タイトル: | 特許公報(B2)_ジアルキル酢酸錫化合物 |
出願番号: | 2005217599 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 53/126,C07F 7/22 |
中村 博征 下地頭所 浩 森田 知志 JP 3916640 特許公報(B2) 20070216 2005217599 20050727 ジアルキル酢酸錫化合物 日東化成株式会社 000227342 朝日奈 宗太 100065226 秋山 文男 100117112 中村 博征 下地頭所 浩 森田 知志 20070516 C07C 53/126 20060101AFI20070419BHJP C07F 7/22 20060101ALN20070419BHJP JPC07C53/126C07F7/22 K C07C 53/126 C07F 7/22 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開2002−285018(JP,A) 特開2000−86961(JP,A) 特開平6−263712(JP,A) 1 2002361241 20021212 2005325134 20051124 12 20050727 山田 泰之 本発明は、シリル基含有有機重合体硬化性組成物の硬化触媒として有用なジアルキル酢酸錫化合物に関する。さらに詳しくは、シリル基含有有機重合体と硬化触媒からなる、シーリング剤、接着剤などとして用いるのに好適なシリル基含有有機重合体硬化性組成物の硬化触媒として有用なジアルキル酢酸錫化合物に関する。 接着剤やシーリング剤に有用な硬化性組成物として、ポリエーテル、ポリエステル、あるいはエチレン性不飽和化合物やジエン系化合物の重合体などを主鎖とする架橋可能な加水分解性ケイ含有基を有する有機重合体を主成分として用いるものが知られている。これら加水分解性ケイ素含有基を有する有機重合体は、触媒の存在下で、室温において大気中の水分により加水分解性ケイ素含有基が加水分解を起こし、シロキサン結合を形成することで硬化させる。この加水分解性ケイ素含有基を有する有機重合体を用いる硬化性組成物は、硬化性、貯蔵安定性、耐候性などに優れている。 前記加水分解性ケイ含有基を有する有機重合体の硬化触媒としては、2−エチルヘキサン酸錫、n−オクチル酸錫などのカルボン酸錫(II)化合物、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエートなどの有機錫(IV)化合物や、ナフテン酸鉄、オクチル酸鉛などのその他の金属化合物が用いられる。中でも有機錫(IV)化合物、カルボン酸錫(II)化合物は、硬化速度および硬化物性に優れているので、汎用されている。 しかし、有機錫化合物、鉛化合物はいずれも環境、人体へ及ぼす影響が大きいことから、使用に際しては充分な注意が必要となる。ナフテン酸鉄などの鉄塩では硬化物が着色してしまう問題があった。また従来は、錫化合物として主にビス(2−エチルヘキサン酸)錫、ビス(n−オクチル酸)錫などのカルボン酸錫(II)が用いられていた(例えば特許文献1)。しかし、これらを使用すると、タック(塗布された組成物表面のべたつき)が長時間解消されないという問題があった。この問題を解決する手段として3級カルボン酸錫化合物を硬化触媒として使用することが提案されている(特許文献2)。しかし、この3級カルボン酸錫化合物は従来品と比較して活性が高いために、大気中の湿度によっては充分な可使時間が取れない場合があり、夏場と冬場で配合設計を変える必要がある点や高粘度であるために製造工程中の取り扱い性能が劣るなどの点で、実用性の面から必ずしも充分でなかった。特公昭61−60867号公報特開2002−285018号公報 前記の点に鑑みて、本発明の課題は、実用的な硬化速度の範囲内で可使時間の設定が可能で、取り扱い性がよく、かつ短時間で表面タックが解消される硬化性組成物の硬化触媒として有用なジアルキル酢酸錫化合物を提供することにある。 