生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ICP発光分光分析方法及びICP発光分光分析装置
出願番号:2005270413
年次:2007
IPC分類:G01N 21/73


特許情報キャッシュ

大森 敬久 JP 2007078640 公開特許公報(A) 20070329 2005270413 20050916 ICP発光分光分析方法及びICP発光分光分析装置 株式会社島津製作所 000001993 小林 良平 100095670 大森 敬久 G01N 21/73 20060101AFI20070302BHJP JPG01N21/73 3 5 OL 9 2G043 2G043AA01 2G043BA01 2G043BA04 2G043CA03 2G043EA08 2G043FA06 2G043FA07 2G043HA01 2G043JA04 2G043LA03 2G043MA01 2G043NA01 2G043NA06 本発明は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析方法及びICP発光分光分析装置に関する。 ICP発光分光分析装置では、ネブライザ等により噴霧した試料液をICPトーチ中の高温の高周波プラズマ中に導入して励起発光させ、その発光光を分光器により波長分散させて検出器で検出することにより発光スペクトルを取得し、その発光スペクトルに現れているスペクトル線の波長から試料液に含まれる元素の定性分析を、スペクトル線の強度からその元素の定量分析を行う(特許文献1など参照)。 こうしたICP発光分光分析装置では、光学系の構成の相違から、大別して、モノクロメータを回転させることで異なる波長のスペクトル線を順次検出するシーケンシャル型の構成と、例えば微小受光素子を多数並べた検出器を用い、多数のスペクトル線を同時に検出するマルチチャンネル型の構成とがある。マルチチャンネル型の装置は多数のスペクトル線を短時間で取得することができるという利点があるが、その反面、波長精度が検出器の1個の受光素子のサイズ等によって決まってしまうので、シーケンシャル型に比べて波長精度を上げることが難しいという問題がある。 ところで、ICP発光分光分析において定量分析に誤差を生じる要因には様々なものが考えられるが、主要な要因として、物理干渉やイオン化干渉などがある。物理干渉は、試料に含まれる目的成分以外の他の成分の影響で溶液の粘性、揮発性等の物性が変化して試料の輸送や噴霧の状況が変化する現象である。また、イオン化干渉は主としてナトリウム(Na)やカリウム(K)など特にイオン化され易い元素が共存する場合に、そうした元素のイオン化の影響を受けて目的元素のイオン化効率が低下する現象である。 そこで、こうした干渉の影響の有無や影響の程度を適切に評価することができれば、分析により得られた定量値の信頼性を判断したり、必要に応じて定量値の補正を行ったりすることが可能である。しかしながら、様々な種類の分析対象元素について簡便に物理干渉やイオン化干渉の影響の有無や影響の程度を評価するような方法は、従来提案されていなかった。 例えば、従来、プラズマの生成に利用されるアルゴン(Ar)の発光強度をモニタする機能を備えるICP発光分光分析装置が知られており、こうした装置では、原理的には、Arの発光強度の変化により試料導入の状態変化を検知できる可能性がある。しかしながら、実際にはArの発光強度は非常に強いため、上記のような物理干渉やイオン化干渉などがあってもそれによる影響が観察できるほどの明瞭な発光強度の変化は現れない。そのため、Arの発光強度変化から物理干渉やイオン化干渉などの影響を評価するのは殆ど不可能である。 また、干渉の影響の正確な評価手法としては添加回収試験がよく知られている。添加回収試験とは、分析対象の試料とこれに既知濃度の目的成分の純品(標準試料)を一定量添加した試料とについて分析を行い、両者の分析結果を比較して、添加した量が正確に定量されるか否かを判定することで定量精度を評価する方法である。しかしながら、添加回収試験を行うには標準試料を調製する必要があり、分析対象である目的元素の全てについて標準試料を調製しなければならず、その手間は非常に面倒である。そのため、特に多元素同時分析を行うような場合には実用的でない。 さらに、定性分析の結果を表示する際に、主成分元素の濃度(半定量値)を同時に表示する機能を持つICP発光分光分析装置も知られており、これによれば、目的元素以外にどのような共存元素が含まれているのかを知ることができる。しかしながら、これで分かるのは共存元素の種類によって物理干渉やイオン化干渉が起こる可能性がありそうか否かを推定できるだけであり、干渉の影響の判定や影響の程度の評価にはあまり役に立たない。特開平10−253540号公報 本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、様々な種類の分析対象元素について簡便に物理干渉やイオン化干渉などの影響の有無や影響の程度を評価することができるICP発光分光分析装置を提供するものである。 上記課題を解決するために成された第1発明は、霧状にした試料液を高周波プラズマ中に導入することにより、試料中の成分を励起して各元素に固有の波長を有する光を放出させ、その光を分光測定して取得した発光スペクトルに基づいて前記元素の定量分析を行うICP発光分光分析方法において、 a)目的試料を測定することにより得られた発光スペクトルに基づいて、その目的試料に含まれる所定の元素に由来する中性原子線とイオン線との強度の強度比を算出する第1ステップと、 b)標準試料を測定することにより得られた発光スペクトルに基づいて、その標準試料に含まれる前記所定の元素に由来する中性原子線とイオン線との強度の比を算出する、又はその標準試料に含まれる前記所定の元素とは異なる元素に由来する中性原子線とイオン線との強度の比から前記所定の元素に由来する中性原子線とイオン線との強度比を推定する第2ステップと、 c)前記第1及び第2ステップでそれぞれ得られた強度比の相違に基づいて、目的試料の測定時における物理干渉やイオン化干渉の影響を評価するための情報を生成する第3ステップと、 を実行することを特徴としている。 