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タイトル:公開特許公報(A)_表面プラズモン共鳴の測定装置及び測定方法
出願番号:2005271378
年次:2007
IPC分類:G01N 21/27


特許情報キャッシュ

原田 智子 JP 2007085744 公開特許公報(A) 20070405 2005271378 20050920 表面プラズモン共鳴の測定装置及び測定方法 ソニー株式会社 000002185 逢坂 宏 100076059 原田 智子 G01N 21/27 20060101AFI20070309BHJP JPG01N21/27 C 12 1 OL 13 2G059 2G059AA03 2G059AA05 2G059BB08 2G059EE01 2G059EE02 2G059FF01 2G059GG01 2G059JJ11 2G059JJ12 2G059JJ17 2G059KK04 2G059NN01 2G059PP01 本発明は、表面プラズモン共鳴の測定装置及び測定方法に関するものである。 金属などの固体の表面では、固体内部における種々の素励起に対応して、表面が存在することに起因し、表面に平行な方向には波動としてふるまい、表面に垂直な方向には表面から遠ざかるほど指数関数的に減衰する、表面に局在した集団的振動が存在する。これらの振動を量子化したものを表面素励起といい、このうち、電子の集団運動によるものを表面プラズモンと呼んでいる。 金属と誘電体との界面における表面プラズモンの波数は、金属の誘電率と誘電体の屈折率とによって決まるので、界面に励起される表面プラズモンの波数から、金属に接している誘電体の屈折率を知ることができる。例えば、金属の表面をセンサ面として、誘電体などの被測定物をこのセンサ面に接触させると、その種類や量に応じてセンサ面の屈折率が変化するが、この屈折率の変化はセンサ面に励起される表面プラズモンの波数の変化として測定することができる。このように、センサ面における表面プラズモンの波数を測定することによって、センサ面に接している被測定物の種類や量を屈折率に基づいて検知する物質センサ(表面プラズモン共鳴センサ)などを形成することができる(河田聡,加野裕,「表面プラズモン共鳴現象を用いた光センサ」,計測と制御,36[4],p.275−p.281参照。)。 表面プラズモンおよび光の分散関係から、表面プラズモンはエバネッセント波とのみカップリングする。エバネッセント波は光の全反射によって生成させることができるので、光の全反射を利用して表面プラズモンを励起することができる。具体的には、Kretschmannの励起光学系およびOttoの励起光学系などが考案されており、このうち、Kretschmannの励起光学系は、誘電体試料の形態に対する自由度や、他の実験手段と組み合わせる自由度が大きいので、よく用いられる。 図3(a)は、Kretschmannの表面プラズモン励起光学系を概略的に示す説明図である。この装置では、高屈折率プリズム5の底面に50nm程度の厚さの金や銀などの金属薄膜12を蒸着し、プリズム5の側から臨界角θc以上の入射角θiでp偏光を入射させ、プリズム5の底面で全反射させる。金属薄膜12は薄くて半透明であるので、入射光の一部は金属薄膜12を透過し、プリズムとは反対側の金属表面に到達し、この表面にエバネッセント波を発生させる。入射角や入射波長を適切に選んで、エバネッセント波の波数を表面プラズモン8の波数に一致させると、エバネッセント波によって表面プラズモン8が共鳴励起される。 図3(b)は、図3(a)に示した励起光学系を有する溶液センサによって得られた、入射光の入射角θiと反射率との関係を示す表面プラズモン共鳴スペクトルである。特定の入射角において反射率が最小になっているのは、この入射角においてエバネッセント波の波数と表面プラズモンの波数とが一致し、入射光によって表面プラズモンが効率よく共鳴励起され、その結果、入射光のエネルギーが吸収されたことを示している。図3(b)に示すように、反射率が最小になる入射角すなわち共鳴角は、金属薄膜12が接している試料(誘電体)11が純水であるか、5%エタノール溶液であるかによって異なっており、これに基づいて純水と溶液とを識別することができる。 表面プラズモン共鳴センサは、センサ面から高さ100nm程度の領域の屈折率の変化を、表面プラズモン共鳴角あるいは共鳴波長の変化として検出するものである。