タイトル: | 公開特許公報(A)_光散乱特性測定方法及びその装置 |
出願番号: | 2005276468 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 21/49 |
実藤 竜二 JP 2007085940 公開特許公報(A) 20070405 2005276468 20050922 光散乱特性測定方法及びその装置 富士フイルム株式会社 306037311 小栗 昌平 100105647 本多 弘徳 100105474 市川 利光 100108589 高松 猛 100115107 矢澤 清純 100132986 実藤 竜二 G01N 21/49 20060101AFI20070309BHJP JPG01N21/49 A 6 2 OL 10 2G059 2G059AA02 2G059EE01 2G059EE02 2G059MM01 本発明は、光散乱体の光散乱係数と非等方散乱パラメータを精度良く求めることができる光散乱特性測定方法及びその装置に関する。 インクジェットペーパやディスプレイ用光学フィルム等を設計する場合、これらに用いる光散乱体の光散乱係数μsや非等方散乱パラメータ(散乱異方性係数ともいう。)gが分かれば、性能の高いインクジェットペーパや光学フィルム等を設計することができる。 しかし、従来から、光散乱係数や非等方散乱パラメータを精度良く測定する技術は殆どなく、例えば下記特許文献1に記載されている従来技術では、光散乱体に光ファイバから光を照射し、照射部近傍の散乱反射光の強度分布を求め、光散乱係数等の光学的特性を、理論式を用いて推定しているに過ぎない。特開平9―178660号公報 光散乱係数や非等方散乱パラメータを理論式から推定する上記従来技術では、光散乱体内で起こる多重反射まで考慮しておらず、精度の高い光散乱係数や非等方散乱パラメータを推定することができないという問題がある。 本発明の目的は、光散乱体の光散乱係数や非等方散乱パラメータを精度良く推定することが可能な光散乱特性測定方法及びその装置を提供することにある。 本発明の光散乱特性測定方法及びその装置は、被測定対象物の光散乱体の透過光特性及び反射光特性を実測し、光散乱のモンテカルロ法で用いるパラメータの値を計算機で発生させると共に該パラメータの値を変化させながら前記光散乱体に対する前記モンテカルロ法の計算を実行し、該計算の結果と前記実測した測定データとが整合する前記パラメータの値を求め、該パラメータの値を前記光散乱体の特性データとすることを特徴とする。 本発明の光散乱特性測定方法及びその装置は、光散乱係数,非等方散乱パラメータ,屈折率,膜厚を前記モンテカルロ法の計算で用いるパラメータとし、光散乱係数と非等方散乱パラメータの夫々の値を前記計算機で発生させることを特徴とする。 本発明の光散乱特性測定方法及びその装置は、前記光散乱体の拡散反射率または拡散反射濃度を前記反射光特性として実測すると共に前記光散乱体のヘイズ値を前記透過光特性として実測することを特徴とする。 本発明によれば、モンテカルロ法を用いて光散乱体内の光多重反射まで考慮することで、従来実測することが困難であった光散乱係数μsや非等方散乱パラメータgの値も、実測した拡散反射濃度(または反射率)やヘイズ値から高精度に推定することが可能となる。 以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。 図1は、本発明の一実施形態に係る光散乱特性測定装置のブロック構成図である。本実施形態の光散乱特性測定装置1は、測定値データ入力手段2と、パラメータ値入力手段3と、各入力手段2,3から入力された測定値データ及びパラメータ値に基づいて光散乱の確率計算をモンテカルロ法に基づいて実行する演算手段4と、演算結果として推定された光散乱係数μsの値と非等方散乱パラメータgの値を出力する出力手段5とを備え、測定値データ入力手段2からは、ヘイズメータ6で測定した光散乱体7のヘイズ値測定データと、濃度計8で測定した光散乱体7の拡散反射率測定データ(反射率データとして計測しても良いし、反射濃度データとして計測しても良い。)が取り込まれる。 図2は、図1の光散乱特性測定装置1によって光散乱係数μsの値と非等方散乱パラメータgの値を求める演算概要の説明図である。本実施形態の演算手段4が演算処理で使用するパラメータは、光散乱体7の、屈折率nと散乱係数μsと非等方散乱パラメータgと膜厚dであり、このうち、屈折率nと膜厚dは、ユーザがパラメータ値入力手段3から入力し、散乱係数μsと非等方散乱パラメータgの値は、演算手段4が発生させ、また、変化させる。 そして、演算手段4は、光散乱のモンテカルロ計算を実行(ステップS1)して光散乱体7の拡散反射率Rと全透過率Ttとを算出し(ステップS2)、算出された拡散反射率Rと全透過率Ttの両方が、光散乱体7を実際に測定して得たヘイズ値測定データ及び拡散反射率測定データと整合するか否かを判定する(ステップS3)。 