生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_DNA鎖間架橋の測定方法およびDNA鎖間架橋の修復速度の測定方法
出願番号:2005207121
年次:2007
IPC分類:C12Q 1/68,C12Q 1/02


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槌田 謙 小松 賢志 JP 2007020467 公開特許公報(A) 20070201 2005207121 20050715 DNA鎖間架橋の測定方法およびDNA鎖間架橋の修復速度の測定方法 国立大学法人京都大学 504132272 川口 嘉之 100100549 松倉 秀実 100090516 遠山 勉 100089244 槌田 謙 小松 賢志 C12Q 1/68 20060101AFI20070105BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20070105BHJP JPC12Q1/68 ZC12Q1/02 8 6 OL 10 4B063 4B063QA01 4B063QA05 4B063QA19 4B063QA20 4B063QQ22 4B063QQ42 4B063QR02 4B063QR32 4B063QR57 4B063QR66 4B063QR68 4B063QR69 4B063QR77 4B063QS12 4B063QS16 4B063QS24 4B063QS28 4B063QS36 4B063QX02 本発明はDNA鎖間架橋の測定方法およびDNA鎖間架橋の修復速度の測定方法に関する。本発明はまた、これらの方法に用いるためのキットに関する。 制癌剤治療に用いられるDNA鎖架橋剤はDNA二本鎖間を架橋して細胞に障害を与える。正常ヒト細胞ではDNA鎖間架橋のほとんどが修復されるが、ある種の高発がん性の遺伝病では修復能が低下しているためにDNA架橋剤の投与量を抑えることが必要である。一方、DNA架橋剤抵抗性のがんには通常よりも多くのDNA架橋剤投与が必要とされることから、DNA架橋剤を用いた制癌治療を行うに際し、予後を予測して効果的に治療するためには、細胞のDNA鎖間架橋の修復能の測定方法が開発されなければならない。 DNA鎖間架橋を検出する方法としてアルカリ変性条件でのゲノミックサザンハィブリダイゼーション法,コメットアッセイ法が報告されている。アルカリ変性ゲノミックサザンハイブリダイゼーション法ではまず,DNA鎖間架橋を誘導した細胞からDNAを抽出し,XbaIで消化後アルカリ熱処理し,アガロース電気泳動を行う。ゲノム中40コピー存在する28SrRNA遺伝子領域をプローブとしサザンハイブリダイゼーションを行うと鎖間架橋されたDNAは二本鎖DNA,架橋されていないDNAは一本鎖DNAの位置にバンドとして検出される。これらの二つのバンドの強度の割合から28SrRNA遺伝子領域内でのDNA鎖間架橋量を算出し,細胞全体のDNA鎖間架橋量に換算する(非特許文献1)。 一方、Rothfussらは断片化されたDNAを検出する手法であるコメットアッセイ法を用いて架橋されたDNAは断片化されにくい性質を指標にDNA鎖間架橋量を定量している(非特許文献2)。DNA鎖間架橋の検出限界はアルカリ変性ゲノミックサザンハイブリダイゼーション法を用いて換算している。 従来技術の問題点として1)検出感度が低いこと,2)診断できる遺伝病が原理的に色素性乾皮症F群に限定されること,3)DNA鎖間架橋の検出の不正確性が挙げられる。1)DNA鎖間架橋の検出感度は、アルカリ変性ゲノミックサザンハイブリダイゼーション法,コメットアッセイ法でそれぞれ細胞当たり,6000および600個程度と低い。2)DNA鎖間架橋の修復機構は、第一段階でERCC1,XPF複合体によって架橋の両側で架橋部位からそれぞれ7〜8塩基離れた部位で切断され,第二段階でDNA鎖間架橋部位の除去,第三段階で生じたDNA二本鎖切断部位の修復が行われると考えられている(図1)。従来の手法では第一段階反応までしか測定することができない。