タイトル: | 公開特許公報(A)_樹脂組成物中の微量添加物の分析方法および樹脂組成物の寿命分析方法 |
出願番号: | 2005246691 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 21/35,G01N 33/44 |
飯田 益大 大浜 理 宮武 健一郎 JP 2007057506 公開特許公報(A) 20070308 2005246691 20050826 樹脂組成物中の微量添加物の分析方法および樹脂組成物の寿命分析方法 住友電気工業株式会社 000002130 山野 宏 100100147 飯田 益大 大浜 理 宮武 健一郎 G01N 21/35 20060101AFI20070209BHJP G01N 33/44 20060101ALI20070209BHJP JPG01N21/35 ZG01N33/44 5 OL 11 2G059 2G059AA01 2G059AA03 2G059BB10 2G059BB15 2G059CC12 2G059DD01 2G059EE01 2G059EE02 2G059EE12 2G059HH01 2G059MM01 2G059MM02 2G059MM12 2G059MM17 本発明は、樹脂組成物中に含まれる微量添加物の定性分析および定量分析を行うための分析方法に関する。さらに、本発明は、この定性・定量分析方法で定量された微量添加物である酸化防止剤の含有量に基づいて樹脂組成物の寿命を分析する方法に関する。 樹脂やゴム製品中には、一般に添加剤が配合されており、この添加剤は、各製品の用途に応じた性能を発揮させる上で重要な役割を果たす。そして、添加剤の種類は多岐にわたるため、樹脂やゴム製品中の添加剤を分析することは製品の性能を確認するために非常に重要となる。 さらに、添加剤の含有量は製品性能に大きな影響を及ぼす。例えば、酸化防止剤は耐熱寿命に影響を及ぼし、難燃剤は難燃性に影響を及ぼす。しかし、樹脂やゴム製品中の添加剤の含有量にばらつきが生じた場合には、初期性能品質、特に、樹脂寿命にばらつきが生ずることになる。このような、品質にばらつきが生じないようにするためには、製品中に配合されている添加剤を定性分析するとともに定量分析して、品質管理を行う必要がある。 一般的な添加物分析法としては、液体クロマトグラフ分析装置(LC)やガスクロマトグラフ分析装置(GC)で測定する方法がある。 しかしながら、クロマトグラフによる分析方法は、樹脂から溶剤を用いて添加物成分を分離抽出しなければならない。この分離抽出作業は、長時間を要する上に、多量の溶剤が必要となり、さらに安全性を考慮して、溶剤が使用できる環境も必要となる。 また、クロマトグラフ分析装置は操作が困難であり、装置のメンテナンスや維持管理に手間や熟練の技能も要する。しかも、装置の設置場所が化学実験室などに限られ、工場の生産ライン近くに設置できず、生産する際の品質管理に即座に対応できないという不具合もある。 また、樹脂やゴム製品の寿命の評価は、例えば、製品について、疲れ試験、熱的試験、耐候性試験等、使用環境を想定した試験方法で試験を行って寿命の予測を行って評価することができる。しかし、このような寿命評価方法は、多大な測定時間を要するため、生産ラインで行うことができない。 また、樹脂やゴム製品の寿命は、酸化防止剤の含有量に直結するので、酸化防止剤の含有量を測定することで寿命を概ね把握できる。そこで、試験試料を窒素雰囲気中で所定の温度まで昇温し、10分間保持した後、酸素雰囲気に切り替えて、試験材料が発熱反応を開始するまでの誘導時間を測定し、この測定時間を酸化誘導期として求める方法が提案されている(非特許文献1)。非特許文献1の方法では、酸化誘導期を求めることにより、樹脂材料の寿命と酸化防止剤の含有量を概ね把握し、この測定結果をもとに、製造される製品に要求される酸化劣化特性に応じて酸化防止剤の適切な配合処方を決定できる。 また、樹脂やゴム製品中に含まれる添加物の定性・定量分析を行う方法としては、特許文献1に記載された分析方法も提案されている。 特許文献1に開示される分析方法は、樹脂組成物中に含まれる添加物の違いによって光の吸収率や反射率が異なる波長を含む近赤外線を用いて、樹脂組成物に対して近赤外線スペクトルの測定を行う。