タイトル: | 公開特許公報(A)_ポリフェノールの抽出方法とその装置 |
出願番号: | 2005234788 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 67/56,C07B 63/00,C07C 69/013,C07C 69/732 |
林 信行 土井 研一 JP 2007045798 公開特許公報(A) 20070222 2005234788 20050812 ポリフェノールの抽出方法とその装置 国立大学法人佐賀大学 504209655 株式会社ミゾタ 000168193 富崎 元成 100093687 円城寺 貞夫 100106770 林 信行 土井 研一 C07C 67/56 20060101AFI20070126BHJP C07B 63/00 20060101ALI20070126BHJP C07C 69/013 20060101ALI20070126BHJP C07C 69/732 20060101ALI20070126BHJP JPC07C67/56C07B63/00C07C69/013 CC07C69/732 Z 8 1 OL 16 特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年2月14日 佐賀大学主催の「農学部応用生物科学科 平成16年度卒業研究発表会」において文書をもって発表 4H006 4H006AA02 4H006AD17 4H006BB14 4H006BB31 4H006BC50 4H006BC51 4H006BC52 4H006BD60 4H006BD84 4H006BJ20 4H006BJ50 4H006BN20 4H006BN30 4H006BS20 4H006KC14 本発明は、サツマイモ茎葉の中から食品や医薬品に有用なポリフェノールを抽出するポリフェノールの抽出方法とその装置に関する。更に詳しくは、サツマイモの茎葉に溶媒として水とエタノールの混合液を接触させ、ポリフェノールを効率良く抽出するポリフェノールの抽出方法とその装置に関する。 植物には、生理活性機能を有する多種の有用成分が多く含まれている。これらは天然化合物として、例えば、サツマイモ(以下、甘藷ともいう。)には、特に茎葉に抗酸化活性等の機能を有するポリフェノールが多量に含まれていることが最近の研究で明らかになっている。身体の老化や発ガン性物質の原因である活性酸素を抑え、ポリフェノールのうちでもトリカフェオイルキナ酸は抗HIV(エイズウイルス)活性を有することが明らかになっている。 品種により異なるがサツマイモの葉部には、乾燥物100gあたり4.5g以上の総ポリフェノールを含んでいる。このサツマイモ葉からは、クロロゲン酸、3種のジカフェオイルキナ酸、及びトリカフェオイルキナ酸、のカフェ酸誘導体とカフェ酸が得られることが報告されている。 ポリフェノールは一般的に細菌、ウィルス等への抵抗力があり、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用、血中コレステロール低下作用もあり、高血圧、糖尿病、肥満、動脈硬化等に有効な物質として注目されている。これら物質の抽出については、従来から種々提案されている。抽出物質は、一般的には原料に水、湯、又はアルコール水溶液を用いて抽出がなされ、更に抽出したものを濃縮して精製される。 ポリフェノール類の抽出技術としては、特許文献1,2にその抽出技術の例が示されている。特許文献1にアスコルビン酸を添加する方法、又特許文献2には、水又はアルコールの抽出溶媒に植物を所定時間浸漬する方法が示されている。更に特許文献3には、サツマイモ葉からポリフェノールを分解しカフェ酸を生成する技術が示されている。特開2002−97187号公報特開平7−196645号公報特開2004−350619号公報 一般的に、植物原料の中からポリフェノールを抽出する従来の抽出法は、開放状態の釜あるいは鍋で煎じる方法(即ち、100℃以下)、あるいはオートクレーブのような耐圧性容器内で回分的に抽出する方法がとられている(例えば、日本国特許第3212278号)。それに対し、本発明の抽出方法は、これらの従来の抽出方法とは異なるものである。 