生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_パルボウイルス抗原検出用キット
出願番号:2005246369
年次:2007
IPC分類:G01N 33/569,G01N 33/577,G01N 33/543,G01N 33/553


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實方 剛 難波 靖治 JP 2007057495 公開特許公報(A) 20070308 2005246369 20050826 パルボウイルス抗原検出用キット 国立大学法人鳥取大学 504150461 株式会社ビーエル 593025712 井出 正威 100091502 野上 晃 100125933 實方 剛 難波 靖治 G01N 33/569 20060101AFI20070209BHJP G01N 33/577 20060101ALI20070209BHJP G01N 33/543 20060101ALI20070209BHJP G01N 33/553 20060101ALI20070209BHJP JPG01N33/569 LG01N33/577 BG01N33/543 521G01N33/543 541ZG01N33/553 13 OL 10 本発明は、犬や猫などの動物の感染症の原因ウイルスであるパルボウイルスの抗原を高感度かつ特異的に検出するための免疫検出法、詳しくは、サンドイッチ式免疫測定法、特に、イムノクロマトグラフィー測定法およびイムノクロマト法テストストリップに関するものであり、パルボウイルスによる感染を迅速かつ簡便に診断するために有用な検出法に関する。 1970年代末、激しい嘔吐や下痢などの脱水症状を伴う原因不明の感染症が世界各地の犬を襲った。これが、犬パルボウイルス(以下、「CPV」(Canine Parvovirusの略)と記載することがある)による感染症の蔓延の始まりだった。 その後、原因ウイルスが特定され、ワクチン接種の普及とともに犬パルボウイルス感染症の症例も減少した。しかし、ワクチン未接種で、体力や免疫力の弱い子犬や老犬などは、犬パルボウイルスに感染して死亡することも少なくない。 また、猫のパルボウイルス感染症(猫汎白血球減少症)も知られており、この感染症は、猫汎白血球減少症ウイルス(以下、「FPLV」(Feline panleukopenia virusの略)と記載することがある)によるものであることが特定されている。この感染症は、臨床症状から「猫伝染性腸炎」あるいは「猫ジステンバー」などと呼称されたこともあるが、いずれも本病を意味している。症状は犬パルボウイルスと同様に妊娠猫が感染すると死産、生後2〜3ヶ月齢以上の猫の感染では、骨髄や腸管粘膜などの細胞分裂の盛んな臓器が標的となり白血球減少や下痢が起き、発熱、食欲、元気喪失、脱水、嘔吐、血便などが特徴的である。 犬パルボウイルスと猫パルボウイルスは抗原的に近縁性があり、最近、CPV-2のうち、2aまたは2bの抗原型のウイルスが猫に感染していることが指摘されている。 犬パルボウイルス感染症の診断は、従来、動物病院で行われる犬パルボウイルス抗原検査または獣医のもとで犬の血液を採取し専門の研究所に検査を委託することで行われていたが、いずれも検査に時間を要し、高額な治療費も発生していた。 近年、イムノクロマト法を採用した犬パルボウイルス検査キットが市販されるようになったが、ポリクローナル抗体やIgGモノクローナル抗体を使用しているものに限られており、検出感度について更なる改善が望まれている。Takeshi Sanekata, Tatsuya Sugimoto, Shinobu Ueda,Misao, Tsubokura, Yoshihisa Yamane及びMegumi Senda 、「Latex agglutination test for canine parvovirus」、Australian Veterinary Journal, Vol. 73, No. 6, June 1996.Rimmelzwaan GF, Groen J, Juntti N, Teppema JS, UytdeHaag FG, Osterhaus AD.、「Purification of infectious canine parvovirus from cell culture by affinity chromatography with monoclonal antibodies」、J. Virol. Methods, 1987, Mar; 15(4): 313-22.A Paul Reed, Elaine V. Jones及びTimothy J. Miller、「Nucleotide Sequence and Genome Organization of Canine Parvovirus」、Journal of Virology, Jan. 1988, 266-276.特開2004-219346号公報特開平11-311625号公報特開平8-136545号公報 近年のペットブームの潮流により多くの人が動物を飼うようになったが、飼い主にとって高額な治療費は負担となり、ウイルス感染症は発見が遅れると広い範囲にわたって急速に蔓延する可能性があるため、かかるウイルス感染症の早期発見や予防措置を講じるために迅速かつ簡便で精度の高い検出法が望まれている。 本発明の目的は、犬や猫などの動物に感染するパルボウイルスを高感度かつ特異的に、しかも迅速かつ簡便に検出できる方法および測定器具を提供することにある。 本発明者等は、犬のパルボウイルスに対するIgMモノクローナル抗体を取得することに成功し、これを免疫測定法、特にサンドイッチ式免疫測定法、とりわけイムノクロマトグラフィー測定法で使用することにより、パルボウイルスを高感度かつ特異的に、しかも迅速かつ簡便に検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明の一局面によれば、犬のパルボウイルスに対するIgMモノクローナル抗体を使用する免疫測定法からなるパルボウイルス抗原の検出法が提供される。 この検出法における免疫測定法としては、特に限定されるものではないが、サンドイッチ式免疫測定法、とりわけELISA(Enzyme−linked immunosorbent assay)法、イムノクロマトグラフィー測定法などが好ましい。また、検出されるパルボウイルス抗原としては、パルボウイルス自体、パルボウイルスの表面蛋白やこれらの断片が挙げられる。 したがって、本発明の他の局面によれば、犬のパルボウイルスに対するに対する第一の抗体と第二の抗体とを用いたサンドイッチ式免疫測定法であって、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方がIgMモノクローナル抗体であることを特徴とするパルボウイルス抗原の検出法が提供される。 