そこで、本発明者らは、鋭意研究の結果、硬化触媒として、従来の3級カルボン酸錫化合物を用いる場合に比べて実用的な硬化速度の範囲内で可使時間の幅広い設定が可能であり、取り扱い性がよく、かつ従来のビス(2−エチルヘキサン酸)錫、ビス(n−オクチル酸)錫などを用いる場合に比べて短時間で表面タックが解消される、シリル基含有有機重合体硬化性組成物の硬化触媒として有用なジアルキル酢酸錫化合物を見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、スタナスビス(2−ブチルオクタノエート)、スタナスビス(2−ヘキシルデカノエート)、またはスタナスビス(2−デシルテトラデカノエート)であるジアルキル酢酸錫化合物を提供する。 後記実施例の結果から明らかなように、本発明のジアルキル酢酸錫化合物を硬化触媒として含有する硬化性組成物では、実用的な範囲内で硬化時間を大幅に変えることができる。また、実用的な範囲に硬化時間を設定できることで、可使時間の幅広い設定が可能となり現場施工上の問題を改善することが可能となる。また、硬化触媒の粘度が低いため、取り扱い性が良好である。かつ従来の硬化触媒を用いる場合と比べて短時間で表面タックが解消できる。 本発明のジアルキル酢酸錫化合物は、硬化触媒として、つぎのシリル基含有有機重合体硬化性組成物に有利に使用される。(1)加水分解性基と結合したケイ素原子を有する基を、分子末端または側鎖に、1分子当たり少なくとも1個有するシリル基含有有機重合体(a)100重量部と、ジアルキル酢酸錫化合物(b)0.1〜20重量部とからなることを特徴とするシリル基含有有機重合体硬化性組成物。(2)さらにアミン系硬化剤を含有する前記(1)項に記載のシリル基含有有機重合体硬化性組成物。(3)さらに充填剤を含有する前記(1)または(2)項に記載のシリル基含有有機重合体硬化組成物。(4)前記シリル基含有有機重合体(a)が、ポリエーテル、エチレン性不飽和化合物の重合体またはジエン系化合物の重合体を主鎖とするものである前記(1)〜(3)項のいずれかに記載のシリル基含有有機重合体硬化性組成物。 本発明に用いる有機重合体(a)は、加水分解性基と結合したケイ素原子を有する基(以下、加水分解性基と結合したケイ素基という場合がある)を、分子末端または側鎖に、1分子当たり少なくとも1個有する有機重合体であり、該重合物の主鎖としては、アルキレンオキシド重合体ないしポリエーテル、エーテル・エステルブロック共重合体などが挙げられる。また、エチレン性不飽和化合物、ジエン系化合物の重合体などが挙げられる。これら主鎖重合体は室温で液状のものが好ましい。 前記アルキレンオキシド重合体ないしポリエーテルとしては、[CH2CH2O]n[CH(CH3)CH2O]n[CH(C2H5)CH2O]n[CH2CH2CH2CH2O]nなどの繰り返し単位の1種または2種以上を有するものが例示される。ここで、nは2以上の整数である。これらアルキレンオキシド重合体ないしポリエーテルは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 また、エチレン性不飽和化合物、ジエン系化合物の重合体としては、エチレン、プロピレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの単独重合体、またはこれらの2種以上の共重合体が挙げられる。より具体的にはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。 前記加水分解性基と結合したケイ素基は、湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することにより縮合反応を起こす基のことである。具体的には、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基などが挙げられる。ここで、1つのケイ素原子に結合したこれらの加水分解性基の数は1〜3の範囲から選択される。また、1つのケイ素原子に結合した加水分解性基は1種であってもよく、複数種であってもよい。さらに加水分解性基と非加水分解性基が1つのケイ素原子に結合していてもよい。加水分解性基と結合したケイ素基としては、取り扱いが容易である点で、特にアルコキシシリル基(モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基を含む)が好ましい。加水分解性基と結合したケイ素基は重合体分子の末端に存在していても、側鎖に存在していてもよく、さらに末端と側鎖の両方に存在していてもよい。