このスペクトルの測定により、添加物の違いに関する情報を含む近赤外線スペクトルデータを得て、この近赤外線スペクトルのデータに対して、コンピュータを用いたデータ解析が容易なケモメトリックスにおけるデータ解析手法を適用する。このデータ解析により、近赤外線スペクトルのデータから樹脂組成物中に含まれる添加物の違いに関する情報が抽出され、このデータ解析手法で取得された情報に基づいて、樹脂組成物中に含まれる添加物の種類と添加量を分析する。隅田憲武、福嶋容子著「ポリプロピレンサイクル材料の余寿命評価と品質管理」マテリアル学会誌2003年7月号Vol.15 P93〜97特開2004−53440公報 非特許文献1に記載されている酸化誘導期の測定を行うためには、測定時間として30分間から120分は必要となる。従って、生産ラインで寿命評価をする際には、さらに短時間で評価を行うことが要求されるので、酸化誘導期の測定による寿命評価によっても、生産ライン中で行う場合には適さない。 また、特許文献1については、近赤外線スペクトルにより定性・定量分析を行っている。ここで、近赤外線領域での分光分析は、分子の倍音振動および結合振動による吸収で分析するため、吸収バンド幅が広く、他成分の吸収バンドと重畳してしまう。そのため、近赤外線スペクトルは、多種類の樹脂や添加物を配合している材料系では、各成分のピークが重畳し、定性、定量分析ができなくなる。特に、添加物が微量である場合には、その添加物の定量は非常に困難となる。従って、スペクトルを測定しただけでは、ポリ塩化ビニル樹脂など、配合が単純な系でしか分析ができないという不具合がある。 そこで、特許文献1では、各成分の単独ピークを得るために、ケモメトリックスにおけるデータ解析手法を適用しているが、このようなデータ解析を行っても、スペクトル的に類似化合物が存在したり、微量に添加されている添加物については、データ解析の精度が著しく低下してしまう。その結果、樹脂組成物中の微量添加物を迅速かつ高精度に定性分析や定量分析することが困難となり、10重量%未満の微量な添加物定量を高精度に行うことができないし、添加物の種類が増えれば増えるほど定性・定量分析が困難となる。 ところで、近赤外線領域での分光分析に対し、中赤外線領域での分光分析は、分子間の基本振動(官能基の伸縮振動)を吸収してスペクトルが得られるので、官能基の振動が特異的に現れる。また近赤外線スペクトルとは異なり、中赤外線スペクトルでは、構造的に極めて類似した構造同士でも、そのスペクトルは全く一致する事がないので、官能基の種類を見分けるだけでなく、それらが置かれている環境についての情報も得ることができる。 また、中赤外線スペクトルは、近赤外線スペクトルに比べて大きな吸収特性を有する。通常、中赤外線スペクトルによる分光分析を行うには、吸収強度が強いことから、例えば透過法による分析を行う場合には、試料の厚みを0.05mm以下にしなければ樹脂組成物全体の定性・定量分析が行えない。即ち、従来から行われている中赤外線領域におけるスペクトルの測定は、樹脂組成物全体の定性・定量分析を行うことを目的としてなされている。 このように、従来から行われている中赤外線領域におけるスペクトルの測定は、樹脂組成物全体の定性・定量分析を行うため、樹脂組成物中に微量に添加剤が添加されている場合には、この添加剤のピークが現れにくくなる。従って、中赤外線領域におけるスペクトルの測定では、樹脂組成物中に微量に添加される添加物の定性・定量分析を高精度で、しかも、迅速に行うことはできなかった。 本発明は、このような上記課題を解決するために成したものであり、樹脂組成物中に微量に添加される添加物の定性・定量分析を高精度で、しかも、短時間で行うことができる分析方法を提供することを目的とする。 本発明は、中赤外線スペクトルの特性を利用し、樹脂組成物中の主成分樹脂の分析を行うのではなく、積極的に樹脂組成物中に微量に添加される添加物の定性・定量分析を行えるように中赤外線スペクトルの測定を行うことにより、上記目的を達成する。 本発明の樹脂組成物中の微量添加物の分析方法は、分析対象となる樹脂組成物に対して、樹脂組成物中の微量添加物に対してピークが出るように、中赤外線領域(25μm〜2500nm)におけるスペクトルを測定し、この中赤外線スペクトルのデータに基づいて、樹脂組成物中の微量添加物の定性分析および定量分析を行うことを特徴とする。 