従って,XPFが欠損している色素性乾皮症F群細胞ではDNA鎖間架橋修復速度は低下したが,DNA架橋剤高感受性であるファンコニ貧血症細胞では正常細胞と同程度であった。これはファンコニ貧血症原因タンパク質が修復の第二段階以降に関与していると考えられるためである。よって,従来の手法は多くのDNA架橋剤感受性遺伝病やある種のがん患者の制癌剤治療の予後を予測する方法には適さない。 ソラレンによるDNA鎖間架橋はピロン側,フラン側の二つの二重結合がそれぞれDNAのチミン残基に結合することにより形成されるが(図2),フラン側の結合はアルカリ熱処理に対して不安定である(図3)。DNA鎖間架橋形成後にアルカリ熱処理を行うとフラン側の結合がはずれ,ピロン側モノアダクト(DNA架橋剤が二本鎖のうち片側の鎖だけに結合した構造)が形成される。従来の手法はアルカリ熱処理過程が含まれているので、DNA鎖間架橋の一部はピロン側モノアダクトになっていると考えられるため、従来の手法はDNA鎖間架橋を過小評価している可能性が高く、検出の信頼性が低い。 また,コメットアッセイ法は直接DNA鎖間架橋を測定しているのではなく断片化されたDNAを検出しているため二次的な作用によってDNAが断片化されるとDNA鎖間架橋の修復と見なされるために、修復能を過大評価する場合がある。実際,DNA鎖間架橋障害によって細胞がアポトーシスを起こし,DNAが断片化されることが知られている。Mol Cell Biol. 2000 Nov;20(21):8283-9.Mol Cell Biol. 2004 Jan;24(1):123-34. 本発明は、検出感度、定量性にすぐれ、多くの種類の細胞に適用可能なDNA鎖間架橋の定量方法を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、ビオチンなどの標識物質を結合させたソラレン誘導体を用いて細胞にDNA鎖間架橋を形成させ、標識に基づいてDNA鎖間架橋を定量することで、正確かつ高感度にDNA鎖間架橋を定量でき、それにより細胞のDNA鎖間架橋修復能を高感度に測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下の通りである。 (1)標識物質が結合したソラレン誘導体を細胞に導入し、細胞に紫外線を照射して染色体DNAにDNA鎖間架橋を形成させた後、細胞から染色体DNAを抽出して、染色体DNAに結合したソラレン誘導体の標識物質の量を定量することを特徴とする、DNA鎖間架橋の測定方法。 (2)標識物質がビオチンである、(1)の方法。 (3)標識物質が結合したソラレン誘導体を細胞に導入し、細胞に紫外線を照射して染色体DNAにDNA鎖間架橋を形成させた後、該細胞について経時的に、染色体DNAに結合したソラレン誘導体の標識物質の量を定量してDNA鎖間架橋の量を測定することを特徴とする、細胞のDNA鎖間架橋の修復速度の測定方法。 (4)被験者のDNA架橋剤に対する感受性を調べる方法であって、(3)の方法を用いて被験者由来細胞のDNA鎖間架橋の修復速度を測定することを特徴とする方法。 (5)被験者が遺伝病の患者である、(4)の方法。 (6)遺伝病がファンコニ貧血症、色素性乾皮症、アタキシア・テランジェクタシア、ブルーム症候群、ワーナー症候群、ロスモンド・トンプソン症候群、ナイミーヘン症候群又は家族性乳ガンである、(5)の方法。 (7)被験者のDNA架橋剤治療の予後を予測する方法であって、(4)〜(6)のいずれかの方法によって被験者のDNA架橋剤に対する感受性を調べることを特徴とする方法。 (8)標識物質が結合したソラレン誘導体を含む、DNA鎖間架橋の定量キット。 本発明の方法によれば、細胞あたり約15個程度のDNA鎖間架橋(ICL)を検出可能であり、高感度にDNA鎖間架橋を定量できる。ドットブロット法などを採用することでメンブレンに大量のDNAを固定化して解析することが可能であり,その場合、DNA鎖間架橋の検出感度がさらに飛躍的に向上する。 