これらのポリフェノールは溶媒によってその抽出量は異なってくる。従って理想的には、そのサツマイモ茎葉に含まれているポリフェノールを全て効率的に短時間で抽出することができればよい。現状は対象のサツマイモ茎葉に対し最適と思われる溶媒のみを接触させて試験的に抽出を行ってはいるが効率的とはいえない。 前述したようにサツマイモ茎葉には種々の有用な物質が多く含まれている。従って、一連の抽出過程で同時に同一サツマイモ茎葉に含まれている種々のポリフェノールをなるべく多くしかも短時間で抽出できれば抽出効率が飛躍的に向上することになる。前述の特許文献には、サツマイモ葉等を有効活用しようとするもので、抽出されたカフェ酸の誘導体を主成分とするポリフェノールに麹菌、又はその抽出液を作用させてカフェ酸を製造する技術が提案されているが、抽出そのものの技術ではない。又、トリカフェオイルキナ酸については明記されていない。 従って、サツマイモ茎葉には、前述のようにポリフェノール、特に抗HIV活性に有効なトリカフェオイルキナ酸のように有用な成分が含まれていることは知られているが、これを有効に抽出する技術は確立されていない。従来は、常圧下で、抽出溶媒の沸点以下の温度で行われるいわゆる回分式の抽出方法である。従って、能率の良い抽出方法とはいえないものであった。 本発明は、このような従来の問題点を解決するために開発されたもので、次の目的を達成する。 本発明の目的は、サツマイモ茎葉中のポリフェノールを抽出するため高温高圧の抽出条件で最適な溶媒を使用し、短時間で多量の抽出が行える効率の良い抽出を可能としたポリフェノールの抽出技術とその装置の提供にある。 以下、本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。 本発明1のポリフェノールの抽出方法は、甘藷の茎葉部からポリフェノールを抽出する方法であって、予め準備された溶媒を取り出す溶媒供給工程と、前記取り出された溶媒を飽和蒸気圧以上に高圧にする加圧工程と、前記取り出された溶媒を加熱する加熱工程と、前記高圧及び加熱された溶媒を前記茎葉部に供給する供給工程と、前記供給された溶媒を一定量の前記茎葉部に所定圧と所定温度を維持して所定時間接触させて反応させ前記ポリフェノールを抽出する抽出工程と、前記抽出工程で抽出された前記ポリフェノールを冷却させる冷却工程と、冷却された前記ポリフェノールを一定の圧力以上に保持して回収する回収工程とからなる。 本発明2のポリフェノールの抽出方法は、本発明1のポリフェノールの抽出方法において、前記ポリフェノールは、トリカフェオイルキナ酸を含むものであることを特徴とする。 本発明3のポリフェノールの抽出方法は、本発明1のポリフェノールの抽出方法において、前記溶媒は、水、又は水及びエタノールの混合溶媒であることを特徴とする。 本発明4のポリフェノールの抽出方法は、本発明3のポリフェノールの抽出方法において、前記溶媒は、水及びエタノールの混合液であり、前記加熱工程は、前記溶媒の温度を160±10℃にする工程であり、前記高圧工程は、前記溶媒の圧力を前記所定温度の前記エタノールの飽和蒸気圧以上にすることを特徴とする。 本発明5のポリフェノールの抽出方法は、本発明4のポリフェノールの抽出方法において、前記水とエタノールの混合溶媒中の前記エタノールの混合割合は、70±10%であることを特徴とする。ただし、ポリフェノールは、70±10%以外の領域でも抽出可能であるが、70%の前後の10%が抽出効率が良い。特に、約70%が最も効率的に抽出できる。 本発明6のポリフェノールの抽出方法は、本発明1ないし5のポリフェノールの抽出方法において、前記溶媒を前記茎葉部に接触させ前記ポリフェノールを抽出する時間は、前記溶媒を所定の温度に昇温し抽出が完了するまでの時間であることを特徴とする。ただし、昇温時間が早いとき、即ち、温度勾配が大きい場合、昇温完了後も暫く抽出操作を行う必要がある。 