タイトル: | 公開特許公報(A)_血糖値上昇抑制剤 |
出願番号: | 2005257172 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 36/18,A61P 3/10,A23L 1/30 |
西園 祥子 田中 一成 岡田 忠司 村井 弘道 JP 2007070266 公開特許公報(A) 20070322 2005257172 20050905 血糖値上昇抑制剤 オリザ油化株式会社 594045089 西園 祥子 田中 一成 岡田 忠司 村井 弘道 A61K 36/18 20060101AFI20070223BHJP A61P 3/10 20060101ALI20070223BHJP A23L 1/30 20060101ALI20070223BHJP JPA61K35/78 CA61P3/10A23L1/30 B 3 OL 9 特許法第30条第1項適用申請有り 日本農芸化学会2005年度(平成17年度)大会(主催者名;社団法人日本農芸化学会)にて平成17年3月29日に文書で発表 4B018 4C088 4B018MD52 4B018ME03 4C088AB12 4C088AC04 4C088CA03 4C088MA52 4C088ZC35 本発明は、例えば、内服薬、坐剤、及び注射剤等の医薬品、医薬部外品、並びに飲食品等に適用されるライチ種子由来の血糖値上昇抑制剤に関する。 従来用いられているものとして、ライチと同じムクロジ科植物である無患子が見られる。無患子は、果皮を石鹸の代用品として用いていた。また、ライチは中国の伝統的な官僚登用試験である状元になぞられることがあり、かつて北京では新生児に生後三日目の産湯をつかわせる際に、湯桶に産婆が乾燥させたライチ、竜眼、クルミを投げ込み、科挙の三つの試験の首席を願い、祝辞を述べるのを常とした。ライチは、楊貴妃の時代から食用として珍重されているが、種子を食用とする事はなかった。また、ライチの種子は軟膏にして皮膚病に用いる。昭和53年11月10日発行、世界果樹図鑑、農業図書株式会社発行に記載がある。特開2000−128730に保湿剤としてレイシ(ライチ)を用いる特許が見られる。 このように、皮膚外用剤や、浴用としてライチの種子を用いることは周知の事実であり、ライチの種子や果実を皮膚外用剤として用いることは、なんら新規性はない。 しかし、ライチ種子は内服薬、坐剤、注射剤等の医薬品や、食品等として利用されたことはない。本発明は、ライチの種子に血糖値上昇抑制等の極めて有用な効果を見出したものである。 即ち、本発明の血糖値上昇抑制剤は、ライチ種子又はその抽出物を含有することを特徴とする。 また、本発明の脂質代謝改善等剤は、ライチ種子又はその抽出物を含有することを特徴とする。 更に、本発明の薬品は、上記血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする。 さらに本発明の飲食品は、脂質代謝改善剤を含有することを特徴とする。 以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。 本発明の血糖値上昇抑制剤は、ライチの種子を用いる事に限定したものであり、ライチの種子を用いる方法で有れば全て効果を期待することができる。ライチ種子をそのまま用いても良いが、エキスを用いる場合、極性有機溶媒を用いる方法がより良い方法である。用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、二酸化炭素などをそのまま単一溶媒で用いるか、2種類以上を任意に混合して用いて、エキスを作成する事も出来る。 抽出溶媒として水を使用する場合には、抽出温度20〜100℃、好ましくは80〜100℃程度で行うとよい。これは、抽出温度が低すぎると、有効成分が抽出されにくいためである。抽出用の水の種類は、特に限定されず、水道水、蒸留水、ミネラル水、アルカリイオン水等を使用することができる。好ましくは、抽出溶媒として、深層水(海洋深層水)を使用するとよい。 抽出溶媒として含水エタノールを使用する場合、エタノール濃度30〜90%(容量比)であることが好ましい。30%(容量比)程度よりも少ないか、90%(容量比)を超えると、有効成分の抽出量が低下しやすくなるからである。また、抽出温度は、20〜80℃、好ましくは50〜80℃程度で行うとよい。なお、含水エタノール抽出は、有効成分の含有率を向上させるため、種々の濃度で繰り返すとよい。 本発明の血糖値上昇抑制剤の抽出方法としては、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出、超臨界抽出など任意の方法を採用することができ、室温ないし還流加熱下において任意の装置を使用することができる。 