表面プラズモン共鳴は、金属表面上に厚さが1nm程度の試料(誘電体薄膜)が吸着されただけで共鳴角が変化する。このように、表面プラズモン共鳴センサは界面の誘電的・幾何学的変化に対して高い感度をもっており、微量の試料の測定が可能である。また、入射角を適当な角度に固定して反射率の時間依存性を測定すると、吸着や脱離過程の動的な測定が可能である。 このため、表面上での物質の濃度やその変化を検出する化学・バイオセンサなどの表面プラズモン共鳴センサの研究が盛んに行われ、一般的に生体分子の定性・定量分析に用いられている。表面プラズモン共鳴センサを生体分子センサとして用いる場合、特定の被測定生体分子と反応または結合するリンカー分子をあらかじめセンサ面上に固定しておき、被測定生体分子を含む溶液などをセンサ面に接触させることが多い。このようにすると、被測定分子はリンカー分子によってセンサ面上に捉えられ、その種類や量がセンサ面の屈折率の変化として測定される。 また、表面プラズモン共鳴を利用した顕微鏡は、誘電体物質の表面近傍の情報や誘電体薄膜の膜厚分布を高感度で測定でき、また、生体膜、合成二分子膜やラングミュア−ブロジェット膜のような擬似生体膜、および液晶性の配向膜等の状態を高感度で観察することができる。 しかしながら、誘電体試料を金属薄膜に固定して表面プラズモン共鳴を観察するだけでは、得られる情報は限られる。特に、試料表面を直接観察する手段がないため、表面プラズモン共鳴が試料の目的の部位を正確に観察しているかどうかを確認できないという問題がある。そこで、後述の特許文献1では、表面プラズモン共鳴測定手段に、顕微鏡や分光装置など、誘電体試料の表面を観察する観察手段を付加し、表面プラズモン共鳴が起こっている測定位置における誘電体試料の状態変化について、より正確な情報を得ることのできる測定装置が提案されている。 図4は、特許文献1の第10実施例として示されている、表面プラズモン共鳴を利用した測定装置の断面図である。この測定装置では、表面プラズモン顕微鏡110に走査型原子間力顕微鏡130を付加し、さらに加熱ヒータ104を設け、誘電体物質からなる試料101の加熱に伴う状態変化を、2種類の顕微鏡で同時に観察し得るようにしている。 図4に示すように、表面プラズモン顕微鏡110では、透明基板103の一方の表面に試料101を接触保持する金属薄膜102を設け、他方の表面にマッチングオイル117を介して光学プリズム116を設けている。単色光レーザ光源111から出射された光は、偏光板112、ビームエキスパンダ113、絞り114、集光レンズ115、プリズム116、マッチングオイル117および透明基板103を経て、金属薄膜102にP偏光の収束光として全反射角で入射される。 反射光は、透明基板103、マッチングオイル117、プリズム116、NDフィルタ118およびシリンドリカルレンズ119を経て、焦平面に平行に配置されたフォトダイオードアレイ120によって受光される。このようにすると、フォトダイオードアレイ120の各素子は、入射角が少しずつ異なる入射光の反射光を受光することになり、フォトダイオードアレイ120全体では反射光強度の入射角度依存性、すなわち、図3(b)に示したような表面プラズモン共鳴スペクトルを得ることができる。このスペクトル中の最低の反射率に対応する入射角が、表面プラズモン共鳴が生じる共鳴角である。 透明基板103は(図示省略した)パルスモータによってX−Yステージ105ごと水平方向に移動可能になっており、入射光によって試料101を2次元的に走査することが可能である。この実施例では、プリズム固定部材121を用いて2次元走査時にプリズム116を光学系に対して固定し、透明基板103、金属薄膜102および試料101のみを移動させるようにしている。 走査型原子間力顕微鏡130では、試料101の金属薄膜102に接していない表面側にプロ−ブ131、カンチレバー132および圧電体133が配置され、表面プラズモン顕微鏡110で表面プラズモン共鳴を測定している部位を、走査型原子間力顕微鏡130で同時に観察できるように構成されている。このようにすると、表面プラズモン励起時における原子間力の変化を測定することができるので、薄膜を構成する原子レベルの物性を調べることができる。すなわち、表面プラズモン励起前に試料101とプロ−ブ131との間に原子間力を生じさせておき、表面プラズモン励起による原子間力の変化や表面プラズモン励起前後の原子間力顕微鏡像の比較等を行うことができる。 