また、本発明の好ましい実施形態によれば、犬のパルボウイルスに対する第一の抗体を予め所定位置に固定せしめて形成された捕捉部位を備える膜担体を用意し、犬のパルボウイルスに対する第二の抗体と所定量の被験試料との混合液を、前記捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめ、前記被験試料中に含まれるパルボウイルスと前記第二の抗体との複合体を前記捕捉部位に捕捉させることを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法において、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方がIgMモノクローナル抗体であることを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法が提供される。 また、本発明の好ましい実施形態によれば、犬のパルボウイルスに対する第一の抗体と第二の抗体と膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記第二の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記捕捉部位から離隔した位置で前記膜担体にてクロマト展開可能なように配置されてなるパルボウイルス検出用イムノクロマト法テストストリップであって、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方が、IgMモノクローナル抗体であることを特徴とするパルボウイルス検出用イムノクロマト法テストストリップが提供される。 イムノクロマトグラフィー測定法などのサンドイッチ式免疫測定法の場合、そこで使用する第一の抗体及び第二の抗体は、少なくとも一方が犬のパルボウイルスに対するIgMモノクローナル抗体であればよく、他方の抗体はポリクローナル抗体やIgG等の他のアイソタイプのモノクローナル抗体であってもよいが、反応特異性の観点から、一般に、両方の抗体をIgMモノクローナル抗体とすることが特に好ましい。 本発明によれば、犬のパルボウイルス抗原を検出する免疫測定法において、IgMモノクローナル抗体を使用することとしたため、従来のポリクローナル抗体やIgGモノクローナル抗体を用いた免疫測定法よりも高感度かつ特異的にウイルス抗原を検出することができる。IgMモノクローナル抗体は10個の抗原結合部位を持っており、IgGモノクローナル抗体などよりも多くの抗原と結合することができるので、感度が向上し、また、非特異反応も防止できると考えられる。また、犬パルボウイルスと猫パルボウイルスは何れもParvoviridae、Parvovirinae科、parvovirus属に属し、抗原的に近縁性があり、実際に、犬パルボウイルスが猫にも感染することが報告されている。したがって、本発明は、犬パルボウイルス抗原のほかに、猫やその他の動物に感染するパルボウイルス抗原の検出にも使用できる。 また、本発明のイムノクロマトグラフィー測定法およびイムノクロマト法テストストリップによれば、特殊な技術、装置及び施設を必要とせず、糞便等の検体採取現場において簡便かつ迅速にパルボウイルス抗原を高精度で検出し、当該ウイルスによる感染症を診断することが可能となる。 本発明において、抗体の製造および該抗体を使用する検出法および測定法における各ステップは、それぞれ、それ自体、公知の免疫学的手法に準拠して行なわれる。 本発明において、IgMモノクローナル抗体は、例えば、抽出精製した犬パルボウイルスを抗原としてマウスのような動物を免疫したのち、この免疫された動物の脾臓細胞とミエローマ細胞とを細胞融合して得られた融合細胞をHAT含有培地でセレクトした後に増殖せしめる。増殖せしめた株を前記で使用した犬パルボウイルスを使用して、たとえば、酵素標識免疫法などにより抗犬パルボウイルス抗体産生株を選別する。IgM抗体を産生する株は、免疫後の初期に得られる力価の高い脾臓細胞を採取して細胞融合することにより容易に得ることができる。 被験試料中のパルボウイルスを検出するための本発明のイムノクロマトグラフィー測定法は、公知のイムノクロマト法テストストリップの構成に準拠して容易に実施できる。 一般に、かかるイムノクロマト法テストストリップは、抗原の第一の抗原決定基にて抗体抗原反応可能な第一の抗体と、前記抗原の第二の抗原決定基にて抗体抗原反応可能で且つ標識された第二の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記第二の抗体は前記捕捉部位から離隔した位置で前記膜担体にてクロマト展開可能なように配置されて構成される。第一の抗体および第二の抗体は、少なくとも何れか一方がIgMモノクローナル抗体であればよい。通常は、第一の抗体及び第二の抗体は「ヘテロ」の組み合わせで用いられ、すなわち、抗原上の位置および構造の何れもが異なる各抗原決定基をそれぞれ認識する第一の抗体及び第二の抗体が組み合わせて用いられる。しかしながら、第一の抗原決定基と第二の抗原決定基は抗原上の位置が異なっていれば構造的に同一であってもよく、その場合、第一の抗体および第二の抗体は上記「ホモ」の組み合わせのモノクローナル抗体であってよく、すなわち、第一の抗体および第二の抗体の両方に同一のIgMモノクローナル抗体が使用できる。 イムノクロマト法テストストリップの具体例としては、例えば、図1に示されるテストストリップが挙げられる。図1において、数字1は粘着シート、2は含浸部材、3は膜担体、31は捕捉部位、4は吸収用部材、5は試料添加用部材を示している。 図示の例では、膜担体3は、幅5mm、長さ36mmの細長い帯状のニトロセルロース製メンブレンフィルターで作成されている。 該膜担体3には、そのクロマト展開始点側の末端から7.5mmの位置に、第一の抗体が固定され、検体の捕捉部位31が形成される。 図示の例では、膜担体3は、ニトロセルロース製メンブレンフィルターを用いているが、被験試料に含まれる検体をクロマト展開可能で、かつ、上記捕捉部位31を形成する抗体を固定可能なものであれば、いかなるものであってもよく、他のセルロース類膜、ナイロン膜、ガラス繊維膜なども使用できる。 含浸部材2は、前記第一の抗体が結合する第一の抗原決定基と異なる部位に位置する第二の抗原決定基にて前記抗原と抗体抗原反応する第二の抗体を含浸せしめた部材からなる。当該第二の抗体は、適当な標識物質で予め標識される。 図示の例では、含浸部材2として、5mm×15mmの帯状のガラス繊維不織布を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、セルロース類布(濾紙、ニトロセルロース膜等)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質プラスチック布類なども使用できる。 第二の抗体の標識物質としては、使用可能なものであればいかなる物質であってもよく、呈色標識物質、酵素標識物質、放射線標識物質などが挙げられる。 このうち、捕捉部位31での色の変化を肉眼で観察することにより迅速かつ簡便に判定できる点から、呈色標識物質を用いることが好ましい。 呈色標識物質としては、金コロイド、白金コロイド等の金属コロイドの他、赤色および青色などのそれぞれの顔料で着色されたポリスチレンラテックスなどの合成ラテックスや、天然ゴムラテックスなどのラテックスが挙げられ、このうち、金コロイドなどの金属コロイドが特に好ましい。 