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タイトル:公開特許公報(A)_ポルフィリン系化合物および2光子吸収材料
出願番号:2005286211
年次:2007
IPC分類:C07D 487/22,G02F 1/361,C07F 3/06


特許情報キャッシュ

大須賀 篤弘 JP 2007091684 公開特許公報(A) 20070412 2005286211 20050930 ポルフィリン系化合物および2光子吸収材料 国立大学法人京都大学 504132272 日本電信電話株式会社 000004226 パイオニア株式会社 000005016 株式会社日立製作所 000005108 三菱化学株式会社 000005968 ローム株式会社 000116024 重野 剛 100086911 大須賀 篤弘 C07D 487/22 20060101AFI20070316BHJP G02F 1/361 20060101ALI20070316BHJP C07F 3/06 20060101ALI20070316BHJP JPC07D487/22G02F1/361C07F3/06 5 OL 23 2K002 4C050 4H048 2K002AA05 2K002AB12 2K002AB29 2K002BA01 2K002CA05 2K002GA07 2K002HA14 4C050PA06 4H048AA01 4H048AA03 4H048AB91 4H048VA66 本発明は、2光子吸収材料に用いられるポルフィリン系色素として有用な新規ポルフィリン系化合物と、このポルフィリン系化合物を含む2光子吸収材料に関する。 近年、有機化合物の有する非線形光学特性の中でも、特に多光子吸収現象が注目されている。多光子吸収とは化合物が数個の光子を吸収して基底状態から励起状態へ遷移する現象である。特に2光子吸収現象においては、1光子励起波長の2倍程度の波長の光を用いて、2個の光子を1つの分子に当てることにより励起させることができる。1個の分子に同時に2個の光子が当たる確率は、光子密度の2乗に比例し、試料上でレーザー光が焦点を結ぶとき焦点面から離れるにつれ、光子密度は距離の2乗に比例して減少する。従って、2光子吸収の起こる確率は焦点面から離れるに伴い距離の4乗に比例して減少していく。この現象を利用して、光メモリ、2光子造形、2光子フォトダイナミックセラピー等の分野で2光子吸収の応用が期待されている。また、2光子吸収した励起状態から輻射失活過程において発光する2光子発光は、入射した光の波長より短波長の光(=エネルギーの高い光)を取り出せるため、光変換材料、光増感剤としても研究がなされている。 2光子吸収特性を有する化合物として、従来、下記の構造式(A−1)で表される化合物や、非特許文献1に記載されたポルフィリン類誘導体等が知られている。 ところで、2光子吸収特性の指標として2光子吸収断面積があり、この値が高いほど一般的に2光子吸収特性は良好であると言える。一般的に、二光子吸収断面積の大きい化合物として現在期待されているものの1つがポルフィリン系化合物である。該化合物が2光子吸収材料として期待されている理由としては、18π電子系という大きな芳香環を有していることが挙げられる。 しかしながら、例えば特許文献1に記載のポルフィリン誘導体を用いた2光子吸収材料については、2,000GM程度の2光子吸収断面積しか有さず、この値は光メモリなどへの応用には不十分である。また、ポルフィリンを平面的に多量化することで二光子吸収断面積を増大させるアプローチもあり、現在非特許文献1等が公知であるが、これらの化合物は多量化による分子量増大および平面性増大の理由から、溶媒への溶解性が悪く、利用しづらいことが容易に予想される。また、平面的多量化はπ共役系を飛躍的に増大させるため、幅広い波長領域に吸収を有するようになり、1光子吸収効果を無視できなくなる。例えば、下記構造のポルフィリン二量体化合物(A−2)は紫外から近赤外まで幅広い吸収を有するため、10,000GM以上の高い2光子吸収断面積を有するものの、2光子吸収材料としては利用しがたい。 以上の理由から、大きな二光子吸収断面積を有し、かつ近赤外の長波長領域に吸収を有さないポルフィリン化合物を用いた2光子吸収材料の開発が望まれてきた。特開2001−354674号公報J.Am.Chem.Soc.,2003年(125巻),13356頁 本発明は上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高い2光子吸収断面積を有し、かつ近赤外領域に吸収を有さないポルフィリン化合物を用いた2光子吸収材料を提供することを目的とする。 