本発明の分析方法は、主成分樹脂について吸収強度が強すぎてスペクトル測定により分析できない場合が生じるぐらい、樹脂組成物の中赤外線の吸収量が多くなるようにスペクトル測定を行う。このようにスペクトル測定を行うことにより、樹脂組成物中の微量に添加されている添加物に対して、対象ピークの強度を十分に確保することができ、微量添加物の定性分析だけでなく、微量添加物の定量分析も可能となる。 本発明では、全反射(ATR)測定法、拡散反射法(粉体試料をKBrやKClの粉末に希釈する)、光音響(PAS)測定法、透過法、反射率測定(正反射及び高感度反射法)などの分光分析法でスペクトルを測定することができる。本発明は、特に、透過法による測定が、高精度の定性・定量分析を行う上で好ましい。 そして、本発明の分析方法では、中赤外線スペクトルの測定を行う測定対象物は、樹脂組成物を0.05mm超3.0mm以下の厚みを有するシート状に形成したものとすることが好ましい。樹脂組成物をシート状に形成する場合には、プレスしてシート状にすると、樹脂組成物を緻密な状態にでき、さらに、高精度な分析が可能となる。 樹脂組成物の厚みを0.05mm以下とする場合には、微量添加物について十分な吸収ピーク強度が得られず、微量添加物の定性・定量分析、特に定量分析が確実に行えない。また、樹脂組成物の厚みを3.0mm超とすると、微量添加物に対しても吸収が強過ぎてしまい、適性な定性・定量分析が行えなくなる。そして、測定対象となる樹脂組成物を上記厚みとすることにより、微量添加物の十分な吸収ピーク強度が得られて、微量添加物の定性・定量分析を確実に行うことができる。樹脂組成物のシートの厚みは、0.1mm以上1.0mm以下とすることがさらに好ましい。 特に、樹脂組成物の中赤外線スペクトルの測定を上記厚みの範囲(0.05mm超3.0mm以下)で透過法により行う場合には、微量添加物の添加量が1重量%以下であっても、高精度で定性・定量分析ができるし、例えば、10種類の添加物が添加されていても高精度で定性・定量分析ができる。 また、中赤外線スペクトルの測定を、全反射測定法(ATR法)により行う場合でも、微量添加物の添加量が3重量%程度の添加量ならば、高精度で定性・定量分析ができる。 なお、微量添加物の定性・定量分析を行うために、本発明では、所定の添加物が所定量添加された樹脂組成物について、予め中赤外線スペクトルの測定を行い、スペクトルデータから定量対象(微量添加物)のピークを選定して、添加物含有量とピーク強度との関係を示す検量線を作成しておく。そして、この検量線に基づいて微量添加物の定性分析および定量分析を行う。 また、本発明の分析方法は、樹脂組成物に対して、中赤外線スペクトルの測定を行った後、中赤外線スペクトルのデータに対して、微分処理を実施した後、多変量解析によるデータ処理を行うことが好ましい。微分処理を実施することにより、ベースライン変動の除去および重なり合った複数のピークの分離を行う。そして、多変量解析によるデータ処理を行って、樹脂組成物中の微量添加物についてピーク強度を求める。 多変量解析によるデータ処理を行うためのデータ解析法としては、主成分分析法、主成分回帰法(PCR法(Principal component regression))、部分最小二乗法(PLS分析法(Partial Least Squares))、階層的クラスター分析法、SIMCA法、Simple Beer’s law、SMLR(Stepwise multiple linear regression)、CLS法(Classical leastsquares)などが挙げられ、何れのデータ解析法においても本発明は適用可能である。特に、好ましいデータ解析法は、PLS法である。 なお、本発明の分析方法は、一つのピークのみを定量対象にするのではなく、必要な波長範囲の全ての波長を使用して計算する多変量解析を行い、検量線に基づき定量値を算出することにより、複数の種類の微量添加物に対しても定性・定量分析が可能となる。 このように、中赤外線スペクトルのデータに対して、微分処理と多変量解析によるデータ処理を行うことにより、微量添加物について、さらに高精度な定性・定量分析が可能となる。 特に、前記した微分処理と多変量解析によるデータ処理を行うためには、透過法で、赤外吸収スペクトルを測定することが好ましい。