生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_全身性慢性アトピー性皮膚炎を治療するための医薬組成物
出願番号:2005221269
年次:2007
IPC分類:A61K 31/496,A61P 37/08,A61P 17/00,C07D 405/14


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武市 牧子 JP 2007031410 公開特許公報(A) 20070208 2005221269 20050729 全身性慢性アトピー性皮膚炎を治療するための医薬組成物 武市 牧子 503078852 田村 恭生 100068526 坪井 有四郎 100076521 新田 昌宏 100138900 武市 牧子 A61K 31/496 20060101AFI20070112BHJP A61P 37/08 20060101ALI20070112BHJP A61P 17/00 20060101ALI20070112BHJP C07D 405/14 20060101ALN20070112BHJP JPA61K31/496A61P37/08A61P17/00C07D405/14 2 OL 6 4C063 4C086 4C063AA03 4C063CC41 4C063DD34 4C063EE01 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC50 4C086GA02 4C086GA12 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA05 4C086ZA89 4C086ZB13 本発明は、トリアゾール系抗真菌剤であるイトラコナゾールを含み、薬物に対する耐性獲得を遅延させる目的で最小量で最大の治療効果を与え、さらにはステロイド剤の使用を抑制できる全身型アトピー性皮膚炎治療のための医薬組成物に関する。 アトピー性皮膚炎(AD)はI型アレルギーに分類され、その原因究明や治療方法については近年様々な方面から検討が行われている。 ADの発症・重症化には遺伝的要素のほか、食生活を含めた環境など多くの要因が関係すると考えられている。即ち、食事、細菌、真菌、環境因子などのアレルゲンに対しての感度が増加し、血清IgGの上昇がみられる。さらに最近になり、皮膚に常在するマラセチア(Malassezia furfur)や腸管内に常在するカンジダ(Candida albicans)などの真菌の関与も注目されるようになってきた。 クルーク(W.G.Crook)は腸管内に過剰増殖したカンジダが毒素の一種であるカンジダトキシンを産生して、ホストの免疫力に変調を来しアレルギーを助長させ、またカンジダトキシンにより腸管内の炎症を起こさせることにより、食物抗原の侵入を容易にし食物感作を推進してさまざまな病気や症状を引き起こすことを指摘した(後記非特許文献1)。つまり、腸管内に過剰増殖したカンジダによりアレルギーが増強されADを発症または憎悪させるという仮説である。 しかしながら当時、どの抗真菌剤が最も有用で、副作用が少ないか、全身性のADに効果があるのか、頭首部に限局する治療なのか、投与方法はどういったものか等は全く定まっていなかった。 本発明者は、2000年頃より抗真菌剤によるADの治療の試みを精力的に行い、トリアゾール系抗真菌剤であるイトラコナゾールの内服(100mg/日を連日投与)が全身性ADに効果があることを初めて見出した(後記非特許文献2)。次いで、薬物の耐性獲得を遅延させる目的で間欠投与療法(100mg/日を1週間投与し、3週間休薬を反復;または200mg/日、毎週1回服用を反復)を導入し、イトラコナゾールの年間蓄積投与量を減少させても、休薬期間なしで連日投与した場合と同等のAD治療効果が得られることも見出した(後記特許文献1および非特許文献3)。 この間欠投与療法によってADの症状が著しく改善されることが分かったが、本発明者はさらに、AD治療におけるステロイド投与量の軽減若しくは投与の中止を目的として検討を重ねた。ADの症状が悪化した場合、従来からの治療法としてより強いステロイド外用剤若しくは内服剤の使用により炎症の悪化を止めてきたが、ステロイドによるAD治療は対症療法に過ぎず、根治治療ではない。さらには、その継続的な使用が患者の免疫機能を弱め、カンジダやマラセチアの異常増殖を招くことになり、抗真菌剤によりステロイド剤の併用投与量を軽減することはこの真菌感染の原因を取り除く観点からも好ましい療法であると考えられたからである。 また、再発のない治療期間の設定も重要であった。試験開始当初より、真菌の生命サイクルから少なくとも3ヶ月の治療期間が必要であることは予想されていたが、実際、いかなる療法においても3ヶ月未満で治療が完了した全例でADの再発がみられた。イトラコナゾールの内服療法においては、ADへの最小有効投与量の決定のみならず、どの位の期間、どういった量で投与することが最適であり、再発を防ぐことができるか最終的な投与方法(レジメン;regimen)が模索されており、本願発明はこれに答えるものである(後記非特許文献4)。特開2004−256480号公報(出願人:武市牧子)Crook,W.G., "The Yeast Connection", 2nd edn., Jackson,T.N.,Professional Books, 1984.第101回日本皮膚科学会総会抄録、日本皮膚科学会雑誌第112巻第5号平成14年5月臨時増刊号第678頁第46回日本医真菌学会総会抄録、日本医真菌学会雑誌第43巻補遺2号(平成14年)第87頁Takechi,M., J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol., 18(Suppl.2), 163(2004) イトラコナゾールを用いたAD治療において、下記1)から3)の要件を満たし;1)副作用の発生が少なく、2)最小用量の薬物使用であって、3)再発のない治療期間であること;さらにはステロイドの投与量を減量または投与を中止できる投与方法のための組成物を提供することが本発明の目的である。 