当該含浸部材2は、標識された第二の抗体の懸濁液を前記ガラス繊維不織布等の部材に含浸せしめ、これを乾燥させることなどによって作製できる。 図1に示されるように、膜担体3を粘着シート1の中程に貼着し、該膜担体3のクロマト展開の開始点側(すなわち図1の左側、以下「上流側」と記す、また、その逆の側、すなわち図1の右側を、以下「下流側」と記す)の末端の上に、含浸部材2の下流側末端を重ね合わせて連接するとともに、この含浸部材2の上流側部分を粘着シート1に貼着して本発明のイムノクロマト法テストストリップを作成できる。 さらに、必要に応じて、含浸部材2の上面に試料添加用部材5の下流側部分を載置するとともに、該試料添加用部材5の上流側部分を粘着シート1に貼着してもよく、また、膜担体3の下流側部分の上面に吸収用部材4の上流側部分を載置するとともに、該吸収用部材4の下流側部分を粘着シート1に貼着せしめることもできる。 試料添加用部材5としては、例えば、多孔質ポリエチレンおよび多孔質ポリプロピレンなどのような多孔質合成樹脂のシートまたはフィルム、ならびに、濾紙および綿布などのようなセルロース製の紙または織布もしくは不織布を用いることができる。 吸収用部材4は、液体をすみやかに吸収、保持できる材質のものであればよく、綿布、濾紙、およびポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質プラスチック不織布等を挙げることができるが、特に濾紙が最適である。 さらに、市販品の場合、図1のイムノクロマト法テストストリップは、試料添加用部材5と捕捉部位31の上方にそれぞれ被験試料注入部と判定部が開口された適当なプラスチック製ケース内に収容されて提供される。 かくして、生体試料などからなる被験試料を必要に応じて適当な展開溶媒と混合してクロマト展開可能な混合液を得た後、当該混合液を図1に示されるイムノクロマト法テストストリップの試料添加用部材5上に注入すると、該混合液は、該試料添加用部材5を通過して含浸部材2において、標識された第二の抗体と混合する。 その際、該混合液中に検体が存在すれば、抗原抗体反応により検体と第二の抗体との複合体が形成される。 この複合体は、膜担体3中をクロマト展開されて捕捉部位31に到達し、そこに固定された第一の抗体と抗原抗体反応して捕捉される。 このとき、標識物質として金コロイドなどの呈色標識物質が使用されていれば、当該呈色標識物質の集積により捕捉部位31が発色するので、直ちに、検体を定性的または定量的に測定することができる。 被験試料としては、特に制限はないが、例えば、糞便、吐瀉物、血液(全血でも、血清でも、血漿でもよい)、唾液、尿、臓器乳剤等が挙げられる。被験試料は、展開溶媒などの適当な希釈液で希釈して膜担体に注入してもよい。 なお、全血を被験試料として用いるときで、特に標識抗体の標識物質として金コロイドなどの呈色標識物質が用いられる場合、前記試料添加用部材に血球捕捉膜部材を配置しておくことが好ましい。血球捕捉膜部材は、前記含浸部材と前記試料添加用部材との間に積層することが好ましい。これにより、赤血球が膜担体に展開されるのが阻止されるので、膜担体の捕捉部位における呈色標識の集積の確認が容易になる。血球捕捉膜部材としては、カルボキシメチルセルロース膜が用いられ、具体的には、アドバンテック東洋株式会社から販売されているイオン交換濾紙CM(商品名)や、ワットマンジャパン株式会社から販売されているイオン交換セルロースペーパーなどを用いることができる。 下記の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例1(抗CPVモノクローナルIgM抗体の調製) 免疫原であるCPVは以下のように調製した。CPV分離株感染CPFK細胞の培養上清から遠心分離により粗組成物CPVを得て、さらにこれからメトリザマイド密度勾配遠心法により精製CPV分画を調製した。 マウス一匹あたり調製した100μgの精製CPVをFreundの完全アジュバンドとともに皮下に追加接種し、更に3週間間隔で2回、Freundの不完全アジュバンドとともに追加接種した。その後、3週間以上の間隔をあけてマウス腹腔内に精製CPVを接種し、3日後に脾臓を摘出した。その脾細胞をマウスミエローマ細胞と融合させ、スクリーニング及びクローニングにより抗CPV抗体産生ハイブリドーマを得た。得られたハイブリドーマ上清をImmunoPure(商品名) Monoclonal Antibody Isotyping Kit 1(ピアス社製)に供した。その結果、ハイブリドーマが産生する抗CPV抗体のアイソタイプはIgMと決定された。この抗CPV抗体産生ハイブリドーマをプリシタン(シグマ社製)投与後、10日目のBALB/cマウスの腹腔内に移入し、約10日後に腹水を採取した。得られた免疫腹水2mlを4℃、10000rpmで15分間遠心分離した。得られた上清を0.45μlのフィルターを用いて濾過した。その後Sephacryl S-200カラムを使用しゲル濾過に供し、1mlずつ分取した。オクテロニー反応により反応の見られた画分を集め、抗CPVモノクローナルIgM抗体を得た。実施例2(抗CPVモノクローナルIgM抗体を用いたイムノクロマトキット)(1)抗CPVモノクローナルIgM抗体の調製 実施例1で得られた抗CPVモノクローナルIgM抗体を用いた。(2)金コロイド溶液の調製 加熱によって沸騰させた超純水99mlに、1%(v/w)塩化金酸水溶液1mlを加え、さらに、その1分後に1%(v/w)クエン酸ナトリウム水溶液1.5mlを加えて加熱し5分間沸騰させた後、室温に放置して冷却した。次いで、この溶液に200mM炭酸カリウム水溶液を加えてpH9.0に調製し、これに超純水を加えて全量を100mlとして金コロイド溶液を得た。(3)金コロイド標識抗CPVモノクローナルIgM抗体溶液の調製 金コロイド標識する抗CPVモノクローナルIgM抗体として、上記(1)で得られた抗体を用いた。 上記抗体の蛋白換算重量1μg(以下、抗体の蛋白換算重量を示すとき、単に、その精製蛋白質の重量分析による重量数値で示す)と上記(2)の金コロイド溶液1mlとを混合し、室温で2分間静置してこの抗体のことごとくを金コロイド粒子表面に結合させた後、金コロイド溶液における最終濃度が1%となるように10%ウシ血清アルブミン(以下、「BSA」と記す)水溶液を加え、この金コロイド粒子の残余の表面をことごとくこのBSAでブロックして、金コロイド標識抗CPVモノクローナルIgM抗体(以下、「金コロイド標識抗体」と記す)溶液を調製した。この溶液を遠心分離(5600×G、30分間)して金コロイド標識抗体を沈殿せしめ、上清液を除いて金コロイド標識抗体を得た。この金コロイド標識抗体を10%サッカロース・1%BSA・0.5%トリトン(Triton)-X100を含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に懸濁して金コロイド標識抗体溶液を得た。(4)パルボウイルス抗原測定用イムノクロマト法テストストリップの作成 図1に示されるイムノクロマト法テストストリップを下記の手順で作成した。