本発明者らは鋭意検討した結果、2つのポルフィリン環が最低2本の共役鎖によって互いに結合した2量体を構造中に含む化合物、好ましくは下記一般式(1)で表される化合物が、近赤外領域に吸収を有さず、優れた2光子吸収特性を示すことを見出し、本発明を完成させた。 即ち、本発明は以下を要旨とする。[1] 2つのポルフィリン環が最低2本の共役鎖によって互いに結合した2量体を構造中に含むポルフィリン系化合物。 [2] [1]において、下記一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物。(式(1)中、P1およびP2はそれぞれ独立に置換基を有していても良いポルフィリン環を表し、L1およびL2はそれぞれ独立に炭素数0〜20の共役鎖状連結基を表す。)[3] [2]において、下記一般式(2)で表されるポルフィリン系化合物。(式(2)中、R1〜R20はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していても良い芳香環置換基、または炭素数0〜20の非芳香環置換基を表し、L3およびL4はそれぞれ独立に炭素数0〜20の共役鎖状連結基を表し、M1およびM2はそれぞれ独立に2個の水素原子もしくは2価以上の金属イオンを表す。なお、M1および/またはM2が3価以上の金属イオンである場合、さらに炭素数0〜20のカウンターアニオンを有していても良い。)[4] [3]において、下記一般式(3)で表されるポルフィリン系化合物。(式(3)中、R21〜R40はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していても良い芳香環置換基、または炭素数0〜20の非芳香環置換基を表し、M3およびM4はそれぞれ独立に2個の水素原子もしくは2価以上の金属イオンを表し、pおよびqはそれぞれ独立に1〜10の整数を表す。なお、M3および/またはM4が3価以上の金属イオンである場合、さらに炭素数0〜20のカウンターアニオンを有していても良い。)[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のポルフィリン系化合物を含むことを特徴とする2光子吸収材料。 2つのポルフィリン環が最低2本の共役鎖によって互いに結合した2量体を構造中に含む本発明のポルフィリン系化合物は、高い2光子吸収断面積を示し、波長800nm付近以上の近赤外領域に吸収を有さないことから、該化合物を用いることにより高性能な2光子吸収材料を提供できることが期待される。 本発明のポルフィリン系化合物が高い2光子吸収断面積を有する理由の1つとしては、ポルフィリン環同士がπ共役したこと、さらに、2つのポルフィリン環が共平面の関係に固定されたためであると推定される。 以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。[ポルフィリン系化合物] 本発明のポルフィリン系化合物は、2つのポルフィリン環が最低2本の共役鎖によって互いに結合した2量体を構造中に含むものであり、好ましくは下記一般式(1)、より好ましくは下記一般式(2)、特に好ましくは下記一般式(3)で表される、ポルフィリン2量体を構造中に含むものである。(式(1)中、P1およびP2はそれぞれ独立に置換基を有していても良いポルフィリン環を表し、L1およびL2はそれぞれ独立に炭素数0〜20の共役鎖状連結基を表す。)(式(2)中、R1〜R20はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していても良い芳香環置換基、または炭素数0〜20の非芳香環置換基を表し、L3およびL4はそれぞれ独立に炭素数0〜20の共役鎖状連結基を表し、M1およびM2はそれぞれ独立に2個の水素原子もしくは2価以上の金属イオンを表す。なお、M1および/またはM2が3価以上の金属イオンである場合、さらに炭素数0〜20のカウンターアニオンを有していても良い。)(式(3)中、R21〜R40はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していても良い芳香環置換基、または炭素数0〜20の非芳香環置換基を表し、M3およびM4はそれぞれ独立に2個の水素原子もしくは2価以上の金属イオンを表し、pおよびqはそれぞれ独立に1〜10の整数を表す。