この場合、得られたスペクトルデータに対して微分処理を行い、この微分処理が成されたデータに対して、多変量解析によるデータ処理を行い、検量線に基づいて添加剤の定量値を算出する。 ところで、耐久性が要求される樹脂組成物中には、通常、酸化防止剤が添加されている。そして、樹脂組成物の主成分が非架橋型難燃性樹脂組成物であるときには、耐久性を持たせるために、酸化防止剤(微量添加物)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤またはイオウ系酸化防止剤の少なくとも一つを添加させている。このように微量の酸化防止剤が添加されている樹脂組成物に対して、本発明の樹脂組成物中の微量添加物の分析方法を用いることにより、添加されている酸化防止剤の定量分析を行って、寿命の評価を短時間で行うことができる。 本発明の樹脂組成物中の微量添加物の分析方法は、樹脂組成物の主成分について中赤外線スペクトルの測定を行うのではなく、樹脂組成物中に微量に添加されている添加物の中赤外線スペクトルの測定を積極的に行って、微量添加物について十分な吸収ピークを得るようにしている。本発明は、このようにして微量添加物について確実に吸収ピークが得られるので、吸収ピークのデータに基づいて、各微量添加物の定性分析と定量分析を高精度で、かつ短時間で行うことができる。 さらに、中赤外線スペクトルのデータにより、官能基の種類を見分けて添加物の定性と添加量を定量するだけでなく、添加剤の作用機構を知ることができ、樹脂組成物の構造変化(反応生成物の有無および生成量)も解析することができるので、温度や圧力などの製造条件の最適化も図れる。 このように、本発明の分析方法は、中赤外線領域における分光分析なので、樹脂組成物中から添加物を分離抽出せずとも定性・定量分析ができ、しかも、測定時間も数分で済み、測定を容易に行うことができるので、工場内の製造ラインでの品質管理分析を行う場合に適している。 本発明の分析方法は、樹脂組成物中の添加物配合量の管理分析に適用することができるので、樹脂組成物全体の品質管理を行うことができるようになる。 特に、添加物が酸化防止剤の場合には、この酸化防止剤が樹脂材料の寿命に直結するので、酸化防止剤の含有量を定量することにより、この含有量から樹脂組成物の寿命評価、寿命管理の分析を行うことができる。 以下、本発明の樹脂組成物中の微量添加物の分析方法に係る実施例について説明する。本発明の分析方法は、微量添加物の分析が行われる測定対象の樹脂組成物が、プロピレン単量体の含有率が50重量%以上となるプロピレン系樹脂を主成分とする非架橋型難燃性樹脂をベース樹脂とし、微量添加物として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、イオウ系酸化防止剤とが添加されたものについて、微量添加剤を定性・定量する場合に好適である。 本実施例では、ベース樹脂が、プロピレン単量体の含有率が100重量%のポリプロピレン樹脂である樹脂組成物を用いた。 そして、本例の樹脂組成物は、このポリプロピレン樹脂100重量部に対して、水酸化マグネシウム(金属水和物)を70重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3重量部、イオウ系酸化防止剤(イミダゾール系化合物のもの)を5重量部と、酸化亜鉛(金属酸化物)を5重量部を配合したものを用いた。 さらに、この樹脂組成物を、厚み1.0mmのプレスシートに成形して、このプレスシートに対して、中赤外線領域(波長が2.5〜25μm)でのスペクトル測定と近赤外線領域(波長が1.0〜2.5μm)でのスペクトル測定を行った。 さらに、中赤外線領域でのスペクトル測定は、ATR法と透過法とを行い、近赤外線領域でのスペクトル測定は、透過法で行った。 得られたスペクトルデータを図1から図3に示す。図1は、中赤外線領域でのスペクトルデータで透過法によるものであり、図2は、中赤外線領域でのスペクトルデータでATR法によるものであり、図3は、近赤外線領域でのスペクトルデータで透過法によるものである。 図1に示すように、透過法による中赤外線領域のスペクトルデータでは、各ピークが最も大きく顕著に現れ、微量添加剤の定性・定量分析が行えた。