タイトル: | 特許公報(B2)_パラジウム含有担持触媒の製造方法 |
出願番号: | 2005292393 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | B01J 23/44,B01J 37/16,B01J 37/08,C07C 27/12,C07C 51/25,C07C 57/045,C07B 61/00,C07C 45/35,C07C 47/22 |
姫野 嘉之 二宮 航 大谷内 健 JP 5001543 特許公報(B2) 20120525 2005292393 20051005 パラジウム含有担持触媒の製造方法 三菱レイヨン株式会社 000006035 宮崎 昭夫 100123788 石橋 政幸 100106138 岩田 慎一 100120628 緒方 雅昭 100127454 姫野 嘉之 二宮 航 大谷内 健 JP 2004333204 20041117 20120815 B01J 23/44 20060101AFI20120726BHJP B01J 37/16 20060101ALI20120726BHJP B01J 37/08 20060101ALI20120726BHJP C07C 27/12 20060101ALI20120726BHJP C07C 51/25 20060101ALI20120726BHJP C07C 57/045 20060101ALI20120726BHJP C07B 61/00 20060101ALN20120726BHJP C07C 45/35 20060101ALN20120726BHJP C07C 47/22 20060101ALN20120726BHJP JPB01J23/44 ZB01J37/16B01J37/08C07C27/12 330C07C51/25C07C57/045C07B61/00 300C07C45/35C07C47/22 F B01J21/00−38/74 C07B31/00−63/04 C07C1/00−409/44 JSTPlus(JDreamII) 特開2002−079087(JP,A) 国際公開第03/068396(WO,A1) 特開昭60−139341(JP,A) 特開2004−519326(JP,A) 特開2000−202287(JP,A) 特開昭51−001389(JP,A) 欧州特許出願公開第00145467(EP,A1) 特開2004−141863(JP,A) 久保俊彦ら,ゼオライトY上のパラジウムの分散状態と触媒活性,日本化学会誌(化学と工業化学),日本化学会,1974年 3月15日,Vol.1974, No.7,p.1199-1203 4 2006167709 20060629 12 20080926 吉田 直裕 本発明は、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有担持触媒の製造方法に関する。また本発明は、α,β−不飽和カルボン酸の製造方法に関する。 オレフィンを分子状酸素により液相酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有担持触媒として、例えば、特許文献1にはパラジウム塩を還元剤により還元したパラジウム金属の担持触媒が提案されている。国際公開第02/083299号パンフレット特開2000−202287号公報 しかしながら、特許文献1記載の方法で製造した触媒のα,β−不飽和カルボン酸の選択率は未だ十分ではなく、より選択率の高いα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒が望まれている。 したがって本発明の目的は、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を高選択率で製造するためのパラジウム含有担持触媒、その触媒の製造方法、およびα,β−不飽和カルボン酸を高選択率で製造する方法を提供することにある。 本発明は、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有担持触媒の製造方法であって、パラジウム塩を担体上に担持する工程と、前記パラジウム塩が担持された担体を熱処理温度に達するまで1〜10℃/分で昇温して熱処理することで、該担体上に担持されているパラジウム塩の少なくとも一部が酸化パラジウムとなった触媒前駆体とする工程と、担体上に担持された状態で触媒前駆体に含まれる酸化パラジウムを還元する工程を有するパラジウム含有担持触媒の製造方法である。 前記熱処理を、前記パラジウム塩の熱分解温度以上の温度で行うことが好ましい。 また本発明は、前記方法で製造されたパラジウム含有担持触媒である。 さらに本発明は、前記のパラジウム含有担持触媒を用いて、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により液相酸化するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法である。 