(4−1)パルボウイルス抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位 幅5mm、長さ36mmの細長い帯状のニトロセルロース膜をクロマトグラフ媒体のクロマト展開用膜担体3として用意した。 抗CPVモノクローナルIgM抗体1.0mg/mlが含有されてなる溶液0.5μlを、このクロマト展開用膜担体3におけるクロマト展開開始点側の末端から7.5mmの位置にライン状に塗布して、これを室温で乾燥し、パルボウイルス抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位31とした。この抗CPVモノクローナルIgM抗体として、上記(1)で得られた抗体を用いた。(4−2)金コロイド標識抗体含浸部材 5mm×15mmの帯状のガラス繊維不織布に、金コロイド標識抗体溶液37.5μlを含浸せしめ、これを室温で乾燥させて金コロイド標識抗体含浸部材2とした。(4−3)イムノクロマト法テストストリップの作成 上記クロマト展開用膜担体3、上記標識抗体含浸部材2の他に、試料添加用部材5として綿布と、吸収用部材4として濾紙を用意した。そして、これらの部材を用いて、図1と同様のクロマト法テストストリップを作成した。(5)試験 イヌパルボウイルス培養液を検体希釈液で希釈して、各濃度(16、32、64、128、256、512、1024倍希釈)に調整し、被験試料とした。そして、被験試料100μlを上記(4)で得られたテストストリップの試料添加用部材5にマイクロピペットで滴下してクロマト展開し、室温で15分放置後、上記捕捉部位31で捕捉されたパルボウイルスと金コロイド標識抗体との複合体の捕捉量を肉眼で観察した。捕捉量は、その量に比例して増減する赤紫色の呈色度合いを肉眼で、6段階に区分して判定した。その結果を表1に示した。比較例1 市販の犬パルボウイルス検査用試薬であるチェックマンCPV(商品名;販売元アドテック株式会社)を用いて、実施例2の(5)と同様の試験を行った。なお、この市販検査用試薬は、図1の捕捉部位に相当する箇所に固定される抗体としてポリクローナル抗体を用いたものである。その結果を表1に示した。 表1中、−は着色なしを示し、±、+、++、+++、+++++の順で着色の度合いが強いことを意味し、上向きの矢印は強めを示し、下向きの矢印は弱めを示し、〜は双方の中間を意味する。 表1から、本発明によれば、市販の検査用試薬よりも10倍以上の感度が得られることがわかる。実施例3(抗CPVモノクローナルIgM抗体を用いたイムノクロマトキットの反応特異性) 正常な犬の糞便検体10検体を反応に供した。糞便80mgを採取し緩衝液3.2mlに溶解させ(最終糞便濃度:2.5%)被験試料を調製した。本被験試料を試料添加用部材に3滴滴下した以外、実施例2の(5)と同様の試験を行った。その結果を表2に示す。 表2に示されるように、10検体の全てにおいて陰性が確認され、非特異反応は確認されなかった。 本発明は、犬のパルボウイルスに対するIgMモノクローナル抗体を用いた免疫測定法、とりわけ、サンドイッチ式免疫測定法、特に、イムノクロマトグラフィー測定法およびイムノクロマト法テストストリップを提供するものであり、犬や猫などの動物のパルボウイルス抗原を簡単な方法で迅速にかつ高精度で特異的に検出できるので、当該ウイルスに起因する疾病を迅速かつ簡便に診断するために有用である。aはイムノクロマト法テストストリップの平面図、bはaで示されたイムノクロマト法テストストリップの縦断面図。符号の説明1 粘着シート2 含浸部材3 膜担体31 捕捉部位4 吸収用部材5 試料添加用部材 犬のパルボウイルスに対するIgMモノクローナル抗体を使用する免疫測定法からなるパルボウイルス抗原の検出法。 犬または猫のパルボウイルス抗原の検出に用いられる請求項1に記載の検出法。 犬のパルボウイルスに対するに対する第一の抗体と第二の抗体とを用いたサンドイッチ式免疫測定法であって、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方がIgMモノクローナル抗体であることを特徴とするパルボウイルス抗原の検出法。 前記第一の抗体および第二の抗体の何れか一方を担体に固定しておく請求項3に記載の検出法。 犬または猫のパルボウイルス抗原の検出に用いられる請求項3または4に記載の検出法。 犬のパルボウイルスに対する第一の抗体を予め所定位置に固定せしめて形成された捕捉部位を備える膜担体を用意し、犬のパルボウイルスに対する第二の抗体と所定量の被験試料との混合液を、前記捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめ、前記被験試料中に含まれるパルボウイルスと前記第二の抗体との複合体を前記捕捉部位に捕捉させることを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法において、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方がIgMモノクローナル抗体であることを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法。 前記第二の抗体は金属コロイドまたはラテックスで標識されている請求項6に記載の測定法。 前記膜担体がニトロセルロース膜である請求項6または7に記載の測定法。 犬または猫のパルボウイルス抗原の検出に用いられる請求項6乃至8の何れか1項に記載の測定法。 犬のパルボウイルスに対する第一の抗体と第二の抗体と膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記第二の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記捕捉部位から離隔した位置で前記膜担体にてクロマト展開可能なように配置されてなるパルボウイルス検出用イムノクロマト法テストストリップであって、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方が、IgMモノクローナル抗体であることを特徴とするパルボウイルス検出用イムノクロマト法テストストリップ。 前記第二の抗体は金属コロイドまたはラテックスで標識されている請求項10に記載のイムノクロマト法テストストリップ。 前記膜担体がニトロセルロース膜である請求項10または11に記載のイムノクロマト法テストストリップ。 犬または猫のパルボウイルス抗原の検出に用いられる請求項10乃至12の何れか1項に記載の検出法。 【課題】犬や猫などの動物の感染症の原因ウイルスであるパルボウイルスの抗原を高感度かつ特異的に検出するための免疫検出法および測定器具を提供する。【解決手段】犬のパルボウイルスに対するIgMモノクローナル抗体を使用する免疫測定法、特に該ウイルスに対する第一の抗体と第二の抗体とを用いたサンドイッチ式免疫測定法、とりわけイムノクロマトグラフィー測定法およびイムノクロマト法テストストリップが提供される。前記第一の抗体と第二の抗体の少なくとも何れか一方は前記IgMモノクローナル抗体である。【選択図】なし


