タイトル: | 公開特許公報(A)_乳酸菌用の選択培地 |
出願番号: | 2005214283 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12N 1/20,C12Q 1/04 |
木村 勝紀 西尾 智子 JP 2007028942 公開特許公報(A) 20070208 2005214283 20050725 乳酸菌用の選択培地 明治乳業株式会社 000006138 志村 尚司 100104307 木村 勝紀 西尾 智子 C12N 1/20 20060101AFI20070112BHJP C12Q 1/04 20060101ALI20070112BHJP JPC12N1/20 AC12Q1/04 9 OL 9 4B063 4B065 4B063QA18 4B063QQ06 4B063QR69 4B063QS24 4B063QX01 4B065AA01X 4B065BB03 4B065BB08 4B065BB24 4B065BC32 4B065BC34 4B065CA42 本発明は、乳酸菌用の選択培地、具体的には、いわゆるブルガリア菌を選択的に培養するための培地に関する。 いわゆるブルガリア菌と称されるラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)は、伝統的にヨーグルト製造用に用いられてきた乳酸菌の一種である。これまで、ヨーグルトを食したヒトの糞便中からはブルガリア菌を検出することができず、ブルガリア菌はヒトの消化管内で死滅すると考えられていた。 一般に種々雑多な菌が含まれた試料中から特定菌を検出するためには、その菌を優先的に増殖させるための選択培地が用いられる。乳酸菌の選択培地として、代表的なものに、例えばMRS培地やLBS培地、Rogosa培地などが知られている。 ところで、ヨーグルトなどの乳酸発酵製品の製造に用いられる微生物には、ラクトバチルス属やラクトコッカス属(Lactococcus)やストレプトコッカス(Streptococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属等の乳酸菌や、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)に属する種々の菌種があり、例えばヨーグルトの製造には通常1種の菌種のみならず、2種3種と複数の菌種が用いられる。これらの乳酸菌のうち、ラクトバチルス属を属レベルで選択的に検出する培地としてRogosa培地やLBS培地が用いられているが、ブルガリア菌のみを菌種レベルで選択することは困難であった。また、Rogosa培地やLBS培地を用いて、ラクトバチルス属の乳酸菌のコロニーを形成させ、コロニーの形状や色等からブルガリア菌だけを選別することも考えられる。しかしながら、同属の他の菌種によってブルガリア菌の生育が抑制されているようであり、最近の報告(非特許文献1:Appl. Environ. Microbiol. 71(1),547-549,2005)においても、MRS培地を用いてブルガリア菌の検出を試みたところ、糞便中からブルガリア菌を検出できなかったとされている。 こうした状況下において、例えば特許文献1(特開平6−343491号公報)や特許文献2(特開平6−38795号公報)、特許文献3(特開平7−99995号公報)などには乳酸菌を含む複数の菌種からビフィズス菌を選択的に検出する培地が開示されている。これらの培地は、主としてビフィズス菌のみを増殖させるために特定の栄養素を添加したものであるが、未だブルガリア菌のみを選択的に培養できる培地は見出されていない。 また、非特許文献2(日本栄養・食糧学会誌,46(2),139〜145,1993)には、脱脂粉乳を10%加えた培地でブルガリア菌及びサーモフィラス菌を前培養した旨が記載されている。しかしながら、この培地は脱脂粉乳の他に酵母エキスが培地中に0.1w/v程度添加された液体培地である。この培地は乳酸菌の継代培養あるいは保存用の培地として用いられ、菌選択性はなく、ほとんどの乳酸菌が生育する。特開平6−343491号公報特開平6−38795号公報特開平7−99995号公報Appl. Environ. Microbiol. 71(1),547-549,2005日本栄養・食糧学会誌,46(2),139−145,1993 本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであって、その目的は、糞便中からいわゆるブルガリア菌を検出するための選択培地を提供することにある。 本発明の選択培地は、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスを選択的に培養できる選択培地であって、脱脂粉乳と酢酸を主成分とし、脱脂粉乳以外の窒素源を含まないことを特徴とし、必要に応じて、酢酸ナトリウムやクエン酸アンモニウム、寒天が加えられる。 