本発明7のポリフェノールの抽出装置は、甘藷の茎葉部からポリフェノールを抽出するポリフェノールの装置であって、溶媒を収納する溶媒収納装置と、前記溶媒収納装置から取り出された溶媒を高圧にして前記茎葉部に供給する供給装置と、前記溶媒収納装置から取り出された溶媒を加熱して前記茎葉部に供給する加熱装置と、前記加圧、加熱された前記溶媒を前記茎葉部に所定時間接触させて反応させ、ポリフェノールを抽出する抽出装置本体と、前記抽出装置本体に設けられ、前記溶媒及び前記茎葉部を加熱維持させるリアクタ加熱装置と、前記抽出されたポリフェノールを冷却させる冷却装置と、前記冷却されたポリフェノールを一定圧力以上に保持して前記抽出装置に留める背圧装置と、前記抽出されたポリフェノールを回収する回収装置とからなる。 ただし、本発明のポリフェノールの抽出は、この抽出装置に限定されず、耐圧容器内に原料を詰めて、オイルバス内に耐圧容器を浸漬して前述した抽出条件を整えるものである。即ち、高温高圧回分式とも言える方法であってもよい。必要な圧力は、耐圧容器内に窒素ガスを、例えば2Mpaの圧力で封入することにより必要な内圧を確保する方法である。 本発明8のポリフェノールの抽出装置は、本発明7のポリフェノールの抽出装置において、前記圧力装置による前記高圧の圧力はエタノールの飽和蒸気圧以上であり、前記加熱装置による加熱温度は160±10℃であり、前記溶媒は70±10%のエタノールを含む水とエタノールの混合溶媒であることを特徴とする。 本発明は以上の手段で構成されており、更に具体的に詳述すると、例えばパーコレータ式の耐圧容器を用い、この容器に仕込んだサツマイモ茎葉中のポリフェノール抽出に最適な抽出溶媒を高圧ポンプで2.0MPaの高圧にして通液する手法により、最適には160℃が好ましい溶媒の沸点以上の温度帯で収率良くポリフェノールを抽出できるようにしている。溶媒も水のみでなく有機溶媒、pHやイオン強度を抽出最適条件に調整した溶媒、特に、70%エタノールを含む水とエタノールの混合液を使用することで、目的の抽出物質の収率を向上できる。 本発明のポリフェノールの抽出方法は、品種を問わずサツマイモの茎葉から、予め準備された最適の溶媒、即ち水とエタノールの混合された溶媒を高圧にし、加熱してサツマイモの茎葉に供給できるようにした。この結果、サツマイモ茎葉から最適な条件で、短時間で多量のポリフェノール、特にトリカフェオイルキナ酸が効率よく抽出できるようになった。 以下、本発明の具体的な態様を実施の形態として説明する。本実施の形態は、主に食品や医薬品に使用される有用物質を抽出するものであり、特にサツマイモ茎葉(以下「原料」という)に適用し、この原料から生理活性機能を有する有用な機能性物質、即ちポリフェノールを最適に準備された溶媒を使用して抽出する技術である。原料は、サツマイモの茎、葉を主としている。 トリカフェオイルキナ酸はポリフェノールの一種である。このポリフェノールは、同一分子内に複数のフェノール性水酸基をもつ植物化合物の総称で、ほとんどの植物に含まれている。光合成による色素や苦味のある成分であり、その構造はOH基が2つ以上付いているもので、抗酸化能力にすぐれ血圧上昇抑止効果、血糖値上昇抑止効果、血液をサラサラにする効果等のある物質である。 カフェ酸誘導体はその代表的な物質であるが、その中のトリカフェオイルキナ酸も有効な物質の1つとして、前述したように抗HIV活性を有しており、サツマイモの茎葉に多く含まれている。このポリフェノールは他に特にチョコレートやココアにも多く含まれていることから医薬品関係以外に健康食品に対しても注目されている物質である。 次に本実施の形態による有用物質の抽出技術を図と表に基づき説明する。図1は、本実施の形態のポリフェノールの抽出装置1の概要図で、模式的に示した図である。本発明構成の中心をなす抽出装置本体2は、反応器である。抽出装置本体2の内部は空間が区画されており、この空間には細片あるいは細粉化したサツマイモ茎葉Aが装入されていて、本発明の場合は、サツマイモの茎あるいは葉を対象にしている。抽出装置本体2はこれらの原料を装入していて、これを加熱加圧した溶媒に接触させポリフェノールを抽出する。 