なお、M3および/またはM4が3価以上の金属イオンである場合、さらに炭素数0〜20のカウンターアニオンを有していても良い。) 以下に、一般式(1)〜(3)で表される本発明のポルフィリン系化合物について説明する。{語句の説明} 本発明において「芳香環」とは、芳香族性を有する環、すなわち(4r+2)π電子系(rは自然数)を有する環を意味し、従って、「芳香族炭化水素環」と「芳香族複素環」とを含む。また、「炭化水素環」とは「芳香族炭化水素環」と「非芳香族炭化水素環」の両方を意味し、「複素環」とは、「芳香族複素環」と「非芳香族複素環」の両方を意味する。芳香環の骨格構造は、通常、5または6員環の、単環または2〜6縮合環からなり、該芳香環には、芳香族炭化水素環、芳香族複素環の他、アントラセン環、カルバゾール環、アズレン環のような縮合環も含まれる。「芳香環置換基」等の「………環置換基」とは、このような芳香環等の環から水素原子を1個取った1価の置換基である。また、「非芳香環置換基」とは、芳香環置換基以外の置換基をさす。 また、「(ヘテロ)アリール」とは「アリール」と「ヘテロアリール」の両方を意味し、「(ヘテロ)アラルキル」とは「アラルキル」と「ヘテロアラルキル」の両方を意味する。 また、本発明において「置換基を有していても良い」とは、置換基を1以上有していても良いことを意味する。{ポルフィリン環:P1,P2}〈ポルフィリン環:P1,P2の構造〉 一般式(1)において、P1,P2は、置換基(L1,L2以外の置換基)を有していても良いポルフィリン環を表す。 この場合の置換基とは、特に制限はないが、一般式(2),(3)においてはそれぞれR1〜R20,R21〜R40で表され、炭素数20以下の芳香環置換基、炭素数0〜20の非芳香環置換基のいずれかが挙げられる。なお、この置換基が芳香環置換基の場合は、その芳香環上の水素原子がさらに炭素数20以下の任意の置換基で置換されていても良い。 これらの置換基の具体例を、以下に示す。〈ポルフィリン環:P1,P2に導入される芳香環置換基〉(芳香環置換基の骨格構造) 芳香環置換基の骨格構造の具体例としては、5員環単環としてフラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、6員環単環としてベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、縮合環としてナフタレン環、フェナンスレン環、アズレン環置換基、ピレン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾフラン環、カルバゾール環、ジベンゾチオフェン環、アントラセン環等が挙げられる。これらのうち、合成上の理由から単環が好ましく、さらに好ましくは6員環の単環であり、特に好ましくはベンゼン環である。(芳香環置換基が有していても良い置換基) 芳香環置換基は該芳香環上の水素原子がさらに任意の置換基で置換されていても良い。 芳香環置換基が有する置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素環基、複素環基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、(ヘテロ)アリールオキシ基、(ヘテロ)アラルキルオキシ基、更に置換基を有していても良いアミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数3〜20の炭化水素環基、5または6員環の単環または2〜6縮合環由来の複素環基、炭素数1〜9のアルコキシ基、炭素数2〜18のアルキルカルボニル基、炭素数2〜18の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数3〜18の(ヘテロ)アラルキルオキシ基、アミノ基、炭素数2〜20のアルキルアミノ基、炭素数2〜20の(ヘテロ)アリールアミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数2〜6のエステル基、ハロゲン原子、水酸基などである。 炭素数1〜20のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ヘキサドデシル基などが挙げられる。 炭素数2〜20のアルケニル基の例としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ヘキサドデセニル基などが挙げられる。 