また、本発明の検出方法は、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス及び他の細菌を含む試料中からラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスを選択的に検出する方法であって、脱脂粉乳と酢酸を主成分とし、脱脂粉乳以外の窒素源を含まない培地を用い、48±2℃の恒温下で24〜48時間嫌気培養することを特徴としている。 本発明によれば、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスを選択的に培養することができ、糞便中からの検出が可能となった。この結果、ヨーグルト中にある当該菌のヒト消化管内での生残性を調査したり、消化管内で生残性が高いラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスの選択が可能となる。 本発明の選択培地は、基本的には、脱脂粉乳と酢酸とから構成されるものであり、脱脂粉乳を窒素源及び炭素源としている。本発明において、脱脂粉乳とは、原料乳から乳脂肪分を除去したものからほとんど全ての水分を除去して粉末状などに乾燥したものを言う。原料乳には牛や羊、山羊、ヒトなど各種哺乳動物から得られた乳が用いられる。原料乳は特に制約されるものではないが、一定の品質を確保しやすい、多量の乳が得られるなどの観点から、牛の乳を原料としたものが好適である。また、脱脂粉乳の製造工程も通常の工程であればよく、特殊な工程を必要とするものでもない。工程の一例を挙げると、原料乳を減圧下で加熱して濃縮し、その後噴霧乾燥する方法がある。また、本発明においては、特定の成分量を調整する必要もない。代表的な脱脂粉乳の組成は、五訂増補 日本食品標準成分表によると次のとおりである。脱脂粉乳100g中、タンパク質34.0g、脂質1.0g、炭水化物53.3g、灰分7.9g及びビタミンB群2mg、Na、K、Mg、P、Caなど5g程度の無機質を含む。もっとも、原料乳の種類等によって多少の変動があるが、極端に成分調整をしたものでない限りにおいて、その変動は許容されるものである。その変動は、好ましくは前記成分表の±20%程度、望ましくは10%程度である。 本発明の培地には、脱脂粉乳以外の成分として、少なくとも酢酸が用いられる。これは、酢酸を添加することによって他の菌の増殖を抑制することができるためである。酢酸の使用量は脱脂粉乳100質量部に対して、氷酢酸(酢酸濃度98w/v%以上、以下同じ)として1.5〜2.3mlである。 また、本培地には、望ましくは酢酸ナトリウムが加えられる。酢酸ナトリウムは必須成分ではないが、酢酸ナトリウムと酢酸を組み合わせると培地の緩衝作用が高まり、コロニーを大きくすることができる。酢酸ナトリウムは無水物、水和物のいずれを用いてもよいが、安定性の観点から三水和物を用いるのが好ましい。その使用量は氷酢酸1mlに対して9〜13質量部であり、脱脂粉乳100質量部に対して、酢酸ナトリウム三水和物として15〜30質量部、好ましくは18〜24質量部が目安である。 本発明の選択培地は、液体培地及び寒天培地のいずれとしても使用できるが、通常は寒天培地として使用される。寒天の使用量は、平板培地を作製できる程度の量の寒天を加えればよいが、その量は培地1000mlに対して10〜20質量部が目安である。 本発明の選択培地は、水に対して脱脂粉乳の濃度が3〜9w/v%、好ましくは5〜9w/v%となるように調整され、この脱脂粉乳量に対して、上記量の酢酸及び酢酸ナトリウムが加えられる。従って、最終的には、培地(加水量)1000mlに対して、脱脂粉乳30〜90g、酢酸1.1〜1.6ml、酢酸ナトリウム10〜20質量部が目安である。 本発明の選択培地を用いていわゆるブルガリア菌を検出するには、一般的な培養条件ではなく、本発明の選択培地に適した条件が選択される。乳酸菌や大腸菌の検出には、通常37℃48時間程度の培養条件が選ばれるが、本発明の選択培地を用いた場合には、48±2℃という比較的高温における嫌気培養が行われる。一方、培養時間は24時間から最大48時間、好ましくは24時間程度の比較的短い時間とする。37℃での培養や48時間を超えた培養では、ブルガリア菌以外の菌が増殖して、十分な判別が出来なくなるおそれが強くなる。 培地の滅菌方法には、例えば放射線照射による方法やフィルター濾過による方法、オートクレーブによる方法などいずれの方法も採用されうる。また、オートクレーブにより滅菌する場合には、一般的な滅菌条件(例えば、121℃ 15分間)が採用される。