タイトル: | 公開特許公報(A)_鉱物ベーマイトと有機物の反応による有機アルミニウム化合物の製造方法 |
出願番号: | 2005279015 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C01F 7/02,C07C 49/92,C07D 215/30,C07C 45/77,C07F 5/06 |
小出 芳弘 片倉 良 JP 2007091489 公開特許公報(A) 20070412 2005279015 20050927 鉱物ベーマイトと有機物の反応による有機アルミニウム化合物の製造方法 学校法人神奈川大学 592218300 大貫 和保 100069073 小竹 秋人 100102613 小出 芳弘 片倉 良 C01F 7/02 20060101AFI20070316BHJP C07C 49/92 20060101ALI20070316BHJP C07D 215/30 20060101ALI20070316BHJP C07C 45/77 20060101ALI20070316BHJP C07F 5/06 20060101ALN20070316BHJP JPC01F7/02 EC07C49/92C07D215/30C07C45/77C07F5/06 D 3 OL 9 4G076 4H006 4H048 4G076AA26 4G076AB02 4G076AB06 4G076AB21 4G076BA11 4G076CA02 4G076CA26 4G076CA29 4G076DA01 4H006AA02 4H006AC93 4H006BB31 4H048AA02 4H048AC93 4H048BB31 4H048VA80 4H048VB10 本発明は、鉱物ベーマイトに有機物を反応させることにより、6配位のアルミニウム化合物を製造するために有用な方法に関する。 有機電界発光素子(有機EL素子)の電子輸送/発光材料としては、従来よりトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)(Alq3 という)が広く利用されている。また、アルミニウムアセチルアセトナト(Al(acac)3)は、触媒として、例えば、オレフィン重合、エポキシ硬化、およびシランポリマー化に手広く使用されている。昨今において、Al (acac)3は超撥水面の製作にも使用されている。 このようなアルミニウム化合物は、従来、Alq3 の場合であれば、一般的に、Al(No3)3・9H2O か Al2(SO4)3・nH2O と8ヒドロキシキノリン(8-Hq)との反応で生成される(非特許文献1)。オーブンでのアルミニウムイソプロポキシドと8-Hqとの反応や、Alスメクタイトの中間層での8-Hqの挿入などのように、いくつかの固相合成法が報告されている(非特許文献2,3)。 また、Al(acac)3の場合であれば、アンモニアの存在下で、水中でHacacをAl2(SO4)3・17H2OかAl(NO3)3と共に反応させて生成される(非特許文献4,5)。AlCl3は、反応がクロロホルム中でなされるときに用いられる(非特許文献6)。(a)Li,H.;Zhang,F.; Wang, Y.; Zheng, D. Mater. Sci. Eng., B, 2003, 100,40. (b) Chirnside, R. C.; Pritchard, C. F.; Rooksby, H. P. Analyst, 1941, 66, 399.Saxena,; A. K. Snth. React. Inorg. Met. -Org. Chem., 1999, 29, 1747.Khaorapapong, N.; Kuroda, K.; Ogawa, M. Clays Clay Miner., 2002, 50, 428.R. C. Young and J.P. McReynolds, Inorg. Synth., 2, 25 (1946); C. J. Nicholls and D. S. Urch, J. Chem. Soc., Dalton Trans., 1974, 901.K. Utsunomiya, Bull. Chem. Soc. Jpn., 44, 2688 (1971).A. E. Finn, G. C. Hampson and L. E. Sutton, J. Chem. Soc., 1254 (1938). しかしながら、これらの製造方法は、精製プロセスを複雑にする酸性の副産物の発生を伴い、また、上述したアルミニウム化合物の量産には適していない。