデニンヌクレオシドまたはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、IKKαを選択的に阻害することを特徴とするNF−κB阻害剤。 (3)cPAを除く合成炭素環アデニンヌクレオシドまたはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、IKKのリン酸化能を阻害することを特徴とするNF−κB阻害剤。 (4)cPAを除く合成炭素環アデニンヌクレオシドまたはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、cPAよりもNF−κB阻害効果が大きいことを特徴とするNF−κB阻害剤。 (5)cPAを除く合成炭素環アデニンヌクレオシドまたはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、NF−κB依存性の転写に対する抑制効果がcPAよりも大きいことを特徴とするNF−κB阻害剤。 (6)cPAを除く合成炭素環アデニンヌクレオシドまたはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、細胞毒性のレベルがcPAと同程度であって、かつ、NF−κB依存性の転写に対する抑制効果がcPAよりも大きいことを特徴とするNF−κB阻害剤。 (7)cPAを除く合成炭素環アデニンヌクレオシドまたはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、NF−κB p65サブユニット Ser536のリン酸化阻害することを特徴とするNF−κB阻害剤。 (8)ノルアリステロマイシン(NAM)またはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、IKKαを選択的に阻害するNF−κB阻害剤を含有する医薬組成物を用いて、NF−κBの活性化が関与する疾患を治療、予防する方法。 (9)ノルアリステロマイシン(NAM)またはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、IKKαのリン酸化を選択的に阻害することを通じてHIV−1の転写を抑制するAIDS治療薬。 (10)ノルアリステロマイシン(NAM)またはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、IKKαを選択的に阻害するNF−κB阻害剤を含有することを特徴とする癌治療薬。 (11)ノルアリステロマイシン(NAM)またはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、IKKαを選択的に阻害するNF−κB阻害剤を含有することを特徴とする炎症治療薬。 (12)ノルアリステロマイシン(NAM)またはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、IKKαを選択的に阻害するNF−κB阻害剤を含有することを特徴とする自己免疫症治療薬。 (13)ノルアリステロマイシン(NAM)またはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、IKKαを選択的に阻害するNF−κB阻害剤を含有することを特徴とする感染症治療薬。実施例の試験例1において供される5グループの合成炭素環アデニンヌクレオシドを示す構造式。実施例の試験例1において、合計14種類の合成炭素環アデニンヌクレオシドのNF−κB依存性転写に対する抑制効果の結果を示すグラフ。(a),(b)は実施例の試験例2におけるレポーターアッセイの結果を示すグラフ。実施例の試験例2における細胞毒性試験の結果を示すグラフ。(a)〜(c)は実施例の試験例3におけるウェスタンブロッティングの結果を示す写真。(a)は実施例の試験例4におけるインビトロ・キナーゼ・アッセイの結果を示す写真、(b)は結果を示すグラフ。(a)は実施例の試験例4におけるインビトロ・キナーゼ・アッセイの結果を示す写真、(b)は結果を示すグラフ。(a)は実施例の試験例4におけるインビトロ・キナーゼ・アッセイの結果を示す写真、(b)は結果を示すグラフ。実施例の試験例5におけるELISA法によるウィルス複製量測定試験の結果を示すグラフ。 ノルアリステロマイシン(NAM)またはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、IKKαを選択的に阻害することを特徴とするNF−κB阻害剤。 9−[(1S,3R)−シス−シクロペンタン−3−オール]アデニン(cPA)の細胞毒性と同程度の細胞毒性を有する一方、cPAよりもNF−κB依存性の転写に対する抑制効果が大きいことを特徴とする請求項1に記載のNF−κB阻害剤。 IKKα活性に対し1μM以下のIC50を有し、IKKβ活性に対し10μM以上のIC50を有することを特徴とする請求項1または2に記載のNF−κB阻害剤。 NF−κBの活性化が関与する疾患を治療するためのものであって、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のNF−κB阻害剤を含有することを特徴とする医薬組成物。 前記疾患はAIDSであることを特徴とする請求項4に記載の医薬組成物。 【課題】NF−κBの活性化阻害効果が強いにもかかわらず副作用の軽減が期待できるNF−κB阻害剤を提供すること。【解決手段】本発明は、ノルアリステロマイシン(NAM)またはその医薬上許容できる塩を有効成分とし、IKKαを選択的に阻害することを特徴とするNF−κB阻害剤に関する。このNF−κB阻害剤は、NF−κBの活性化が関与する疾患を治療するための医薬組成物に含有させてもよい。このNF−κB阻害剤は、IKKα活性に対し1μM以下のIC50を有し、IKKβ活性に対し10μM以上のIC50を有することがよい。【選択図】図6