加水分解性基と結合したケイ素基は、重合体の1分子当たり少なくとも1個あればよいが、硬化速度、硬化物性の点からは、1分子当たり平均して1.5個以上あるのが好ましい。加水分解性基と結合したケイ素基を前記主鎖重合体に結合させる方法としては公知の方法が採用できる。 本発明で用いる有機重合体(a)の分子量は、特に制約はないが、過度に高分子のものは高粘度であり、硬化性組成物とした場合の取り扱い性に劣るので、数平均分子量として30000以下が望ましい。一方、過度に低分子量のものは、流動性が高いため施行性が著しく劣るので、数平均分子量として1000以上が望ましい。このような有機重合体は、公知の方法によって製造することができるが、鐘淵化学工業(株)製のカネカMSポリマーなどの市販品を使用することができる。 本発明のジアルキル酢酸錫化合物は、下記一般式(1):(式中、R1、R2はそれぞれ炭素原子数1〜19の直鎖または分岐アルキル基であり、相互に同一であっても異なっていてもよく、かつ、R1とR2の炭素原子数の合計が10以上である)で表される化合物のうち、R1がブチル基で、R2がヘキシル基であるスタナスビス(2−ブチルオクタノエート)、R1がヘキシル基で、R2がオクチル基であるスタナスビス(2−ヘキシルデカノエート)、またはR1がデシル基で、R2がドデシル基であるスタナスビス(2−デシルテトラデカノエート)である。 本発明のジアルキル酢酸錫化合物としては、一般式(1)で表される、ジアルキル酢酸(すなわち、カルボン酸のα位の炭素原子が第二級炭素であるカルボン酸)の錫化合物の1種または2種以上が使用される。 前記ジアルキル酢酸の錫化合物は公知の方法によって製造することができる。たとえば、ジアルキル酢酸2モルと塩化第一錫約1モルとを、約2モルのアルカリ化合物の存在下で、溶媒中において30〜70℃程度の温度で加熱することによって、製造することができる。原料のジアルキル酢酸としては、相当するジアルキル酢酸の1種または2種以上の混合物を使用すればよい。市販品も使用でき、たとえば、サソール社製のISOCARB 12、ISOCARB 16、ISOCARB 20、ISOCARB 24などが挙げられる。 本発明において用いる硬化触媒(b)は、取り扱い性の面から常温、常圧下で液状のものが好ましい。とくに製造工程中における取り扱い性の面から粘度が3000(mPa・s/25℃)以下のものが好ましく、とりわけ100〜2000(mPa・s/25℃)のものが好ましい。粘度が3000(mPa・s/25℃)を超えると製造工程中の取り扱い性が著しく低下する。 本発明において、硬化触媒(b)は、シリル基含有有機重合体(a)100重量部に対して0.1〜20重量部、特に1〜10重量部の割合で使用するのが好ましい。硬化触媒(b)の量が前記範囲に満たないと、硬化性能が劣り、表面タックが改善されないことがある。また、前記範囲を超えると硬化物の物性、安定性が低下することがある。 本発明の硬化性組成物においては、前記硬化触媒(b)に加えて、さらに硬化促進剤を配合するのが好ましい。硬化促進剤としては、たとえば、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、n−ヘキサデシルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)などのアミン系化合物が挙げられる。これらのアミン化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の使用量は、硬化触媒(b)100重量部に対して、1〜200重量部が好ましく、とくに好ましくは10〜100重量部である。硬化促進剤の使用量が前記範囲未満では、硬化促進効果が充分に発揮されない傾向があり、一方前記範囲より多いと、可使時間が短くなりすぎ作業性の点から好ましくなく、また硬化後に表面タックが残存するなどの傾向がある。 本発明の硬化性組成物においては、通常、シリル基含有有機重合体(a)の硬化物の用途に応じて、各種充填剤が使用される。充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、クレー、焼成クレー、ガラス、ベントナイト、有機ベントナイト、シラスバルーン、ガラス繊維、石綿、ガラスフィラメント、粉砕石英、ケイソウ土、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化チタンなどが挙げられる。