また、本発明の方法ではDNA鎖間架橋の第二段階である架橋部位の除去反応まで追うことができるため、従来法では測定が困難であったファンコニ貧血細胞などにおいてもDNA鎖間架橋の解析が可能である。 本発明の方法を用いて細胞のDNA鎖間架橋修復能を調べることで、被験者のDNA架橋剤に対する感受性を知ることができ、その結果、DNA架橋剤を用いた治療の予後を予想し、効率的な治療方針を立てることができる。 本発明の方法では、標識物質が結合したソラレン誘導体を用いる。 標識物質は、ビオチン、蛍光物質、放射性物質、ジゴキシゲニンなどが挙げられるが、この中ではビオチンが最も好ましい。標識物質をソラレンに導入する場合、その位置はソラレンのDNA鎖間架橋能を阻害しない位置であれば特に制限されないが、8位が特に好ましい。また、標識物質はソラレンに直接結合したものでもよいが、適当な長さのスペーサー分子を介して結合したものが好ましい。この場合、スペーサー分子は分子全体の親水性を向上させるために、親水性の分子であることが好ましい。親水性のスペーサー分子としては、例えば、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられる。 8位にビオチンが結合したソラレン誘導体としては、PIERCE社より市販されているPsoralen-PEO-Biotin(式I)などが挙げられる。ただし、本発明に用いることのできるソラレン誘導体はこれには限定されない。 蛍光物質が結合したソラレン誘導体としては、ルシゲニン,ロフィン、フルオロセインなどの蛍光物質が結合したソラレン誘導体が挙げられる。これらの蛍光物質は通常の化学合成反応によりソラレンに結合させることができる。 放射性物質によって標識されたソラレン誘導体としては8位に13Cを含むメトキシ基が導入されたような化合物などが挙げられる(式II;Cech T, Pardue ML. Cell. 1977 Jul;11(3):631-40)。 本発明の方法では、以上で述べたようなソラレン誘導体を培養した状態の細胞に導入し、細胞に紫外線を照射して染色体DNAにDNA鎖間架橋を形成させる。ソラレン誘導体を細胞に取り込ませるためには、スクラッチローディング法,ビーズローディング法,浸透圧法,リポフェクション法,エレクトロポーレーション法などの方法を用いることが好ましい。この中ではエレクトロポーレーション法を用いることがより好ましい。 ソラレン誘導体を培養細胞に添加する場合の濃度はDNA鎖間架橋を引き起こすのに十分な濃度であればよいが、例えば、培地に10〜500μMの濃度で加えることが好ましい。 ソラレン誘導体を添加後、紫外線照射してDNA鎖間架橋を形成させる。照射する紫外線の種類は長波長紫外線(UVA)が好ましく、具体的には400〜320nmが好ましい。照射時間はDNA鎖間架橋が生じる時間であればよいが、長すぎると発熱し細胞死を起こすことがあるので10〜30分程度が好ましく、20分程度がより好ましい。 上記のようにして紫外線を照射してDNA鎖間架橋を生じさせた後に、細胞から染色体DNAを回収し、DNA鎖間架橋を検出する。染色体DNAの回収は通常の染色体DNA回収の手順によって行うことができる。市販のキットなどを用いると簡便に回収することができる。 紫外線照射終了後、すぐに染色体DNAを回収し、DNA鎖間架橋を定量する場合はソラレン誘導体による架橋効率を調べることができる。一方、紫外線照射終了後、経時的に、染色体DNAを回収し染色体DNAに結合したソラレン誘導体の標識物質の量を定量してDNA鎖間架橋の量を測定する場合は、細胞のDNA鎖間架橋修復能を調べることができる。例えば、紫外線照射直後の細胞と紫外線照射終了から一定時間経過後の細胞から、それぞれ染色体DNAを回収し染色体DNAに結合したソラレン誘導体の標識物質の量を定量し、それらの値を比較することで、一定時間経過後に紫外線照射直後に対してどの程度DNA鎖間架橋が修復されたかを調べることができる。この場合、複数ウェルのプレートにウェルあたりの細胞数が同じになるように播いて培養した被検細胞に同条件でソラレン誘導体を導入し、紫外線を照射してDNA鎖間架橋を惹起した後、経時的にウェルから細胞を回収し、染色体DNAを単離して解析することが好ましい。 