一方、図3を用いて説明したように、表面プラズモン共鳴が生じている金属薄膜12の表面上では入射光の吸収が生じており、この結果、入射光電場の10倍以上の電場強度を持つエバネッセント波が発生する。この表面プラズモン共鳴によって増強されたエバネッセント波を、表面プラズモンと共鳴していない通常のエバネッセント波と区別するため、本明細書では特に増強エバネッセント波と呼ぶことにする。増強エバネッセント波は、従来から蛍光発生、ラマン散乱、および光高調波発生などを効果的に行わせるために利用されてきた。エバネッセント波は近接場光学顕微鏡において重要な役割をはたしている光でもあり、後述の非特許文献1には、表面プラズモン共鳴を近接場光学顕微鏡に応用した表面プラズモン共鳴近接場光学顕微鏡(SPR-NSOM)が提案されている。 図5は、非特許文献1に示されている、表面プラズモン共鳴近接場光学顕微鏡の概略構成図である。非特許文献1には詳しい説明は記載されていないが、この装置では、近接場光学顕微鏡のエバネッセント波の発生装置として、表面プラズモン共鳴測定装置が用いられているものと思われる。 非特許文献1には、表面プラズモン共鳴を近接場光学顕微鏡に応用する効果として、表面プラズモン共鳴が生じている表面近傍には、増強されたエバネッセント波が生じており、エバネッセント波の増強の程度は表面の状態に敏感であることから、近接場光学顕微鏡観察においても微量の試料を高いコントラストで観察できることが挙げられている。特開平6−167443号公報(第2、3及び5頁、図10)http://www.opt.ip.titech.ac.jp/room1/research/sprnsom.htm、東京工業大学大学院総合理工学研究科 物理電子システム創造専攻 梶川研究室 図4に示した、特許文献1で提案されている装置では、表面プラズモン顕微鏡110と走査型原子間力顕微鏡130とによって、試料101の一定の部位を同時に観察できることが特徴として挙げられている。しかし、単に同時に観察するだけでは、2つの観察手段による測定データの相関が得られず、2つの観察手段を真に組み合わせる効果は得られない。例えば、走査型原子間力顕微鏡は原子サイズレベルの空間分解能を有するが、この性能が表面プラズモン顕微鏡の空間分解能の向上に応用されることはなく、表面プラズモン顕微鏡の空間分解能は、従来と同様、入射光のビーム径によって制限されたままである。 一方、図5に示した、非特許文献1で提案されている表面プラズモン共鳴近接場光学顕微鏡では、詳しい説明は記載されていないが、表面プラズモン共鳴測定装置210の光電子増倍管212の出力と、近接場光学顕微鏡230のプローブ(に接続された検出器)231の出力とがともにコンピュータ240に入力されていることから、両者のデータの相関が得られるものと推測される。この場合には、近接場光学顕微鏡230によって得られる光の回折限界を超えた空間分解能が、表面プラズモン共鳴測定装置210のデータの解析に適用される可能性がある。 しかしながら、近接場光学顕微鏡230には次に説明する問題点がある(特許庁ホームページ内「表面構造の原子領域分析」,特に、「無開口近接場顕微鏡(Apertureless SNOM)」,http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/spm/1_c_1_d.htm、およびナノエレクトロニクス内「走査プローブ顕微鏡,SPM(Scanning Probe Microscope)-近接場光学顕微鏡」,http://www.nanoelectronics.jp/kaitai/spm/5.htm参照。)。 近接場顕微鏡には大きく分けて、プローブに近接場光(エバネッセント波)を生じさせるもの(照明モード)と、試料に近接場光を生じさせるもの(集光モード)との2つのモードがある。照明モードでは、プローブの周りに近接場光を発生させ、このプローブの周りに発生した近接場光を試料に接触させ、この結果、近接場光が散乱されて発生する散乱光を検出することで表面構造の知見を得る。集光モードでは、試料に励起光をあてて試料の周りに近接場光を発生させ、この試料の周りに発生した近接場光にプローブを接触させ、この結果、近接場光が散乱されて発生する散乱光を検出することで表面構造の知見を得る。表面プラズモン共鳴測定装置と組み合わせるには、近接場光学顕微鏡は必然的に集光モードで動作するものである必要がある。 集光モードで動作する近接場光学顕微鏡は、さらに、微小開口を有する光ファイバーをプロ−ブとする方式によるものと、カンチレバーやストレートプローブの先端などの無開口プローブをプロ−ブとする方式などに分類される。 