また上記課題を解決するために成された第2発明は、上記第1発明に係るICP発光分光分析方法を具現化する装置であって、霧状にした試料液を高周波プラズマ中に導入することにより、試料中の成分を励起して各元素に固有の波長を有する光を放出させ、その光を分光測定して取得した発光スペクトルに基づいて前記元素の定量分析を行うICP発光分光分析装置において、 a)複数の元素について各元素毎に中性原子線とイオン線との組み合わせに関する情報を保持しておく記憶手段と、 b)目的試料に対する発光スペクトルを取得し、前記記憶手段に格納されているいずれかの元素が該目的試料に含まれている場合に、その特定元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線との強度を求めてその強度比を算出する第1の強度比算出手段と、 c)標準試料に対する発光スペクトルを取得して、該標準試料に前記第1の強度比算出手段により強度比を求める元となる特定元素が含まれている場合に、その特定元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線との強度の比を算出する第2の強度比算出手段と、 d)前記第1及び第2の強度比算出手段でそれぞれ得られた強度比の相違に基づいて、目的試料の測定時における物理干渉やイオン化干渉の影響を評価するための情報を生成する評価情報生成手段と、 を備えることを特徴としている。 ICP発光分光分析では同一元素から波長の相違する複数の発光線が出るが、アルカリ金属などの一部の元素を除けば、発光線には中性原子線とイオン線とが存在し、物理干渉やイオン化干渉の影響は中性原子線とイオン線とでは相違する。そこで、第1発明に係るICP発光分光分析方法を具現化した第2発明に係るICP発光分光分析装置では、第1の強度比算出手段は、分析対象である未知の元素を含む目的試料を測定して発光スペクトルを取得し、その発光スペクトルに現れている輝線の中で、記憶手段に格納されているいずれかの元素(特定元素)に由来する中性原子線とイオン線との強度を求めてその強度比を算出する。一方、第2の強度比算出手段は、目的試料に対するのと同様に標準試料を測定して発光スペクトルを取得し、その標準試料に上記特定元素が含まれている場合に、その特定元素に由来する中性原子線とイオン線との強度の比を算出する。 この場合、目的試料と標準試料とについて、評価に用いる特定元素と発光線の波長とは同じであるから、もし物理干渉やイオン化干渉などが無い理想的な状態であれば、両者の強度比は同じになる筈である。換言すれば、両者の強度比の差異は物理干渉やイオン化干渉などの影響の程度を反映するから、評価情報生成手段はこの差異に基づいて上記のような干渉の有無や干渉の程度を評価する情報を作成することができる。 但し、分析対象の全ての元素について標準試料を作成することは現実的ではないため、上述したように、「標準試料に前記第1の強度比算出手段により強度比を求める元となる特定元素が含まれている場合」というケースは少なく、多くの場合、標準試料に含まれる元素は目的試料に含まれている元素とは異なる。 そこで、第2発明に係るICP発光分光分析装置では、好ましくは、前記記憶手段には、複数の元素についての中性原子線とイオン線との組み合わせとともにそれら輝線の基準強度情報を保持しておき、前記第2の強度比算出手段は、前記標準試料に前記第1の強度比算出手段により強度比を求める元となる特定元素が含まれていない場合に、その特定元素とは異なる別の元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線との強度をそれぞれ求め、それら強度と前記記憶手段に格納されている基準強度情報とを用いて前記特定元素に由来する中性原子線とイオン線との強度の比を推定し、前記評価情報生成手段はこの推定した強度比と前記第1の強度比算出手段で得られた強度比とを用いて、目的試料の測定時における物理干渉やイオン化干渉の影響を評価するための情報を生成する構成とするとよい。 この構成によれば、分析対象である全ての元素について一々標準試料を作成する手間が不要になるから、物理干渉やイオン化干渉の影響の評価を簡便に行うことができる。 第1発明に係るICP発光分光分析方法及び第2発明に係るICP発光分光分析装置によれば、従来、適切に評価することができなかった物理干渉やイオン化干渉などの影響の有無や影響の程度を評価することができるので、これを利用して、例えば定量分析結果である定量値の信頼性を判断したり、或いは、定量値を適宜に補正したりすることができるようになる。また、こうした評価を行うに際して目的元素の全てについて標準試料を用意する必要はないので、標準試料作成の手間が軽減でき、簡便に評価を行うことができる。 以下、第1発明に係るICP発光分光分析方法を遂行するための第2発明に係るICP発光分光分析装置の一実施例について、図1〜図5を参照して説明する。 図1は本実施例であるICP発光分光分析装置の概略構成図である。このICP発光分光分析装置はマルチチャンネル型の装置である。 図1において、制御部21により制御されるオートサンプラ11から供給された試料溶液は、図示しないネブライザで霧化された後、発光部10に導入され高温のプラズマ炎によって励起される。これにより発生した光は集光レンズ12により集光され、スリット13を通過して回折格子14に送られる。回折格子14で波長分散された光は、例えばリニアCCDセンサ等のマルチチャンネル型検出器15でほぼ同時に検出される。具体的には、ここでは検出器15の受光面の両端部にそれぞれ到達する波長λ1、λ2の間の光をほぼ同時に検出し、各受光素子で光電変換した検出信号をデータ処理部20へと送る。したがって、波長分解能はマルチチャンネル型検出器15の受光素子数に依存する。 データ処理部20は該検出信号をデジタルデータ(スペクトルデータ)に変換し、所定のアルゴリズムに従って演算処理することにより、試料の定性分析や定量分析を実行する。上記各部の動作は制御部21により統括的に制御されており、制御部21とデータ処理部20の機能の多くは汎用のパーソナルコンピュータ22上で所定のプログラムを実行することによって達成される。また、パーソナルコンピュータ22には、操作者が分析条件等を入力するためのキーボード等から成る入力部23と、測定結果等を表示するためのディスプレイ等から成る表示部24とが接続されている。 上記構成のICP発光分光分析装置において、或る試料に対するICP分光分析が実行されると、その分析結果として、データ処理部20では例えば図2に示すようなλ1〜λ2の波長範囲の発光スペクトルが作成される。既述のようにマルチチャンネル型の本装置ではこうしたスペクトルはシーケンシャル型の装置に比べて格段に短時間で取得することができる。 