本発明のパラジウム含有担持触媒の製造方法によれば、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造した場合に、α,β−不飽和カルボン酸を高選択率で製造できるパラジウム含有担持触媒を製造することができる。 また、本発明のパラジウム含有担持触媒によれば、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造した場合に、α,β−不飽和カルボン酸を高選択率で製造することができる。 さらに、本発明のパラジウム含有担持触媒を用いて、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により液相酸化するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法によれば、α,β−不飽和カルボン酸を高選択率で製造することができる。 本発明のパラジウム含有担持触媒の製造方法は、担体上に担持された状態で触媒前駆体に含まれる酸化パラジウムを還元する工程を有するパラジウム含有担持触媒の製造方法である。このパラジウム含有担持触媒の製造方法により得られたパラジウム含有触媒を用いることで、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を高選択率で製造することができる。α,β−不飽和カルボン酸を高選択率で製造することができる要因としては、酸化パラジウムと担体の相互作用が従来のパラジウム塩の場合と比べて強いため、還元工程において、生成するパラジウム金属の凝集および粒子成長を抑制できるので、パラジウム原子が高分散した触媒が製造されることが考えられる。 酸化パラジウムが担体上に担持されていること、及び最終的に得られるパラジウム含有担持触媒にパラジウム金属が担持されていること、並びにそれらの物性等は、XRD測定、XPS測定、TEM観察等により確認できる。例えば、酸化パラジウムおよび金属パラジウムは、XRD測定における強度の強い3つのピークについて照合することにより、その生成を確認できる。 (照合ピーク) 酸化パラジウム d値:2.64、1.68、2.67 金属パラジウム d値:2.25、1.95、1.38 本発明のパラジウム含有担持触媒は、担体に触媒構成元素を担持した担持型触媒であり、上記の方法で製造されたものである。 担体としては、酸化パラジウムを担持できるものであれば特に限定されない。本発明では、後述するように、担体にパラジウム塩を担持した後にその担体を熱処理する方法が好ましい実施形態として挙げられ、その熱処理条件で燃焼または変質等の生じにくい無機酸化物の担体が好ましい。例えば、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、マグネシア、カルシア、チタニアおよびジルコニア等を挙げることができるが、中でもシリカ、チタニア、ジルコニアが好ましい。担体は1種を用いることも、2種以上を併用することもできる。 担体の比表面積は担体の種類等により異なるので一概に言えないが、シリカの場合、50m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましい。また、1500m2/g以下が好ましく、1000m2/g以下がより好ましい。担体の比表面積は、小さいほど有用成分がより表面に担持された触媒の製造が可能となり、大きいほど有用成分が多く担持された触媒の製造が可能となる。 上記の担体上に、少なくとも酸化パラジウムが担持された触媒前駆体を調製する。触媒前駆体は、担体と酸化パラジウムを溶媒中で分散させ、その後溶媒を蒸発させる方法により調製することもできるが、最終的に得られるパラジウム含有担持触媒におけるパラジウム原子の良好な分散状態を得るため、あらかじめパラジウム塩を担体に担持し、その後にその担体を熱処理する方法により調製することが好ましい。 パラジウム塩を担体に担持させる方法としては、パラジウム塩の溶解液に担体を浸漬した後に溶媒を蒸発させる方法、または担体の細孔容積分のパラジウム塩の溶解液を担体に吸収させた後に溶媒を蒸発させる、いわゆるポアフィリング法による方法が好ましい。パラジウム塩を溶解させる溶媒としては、パラジウム塩を溶解するものであれば特に限定されない。 パラジウム塩が担体に担持された状態で熱処理することにより、パラジウム塩の少なくとも一部が分解して酸化パラジウムになる。熱処理温度は、パラジウム塩の熱分解温度以上が好ましい。また、800℃以下が好ましく、700℃以下がより好ましい。所定の熱処理温度までの昇温方法は特に限定されないが、パラジウム含有担持触媒におけるパラジウム原子の良好な分散状態を得るため、昇温速度は1〜10℃/分が好ましい。所定の加熱処理温度に達した後の保持時間はパラジウム塩が分解される時間であれば特に限定されないが、1〜12時間が好ましい。 また、本発明では、パラジウム塩を酸化パラジウムに変えるために、パラジウム塩の熱分解温度以上で熱処理することが好ましい。このようにすることで、パラジウム粒子の凝集および成長を抑制することができ、そのためパラジウム粒子の分散性が高まり、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸をより高選択率で製造することが可能となる。 