そして、図2に示すように、ATR法による中赤外線領域のスペクトルデータにおいては、ピーク強度は透過法に比べて小さいが、図1のピークと同じ箇所にピーク強度が現れているので、同じく微量添加剤の定性・定量分析が行えた。しかし、図3に示す近赤外線領域でのスペクトルデータでは、ピークのバンド幅が広いために、ピークが連続的に重畳し、微量添加物の定性・定量が行えなかった。 さらに、図1に示す透過法による中赤外線領域のスペクトルデータに対して、一次微分処理を行うことにより、図4に示すデータが得られた。この一次微分処理により、ベースラインの変動を除去して、部分的に重畳しているピークを分離でき、定性・定量分析の性能をさらに向上できた。 本実施例は、ベース樹脂がプロピレン単量体の含有率が100重量%のポリプロピレン樹脂である樹脂組成物を用い、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、水酸化マグネシウム(金属水和物)を70重量部、酸化亜鉛(金属酸化物)を5重量部を配合し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤(イミダゾール系化合物のもの)の添加量を変動させてみた。 樹脂組成物は、実施例1と同様に、厚み1.0mmのプレスシートに成形し、実施例1と同じ方法でスペクトルの測定を行った。なお、各スペクトルデータに対しては、一次微分処理と、多変量解析によるデータ処理を行っている。多変量解析によるデータ処理は、ThermoElectron 社製の多変量解析ソフト(商品名:TQ Analyst)を用いて、PLS法によりデータ解析を行った。その結果を、表1に示す。 表1からも解るように、透過法による中赤外線領域のスペクトルデータでは、添加剤の添加量が1重量%以下であっても、添加物の定性・定量分析が確実に行えた。また、ATR法による中赤外線領域のスペクトルデータにおいては、添加剤の添加量が1重量%以下では、定性・定量ができなかったが、それより多ければ定性・定量分析が確実に行えた。しかし、近赤外線領域でのスペクトルデータでは、添加剤の添加量が10重量%を超えなければ定性・定量分析ができなかった。このように、近赤外線領域でのスペクトル測定では、微量な添加物の定性・定量分析が行えないことが判る。 本実施例は、ベース樹脂がプロピレン単量体の含有率が100重量%のポリプロピレン樹脂である樹脂組成物を用い、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、添加剤の種類を変動させたときに、添加剤の定性・定量が行えるか否かを測定してみた。なお、添加剤は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して3重量部となるように添加した。 樹脂組成物は、実施例1と同様に、厚み1.0mmのプレスシートに形成し、中赤外線領域(波長が2.5〜25μm)でのスペクトル測定と近赤外線領域(波長が1.0〜2.5μm)でのスペクトル測定を透過法によって行った。なお、各スペクトルデータに対しては、微分処理と、多変量解析によるデータ処理を行っている。多変量解析によるデータ処理は、ThermoElectron 社製の多変量解析ソフト(商品名:TQ Analyst)を用いて、PLS法によりデータ解析を行った。その結果を、表2に示す。 表2からも解るように、中赤外線領域のスペクトルデータでは、10種類の添加剤を配合しても、定性・定量分析が可能であり、10種以下であれば、確実に定性・定量が行えた。しかし、近赤外線領域でのスペクトルデータでは、添加剤が1種類であれば、定性・定量分析が可能であったが、添加剤が2〜3種になると確実な定性分析が行えず、それ以上になると全く定性分析できなかった。 以上の測定結果から、本発明の分析方法によれば、樹脂組成物中にヒンダードフェノール系酸化防止剤と、イオウ系酸化防止剤が微量に添加されていても、各酸化防止剤の定性・定量分析を赤外吸収スペクトル測定により確実に行えることが確認できた。 その結果、樹脂組成物中の添加物定量分析結果から、配合している添加物の実際の含有量が評価できるようになり、樹脂製品を製造する際の品質管理を容易に行うことができる。本発明の分析方法で添加物を定量する場合、実施例1の中赤外線スペクトルを透過法で測定する場合には、1分以内で測定できた。