充填剤の使用量は、硬化物の用途、要求性能に応じて広範に変わるものであるが、たとえば、シリル基含有有機重合体(a)100重量部に対して10〜300重量部程度の範囲から適宜選択される。 さらに本発明の硬化性組成物では、硬化を促進し基材への密着性を良くするため、公知の種々のアミノ基置換アルコキシシラン化合物、またはその縮合物を配合することができ、具体的には、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、δ−アミノブチル(メチル)ジエトキシシラン、N,N’―ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンおよびこれらの部分加水分解物などが挙げられる。また、基材への密着性の向上のために、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどのビニルアルコキシシラン化合物を使用できる。 本発明の硬化性組成物においては、さらに、着色剤、可塑剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、老化防止剤、溶剤など、硬化性組成物に通常添加される各種添加剤を配合することができる。 着色剤としては、具体的には、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどが挙げられる。 可塑剤としては、具体的には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジイソデシル、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、ペンタエリスリトールエステルなどのポリオール化合物のエステル類、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ系可塑剤、塩素化パラフィンなどが挙げられる。 タレ防止剤としては、具体的には、水添ヒマシ油、無水ケイ酸、有機ベントナイト、コロイド状シリカなどが挙げられる。 さらに他の添加剤として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの接着付与剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、各種の老化防止剤などを使用することができる。 本発明の硬化性組成物の硬化処理は、通常環境雰囲気下での湿気硬化による。硬化処理における硬化触媒の可使時間は、現場施工上の面から1時間以上であることが好ましく、さらに好ましくは1〜8時間である。本発明においては、前記特定の硬化触媒(b)を用いることにより、可使時間を1時間以上に設定することが可能であり、かつ短期間内に表面のベタツキを解消することができる。 本発明の硬化性組成物は、通常前記シリル基含有有機重合体(a)を含有する主剤成分と、前記硬化触媒を含有する硬化触媒成分とからなる2成分系硬化性組成物として使用される。もとより1成分系硬化性組成物として使用できる。 前記主剤成分には、前記シリル基含有有機重合体(a)の他に、必要に応じて前記アミノ基置換アルコキシシラン化合物、ビニルアルコキシシラン化合物、充填剤、着色剤、可塑剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、接着付与剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、老化防止剤、溶剤などの1種または2種以上を適宜配合することができる。前記硬化触媒成分には、前記硬化触媒(b)の他に、必要に応じて前記アミノ基置換アルコキシシラン化合物、ビニルアルコキシシラン化合物、充填剤、着色剤、可塑剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、接着付与剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、老化防止剤、溶剤などの1種または2種以上を適宜配合することができる。 本発明の硬化性組成物は、シーリング剤、コーティング剤、弾性接着剤などの用途に使用できる。 