本実施の形態に関する抽出技術の構成は、抽出装置本体2以外に予め溶媒を収納している溶媒タンク3と、この溶媒タンク3内の溶媒4を取り出し高圧にして送り出す高圧ポンプ5と、送り出された溶媒4を加熱する加熱装置(熱交換器)6と、この加熱装置6で加熱された溶媒4が供給される前記の抽出装置本体2と、この抽出装置本体2で抽出されたポリフェノール7を冷却するための冷却装置8と、抽出されたポリフェノール7を高圧状態に維持する背圧弁9と、この背圧弁9を介して排出されるポリフェノール7を回収する回収装置10等から構成されている。 抽出装置本体2は、その内部に細片化されたサツマイモ茎葉Aを収納する円筒型のステンレス製のものであり、その両端に多孔質フィルタ2bが配置された構造である。この外周にこの抽出装置本体2を加熱維持するために電熱ヒータであるリアクタ加熱装置2aが設けられている。次に、このポリフェノール7を抽出する技術を、図に従って詳細に説明する。前述したとおり、抽出装置本体2には溶媒4が供給されるが、この溶媒4には通常は水が使用される。本実施の形態の場合は、水(蒸留水)以外に食品に有用で無害な溶媒、即ち、エタノールと水の混合液を対象にしている。溶媒4としては、この水とエタノールの混合液を使用し、最適な割合で混合された液を溶媒4として予め専用の溶媒タンク3に収納しておく。 この溶媒4は、予め複数の溶媒タンク3を用意したものであってもよい。図示はしていないが、抽出原料に最適な複数の溶媒タンク3を予め個別に準備し、これを切り替え装置で切り替えて選択し、選択された最適な溶媒を使用する方法である。この準備される個別の溶媒の設置数に制限はない。この溶媒4は、水以外に例えば、有機溶媒、アルコールやその混合溶液、又、緩衝液やpHを調整した溶液、塩類を溶解した溶液等の使用も可能であり、使用される用途に無害のものであるものが好ましい。 この溶媒タンク3から取り出された溶媒4は高圧ポンプ5により高圧にして加熱装置6に送り出される。高圧ポンプ5において溶媒4は、飽和蒸気圧以上に加圧される。この圧力は、本実施例の場合2MPaで好結果を得ている。この理由は、160℃のエタノールの飽和蒸気圧は1.296Mpaであり、170℃のエタノールの飽和蒸気圧は1.648Mpaであるので、これらの温度の飽和蒸気圧をわずかに上回る圧力として、2MPaに設定したものである。水とエタノール70%の混合溶媒では、サツマイモの茎葉からのポリフェノール7の抽出温度は、160±10℃がほぼ効率的であるとの知見が得られた。従って、このときのエタノールの最大の温度である170℃で液相を維持し、しかも不必要な高圧によるエネルギコストを上昇させることによるロスを考慮すると、本実施の形態では約2Mpa程度が最適と判断される。 溶媒4はこのように高圧化されて加熱装置6に導かれ加熱される。この加熱装置6は、加熱用蛇管で構成されており、加熱されたシリコンオイル槽あるいは塩浴等の溶液中に加熱用蛇管が浸されている。溶媒4はこの加熱用蛇管を通過するときの熱交換により加熱されるようになっている。しかし、この加熱装置6はこの構成に限定されるものではない。この溶媒4の加熱温度は、原料によって異なるが、本実施の形態のサツマイモの茎葉を原料とする水とエタノールの混合溶媒による抽出の場合は、後述するように160±10℃の温度でポリフェノールの抽出に好結果を得ている。 この溶媒4の温度は、ポリフェノール7を抽出するのに最も適する温度であるが、この加熱温度は、原料の種類によって異なるので、原料に最適な条件になるように設定される。このように加圧、加熱するのは、サツマイモ茎葉Aからポリフェノール7抽出の収率を向上させるためである。この溶媒4は、抽出装置本体2に供給されるに際しては図示していないが熱電対等の温度センサーにより温度管理がなされる。 この温度管理により、リアクタ加熱装置2aによって溶媒4を原料に合わせ種々の温度に設定することができ、又、常に一定の温度に保持することもできる。このようにして、抽出温度をコントロールすることができる。下限は溶媒の凝固点以上であるが、装置全体の耐圧性を上げると、高温側は臨界点以上の温度でも設定可能である。この条件の範囲にある溶媒4を抽出装置本体2にパイプを介して供給し、抽出装置本体2内に装入されている原料Aと接触させポリフェノール7の抽出を行う。抽出装置本体2は、ポリフェノール7を抽出するためのものである。抽出装置本体2は図では簡略的に示しているが、端的にいうと、ステンレス製で内部が空洞の円筒体である。 