生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_炭素材料の表面フラクタル次元測定方法
出願番号:2005240275
年次:2007
IPC分類:G01N 21/31,C01B 31/02,G01N 15/08


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今井 昭二 JP 2007057268 公開特許公報(A) 20070308 2005240275 20050822 炭素材料の表面フラクタル次元測定方法 国立大学法人徳島大学 304020292 小林 良平 100095670 小川 禎一郎 100135998 今井 昭二 G01N 21/31 20060101AFI20070209BHJP C01B 31/02 20060101ALI20070209BHJP G01N 15/08 20060101ALI20070209BHJP JPG01N21/31 610AC01B31/02 101ZG01N15/08 JG01N21/31 610C 4 1 OL 8 2G059 4G146 2G059AA03 2G059BB15 2G059DD01 2G059EE01 2G059FF08 2G059MM04 2G059NN01 4G146AA01 4G146AD40 本発明は、炭素材料の表面フラクタル次元を簡単に測定する方法に関する。 脱臭剤などに用いられる活性炭の表面には、多数の細孔が存在するが、これらの細孔はフラクタル構造に類似する階層構造を成している(図1(a))。このうち比較的大きなマクロ孔にはタンパク質などの超大型分子が吸着し、中間的なサイズのメソ孔には色素などの大型分子が吸着し、それより小さいミクロ孔には一般の分子が吸着し、さらに小さいサブミクロ孔には原子や気体分子、低分子量分子が吸着することが知られている(図1(b))。 したがって、活性炭をガス吸着材として用いる場合、とりわけガス分子サイズの小さいメタン、エタンその他の低級炭化水素ガスや水素を吸着するための材料として用いる場合には、比表面積が大きく、ミクロ孔の容積が大きいものが有利とされ、これらの要件を指針として、吸着活性を向上させた多種の活性炭が研究され、開発されている(特許文献1)。しかし、これまで活性炭のサブミクロ孔の有無の判断は、容易ではなかった。特開2001-122608号公報([0002]) 前述のとおり、活性炭等の炭素材料の細孔構造はフラクタル構造に類似するため、そのフラクタル構造の特性値であるフラクタル次元により、その炭素材料の表面のサブミクロ孔の割合を表すことができる。このフラクタル次元は一般にD値と呼ばれ、表面に細孔が生じその構造が複雑になると共にDの値は大きくなる。単分子相の飽和吸着量VmはこのD値と次のような関係があることが知られている。 Vm = k・r-Dここで、kは比例定数、rは吸着分子の有効半径である。 活性炭表面の表面フラクタル次元Dの値は、一般に、1000K程度の熱処理ではD=3に近いが、1700KになるとD=2程度となり、サブミクロ細孔が消失して表面がより平面化することが知られている。 従来、炭素材料のフラクタル次元を測定するための簡易な方法は存在せず、サイズの異なる分子や原子を順に吸着及び脱着させ、それぞれの吸着量を測定することにより決定するという面倒な方法しかなかった。 本発明が解決しようとする課題は、炭素材料の表面のサブミクロ孔の存在量を表す指標であるフラクタル次元を簡単に測定する方法を提供することである。 上記課題を解決するために成された本発明に係る炭素材料の表面フラクタル次元測定方法は、 測定目的の炭素材料に貴金属原子を吸着させ、その黒鉛炉原子吸光信号の温度変化測定より該貴金属原子の活性化エネルギーを求め、その活性化エネルギーより表面フラクタル次元を求めることを特徴とする。 