炭素数2〜20のアルキニル基の例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2−メチル−1−プロピニル基、ヘキシニル基、オクチニル、ヘキサドデシニル基などが挙げられる。 炭素数3〜20の炭化水素環基の例としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、テトラデカヒドロアントラニル基、フェニル基、アントラニル基、フェナンスリル基、フェロセニル基などが挙げられる。 5または6員環の単環または2〜6縮合環由来の複素環基の例としては、ピリジル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、カルバゾリル基、キノリニル基、2−ピペリジニル基、2−ピペラジニル基、オクタヒドロキノリニル基などが挙げられる。 炭素数1〜9のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。 炭素数2〜18のアルキルカルボニル基の例としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、tert−ブチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、ヘキサドデシルカルボニル基などが挙げられる。 炭素数2〜18の(ヘテロ)アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ピレニルオキシ基等のアリールオキシ基や、2−チエニルオキシ基、2−フリルオキシ基、2−キノリルオキシ基等のヘテロアリールオキシ基などが挙げられる。 炭素数3〜18の(ヘテロ)アラルキルオキシ基の例としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメトキシ基、ピレニルメトキシ基等のアラルキルオキシ基や、2−チエニルメトキシ基、2−フリルメトキシ基、2−キノリルメトキシ基等のヘテロアラルキルオキシ基などが挙げられる。 炭素数2〜20のアルキルアミノ基の例としては、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペリジル基、ヘキサドデシルアミノ基などが挙げられる。 炭素数2〜20の(ヘテロ)アリールアミノ基の例としては、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ピレニルアミノ基等のアリールアミノ基や、ジ(2−チエニル)アミノ基、ジ(2−フリル)アミノ基、フェニル(2−チエニル)アミノ基等のヘテロアリールアミノ基などが挙げられる。 炭素数2〜6のエステル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基などが挙げられる。 ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子などが挙げられる。 芳香環置換基上の水素原子がさらに置換基で置換されている場合、該置換基同士が結合して環状構造をなしても良い。例えば、芳香環置換基がベンゼン環由来の基である場合、該ベンゼン環が有する置換基同士が結合して環状構造を形成している例として以下に示す構造が挙げられる。なお、以下において、aの部分がポルフィリン環への結合位置である。 なお、該芳香環置換基上の水素原子がさらに置換基で置換されていることが、本発明のポルフィリン系化合物の溶媒への溶解性向上の面で好ましい。〈ポルフィリン環:P1,P2に導入される非芳香環置換基〉 ポルフィリン環が有していても良い置換基が炭素数0〜20の非芳香環置換基である場合、その具体例としては、上述した芳香環置換基が有していても良い置換基のうち、非芳香環置換基であるものが相当する。 なお、本発明のポルフィリン系化合物の安定性の面から、一般式(2)において、R1、R2、R12、R18は置換基を有していても良い芳香環置換基であることが好ましく、R10およびR15は水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環置換基であることが好ましく、それら以外は水素原子もしくは炭素数0〜20の非芳香環置換基であることが好ましく、特に水素原子が好ましい。{共役鎖状連結基:L1,L2,L3,L4}〈共役鎖状連結基の構造〉 一般式(1),(2)において、L1,L2,L3,L4はそれぞれ独立に炭素数0〜20の共役鎖状連結基を表す。