光ファイバープロ−ブ方式は、微小開口から効率よく散乱光を取り込め、プロ−ブ表面に蒸着した金属薄膜による反射によって散乱光以外のバックグラウンド光を除外できる利点を有するが、直径が光の波長以下の光ファイバーを通じて光を導くため、導波中の損失が大きくなり、光の利用効率が悪化する。 無開口プローブ方式は、光ファイバー内で光を導波することによる損失がなく、また、開口を有するタイプよりもプローブの直径を小さくすることができるため、より高い空間分解能が得られる利点がある。しかし、散乱光は全方位に発生し、伝播するほどに拡散してしまうので、集光が難しく、散乱光の一部しか検出できないため、光の利用効率が悪化する。また、集光装置や検出器などでカンチレバー周りの空間が混み合うため、測定装置の操作性が低下する。また、プローブの支持にカンチレバーを用いる場合、プローブの変位の検出にレーザ光(光てこ方式)が用いられるため、この光が散乱光の検出信号の中に混入し、ノイズとなる。また、試料表面に微細構造があると近接場光のみでなく散乱光も発生するため、SN比が悪くなる(特開2000-131216A号公報および特開2004-101425A号公報参照。)。 上記のように、集光モードのいずれの方式でも光の利用効率が悪く、しかも、そもそも近接場光の散乱光は入射光に比して極めて微弱であることから、近接場光学顕微鏡では光の検出に高度な微弱光検出技術が必要となり、装置が複雑化、高コスト化する。 本発明の目的は、上記のような実情に鑑み、表面プラズモン共鳴をその正確な発生位置を特定しながら測定でき、従って局在化した表面プラズモンの微細構造と試料の表面構造との相関関係を知ることができ、しかも、簡易で低コストである、表面プラズモン共鳴の測定装置及び測定方法を提供することにある。 即ち、本発明は、基体の一方の面を被測定面とし、他方の面に入射光を入射させて前記被測定面に表面プラズモン共鳴を誘起するように構成され、 前記表面プラズモン共鳴によって増強された、前記被測定面近傍の増強エバネッセン ト波に接触可能なプローブと、 前記増強エバネッセント波に対する前記プローブの接触によって変調された反射光を 検出して、表面プラズモン共鳴を測定する測定手段とを有する、表面プラズモン共鳴の測定装置に係わり、また、 基体の一方の面を被測定面とし、他方の面に入射光を入射させて前記被測定面の近傍にエバネッセント波を発生させる工程と、 前記エバネッセント波によって前記被測定面に表面プラズモンを共鳴励起する工程と、 前記表面プラズモンの共鳴励起によって増強された増強エバネッセント波に前記プローブで接触して、表面プラズモン共鳴を変調する工程と、 前記増強エバネッセント波に対する前記プローブの前記接触によって変調された反射光を検出して、表面プラズモン共鳴を測定する工程とを有する、表面プラズモン共鳴の測定方法に係わるものである。 本発明の表面プラズモン共鳴の測定方法によれば、 基体の一方の面を被測定面とし、他方の面に入射光を入射させ、前記被測定面の近傍にエバネッセント波を発生させる工程と、 前記エバネッセント波によって前記被測定面に表面プラズモンを共鳴励起する工程と、 前記表面プラズモンの共鳴励起によって増強された増強エバネッセント波に前記プローブで接触して、表面プラズモン共鳴を変調する工程と、 前記増強エバネッセント波に対する前記プローブの前記接触によって変調された反射光を検出して、表面プラズモン共鳴を測定する工程とを有するので、前記プローブの前記接触による共鳴角又は共鳴波長のずれや吸収強度の変化から、この接触位置に局在している増強エバネッセント波、及びこれと共鳴関係にあり、前記被測定面のこの接触位置に局在している表面プラズモンについての情報を、前記プローブ径に相当する位置分解能で得ることができる。 即ち、前記プローブが配置された位置の表面プラズモン共鳴をその正確な位置を特定しながら測定できる。従って、前記プローブを前記被測定面の様々な位置に配置して上記の測定を繰り返すことにより、局在化した表面プラズモンの微細構造と前記被測定面の表面構造との相関関係を知ることができる。このような表面プラズモンの局在と微細構造に関する知見は、表面プラズモン共鳴現象を解明する上で重要であるばかりでなく、表面プラズモン共鳴を利用する装置の設計や効果的運用に直接利用可能な重要データである。