以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。製造例1 窒素導入管を取り付けた1000mlナスフラスコに、一般式(1)におけるR1が炭素原子数4のアルキル基、R2が炭素原子数6のアルキル基であり、R1とR2の炭素原子数の合計が10であるジアルキル酢酸[ISOCARB12(サソール社製、2−ブチルオクタン酸、酸価280.2mgKOH/g)]400gと水酸化ナトリウム水溶液170g(水酸化ナトリウム:2モル)を量り込み、マグネチックスターラーにて充分に混合した後、塩化第一錫225g(1モル)を加え、60℃で20分反応させ、反応混合物をトルエンにて抽出し、減圧下で濃縮して淡黄色透明の液体の錫化合物aを得た。 この化合物をFT−IRにて分析し、2−ブチルオクタン酸のカルボニル基の吸収1738cm-1が消失し、1650cm-1に−CO−O−Sn−O−CO−中のカルボニル基の吸収を確認した。また、次の元素分析の結果より、2−ブチルオクタン酸の錫塩[スタナス(2−ブチルオクタノエート)]であることを確認した。 Sn(%) C(%) H(%) O(%) 測定値 22.7% 55.9% 9.1% 12.2% 理論値 22.9% 55.7% 8.9% 12.4%製造例2(参考製造例) 窒素導入管を取り付けた1000mlナスフラスコに、一般式(1)におけるR1が炭素原子数2のアルキル基、R2が炭素原子数10のアルキル基であり、R1とR2の炭素原子数の合計が12であるジアルキル酢酸(2−エチルドデカン酸)456gと水酸化ナトリウム水溶液170g(水酸化ナトリウム:2モル)を量り込み、マグネチックスターラーにて充分に混合した後、塩化第一錫225g(1モル)を加え、60℃で20分反応させ、反応混合物をトルエンにて抽出し、減圧下で濃縮して淡黄色透明の液体の錫化合物bを得た。 この化合物をFT−IRにて分析し、2−エチルドデカン酸のカルボニル基の吸収1738cm-1が消失し、1650cm-1に−CO−O−Sn−O−CO−中のカルボニル基の吸収を確認した。また、次の元素分析の結果より、2−エチルドデカン酸の錫塩[スタナス(2−エチルドデカノエート)]であることを確認した。 Sn(%) C(%) H(%) O(%) 測定値 20.9% 58.7% 9.3% 11.4% 理論値 20.7% 58.6% 9.4% 11.2%製造例3 窒素導入管を取り付けた1000mlナスフラスコに、一般式(1)におけるR1が炭素原子数6のアルキル基、R2が炭素原子数8のアルキル基であり、R1とR2の炭素原子数の合計が14であるジアルキル酢酸[ISOCARB16(サソール社製、2−ヘキシルデカン酸、酸価215.8mgKOH/g)]512gと水酸化ナトリウム水溶液170g(水酸化ナトリウム:2モル)を量り込み、マグネチックスターラーにて充分に混合した後、塩化第一錫225g(1モル)を加え、60℃で20分反応させ、反応混合物をトルエンにて抽出し、減圧下で濃縮して淡黄色透明の液体の錫化合物cを得た。 この化合物をFT−IRにて分析し、2−ヘキシルデカン酸のカルボニル基の吸収1738cm-1が消失し、1650cm-1に−CO−O−Sn−O−CO−中のカルボニル基の吸収を確認した。また、次の元素分析の結果より、2−ヘキシルデカン酸の錫塩[スタナス(2−ヘキシルデカノエート)]であることを確認した。 Sn(%) C(%) H(%) O(%) 測定値 18.9% 61.2% 9.6% 10.2% 理論値 18.9% 61.0% 9.8% 10.2%製造例4 窒素導入管を取り付けた1000mlナスフラスコに、一般式(1)におけるR1が炭素原子数10のアルキル基、R2が炭素原子数12のアルキル基であり、R1とR2の炭素原子数の合計が22であるジアルキル酢酸[ISOCARB24(サソール社製、2−デシルテトラデカン酸、酸価144.3mgKOH/g)]737gと水酸化ナトリウム水溶液170g(水酸化ナトリウム:2モル)を量り込み、マグネチックスターラーにて充分に混合した後、塩化第一錫225g(1モル)を加え、60℃で20分反応させ、反応混合物をトルエンにて抽出し、減圧下で濃縮して淡黄色透明の液体の錫化合物dを得た。 この化合物をFT−IRにて分析し、2−デシルテトラデカン酸のカルボニル基の吸収1738cm-1が消失し、1650cm-1に−CO−O−Sn−O−CO−中のカルボニル基の吸収を確認した。