本発明では、パラジウム塩として熱分解温度400℃以下のパラジウム塩を担体に担持することが好ましい。パラジウム塩の熱分解温度は300℃以下がより好ましく、200℃以下が特に好ましい。パラジウム塩の分解温度が低いほど発熱量が少ない。特に熱分解温度200℃以下のパラジウム塩を使用することで、熱処理時のパラジウム塩が担持された担体の層高が厚い場合でも発熱量を少なくしてパラジウム粒子の凝集および成長を抑制することができる。そのため、α,β−不飽和カルボン酸をより高選択率で製造することが可能となる。工業スケールでの触媒調製では、触媒量と焼成装置のスケール等の関係から、熱処理時のパラジウム塩が担持された担体の層高が厚くなることは通常は避けられないので、層高を厚くしても高選択率での製造が可能というのはスケールアップをする場合大きなメリットがある。 すなわち、熱分解温度400℃以下のパラジウム塩を担体上に担持し、そのパラジウム塩が担持された担体をパラジウム塩の熱分解温度以上の温度で熱処理することで、該担体上に担持されているパラジウム塩の少なくとも一部が酸化パラジウムとなった触媒前駆体を用いることが、特に好ましい実施形態として挙げられる。 使用するパラジウム塩としては、例えば、塩化パラジウム(II)(熱分解温度:650℃)、酢酸パラジウム(II)(熱分解温度:230℃)、硝酸パラジウム(II)(熱分解温度:120℃)、テトラアンミンパラジウム硝酸塩(II)(熱分解温度:220℃)、およびビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)(熱分解温度:210℃)等を挙げることができる。中でも酢酸パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム硝酸塩(II)、およびビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)が好ましい。パラジウム塩は1種を用いることも、2種以上を併用することもできる。 なお、パラジウム塩の熱分解温度は熱重量測定により測定できる。ここでは、熱重量測定装置(島津製作所社製、商品名:TGA−50)を用いてパラジウム塩を空気気流中で室温から5.0℃/分で昇温したとき10%重量が減少した温度をパラジウム塩の熱分解温度とした。 上記の熱処理により、担体上に担持されたパラジウム塩の少なくとも一部が分解して酸化パラジウムになった触媒前駆体が得られる。そして本発明では、上記の熱処理により得られた触媒前駆体に含まれる酸化パラジウムを還元する。具体的には、担体上に担持された酸化パラジウムを還元剤で還元することでパラジウム金属とする。触媒前駆体の担体上にパラジウム塩が存在する場合は、そのパラジウム塩も同時に還元されてパラジウム金属となる。 用いる還元剤は特に限定されないが、例えば、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、水素、蟻酸、蟻酸の塩、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1,3−ブタジエン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、アリルアルコール、メタリルアルコール、アクロレインおよびメタクロレイン等が挙げられる。還元剤は2種以上を併用することもできる。気相での還元では、還元剤として水素が好ましい。また、液相での反応では還元剤としてヒドラジン、ホルムアルデヒド、蟻酸、蟻酸の塩が好ましい。 液相中での還元の際に使用する溶媒としては、水が好ましいが、担体の分散性によっては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸、n−吉草酸、イソ吉草酸等の有機酸類;ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類等の有機溶媒を単独又は複数組み合わせて用いることができる。これらと水との混合溶媒を用いることもできる。 還元剤が気体の場合、溶液中への溶解度を挙げる為にオートクレーブ等の加圧装置中で行うことが好ましい。その際、加圧装置の内部は還元剤で加圧する。その圧力は0.1〜1.0MPa(ゲージ圧;以下圧力はゲージ圧表記とする)とすることが好ましい。 また、還元剤が液体の場合、酸化パラジウムの還元を行う装置に制限はなく、溶液中に還元剤を添加することで行うことができる。この時の還元剤の使用量は特に限定されないが、酸化パラジウム1モルに対して1〜100モルとすることが好ましい。 還元温度および還元時間は還元剤等により異なるが、還元温度は−5〜150℃が好ましく、15〜80℃がより好ましい。還元時間は0.1〜4時間が好ましく、0.25〜3時間がより好ましく、0.5〜2時間がさらに好ましい。 還元後、パラジウム金属が担体に担持されたパラジウム含有担持触媒を分離する。この触媒を分離する方法は特に限定されないが、例えば、ろ過、遠心分離等の方法を用いることができる。分離されたパラジウム含有担持触媒は適宜乾燥される。乾燥方法は特に限定されず、種々の方法を用いることができる。 