本実施例のICP発光分光分析装置では、上述した定量分析の精度を信頼性を評価する1つの指標として物理干渉やイオン化干渉の影響の程度を評価する機能を有しており、そうした機能を実現するために、データ処理部20は干渉評価用データベース202とこれを用いた処理を実行する評価処理部201とを備える。 干渉評価用データベース202には、ほぼ同程度の測定感度の中性原子線とイオン線とを併せ持つ各種の元素について、中性原子線の波長とイオン線の波長との組み合わせ情報、及び、各波長毎の強度基準データが、容易に検索可能であるようにデータベース化されて格納されている。但し、ここで言う「ほぼ同程度の測定感度」とは例えば10倍程度までの差異の範囲内を同程度の測定感度とみなすものとする。 上記のような条件の元素としては、特にイオン化が容易であって中性原子線が殆ど現れないアルカリ金属類を除いて、例えば、銀(Ag)、金(Au)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、銅(Cu)、水銀(Hg)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ストロンチウム(Sr)、タリウム(Tl)、亜鉛(Zn)などが挙げられる。図3は干渉評価用データベースの内容の一例であり、(a)はAgとAuの中性原子線とイオン線の波長の組み合わせ、(b)はAgの各波長の基準強度データを示している。図3(a)では、横に並んでいる中性原子線とイオン線とが一組であるから、Agでは2組、Auでは3組の組み合わせが存在する。 次に、評価処理部201を中心に実行される干渉評価処理について、図5のフローチャートに従って動作を説明する。 まず分析者は干渉評価用データベース202に記載されているいずれかの元素を含む標準試料を用意し、これに対する分析の指示を入力部23により行う。この指示を受けた制御部21は、標準試料に対するICP発光分光分析を実行する。その結果、データ処理部20ではλ1〜λ2の波長範囲の発光スペクトルP1が取得される(ステップS1)。次に制御部21は、目的試料に対するICP発光分光分析を実行する。その結果、データ処理部20ではλ1〜λ2の波長範囲の発光スペクトルP2が取得される(ステップS2)。 次に、評価処理部201は、目的試料の発光スペクトルP2に基づいた定性分析を行い、干渉評価用データベース202に記載されているいずれかの元素が含まれているか否かを判定する(ステップS3)。目的試料が干渉評価用データベース202に記載されている複数の元素を含まない場合には、ここで行おうとしている評価はできないので(ステップS14)、そのままステップS13に進んで評価不可である旨の評価結果を表示部24に対して出力する。 目的試料が干渉評価用データベース202に記載されているいずれかの元素を含んでいる場合(ここでその元素を特定元素という)、評価処理部201は、干渉評価用データベース202に記載されているその特定元素による中性原子線とイオン線との組み合わせの波長を参照し、発光スペクトルP2上でその中性原子線及びイオン線の強度を求める。例えば図4(a)、(b)に示すように波長λaにおいて中性原子線が存在し、波長λbにおいてイオン線が存在するとき、中性原子線の強度はIn、イオン線の強度はIiになる。そして、中性原子線の強度とイオン線の強度の比T1を算出する(ステップS4)。 次いで、標準試料が上記特定元素を含んでいるか否かを判定する(ステップS5)。標準試料が上記特定元素を含んでいる場合には、標準試料と目的試料とについて、その同じ特定元素での比較を行うことが可能である。そこで、評価処理部201は、上述したように目的試料についての中性原子線とイオン線との強度比を算出した際と同じ中性原子線とイオン線との組み合わせの波長を用い、発光スペクトルP1上でその中性原子線及びイオン線の強度を求める。そして、この中性原子線の強度とイオン線の強度の比T2を算出する(ステップS6)。 物理干渉やイオン化干渉等の影響が全くない理想的な条件の下では、強度比T1とT2とは同じになる筈である。そこで、評価処理部201は強度比T1とT2との差を求め、この差に基づいて物理干渉やイオン化干渉の程度を例えば数値化して評価する(ステップS7)。但し、分析条件のばらつきなどを考慮すると、物理干渉及びイオン化干渉が全く無いとしても強度比T1とT2とは若干の差異が生じる可能性がある。したがって、こうした要素を考慮して、例えば強度比T1とT2との差が所定の許容値以内である場合には、干渉の影響度をゼロし、その許容値を超えるような差が生じた場合に、その差に応じて干渉の影響度を算出すればよい。もちろん、数値化せずに、単に、干渉の影響の有無を出力したり干渉の影響が大、中、小といった程度で以て表すようにしてもよい。そして、こうして生成した評価結果を表示部24に出力する(ステップS13)。 一方、ステップS5で、標準試料が上記特定元素を含んでいないと判定された場合には、標準試料と目的試料とについて同じ特定元素での比較を行うことができない。即ち、比較すべき元素の種類や発光線の波長が相違するので、ステップ6、S7のように単純に両者の強度比を比較することはできない。そこで、評価処理部201は、標準試料の発光スペクトルP1上で適宜の元素(これを選択元素と呼ぶこととする)に由来する中性原子線及びイオン線の強度を求めた上で、干渉評価用データベース202に記載されている基準強度データを用いて強度を標準化する。そして、中性原子線及びイオン線についての標準化された強度からその比T2’を算出する(ステップS6)。 ここでの標準化の基本的な考え方は次の通りである。例えばいま、目的試料中の特定元素の中性原子線とイオン線に対する基準強度が、中性原子線:イオン線=10:1であるものとし、一方、標準試料中の選択元素の中性原子線とイオン線に対する基準強度が、中性原子線:イオン線=1:10であるものとする。この場合、目的試料中の特定元素と標準試料中の選択元素とを比較する際には、選択元素のイオン線の強度に100を乗じた(或いは中性原子線の強度を100で除した)上で、強度比を算出すればよい。 なお、上記のような基準強度を利用した標準化のためには、基準強度の正確性が高いほうが望ましい。こうした目的のために、例えば本願出願人が特願2005−142214号(平成17年5月16日出願)で提案しているような定性データベースの校正(半定量情報の補正)の手法を用いることができる。 なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜に変更や修正、追加を行っても本願発明に包含されることは当然である。例えば上記実施例ではマルチチャンネル型のICP発光分光分析装置を示したが、本発明はシーケンシャル型のICP発光分光分析装置にも適用可能である。但し、分析時間の点から前者が好ましいのは言うまでもない。本発明の一実施例であるICP発光分光分析装置の概略構成図。ICP発光分光分析装置で取得される発光スペクトルの一例を示す図。本実施例のICP発光分光分析装置における干渉評価用データベースの内容の一例を示す図。本実施例のICP発光分光分析装置における干渉評価処理の説明図。本実施例のICP発光分光分析装置における干渉評価処理の手順を示すフローチャート。符号の説明10…発光部11…オートサンプラ12…集光レンズ13…スリット14…回折格子15…マルチチャンネル型検出器20…データ処理部201…評価処理部202…干渉評価用データベース21…制御部22…パーソナルコンピュータ23…入力部24…表示部 霧状にした試料液を高周波プラズマ中に導入することにより、試料中の成分を励起して各元素に固有の波長を有する光を放出させ、その光を分光測定して取得した発光スペクトルに基づいて前記元素の定量分析を行うICP発光分光分析方法において、 a)目的試料を測定することにより得られた発光スペクトルに基づいて、その目的試料に含まれる所定の元素に由来する中性原子線とイオン線との強度の強度比を算出する第1ステップと、 b)標準試料を測定することにより得られた発光スペクトルに基づいて、その標準試料に含まれる前記所定の元素に由来する中性原子線とイオン線との強度の比を算出する、又はその標準試料に含まれる前記所定の元素とは異なる元素に由来する中性原子線とイオン線との強度の比から前記所定の元素に由来する中性原子線とイオン線との強度比を推定する第2ステップと、 c)前記第1及び第2ステップでそれぞれ得られた強度比の相違に基づいて、目的試料の測定時における物理干渉やイオン化干渉の影響を評価するための情報を生成する第3ステップと、 を実行することを特徴とするICP発光分光分析方法。 霧状にした試料液を高周波プラズマ中に導入することにより、試料中の成分を励起して各元素に固有の波長を有する光を放出させ、その光を分光測定して取得した発光スペクトルに基づいて前記元素の定量分析を行うICP発光分光分析装置において、 a)複数の元素について各元素毎に中性原子線とイオン線との組み合わせに関する情報を保持しておく記憶手段と、 b)目的試料に対する発光スペクトルを取得し、前記記憶手段に格納されているいずれかの元素が該目的試料に含まれている場合に、その特定元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線との強度を求めてその強度比を算出する第1の強度比算出手段と、 c)標準試料に対する発光スペクトルを取得して、該標準試料に前記第1の強度比算出手段により強度比を求める元となる特定元素が含まれている場合に、その特定元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線との強度の比を算出する第2の強度比算出手段と、 d)前記第1及び第2の強度比算出手段でそれぞれ得られた強度比の相違に基づいて、目的試料の測定時における物理干渉やイオン化干渉の影響を評価するための情報を生成する評価情報生成手段と、 を備えることを特徴とするICP発光分光分析装置。 前記記憶手段には、複数の元素についての中性原子線とイオン線との組み合わせとともにそれら輝線の基準強度情報を保持しておき、前記第2の強度比算出手段は、前記標準試料に前記第1の強度比算出手段により強度比を求める元となる特定元素が含まれていない場合に、その特定元素とは異なる別の元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線との強度をそれぞれ求め、それら強度と前記記憶手段に格納されている基準強度情報とを用いて前記特定元素に由来する中性原子線とイオン線との強度の比を推定し、前記評価情報生成手段はこの推定した強度比と前記第1の強度比算出手段で得られた強度比とを用いて、目的試料の測定時における物理干渉やイオン化干渉の影響を評価するための情報を生成することを特徴とする請求項2に記載のICP発光分光分析装置。 【課題】 物理干渉やイオン化干渉の有無や影響の程度を適切に且つ簡便に評価し、定量値の信頼性の判断や定量値の補正を可能とする。 【解決手段】 各種元素について中性原子線とイオン線との組み合わせや基準強度を記憶しておき、目的試料がこうした元素を含む場合には(S3でYes)、その特定元素に由来する中性原子線とイオン線との強度を求めてその強度比を算出する(S4)。また、標準試料が同じ元素を含む場合には、同様に中性原子線とイオン線との強度を求めてその強度比を算出し(S5、S6)、両者の強度比の差に基づいて物理干渉やイオン化干渉の影響の程度を評価する(S7)。標準試料が同じ元素を含まない場合には、記憶してある基準強度の情報を用いて強度を標準化することで比較可能にした上で強度比を求める(S9、S10)。【選択図】 図5


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特許公報(B2)_ICP発光分光分析方法及びICP発光分光分析装置

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ICP発光分光分析方法及びICP発光分光分析装置
出願番号:2005270413
年次:2010
IPC分類:G01N 21/73