また、微量添加剤が3種から10種の場合でも1分以内で中赤外線スペクトルの測定ができた。 さらに、添加物の中でも酸化防止剤(老化防止剤)の含有量は、樹脂材料の寿命に直結するため、本発明の分析方法を用いることにより、樹脂組成物中の添加物含有量が定量できるので、樹脂組成物の寿命評価・寿命管理が行える。ここで、従来の寿命評価は、酸化誘導期(OIT)を求めるために、高温下で加速試験を実施していたが、測定時間に30分から120分程度もかかっていた。しかしながら、本発明の分析方法によれば、赤外吸収スペクトル測定により添加物の定量を行うので、わずかな時間で樹脂組成物の寿命を評価することができる。 なお、熱履歴を伴う製造プロセスにおいては、添加物が反応する場合があり、本発明の分析方法を用いれば、添加物の反応状態を添加物含有量から評価することができるようになる。その結果、本発明の分析方法を用いることにより、製造プロセス(温度、圧力など)の管理も行うことができるようになる。 本発明の樹脂組成物中の微量添加物の分析方法は、特に、耐久性を有する樹脂組成物中に含まれる酸化防止剤の含有量を確実に定量できるので、樹脂組成物の寿命を評価をする方法として好適である。本発明の樹脂組成物中の微量添加物の分析方法によるスペクトルのグラフであって、中赤外線領域で透過法により測定したスペクトルのグラフである。本発明の樹脂組成物中の微量添加物の分析方法によるスペクトルのグラフであって、中赤外線領域でATR法により測定したスペクトルのグラフである。近赤外線領域で透過法により測定したスペクトルのグラフである。図1で得られたスペクトルデータに対して、一次微分処理をしたときのスペクトルのグラフである。 分析対象となる樹脂組成物に対して、 樹脂組成物中の微量添加物に対してピークが出るように、中赤外線領域における中赤外線スペクトルを測定し、 この中赤外線スペクトルのデータに基づいて、 樹脂組成物中の微量添加物の定性分析および定量分析を行うことを特徴とする樹脂組成物中の微量添加物の分析方法。 中赤外線スペクトルの測定は、樹脂組成物を0.05mm超3.0mm以下の厚みを有するシート状に形成して行うことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物中の微量添加物の分析方法。 中赤外線スペクトルの測定を透過法で行うことを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物中の微量添加物の分析方法。 中赤外線スペクトルのデータに対して、 微分処理を実施して、ベースライン変動の除去および重なり合った複数のピークの分離を行った後、 多変量解析によるデータ処理を行って、樹脂組成物中の微量添加物について分光分析によるピーク強度を求めて、 樹脂組成物中の微量添加物の定性分析および定量分析を行うことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の樹脂組成物中の微量添加物の分析方法。 樹脂組成物が非架橋型難燃性樹脂組成物であり、微量添加物がヒンダードフェノール系酸化防止剤またはイオウ系酸化防止剤の少なくとも一つを含み、これらの酸化防止剤の添加量を請求項1から請求項4の何れかに記載の樹脂組成物中の微量添加物の分析方法によって定量することにより、樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量を求めて樹脂組成物の寿命評価、寿命管理の分析を行うことを特徴とする樹脂組成物の寿命分析方法。 【課題】樹脂組成物中に微量に添加される添加物の定性・定量分析を高精度で、しかも、迅速に行うことができる分析方法を提供することを目的とする。【解決手段】分析対象となる樹脂組成物に対して、樹脂組成物中の添加物に対してピークが出るように、中赤外線領域における中赤外線スペクトルを測定し、この中赤外線スペクトルのデータに基づいて、樹脂組成物中の微量添加物の定性分析および定量分析を行う。このようにスペクトル測定を行うことにより、樹脂組成物中の微量に添加されている添加物に対して、対象ピークの強度を十分に確保することができ、微量添加物の定性分析だけでなく、微量添加物の定量分析も可能となる。【選択図】 なし