本発明に係る方法により、活性炭等の炭素材料の表面フラクタル次元を簡単に測定することができ、炭素材料表面のサブミクロ孔の存在割合を決定することができる。サブミクロ孔の存在割合は吸着作用や触媒作用の理解に必須の情報であり、本方法により炭素材料の評価を容易に行うことができ、その製造方法の改良に資することができる。 本発明による測定の原理を以下に示す。 時刻tまでに黒鉛炉内で原子状態となる原子数をn1、黒鉛炉から出ていった原子数をn2としたとき、時間tにおける黒鉛炉内の原子数Nは次のように表される。目的とする原子の黒鉛炉内当初存在量N0は、黒鉛炉内で完全に原子化する時間τより次式で表される。 最終的には、吸光度信号の最大値Amaxは原子総数N0に比例し、吸光度信号の出現から消失までの吸光度の積分値Asはτに無関係で、原子総数N0に比例する。 原子吸光度信号の変化(吸光度プロファイル)の模式図を図2に示す。 金属原子を炭素材料に吸着させた後、黒鉛炉の温度を急速に昇温し、該金属原子の吸光度信号の時間変化を測定するならば、金属原子の脱離速度とその活性化エネルギーを求めることができる。金属原子が単原子的にバラバラに脱離しランダムに原子化するときは、脱離反応は一次反応である。 この単原子金属の脱離の活性化エネルギーと表面フラクタル次元の間には、後述するように、図11に示すような直線関係が見出された。 このように、炭素材料への吸着種として、サブミクロ孔に単原子吸着しうる金属原子を選べば、サブミクロ孔についての知見が得られる。このような金属材料としては、金、白金等の貴金属材料を用いることができるが、特に金はその原子半径が0.14nmであるのでサブミクロ孔に吸着でき、また、入手も比較的容易であることから、本発明に係る方法に使用するに適している。 測定装置の一例の概略構成を図3に示す。原子吸光装置は、日立製作所製Z−8000型Zeeman原子吸光分光光度計を用いた。金溶液の注入は同社製オートサンプラーを用い、有機物水溶液試料はGilson社製P-200を用いて注入した。黒鉛炉は日立製作所製PG炉を用いた。光源は日立製作所製Au元素の中空陰極ランプを用いた。 データプロセッサにより得られた吸光度はRS−232Cを介して外付パソコンに記録し、黒鉛炉の温度データは、原子吸光分光光度計に付属の光温度制御装置の出力をA/D変換後、同パソコンに記録した。温度校正はChino社製放射温度計IR‐AHISとPt‐Rh電熱対を用いた。バックグラウンド補正は、ゼーマンバックグラウンド補正法で行った。測定は、吸光度カーブのピーク高さ及び面積の両方で行った。 水は、日本ミリポア株式会社製のMILLIPORE Elixで脱イオン化された逆浸透水をMilli-Q academicにより純度を高めた超純水を用いた。 金溶液には、関東化学株式会社製原子吸光分析用標準溶液Au=1000ppm(1 mol/HCl)を用いた。塩酸は、関東化学製の特級塩酸を1.0Nに希釈し、褐色ビンに保存したものを用いた。 測定対象とした炭素材料は、次の3種である。・粒状活性炭 武田薬品工業製のモルシーボンX2M4/6をダイヤモンドやすりにて削った後、メノウ乳鉢で粉砕したもの・活性炭素繊維A 東邦化工建設製ACF FE-200Aを水中で分散させたもの・活性炭素繊維B 東洋紡績製BW5506を3mmの長さに切断し、水中で分散させたもの これらのうち、粒状活性炭は、サブミクロ孔からマクロ孔までを含む細孔径分布の幅広い分布を有している。他方、活性炭素繊維は細孔径10nmを中心としたミクロ孔のみを有している特異的な炭素材料である。 これらの炭素材料について、次のような測定を行った。黒鉛炉の中に測定対象である炭素材料を置き、その炭素材料に前記金溶液を滴下する。黒鉛炉の温度を120℃まで上昇させて試料の脱溶媒及び灰化を行い、その後、2500℃程度まで急速昇温する(例えば2000℃/sec程度)。この間の吸光カーブの位置と強度を黒鉛炉温度に対して測定する(図2)。 粒状活性炭試料に金溶液を滴下したときの原子吸光プロファイルを図4に線4で示す。