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特許公報(B2)_パルボウイルス抗原検出用キット

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_パルボウイルス抗原検出用キット
出願番号:2005246369
年次:2010
IPC分類:G01N 33/569,G01N 33/577,G01N 33/543


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實方 剛 難波 靖治 JP 4554472 特許公報(B2) 20100723 2005246369 20050826 パルボウイルス抗原検出用キット 国立大学法人鳥取大学 504150461 株式会社ビーエル 593025712 井出 正威 100091502 野上 晃 100125933 實方 剛 難波 靖治 20100929 G01N 33/569 20060101AFI20100909BHJP G01N 33/577 20060101ALI20100909BHJP G01N 33/543 20060101ALI20100909BHJP JPG01N33/569 LG01N33/577 BG01N33/543 521G01N33/543 541Z G01N 33/53−579 特開2004−219346(JP,A) 国際公開第96/29349(WO,A1) 特開平1−131458(JP,A) 特開昭64−90198(JP,A) 13 2007057495 20070308 11 20080815 山村 祥子 本発明は、犬や猫などの動物の感染症の原因ウイルスであるパルボウイルスの抗原を高感度かつ特異的に検出するための免疫検出法、詳しくは、サンドイッチ式免疫測定法、特に、イムノクロマトグラフィー測定法およびイムノクロマト法テストストリップに関するものであり、パルボウイルスによる感染を迅速かつ簡便に診断するために有用な検出法に関する。 1970年代末、激しい嘔吐や下痢などの脱水症状を伴う原因不明の感染症が世界各地の犬を襲った。これが、犬パルボウイルス(以下、「CPV」(Canine Parvovirusの略)と記載することがある)による感染症の蔓延の始まりだった。 その後、原因ウイルスが特定され、ワクチン接種の普及とともに犬パルボウイルス感染症の症例も減少した。しかし、ワクチン未接種で、体力や免疫力の弱い子犬や老犬などは、犬パルボウイルスに感染して死亡することも少なくない。 また、猫のパルボウイルス感染症(猫汎白血球減少症)も知られており、この感染症は、猫汎白血球減少症ウイルス(以下、「FPLV」(Feline panleukopenia virusの略)と記載することがある)によるものであることが特定されている。この感染症は、臨床症状から「猫伝染性腸炎」あるいは「猫ジステンバー」などと呼称されたこともあるが、いずれも本病を意味している。症状は犬パルボウイルスと同様に妊娠猫が感染すると死産、生後2〜3ヶ月齢以上の猫の感染では、骨髄や腸管粘膜などの細胞分裂の盛んな臓器が標的となり白血球減少や下痢が起き、発熱、食欲、元気喪失、脱水、嘔吐、血便などが特徴的である。 犬パルボウイルスと猫パルボウイルスは抗原的に近縁性があり、最近、CPV-2のうち、2aまたは2bの抗原型のウイルスが猫に感染していることが指摘されている。 犬パルボウイルス感染症の診断は、従来、動物病院で行われる犬パルボウイルス抗原検査または獣医のもとで犬の血液を採取し専門の研究所に検査を委託することで行われていたが、いずれも検査に時間を要し、高額な治療費も発生していた。 近年、イムノクロマト法を採用した犬パルボウイルス検査キットが市販されるようになったが、ポリクローナル抗体やIgGモノクローナル抗体を使用しているものに限られており、検出感度について更なる改善が望まれている。Takeshi Sanekata, Tatsuya Sugimoto, Shinobu Ueda,Misao, Tsubokura, Yoshihisa Yamane及びMegumi Senda 、「Latex agglutination test for canine parvovirus」、Australian Veterinary Journal, Vol. 73, No. 6, June 1996.Rimmelzwaan GF, Groen J, Juntti N, Teppema JS, UytdeHaag FG, Osterhaus AD.、「Purification of infectious canine parvovirus from cell culture by affinity chromatography with monoclonal antibodies」、J. Virol. Methods, 1987, Mar; 15(4): 313-22.A Paul Reed, Elaine V. Jones及びTimothy J. Miller、「Nucleotide Sequence and Genome Organization of Canine Parvovirus」、Journal of Virology, Jan. 1988, 266-276.特開2004-219346号公報特開平11-311625号公報特開平8-136545号公報 近年のペットブームの潮流により多くの人が動物を飼うようになったが、飼い主にとって高額な治療費は負担となり、ウイルス感染症は発見が遅れると広い範囲にわたって急速に蔓延する可能性があるため、かかるウイルス感染症の早期発見や予防措置を講じるために迅速かつ簡便で精度の高い検出法が望まれている。 本発明の目的は、犬や猫などの動物に感染するパルボウイルスを高感度かつ特異的に、しかも迅速かつ簡便に検出できる方法および測定器具を提供することにある。 本発明者等は、犬のパルボウイルスに対するIgMモノクローナル抗体を取得することに成功し、これを免疫測定法、特にサンドイッチ式免疫測定法、とりわけイムノクロマトグラフィー測定法で使用することにより、パルボウイルスを高感度かつ特異的に、しかも迅速かつ簡便に検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明の一局面によれば、犬のパルボウイルスに対するIgMモノクローナル抗体を使用する免疫測定法からなるパルボウイルス抗原の検出法が提供される。 この検出法における免疫測定法としては、特に限定されるものではないが、サンドイッチ式免疫測定法、とりわけELISA(Enzyme−linked immunosorbent assay)法、イムノクロマトグラフィー測定法などが好ましい。また、検出されるパルボウイルス抗原としては、パルボウイルス自体、パルボウイルスの表面蛋白やこれらの断片が挙げられる。 したがって、本発明の他の局面によれば、犬のパルボウイルスに対するに対する第一の抗体と第二の抗体とを用いたサンドイッチ式免疫測定法であって、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方がIgMモノクローナル抗体であることを特徴とするパルボウイルス抗原の検出法が提供される。 