本発明の方法では、高精度にDNA鎖間架橋を検出するためには、回収した染色体DNAについてアルカリ熱処理をした後に、標識物質の量を測定することが好ましい。アルカリ熱処理の方法は、例えば、NaOHなどを用いてアルカリ条件(好ましくはpH13〜13.5)にし、約95℃で10分間程度加熱する方法が挙げられる。 ソラレンはUVA照射によってまずDNA二本鎖のうち一方の鎖だけに結合したモノアダクトを形成する(図4)。モノアダクトの98%はソラレンのフラン側の結合によるもので2%がピロン側の結合である。フラン側モノアダクトは更にUVAを吸収しピロン側がDNAのもう一方の鎖に結合しDNA鎖間架橋(ICL)を形成する。一方,ピロン側モノアダクトはUVAを吸収せずDNA鎖間架橋を形成しない。フラン側の結合はアルカリ熱処理によって解離する性質を持つため,DNA鎖間架橋はピロン側モノアダクトとなるのに対し, DNA鎖間架橋を形成しないフラン側モノアダクトはDNAから解離する。したがって、架橋されたDNAをアルカリ熱処理することにより架橋を形成しないフラン側モノアダクト(単鎖結合)を排除し,DNA鎖間架橋の検出の精度を向上させることができる(図2参照)。なお、本発明の方法では架橋を形成しないピロン側モノアダクトも同時に検出されるが、2%程度と非常に少ないため、その影響は無視することができる。 染色体DNAに結合した標識物質の検出は、標識物質の種類に応じた方法で行うことができる。細胞から染色体DNAを抽出し、アルカリ熱処理した染色体DNAについて、直接、ソラレン誘導体に導入された標識物質に由来する放射能や蛍光強度を測定してもよいが、より精度よく検出するためには、染色体DNAをドットブロットなどにより膜に移した後に検出することが好ましい。膜としてはDNAの検出に用いられる膜であれば特に制限されないが、例えば、ニトロセルロース膜、ナイロン膜などを用いることができる。ドットブロットの方法は特に制限されないが、例えば、DNAをスポットした膜を高温状態に置くことによってDNAを固定化することができる。なお、ドットブロットの効率を高めるために染色体DNAを超音波処理などで断片化した後に、フィルターにスポットすることが好ましい。 ビオチンを標識物質に用いた場合、ビオチンとアビジンとの親和性を利用して検出することができる。例えば、ペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼなどの酵素で標識されたアビジンを加えて、ビオチン-アビジン-酵素の複合体を形成させ、そこに酵素の基質を加えることで標識物質の量、すなわち、DNA鎖間架橋の量を測定することができる。測定結果は画像解析ソフトウェアなどを用いて定量化することが好ましい。試験細胞から得られた染色体DNAに対する測定値を、標準量のビオチン化標識DNAの測定値と比較することでDNA鎖間架橋の量がどの程度であるかを算出することができる。また、これを経時的に行うことで細胞のDNA鎖間架橋修復能を算出することができる。なお、標準量のビオチン化標識DNAを用いない場合でも、架橋直後のDNA鎖間架橋の量と、架橋後一定時間経過後のDNA鎖間架橋の量を比較することで細胞のDNA鎖間架橋修復能を算出することができる。 以上の手順によって、被験者の癌組織などから調製された細胞についてDNA鎖間架橋修復能を調べることで、制癌剤に対する細胞の感受性をあらかじめ知ることができ、制癌剤の投与量を決定する際の目安にすることができる。 また、DNA架橋剤に対して感受性を示す遺伝病が疑われる患者に対しては、予めどの程度の感受性であるかを調べることができ、それにより、感受性患者に対してはDNA架橋剤の投与量を減らすことで副作用を低下させることができる。またある種のDNA架橋剤抵抗性がんに対しては、制癌治療の予後を予測して、DNA架橋剤の投与量を増加させることもできる。なお、上記のような遺伝病としてはファンコニ貧血症,色素性乾皮症,アタキシア・テランジェクタシア,ブルーム症候群,ワーナー症候群,ロスモンド・トンプソン症候群,ナイミーヘン症候群,家族性乳ガン等が挙げられる。 