黒鉛炉に炭素材料を置かないで標準溶液のみで測定した原子吸光プロファイル(線1)と比較すると、金の原子吸光のピークは高温側へシフトした。ここで、予め粒状活性炭試料を金溶液に常圧において浸漬させ金を吸着させたときの原子吸光プロファイル(線2)も高温側へシフトした。 また、図5(a)、(b)に示すとおり、活性炭素繊維A、Bに金溶液を滴下したときの原子吸光プロファイルは図4とは異なって、標準溶液のみのプロファイルと比較するとピークが高温側へシフトしなかった。活性炭素繊維A、Bを金溶液に予め常圧において浸漬させたものを測定したときの原子吸光プロファイル(線2)は、標準溶液のみのプロファイル(線1)と比較するとピークが高温へシフトした。図5(a)、(b)には、減圧することにより活性炭に吸着しているガスを除去した後、金溶液を浸漬させたときの測定結果も線3として示した。 このように、粒状活性炭及び活性炭素繊維のいずれにおいても、それらに吸着した金原子の吸光プロファイルのピークは、熱分解黒鉛表面に吸着した金標準溶液プロファイルと比較すると高温にシフトしている。これは、これらの炭素材料からの脱着にエネルギーを要することを表しており、金原子がこれら粒状活性炭、活性炭素繊維のミクロ細孔に吸着していることを示している。 解析は、以下に示す固相反応速度論に基づいて行った。このアレニウスの式によるアレニウスプロットから、反応機構および活性化パラメーターを求めることができる。ここで、αは変化率であり、α=Nt/N0=At/Amaxで表される。また、X=RT/Eaとするとき、P=1-2X+6X2-24X3+120X4+・・・ で表され、またAは頻度因子である。 アレニウスプロットにおいて良好な直線性を示す反応機構関数g(α)が最適な反応機構であると判断することができ、その傾きから金の活性化エネルギーを決定することができる。 いろいろな反応モデルを仮定した場合のg(a)関数を図6(表1)に示した。この表において、F1は、金属原子が単原子状態で分散しており反応次数n=1である場合を示す。金属原子が島やクラスターなどの会合体を形成し、それが拡散律速となる場合がD1〜D3であり、界面律速となる場合がR1〜R3である。また、A3/2、A2〜A4は核形成と反応成長過程を示す。 前述のとおり、粒状活性炭は、サブミクロ孔からマクロ孔までを含む細孔径分布の幅広い分布を有しているが、活性炭素繊維は細孔径10nmを中心としたミクロ孔のみを有している。一方、金原子は、メソ孔以上の孔径において単原子分散を起こさないことは既に報告されている。 温度−吸光度プロファイルの速度論的解析により、金原子をミクロ孔のみ選択的に持つ活性炭素繊維に吸着させたとき単原子分散が確認されなかったこと、及びサブミクロ孔に吸着した場合のみ単原子分散することが認められたことから、活性炭材料に金を吸着させた際、金原子はサブミクロ孔にのみ単分子的に吸着されると結論できる。 黒鉛炉内で有機物水溶液の加熱分解により活性炭を生成し、同様の測定を行った。有機物としてはサッカロース及びアスコルビン酸を用いた。 活性炭を生成した後放冷し、金50ppbを含む標準溶液20μlを加え、活性炭を用いない場合を標準として、乾燥・灰化及び原子化の過程を温度−吸光度プロファイルを測定して解析した。5%サッカロース水溶液を用いた場合の測定結果の一例を図7に示す。 活性炭上に吸着させた場合は、標準溶液のみの場合に比較し、吸光度ピークの高温側シフトが見られる。金原子の第2ピークに注目して速度論的解析を行い、金原子は単原子分散して吸着しているものと結論した。金の原子化の活性化エネルギーを求め、活性炭生成温度との関係を、サッカロース水溶液の場合を図8(表2)に、アスコルビン酸溶液の場合を図9(表3)に示す。表面フラクタル次元を求め、その値と活性化エネルギーの関係を、カーボンブラックや熱分解黒鉛での値と共に、図10(表3)に示す。また、両者の関係を図11に示す。 