例えば、前記被測定面の表面構造のどの位置に被測定物を捕捉すれば、表面プラズモン共鳴の共鳴角又は共鳴波長のずれが大きくなるのかということが明らかになれば、表面プラズモン共鳴センサなどの感度や正確性の向上に役立たせることができる。 また、測定に際して、前記反射光は、散乱光のように拡散していく光ではなく、光路が明確に規定されており、容易に集光することができる光であるため、光の検出効率が高い。また、バックグラウンド光の影響を受けず、またプローブの変位の検出に用いられるレーザ光が検出信号の中に混入することもない。更に、前記反射光は、近接場光の散乱光に比べてはるかに強い光であるので、良好なSN比が得られる。このため、非特許文献1に示されている表面プラズモン共鳴近接場光学顕微鏡のように近接場光の弱い散乱光を検出することを必須とする方法と違って、微弱な散乱光を集光するためのレンズや感度のよい検出器は必要なく、より簡易で安価な装置で測定することができる。 本発明の表面プラズモン共鳴の測定装置によれば、上記の表面プラズモン共鳴の測定方法を容易に実行することができる。 本発明において、前記プローブとして、前記入射光のビーム径よりも細いプローブを用いるのがよい。このようにすれば、前記入射光のビーム径よりも微細な位置分解能で、局在化した表面プラズモンの微細構造と前記被測定面の表面構造との相関関係を知ることができる。更に、前記プローブとして、前記入射光の波長よりも細いプローブを用いるようにすれば、前記入射光の波長よりも微細な位置分解能、即ち光の回折限界を超えた位置分解能で、表面プラズモンの局在化した微細構造と前記被測定面の表面構造との相関関係を知ることができる。 また、前記プローブをカンチレバーに取り付け、前記被測定面を走査しながら前記表面プラズモン共鳴を測定するのがよい。一般に、プローブの形状には、ストレートプローブ方式とカンチレバー方式とがある。プローブの形状は特に限定されるものではないが、プローブ位置の制御にカンチレバーを用いる方式は、原子間力顕微鏡技術を用いているため、ストレートプローブを用いたシアフォース制御に比べ、安定した位置制御が可能になる。 この際、前記被測定面から一定距離だけ離れた位置を走査するのがよい。前記プローブを用いて前記被測定面を走査する場合、原子間力顕微鏡技術を用いて前記被測定面から一定の距離だけ離れた位置を前記被測定面を追従するように走査していくと、原子間力顕微鏡と同様に、原子サイズレベルの空間分解能をもつ前記被測定面の三次元の形状情報を能率よく正確に得ることができる。 一方、前述したように、前記プローブの前記接触によってこの接触位置に局在しているエバネッセント波、及びこれと共鳴関係にある表面プラズモンについての情報を、前記プローブ径に相当する位置分解能で得ることができる。例えば、前記プローブが前記増強エバネッセント波が発生している領域を走査した際には、表面プラズモン共鳴の共鳴角又は共鳴波長が大きくずれるが、この位置は、原子間力顕微鏡技術を用いて原子サイズレベルの空間分解能で正確に特定することができる。 従って、両者のデータを重ね合わせることで、前記被測定面の微細構造のどの位置に増強エバネッセント波、及びこれと共鳴関係にある表面プラズモンが局在しやすいのかという、前記被測定面の表面構造と局在化した表面プラズモンの微細構造との相関関係を、能率よく正確に知ることができる。 また、前記プローブを前記被測定面に垂直な方向及び/又は平行な方向に振動させ、前記反射光を検出して得た電気信号から前記振動に同期した交流成分を取り出すのがよい。このようにすると、前記反射光を検出して得た電気信号のうち、前記プローブの前記接触によって変調された変化分のみを高い正確性をもって検出することができる。 次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的に説明する。 図1は、本発明の実施の形態に基づく表面プラズモン共鳴測定装置の一例を示す断面図である。この装置は、大きく分けると、従来と同様の表面プラズモン共鳴測定手段、本発明の特徴であるプローブによる変調手段、および表面プラズモン共鳴測定手段によって測定された表面プラズモンのデータとプローブの位置データとの相関をとる制御情報処理装置からなる。なお、本明細書中では、発明の主旨に照らして、同じ目的をもって設けられ、同等の機能を有する部材は、形状や大きさが多少異なっていても同じ指示番号で指示するものとする。 