このため、Alq3や類似化合物を簡便かつ安全、安価に大量生産できる方法の開発は産業界において非常に有意義である。 本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、環境安全性が高く、容易かつ安価に大量生産できる鉱物ベーマイトと有機物の反応による有機アルミニウム化合物の製造方法を提供することを主たる課題としている。 本発明者らは、従来の硝酸アルミや硫酸アルミに代えて、鉱物ベーマイトを用いることで、生成物の単離/精製過程での副産物として水のみが生成され、アルミニウム配位化合物の生産への環境に優しい代替ルートを形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、前記課題を達成するために、この発明に係る鉱物ベーマイトと有機物の反応による有機アルミニウム化合物の製造方法は、水中で鉱物ベーマイトにN,O二座配位子及びO,O二座配位子からなる群から選択される二座配位子を反応させて合成させることを特徴としている(請求項1)。 具体的には、有機アルミニウム化合物として、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)を製造する場合であれば、水中で鉱物ベーマイトとN,O二座配位子である8ヒドロキシキノリン(8−Hq)とを反応させて合成し(請求項2)、有機アルミニウム化合物として6配位のアルミニウム化合物であるアルミニウムアセチルアセトナト(Al(acac)3)を製造する場合であれば、水中で鉱物ベーマイトとO,O二座配位子であるアセチルアセトン(2 4ペンタンジオン; Hacac)とを反応させて合成するとよい(請求項3)。 以上述べたように、本発明によれば、水中で鉱物ベーマイトにN,O二座配位子及びO,O二座配位子からなる群から選択される二座配位子を反応させて有機アルミニウム化合物を合成するようにしたので、精製過程において唯一の副産物として水のみが形成され、環境に優しい安全な製造ルートを形成することが可能となる。また、原材料としてベーマイトを用いるので、有機アルミニウム化合物を容易かつ安価に大量生産することが可能となる。 以下、この発明の最良の実施形態を説明する。 [トリス(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III):Alq3の合成] トリス(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III):Alq3を合成するにあたり、ベーマイト(γ-AlO(OH))と窒素と酸素の2座配位子である8ヒドロキシキノリン(8-Hq)とを用いた。 ベーマイト(γ-AlO(OH))は、Al原子が5つの酸化物と1つの水酸化物陰イオンによって八面体状に囲まれてエッジが共用されたAlO6八面体の二重鎖から成る構造を有する自然発生鉱物である。これらの鎖は、化1で示すひだ状シート(パッカーシート)を形成するために更に2つのエッジを共用している。これらのシートは、数十ミクロンの粒子を形成する水素結合によって互いに結合されている。ベーマイトは、疎水性であり、その反応は、例えば、γ-アルミナを形成する脱水反応とカルボン酸の表面誘導体化反応とを含んでいる。 したがって、ベーマイトは、6配位酸化物のクラスタの形のAl3+イオンの供給物と見なすことができる。例えば、適切な配位子があるとき、ベーマイトはさまざまな6配位の Al3+ 化合物の合成に安価で量的な出発物質として使用できる。 一方、8ヒドロキシキノリン(8-Hq)は、多くの金属を沈殿させるキレート成形試薬として知られている。 実験において、ベーマイトの粉を熱湯で4当量の8-Hqと反応させた。結果物である明るい緑黄色固体(それは、容易にクロロホルムに溶ける)を、更なる精製することなく分析した。その結果、合成物のHNMRスペクトルの芳香族領域がAlq3の標準的な試料のものと一致することを確認した。また、合成物に関する電子イオン化(EI)マススペクトルデータは459のm/z値での分子イオンピークと315でのフラグメントピークを示しており、Alq3のHと(Alq3+-C9H6NO)にそれぞれ一致している。 反応率はベーマイトに対して96.4%(O.739g、1.61mmol)であった。