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大森 敬久 JP 4600228 特許公報(B2) 20101008 2005270413 20050916 ICP発光分光分析方法及びICP発光分光分析装置 株式会社島津製作所 000001993 特許業務法人京都国際特許事務所 110001069 小林 良平 100095670 大森 敬久 20101215 G01N 21/73 20060101AFI20101125BHJP JPG01N21/73 G01N 21/62−21/74 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平11−023465(JP,A) 特開2000−119098(JP,A) 特開2000−164169(JP,A) 原口紘き,ICP発光分析の基礎と応用,日本,株式会社講談社,1994年11月 1日,第6刷 小林毅、外5名,誘導結合プラズマ発光分析法による内標準補正法を用いた重金属の分析について,札幌市衛生研修所年報,1986年 3月19日,第12号,第157頁−第160頁 舛田哲也,分光関連機器のメンテナンスと精度要因 4.誘導結合高周波プラズマ発光分析装置,分光研究,2000年 8月15日,第49巻、第4号,第206頁−第213頁 大道寺英弘,ICP発光分析における基本技術−−物理干渉と分光干渉の原因と対応−−,READOUT,日本,株式会社堀場製作所,1998年 9月 7日,No.17,第59頁−第64頁 3 2007078640 20070329 10 20071205 横尾 雅一 本発明は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析方法及びICP発光分光分析装置に関する。 ICP発光分光分析装置では、ネブライザ等により噴霧した試料液をICPトーチ中の高温の高周波プラズマ中に導入して励起発光させ、その発光光を分光器により波長分散させて検出器で検出することにより発光スペクトルを取得し、その発光スペクトルに現れているスペクトル線の波長から試料液に含まれる元素の定性分析を、スペクトル線の強度からその元素の定量分析を行う(特許文献1など参照)。 こうしたICP発光分光分析装置では、光学系の構成の相違から、大別して、モノクロメータを回転させることで異なる波長のスペクトル線を順次検出するシーケンシャル型の構成と、例えば微小受光素子を多数並べた検出器を用い、多数のスペクトル線を同時に検出するマルチチャンネル型の構成とがある。マルチチャンネル型の装置は多数のスペクトル線を短時間で取得することができるという利点があるが、その反面、波長精度が検出器の1個の受光素子のサイズ等によって決まってしまうので、シーケンシャル型に比べて波長精度を上げることが難しいという問題がある。 ところで、ICP発光分光分析において定量分析に誤差を生じる要因には様々なものが考えられるが、主要な要因として、物理干渉やイオン化干渉などがある。物理干渉は、試料に含まれる目的成分以外の他の成分の影響で溶液の粘性、揮発性等の物性が変化して試料の輸送や噴霧の状況が変化する現象である。また、イオン化干渉は主としてナトリウム(Na)やカリウム(K)など特にイオン化され易い元素が共存する場合に、そうした元素のイオン化の影響を受けて目的元素のイオン化効率が低下する現象である。 そこで、こうした干渉の影響の有無や影響の程度を適切に評価することができれば、分析により得られた定量値の信頼性を判断したり、必要に応じて定量値の補正を行ったりすることが可能である。しかしながら、様々な種類の分析対象元素について簡便に物理干渉やイオン化干渉の影響の有無や影響の程度を評価するような方法は、従来提案されていなかった。 例えば、従来、プラズマの生成に利用されるアルゴン(Ar)の発光強度をモニタする機能を備えるICP発光分光分析装置が知られており、こうした装置では、原理的には、Arの発光強度の変化により試料導入の状態変化を検知できる可能性がある。しかしながら、実際にはArの発光強度は非常に強いため、上記のような物理干渉やイオン化干渉などがあってもそれによる影響が観察できるほどの明瞭な発光強度の変化は現れない。そのため、Arの発光強度変化から物理干渉やイオン化干渉などの影響を評価するのは殆ど不可能である。 また、干渉の影響の正確な評価手法としては添加回収試験がよく知られている。添加回収試験とは、分析対象の試料とこれに既知濃度の目的成分の純品(標準試料)を一定量添加した試料とについて分析を行い、両者の分析結果を比較して、添加した量が正確に定量されるか否かを判定することで定量精度を評価する方法である。しかしながら、添加回収試験を行うには標準試料を調製する必要があり、分析対象である目的元素の全てについて標準試料を調製しなければならず、その手間は非常に面倒である。そのため、特に多元素同時分析を行うような場合には実用的でない。 さらに、定性分析の結果を表示する際に、主成分元素の濃度(半定量値)を同時に表示する機能を持つICP発光分光分析装置も知られており、これによれば、目的元素以外にどのような共存元素が含まれているのかを知ることができる。しかしながら、これで分かるのは共存元素の種類によって物理干渉やイオン化干渉が起こる可能性がありそうか否かを推定できるだけであり、干渉の影響の判定や影響の程度の評価にはあまり役に立たない。特開平10−253540号公報 本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、様々な種類の分析対象元素について簡便に物理干渉やイオン化干渉などの影響の有無や影響の程度を評価することができるICP発光分光分析装置を提供するものである。 上記課題を解決するために成された第1発明は、霧状にした試料液を高周波プラズマ中に導入することにより、試料中の成分を励起して各元素に固有の波長を有する光を放出させ、その光を分光測定して取得した発光スペクトルに基づいて前記元素の定量分析を行うICP発光分光分析方法において、 霧状にした試料液を高周波プラズマ中に導入することにより、試料中の成分を励起して各元素に固有の波長を有する光を放出させ、その光を分光測定して取得した発光スペクトルに基づいて前記元素の定量分析を行うICP発光分光分析方法において、 複数の各種元素について元素毎に中性原子線とイオン線との組み合わせとそれら輝線の基準強度情報とを記憶手段に保持しておき、 a)目的試料を測定して得られた発光スペクトルに基づく定性分析により、前記記憶手段に格納されているいずれかの元素が該目的試料に含まれていると判定された場合に、その特定元素に由来する中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めて強度比を算出する第1ステップと、 b)標準試料を測定して発光スペクトルを取得し、該標準試料に前記特定元素が含まれている場合には、その特定元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めて強度比を算出する一方、前記標準試料に前記特定元素が含まれていない場合には、その特定元素とは異なる別の元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めた上でそれら強度と前記記憶手段に格納されている基準強度情報とを用いて前記特定元素に由来する中性原子線とイオン線との強度比を推定する第2ステップと、 c)第1ステップで算出された強度比と第2ステップで算出された又は推定された強度比との相違に基づいて、目的試料の測定時における物理干渉やイオン化干渉の影響を評価するための情報を生成する第3ステップと、 を実行することを特徴としている。 