なお、本発明のパラジウム含有担持触媒では、パラジウム以外の金属成分を含むものとすることができる。パラジウム以外の金属成分としては、例えば、ルテニウム、ロジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金、銅、アンチモン、テルル、鉛、ビスマス等が挙げられる。高い触媒活性を発現させる観点から、パラジウム含有担持触媒に含まれる金属のうち、50質量%以上がパラジウム金属であることが好ましい。これらの金属成分を含むパラジウム含有担持触媒は、対応する金属の塩や酸化物等の金属化合物を担体に担持し、必要に応じて前記の還元を行うことで得ることができる。その際の金属化合物の担持方法としては特に限定されないが、パラジウム塩を担持する方法と同様に行うことができる。また、金属化合物は、パラジウム塩を担持する前に担持することもでき、パラジウム塩を担持した担持後に担持することもでき、パラジウム塩と同時に担持することもできる。 担体に対するパラジウムを含む金属成分の担持率は、担持前の担体に対して0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%がさらに好ましい。 次に、本発明のパラジウム含有担持触媒を用いて、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素で液相中で酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する方法について説明する。 原料のオレフィンとしては、例えば、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン等が挙げられる。また、原料のα,β−不飽和アルデヒドとしては、例えば、アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド(β−メチルアクロレイン)、シンナムアルデヒド(β−フェニルアクロレイン)等が挙げられる。 製造されるα,β−不飽和カルボン酸は、原料がオレフィンの場合、オレフィンと同一炭素骨格を有するα,β−不飽和カルボン酸である。また、原料がα,β−不飽和アルデヒドの場合、α,β−不飽和アルデヒドのアルデヒド基がカルボキシル基に変化したα,β−不飽和カルボン酸である。 本発明の製造方法は、プロピレンまたはアクロレインからアクリル酸、イソブチレンまたはメタクロレインからメタクリル酸を製造する液相酸化に好適である。 原料のオレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドには、不純物として飽和炭化水素および/または低級飽和アルデヒド等が少々含まれていてもよい。 液相酸化反応に用いる分子状酸素源には、空気が経済的であるが、純酸素または純酸素と空気の混合ガスを用いることもでき、必要であれば、空気または純酸素を窒素、二酸化炭素、水蒸気等で希釈した混合ガスを用いることもできる。 液相酸化反応に用いる溶媒は特に限定されないが、例えば、水;ターシャリーブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、n−吉草酸、iso−吉草酸等の有機酸類;酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の有機酸エステル類;ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素類;を用いることができる。なかでも炭素数2〜6の有機酸類、炭素数3〜6のケトン類、ターシャリーブタノールが好ましい。溶媒は1種でも、2種以上の混合溶媒でもよい。また、アルコール類、ケトン類、有機酸類および有機酸エステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用する場合は、水との混合溶媒とすることが好ましい。その際の水の量は特に限定されないが、混合溶媒の質量に対して2〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。溶媒は均一であることが望ましいが、不均一な状態で用いても差し支えない。 液相酸化反応は連続式、バッチ式の何れの形式で行ってもよいが、生産性を考慮すると工業的には連続式が好ましい。 液相酸化反応の原料であるオレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドの使用量は、溶媒100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。 分子状酸素の使用量は、原料であるオレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒド1モルに対して、0.1〜30モルが好ましく、0.3〜25モルがより好ましく、0.5〜20モルが特に好ましい。 通常、前記触媒は液相酸化を行う反応液に懸濁させた状態で使用されるが、固定床で使用してもよい。前記触媒の使用量は、反応器内に存在する溶液100質量部に対して、反応器内に存在する触媒として0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部が特に好ましい。 