図1に示すように、表面プラズモン共鳴測定手段では、ガラス基板などの透明基板3の一方の面に接して、前記基体である、例えば金などからなる金属薄膜などの試料1が設けられ、他方の面にマッチングオイル4を介してプリズム5が設けられている。マッチングオイル4は、透明基板3とプリズム5とを光学的段差のないように接着するためのものである。 単色光レーザ光源などの励起光源6から出射された光は、プリズム5、マッチングオイル4、透明基板3を経て、試料1の前記被測定面である上側の面の反対側から、試料1にP偏光として全反射角で入射される。全反射された反射光は、透明基板3、マッチングオイル4、プリズム5を経て、検出器7で受光される。 励起光源6から出射された光は、全反射されるに際し試料1の被測定面にエバネッセント波を生成させる。励起光源6は、入射角可変または入射波長可変に構成されており、エバネッセント波の波数と、試料1の被測定面の表面プラズモンの波数が一致する入射角または波長の光を照射したとき、エバネッセント波によって表面プラズモンが共鳴励起され、入射波のエネルギーが吸収されるため、反射波の強度は最小となる。 このとき、微細構造を有する試料1の被測定面には表面プラズモンの共鳴励起によって吸収された光のエネルギーによって増強エバネッセント波9が発生しており、微細構造に対応して表面プラズモンの共鳴励起が著しい領域では、増強エバネッセント波9の発生も著しい。 この試料1の被測定面を、原子間力顕微鏡で用いられているピエゾ素子などで構成された走査手段23によって、カンチレバー22の先端に取り付けられた金属または誘電体からなるプローブ21で走査する。プローブ21の径は、特に限定されるものではないが、表面プラズモン観察の位置分解能はプローブ21の径程度になる。従って、入射光のビーム径よりも細い径のプローブを用いれば、前記入射光のビーム径よりも微細な位置分解能で局在化した表面プラズモンの微細構造を知ることができ、更に、前記入射光の波長よりも細いプローブを用いれば、前記入射光の波長よりも微細な位置分解能、即ち光の回折限界を超えた位置分解能で、局在化した表面プラズモンの微細構造を知ることができる。 この際、非接触モードなど原子間力顕微鏡技術を用いて、被測定面から一定の距離だけ離れた位置を被測定面に追従するように走査していくと、原子間力顕微鏡と同様に、最高で原子サイズレベルの空間分解能で、被測定面の三次元形状情報を能率よく正確に得ることができる。なお、プローブ21の変位の検出には、変位計測用レーザ24の反射光のずれを変位計測用検出器25で測定する光てこ方式を用いる。 このとき同時に、励起光の反射波を観測し、プローブ21で増強エバネッセント波9に接触することによって変調された表面プラズモン共鳴スペクトルを測定する。表面プラズモン共鳴角または共鳴波長は、試料1の誘電率とその周囲の屈折率に依存して決まる。よって、増強エバネッセント波9が発生している領域をプローブが走査した際には、表面プラズモン共鳴の共鳴角または共鳴波長が大きくずれる。このようにして、この接触位置に局在している増強エバネッセント波、及びこれと共鳴関係にあり、被測定面のこの接触位置に局在している表面プラズモンについての情報を、プローブ21の直径に相当する位置分解能で得ることができる。 上記のようにして得た共鳴角または共鳴波長のずれを、同時に得られる試料表面の三次元形状像と重ね合わせてマッピングすることによって、増強エバネッセント波、およびこれと共鳴関係にある表面プラズモンが局在化している位置を能率よく正確に知ることができる。このようなデータを蓄積していくと、試料1の被測定面の微細構造のどの位置に増強エバネッセント波、およびこれと共鳴関係にある表面プラズモンが局在しやすいのかという、被測定面の表面構造と局在化した表面プラズモンの微細構造との相関関係を、能率よく正確に知ることができる。 このような表面プラズモンの局在と微細構造に関する知見は、表面プラズモン共鳴現象を解明する上で重要であるばかりでなく、表面プラズモン共鳴を利用する装置の設計や効果的運用に直接利用可能な重要データである。例えば、前記被測定面の表面構造のどの位置に被測定物を捕捉すれば、表面プラズモン共鳴の共鳴角又は共鳴波長のずれが大きくなるのかということが明らかになれば、表面プラズモン共鳴センサなどの感度や正確性の向上に役立たせることができる。 上記表面プラズモン共鳴の測定において、プローブ21を被測定面に垂直な方向及び/又は平行な方向に振動させ、反射光を検出して得た電気信号からこの振動に同期した交流成分を取り出すのがよい。