金原子は、炭素原子と特異的な相互作用することなく、単純なファンデルワールス力によって吸着している。ここで、計測される活性化エネルギーはこのファンデルワールス力に相当する。ファンデルワールス力が、金原子と相互作用できる位置にある炭素面の有効面積に依存することから、サブミクロ孔の凹凸が活性化エネルギーに影響を与えることとなる。従って、活性化エネルギーと表面フラクタル次元のプロットに基づいて、未知炭素材料上での金原子の原子化の活性化エネルギーから、そのサブミクロ孔の表面フラクタル次元が求められることとなる。 表面プローブとして、原子半径0.14nmの金原子を用いていることから、本実施例により評価される炭素材料表面のサブミクロ孔は0.14nmレベルの凹凸と考えられる。 金以外の単原子吸着する金属原子を選択すれば、サイズの異なるサブミクロ孔についての知見が得られると考えられる。 なお、上記実施例においては、金原子の分析にゼーマン原子吸光分光光度法を用いたが、金原子等の貴金属原子の吸着量とその温度変化を高感度に測定できる方法であれば、吸光分光測定装置はこれに限定されない。 本方法によれば、従来計測できなかったサブミクロ孔の存在について知ることができる。より高品位な活性炭の生産において、サブミクロ孔の存在量を計測しつつ製造工程の評価を行えば、高付加価値を有する活性炭の製造が容易となる。これにより有用な炭素系吸着剤が開発され、シックハウス対策、排ガス対策、悪臭対策に有用な成果が得られることが期待される。また、有毒ガスを吸着する能力を測定するという点で、防毒マスクの検査等にも応用することができる。炭素材料表面の各種細孔を示す模式図(a)、及び異なるサイズの分子が細孔に吸着する様子を示す模式図(b)原子吸光分光光度計における黒鉛炉の温度と原子吸光プロファイルの関係を示す模式図測定に用いた黒鉛炉原子吸光分光光度計システムの構成図粒状活性炭に吸着した金原子の原子吸光プロファイル活性炭素繊維Aに吸着した金原子の原子吸光プロファイル(a)、及び活性炭素繊維Bに吸着した金原子の原子吸光プロファイル(b)(表1)速度論的解析方法におけるg(α)関数の各種態様を示す表サッカロース水溶液の加熱分解により生成された活性炭に吸着した金原子の原子吸光プロファイル(表2)金の活性化エネルギーにおける5%サッカロース焼き付け温度の影響を示す表(表3)金の活性化エネルギーにおける5%アスコルビン酸焼き付け温度の影響を示す表(表4)種々のフラクタル表面に単原子分散した金の活性化エネルギーの表金の活性化エネルギーと表面フラクタル次元D値の関係を示すグラフ 測定目的の炭素材料に貴金属原子を吸着させ、その黒鉛炉原子吸光信号の温度変化測定より該貴金属原子の活性化エネルギーを求め、その活性化エネルギーより表面フラクタル次元を求める炭素材料の表面フラクタル次元測定方法。 該貴金属原子が金原子である請求項1に記載の炭素材料の表面フラクタル次元測定方法。 測定目的の炭素材料に貴金属原子を吸着させ、その黒鉛炉原子吸光信号の温度変化測定より該貴金属原子の活性化エネルギーを求め、その活性化エネルギーより求まる表面フラクタル次元の値に基づき炭素材料の表面サブミクロ孔の存在割合を決定する炭素材料の表面サブミクロ孔測定方法。 該貴金属原子が金原子である請求項3に記載の炭素材料の表面サブミクロ孔測定方法。 【課題】炭素材料、特に活性炭の、表面の細孔特にサブミクロ孔の存在量を表す表面フラクタル次元を簡単に測定する方法を提供する。 【解決手段】炭素材料に金属原子を吸着させ、その原子の黒鉛炉原子吸光信号の温度変化測定を通して原子化の活性エネルギーを求める。そして、その原子の飽和吸着量よりフラクタル次元を求める。これらの値より、その原子がサブミクロ細孔に吸着されているかどうか、すなわちその炭素材料にはどの程度サブミクロ孔が存在するかを決定することができる。金原子を例に有用性を示した。【選択図】 図1


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