ここで、共役鎖状連結基とは、二重結合もしくは三重結合によりポルフィリン環同士の共役がつながるよう結合させる直鎖状連結基を表す。その具体例としては、以下に示すビニレン基、エチニレン基、アゾ基、イミノ基およびこれらのオリゴマー、或いはこれらの2種以上の組み合わせなどが挙げられる(以下において、kは1以上の整数である。)。なお、L1,L2,L3,L4はそれぞれ独立に直線状の共役鎖、特にエチニレン基又はオリゴエチニレン基であること、即ち、本発明のポルフィリン系化合物は前記一般式(3)で表されることが2光子吸収特性向上の面で好ましい。 ここで「オリゴ…………基」とは、以下において、kが10以下、例えば2〜10、特に2〜4であるものをさす。〈L1,L2のポルフィリン環P1,P2への置換位置〉 L1,L2は、それぞれポルフィリン環P1,P2中のいずれの炭素原子に結合していても良いが、本発明のポルフィリン系化合物の安定性の面からポルフィリン環のβ位に結合していること、即ち、本発明のポルフィリン系化合物は一般式(2)で表されることが好ましい。{M1,M2} 一般式(2)において、M1,M2はそれぞれ独立に水素原子もしくは2価以上の金属イオンを表す。金属イオンの金属元素はポルフィリン環内部に配位し得るものであれば何でもよく、例えばMg,Al,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Pt,Au,Er等が挙げられる。 これらのうち、経済面よりCo、Ni、Cu、Znであることが特に好ましい。 M1,M2が3価以上の金属イオンである場合、更に炭素数0〜20のカウンターアニオンを有していても良い。該カウンターアニオンの具体例としては、水、アルコール、フェノール、カルボン酸、ホスホン酸、ハロゲン、過塩素酸、過沃素酸、シアン酸、イソシアン酸、イソチオシアン酸、アジド、硝酸、炭酸、炭酸水素酸、置換または無置換の硫酸(硫酸、硫酸水素酸、メチル硫酸など)、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トシル酸、置換または無置換のリン酸(リン酸、リン酸水素酸、リン酸二水素酸、フェニルリン酸など)、六フッ化リン、六フッ化アンチモン、置換または無置換のホスフィン酸(ホスフィン酸、メチルホスフィン酸など)、置換または無置換のボロン酸(テトラフェニルボロン酸など)、ベンゼンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等をそれぞれアニオン化したもの等が挙げられる。 これらのうち、合成上の観点からヒドロキシルアニオン、ハロゲンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン、六フッ化リンアニオンなどが好ましい。{好適例} 本発明のポルフィリン系化合物は、特に好ましくは、下記一般式(3)で表される。(式(3)中、R21〜R40はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していても良い芳香環置換基、または炭素数0〜20の非芳香環置換基を表し、M3およびM4はそれぞれ独立に2個の水素原子もしくは2価以上の金属イオンを表し、pおよびqはそれぞれ独立に1〜10の整数を表す。なお、M3および/またはM4が3価以上の金属イオンである場合、さらに炭素数0〜20のカウンターアニオンを有していても良い。)〈R21〜R40〉 R21〜R40は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していても良い芳香環置換基、または炭素数0〜20の非芳香環置換基を表す。その具体例としては上述のポルフィリン環:P1,P2が有していても良い置換基として挙げられた置換基が相当する。 なお、本発明のポルフィリン系化合物の安定性の面から、R21、R22、R32、R38は置換基を有していても良い芳香環置換基であることが好ましく、R30およびR35は水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環置換基であることが好ましく、それら以外は水素原子もしくは炭素数0〜20の非芳香環置換基であることが好ましく、特に水素原子が好ましい。〈p、q〉 pおよびqはそれぞれ1〜10の整数を表す。このうち、p,qは数字が小さい方が本発明のポルフィリン系化合物の安定性および吸収波長の過度の長波長化を防止できる面で好ましいが、数字が大きいことが2光子吸収特性向上の面で好ましく、特に1〜4であることが好ましい。