この抽出装置本体2の両端部には、ステンレス製の多孔質フィルタ2bが着脱自在に固定されている。この多孔質フィルタ2bは、2〜100μmの範囲の貫通した多数の孔が形成されたものである。この多孔質フィルタ2bの材質は、ステンレスであるが、ステンレスに限らず互いに連通する気孔を多数形成された多孔質セラミックなどでもよい。多孔質セラミックの最適な気孔のサイズは、主に破砕原料の粒径等によって決まるが、最も適した孔が形成されるようにセラミックスの粒径を選択して製造するとよい。又、この抽出装置本体2の上下端には、溶媒4を供給する供給口と抽出された有用物質の排出口が設けられている。この抽出装置本体2に装入されている原料はサツマイモの茎や葉であり、細切片あるいは粉末状にされたもので、抽出し易い形態にされたものである。 この原料中のポリフェノールは多孔質フィルタ2bから流出するが、原料は多孔質フィルタ2b内に保持されているので、抽出装置本体2から流出することはない。抽出装置本体2の外周には、リアクタ加熱装置2aが組み込まれ、加圧加熱された溶媒を一定の温度で加熱保持している。このリアクタ加熱装置2aは、本実施の形態では抽出装置本体2を外部から加熱する電気ヒータであるが、熱媒体油で加熱するための熱交換器を用いたものでもよい。この抽出装置本体2における有効な抽出時間は5〜60分の範囲である。この時間の範囲は抽出を可能とする最も適する温度での範囲であるが、実際には原料の種類、抽出の条件等により最適な時間を特定し設定する。 抽出装置本体2から抽出されたポリフェノール7は、溶液又は懸濁液として、冷却装置8に送り込まれ、ポリフェノール7は大気圧下での溶媒の沸騰温度以下まで冷却される(本実施の形態では、室温である)。この冷却は、ポリフェノール7の熱分解や熱変性を抑え、流出する溶媒の沸騰を防止するためのものである。冷却されたポリフェノール7は、最終的に背圧弁9により一定の圧力を維持するようになっていて、この背圧弁9を介して外部に排出され回収タンク10に回収される。 この背圧弁9は、溶媒4を高圧状態にして供給する工程、即ち高圧ポンプ5以降の工程で冷却終了時までの間を、処理温度に於ける溶媒4の飽和蒸気圧以上の圧力に保圧させ、高圧ポンプ5、加熱装置6、抽出装置本体2、及び冷却装置8の間を液相に保つためのものである。圧力を保持することで、溶媒4の沸点以上の温度領域での抽出操作が可能となる。又、この抽出装置1には、これら一連の流れの中で温度コントローラ、圧力コントローラ等を電気的に制御するためのコントロール装置やスイッチ類が付随して設けられている。 以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明がこれに限定されないことはいうまでもない。本実施の形態例は、サツマイモのポリフェノールの抽出を中心に説明したが、他への適用は可能である。次に本実施の形態に基づく実施例を説明する。 以下、具体的な実験例を実施例として説明する。この実施例の目的は、高温高圧での溶媒による抽出法を適用し、サツマイモ茎葉部からトリカフェオイルキナ酸を効率的に抽出する条件の確認を行うものである。従来の沸点以下で、常圧の回分式による抽出法と比較した。(試料) サツマイモ茎葉に相当する試料は、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構より入手した通風乾燥後の甘藷(品種名:こがねせんがん(黄金千貫))葉部(含水率9.0%)を用いた。(抽出法) 図1に示す抽出装置を適用して抽出を行った。反応器(抽出装置本体)の溶媒流入部と流出部に孔径20μmの焼結フィルターをセットし、この中にサツマイモ茎葉を仕込む形になっている。熱交換器にはシリコンオイルを満たしたオイルバスを用い、この中に抽出溶媒が流れる蛇管を浸す形とした。図示していないが、高圧ポンプ5と熱交換器6、冷却装置8と背圧弁9の間にそれぞれ圧力計を設置して内部の圧力を測定した。又、反応器2の上部と下部に熱伝対温度計を挿入することにより抽出装置本体2内の温度をモニターした。抽出装置本体2は内容積20mLで35MPaまでの圧力条件で使用できる。 