しかしながら、本発明の培地は脱脂粉乳を含むので、設定温度や加熱時間、脱脂粉乳の含有量等により、加熱を用いた滅菌を行うと培地の着色等を招き、不適切な培地となるおそれがある。そこで、例えば、100℃、10分程度の加熱(オートクレーブを用いてもよい)やフィルター濾過による滅菌など、高温下における滅菌を避けるのが望ましい。 ブルガリア菌を検出するための操作方法は、一般的な細菌の取り扱い方法と同様であり、何ら特別な操作を要しない。すなわち、無菌条件下で作製された平面寒天培地上に試料を段階的に希釈した被検液を塗抹するか、あるいは培地に試料を加えて平面培地とした上で培養する。そして培養後、培地上のコロニーをカウントすればよい。ブルガリア菌は白色、凸円状のコロニーを形成する。なお、培地上には、ブルガリア菌以外の乳酸菌、例えばストレプトコッカス・サーモフィラスなどによるコロニーがわずかながら形成される場合もあるが、ブルガリア菌のコロニーとは肉眼において明確に区別できる。 また、本発明の選択培地においては、乳酸菌のコロニーを大きくするために、クエン酸アンモニウムが加えられる。乳酸菌がクエン酸アンモニウムを窒素源として利用できないことは公知の事実である。クエン酸アンモニウムは必須の成分ではなく、脱脂粉乳100質量部に対して0〜3.5質量部が用いられる。 本発明の選択培地は、糞便中に存在するブルガリア菌を検出するための目的で開発されたものであり、検査対象試料としては糞便が好適であるが、試料は糞便に限られるものではなく、ヨーグルトなどの乳製品その他の製品などを試料とすることができるのは言うまでもない。また、本発明の選択培地は、試料中の生菌を検出することだけを目的として使用されるものではなく、ブルガリア菌前培養用の培地や保存培地としても使用できるのは言うまでもない。 生菌数の確定のためには寒天平板培地として利用し、形成されたコロニー数をカウントするのが最も信頼のある方法である。また、この方法に限らず、本発明の選択培地を液体培地として利用し、いわゆる最確数法による菌数測定にも応用できる。最確数法は一般には大腸菌群数の試験方法として汎用されている。この方法は、複数本の培地に検査対象である試料の希釈液を段階的に添加して培養を行い、その結果、陽性(培地が不透明化する)となった本数により、最確数表から試料中の菌数を概算するものである。その詳細は、例えば、衛生試験法(日本薬学会編)に説明されている。ただし、本発明の選択培地は、元々不透明であるため、例えば培地が凝固した場合を陽性と判定することとし、培養条件は、48±2℃の恒温下で24時間、最大48時間とするのが好ましい。また、特定波長における吸光度を指標として判定することもできる。もっとも、本発明の培地は選択培地と言えども、前述のようにブルガリア菌以外の乳酸菌が増殖する可能性も否定できず、培養温度が低くなったり、培養時間が長くなった場合には、これらの菌により培地が凝固したように観察される場合も考えられる。しかしながら、48±2℃、24時間という培養条件の設定によって、ブルガリア菌の増殖よる凝固と他の乳酸菌の増殖による凝固とは明確に区別でき、陽性陰性の判定を誤ることは少ないと考えられる。また、最確数表も種々あるが、いずれの最確数表を用いても結果に大差はない。 以下、本発明の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されないのは言うまでもない。 まず、本発明の実施例である選択培地を作成し、糞便中のラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(以下、「LB菌」と称する。)の培養を試みた。なお、比較例としてMRS寒天培地(pH6.7及びpH5.4)、LBS培地、Rogosa培地を用いた。ヒトの糞便を生理食塩水にて10倍希釈した液及び生理食塩水に、LB菌(2038株)を約103cfu/mlとなるように添加し、各培地にその菌液100μlを塗布した後、37℃及び48℃の恒温槽中で24〜48時間培養した。その後、培地に出現したコロニーの総数を計数した。その結果を表1に示す。また、用いた培地の組成は以下のとおりである。本発明の選択培地については100℃、10分間の加熱を、LBS培地、Rogosa培地については100℃、30分間の加熱を、MRS寒天培地については121℃、15分の加圧蒸気滅菌を行った。 (本発明の選択培地(1)) 脱脂粉乳(明治乳業(株)社製、マルQ) 70g 酢酸ナトリウム三水和物 15g クエン酸三アンモニウム 2g 氷酢酸 1.32ml 寒天 15g 水 1000ml (MRS寒天培地:Lactobacilli MRS Agar, Difco社製) ペプトン加水分解物 10g 牛肉エキス 10g 酵母エキス 5g ブドウ糖 20g ポリソルベート80 1g クエン酸アンモニウム 2g 酢酸ナトリウム 5g 硫酸マグネシウム 0.1g 硫酸マンガン 0.05g リン酸二カリウム 2g 寒天 15g 水 1000ml (Rogosa培地:Rogosa SL Agar, Difco社製) トリプトン 10g 酵母エキス 5g ブドウ糖 10g アラビノース 5g ショ糖 5g 酢酸ナトリウム 15g クエン酸アンモニウム 2g リン酸一カリウム 6g 硫酸マグネシウム 0.57g 硫酸マンガン 0.12g 硫酸第一鉄 0.03g モノオレイン酸ソルビタン 1g 寒天 15g 酢酸 1.32ml 水 1000ml (変法LBS培地) カゼインパンクレアチン分解物 10g 酵母エキス 5g ブドウ糖 20g リン酸一カリウム 6g クエン酸アンモニウム 2g ポリソルベート80 1g 酢酸ナトリウム三水和物 25g 硫酸マグネシウム 0.575g 硫酸マンガン 0.12g 硫酸第一鉄 0.034g 寒天 15g 酢酸 1.32ml 水 1000ml この結果によると、ラクトバチラス属に属する乳酸菌の選択培地であるLBS培地では、生食水に希釈したLB菌であっても全く増殖できず、同じく選択培地であるRogasa培地では著しく増殖が抑えられた。また、非選択培地であるMRS培地では、pH6.5、5.4のいずれの条件下でも、37℃で増殖することができても48℃では著しく増殖が抑えられた。 一方、糞便と混合した場合には、比較例のいずれの培地、37℃、48℃いずれの条件下においても、カウント不能なほどコロニーが形成され(1000以上/プレート)、LB菌のコロニーを判別、カウントすることができなかった。ところが、本発明の培地を用いて、48℃の条件下で培養した場合には、糞便と混合した場合の観察コロニー数と生食水に希釈した場合の観察コロニー数がほぼ一致した。また、菌数もほぼ100/プレートとなり、塗抹量とほぼ同数の菌数を計測することができた。生食水に希釈した場合のコロニーは白色で大型の凸状円形コロニーであり、糞便と混合した場合にも同様なコロニーが大多数であった。また、糞便と混合した場合には、微小なコロニーも多少見受けられたが、白色で大型の凸状円形コロニーとは明確に区別でき、LB菌のコロニーでないと判断できた。なお、観察したコロニーについて、菌種特異的プライマーを用いた同定法によりLB菌であることが確認され、パルスフィールドゲル電気泳動法を用いて遺伝子型を検出することにより同一菌株であることが確認されている。 次に、酢酸ナトリウムあるいはクエン酸アンモニウムの添加効果について確認を行った。 ヒトの糞便を生理食塩水にて10倍希釈した液及び生理食塩水に、LB菌(2038株)を約103cfu/mlとなるように添加し、表2に示す各培地にその菌液100μlを塗布した後、37℃及び48℃の恒温槽中で24時間培養した。その後、培地に出現したLB菌のコロニー総数を計数した。その結果を表2に示す。 酢酸ナトリウムを添加しなかった培地(2)及び培地(4)におけるコロニー数は、酢酸ナトリウムを添加した培地(1)や(3)に比べて少なかった。また、酢酸ナトリウムを添加した培地(3)におけるコロニー数は、さらにクエン酸三アンモニウムを加えた培地(1)に比べてわずかに多かった。そして、酢酸ナトリウムやクエン酸三アンモニウムを加えた場合には、コロニーが大きくはっきりとした。また、いずれの培地においてもLB菌由来のコロニーと他の菌とを区別することができ、糞便中のLB菌をほぼ正確に計測することが可能であった。特に、(1)〜(3)の培地では、両者を加えなかった培地(4)に比べて、他の菌との区別が容易であった。 さらに、本発明の培地の菌選択性について検討した。 ヒトの腸内に常在していると考えられているラクトバチルス属のうち、最も高頻度で検出されるラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)に属する3菌株(JCM1131T株、JCM1017株、JCM1025株)を、上記実施例の培地で培養(48℃、24時間嫌気培養)したところ、いずれの菌についてもコロニーは観察できなかった。 続いて脱脂粉乳の至適使用量について検討した。 脱脂粉乳の使用量を、3w/v%、5w/v%、7w/v%、9w/v%と変えて、LB菌の増殖程度を調べた。なお、培地中の他の成分量は変えず、培養条件も48℃、24時間とした。また、LB菌(2038株)は生理食塩水に約3×102cfu/mlとなるように添加され、各培地に菌液の100μlが塗布された。その後、培地に出現したLB菌のコロニー総数を計数した。その結果を表3に示す。 この結果、使用量7%で最も多くのコロニーが検出された。また、5〜9%の使用量において大きなコロニーが形成され、判別が行いやすかった。これにより、脱脂粉乳の濃度は、5〜9%の濃度が好適であると判断された。 最後に、LB菌を含むヨーグルト摂取者の糞便についても検討した。