なお、pとqは同一であることが本発明のポルフィリン系化合物の合成面で好ましい。〈M3,M4〉 一般式(3)において、M3,M4はそれぞれ独立に水素原子もしくは2価以上の金属イオンを表し、その具体例としては、一般式(2)におけるM1,M2として例示したものが挙げられる。{ポルフィリン系化合物の分子量} 本発明のポルフィリン系化合物は、分子量増大にともなう2光子吸収特性低下防止の面から、その分子量は通常2,000以下、中でも1,500以下であることが好ましい。 なお、本発明のポルフィリン系化合物は、通常水不溶性であることが好ましい。{具体例} 本発明のポルフィリン系化合物の骨格構造の具体例を以下に例示するが、本発明のポルフィリン系化合物は、本発明の要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。なお、以下においてAcはアセチル基を示し、以下の例示化合物は、以下に示される以外の置換基を更に有していても良い。 さらに、本発明のポルフィリン系化合物の具体例としては、その骨格構造の特に好ましい例として挙げられた、前記一般式(3)において、各置換基や連結基、置換基数が下記表1に示すようなものであるものが挙げられる。{合成法} 本発明のポルフィリン系化合物は、例えば以下の「ブタジイン架橋ポルフィリンダイマー」の一般的な合成法で合成可能である。 即ち、まず、ポルフィリンをイリジウム触媒存在下ジボラン化合物で処理し、2,18−ジホウ素化ポルフィリンを合成する。次に、ホウ素置換基を過硫酸カリウム(登録商標:オキソン)で酸化し、水酸基へと変換し、さらにトリフラート化する。この化合物にパラジウム触媒を用いてアセチレン置換基を導入する。最後にアセチレン化合物を塩化銅を用いて酸化カップリングさせてブタジイン架橋ポルフィリンダイマーが得られる。{2光子吸収特性} 本発明のポルフィリン系化合物のうち好ましいものは、2光子吸収特性に優れる。ここで、2光子吸収特性に優れるとは、該ポルフィリン系化合物の2光子吸収断面積が通常5,000GM以上、好ましくは7,000GM以上、特に好ましくは10,000GM以上であることである。{光吸収特性} 本発明のポルフィリン系化合物のうち好ましいものは、波長800nm付近以降、好ましくは700nm付近以降の近赤外領域に吸収を有さない。ここで吸収を有さないとはモル吸光係数(ε)100以上の吸収を有さないか、あるいは該波長領域の吸収強度が吸収極大における吸収強度の0.1%以下であることを言う。{用途} 本発明の新規ポルフィリン系化合物は、後述の2光子吸収材料の他にも、電子輸送材料、光または磁気記録材料、電池材料、表示部材材料、医療材料などの様々な用途に応用可能である。[2光子吸収材料] 本発明の2光子吸収材料は、上述のような本発明のポルフィリン系化合物を含むものである。 なお、本発明の2光子吸収材料中には、本発明のポルフィリン系化合物の1種が単独で含まれていても良いし、2種以上が混合して含まれていても良い。 本発明の2光子吸収材料は、本発明のポルフィリン系化合物の1種もしくは該ポルフィリン系化合物を2種以上の混合物の粉末状結晶をそのままの状態で、ブロックや粉末として;或いは、ヘキサン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルム、エーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、2−ブタノン、メタノール、エタノール、トリフルオロメチルベンゼン、酢酸、トリエチルアミン等の溶媒、ポリマー、ゲル中に溶解または分散させた液状物として;或いは、このような液状物を基板に塗布した後溶媒を除去して得られる薄膜状物として;各種用途に供することができる。 例えば本発明のポルフィリン系化合物を含む2光子吸収材料を用いて、光学記録媒体を作製することができる。 なお、2光子吸収材料が、本発明の新規ポルフィリン系化合物を含んでいることは、該材料を分解、抽出等の処理を施した後、例えば、液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS)や核磁気共鳴スペクトル法(NMR)などで分析することにより確認することができる。 以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。