このようにすると、反射光を検出して得た電気信号のうち、プローブ21の接触によって変調された変化分のみを高い正確性をもって検出することができる。 具体的には、プローブ21の被測定面に垂直な方向の振動は、例えばカンチレバー22のたわみ運動によって発生させ、プローブ21の被測定面に平行な方向の振動は、例えば走査手段23をなす圧電素子の伸縮運動によって発生させるようにすれば、原子間力顕微鏡技術で用いられている公知の装置を用いてこれらの振動を発生させることができ、振動発生のために新しく装置を付け足す必要はない。また、これらの振動に同期した信号も、原子間力顕微鏡技術で用いられている公知の装置から得られる。例えば、カンチレバー22のたわみ運動に同期した信号は、変位計測用検出器25の出力から得られる。 このようにして得られたプローブ21の振動に同期した信号を参照信号とし、(図示省略した)ロックインアンプなどを用いて、反射光を検出して得た検出器7からの電気信号からプローブ21の振動に同期した交流成分を取り出せば、プローブ21の接触によって変調された変化分のみを高い正確性をもって検出することができる。 その他、本発明に基づく表面プラズモン共鳴の測定では、通常の表面プラズモン共鳴の測定や一般の光学測定で用いられる公知の測定装置および測定方法を適宜用いることができる。例えば、励起光源6から試料1に入射される励起光として、単一の偏光成分のみからなる偏光を用い、偏光子を介して同一方向に偏光した光のみを検出器7で検出するようにすれば、良好なSN比を得ることができる。また、ゴニオメータなどを用いて、励起光の入射角の変化に連動して、検出器7の位置と角度が変化するように構成すれば、能率よく測定を行うことができる。また、特許文献1の例と同様、パルスモータなどで駆動されるX−Yステージ上に試料1を固定するようにすれば、試料1の広範な領域を能率よく測定することができる。 高い位置分解能で、かつ、高精度に表面プラズモン共鳴の測定を行うには、できるだけ先端が細いプローブ21を用いるとともに、これに対応して励起光のビーム径を細く絞り込み、できるだけ狭い領域に表面プラズモン共鳴が集中するようにするのがよい。レーザなどの励起光源6から出射された光ビームを細く絞るには、レンズなどからなる通常の光学系の他に、光ファイバなどを用いることができる。光ファイバを用いれば、励起光の波長と同程度またはそれ以下まで、励起光のビーム径を絞ることができる。 図2は、本発明の実施の形態の変形例に基づく表面プラズモン共鳴測定装置の一例を示す断面図である。図2の装置では、表面プラズモン共鳴センサなどへの応用を念頭において、透明基板3の一方の面に金属薄膜12を設け、その上に誘電体などからなる試料11を接触保持するように構成されている。試料11および金属薄膜12とが合わせて、前記基体に相当し、試料11が表面プラズモン共鳴センサなどで検知しようとする被測定物に相当し、金属薄膜12が表面プラズモン共鳴センサなどのセンサ膜に相当する。 このような表面プラズモン共鳴センサを模した実験から、表面プラズモン共鳴測定装置を用いて、金属薄膜12からなるセンサ膜の表面形状をどのようにすればセンサ性能を向上させることができるか、といった検討をより実際的に行うことができ、直接に利用できるデータを得ることができる。 以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。 本発明の表面プラズモン共鳴の測定装置及び測定方法によれば、局在化した表面プラズモンの微細構造を光回折限界を超えた空間分解能で観察することができ、しかも、簡易で低コストである、表面プラズモン共鳴の測定装置及び測定方法を提供することができ、表面プラズモン共鳴センサなどの性能向上や新規な応用分野の開発などに貢献することができる。本発明の実施の形態に基づく表面プラズモン共鳴測定装置の一例を示す断面図である。本発明の実施の形態の変形例に基づく表面プラズモン共鳴測定装置の一例を示す断面図である。Kretschmannの励起光学系を概略的に示す説明図(a)、およびこの励起光学系を有する溶液センサによって得られた表面プラズモン共鳴スペクトル(b)である。特許文献1に示されている、表面プラズモン共鳴を利用した測定装置の断面図である。非特許文献1に示されている、表面プラズモン共鳴近接場光学顕微鏡の概略構成図である。