反応温度および反応圧力は、用いる溶媒および反応原料によって適宜選択される。反応温度は30〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましい。反応圧力は大気圧(0MPa)〜10MPaが好ましく、2〜7MPaがより好ましい。 以下、本発明について実施例、比較例を挙げて更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。下記の実施例および比較例中の「部」は質量部である。 (原料および生成物の分析) 原料および生成物の分析はガスクロマトグラフィーを用いて行った。なお、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドの反応率、生成するα,β−不飽和アルデヒドの選択率、生成するα,β−不飽和カルボン酸の選択率は以下のように定義される。 オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドの反応率(%) =(B/A)×100 α,β−不飽和アルデヒドの選択率(%)=(C/B)×100 α,β−不飽和カルボン酸の選択率(%)=(D/B)×100 ここで、Aは供給したオレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドのモル数、Bは反応したオレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドのモル数、Cは生成したα,β−不飽和アルデヒドのモル数、Dは生成したα,β−不飽和カルボン酸のモル数である。ここで、α,β−不飽和アルデヒドの酸化反応の場合には、C/B=0である。 なお、以下の実施例及び比較例は、イソブチレンからメタクリル酸を製造する反応であり、この場合のAは供給したイソブチレンのモル数、Bは反応したイソブチレンのモル数、Cは生成したメタクロレインのモル数、Dは生成したメタクリル酸のモル数である。 [実施例1] (触媒調製) 酢酸パラジウム(II)(N.E.ケムキャット社製、熱分解温度:230℃)2.2部を酢酸20.0部に溶解した酢酸溶液を調製した。シリカ担体(比表面積450m2/g、細孔容積0.68cc/g)20.0部に上記酢酸溶液を少量ずつ添加し、振とうすることを繰り返した。全細孔容積分の酢酸溶液を添加したところで一旦エバポレーションを行った。残りの酢酸溶液についても同様に、少量ずつ添加し、振とうすることを繰り返し、エバポレーションを行うことで、酢酸パラジウム(II)が担持されたシリカ担体を得た。その後、酢酸パラジウム(II)が担持されたシリカ担体をステンレスバット(15cm×20cm)に薄く均一に広げ、熱処理として、空気中で室温から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で3時間保持した後、室温まで降温した。得られた触媒前駆体のXRD測定を行ったところ、酸化パラジウムが生成していることが確認された。 この触媒前駆体を37質量%ホルムアルデヒド水溶液50.0部に加えた。70℃に加熱し、2時間攪拌保持し、吸引ろ過後純水1000部でろ過洗浄した。さらに窒素流通下100℃で2時間乾燥して、パラジウム含有担持触媒21部(パラジウム金属の担持率:5.0質量%)を得た。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、酸化パラジウム由来のXRDピークが消失し、金属パラジウムが生成していることが確認された。 (反応評価) 上記の方法で得た触媒の半量を75質量%t−ブタノール水溶液でろ過洗浄した。得られた触媒と反応溶媒として75質量%t−ブタノール水溶液75部をオートクレーブに入れ、オートクレーブを密閉した。次いで、イソブチレンを2.0部導入し、攪拌(回転数1000rpm)を開始し、90℃まで昇温した。昇温完了後、オートクレーブに窒素を内圧2.4MPaまで導入した後、圧縮空気を内圧4.8MPaまで導入した。反応中に内圧が0.1MPa低下した時点(内圧4.7MPa)で、酸素を0.1MPa導入する操作を繰り返した。導入直後の圧力は4.8MPaである。反応開始後30分で反応を終了した。 反応終了後、氷浴でオートクレーブ内を氷冷した。オートクレーブのガス出口にガス捕集袋を取り付け、ガス出口を開栓して出てくるガスを回収しながら反応器内の圧力を開放した。オートクレーブから触媒入りの反応液を取り出し、メンブランフィルターで触媒を分離して、反応液を回収した。回収した反応液と捕集したガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、反応率及び選択率を算出した。 [実施例2] (触媒調製) 熱処理として、300℃まで2.5℃/分で昇温し、300℃で3時間保持した以外は実施例1と同様の方法で行った。なお、触媒前駆体のXRD測定を行ったところ酸化パラジウムが生成していることが確認された。また、得られたパラジウム含有担持触媒(パラジウム金属の担持率:5.0質量%)においては、酸化パラジウム由来のXRDピークが消失し、金属パラジウムが生成していることが確認された。 (反応評価) 実施例1と同様の方法で行った。 [実施例3] (触媒調製) 熱処理として、600℃まで2.5℃/分で昇温し、600℃で3時間保持した以外は実施例1と同様の方法で行った。なお、触媒前駆体のXRD測定を行ったところ酸化パラジウムが生成していることが確認され。また、得られたパラジウム含有担持触媒(パラジウム金属の担持率:5.0質量%)においては、酸化パラジウム由来のXRDピークが消失し、金属パラジウムが生成していることが確認された。 (反応評価) 実施例1と同様の方法で行った。 [実施例4] (触媒調製) シリカ担体(比表面積450m2/g、細孔容積0.68cc/g)20.0部を硝酸パラジウム(II)溶液(シグマアルドリッチ社製、10質量%硝酸水溶液中に10質量%の硝酸パラジウム(II)を含む溶液、硝酸パラジウム(II)の熱分解温度:120℃)22.0gに浸漬し、エバポレーションを行うことで、硝酸パラジウム(II)が担持されたシリカ担体を得た。その後、硝酸パラジウム(II)が担持されたシリカ担体をステンレスバット(15cm×20cm)に薄く均一に広げ、熱処理として、空気中で室温から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で3時間保持した後、室温まで降温した。得られた触媒前駆体のXRD測定を行ったところ、酸化パラジウムが生成していることが確認された。 この触媒前駆体を37質量%ホルムアルデヒド水溶液50.0部に加えた。70℃に加熱し、2時間攪拌保持し、吸引ろ過後純水1000部でろ過洗浄した。さらに窒素流通下100℃で2時間乾燥して、パラジウム含有担持触媒(パラジウム金属の担持率:5.0質量%)を得た。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、酸化パラジウム由来のXRDピークが消失し、金属パラジウムが生成していることが確認された。 (反応評価) 実施例1と同様の方法で行った。 [実施例5] (触媒調製) テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩(N.E.ケムキャット社製、熱分解温度:220℃)2.8部を純水13.6部に溶解した水溶液を調製した。シリカ担体(比表面積450m2/g、細孔容積0.68cc/g)20.0部に上記水溶液を少量ずつ添加し、振とうすることを繰り返し、その後エバポレーションを行うことで、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩が担持されたシリカ担体を得た。その後、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩が担持されたシリカ担体をステンレスバット(15cm×20cm)に薄く均一に広げ、熱処理として、空気中で室温から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で3時間保持した後、室温まで降温した。得られた触媒前駆体のXRD測定を行ったところ、酸化パラジウムが生成していることが確認された。 この触媒前駆体を37質量%ホルムアルデヒド水溶液50.0部に加えた。70℃に加熱し、2時間攪拌保持し、吸引ろ過後純水1000部でろ過洗浄した。さらに窒素流通下100℃で2時間乾燥して、パラジウム含有担持触媒(パラジウム金属の担持率:5.0質量%)を得た。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、酸化パラジウム由来のXRDピークが消失し、金属パラジウムが生成していることが確認された。 (反応評価) 実施例1と同様の方法で行った。 [実施例6] (触媒調製) ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)(アルドリッチ社製、熱分解温度:210℃)2.8部をベンゼン140部に溶解した溶液を調製した。シリカ担体(比表面積450m2/g、細孔容積0.68cc/g)20.0部を前記ベンゼン溶液に浸漬し、エバポレーションを行うことで、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)が担持されたシリカ担体を得た。その後、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)が担持されたシリカ担体をステンレスバット(15cm×20cm)に薄く均一に広げ、熱処理として、空気中で室温から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で3時間保持した後、室温まで降温した。得られた触媒前駆体のXRD測定を行ったところ、酸化パラジウムが生成していることが確認された。 この触媒前駆体を37質量%ホルムアルデヒド水溶液50.0部に加えた。70℃に加熱し、2時間攪拌保持し、吸引ろ過後純水1000部でろ過洗浄した。さらに窒素流通下100℃で2時間乾燥して、パラジウム含有担持触媒(パラジウム金属の担持率:5.0質量%)を得た。