ベーマイトの完全な消費を確保するために、4当量の8-Hqが加えられた。8-Hqを1当量と2当量でベーマイトと反応させたとき、それぞれの反応はベーマイトに対して30%と53%の生成率でAlq3を生じた。水和作用が期待値より低くなる原因であると考えられる。しかしながら、8-HqがベーマイトからAl3+イオンを沈殿させることは明らかである。全体の反応は、次の化学式(1)で示される。 AIO(OH)+ 3C9H7NOH → Al(C9H7NO)3+ 2H2O ・・・ (l) 尚、反応機構を考えるとき、カルボン酸とベーマイトとの反応が参考になる。この反応において、カルボキシラート基がベーマイト中の隣接している2つのアルミニウム原子の水酸基を置換すると、カルボキシラトアルモキサンが形成される。 したがって、置換がベーマイトの表面だけに起り、結果として生じる架橋配位子が直径でおよそ50‐100nmの粒子からなるアルモキサンコアを封入する。これは、アルモキサンコアが分解され、Al3+が錯化合物として抽出される、8-Hq置換のケースと対照的である。この差は、反応機構に密接に関連する配位子の幾何学性と反応性から生じている。 すなわち、化2に示されるように、キレート化によって8-HqはAl原子を伴う五員環(2)を形成できるが、カルボキシラート基はキレート生成(3)のために大きなリング歪が生じる。六員環は架橋配位(4)で容易に形成されるが、(3)の配位モードは不可能であると考えられる。したがって、8-Hqのキレート化にとってオクソ配位の開裂は必須であるが、カルボキシラート基はオクソ配位の開裂は促されない。 反応メカニズムをみると、化3に示されるように、8-Hqはキレートの生成に付随して水分子の分離により表面のヒドロキシ基をプロトン化する。第2の8-Hqによってオクソ配位子の開裂と次のプロトン化が新しいヒドロキシ基を発生させる。第3の8-Hqは、最後に、中間生成物5でヒドロキシル基をプロトン化し、Alq3の構成物を完成させる。 (まとめ) トリス(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III)は、鉱物ベーマイトの水性懸濁液と8−ヒドロキシキノリンの間で直接反応して生成された。キレート成形試薬がオクソ配位子の裂開をうながすとき、ベーマイトのアルモキサンコアは分解し、Al3+イオンを供給すると考えられる。これにより、有害な副産物を生じさせないで、Alq3を生成できた。 [アルミニウムアセチルアセトナト(Al(acac)3)の合成] アルミニウムアセチルアセトナト(Al(acac)3)を合成するにあたり、ベーマイト[AlO(OH)]nとO,O二座配位子であるアセチルアセトン(2 4ペンタンジオン; Hacac)とを用いた。 ベーマイトは、前述したごとく、疎水性があり、その反応は、例えば、γ3アルミナを形成する脱水とカルボン酸での表面誘導体化とを含んでいる。また、ベーマイトは、6配位のアルミニウム化合物の合成に使用されるために用意された6配位の酸化物のクラスタの形でアルミニウムイオンの源泉である。 この例において用いたHacacは、わずかに水溶性であり、ケトとエノール型で存在する。Hacacがベーマイト中のアルミニウムイオンを抽出できるなら、その反応は、加水分解して安定する親油性の淡い黄色化合物である、Al(acac)3をもたらす。 アセトン(和光純薬)は、使用前に蒸留され、ベーマイト(和光純薬)とHacac(東京化成)は、入手したものをそのまま使用した。マススペクトルデータは、日立M-ZOOO質量分析計を用いて、70eVの電子ビームエネルギーで得た。TG/DTA分析は、Rigaku G8120を用い、搬送ガスとして空気を使用することで得た。XRDデータはRigaku Multiflex回折計で収集された。HNMRスペクトルは、JEOL ECA-SOO分光計で重クロロホルム(CDCl3)中で得られた。 ベーマイトの乾いた粉は4当量のHacacに加えられた。ベーマイトの無色の粉は、Hacacとの接触で自然に淡いくちなし色に変化した。 混合物に30mLの脱イオン水を入れ、攪拌させながら沸騰させた。明らかな変化が認められなくなるまで、初期の淡いオレンジ色は、数時間の反応で徐々に強められた。 結局、反応は、12時間続いた。その含有物は、グラスフィルタを用いて濾され、析出物は、真空乾燥する前に、5mlの冷水で3回すすがれた。 その析出物は、独特の粒状の外観(直径1mm未満)を持つ結晶質の輝きがあった。