具体的な方法としては、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料を投入し、攪拌しながら有効成分を溶出させる。例えば、抽出溶媒として水または含水エタノールを用いる場合には、抽出原料の5〜100倍量程度(重量比)の極性溶媒を使用し、30分〜5時間程度抽出を行う。溶媒中に有効成分を溶出させた後、ろ過して抽出残渣を除くことによって、抽出液を得る。その後、常法に従って抽出液に希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施し、血糖値上昇抑制剤とする。 なお、精製方法としては、例えば、活性炭処理、樹脂吸着処理、イオン交換樹脂、液−液向流分配等の方法が挙げられるが、食品等に添加する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままで使用してもよい。 また、本発明の血糖値上昇抑制剤は、飲食品に含有させることができる。例えば、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック菓子、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)をはじめとする一般食品や健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)などが上げられる。インスタント食品に本発明の血糖値上昇抑制剤を添加しても良い。例えば、血糖値上昇抑制剤を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥したものを、粉末、顆粒、打錠または溶液にすることで容易に飲食品に含有させることができる。 本発明の血糖値上昇抑制剤は、経口投与で用いる医薬品(薬事法上の医薬品および医薬部外品を含む。)に含有させることができる。例えば、軟・硬カプセル剤または錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤等の製品形態にすることができる。 また、本発明の血糖値上昇抑制剤を非経口投与してもよい。非経口剤として投与する場合、溶液の状態、または分散剤、懸濁剤、安定剤などを添加した状態で、注射剤、坐剤などの形態とすることができる。[ライチ種子エキスの製造] 原料には、ライチ種子を、乾燥、粉砕して使用した。まず、ライチ種子を、60%(v/v)含水エタノールで還流し、含水エタノール抽出液を得た。このとき、還流温度は75〜85℃とし、還流時間は4時間とした。その後、この濃縮液の固形分と同量のデキストリンを加え、乾燥粉末とし、ライチ種子エキス(実施例)を得た。 製造されたライチ種子エキスの機能性を検討するために以下の動物実験を行った。 製造されたライチ種子エキスを含む飼料をラットに摂取させた。比較として、ライチ種子エキスを含まない飼料をラットに摂取させた。 一ヶ月齢の2型糖尿病を遺伝的に自然発症する雄性のOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty ラット(以下OLETFラットという)と、その対照モデル動物で糖尿病を発症しない雄性のLong-Evans Tokushima Otsukaラット(以下LETOラットという)を用いた。ラットは、室温22±1℃、室温55±5%、8:00〜20:00点灯のライトサイクルの動物飼育室で飼育した。 最初の3ヶ月間はLETOおよびOLETFラットにMF固形飼料を与えて予備飼育を行った。OLETFラットは通常5ヶ月齢から8ヶ月齢までに2型糖尿病を発症することから、発症の可能性のある1ヶ月前の4ヶ月齢からLETOラットと共に試験食の摂食を開始した。 4ヶ月齢の時に6時間絶食(9:00〜15:00)後、尾静脈より採血して血糖値を測定し、体重と血糖値が等しくなるように1群6匹ずつに群分けし、以下の試験食を5ヶ月間自由摂食させた。 試験食は、AIN-76に基づいた純化食をコントロール食とし、LETOラットとOLETFラットのコントロール群に摂食させた。飼料の重量組成(g/kg)は、カゼイン200、コーン油100、ミネラル混合(AIN-76-MX)35、ビタミン混合(AIN-76-VX)10、セルロース50、重酒石酸コリン2、DL-メチオニン3、コーンスターチ150およびショ糖450とした。ライチ種子エキス添加食には、ライチ種子エキスを飼料総重量の5%添加し、その添加量分のショ糖量を減じた。飼育期間中、摂食量は毎日、体重および摂水量は1日おきに測定した。 試験食投与開始1、2、3、4および5ヶ月後に、血糖試験測定メディセーフチップ(テルモ、東京)を用い、6時間絶食後尾静脈より採血して血糖値を測定した。