近年、抗ガン剤の化学療法として二相療法(dual phase therapy)が注目されている。これは最初の短期間(導入相)のうちに大量の抗ガン剤を投与して癌細胞を減少させ、その後少量の抗癌剤を間欠的に繰り返し投与する(維持相)ことにより、腫瘍の増殖速度を抑制しつつ、副作用を軽減し、癌細胞が薬剤耐性を獲得することを遅らせる目的がある。本発明者はこの二相療法をイトラコナゾールの内服療法に導入した。 本発明によると投与1週間後には多くの例で症状の劇的な改善が認められる。そして、さらに投与を継続してもイトラコナゾールはステロイド性薬物ではないので、ステロイドの副作用である皮膚が薄くなる、血管が浮き出す、顔全体のむくみ、肌荒れ、感染症に対する抵抗力の低下などを回避できる。さらには、併用するステロイド剤の投与量も軽減できる(後記実施例参照)。 イトラコナゾールを1週間連続投与した後に休薬期間を設定すると、症状の改善した患者はADが完治したと思い込んで通院をやめてしまうことを少なからず経験している。しかしながら、本発明では休薬期間を設定しないので、多くの患者について治療を継続することができる。治療に際し、患者の協力が得やすいのも本発明の特徴のひとつである。 イトラコナゾールとしては白癬菌症治療剤として市販されている経口抗真菌剤(登録商標イトリゾール、ヤンセンファーマ株式会社)が好適に使用される。 本発明に係る療法の好ましい態様によれば、まず第1相(導入相)として、イトラコナゾール100mg/日を1週間服用する。次いで、第2相(維持相)としてイトラコナゾール200mg/日、毎週一回服用を継続する。そして、この治療を少なくとも3ヶ月間継続する必要がある。 下記に示す方法により、本発明の効果を試験した。1.対象 2000年4月から2004年4月の期間において、当院を受診したAD患者でマラセチア菌(Malassezia furfur)およびカンジダ菌(Candida albicans)に対するIgE値(RAST法による)が2以上の患者41人を対象とした。いずれもステロイド剤を併用している患者であった。2.方法 以下の三つの投与方法を実施した。1)レジメン1(間欠療法;比較例その1) イトラコナゾール100mg/日を1週間連続投与し、3週間休薬;これを1サイクルとして3サイクル反復し、計12週治療を継続した。2)レジメン2(間欠療法;比較例その2) イトラコナゾール200mg/日を毎週1回服用;これを反復し、計12週治療を継続した。3)レジメン3(本発明に係る療法) 最初、イトラコナゾール100mg/日を1週間連続投与し、続いて200mg/日の毎週1回服用を11週継続して、計12週治療を継続した。3.検査項目1)部位別症状の変化 全身を頭顔部2部位、体部2部位、四肢6部位に分け全身総計を10部位とし、各部位の症状の有無をカウントしてポイント数として評価した。2)臨床症状の推移 紅斑、浮腫、小水疱/カサブタ、丘疹、苔癬化、ドライスキン/落屑、色素沈着/脱色、およびかゆみを6段階(0:なし、1:軽微、2:軽度、3:中等度、4:重度、5:最重度)で評価した。3)ステロイドの併用 併用されるステロイド薬の減量に対する効果は、4段階(1:使用しなくなった、2:減量または弱い薬剤に変更、3:変更なし、4:増量またはより強い薬剤に変更)で評価した。4)睡眠 睡眠については、4段階(0:よく眠れる、1:たまに眠れない、2:時々眠れない、3:眠れない)で評価した。4.結果1)部位別の症状 有意水準を5%としてt-検定による統計処理を行った。結果を表1に示す。レジメン3において最も好適な症状改善が認められたことが分かる。2)臨床症状の推移 上記1)と同様の統計処理を行った結果を表2に示す。やはりレジメン3において最も好適な症状改善が認められたことが分かる。3)ステロイドの併用に与える効果 結果を表3に示した。 表3において評価1〜4の内容は、1:使用しなくなった、2:減量または弱い薬剤に変更、3:変更なし、4:増量またはより強い薬剤に変更、をそれぞれ表す。レジメン3においては、治療開始4週間後にはすべての症例でステロイド併用に対する減量効果が認められたことが分かる。4)臨床効果 ステロイド併用に対する減量効果に加えて、部位別症状の変化、臨床症状の推移および睡眠の各項目を総合的に評価し、臨床効果を5段階(1:著効、2:有効、3:やや有効、4:無効、5:悪化)で表した。治療開始12週後の結果を表4に示す。 いずれのレジメンにおいても有効以上の好結果を示したが、以上の総合的に判断するとレジメン3が最も好ましい療法と考えられる。 200mg/日を毎週1回だけ服用するレジメン2およびレジメン3(第二相)においては、最初の1ヶ月の間は薬物投与から3−4日後において部分的な症状(かゆみや紅斑)の再発が認められたが、2ヶ月目にはその傾向も低下し、3ヶ月目には再発が認められなくなった。このことから、この療法を少なくとも3ヶ月継続することが必要であることが確認された。有効成分としてイトラコナゾールを含有し、下記1)および2)の二相療法を含んでなる全身型アトピー性皮膚炎治療法のための医薬組成物。1)第1相:イトラコナゾール100mg/日を1週間服用する;2)第2相:第1相に続き、イトラコナゾール200mg/日、毎週1回服用を継続する。当該二相療法が少なくとも3ヶ月継続される、請求項1の医薬組成物。 【課題】全身性慢性アトピー性皮膚炎を治療するための医薬組成物の提供。【解決手段】第1相(イトラコナゾール100mg/日を1週間服用する。)および第2相(第1相に続き、イトラコナゾール200mg/日、毎週1回服用を継続する。)よりなる二相療法を少なくとも3ヶ月以上継続するための医薬組成物。【選択図】なし


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