その粗い結晶質の析出物を、ホットアセトンで溶解し、再結晶化させた。生成物の分光特性(スペクトル特性)とTG/TAデータは、Al(acac)3のそれらに一致している。その反応収率は、ベーマイトに対して69.5%(3.75グラム)だった。その生成物とAl(acac)3の標準的なサンプルとのX線回折パターンを比較すると、図1に示されるように、2つの物質はほぼ同じであった。 化4に示されるように、Hacacのエノールがアルミニウム原子上のヒドロキシ基をプロトン化し、その結果、acac−は水の解離と同時に配位したと考えられる。淡いくちなし色の自然に生じる発色は、キレート性配位子の存在を暗示し、オクソ配位子の裂開に伴って起こる第1のキレート配位子の素早い形成を示している。次に、第2のHacacは新しいヒドロキシ基に対してオクソ配位子をプロトン化し、アルモキサンの骨格はこの事象によって分解される。第3のHacacは第1Hacac置換と同様の方法でヒドロキシ基を置換する。 尚、カルボン酸もまた、カルボキシラトアルモキサンをもたらすためにベーマイトと反応する。分光学的研究では、カルボキシラート基が橋かけモードで2つの隣接しているAl原子に結合することを示す。 しかし、Hacac置換と異なり、アルモキサンの骨格はカルボキシラトアルモキサンに保存される。2つの配位子の幾何学上の違いは、主としてベーマイトの反応性の違いの原因になると考えられる。カルボキシラート基は、巨大環の歪を避けるために橋かけモードを好むが、Hacacは容易に六員環を形成できる。架橋配位子が形成されるとき、配位子は表面のヒドロキシ基だけを置換する。その結果、アルモキサンの骨格が元の状態を維持する。他方、キレート性配位子はオクソ配位子の開裂を必要とする。 (まとめ) 以上のように、アルミニウムアセチルアセトナト(Al(acac)3)が水中で鉱物ベーマイト[AlO(OH)]n と、アセチルアセトン(2 4ペンタンジオン; Hacac)との反応で生成された。このワンステップ合成では、浅黄色の水晶の生成物が溶液から沈殿した。マススペクトロメトリ、thermogravimetric/defferential熱分析(TG/示差熱分析)、H NMR、X線回折(X線回折)による再結晶水晶の特性は、Al(acac)3と一致していた。 水溶液のAlイオンの源泉としてベーマイトを使用して6配位の単核性のアルミニウム化合物であるAlq3やAl(acac)3の合成を示したが、上述の方法は、類似の化合物を製造する場合に、N,O二座配位子やO,O二座配位子を使用することで6配位の様々なアルミニウム化合物の製法に適用可能である。図1は、Al(acac)3(a)の標準試料と生成品(b)とのX線回折パターンの比較結果を示す図である。水中で鉱物ベーマイトにN,O二座配位子及びO,O二座配位子からなる群から選択される二座配位子を反応させて合成することを特徴とする鉱物ベーマイトと有機物の反応による有機アルミニウム化合物の製造方法。有機アルミニウム化合物としてトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)を製造するにあたり、水中で鉱物ベーマイトと8ヒドロキシキノリンとを反応させて合成することを特徴とする請求項1記載の鉱物ベーマイトと有機物の反応による有機アルミニウム化合物の製造方法。有機アルミニウム化合物としてアルミニウムアセチルアセトナトを製造するにあたり、水中で鉱物ベーマイトとアセチルアセトン(2,4ペンタンジオン)とを反応させて合成することを特徴とする請求項1記載の鉱物ベーマイトと有機物の反応による有機アルミニウム化合物の製造方法。 【課題】有機アルミニウム化合物を製造するにあたり、鉱物ベーマイトを用いて環境安全性が高く、容易かつ安価に大量生産することを可能にする。 【解決手段】水中で鉱物ベーマイトにN,O二座配位子及びO,O二座配位子からなる群から選択される二座配位子を反応させて合成させる。トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)を製造する場合であれば、水中で鉱物ベーマイトとN,O二座配位子である8ヒドロキシキノリン錯体(8−Hq)とを反応させて合成し、アルミニウムアセチルアセトナト(Al(acac)3)を製造する場合であれば、水中で鉱物ベーマイトとO,O二座配位子であるアセチルアセトン(2 4ペンタンジオン; Hacac)とを反応させて合成する。 【選択図】 なし