試験食を摂取した5ヶ月間のラット血糖値の変化を図1に示す。 図1に示すように、コントロール食を摂取した糖尿病を発症しないLETOラットの血糖値は、飼育期間を通じて低値であった。一方、コントロール食を摂取した糖尿病を発症するOLETFラットの血糖値は、経時的に上昇し、糖尿病を発症したとみなされた。ライチ種子エキスを摂取したOLETFラットの血糖値は飼育期間中あまり上昇せず、コントロール食を摂取したOLETFラットより著しく低い値で推移した。このことから、ライチ種子エキスは優れた血糖上昇抑制効果を有することが明らかとなった。 コントロール食摂取OLETFラットの5ヶ月後の血清インスリン濃度は糖尿病発症により低下したが、ライチ種子エキス摂取OLETFラットのインスリン濃度はLETOラットと同レベルの高い値を示した。結果を表1に示す。ライチ種子エキスは糖尿病発症による膵臓ランゲルハンス島β細胞の機能傷害を阻害することで、インスリン分泌低下を抑制することが観察された。 コントロール食を摂取したOLETFラットの血清および肝臓中性脂肪濃度はLETOラットに対して著しく上昇したが、ライチ種子エキスはOLETFラットの血清および肝臓中性脂肪濃度を効果的に減少させた。結果を表2に示す。 ライチ種子エキスは、血清および肝臓コレステロール濃度を低下させた。結果を表3に示す。 以下、本発明の血糖値上昇抑制剤(ライチ種子エキス)の配合例の例を挙げる。但し、下記配合例は、本発明の発明を限定するものではなく、血糖値上昇抑制の効果があれば、下記配合例に限定されないのは勿論である。配合例1:チューインガム 砂糖 53.0重量% ガムベース 20.0 グルコース 10.0 水飴 16.0 香料 0.5 ライチ種子エキス 0.5 100.0重量% 配合例2:グミ 還元水飴 40.0重量% グラニュー糖 20.0 ブドウ糖 20.0 ゼラチン 4.7 水 9.68 ウメ果汁 4.0 ウメフレーバー 0.6 色素 0.02 ライチ種子エキス 1.0 100.0重量% 配合例3:キャンディー 砂糖 50.0重量% 水飴 33.0 水 14.4 有機酸 2.0 香料 0.2 ライチ種子エキス 0.4 100.0重量% 配合例4:ヨーグルト(ハード・ソフト) 牛乳 41.5重量% 脱脂粉乳 5.8 砂糖 8.0 寒天 0.15 ゼラチン 0.1 乳酸菌 0.005 ライチ種子エキス 0.4 香料 微量 水 残余 100.0重量% 配合例5:ソフトカプセル 玄米胚芽油 87.0重量% 乳化剤 12.0 ライチ種子エキス 1.0 100.0重量% 配合例6:コーヒー飲料(液状) 焙煎コーヒー豆 6.0重量% 砂糖 6.0 重曹 0.2 乳化剤 0.15 ライチ種子エキス 1.0 水 残余 100.0重量% 配合例7:コーヒー飲料(粉末) インスタントコーヒー 90.0重量% 脱脂乳 7.0 ライチ種子エキス 3.0 100.0重量% 配合例8:清涼飲料 果糖ブドウ糖液糖 30.0重量% 乳化剤 0.5 ライチ種子エキス 0.05 香料 適量 精製水 残余 100.0重量% 配合例9:錠剤 乳糖 54.0重量% 結晶セルロース 30.0 澱粉分解物 10.0 グリセリン脂肪酸エステル 5.0 ライチ種子エキス 1.0 100.0重量% 配合例10:錠菓 砂糖 76.4重量% グルコース 19.0 ショ糖脂肪酸エステル 0.2 ライチ種子エキス 0.5 精製水 3.9 100.0重量% 以上により、ライチ種子エキスは、糖尿病予防や改善、脂質代謝改善に効果を発揮する可能性を有する健康食品や医薬品として十分利用できるものである。本実施例において、試験食を摂取した5ヶ月間のラット血糖値の変化を示すグラフである。 ライチ種子又はその抽出物を含有することを特徴とする血糖値上昇抑制剤。 請求項1に記載の血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする医薬品。 請求項1に記載の血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする飲食品。 【課題】内服薬、坐剤、点滴薬等の医薬品や、食品等として利用可能な血糖値上昇抑制剤を提供すること。【解決手段】 本発明の血糖値上昇抑制剤は、ライチ種子又はその抽出物を含有することを特徴とする。また、本発明の内服薬は、上記血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする。更に、本発明の飲食品は、上記血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする。【選択図】 なし