また上記課題を解決するために成された第2発明は、上記第1発明に係るICP発光分光分析方法を具現化する装置であって、霧状にした試料液を高周波プラズマ中に導入することにより、試料中の成分を励起して各元素に固有の波長を有する光を放出させ、その光を分光測定して取得した発光スペクトルに基づいて前記元素の定量分析を行うICP発光分光分析装置において、 a)複数の各種元素について元素毎に中性原子線とイオン線との組み合わせとそれら輝線の基準強度情報とを保持しておく記憶手段と、 b)目的試料に対する発光スペクトルを取得し、該発光スペクトルに基づく定性分析により前記記憶手段に格納されているいずれかの元素が該目的試料に含まれていると判定された場合に、その特定元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めて強度比を算出する第1の強度比算出手段と、 c)標準試料に対する発光スペクトルを取得して、該標準試料に前記特定元素が含まれている場合には、その特定元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めて強度比を算出する一方、前記標準試料に前記特定元素が含まれていない場合には、その特定元素とは異なる別の元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めた上でそれら強度と前記記憶手段に格納されている基準強度情報とを用いて前記特定元素に由来する中性原子線とイオン線との強度比を推定する第2の強度比算出手段と、 d)前記第1の強度比算出手段で算出された強度比と前記第2の強度比算出手段で算出された又は推定された強度比との相違に基づいて、目的試料の測定時における物理干渉やイオン化干渉の影響を評価するための情報を生成する評価情報生成手段と、 を備えることを特徴としている。 ICP発光分光分析では同一元素から波長の相違する複数の発光線が出るが、アルカリ金属などの一部の元素を除けば、発光線には中性原子線とイオン線とが存在し、物理干渉やイオン化干渉の影響は中性原子線とイオン線とでは相違する。そこで、第1発明に係るICP発光分光分析方法を具現化した第2発明に係るICP発光分光分析装置では、第1の強度比算出手段は、分析対象である未知の元素を含む目的試料を測定して発光スペクトルを取得し、その発光スペクトルに現れている輝線の中で、記憶手段に格納されているいずれかの元素(特定元素)に由来する中性原子線とイオン線との強度を求めてその強度比を算出する。一方、第2の強度比算出手段は、目的試料に対するのと同様に標準試料を測定して発光スペクトルを取得し、その標準試料に上記特定元素が含まれている場合に、その特定元素に由来する中性原子線とイオン線との強度の比を算出する。 この場合、目的試料と標準試料とについて、評価に用いる特定元素と発光線の波長とは同じであるから、もし物理干渉やイオン化干渉などが無い理想的な状態であれば、両者の強度比は同じになる筈である。換言すれば、両者の強度比の差異は物理干渉やイオン化干渉などの影響の程度を反映するから、評価情報生成手段はこの差異に基づいて上記のような干渉の有無や干渉の程度を評価する情報を作成することができる。 但し、分析対象の全ての元素について標準試料を作成することは現実的ではないため、上述したように、「標準試料に前記第1の強度比算出手段により強度比を求める元となる特定元素が含まれている場合」というケースは少なく、多くの場合、標準試料に含まれる元素は目的試料に含まれている元素とは異なる。 そこで、第1発明に係るICP発光分光分析方法及び第2発明に係るICP発光分光分析装置では、前記記憶手段には、複数の元素についての中性原子線とイオン線との組み合わせとともにそれら輝線の基準強度情報を保持しておき、第2ステップを実施する第2の強度比算出手段は、前記標準試料に前記第1の強度比算出手段により強度比を求める元となる特定元素が含まれていない場合に、その特定元素とは異なる別の元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線の強度をそれぞれ発光スペクトルから求めた上でそれら強度と前記記憶手段に格納されている基準強度情報とを用いて前記特定元素に由来する中性原子線とイオン線との強度比を推定し、第3ステップを実施する前記評価情報生成手段はこの推定した強度比と前記第1の強度比算出手段で得られた強度比とを用いて、目的試料の測定時における物理干渉やイオン化干渉の影響を評価するための情報を生成する。 このため、分析対象である全ての元素について一々標準試料を作成する手間が不要になるから、物理干渉やイオン化干渉の影響の評価を簡便に行うことができる。 第1発明に係るICP発光分光分析方法及び第2発明に係るICP発光分光分析装置によれば、従来、適切に評価することができなかった物理干渉やイオン化干渉などの影響の有無や影響の程度を評価することができるので、これを利用して、例えば定量分析結果である定量値の信頼性を判断したり、或いは、定量値を適宜に補正したりすることができるようになる。また、こうした評価を行うに際して目的元素の全てについて標準試料を用意する必要はないので、標準試料作成の手間が軽減でき、簡便に評価を行うことができる。 以下、第1発明に係るICP発光分光分析方法を遂行するための第2発明に係るICP発光分光分析装置の一実施例について、図1〜図5を参照して説明する。 図1は本実施例であるICP発光分光分析装置の概略構成図である。このICP発光分光分析装置はマルチチャンネル型の装置である。 図1において、制御部21により制御されるオートサンプラ11から供給された試料溶液は、図示しないネブライザで霧化された後、発光部10に導入され高温のプラズマ炎によって励起される。これにより発生した光は集光レンズ12により集光され、スリット13を通過して回折格子14に送られる。回折格子14で波長分散された光は、例えばリニアCCDセンサ等のマルチチャンネル型検出器15でほぼ同時に検出される。