また、本発明の好ましい実施形態によれば、犬のパルボウイルスに対する第一の抗体を予め所定位置に固定せしめて形成された捕捉部位を備える膜担体を用意し、犬のパルボウイルスに対する第二の抗体と所定量の被験試料との混合液を、前記捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめ、前記被験試料中に含まれるパルボウイルスと前記第二の抗体との複合体を前記捕捉部位に捕捉させることを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法において、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方がIgMモノクローナル抗体であることを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法が提供される。 また、本発明の好ましい実施形態によれば、犬のパルボウイルスに対する第一の抗体と第二の抗体と膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記第二の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記捕捉部位から離隔した位置で前記膜担体にてクロマト展開可能なように配置されてなるパルボウイルス検出用イムノクロマト法テストストリップであって、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方が、IgMモノクローナル抗体であることを特徴とするパルボウイルス検出用イムノクロマト法テストストリップが提供される。 イムノクロマトグラフィー測定法などのサンドイッチ式免疫測定法の場合、そこで使用する第一の抗体及び第二の抗体は、少なくとも一方が犬のパルボウイルスに対するIgMモノクローナル抗体であればよく、他方の抗体はポリクローナル抗体やIgG等の他のアイソタイプのモノクローナル抗体であってもよいが、反応特異性の観点から、一般に、両方の抗体をIgMモノクローナル抗体とすることが特に好ましい。 本発明によれば、犬のパルボウイルス抗原を検出する免疫測定法において、IgMモノクローナル抗体を使用することとしたため、従来のポリクローナル抗体やIgGモノクローナル抗体を用いた免疫測定法よりも高感度かつ特異的にウイルス抗原を検出することができる。IgMモノクローナル抗体は10個の抗原結合部位を持っており、IgGモノクローナル抗体などよりも多くの抗原と結合することができるので、感度が向上し、また、非特異反応も防止できると考えられる。また、犬パルボウイルスと猫パルボウイルスは何れもParvoviridae、Parvovirinae科、parvovirus属に属し、抗原的に近縁性があり、実際に、犬パルボウイルスが猫にも感染することが報告されている。したがって、本発明は、犬パルボウイルス抗原のほかに、猫やその他の動物に感染するパルボウイルス抗原の検出にも使用できる。 また、本発明のイムノクロマトグラフィー測定法およびイムノクロマト法テストストリップによれば、特殊な技術、装置及び施設を必要とせず、糞便等の検体採取現場において簡便かつ迅速にパルボウイルス抗原を高精度で検出し、当該ウイルスによる感染症を診断することが可能となる。 本発明において、抗体の製造および該抗体を使用する検出法および測定法における各ステップは、それぞれ、それ自体、公知の免疫学的手法に準拠して行なわれる。 本発明において、IgMモノクローナル抗体は、例えば、抽出精製した犬パルボウイルスを抗原としてマウスのような動物を免疫したのち、この免疫された動物の脾臓細胞とミエローマ細胞とを細胞融合して得られた融合細胞をHAT含有培地でセレクトした後に増殖せしめる。増殖せしめた株を前記で使用した犬パルボウイルスを使用して、たとえば、酵素標識免疫法などにより抗犬パルボウイルス抗体産生株を選別する。IgM抗体を産生する株は、免疫後の初期に得られる力価の高い脾臓細胞を採取して細胞融合することにより容易に得ることができる。 被験試料中のパルボウイルスを検出するための本発明のイムノクロマトグラフィー測定法は、公知のイムノクロマト法テストストリップの構成に準拠して容易に実施できる。 一般に、かかるイムノクロマト法テストストリップは、抗原の第一の抗原決定基にて抗体抗原反応可能な第一の抗体と、前記抗原の第二の抗原決定基にて抗体抗原反応可能で且つ標識された第二の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記第二の抗体は前記捕捉部位から離隔した位置で前記膜担体にてクロマト展開可能なように配置されて構成される。第一の抗体および第二の抗体は、少なくとも何れか一方がIgMモノクローナル抗体であればよい。通常は、第一の抗体及び第二の抗体は「ヘテロ」の組み合わせで用いられ、すなわち、抗原上の位置および構造の何れもが異なる各抗原決定基をそれぞれ認識する第一の抗体及び第二の抗体が組み合わせて用いられる。しかしながら、第一の抗原決定基と第二の抗原決定基は抗原上の位置が異なっていれば構造的に同一であってもよく、その場合、第一の抗体および第二の抗体は上記「ホモ」の組み合わせのモノクローナル抗体であってよく、すなわち、第一の抗体および第二の抗体の両方に同一のIgMモノクローナル抗体が使用できる。 イムノクロマト法テストストリップの具体例としては、例えば、図1に示されるテストストリップが挙げられる。図1において、数字1は粘着シート、2は含浸部材、3は膜担体、31は捕捉部位、4は吸収用部材、5は試料添加用部材を示している。 図示の例では、膜担体3は、幅5mm、長さ36mmの細長い帯状のニトロセルロース製メンブレンフィルターで作成されている。 該膜担体3には、そのクロマト展開始点側の末端から7.5mmの位置に、第一の抗体が固定され、検体の捕捉部位31が形成される。 図示の例では、膜担体3は、ニトロセルロース製メンブレンフィルターを用いているが、被験試料に含まれる検体をクロマト展開可能で、かつ、上記捕捉部位31を形成する抗体を固定可能なものであれば、いかなるものであってもよく、他のセルロース類膜、ナイロン膜、ガラス繊維膜なども使用できる。 含浸部材2は、前記第一の抗体が結合する第一の抗原決定基と異なる部位に位置する第二の抗原決定基にて前記抗原と抗体抗原反応する第二の抗体を含浸せしめた部材からなる。当該第二の抗体は、適当な標識物質で予め標識される。 図示の例では、含浸部材2として、5mm×15mmの帯状のガラス繊維不織布を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、セルロース類布(濾紙、ニトロセルロース膜等)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質プラスチック布類なども使用できる。 