タイトル: | 公開特許公報(A)_微細藻類による水素製造方法 |
出願番号: | 2005256828 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12P 3/00 |
近藤 裕 山内 一郎 JP 2007068434 公開特許公報(A) 20070322 2005256828 20050905 微細藻類による水素製造方法 ヤマハ発動機株式会社 000010076 三好 秀和 100083806 岩▲崎▼ 幸邦 100100712 川又 澄雄 100100929 伊藤 正和 100095500 高橋 俊一 100101247 高松 俊雄 100098327 近藤 裕 山内 一郎 C12P 3/00 20060101AFI20070223BHJP JPC12P3/00 Z 2 OL 6 4B064 4B064AA03 4B064CA08 4B064CB30 本発明は、微細藻類による水素製造方法に関する。 温室効果ガスとしての炭酸ガスの発生がエネルギ問題の1つとして問題視されている。水素は、この点、燃焼によって炭酸ガスを発生させないクリーンなエネルギであるので、効率的に水素生成が行える技術が模索されている。 物理化学的に水素を製造する技術では、目的物質である水素の生成のために大量のエネルギを消費し、また環境問題を引き起こす物質をそのエネルギ消費の過程で生成してしまうので、環境保護の観点からみれば好ましい製造技術ということはできない。 そこで近年、環境にやさしい水素製造方法として、微細藻類や光合成細菌を用いて水素を製造するバイオテクノロジーが注目されている。 水素を発生する微生物は、微細藻類と光合成細菌に分類される。現在まで知られている微細藻類による水素発生方法は、光のない暗黒条件で酸素や窒素のない状態でその微細藻類を培養することにより水素を発生させる方法である。一方、光合成細菌は、光照射下の嫌気的条件で糖類を分解して有機酸を生成して水素を発生する特性を有している。特許第2729882号公報特開平6−116159号公報特開平8−294396号公報竹中裕行著、「小さな生命(いのち)の大きな仕事―地球最古の微生物「マイクロアルジェ」が人と地球を救う」、史輝出版、ISBN:4915731766、1996年4月15日「海洋性微細藻類の光合成による炭酸ガスの固定および水素生産」、宮本他、化学工学第55巻第9号、53頁、1991年「炭酸ガス固定用の水素製造技術の研究―太陽電池を用いた水の電気分解および微細藻類による水素製造」、環境技術センター、R&D News Kansai、Vol.295、24頁、1992年 しかしながら、報告されている微細藻類による水素製造方法は、光のない暗黒条件で酸素や窒素のない状態での培養によるものであり、可視光照射下、酸素や窒素の存在する、いわば天然環境下での培養により水素を発生する微細藻類としては、アナベナ(Anabena.sp)しか知られていない。また報告されている光合成細菌は、光照射下の嫌気的条件で水素を発生させるものであり、光照射下の酸素や窒素の存在する条件で水素を発生させる光合成細菌についての報告は見られない。 本願発明者らは、適切な培地に微細藻類である藍藻のノストック・コミューンを接種し、酸素と窒素のある条件で光照射しながら培養することによってノストック・コミューンが水素を発生することを発見した。 本発明はこの発見に基づくものであって、自然環境と同等の環境条件下で効率的に水素製造ができる微細藻類による水素製造方法を提供することを目的とする。 請求項1の発明の微細藻類による水素製造方法は、培養容器内に適切な組成の培養液を収容し、前記培養液中に藍藻類ノストック・コミューン(Nostoc commune)を接種し、光照射下の好気的環境で培養し、前記培養容器内の気中から水素を採集するものである。 請求項2の発明は、請求項1の微細藻類による水素製造方法において、前記培養液は、N2 以外の窒素源を除いた培地であることを特徴とするものである。 本発明によれば、微細藻類であるノストック・コミューンを所定の条件下で培養することによって水素を製造することができる。 以下、本発明の実施の形態について詳説する。藍藻類のノストック・コミューン(Nostoc commune)は数ミクロンの丸形の細胞が長鎖型につながった多細胞の藻類である。