LB菌を含有する自家製ヨーグルト100g(LB菌:4.5×107cfu/mlを含むように調整)を健常成人2名に1日1回、6日間摂取させ、7日目の糞便を回収し、上記本発明の選択培地(1)を用いた培養によって糞便中のLB菌の検出を試みた。培地上に出現したコロニーのうち、LB菌によるものと思われるコロニーを分離した後に、DNAを抽出し、ブルガリア菌(L. delbrueckii subsp. bulgaricus)の特異的プライマーを用いて、菌種の同定を行った。さらに、検出された菌が摂取した菌と同一であることを確認するために、パルスフィールドゲル電気泳動法による菌株の識別も行った。 培地上に出現したコロニーのうち選択したコロニーは全てブルガリア菌の特異的プライマーによりブルガリア菌であることが確認された。LB菌はいずれの被験者からも検出され、糞便1g当たりの菌数は1.3×106cfu/mlおよび1.0×102cfu/mlであった。なお、ヨーグルトを摂取する前の糞便からLB菌は検出されなかった。また、パルスフィールドゲル電気泳動法による菌株の識別を行ったところ、検出された菌は摂取した菌と同一であることが確認された。 このように本発明の選択培地を用いることにより、ヒトの糞便中からラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(LB菌)を検出することが出来た。この結果、体内におけるLB菌の作用調査や新たなLB菌を使用したより有用なヨーグルトの開発が行えるものと考えられる。 WHO/FAOの国際食品規格では、「ヨーグルト」はラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(L. delbrueckii subsp.bulgaricus)及びストレプトコッカス・サ−モフィラス(Streptococcus thermophilus)の2菌種を使用した発酵乳であると定義されており、ブルガリア菌は産業上重要な菌種である。本発明によれば、ヨーグルト中のブルガリア菌のヒト消化管内生残性を調べたり、消化管内で生残性の高いブルガリア菌の選抜などが可能となり、ヨーグルトのさらなる有効利用の途を開く契機となる。 ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスを選択的に培養可能な選択培地であって、 脱脂粉乳と酢酸を主成分とし、脱脂粉乳以外の窒素源を含まないことを特徴とする選択培地。 さらに酢酸ナトリウムを構成成分とすることを特徴とする請求項1記載の選択培地。 脱脂粉乳100質量部に対して、酢酸ナトリウム三水和物18〜24質量部、酢酸1.5〜2.3mlを含むことを特徴とする請求項2記載の選択培地。 脱脂粉乳100質量部に対して、さらにクエン酸三アンモニウムを0〜3.5質量部を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の選択培地。 さらに寒天を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の選択培地。 ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス及び他の細菌を含む試料中からラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスを選択的に検出する方法であって、 脱脂粉乳と酢酸を主成分とし、脱脂粉乳以外の窒素源を含まない培地を用い、48±2℃の恒温下で24〜48時間嫌気培養することを特徴とする検出方法。 さらに酢酸ナトリウムが添加された培地を用いることを特徴とする請求項6に記載の検出方法。 脱脂粉乳100質量部に対して、酢酸ナトリウム三水和物18〜24質量部、酢酸1.5〜2.3ml、寒天18〜24重量部を含む培地を用いることを特徴とする請求項7に記載の検出方法。 脱脂粉乳100質量部に対して、さらにクエン酸三アンモニウム0〜3.5質量部を含む培地を用いることを特徴とする請求項8に記載の検出方法。 【課題】 糞便中に存在するいわゆるブルガリア菌、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)を選択的に検出する方法を提供する。【解決手段】 脱脂粉乳70g、酢酸ナトリウム三水和物15g、クエン酸三アンモニウム2g、寒天15gを水1000mlに溶かし、100℃で10分間加熱した後、酢酸1.32mlを添加し、寒天平板培地を作製する。この培地に、糞便希釈液等ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスを含む試料を適量塗抹し、48±2℃の恒温下で24〜48時間嫌気培養する。培地上に形成された白色で大型の凸円状コロニーをカウントして、試料中の菌数を計測する。【選択図】なし