[本発明のポルフィリン系化合物の合成例] 実施例1:前記例示化合物(C−1)の合成(「ブタジイン架橋ポルフィリンダイマー」の詳細な合成法) 文献既知の方法で得られる5,10,15−トリス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ポルフィリンを1,4−ジオキサン溶媒中、[Ir(OMe)cod]、4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジル、およびビスピナコラートジボロンを加え、加熱還流下、72時間撹拌した。得られた2,18−ジホウ素化ポルフィリンを、テトラヒドロフラン/アセトン/水混合溶媒中、過硫酸カリウム(登録商標:オキソン)にて処理した。得られた2,18−ジヒドロキシポルフィリンを、炭酸セシウム存在下、フェニルビストリフリルイミドまたは無水トリフルオロメタンスルホン酸で処理してジトリフラートへと変換した。次に、得られた化合物にクロロホルム中酢酸亜鉛を加え、亜鉛化ポルフィリンとした後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムおよびヨウ化銅触媒存在下、トリエチルアミン/N,N−ジメチルホルムアミド/テトラヒドロフラン混合溶媒中にてトリメチルシリルアセチレンとカップリングさせた。得られた2,18−ビス(トリメチルシリルエチニル)ポルフィリンにテトラヒドロフラン/メタノール混合溶媒中、炭酸カリウムを作用させトリメチルシリル基を除去した。こうして得られた2,18−ジエチニルポルフィリンをピリジン/トルエン混合溶媒中、塩化銅で処理すると、上記構造式で表される化合物(C−1)が得られた。 図1に、化合物(C−1)のクロロホルム中での紫外可視吸収スペクトルを示す。図1より明らかなように700nm以降の吸収強度はゼロであった。[二光子吸収断面積の評価] ポルフィリン系化合物(C−1)をトルエンに溶解させ、0.080mMの溶液とした。 該溶液の二光子吸収断面積を、下記に示す方法にて測定した。 二光子吸収断面積の評価はGuang S. He, Lixiang Yuan, Ning Cheng, Jayant D. Bhawalkar, Paras N. Prasad, Lawrence L. Brott, Stephen J. Clarson, Bruce A. Reinhardt, J. Opt.Soc. Am. B Vol.14, No.5(1997)pp.1079-1087記載の方法を参考にして行った。測定システム概略図を図1に示す。 なお、図1中、1は測定光源のチタンサファイアレーザであり、カントロニクス(Quantronix)社製:インテグラ(Integra)を用いた。また、2A,2Bは、フォトディテクタであり、ニューフォーカス(NewFocus)社製:円筒型ディテクターMODEL 818-SLを用いた。3A,3Bは増幅器であり、スタンフォードリサーチシステム(STANFORD RESEARCH SYSTEMS)社製:ローノイズカレントプリアンプリファイア(LOW-NOISE CURRENT PREAMPLIFIER)MODEL SR570とゲーティッドインテグレータ&ボックスカーアベレージャ(GATED INTEGRATOR & BOXCAR AVERAGER)MODEL SR250を用いた。また、4はビームスプリッタであり、5は石英製の試料セルである。6はパーソナルコンピューター(PC)である。 測定光源1には、フェムト秒チタンサファイアレーザ(波長:800nm、パルス幅:120fs、繰り返し:1kHz、平均出力:2W、強度:2mJ/pulse、ビーム径:10mmφ、ピークパワー:20GW)を用いた。レーザ出力の一部(以下、参照光とする)をビームスプリッタ4により分岐し、NDフィルタ7Aを通してフォトディテクタ2Aで強度を測定することにより入射光強度の揺らぎを補正した。レーザ出力の残りは、NDフィルタ7Bにより10mW程度に減衰させた後、集光レンズ8により集光した。この集光されている光路部分に試料溶液を充填した試料セル(光路長:10mm)5を置き、その位置を光路に沿って移動させることによりZ−scan測定を実施した。これにより励起光密度を1GW/cm2〜40GW/cm2の範囲で変化させた。試料セル5には光路長10mmの石英セルを用いた。 試料セル5を透過したレーザ光(以下、透過光とする)はNDフィルタ7Cにより適当に減衰させ、HOYA株式会社製R72などの色ガラスフィルタ7Dを通過させた後、フォトディテクタ2Bにより強度を測定した。複数の励起光密度に対してこの測定を実施し、透過光強度を参照光強度で除することにより規格化溶液透過光強度を求めた。