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、酸化パラジウム由来のXRDピークが消失し、金属パラジウムが生成していることが確認された。 (反応評価) 実施例1と同様の方法で行った。 [実施例7] (触媒調製) 塩化パラジウム(II)(N.E.ケムキャット製、熱分解温度:650℃)1.66部を1N塩酸13.6部に溶解した溶液を調製した。シリカ担体(比表面積450m2/g、細孔容積0.68cc/g)20.0部に上記溶液を少量ずつ添加し、振とうすることを繰り返し、その後エバポレーションを行うことで、塩化パラジウム(II)が担持されたシリカ担体を得た。その後、塩化パラジウム(II)が担持されたシリカ担体をステンレスバット(15cm×20cm)に薄く均一に広げ、熱処理として、空気中で室温から700℃まで2.5℃/分で昇温し、700℃で3時間保持した後、室温まで降温した。得られた触媒前駆体のXRD測定を行ったところ、酸化パラジウムが生成していることが確認された。 この触媒前駆体を37質量%ホルムアルデヒド水溶液50.0部に加えた。70℃に加熱し、2時間攪拌保持し、吸引ろ過後純水1000部でろ過洗浄した。さらに窒素流通下100℃で2時間乾燥して、パラジウム含有担持触媒(パラジウム金属の担持率:5.0質量%)を得た。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、酸化パラジウム由来のXRDピークが消失し、金属パラジウムが生成していることが確認された。 (反応評価) 実施例1と同様の方法で行った。 [実施例8] (触媒調製) 酢酸パラジウム(II)が担持されたシリカ担体をトールビーカーに入れて熱処理を行った(熱処理時のシリカ担体の層高:約5.0cm)以外は実施例1と同様の方法で行った。 (反応評価) 実施例1と同様の方法で行った。 [実施例9] (触媒調製) 硝酸パラジウム(II)が担持されたシリカ担体をトールビーカーに入れて熱処理を行った(熱処理時のシリカ担体の層高:約5.0cm)以外は実施例4と同様の方法で行った。 (反応評価) 実施例1と同様の方法で行った。 [比較例1] (触媒調製) 熱処理として、400℃まで2.5℃/分で昇温し、400℃で3時間保持した以外は実施例7と同様の方法で行った。なお、触媒前駆体のXRD測定を行ったところ酸化パラジウムが生成していなかった。また、得られたパラジウム含有担持触媒(パラジウム金属の担持率:5.0質量%)においては、金属パラジウムが生成していることが確認された。 (反応評価) 実施例1と同様の方法で行った。 [比較例2] (触媒調製) 熱処理として、100℃まで2.5℃/分で昇温し、100℃で3時間保持した以外は実施例1と同様の方法で行った。なお、熱処理で得られた固体のXRD測定を行ったところ酸化パラジウムが生成していなかった。また、得られたパラジウム含有担持触媒(パラジウム金属の担持率:5.0質量%)においては、金属パラジウムが生成していることが確認された。 (反応評価) 実施例1と同様の方法で行った。 [比較例3] (触媒調製) 酢酸パラジウム2.2部を85質量%酢酸水溶液120部に80℃で加熱溶解後、シリカ担体(比表面積450m2/g、細孔容積0.68cc/g)20.0部とともにオートクレーブに入れ密閉した。毎分500回転にて攪拌を開始し、窒素ガスを0.8MPaまで導入することを3回繰り返し、系内を窒素置換した。その後、プロピレンを常圧から0.6MPaまで導入し70℃まで昇温後1時間保持した。 室温まで冷却した後、系内の圧力を抜き、オートクレーブを開放した。吸引ろ過後純水1000部でろ過洗浄した。さらに窒素流通下100℃で2時間乾燥して、パラジウム含有担持触媒(パラジウム金属の担持率:5.0質量%)を得た。得られた触媒のXRD測定を行ったところ、金属パラジウムが生成していることが確認された。 (反応評価) 実施例1と同様の方法で行った。 以上のように、本発明の方法によれば、より高い選択率でα,β−不飽和カルボン酸を製造できることが分かった。 オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有担持触媒の製造方法であって、パラジウム塩を担体上に担持する工程と、前記パラジウム塩が担持された担体を熱処理温度に達するまで1〜10℃/分で昇温して熱処理することで、該担体上に担持されているパラジウム塩の少なくとも一部が酸化パラジウムとなった触媒前駆体とする工程と、担体上に担持された状態で触媒前駆体に含まれる酸化パラジウムを還元する工程を有するパラジウム含有担持触媒の製造方法。 前記熱処理を、前記パラジウム塩の熱分解温度以上の温度で行うことを特徴とする請求項1に記載のパラジウム含有担持触媒の製造方法。 請求項1または2に記載の方法で製造されたパラジウム含有担持触媒。 請求項3に記載のパラジウム含有担持触媒を用いて、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により液相酸化するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法。