本発明はまた、標識物質が結合したソラレン誘導体を含む、DNA鎖間架橋の定量キットを提供する。この定量キットはソラレン誘導体に加えて、アビジン標識酵素などの検出試薬、酵素基質、メンブレンなどを含むものであってもよい。また、本発明のDNA鎖間架橋キットは細胞のDNA鎖間架橋修復能を測定するために用いることもできる。 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない。 制癌剤として用いられるソラレンにビオチンを導入した構造のPsoralen-PEO-biotin(Pierce社)をエレクトロポーレーション法で導入した培養細胞にUVA(365nm)を20分照射し,DNA鎖間架橋を誘発させた。この細胞から経時的に回収したDNAをアルカリ熱処理し,ドットブロット法でメンブレンに固定した。ホースラディッシュペルオキシダーゼの付加したストレプトアビジンをpsoralen-PEO-biotinに結合させ,ビオチンを指標にDNA鎖間架橋量を化学発光法で定量した。以下、より具体的に説明する。<ソラレン誘導体の導入法および紫外線照射条件の検討> Psoralen-PEO-biotinの細胞内への導入についてはスクラッチローディング法,ビーズローディング法,浸透圧法,リポフェクション法,エレクトロポーレーション法を試したが,エレクトロポーレーション法が最も効率よく安定的に導入できることが分かった。蛍光色素が付加したストレプトアビジンを用いて細胞を染色した結果、エレクトロポーレーション法では99%の細胞でほぼ均一にPsoralen-PEO-biotinが導入されていた。 UVA照射は長時間照射するほどPsoralen-PEO-biotinのDNAへの結合量が増すが30分以上照射すると発熱し細胞死を起こした。20分の照射(約12J/cm2)では細胞死は見られなく最適であることが分かった。 100μMのpsoralen-PEO-biotinを、GM24SV+NBS1細胞にエレクトロポーレーション法で導入し、20分間UVA(365nm)を照射した。照射終了から0、12、24、48時間経過後に、細胞から染色体DNAを抽出し、アルカリ条件で95℃で10分間加熱した。次いでアルカリ熱処理後の染色体DNAを超音波処理した後、ナイロン膜(フィルター)にドットブロットし、80℃で2時間処理してDNAをフィルターにクロスリンクさせた。 フィルターをホースラディッシュペルオキシダーゼが付加したストレプトアビジン溶液で室温20分処理後,ECLadvance(Amersham社)で発光反応させX線フィルムを感光させた。 画像解析ソフトウェアlmageJ(National Institute of Health)を用いて各スポットの強度を数値化した。また,片側の5’末端をビオチン化した1kbpのDNA断片をビオチンの濃度マーカーとして用いることで細胞当たりのDNA鎖間架橋量を算出した。 なお、GM24SV+NBS1細胞は、DNA鎖間架橋修復能が欠損した細胞であるGM細胞(Nijmegen UniversituのCorry weemaes博士から入手)を株化し、NBS1遺伝子(GenBank Accession No. NM002485)を導入したものである。 結果を図5に示した。図5の*Mのレーンは片側の5’末端をビオチン化した1kbpのDNA断片をビオチンの濃度マーカーとして、1/2の希釈系列でブロットしたものである。このマーカーの発光量と測定対象の発光量を比較することにより、染色体DNAに結合したビオチンの量、すなわち、架橋の個数を算出した。 その結果、細胞当たり2500〜3000個のDNA鎖間架橋が形成されることが分かった。また,検出感度は、抽出したDNAを100μgブロッティングするとDNA鎖間架橋は細胞当たり15個まで検出することができ,これは従来の手法と比べ40倍と高い感度であった。