符号の説明 1…試料(金属薄膜など)、3…透明基板、4…マッチングオイル、5…プリズム、6…励起光源、7…検出器、8…表面プラズモン、9…増強エバネッセント波、11…試料(誘電体)、12…金属薄膜、21…プローブ、22…カンチレバー、23…走査手段、24…変位計測用レーザ、25…変位計測用検出器、30…制御・情報処理装置、101…試料、102…金属薄膜、103…透明基板、104…加熱ヒータ、105…X−Yステージ、110…表面プラズモン顕微鏡、111…単色光レーザ光源、112…偏光板、113…ビームエキスパンダ、114…絞り、115…集光レンズ、116…プリズム、117…マッチングオイル、118…NDフィルタ、119…シリンドリカルレンズ、120…フォトダイオードアレイ、121…プリズム固定部材、130…走査型原子間力顕微鏡、131…プロ−ブ、132…カンチレバー、133…圧電体、210…表面プラズモン共鳴測定装置、211…CCD検出器、212…光電子増倍管、230…近接場光学顕微鏡、231…プローブ、240…コンピュータ 基体の一方の面を被測定面とし、他方の面に入射光を入射させて前記被測定面に表面プラズモン共鳴を誘起するように構成され、 前記表面プラズモン共鳴によって増強された、前記被測定面近傍の増強エバネッセン ト波に接触可能なプローブと、 前記増強エバネッセント波に対する前記プローブの接触によって変調された反射光を 検出して表面プラズモン共鳴を測定する測定手段とを有する、表面プラズモン共鳴の測定装置。 前記プローブが前記入射光のビーム径よりも細い、請求項1に記載した表面プラズモン共鳴の測定装置。 前記プローブが前記入射光の波長よりも細い、請求項2に記載した表面プラズモン共鳴の測定装置。 前記プローブをカンチレバーに取り付け、前記被測定面を走査しながら前記表面プラズモン共鳴を測定する、請求項1に記載した表面プラズモン共鳴の測定装置。 前記被測定面から一定距離だけ離れた位置を走査する、請求項4に記載した表面プラズモン共鳴の測定装置。 前記プローブを前記被測定面に垂直な方向及び/又は平行な方向に振動させる手段と、前記反射光を検出して得られた電気信号から前記振動に同期した交流成分を取り出す手段とを有する、請求項1に記載した表面プラズモン共鳴の測定装置。 基体の一方の面を被測定面とし、他方の面に入射光を入射させて前記被測定面の近傍にエバネッセント波を発生させる工程と、 前記エバネッセント波によって前記被測定面に表面プラズモンを共鳴励起する工程と、 前記表面プラズモンの共鳴励起によって増強された増強エバネッセント波に前記プローブで接触して、表面プラズモン共鳴を変調する工程と、 前記増強エバネッセント波に対する前記プローブの前記接触によって変調された反射光を検出して、表面プラズモン共鳴を測定する工程とを有する、表面プラズモン共鳴の測定方法。 前記プローブとして、前記入射光のビーム径よりも細いプローブを用いる、請求項7に記載した表面プラズモン共鳴の測定方法。 前記プローブとして、前記入射光の波長よりも細いプローブを用いる、請求項8に記載した表面プラズモン共鳴の測定方法。 カンチレバーに取り付けた前記プローブによって前記被測定面を走査しながら、前記表面プラズモン共鳴を測定する、請求項7に記載した表面プラズモン共鳴の測定方法。 前記被測定面から一定距離だけ離れた位置を走査する、請求項10に記載した表面プラズモン共鳴の測定方法。 前記プローブを前記被測定面に垂直な方向及び/又は平行な方向に振動させ、前記反射光を検出して得た電気信号から前記振動に同期した交流成分を取り出す、請求項7に記載した表面プラズモン共鳴の測定方法。 【課題】表面プラズモン共鳴をその正確な発生位置を特定しながら測定でき、従って局在化した表面プラズモンの微細構造と試料の表面構造との相関関係を知ることができ、しかも、簡易で低コストである、表面プラズモン共鳴の測定装置及び測定方法を提供すること。【解決手段】金属薄膜などの試料1の被測定面の裏面に、励起光源6から全反射条件で光を入射させ、反射光を検出器7で受光する。入射光の入射角または波長を調節して、表面プラズモンを共鳴励起すると、反射波の強度は最小となり、入射光の吸収によって増強エバネッセント波9が発生する。この増強エバネッセント波9にプローブ21で接触し、接触によって変調された反射光を検出して、接触位置における表面プラズモン共鳴をプローブ径に相当する位置分解能で測定する。原子間力顕微鏡技術を用いて被測定面を走査し、能率よく正確に表面プラズモンの微細構造と試料の表面構造との相関を知る。【選択図】 図1


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