本装置の抽出装置本体2内に3mm角にカットした甘藷葉部約0.5g(wet base g)を仕込み、抽出装置本体2をマントルヒーターで覆った。通液条件は、2.0MPa、3.0mL/minとし、通液開始後から昇温を開始した。本実施例では、昇温後の目的温度を100℃、120℃、160℃とし、昇温中と昇温後10分間隔で抽出液を回収し、以後の分析に供した。図2に抽出温度の変化とサンプリングしたフラクションを模式的に示した。尚、各温度において、室温から目的温度に到達するまでの所用時間は20分であった。回分抽出においては、三角フラスコ内での抽出を行なった。即ち、300mL用三角フラスコに3mm角にカットした試料0.5g(wet base g)と溶媒100mLを入れ、75℃で1時間の振盪抽出を行った。都合3時間、300mLの溶媒による抽出を行い、以後の分析に供した。(分析) 抽出物中のポリフェノール類は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量した。 分析条件は以下のとおりである。 カラム:YMC−Pack ODS−AM 溶離液:0.2%ギ酸(A液)、99.7%MeOH(B液) A:B=98.2→55:45→0:100 流 速:3.0mL/min サンプルループ :20μL クラジェントポンプ:JASCOPU―2089 カラムヒーター :SugaiU―620TypeVP50 カラム温度:40℃ 検出器 :HITACHI L−4000UV Detector(326nm) 抽出物質中のポリフェノール量は、標準物質のリテンションタイムとピーク面積をもとに固定・定量した。(結果) 図3に、流通式リアクタ(抽出装置本体)を用いて抽出された固形分収率を仕込量(乾物)基準%で示した。99%エタノールの100℃、120℃を除き、各溶媒(蒸留水、70%エタノール、99%エタノール)とも、全ての抽出温度条件において昇温過程で最も抽出量が多く、目的温度到達後の抽出量はそれほど多くなかった。従って、目的温度到達後の維持時間は、殆ど必要がないものと判断される。又、表1に示したように、この時の(40分まで)累積収率は70%エタノールを用いた場合で抽出量が多く、160℃・70%エタノールでの累積収率が最高であった。次に蒸留水での値が大きく、99%エタノールの場合での値が最も少なかった。 図4は、比較のため従来例(回分式)の抽出を行ったもので、回分式(75℃)で1時間×3回の抽出を行ったときの抽出挙動を示している。回分式においても初めの1時間(1回目)の抽出時に大部分の可溶性成分が溶出し、2回目、3回目の抽出操作における抽出量は低下した。又、流通式に比べ抽出時間を要している。回分式における累積抽出物量は、表1に示すように、流通式の100℃における抽出量に近く、120℃、160℃の温度条件での抽出量に比べ少ないことがわかる。図3及び図4は、甘藷葉から抽出された抽出物の総量、即ち、ポリフェノール以外のものを含んだ可溶物量を仕込み乾燥基準での%表示である。160℃条件で、可溶物収率の向上がみられる。 続いて、抽出物中のポリフェノール類を定量した結果を図5(流通式)及び図6(回分式)に示した。HPLCで定量可能であった4種のポリフェノール(3,5−diCQA 4,5−diCQA、3,4−diCQA、3,4,5−triCQA)の収量を乾燥葉1gあたりのmg数で示した。図5に示すように、甘藷葉に含まれるポリフェノール類は昇温過程で大半が抽出され、抽出量は水30%と70%エタノールの混合溶媒(以下、70%エタノールともいう。)を用いたとき最も収量が大きいことがわかる。 図5及び図6に示すデータは、可溶化物に含まれるポリフェノールのうち定量可能であった4種(3,5−diCQA 4,5−diCQA、3,4−diCQA、3,4,5−triCQA)の収量を仕込み乾燥葉1gあたりで比較したものである。ポリフェノール類は70%エタノールの溶媒条件で最も抽出効率が高いことが明らかになった。 図7には、乾燥葉1gあたりのキナ酸類累積収量(mg)と抽出条件の関係を示した。いずれの抽出条件においても蒸留水30%とエタノール70%の混合溶媒(以下、70%エタノールともいう。)を抽出溶媒としたときに最も抽出量が多く、含有率も高いことがわかる。