このステップS3で整合しないと判定された場合には、散乱係数μsと非等方散乱パラメータgの値を変更し(ステップS4)、再度、ステップS1を実行して拡散反射率Rと全透過率Ttとを算出し(ステップS2)、この拡散反射率R,全透過率Ttの両方がヘイズ値測定データ,拡散反射率測定データと整合するか否かを再度判定する(ステップS3)。 このステップS1,S2,S3,S4を、算出された拡散反射率R,全透過率Ttがヘイズ値測定データ,拡散反射率測定データと整合するまで繰り返し、整合したとき、モンテカルロ計算で使用した散乱係数μs,非等方散乱パラメータgの夫々の値を推定値として出力する(ステップS5)。 ステップS3において、拡散反射率Rについては、濃度計8で実際に測定した拡散反射率とモンテカルロ計算で求められた拡散反射率Rとが一致するか否かで判定する。 測定データであるヘイズ値Hの整合判定は次の様にして行う。光散乱体の全透過率Ttは、平行光の透過率(スペキュラー透過率)をTs、散乱光の透過率(拡散透過率)をTdとすると、 Tt=Ts+Tdで表すことができ、また、ヘイズ値Hは、 H=(Td/Tt)×100で表すことができる。 ここで、スペキュラー透過率Tsは、散乱係数μsと膜厚dとから、 Ts=exp(−μs・d)で算出できるため、ヘイズ値Hは、 H={(Tt−Ts)/Tt}×100と表される。つまり、Ttはモンテカルロ計算で算出され、Tsも、モンテカルロ計算で使用した散乱係数μsと、膜厚dとから上記計算式により算出できるため、ヘイズ値Hを算出することができる。 この式で算出されたヘイズ値が、実際に計測されたヘイズ値Hの測定データに一致するか否かでステップS3の判定を行う。 以下、モンテカルロ計算について説明する。 図3は、モンテカルロ法による光散乱シミュレーションのモデルを示す図である。光散乱体7は、第1層から第M層までの積層体で構成され、ここに光子ビームが入射する。光子ビームを構成する個々の光子は、光散乱体7内に入射すると、各層内で、確率的に、吸収されたり散乱されたりする。 全光子数をN、散乱体7のM層目を抜けてきた光子数のカウント値をNtとすると、全透過率Tt=Nt/Nとして求まり、各層内で反射され第1層から光子ビーム入射側に出射された光子数のカウント値をNrとすると、拡散反射率R=Nr/Nとして求まる(図2のステップS2)。 モンテカルロ計算の概略は以下の通りである。光散乱体7の屈折率nから、フレネルの公式を用いて、光子ビームのうち何%の光子が光散乱体7内に入射するかを計算する。つまり、光散乱体7に照射する総光子数Nの内、光散乱体7に入射する光子数Niを算出する。 次に、j番目の光子の初期値すなわち初期位置x(0)=(0,0,0)と初期進行方向v(0)=(0,0,1)を設定する。そして、ランダムな値X(この値Xは0〜1の値を持ち、各値の発生確率p(X)は等しい(=const)。)を発生し、この値Xを用いて、散乱されずに進む距離s=−ln(1−X)/μsを算出し、散乱点x(i)=x(i−1)+v(i−1)*sを算出する。 次に、再びランダムな値X(この値Xも、0〜1の値を持ち、各値の発生確率p(X)は等しい)を発生し、上記で求めた距離sだけ光子が進む間に吸収される確率Pa(=1−exp(−μa・s)を算出する。ここで、係数μaは、平均光路長の逆数である。確率Pa>Xであれば、光子は吸収されて消滅し、Pa≦Xであれば、光子は散乱される。 次に、散乱方向の計算を行う。散乱方向の確率は、非等方散乱パラメータgを用いて、次の数1の様に表される。 ここで、p(cosθ)は確率分布を示し、θは散乱角を表す。また、パラメータgは、cosθの平均値〈cosθ〉を表す。図4に、g=0.3のときの光散乱角度分布を示す。この確率分布に基づいてモンテカルロ計算を実行し、散乱方向v(i)を推定する。 以上の様にして求めたx(i),v(i)を用い、全光子数Nについて、上記の初期値から後の計算処理を繰り返すことで、第1層から上方に出射する光子の総数Nrと、第M層から下方に出射する光子の総数Ntをカウントし、これらを全総数Nで除算することで、拡散反射率Rと全透過率Ttとを算出する。更に、上述した様にして、ヘイズ値を計算する。 図5は、光散乱係数μsと非等方散乱パラメータgとを変化させたときに得られる反射濃度の等高線を示すマップデータ図であり、図6は、散乱係数μsと非等方散乱パラメータgとを変化させたときに得られるヘイズ値の等高線を示すマップデータ図である。 この図5,図6に夫々太線で示す等高線I,IIは、光散乱体7を実測して得られた反射濃度(測定された反射率の対数値から求まる。)Drとヘイズ値Hを示したものである。 上述したモンテカルロ計算では、図2のステップS4で、散乱係数μsと非等方散乱パラメータgの値を変化させているが、それは、図5,図6において、μs,gの値をマップ状に変化させながらモンテカルロ計算を繰り返すことを意味している。 この様に、μs,gを変化させながらモンテカルロ計算を繰り返し、実測された測定データと整合する等高線を探索することで、図7に示す特性線I,IIの交点位置を求めることができる。