具体的には、ここでは検出器15の受光面の両端部にそれぞれ到達する波長λ1、λ2の間の光をほぼ同時に検出し、各受光素子で光電変換した検出信号をデータ処理部20へと送る。したがって、波長分解能はマルチチャンネル型検出器15の受光素子数に依存する。 データ処理部20は該検出信号をデジタルデータ(スペクトルデータ)に変換し、所定のアルゴリズムに従って演算処理することにより、試料の定性分析や定量分析を実行する。上記各部の動作は制御部21により統括的に制御されており、制御部21とデータ処理部20の機能の多くは汎用のパーソナルコンピュータ22上で所定のプログラムを実行することによって達成される。また、パーソナルコンピュータ22には、操作者が分析条件等を入力するためのキーボード等から成る入力部23と、測定結果等を表示するためのディスプレイ等から成る表示部24とが接続されている。 上記構成のICP発光分光分析装置において、或る試料に対するICP分光分析が実行されると、その分析結果として、データ処理部20では例えば図2に示すようなλ1〜λ2の波長範囲の発光スペクトルが作成される。既述のようにマルチチャンネル型の本装置ではこうしたスペクトルはシーケンシャル型の装置に比べて格段に短時間で取得することができる。 本実施例のICP発光分光分析装置では、上述した定量分析の精度を信頼性を評価する1つの指標として物理干渉やイオン化干渉の影響の程度を評価する機能を有しており、そうした機能を実現するために、データ処理部20は干渉評価用データベース202とこれを用いた処理を実行する評価処理部201とを備える。 干渉評価用データベース202には、ほぼ同程度の測定感度の中性原子線とイオン線とを併せ持つ各種の元素について、中性原子線の波長とイオン線の波長との組み合わせ情報、及び、各波長毎の強度基準データが、容易に検索可能であるようにデータベース化されて格納されている。但し、ここで言う「ほぼ同程度の測定感度」とは例えば10倍程度までの差異の範囲内を同程度の測定感度とみなすものとする。 上記のような条件の元素としては、特にイオン化が容易であって中性原子線が殆ど現れないアルカリ金属類を除いて、例えば、銀(Ag)、金(Au)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、銅(Cu)、水銀(Hg)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ストロンチウム(Sr)、タリウム(Tl)、亜鉛(Zn)などが挙げられる。図3は干渉評価用データベースの内容の一例であり、(a)はAgとAuの中性原子線とイオン線の波長の組み合わせ、(b)はAgの各波長の基準強度データを示している。図3(a)では、横に並んでいる中性原子線とイオン線とが一組であるから、Agでは2組、Auでは3組の組み合わせが存在する。 次に、評価処理部201を中心に実行される干渉評価処理について、図5のフローチャートに従って動作を説明する。 まず分析者は干渉評価用データベース202に記載されているいずれかの元素を含む標準試料を用意し、これに対する分析の指示を入力部23により行う。この指示を受けた制御部21は、標準試料に対するICP発光分光分析を実行する。その結果、データ処理部20ではλ1〜λ2の波長範囲の発光スペクトルP1が取得される(ステップS1)。次に制御部21は、目的試料に対するICP発光分光分析を実行する。その結果、データ処理部20ではλ1〜λ2の波長範囲の発光スペクトルP2が取得される(ステップS2)。 次に、評価処理部201は、目的試料の発光スペクトルP2に基づいた定性分析を行い、干渉評価用データベース202に記載されているいずれかの元素が含まれているか否かを判定する(ステップS3)。目的試料が干渉評価用データベース202に記載されている複数の元素を含まない場合には、ここで行おうとしている評価はできないので(ステップS14)、そのままステップS13に進んで評価不可である旨の評価結果を表示部24に対して出力する。 目的試料が干渉評価用データベース202に記載されているいずれかの元素を含んでいる場合(ここでその元素を特定元素という)、評価処理部201は、干渉評価用データベース202に記載されているその特定元素による中性原子線とイオン線との組み合わせの波長を参照し、発光スペクトルP2上でその中性原子線及びイオン線の強度を求める。例えば図4(a)、(b)に示すように波長λaにおいて中性原子線が存在し、波長λbにおいてイオン線が存在するとき、中性原子線の強度はIn、イオン線の強度はIiになる。そして、中性原子線の強度とイオン線の強度の比T1を算出する(ステップS4)。 次いで、標準試料が上記特定元素を含んでいるか否かを判定する(ステップS5)。標準試料が上記特定元素を含んでいる場合には、標準試料と目的試料とについて、その同じ特定元素での比較を行うことが可能である。そこで、評価処理部201は、上述したように目的試料についての中性原子線とイオン線との強度比を算出した際と同じ中性原子線とイオン線との組み合わせの波長を用い、発光スペクトルP1上でその中性原子線及びイオン線の強度を求める。そして、この中性原子線の強度とイオン線の強度の比T2を算出する(ステップS6)。 物理干渉やイオン化干渉等の影響が全くない理想的な条件の下では、強度比T1とT2とは同じになる筈である。そこで、評価処理部201は強度比T1とT2との差を求め、この差に基づいて物理干渉やイオン化干渉の程度を例えば数値化して評価する(ステップS7)。但し、分析条件のばらつきなどを考慮すると、物理干渉及びイオン化干渉が全く無いとしても強度比T1とT2とは若干の差異が生じる可能性がある。したがって、こうした要素を考慮して、例えば強度比T1とT2との差が所定の許容値以内である場合には、干渉の影響度をゼロし、その許容値を超えるような差が生じた場合に、その差に応じて干渉の影響度を算出すればよい。もちろん、数値化せずに、単に、干渉の影響の有無を出力したり干渉の影響が大、中、小といった程度で以て表すようにしてもよい。そして、こうして生成した評価結果を表示部24に出力する(ステップS13)。 一方、ステップS5で、標準試料が上記特定元素を含んでいないと判定された場合には、標準試料と目的試料とについて同じ特定元素での比較を行うことができない。即ち、比較すべき元素の種類や発光線の波長が相違するので、ステップS6、S7のように単純に両者の強度比を比較することはできない。そこで、評価処理部201は、標準試料の発光スペクトルP1上で適宜の元素(これを選択元素と呼ぶこととする)に由来する中性原子線及びイオン線の強度を求めた上で、干渉評価用データベース202に記載されている基準強度データを用いて強度を標準化する。