以上図3〜図7の結果を表2にまとめた。いずれの温度条件においても70%エタノールを抽出溶媒としたときに最も抽出量が多く、含有率も高い結果となった。 前述したように、甘藷葉からのポリフェノール抽出物のうち、特に重要なものは3,4,5−triCQA(3,4,5−トリカフェオイルキナ酸)である。図8に各種抽出条件と抽出物中の3,4,5−triCQA量の関係を示した。図に示したように、抽出目的物質である3,4,5−triCQA量は70%エタノール・160℃条件下で特異的に多く抽出されることが分かる。図9は、抽出温度と各種キナ酸類の抽出量の関係を示す図である。即ち、「CA」は、カフェ酸(別名 コーヒー酸)、「ChA」は、クロロゲン酸、「4,5−diCQA」は、4,5−ジ-カフェオイルキナ酸、「3,5−diCQA」は、3,5−ジ-カフェオイルキナ酸、「3,4−diCQA」は、3,4−ジ-カフェオイルキナ酸、「3,4,5−triCQA」は、3,4,5−トリ-カフェオイルキナ酸である。何れの温度領域でも3,5−ジ-カフェオイルキナ酸の収量が大きいことが伺える。 その抽出量は70%エタノールを用いた75℃回分式の抽出量に比べ約5倍に向上し、本法の有用性が示された。図8は目的物質である3,4,5−トリカフェオイルキナ酸の収量を示すものである。前述のように70%エタノール・160℃条件下では従来法の5倍の収量が得られる結果となった。又、抽出時間も従来に比し大幅に短縮された結果となった。 実施例1で明らかにした至適抽出溶媒条件(蒸留水30%とエタノール70%)におけるキナ酸類の各種温度条件下での抽出挙動を精査することとし、流通式反応器を用いて、80℃、120℃、140℃、160℃、180℃における抽出を行い、キナ酸類の抽出量と温度条件の関係を調べることとした。(試料) 実施例1と同じである。(抽出法) 基本的に実施例1と同じである。反応器内に3mm角にカットした甘藷葉部約0.5g(wet base g)を仕込み、2.0MPa、3.0mL/minの要件で70%エタノールを通液した。通液開始後から昇温を開始し、目的温度(80℃、120℃、140℃、160℃、180℃)まで昇温後、更に40分間の通液を行い抽出液を回収した。抽出液は凍結乾燥後、乾燥物中に含まれるキナ酸類をHPLCにて分析した。(分析) 実施例1で示したキナ酸類に加え、カフェ酸、クロロゲン酸についても分析を行った。(結果) 図9に抽出成分と抽出温度の関係を示した。図のように、70%エタノールを用いた抽出では、160℃条件下で最も高い収量が得られた。180℃における収率低下は、耐熱性を調べた実験結果から熱分解によることも判明している。目的物質であるトリカフェオイルキナ酸も、160℃条件で最も収率が高い結果となった。以上の結果から、甘藷葉中のカフェオイルキナ酸、特にトリカフェオイルキナ酸の最適抽出条件は160℃と限定された。図1は、ポリフェノールを抽出するための抽出装置を示す模式図である。図2は、各温度条件での昇温パターンとサンプリングフラクションを示すデータ図である。図3は、流通式リアクタでの抽出物総量を示すデータ図である。図4は、75℃の回分式抽出による抽出物総量を示すデータ図である。図5は、流通式で抽出されたポリフェノール量(乾燥葉1gあたり)を示すデータ図である。図6は、回分式で抽出されたポリフェノール量(乾燥葉1gあたり)を示すデータ図である。図7は、各種抽出条件でのカフェオイルキナ酸類の累積収量を示すデータ図である。図8は、各種抽出条件でのトリカフェオイルキナ酸類の累積収量を示すデータ図である。図9は、抽出温度と各種キナ酸類の抽出量の関係を示す図である。符号の説明1…抽出装置2…抽出装置本体3…溶媒タンク4…溶媒5…高圧ポンプ6…加熱装置7…ポリフェノール8…冷却装置9…背圧弁10…回収装置 甘藷の茎葉部からポリフェノールを抽出する方法であって、 予め準備された溶媒を取り出す溶媒供給工程と、 前記取り出された溶媒を飽和蒸気圧以上に高圧にする加圧工程と、 前記取り出された溶媒を加熱する加熱工程と、 前記高圧及び加熱された溶媒を前記茎葉部に供給する供給工程と、 前記供給された溶媒を一定量の前記茎葉部に所定圧と所定温度を維持して所定時間接触させて反応させ前記ポリフェノールを抽出する抽出工程と、 前記抽出工程で抽出された前記ポリフェノールを冷却させる冷却工程と、 冷却された前記ポリフェノールを一定の圧力以上に保持して回収する回収工程と からなるポリフェノールの抽出方法。 