第二の抗体の標識物質としては、使用可能なものであればいかなる物質であってもよく、呈色標識物質、酵素標識物質、放射線標識物質などが挙げられる。 このうち、捕捉部位31での色の変化を肉眼で観察することにより迅速かつ簡便に判定できる点から、呈色標識物質を用いることが好ましい。 呈色標識物質としては、金コロイド、白金コロイド等の金属コロイドの他、赤色および青色などのそれぞれの顔料で着色されたポリスチレンラテックスなどの合成ラテックスや、天然ゴムラテックスなどのラテックスが挙げられ、このうち、金コロイドなどの金属コロイドが特に好ましい。 当該含浸部材2は、標識された第二の抗体の懸濁液を前記ガラス繊維不織布等の部材に含浸せしめ、これを乾燥させることなどによって作製できる。 図1に示されるように、膜担体3を粘着シート1の中程に貼着し、該膜担体3のクロマト展開の開始点側(すなわち図1の左側、以下「上流側」と記す、また、その逆の側、すなわち図1の右側を、以下「下流側」と記す)の末端の上に、含浸部材2の下流側末端を重ね合わせて連接するとともに、この含浸部材2の上流側部分を粘着シート1に貼着して本発明のイムノクロマト法テストストリップを作成できる。 さらに、必要に応じて、含浸部材2の上面に試料添加用部材5の下流側部分を載置するとともに、該試料添加用部材5の上流側部分を粘着シート1に貼着してもよく、また、膜担体3の下流側部分の上面に吸収用部材4の上流側部分を載置するとともに、該吸収用部材4の下流側部分を粘着シート1に貼着せしめることもできる。 試料添加用部材5としては、例えば、多孔質ポリエチレンおよび多孔質ポリプロピレンなどのような多孔質合成樹脂のシートまたはフィルム、ならびに、濾紙および綿布などのようなセルロース製の紙または織布もしくは不織布を用いることができる。 吸収用部材4は、液体をすみやかに吸収、保持できる材質のものであればよく、綿布、濾紙、およびポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質プラスチック不織布等を挙げることができるが、特に濾紙が最適である。 さらに、市販品の場合、図1のイムノクロマト法テストストリップは、試料添加用部材5と捕捉部位31の上方にそれぞれ被験試料注入部と判定部が開口された適当なプラスチック製ケース内に収容されて提供される。 かくして、生体試料などからなる被験試料を必要に応じて適当な展開溶媒と混合してクロマト展開可能な混合液を得た後、当該混合液を図1に示されるイムノクロマト法テストストリップの試料添加用部材5上に注入すると、該混合液は、該試料添加用部材5を通過して含浸部材2において、標識された第二の抗体と混合する。 その際、該混合液中に検体が存在すれば、抗原抗体反応により検体と第二の抗体との複合体が形成される。 この複合体は、膜担体3中をクロマト展開されて捕捉部位31に到達し、そこに固定された第一の抗体と抗原抗体反応して捕捉される。 このとき、標識物質として金コロイドなどの呈色標識物質が使用されていれば、当該呈色標識物質の集積により捕捉部位31が発色するので、直ちに、検体を定性的または定量的に測定することができる。 被験試料としては、特に制限はないが、例えば、糞便、吐瀉物、血液(全血でも、血清でも、血漿でもよい)、唾液、尿、臓器乳剤等が挙げられる。被験試料は、展開溶媒などの適当な希釈液で希釈して膜担体に注入してもよい。 なお、全血を被験試料として用いるときで、特に標識抗体の標識物質として金コロイドなどの呈色標識物質が用いられる場合、前記試料添加用部材に血球捕捉膜部材を配置しておくことが好ましい。血球捕捉膜部材は、前記含浸部材と前記試料添加用部材との間に積層することが好ましい。これにより、赤血球が膜担体に展開されるのが阻止されるので、膜担体の捕捉部位における呈色標識の集積の確認が容易になる。血球捕捉膜部材としては、カルボキシメチルセルロース膜が用いられ、具体的には、アドバンテック東洋株式会社から販売されているイオン交換濾紙CM(商品名)や、ワットマンジャパン株式会社から販売されているイオン交換セルロースペーパーなどを用いることができる。 下記の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例1(抗CPVモノクローナルIgM抗体の調製) 免疫原であるCPVは以下のように調製した。CPV分離株感染CPFK細胞の培養上清から遠心分離により粗組成物CPVを得て、さらにこれからメトリザマイド密度勾配遠心法により精製CPV分画を調製した。 マウス一匹あたり調製した100μgの精製CPVをFreundの完全アジュバンドとともに皮下に追加接種し、更に3週間間隔で2回、Freundの不完全アジュバンドとともに追加接種した。その後、3週間以上の間隔をあけてマウス腹腔内に精製CPVを接種し、3日後に脾臓を摘出した。その脾細胞をマウスミエローマ細胞と融合させ、スクリーニング及びクローニングにより抗CPV抗体産生ハイブリドーマを得た。得られたハイブリドーマ上清をImmunoPure(商品名) Monoclonal Antibody Isotyping Kit 1(ピアス社製)に供した。その結果、ハイブリドーマが産生する抗CPV抗体のアイソタイプはIgMと決定された。この抗CPV抗体産生ハイブリドーマをプリシタン(シグマ社製)投与後、10日目のBALB/cマウスの腹腔内に移入し、約10日後に腹水を採取した。得られた免疫腹水2mlを4℃、10000rpmで15分間遠心分離した。得られた上清を0.45μlのフィルターを用いて濾過した。その後Sephacryl S-200カラムを使用しゲル濾過に供し、1mlずつ分取した。オクテロニー反応により反応の見られた画分を集め、抗CPVモノクローナルIgM抗体を得た。実施例2(抗CPVモノクローナルIgM抗体を用いたイムノクロマトキット)(1)抗CPVモノクローナルIgM抗体の調製 実施例1で得られた抗CPVモノクローナルIgM抗体を用いた。(2)金コロイド溶液の調製 加熱によって沸騰させた超純水99mlに、1%(v/w)塩化金酸水溶液1mlを加え、さらに、その1分後に1%(v/w)クエン酸ナトリウム水溶液1.5mlを加えて加熱し5分間沸騰させた後、室温に放置して冷却した。次いで、この溶液に200mM炭酸カリウム水溶液を加えてpH9.0に調製し、これに超純水を加えて全量を100mlとして金コロイド溶液を得た。(3)金コロイド標識抗CPVモノクローナルIgM抗体溶液の調製 金コロイド標識する抗CPVモノクローナルIgM抗体として、上記(1)で得られた抗体を用いた。 上記抗体の蛋白換算重量1μg(以下、抗体の蛋白換算重量を示すとき、単に、その精製蛋白質の重量分析による重量数値で示す)と上記(2)の金コロイド溶液1mlとを混合し、室温で2分間静置してこの抗体のことごとくを金コロイド粒子表面に結合させた後、金コロイド溶液における最終濃度が1%となるように10%ウシ血清アルブミン(以下、「BSA」と記す)水溶液を加え、この金コロイド粒子の残余の表面をことごとくこのBSAでブロックして、金コロイド標識抗CPVモノクローナルIgM抗体(以下、「金コロイド標識抗体」と記す)溶液を調製した。この溶液を遠心分離(5600×G、30分間)して金コロイド標識抗体を沈殿せしめ、上清液を除いて金コロイド標識抗体を得た。