9はシャッターである。 同様の測定装置で試料セルに溶媒のみを充填させ同じ測定を行い、規格化溶媒透過光強度を求めた。さらに、規格化溶液透過光強度を規格化溶媒透過光強度で除することにより透過率を求めた。 上記のような手順で透過率の励起光密度依存性を測定し、この結果を上記文献に記載されている理論式(i)によりフィッティングし非線形吸収係数を求めた。 Ti=[ln(1+I0L0β)]/I0L0β (i)((i)式中、Tiは透過率(%)、I0は励起光密度[GW/cm2]、L0は試料セル長[cm]、βは非線形吸収係数[cm/GW]を示す。) この非線形吸収係数から、下記式(ii)により二光子吸収断面積δを求めた(δの単位は1GM=1×10−50cm4・s・photon−1である。)。 δ=1000×hνβ/NAC (ii)((ii)式中、hはプランク定数[J・s]、νは入射レーザ光の振動数[s−1]、NAはアボガドロ数、Cは溶液濃度[mol/L]を示す。) 上記のシステムでは、下記構造式で表される化合物(AF−50)の数値は45GMから55GMの値で得られる。2光子吸収断面積を規格化するために、すべての2光子吸収断面積の値は、サンプルを測定した後にAF−50についての測定を行い、そのAF−50の2光子吸収断面積を50GMとして算出した。 以上の条件で測定した2光子吸収断面積の評価結果を表2に示す。表2より、本発明のポルフィリン系化合物が良好な2光子吸収特性を示すことが明らかである。例示化合物(C−1)のクロロホルム中での紫外可視吸収スペクトルを表す図である。実施例において、2光子吸収断面積の測定に用いた装置の測定システム概略図である。符号の説明 1 測定光源 2A,2B フォトディテクタ 3A,3B 増幅器 4 ビームスプリッタ 5 試料セル 6 パーソナルコンピューター 7A,7B,7C NDフィルタ 8 集光レンズ 9 シャッター 2つのポルフィリン環が最低2本の共役鎖によって互いに結合した2量体を構造中に含むポルフィリン系化合物。 請求項1において、下記一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物。(式(1)中、P1およびP2はそれぞれ独立に置換基を有していても良いポルフィリン環を表し、L1およびL2はそれぞれ独立に炭素数0〜20の共役鎖状連結基を表す。) 請求項2において、下記一般式(2)で表されるポルフィリン系化合物。(式(2)中、R1〜R20はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していても良い芳香環置換基、または炭素数0〜20の非芳香環置換基を表し、L3およびL4はそれぞれ独立に炭素数0〜20の共役鎖状連結基を表し、M1およびM2はそれぞれ独立に2個の水素原子もしくは2価以上の金属イオンを表す。なお、M1および/またはM2が3価以上の金属イオンである場合、さらに炭素数0〜20のカウンターアニオンを有していても良い。) 請求項3において、下記一般式(3)で表されるポルフィリン系化合物。(式(3)中、R21〜R40はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していても良い芳香環置換基、または炭素数0〜20の非芳香環置換基を表し、M3およびM4はそれぞれ独立に2個の水素原子もしくは2価以上の金属イオンを表し、pおよびqはそれぞれ独立に1〜10の整数を表す。なお、M3および/またはM4が3価以上の金属イオンである場合、さらに炭素数0〜20のカウンターアニオンを有していても良い。) 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポルフィリン系化合物を含むことを特徴とする2光子吸収材料。 【課題】高い2光子吸収断面積を有し、かつ近赤外領域に吸収を有さないポルフィリン化合物を用いた2光子吸収材料を提供する。【解決手段】2つのポルフィリン環が最低2本の共役鎖によって互いに結合した2量体を構造中に含むポルフィリン系化合物。好ましくは、下記一般式(1)で表される。このポルフィリン系化合物を含む2光子吸収材料。 【化21】(式(1)中、P1およびP2はそれぞれ独立に置換基を有していても良いポルフィリン環を表し、L1およびL2はそれぞれ独立に炭素数0〜20の共役鎖状連結基を表す。)【選択図】なし


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