このノストック・コミューンは成長すると、直径20mm程度の球状になる。水素製造には、このように球状にまで成長したノストック・コミューンを用いる。 培養液には、N2 以外の窒素源を除いたものを用いる。そして炭素源として、この培養液に炭酸水素ナトリウムNaHCO3 を添加する。この炭酸水素ナトリウムの添加の代わりに、培養液中に炭酸ガスを通気して炭素源とすることができる。 まず、培養液そのものの組成の一例を表1に示す。 表1中のA−5溶液は、表2に示す組成である。 本発明では、この培養液の組成からN2 以外の窒素源を除いた培養液を培地として、ノストック・コミューンを培養する。 可視光照射下の酸素、窒素の存在する条件での大規模培養には、例えば、本願発明者らの発明に係る特許出願2001−166956号に開示した微細藻類培養装置を使用することができる。発生した水素の採集は、水上置換法による。 ノストック・コミューンによる水素製造の有効性を検証するために、次の諸成分比の培養液を用いてノストック・コミューンの培養を行い、また種々の藻類の培養も行った。 (実施例1)ノストック・コミューン(Nostoc commune, IRRI BGA Culture Collection NS 21 Ph)を表1に示す組成の培地で培養し、直径が20mmほどの球状にまで成長させた。 次に、成長したノストック・コミューンを培養液から分離し、N2 以外の窒素源を除いた培養液の培地に接種し、培養した。培養液1リットル中に100gウェットな状態の20mm程度の球状になったノストック・コミューンを接種する割合にした。 培養条件は、上記の割合でノストック・コミューンの接種された培養液を1500ml容積のポリオびんに入れ、25℃、蛍光灯200μE/m2 /sの光照射条件下で培養した。炭素源として、炭酸水素ナトリウムNaHCO3 を培養液中に添加した。発生する気体は水上置換で回収した。 ポリオびん内の気中の水素濃度を測定するために、ポリオびん内の気層の気体を一定時間毎にガスクロマトグラフィによって定量した。 (実施例2)実施例1の組成の培養液から、硫酸塩を塩化物に代えた培養液を培地とし、実施例1と同じ条件でノストック・コミューンを培養した。 (実施例3)実施例1の組成の培養液から、硫酸塩を塩化物に代え、かつ、リンP成分を除いた培養液を培地とし、実施例1と同じ条件でノストック・コミューンを培養した。 (比較例1〜5)任意の組成の培地に、クラミドモナス・ラインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)、クロロコッカム・リトラーレ(Chlorococcum littorale)、ヘマトコッカス(Haematococcus)、シスココッカス(Synechococcus)、クロレラ・レギュラリス(Chlorella reglaris)それぞれを接種し、実施例1と同じ条件で培養した。 これらの実施例1〜3の培養試験結果は、次表3の通りであり、光合成により酸素と共に水素が発生していることが確認された。とりわけ、P有りS有りの培地、つまり通常の培養液からN2 以外の窒素源を除いた組成の培地による培養で最も水素収量が大きかった。 また比較例1〜5については、水素の発生が検出されなかった。 以上より、ノストック・コミューンについては、光照射下の酸素、窒素の存在する条件、つまり通常の天然環境条件のもとで、培地成分の調製によって水素を効果的に発生させ、採集できることが確証された。 培養容器内に適切な組成の培養液を収容し、 前記培養液中に藍藻類ノストック・コミューン(Nostoc commune)を接種し、光照射下の好気的環境で培養し、 前記培養容器内の気中から水素を採集する微細藻類による水素製造方法。 前記培養液は、N2 以外の窒素源を除いた培地であることを特徴とする請求項1に記載の微細藻類による水素製造方法。 【課題】 微細藻類の培養により自然環境と同等の環境条件下で水素製造する。 【解決手段】 培養容器内に適切な組成の培養液を収容し、培養液中に藍藻類ノストック・コミューン(Nostoc commune)を接種し、光照射下の好気的環境で培養し、培養容器内の気中から水素を採集する。培養液は、N2 以外の窒素源を除いた培地を用いる。 【選択図】 なし