<DNA鎖間架橋の修復速度の測定> H94-38SV(FANCG変異細胞),FANCGcDNA(GenBank Accession No. NM00469)で相補したH94-38SV細胞,およびHela細胞を用いてDNA鎖間架橋の修復速度を評価した。なお、ファンコニ貧血G群細胞であるH94-38SV細胞はVrije University at AmsterdamのHans Joenje博士から入手したものを株化して用いた。これらの細胞に100μMのpsoralen-PEO-biotin(Pierce)をエレクトロポーレーション法で導入し,20分間UVA(365nm)を照射しDNA鎖間架橋を誘導した。0,12,24,48時間後、染色体DNAを抽出し、アルカリ熱処理、超音波処理をした後、フィルターにドットブロットして、ホースラディッシュペルオキシダーゼが付加したストレプトアビジンを用いて検出を行うことによりDNA鎖間架橋量を定量した。結果を図6に示す。その結果、Hela細胞では、紫外線照射直後に細胞当たり約2700個であったDNA鎖間架橋が、48時間後に42個まで減少したことがわかった。一方、ファンコニ貧血G群細胞では正常修復能のHela細胞に比べDNA鎖間架橋修復に有意な低下がみられた。これに対し、FANCGcDNAで相補したH94-38SV細胞では、Hela細胞と同様にDNA鎖間架橋がほとんど修復されたことがわかった。 以上、ファンコニ貧血G群細胞を用いた例を示したが、本発明者はこれまでに色素性乾皮症(XP)F群細胞,ナイミーヘン症候群細胞,家族性乳ガン細胞(BRCA2欠損細胞),ファンコニ貧血症G,D2,およびD1群細胞についても測定し、同様のDNA鎖間架橋修復速度の低下を確認している。DNA鎖間架橋の修復機構の模式図。ソラレンによるDNA鎖間架橋の構造を示す図。ソラレンによるDNA鎖間架橋の形成と解離反応の模式図。アルカリ熱処理によるDNA鎖間架橋とモノアダクトの解離の模式図。GM24SV+NBS1細胞におけるDNA鎖間架橋の修復の程度を示すドットブロットの図(写真)。ファンコニ貧血細胞及びHela細胞のDNA鎖間架橋の修復の程度を示すグラフ図。標識物質が結合したソラレン誘導体を細胞に導入し、細胞に紫外線を照射して染色体DNAにDNA鎖間架橋を形成させた後、細胞から染色体DNAを抽出して、染色体DNAに結合したソラレン誘導体の標識物質の量を定量することを特徴とする、DNA鎖間架橋の測定方法。標識物質がビオチンである、請求項1に記載の方法。標識物質が結合したソラレン誘導体を細胞に導入し、細胞に紫外線を照射して染色体DNAにDNA鎖間架橋を形成させた後、該細胞について経時的に、染色体DNAに結合したソラレン誘導体の標識物質の量を定量してDNA鎖間架橋の量を測定することを特徴とする、細胞のDNA鎖間架橋の修復速度の測定方法。被験者のDNA架橋剤に対する感受性を調べる方法であって、請求項3に記載の方法を用いて被験者由来細胞のDNA鎖間架橋の修復速度を測定することを特徴とする方法。被験者が遺伝病の患者である、請求項4に記載の方法。遺伝病がファンコニ貧血症、色素性乾皮症、アタキシア・テランジェクタシア、ブルーム症候群、ワーナー症候群、ロスモンド・トンプソン症候群、ナイミーヘン症候群又は家族性乳ガンである、請求項5に記載の方法。被験者のDNA架橋剤治療の予後を予測する方法であって、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法によって被験者のDNA架橋剤に対する感受性を調べることを特徴とする方法。標識物質が結合したソラレン誘導体を含む、DNA鎖間架橋の定量キット。 【課題】 簡便かつ高感度にDNA鎖間架橋を定量できる方法を提供する。 【解決手段】 標識物質が結合したソラレン誘導体を細胞に導入し、紫外線照射することでDNA鎖間架橋を生じさせ、標識物質の量を指標としてDNA鎖間架橋の量を検出する。DNA鎖間架橋を生じさせた後、経時的にDNA鎖間架橋の量を測定することで細胞のDNA鎖間架橋修復能を調べることができる。 【選択図】 図6


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