この金コロイド標識抗体を10%サッカロース・1%BSA・0.5%トリトン(Triton)-X100を含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に懸濁して金コロイド標識抗体溶液を得た。(4)パルボウイルス抗原測定用イムノクロマト法テストストリップの作成 図1に示されるイムノクロマト法テストストリップを下記の手順で作成した。(4−1)パルボウイルス抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位 幅5mm、長さ36mmの細長い帯状のニトロセルロース膜をクロマトグラフ媒体のクロマト展開用膜担体3として用意した。 抗CPVモノクローナルIgM抗体1.0mg/mlが含有されてなる溶液0.5μlを、このクロマト展開用膜担体3におけるクロマト展開開始点側の末端から7.5mmの位置にライン状に塗布して、これを室温で乾燥し、パルボウイルス抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位31とした。この抗CPVモノクローナルIgM抗体として、上記(1)で得られた抗体を用いた。(4−2)金コロイド標識抗体含浸部材 5mm×15mmの帯状のガラス繊維不織布に、金コロイド標識抗体溶液37.5μlを含浸せしめ、これを室温で乾燥させて金コロイド標識抗体含浸部材2とした。(4−3)イムノクロマト法テストストリップの作成 上記クロマト展開用膜担体3、上記標識抗体含浸部材2の他に、試料添加用部材5として綿布と、吸収用部材4として濾紙を用意した。そして、これらの部材を用いて、図1と同様のクロマト法テストストリップを作成した。(5)試験 イヌパルボウイルス培養液を検体希釈液で希釈して、各濃度(16、32、64、128、256、512、1024倍希釈)に調整し、被験試料とした。そして、被験試料100μlを上記(4)で得られたテストストリップの試料添加用部材5にマイクロピペットで滴下してクロマト展開し、室温で15分放置後、上記捕捉部位31で捕捉されたパルボウイルスと金コロイド標識抗体との複合体の捕捉量を肉眼で観察した。捕捉量は、その量に比例して増減する赤紫色の呈色度合いを肉眼で、6段階に区分して判定した。その結果を表1に示した。比較例1 市販の犬パルボウイルス検査用試薬であるチェックマンCPV(商品名;販売元アドテック株式会社)を用いて、実施例2の(5)と同様の試験を行った。なお、この市販検査用試薬は、図1の捕捉部位に相当する箇所に固定される抗体としてポリクローナル抗体を用いたものである。その結果を表1に示した。 表1中、−は着色なしを示し、±、+、++、+++、+++++の順で着色の度合いが強いことを意味し、上向きの矢印は強めを示し、下向きの矢印は弱めを示し、〜は双方の中間を意味する。 表1から、本発明によれば、市販の検査用試薬よりも10倍以上の感度が得られることがわかる。実施例3(抗CPVモノクローナルIgM抗体を用いたイムノクロマトキットの反応特異性) 正常な犬の糞便検体10検体を反応に供した。糞便80mgを採取し緩衝液3.2mlに溶解させ(最終糞便濃度:2.5%)被験試料を調製した。本被験試料を試料添加用部材に3滴滴下した以外、実施例2の(5)と同様の試験を行った。その結果を表2に示す。 表2に示されるように、10検体の全てにおいて陰性が確認され、非特異反応は確認されなかった。 本発明は、犬のパルボウイルスに対するIgMモノクローナル抗体を用いた免疫測定法、とりわけ、サンドイッチ式免疫測定法、特に、イムノクロマトグラフィー測定法およびイムノクロマト法テストストリップを提供するものであり、犬や猫などの動物のパルボウイルス抗原を簡単な方法で迅速にかつ高精度で特異的に検出できるので、当該ウイルスに起因する疾病を迅速かつ簡便に診断するために有用である。aはイムノクロマト法テストストリップの平面図、bはaで示されたイムノクロマト法テストストリップの縦断面図。符号の説明1 粘着シート2 含浸部材3 膜担体31 捕捉部位4 吸収用部材5 試料添加用部材 犬のパルボウイルスに対するIgMモノクローナル抗体を使用する免疫測定法からなるパルボウイルス抗原の検出法。 犬または猫のパルボウイルス抗原の検出に用いられる請求項1に記載の検出法。 犬のパルボウイルスに対するに対する第一の抗体と第二の抗体とを用いたサンドイッチ式免疫測定法であって、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方がIgMモノクローナル抗体であることを特徴とするパルボウイルス抗原の検出法。 前記第一の抗体および第二の抗体の何れか一方を担体に固定しておく請求項3に記載の検出法。 犬または猫のパルボウイルス抗原の検出に用いられる請求項3または4に記載の検出法。 犬のパルボウイルスに対する第一の抗体を予め所定位置に固定せしめて形成された捕捉部位を備える膜担体を用意し、犬のパルボウイルスに対する第二の抗体と所定量の被験試料との混合液を、前記捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめ、前記被験試料中に含まれるパルボウイルスと前記第二の抗体との複合体を前記捕捉部位に捕捉させることを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法において、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方がIgMモノクローナル抗体であることを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法。 前記第二の抗体は金属コロイドまたはラテックスで標識されている請求項6に記載の測定法。 前記膜担体がニトロセルロース膜である請求項6または7に記載の測定法。 犬または猫のパルボウイルス抗原の検出に用いられる請求項6乃至8の何れか1項に記載の測定法。 犬のパルボウイルスに対する第一の抗体と第二の抗体と膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記第二の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記捕捉部位から離隔した位置で前記膜担体にてクロマト展開可能なように配置されてなるパルボウイルス検出用イムノクロマト法テストストリップであって、前記第一の抗体および前記第二の抗体の少なくとも何れか一方が、IgMモノクローナル抗体であることを特徴とするパルボウイルス検出用イムノクロマト法テストストリップ。 前記第二の抗体は金属コロイドまたはラテックスで標識されている請求項10に記載のイムノクロマト法テストストリップ。 前記膜担体がニトロセルロース膜である請求項10または11に記載のイムノクロマト法テストストリップ。 犬または猫のパルボウイルス抗原の検出に用いられる請求項10乃至12の何れか1項に記載の検出法。


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