請求項1に記載のポリフェノールの抽出方法において、 前記ポリフェノールは、トリカフェオイルキナ酸を含むものであることを特徴とするポリフェノールの抽出方法。 請求項1又は2に記載のポリフェノールの抽出方法において、 前記溶媒は、水、又は水及びエタノールの混合溶媒であることを特徴とするポリフェノールの抽出方法。 請求項3に記載のポリフェノールの抽出方法において、 前記溶媒は、水及びエタノールの混合液であり、 前記加熱工程は、前記溶媒の温度を160±10℃にする工程であり、 前記高圧工程は、前記溶媒の圧力を前記所定温度の前記エタノールの飽和蒸気圧以上にすることを特徴とするポリフェノールの抽出方法。 請求項4に記載のポリフェノールの抽出方法において、 前記水とエタノールの混合溶媒中の前記エタノールの混合割合は、70±10%であることを特徴とするポリフェノールの抽出方法。 請求項1から5に記載のポリフェノールの抽出方法で選択される1項において、 前記溶媒を前記茎葉部に接触させ前記ポリフェノールを抽出する時間は、前記溶媒を所定の温度に昇温し抽出が完了するまでの時間であることを特徴とするポリフェノールの抽出方法。 甘藷の茎葉部からポリフェノールを抽出するポリフェノールの装置であって、 溶媒を収納する溶媒収納装置と、 前記溶媒収納装置から取り出された溶媒を高圧にして前記茎葉部に供給する供給装置と、 前記溶媒収納装置から取り出された溶媒を加熱して前記茎葉部に供給する加熱装置と、 前記加圧、加熱された前記溶媒を前記茎葉部に所定時間接触させて反応させ、ポリフェノールを抽出する抽出装置本体と、 前記抽出装置本体に設けられ、前記溶媒及び前記茎葉部を加熱維持させるリアクタ加熱装置と、 前記抽出されたポリフェノールを冷却させる冷却装置と、 前記冷却されたポリフェノールを一定圧力以上に保持して前記抽出装置に留める背圧装置と、 前記抽出されたポリフェノールを回収する回収装置と からなるポリフェノールの抽出装置。 請求項7に記載のポリフェノールの抽出装置において、 前記圧力装置による前記高圧の圧力はエタノールの飽和蒸気圧以上で、前記加熱装置による加熱温度は160±10℃であり、前記溶媒は70±10%のエタノールを含む水とエタノールの混合溶媒であることを特徴とするポリフェノールの抽出装置。 【課題】サツマイモの茎葉部からポリフェノール、特にトリカフェオイルキナ酸を効率良く抽出する。【解決手段】サツマイモ茎葉Aに対し、最も適する溶媒4を取り出して2MPaの高圧状態に加圧し、沸点以上の温度、即ち160℃で加熱し、抽出装置本体2に装入されているサツマイモ茎葉Aに接触させて反応させ、ポリフェノール7を抽出する。抽出されたポリフェノール7は、背圧弁9で一定圧を保持した状態で冷却装置8で冷却された後、回収装置10に回収される。溶媒4は水とエタノールの混合溶媒で70%エタノール液である。70%エタノールで、かつ160℃の条件で抽出されるポリフェノール7の累積収量の多いのは、トリカフェオイルキナ酸である。【選択図】 図120060726A1633000473図1は、ポリフェノールを抽出するための抽出装置を示す模式図である。図2は、各温度条件での昇温パターンとサンプリングフラクションを示すデータ図である。図3は、流通式リアクタでの抽出物総量を示すデータ図である。図4は、75℃の回分式抽出による抽出物総量を示すデータ図である。図5は、流通式で抽出されたポリフェノール量(乾燥葉1gあたり)を示すデータ図である。図6は、回分式で抽出されたポリフェノール量(乾燥葉1gあたり)を示すデータ図である。図7は、各種抽出条件でのカフェオイルキナ酸類の累積収量を示すデータ図である。図8は、各種抽出条件でのトリカフェオイルキナ酸類の累積収量を示すデータ図である。図9は、70%エタノール溶媒を用いたときの抽出温度と各種キナ酸類の抽出量の関係を示す図である。A16331図43A16331図63