この交点位置のμs,gの値(図7の例では、μs=217.4、g=0.376)が、図1に示す光散乱体7の散乱係数μsと非等方散乱パラメータgの値となる。 以上述べた様に、本実施形態によれば、光散乱体の反射特性を測定するだけでなく、透過特性としてヘイズ値Hを測定するため、非等方散乱パラメータgと散乱係数μsの推定精度を上げることができる。 精度が上がる要因として、g,μsを変化させたときの拡散反射濃度の測定値線Iとヘイズの測定値線IIとが直交に近い角度で交わるため(図7参照)測定誤差に対する推定誤差が小さくなることが考えられる。 このため、例えばg,μsを、図5,図6の全領域で、マップ状に変化させて図2のステップS4を実行するのではなく、最小二乗法を用い、図5の特性線I,図6の特性線IIの位置をいち早く探索しこれら特性線I,IIの近傍の値g,μsを用いてモンテカルロ計算を実施することで、より高速且つ高精度に散乱係数μsと非等方散乱パラメータgを求めることが可能となる。 また本実施形態では、モンテカルロ法を用いるため、光散乱体内の多重散乱も考慮に入れた理論計算が可能となり、精度が向上するという効果も得られる。 尚、上記実施形態では、光散乱体の光吸収係数の値を「0」としているため、モンテカルロ計算で用いるパラメータの1つとして「光吸収係数」を用いてないが、光吸収係数を計算パラメータの1つとして含ませる構成でも良い。 本発明に係る光散乱特性測定方法等は、実測された拡散反射率とヘイズ値とから、散乱係数と非等方散乱パラメータとを高精度で求めることができるという効果を奏し、光散乱体を用いた製品等の設計に用いると有用である。本発明の一実施形態に係る光散乱特性測定装置のブロック構成図である。図1に示す光散乱特性測定装置の処理概要を示すフローチャートである。図1に示す光散乱特性測定装置で実行されるモンテカルロ法による光散乱シミュレーションのモデル説明図である。非等方散乱パラメータg=0.3のときの光散乱角度分布を示す図である。散乱係数μs,非等方散乱パラメータgを変化させたときの反射濃度の等高線マップを示す図である。散乱係数μs,非等方散乱パラメータgを変化させたときのヘイズ値の等高線マップを示す図である。図5,図6の等高線マップから散乱係数μsと非等方散乱パラメータgを推定する方法を説明する図である。符号の説明1 光散乱特性測定装置2 測定値データ入力手段3 パラメータ値入力手段4 演算手段5 出力手段6 ヘイズメータ7 光散乱体8 濃度計 被測定対象物の光散乱体の透過光特性及び反射光特性を実測し、光散乱のモンテカルロ法で用いるパラメータの値を計算機で発生させると共に該パラメータの値を変化させながら前記光散乱体に対する前記モンテカルロ法の計算を実行し、該計算の結果と前記実測した測定データとが整合する前記パラメータの値を求め、該パラメータの値を前記光散乱体の特性データとすることを特徴とする光散乱特性測定方法。 光散乱係数,非等方散乱パラメータ,屈折率,膜厚を前記モンテカルロ法の計算で用いるパラメータとし、光散乱係数と非等方散乱パラメータの夫々の値を前記計算機で発生させることを特徴とする請求項1に記載の光散乱特性測定方法。 前記光散乱体の拡散反射率または拡散反射濃度を前記反射光特性として実測すると共に前記光散乱体のヘイズ値を前記透過光特性として実測することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光散乱特性測定方法。 被測定対象物の光散乱体の透過光特性及び反射光特性を実測したデータを取り込む入力手段と、光散乱のモンテカルロ法で用いるパラメータの値を計算機で発生させると共に該パラメータの値を変化させながら前記光散乱体に対する前記モンテカルロ法の計算を実行し該計算の結果と前記実測した測定データとが整合する前記パラメータの値を求め該パラメータの値を前記光散乱体の特性データとする演算手段とを備えることを特徴とする光散乱特性測定装置。 光散乱係数,非等方散乱パラメータ,屈折率,膜厚を前記モンテカルロ法の計算で用いるパラメータとし、光散乱係数と非等方散乱パラメータの夫々の値を前記計算機で発生させることを特徴とする請求項4に記載の光散乱特性測定装置。 前記光散乱体の拡散反射率または拡散反射濃度を前記反射光特性として実測すると共に前記光散乱体のヘイズ値を前記透過光特性として実測することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の光散乱特性測定装置。 【課題】光散乱体の散乱係数や非等方散乱パラメータを精度良く推定する。【解決手段】被測定対象物の光散乱体の透過光特性及び反射光特性を実測し、光散乱のモンテカルロ法で用いるパラメータμs,gの値を計算機で発生させると共に該パラメータの値を変化させながら(ステップS4)前記光散乱体に対する前記モンテカルロ法の計算を実行し(ステップS1)、該計算の結果と前記実測した測定データとが整合する前記パラメータの値を求め(ステップS3)、該パラメータの値を前記光散乱体の特性データとする(ステップS5)。【選択図】 図2