また、次の元素分析の結果より、炭素2−デシルテトラデカン酸の錫塩[スタナス(2−デシルテトラデカノエート)]であることを確認した。 Sn(%) C(%) H(%) O(%) 測定値 13.6% 67.7% 11.4% 7.3% 理論値 13.9% 67.4% 11.2% 7.5%製造例5(比較製造例) 窒素導入管を取り付けた1000mlナスフラスコに、ラウリン酸200gと水酸化ナトリウム水溶液170g(水酸化ナトリウム:2モル)を量り込み、マグネチックスターラーにて充分に混合した後、塩化第一錫225g(1モル)を加え、60℃で20分反応させ、反応混合物をトルエンにて抽出し、減圧下で濃縮して白色の固体の錫化合物eを得た。 この化合物をFT−IRにて分析し、ラウリン酸のカルボニル基の吸収1738cm-1が消失し、1650cm-1に−CO−O−Sn−O−CO−中のカルボニル基の吸収を確認した。また、次の元素分析の結果より、ラウリン酸錫塩であることを確認した。 Sn(%) C(%) H(%) O(%) 測定値 23.2% 55.6% 8.7% 12.4% 理論値 22.9% 55.7% 8.9% 12.4%実施例1〜8 シリル基含有有機重合体(鐘淵化学工業(株)製MSポリマーA20)100重量部に対して、表1に示される各種添加剤を表1に示される部数(重量部数)添加し、混練して主剤成分を調製した。一方、製造例1〜4で得られた錫化合物a〜dおよび各種添加剤を表1に示される部数[シリル基含有有機重合体(鐘淵化学工業(株)製MSポリマーA20)100重量部に対する重量部数]で混合し、混練して硬化触媒成分を調製した。なお、製造例2で得られた錫化合物bを硬化触媒として使用する実施例3、4は参考実施例である。 得られた主剤成分と硬化触媒成分とを混合した湿気硬化型組成物について、硬化時間(両成分の混合後半ゲル化し流動性のなくなるまでの時間)および薄層硬化性を評価した。なお、主剤成分および硬化触媒成分の調製、両成分の混合から硬化までの操作は、室温25℃、湿度60%の恒温室にて行った。結果を表1に示す。また使用した硬化触媒について粘度測定を行なった。結果を表2に示す。<薄層硬化性> 両成分の混合後塗布して20μmの厚さの塗膜を形成し、30℃で24時間放置した後、指触にて表面のベタツキを判定した。○:表面のベタツキが認められない。×:表面のベタツキが認められる。<粘度測定> 25℃における粘度をBM型粘度計((株)東京計器製造所製)により測定した。比較例1〜8 シリル基含有有機重合体(鐘淵化学工業(株)製MSポリマーA20)100重量部に対して、表1に示される各種添加剤を表1に示される部数(重量部数)添加し、混練して主剤成分を調製した。一方、製造例5で得られた錫化合物e、従来から用いられている、ビス(ネオデカン酸錫)、ビス(2−エチルヘキサン酸)錫またはビス(n−オクチル酸)錫、および各種添加剤を表1に示される部数[シリル基含有有機重合体(鐘淵化学工業(株)製MSポリマーA20)100重量部に対する重量部数]で混合し、混練して硬化触媒成分を調製した。 得られた主剤成分と硬化触媒成分とを混合した湿気硬化型樹脂組成物について、実施例1〜8と同様にして硬化時間および薄層硬化性を評価した。結果を表1に示す。また、使用した硬化触媒について実施例1〜8と同様にして粘度を測定した。結果を表2に示す。 表1に示される材料の詳細はつぎのとおりである。MSポリマーA20:主鎖重合体であるポリエーテルの末端に加水分解性ケイ素含有基を有するシリル基含有有機重合体炭酸カルシウム:充填剤ノクラックNS−6:老化防止剤(大内新興化学工業(株)製)スモイルP350:流動性パラフィン(村松石油(株)製)チヌビン327:紫外線吸収剤(東京ファインケミカル(株)製LF−101)A−171:ビニルアルコキシシラン化合物(日本ユニカー(株)製)A−1100:アミノ基置換アルコキシシラン化合物(日本ユニカー(株)製)ラウリルアミン:関東化学(株)製1級試薬ビス(ネオデカン酸)錫:日東化成(株)製ビス(2−エチルヘキサン酸)錫:日東化成(株)製ビス(n−オクタン酸)錫:日東化成(株)製スタナスビス(2−ブチルオクタノエート)、スタナスビス(2−ヘキシルデカノエート)、またはスタナスビス(2−デシルテトラデカノエート)であるジアルキル酢酸錫化合物。