そして、中性原子線及びイオン線についての標準化された強度からその比T2’を算出する(ステップS9、S10)。 ここでの標準化の基本的な考え方は次の通りである。例えばいま、目的試料中の特定元素の中性原子線とイオン線に対する基準強度が、中性原子線:イオン線=10:1であるものとし、一方、標準試料中の選択元素の中性原子線とイオン線に対する基準強度が、中性原子線:イオン線=1:10であるものとする。この場合、目的試料中の特定元素と標準試料中の選択元素とを比較する際には、選択元素のイオン線の強度に100を乗じた(或いは中性原子線の強度を100で除した)上で、強度比を算出すればよい。 なお、上記のような基準強度を利用した標準化のためには、基準強度の正確性が高いほうが望ましい。こうした目的のために、例えば本願出願人が特願2005−142214号(平成17年5月16日出願)で提案しているような定性データベースの校正(半定量情報の補正)の手法を用いることができる。 なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜に変更や修正、追加を行っても本願発明に包含されることは当然である。例えば上記実施例ではマルチチャンネル型のICP発光分光分析装置を示したが、本発明はシーケンシャル型のICP発光分光分析装置にも適用可能である。但し、分析時間の点から前者が好ましいのは言うまでもない。本発明の一実施例であるICP発光分光分析装置の概略構成図。ICP発光分光分析装置で取得される発光スペクトルの一例を示す図。本実施例のICP発光分光分析装置における干渉評価用データベースの内容の一例を示す図。本実施例のICP発光分光分析装置における干渉評価処理の説明図。本実施例のICP発光分光分析装置における干渉評価処理の手順を示すフローチャート。符号の説明10…発光部11…オートサンプラ12…集光レンズ13…スリット14…回折格子15…マルチチャンネル型検出器20…データ処理部201…評価処理部202…干渉評価用データベース21…制御部22…パーソナルコンピュータ23…入力部24…表示部 霧状にした試料液を高周波プラズマ中に導入することにより、試料中の成分を励起して各元素に固有の波長を有する光を放出させ、その光を分光測定して取得した発光スペクトルに基づいて前記元素の定量分析を行うICP発光分光分析方法において、 複数の各種元素について元素毎に中性原子線とイオン線との組み合わせとそれら輝線の基準強度情報とを記憶手段に保持しておき、 a)目的試料を測定して得られた発光スペクトルに基づく定性分析により、前記記憶手段に格納されているいずれかの元素が該目的試料に含まれていると判定された場合に、その特定元素に由来する中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めて強度比を算出する第1ステップと、 b)標準試料を測定して発光スペクトルを取得し、該標準試料に前記特定元素が含まれている場合には、その特定元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めて強度比を算出する一方、前記標準試料に前記特定元素が含まれていない場合には、その特定元素とは異なる別の元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めた上でそれら強度と前記記憶手段に格納されている基準強度情報とを用いて前記特定元素に由来する中性原子線とイオン線との強度比を推定する第2ステップと、 c)第1ステップで算出された強度比と第2ステップで算出された又は推定された強度比との相違に基づいて、目的試料の測定時における物理干渉やイオン化干渉の影響を評価するための情報を生成する第3ステップと、 を実行することを特徴とするICP発光分光分析方法。 霧状にした試料液を高周波プラズマ中に導入することにより、試料中の成分を励起して各元素に固有の波長を有する光を放出させ、その光を分光測定して取得した発光スペクトルに基づいて前記元素の定量分析を行うICP発光分光分析装置において、 a)複数の各種元素について元素毎に中性原子線とイオン線との組み合わせとそれら輝線の基準強度情報とを保持しておく記憶手段と、 b)目的試料に対する発光スペクトルを取得し、該発光スペクトルに基づく定性分析により前記記憶手段に格納されているいずれかの元素が該目的試料に含まれていると判定された場合に、その特定元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めて強度比を算出する第1の強度比算出手段と、 c)標準試料に対する発光スペクトルを取得して、該標準試料に前記特定元素が含まれている場合には、その特定元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めて強度比を算出する一方、前記標準試料に前記特定元素が含まれていない場合には、その特定元素とは異なる別の元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を発光スペクトルから求めた上でそれら強度と前記記憶手段に格納されている基準強度情報とを用いて前記特定元素に由来する中性原子線とイオン線との強度比を推定する第2の強度比算出手段と、 d)前記第1の強度比算出手段で算出された強度比と前記第2の強度比算出手段で算出された又は推定された強度比との相違に基づいて、目的試料の測定時における物理干渉やイオン化干渉の影響を評価するための情報を生成する評価情報生成手段と、 を備えることを特徴とするICP発光分光分析装置。 前記第2の強度比算出手段は、前記記憶手段に格納されている、前記別の元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線の基準強度情報、及び、前記特定元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線の基準強度情報を用いて、発光スペクトルから求められた、前記別の元素に由来する前記組み合わせに対応した中性原子線とイオン線のそれぞれの強度を標準化し、標準化された強度に基づいて強度比を推定することを特徴とする請求項2に記載のICP発光分光分析装置。


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